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ポリカルボン酸系コンクリート用減水剤の

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 枚 田    健

学 位 論 文 題 名

ポリカルボン酸系コンクリート用減水剤の      作用機構と材料設計

学位論文内容の要旨

  1980年 代前半 に起こったコンクリート構造物の早期劣化は,「コンクリートクライシス」として 社会問題にまで発展した。これは,コンクリートの耐久性に不信感を芽生えさせ,コンクリートの技 術革新に一段と拍車をかけることに誼った。その後,1986年には建設省(当時)により単位水量の上 限 規制教 どの通達 がをされ,これがコンクリートを高強度化に向かわせ,高性能AE減水剤の発明へ と至ることに次る。

  高 減水し たコンクリートは,刻々とスランプが低下する。高強度コンクリートをレディミクスト コンクリート工場から工事現場まで運搬する間。あるいは工事現場で打設するまでの待機時間に,高 強 度コン クリート にはともすればポンプ圧送ができ顔く款るほどのスランプロスが起こる。それに 加 えて近 年では, 設計基 準強度 がlOMpaを超える超高強度コンクリートへのニーズも高く教り,高 性 能AE減 水 剤 に は , い っ そ うの 高 い 減 水性 能 と 共 にス ラ ン プ ロス 防 止 が 求め ら れ て いる 。   本 研究は ,メト キシポ リ(n)エチ レング リコー ル(PGM‑n)を側 鎖にも っポリ カルポ ン酸(PC‑n, ま たはPC)を 主剤と する高 性能AE減 水剤に 関する 。そして ,減水 性能, スラン プロス 防止及び耐 久性のそれぞれを高度に発現するポリマー構造顔らびにポリマー組成物を提案し,且つ,その作用機 構 を セ メ ン ト と の 相 互 作 用 の 面 か ら 実 際 的 に 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。   本論文は8章から構成されており,以下に各章の要旨を述べる。

  第1章 は序 論 で あ り,AE剤 から 高 性 能AE減水 剤に至 るまで の減水剤 開発の 歴史と 問題点 を述 ベ,PC−nの分散理論,スランプロス防止,耐久性についての最近の研究動向について概説し,本論文 の位置づけを明らかにするとともに,本研究の目的について述べた。

  第2章 では , 側 鎖のPGM‑nの 熱挙動 を調ベ ,コン クリー ト材料 温度がPC‑nに及ば す影響 につい て 検討し た。その 結果, 材料温 度が高 くをると短いPGM‑nは疎水性に教って縮まり,セメントに疎 水 吸着す ること; 高温下 で高い 流動性 を得る には側 鎖は15モ ル以上の長さが必要であることを示 した。

  第3章では ,アル カリ加 水分解 する架橋 剤でPCー10(側鎖 長が10モ ルのPC)を 架橋し た架橋ポリ マ ーが、 スランプ ロスを防止することを示した。その作用機構は,セメントベースト中で架橋ポリ マ ーの架 橋点が解 れ。PC‑10を徐放 するこ とにあ った。ま た,架 橋反応中にPC‑10はポリマー鎖が 絡まりをがら架橋すること;しかしこのポリマー鎖の絡まりは,わずかをせん断をかけると解れるこ と;スランプロス防止性能は架橋ポリマーから絡まりを解いた粘度(分子量)に依存することを明ら かにした。

  第4章 では ,PC‑nの 吸 着 速度 は , そ の重 量平 均分子 量(Mw)また はモノ マー組 成比中 のSMAA比

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率でコントロール でき,吸着速度の遅速によ ってスランプロス防止あるいは減水性能に優れたPC‑n をそれぞれ得るこ とができることを示した。

  第5章 で は, 光 散乱 法で 測定 したPC‑nの 重量 平均 分子 量(MwLS)と 固有 粘 度と からPC・nの 流 体力学的半径(Rh)を求め,これらとセメント 吸着量とから求まるセメント被覆面積と実際のセメン ト表 面 積を 比較 して ,PC‑nはセ メン トペ ー スト 中でRhが4〜5割まで縮んでいるこ とが推察され た。また,分子動 力学法によるシミュレーシ ョンからは,側鎖長が10モル と短く主鎖が長いPC‑10 はセメントペースト中で主鎖と側鎖が緊密に絡み,大半のカルポキシル基は隠れているが,側鎖長が 25モルと長く主鎖 が短いPCP 25では,主鎖と 側鎖の絡まりは少数くをってカルポキシル基が現れ,

主鎖 を 中心にしてその周囲 を側鎖がゆったりと漂うコ ンホメーションを取っている ことが示唆さ れた。

  第6章では,PCーnに空気連行性(AE性)を発 現させている化学物質を分 析した。セメントに吸着 し教 いPC‑n成分をろ別し, さらにこれを限外ろ過で分 子量分画してそれぞれの分画 成分が持つAE 性を 調 べた 。そ の結 果 ,AE性物 質は ,PC‑n合成 後も 未反 応で 残 存す るPGM‑nとPC‑nの低分子量 ポリマーであるこ とが明らかと顔った。また ,PC‑nが連行する空気量を特定の消泡剤で消して特定 の空気連行剤(AE剤)で新た顔気泡を導入する と,練り上がり直後の空気 量を硬化後もほば維持す るこ と ができ,凍結耐久性 が格段に向上することが示 された。用いた消泡剤とAE剤 の組み合わせ には.それぞれを 単独で用いるよりもセメン トろ液の表面張カを下げて気泡を安定化する効果があ り , こ れ は 消 泡 剤 とAE剤 の 疎 水 基 相 互 作 用 に よ る も の で あ る て と が 推 察 さ れ た 。   第7章は,最適ポリマー組成物の提案と検証である。まず,セメント分散斉Uとして最適教ポリマー 構造を,側鎖長,モノマー組成比,Mwの観点から検討した。その結果,側鎖長が25モルのPC−25が,

少額い添加量で所 望の流動性が得られ,しか も低粘性で作業性の良いコンクリートを作製できるこ とを示した。そこ で,PC‑25に第3章,第4章で 検討したスランプ保持剤で ある架橋ポリマー或いは 吸着速度遅延型ポ リマー,及び第6章で用いた 特定の消泡剤とAE剤を配合 したポリマー組成物が,

高度の減水性,スランプロス防止を発現し,更に,気泡を微細に安定化することで優れた凍結融解抵 抗性を示すことを 確認した。

  第8章 は総 括 であ り, 本研 究で 得られた結果を要約 し,今後の課題についての見 解を述べた。

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 准教授

名和 米田 恒川 胡桃澤

学 位 論 文 題 名

豊春 哲朗 昌美 清文

ポリカ ルボン 酸系コン クリート用減水剤の      作 用機構 と材料設 計

  コンクリートに要求される性能は目々多様化しており、高流動、高強度、高耐久化をどが求めら れている。これらの要求性能を満足するためには技術の革新、特に使用材料の高度化が必要であ る。材料の中でも、高性能AE減水剤は、高流動、高強度、高耐久性を実現させることが可能であ り、セメント、水、骨材といった従来のコンクリートを構成する基本成分に次ぐ「第4のコンク リートの成分」と呼ぱれ、コンクリート工学の技術革新に非常に貢献する期待されているものであ る。しかし、高度に減水したコンクリートではスランプやスランプフローで表される流動性は刻々 と低下する問題点が指摘され、高強度コンクリートをレディミクストコンクリート工場から工事現 場まで運搬する間あるいは工事現場において打設するまでの待機時間に、ポンプ圧送ができ顔く教 るほどの流動性の低下が生じる例も起こっている。さらに、近年では設計基準強度が120MPaを超 える超高強度コンクリートへのニーズも高く極り、高性能AE減水剤には、一層の高い減水性能と 共に流動性の経時的低下を防止することが求められている。

  そこで、本研究では、メトキシポリ(n)エチレングリコール(PGM‑n)を側鎖、メタクリル酸エ ステルマー.(SMMA)を主鎖とするコポリマー、いわゆるポリカルポン酸系コンクリート用減水剤 (PC−nまたはPC)の減水性能およびスランプ保持性能について、ポリマー構造およびポリマー組成 物の観点から検討を加え、作用機構を解明するとともに、従来のものよりさらに流動性、スランプ 保持性の優れたコンクリート用減水剤の材料設計について提案した。また、コンクリート用減水剤 の欠陥である連行した気泡の不安定化を改善する補助ポリマーの最適化についても検討を行って いる。

  本論文は8章から構成されており、以下に各章の要旨を述べる。

  第1章「序論」では、高性能AE減水剤の開発経緯を示し、その重要性をらびに問題点を指摘し、

あ わ せ て 既 往 の 研 究 を 概 説 し 、 本 論 文 の 位 置 づ け と 目 的 を 明 ら か に し て い る 。   第2章では、セメントに吸着するのに必要次最小のPGM‑n分子中のカルボキシル基と減水性と PGMーn分子量の関係を明らかにしている。また、夏季の流動性低下についても検討を加え、温度 が高く教ると鎖長が短いPGM‑nは塩析により疎水性に款って縮まり、セメントに疎水吸着し流動

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性を 低下 さ せる ため 、夏 季に 高 い流 動性 とス ラ ンプ 保持 性を 得る に はPGM‑n鎖は15モル以上 の 長さが必要であること を示した。

  第3章 では 、PC‑10と架橋剤により架 橋ポリマーを合成し、スラン プロスを防止することを試 み ている。その作用機構 として、セメントペースト 中で架橋ポリマーの架橋点が 解れ、PC‑10を徐放 すること、および徐放 されたコポリマーが吸着し て流動性の低下を防止することを明らかにしてい る。 また 、 架橋 ポリ マー の合 成 中にPC‑10はポリマー鎖が絡まり教 がら架橋するため性能が低 下 するが、わずかをせん 断によルポリマー鎖の絡ま り独解れ、スランプロス防止性能を改善できるこ とを明らかにした。

  第4章 で は 、PC‑nの 吸 着 速 度 は 、 そ の 重 量平 均分 子量(Mw)ま たは モノ マー 組成 比 中のSMAA 比率で制御できること に着目し、スランプロスを 防止することを試みている。その結果、側鎖長が 短 い ほ ど 遅 く 吸 着 し ス ラ ン プ ロ ス を 防 止 で き る こ と を 明 ら か に し て い る 。   を お、 第2章か ら 第4章 まで の 結果 は、 いず れ も吸 着し ているPC‑nの形態が流動性やスラン プ 保持性に多大顔影響を 及ばすことを示唆している 。

  そ こで 、 第5章 で は光 散乱 法と 粘度 測定から、それぞれPC‑nの重 量平均分子量と流体力学的 半 径を 求め 、 これらと吸着量とセメント の表面積から求めた実際のセ メント表面でのPC‑nの大き さ を比 較し て 、塩 析に よりPC‑nは セメ ント ベー ス ト中 で4〜5割まで 縮んでいることを明らかに し た。また、分子動力学 法シミュレーションを用い てセメントペースト中で吸着 しているPC−nの詳 細ぬ 状態 に つい て考 察し 、側 鎖 長が10モルと短く主鎖が長いPC‑10では、主鎖と側鎖が緊密に 絡 み合 いセ メ ントヘの吸着基であるカル ボキシル基はその大半が隠れ ているが、側鎖長が25モル と 長く主鎖が短いPC‑25では、主鎖と側鎖の絡み合い 少教くカルボキシル基が外 側に存在し、側鎖長 が短いほど遅く吸着す る吸着機構を、吸着した状 態のコポリマーのカルポキシル基の状態の相違か ら明らかにした。

  第6章 では 、PC‑nの連 行空 気泡 を安 定させるために、先ず気泡連 行(AE)性を発現させている 化 学物 質を 特 定することを試み、セメン トに吸着し顔いPC‑n成分を限 外ろ過で分子量分画してそ れ ぞ れ の 分 画 成 分 が持 つAE性 を調 べて いる 。 その 結果 、AE性物 質 はPC‑n中 に未 反応 で 残存 する PGM‑nと 低分 子量ポリマーであることを 示し、さらに、このPC−n自 体が連行する気泡を消泡剤 で 消し て良 質 款AE剤で新たに気泡を導入 すると、練上り直後の空気量 が硬化後もほば維持でき、 耐 凍害 性が 格 段に向上することを示して いる。をお、消泡剤とAE剤の 疎水基相互作用により、各 々 を単独で用いるよりも セヌントペースト中の溶液 の表面張カが低下し気泡を安定化する効果がある ことも解明している。

  第7章では、前章ま での結果を踏えて、従来のも のよりさらに流動性、スラ ンプ保持性の優れた ポリカルポン酸系コン クリート用減水剤の材料設 計について提案するとともに、その設計法に則っ て試 作し たPC‑nに消 泡剤 とAE剤 を配 合し たポ リ マー 組成 物が、高 度の減水性、スランプロス 防 止 を 発 現 し 、 微 細 気 泡 を 安 定 化 す る こ と で 優 れ た 耐 凍 害 性 を 示 す こ と を 確 認 し て い る 。   第8章は総括であり 、本研究で得られた結果を要約し、今後の課題についての見解を述べている。

  これを要するに、著 者は、ポリカルポン酸系コ ンクリート用減水剤の減水性能およびスランプ保 持性能について、ポリ マー構造およびポリマー組 成物の観点から検討を加え、作用機構を解明する とも に、 従 来のものよりさらに流動性 、スランプ保持性の優れた高 性能AE剤の開発したもので あ り、環境資源材料学お よび建設材料学に貢献する ところ大をるものがある。よって著者は、北海道 大学博士(工学)の学 位を授与される資格あるも のと認める。

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