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Academic year: 2022

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氏 名 飯田 茂 授 与 し た 学 位 博士 専攻分野の名称 薬学

学位記授与番号 博乙第4313号

学位授与の日付 平成21年9月30日 学位授与の要件 博士の学位論文提出者

(学位規則第5条第2項該当)

学位論文の題目 フ コ ー ス 除去 抗 体 の ヒト 末 梢 血 中に お け る 抗体 依 存 性 細胞 傷 害

(ADCC)活性誘導作用及びその機序に関する研究

論 文 審 査 委 員 教授 合田 榮一 教授 龜井 千晃 教授 榎本 秀一

学位論文内容の要旨

世界で認可された組換え抗体医薬は 20 品目を超え、様々な悪性腫瘍での明確な臨床効果によ り、新たな分子標的治療薬としての地位を確立している。最近、抗体医薬の主要な抗腫瘍メカニ ズムの一つが抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性であることが示されつつある。ADCC 活性は、可 変領域を介して標的細胞に結合した抗体の定常領域(Fc 領域)が、エフェクター細胞に発現す る Fcγ受容体(FcγR)に結合することで発揮される。2000 年になり、この Fc 領域に付加するN- 結合複合型糖鎖からフコースを除くと、NK 細胞上の FcγRIIIa に対する抗体医薬の結合が高まり、

ADCC 活性が飛躍的に向上することが明らかとなった。著者らのグループは、抗体糖鎖へのフコ ース修飾を制御するポテリジェント技術の開発に成功し、本技術を用いて製造したフコース除去 抗体の次世代抗体医薬としての臨床開発を進めている。

一般的に、フコースが付加した既存の抗体医薬は、ヒト in vivo での治療効果を得るために

10 μg/mL 以上の高い血中濃度を要する。一方、これらの抗体医薬のin vitro ADCC 活性は、10-100

ng/mL という低濃度で飽和に達し、in vivo と in vitro の薬効に大きな乖離が認められる。最近 の研究で、この薬効差は、ヒト血中の多量の IgG が抗体医薬の NK 細胞上 FcγRIIIa への結合を阻 害することにより生じることが示された。一方で、フコース除去抗体の高い ADCC 活性に対する ヒト血漿 IgG の影響についてはこれまで明らかにされていなかった。そこで本論文では、ヒト末 梢血を用いたex vivo ADCC 系によりフコース除去抗体の ADCC 活性を解析するとともに、その ADCC 誘導メカニズムを、FcγRIIIa、抗原との結合性に注目して検証した。

ヘパリン処理ヒト末梢血にフコース除去型またはフコース付加型の抗 CD20 抗体を添加して培 養し、CD20+ヒト正常 B 細胞に対する ADCC 活性を誘導した後、残存する B 細胞数をフローサイト メトリーで解析した。その結果、フコース除去抗体は、ヒト血漿 IgG を含むヒト末梢血中でもフ コース付加抗体より 100 倍以上高い ADCC 活性を示した。フコース付加抗体の ADCC 活性は、血漿 IgG により顕著に阻害され、最大 ADCC 活性を発揮するには 1 μg/mL 以上の高濃度を要した。対 照的に、フコース除去抗体はヒト血漿 IgG の存在下でも 0.01-0.1 μg/mL の低濃度でフコース付 加抗体よりも顕著に高い ADCC 活性を示した。NK 細胞上の FcγRIIIa に対する結合性を解析した 結果、フコース除去抗体はヒト血漿中においても FcγRIIIa に対する強い結合性を保持すること によってヒト血液中でも高い ADCC 活性を誘導できることが明らかとなった。注目すべきことに、

フコース付加抗体は、標的細胞上の抗原分子をフコース除去抗体と競合することにより、フコー ス除去抗体の高い ADCC 活性を阻害した。

以上の結果より、フコース付加抗体を含まない、フコース除去抗体のみからなる抗体医薬は、

ヒト血漿 IgG による NK 細胞上 FcγRIIIa の競合を回避し、さらにフコース付加抗体による標的抗 原の競合を回避する 2 つのメカニズムにより、ヒト血液中においても高い ADCC 活性を誘導する ことを明らかにした。フコース除去抗体は、ヒトin vivo においても低濃度で高い治療効果を発 揮するものと期待される。

(2)

論文審査結果の要旨

抗体医薬の多くは、長い血中半減期と高いエフェクター活性を有するヒト IgG1 として開 発されているが、この Fc 領域の CH2 ドメインにN-結合複合型糖鎖が結合しており、構成糖 鎖としてフコースを有している。これら抗体医薬の抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性は、in

vitroとin vivoの薬効発現濃度に大きな違いがあり、その原因の一つがヒト血液中に存在

する IgG であることが報告された。すなわち、ヒト血清中に 10 mg/mL と多量に存在する IgG が、抗体医薬のエフェクター細胞膜表面上 FcγRIIIa への結合を阻害することによるもので あった。一方、フコースを除去した抗体医薬は、フコース付加抗体よりも FcγRIIIa に対す る強い結合活性を有し、in vitroの IgG が存在しない条件下ではフコース付加抗体よりも 100~1000 倍の低濃度でより高い ADCC 活性を誘導する。しかしながら、患者の生体内、す なわち大量のヒト IgG が存在するヒト血液中において、フコース除去抗体がどれだけの ADCC 活性を発揮できるかについては、これまで明らかにされていなかった。本論文で著者は、

フコース除去抗体のヒト末梢血中における ADCC 活性を解析した結果、フコース除去抗体は、

その高い FcγRIIIa 結合親和性を介してヒト血漿 IgG による FcγRIIIa の競合を回避し、フコ ース付加抗体よりも低用量でかつ高い ADCC 活性を誘導できることを明らかにした。また、

フコース除去抗体の ADCC 活性に及ぼすフコース付加抗体の影響を解析した結果、フコース 付加抗体は標的細胞に発現する標的抗原をフコース除去抗体と競合することにより、フコ ース除去抗体の高い ADCC 活性を阻害することを明らかにした。従って、フコース除去抗体 とフコース付加抗体の混合物では作用が減弱され、フコース除去抗体のみを用いることが 重要である。以上のように本論文はフコース除去抗体が多量のヒト IgG 存在下でも低濃度 で高い ADCC 増強活性を示すことおよびフコース付加抗体はこれを抑制することを明らかに し、フコース除去抗体のみを用いることの有用性を示したものであり、また、学位(博士)

論文に関する評価基準を満たしており、博士(薬学)の学位に値するものと判断する。

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