73
整形外科領域において重要課題の一つである人工関節 の臨床応用に関する技術は,最近長足な進歩を遂げてい
る.
人工関節は,股・膝・肘関節などに応用されるが,i整 形外科医の興味は主に股関節に向けられており,これに は多数の慶れた業績がある.
股関節については,1940年アメリカのA.T. Mooreお よびHR・Bohlmanが人体にVitallium製の人工骨頭を 挿入したのが,文献上人工骨頭置換術の第1例であり,
以来,Prosthesisのデザイン,材質,手術手技, Prosthesis と骨との接合などの問題につき,多数の研究がなされ,
漸次改良され,現在にいたっている。現在,日常一般に 行なわれている人工骨頭置換術やCup Arthroplastyな
どは,関節の一部分を人工製品によって継ぎ換えるも のであり,股関節部分置換術と称することがでぎる。一 方,関節の全部を人工製品で置換するという試みは,
主にヨーロッパではじめられ,現在約10年を経過してお り,最近この手術の成績が良好であることが臨床的に判 明するにつれ,世界的に普及しはじめている.
股関節金置換術は,高度の変形・破壊のある股関節に 対し,寛骨臼および大腿骨骨頭の両者を人工製品に置き かえ,患者を疹痛から解放し,股関節に充分な可動性と 支持性を再建させることを目的とした関節形成術の一方 法である.
現在知られている方法は,大腿骨頭を金属にて置換 し,人工寛骨臼として金属を用いるもの(McKee−Farrar Prosthesis)と, Plasticsを用いるもの(Charuley Pro−
sthesis)とがある.
今回,われわれは若鶴の経験をもとに,股関節全置換 術(Total Hip Replacement)について概説を試み,そ の適応,合併症,材料および力学的問題点につき言及し
た.
5.急性腎不全に対する早期透析の意義 (人工腎臓センター・理論外科)
○太田和夫・出月 康夫・蒲谷 莞 (心理)
王四四・富野龍夫・高安俊介
工藤 龍彦・榊原 任透析療法の導入により急性腎不全の治療は飛躍的な進 歩をとげたが,しかしなおその救命率は50〜60%であ
り,なお解決すべき幾多の問題が残されている.
われわれは当院において昨年2月より本年4月までに 27例の急性腎不全を経験しており,その成績は,治癒
したもの7例,死亡10例,腎不全は治療したが,原疾 患の悪化ないしは腎不全以外の合併症で死亡したもの6 例で,現在透析中の1例をのぞくと,腎不全の治癒率は 50%,救命率は27%となる.このような症例中,早期に 適応を決定し,頻回の透析を行なったものは成績良好で あり,透析開始の時期がおくれたもの,および透析が不 十分であった症例は成績が不良であった.これら急性腎 不全の予後を左右する因子について考えてみた.
6.コンピューターによる自動監視治療装置 (心硬)
○池田祐之・多田隈 理・高梨 吉則
開心術術後の患者の管理には,高度の治療技術と共に 昼夜別なく患者の状態を観察し,直ちに処置を行なう重 労働が必要である.私達は昭和44年1月以来,Intensive Care Unitを組織してこの問題に対処し,治療威績の向 上を図り,効果を挙げて来た.
ICUの意義は,一定水準以上の治療が医師による個 人差なく行なわれることにある。これは,客観的なデー タを重視することと,簡単で判りやすい診断および治療 基準を確立したためである.
この経験を基にして,ICUの全過程,すなわちデー タの収集,分析,診断および治療をプログラム化して,
コンピューターによるICU管理を行なった.その目的 は,異常の早期発見と正確な治療にあった.
装置は昭和45年8月に試作を完了した生体情報の収集 装置とミニコンピェーター,タイプライター,入出力制 御装置および自動注入機より構成される.
患者情報は,オンライン情報として,心電図,心拍 数,期外収縮発生率,呼吸数,動脈圧,中心静脈圧,尿 量,尿色,体温,直腸一皮膚温度差の10項目を,患者に とりつげたセンサーから入力する.オフライン情報は患 者の体重,体表面積,重症度,ヘマトクリット値や血液 ガス分析値をタイプライターから入力する.
コンピューターはこれらのデータを集め,分析し,診 断を下し,患老の体重,体表面積から薬液量を計算して 投与する.このための特殊な自動注入装置を開発した.
これはパルスモーターで駆動されるポンプで,微量の薬 液を長時聞にわたって正確に注入することができる.自 動注入の可能な薬液は7種類で,輸液,昇圧剤,プロタ ノール,重曹,サム,マニトール,キシロヵインであ
る.
現在までにほぼ良好な結果を得,8床を管理するシス テムへの拡張を行なっている.
一619一