不 動 産 売 買 契 約 の 「 成 立 」 と 所 有 権 の 移 転
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(2) ニ 一七・一八世紀の判例および実務. デュムーランの学説. 六五巻二号︵一九八九︶. 三. 五 ポティエの学説. 四 ﹁売買予約は売買の効力を有する﹂という法格言の意味. 第三款 フランス民法典 学説. 仮契約の解釈 判例. 仮契約の解釈︵以上本号︶. 判例. 学説. 第三款. 第二款. 小括. 双務予約を独自の契約と構成する学説. 第一款双務予約を独自の契約として構成しない学説. 第一節. 第三章 双務予約の現代的展開f第三期︵一九五五年以降︶. 第三款 学説. 第二款. 第一款 要式主義の復興︵冨器茸鉱の器琶8身ま吋糞&の跨Φ︶. 第三節第二期︵一九三五年〜一九五五年︶. 二. 一 売買の双務予約の効力. 第二款. 二. 一 民法典一五八九条の解釈. 第一款. 第二節第一期︵一八〇四年〜一九三五年︶. 早法. 二.
(3) 8 一. 第二節判例 第一款当事者間の効力が争われた事例 第二款 双務予約と第三者 第三款 小括. 第四章総括. 旧民法. 第一節フ ラ ソ ス 法 ま と め 第二節民法五五六条 第一款 目本法解釈への示唆. 第二款現行民法起草過程 第一款所有権の移転時期にっいて. 第三節. 第二款債権契約としての売買契約の成立. 第三款交渉段階における契約責任. ﹁物権ノ設定及ヒ移転ハ当事者ノ意思表示ノ︑・・二因リテ其効力ヲ生ス﹂と定め︑民法が物権. むすび1残された課題. はじめに. 問題の所在 民法一七六条は︑. 三. 変動に関して意思主義を採用することに争いはない︒しかしながら︑物権変動を目的とする債権契約が締結された場 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶.
(4) 早法六五巻二号︵一九八九︶. 四. 合にいつ物権変動が生じるかとなると︑とりわけ不動産売買契約に関して︑所有権の移転時期をめぐる激しい論争が. なされていることは周知の事実である︒そして︑不動産取引の経済的︑社会的重要性の増加とともに︑議論はいよい ︵1︶. よ活発化し︑さまざまな視点から数多くの詳細な研究が発表されている︒. 今日までの学説状況を簡単に整理すると︑かつての学説は︑所有権移転時期の問題を物権行為の独自性の問題と結 ︵2︶. びつけて論じていた︒すなわち︑物権行為の独自性を否定する学説は︑原則として債権契約締結時に物権変動が生じ. ると解する︵いわゆる債権契約時説︶のに対して︑物権行為の独自性を肯定する学説は︑登記︑引渡または代金支払 ︵3︶ など外部的徴表行為がなされた時に原則として物権行為が成立し︑同時に所有権が移転すると解していた︒ ︵4︶ しかし︑近時の有力な学説は︑物権変動の時期の問題を物権行為の独自性の問題とは切り離し︑物権変動の時期は. 当事者間では当事者意思によって決まると考える︒たとえぽ︑川島説は︑物権変動の内容は契約上の債権関係によっ. て定まるが︑有償契約のもっとも本質的内容は︑対価的給付の相互規定的牽連関係ー﹁同時履行の抗弁権﹂︵五三三条︶ ︵5︶ ーであるから︑売買契約においては︑代金の支払があるまでは所有権が移転しないのが原則であるとする︒また︑舟. 橋説は︑わが国の取引慣行から見て︑特定物に関する物権の変動︑ことに所有権の移転は︑特別の意思表示のないか ︵6︶ ぎり︑原則として︑目的物の引渡︑登記または代金の支払がなされた時に行なわれると解する︒さらに︑広中説は︑. 果実が所有権の一内容であり︑別段の合意のないかぎり引渡があれば買主は果実収取権を取得する︵五七五条一項︶ ︵7×8︶. ことから︑別段の合意のないかぎり︑引渡時に所有権が移転するのが当事者の意思であり︑登記申請に必要な書類の 交付も︑所有権を移転する意思でなされると解する︒.
(5) 以上の学説が︑所有権移転時期を一点に確定することを当然の前提とするのに対して︑最近主張されている︑いわ. ゆる﹁なしくずし的移転説﹂は︑所有権の移転時期を一点に確定することは実益がなく︑理論的にも不可能であると ︵9︶. ﹁物権. する︒そして︑売買のプ官セスにおいて発生する紛争は︑当事者問では契約の内容により︑﹁第三者﹂に対する関係. ところで︑わが民法が採用する意思主義の母法であるフラソスの議論に目を向けると︑フランスでは︑. では対抗関係によって処理されると考える︒. 二. ﹁所有権を移転させる意思﹂ではなく︑所有権移. 変動の時期﹂が物権法の問題として独立に論じられることはほとんどない︒所有権の移転時期の問題は︑むしろ契約 の成立あるいは完成の問題として取り上げられ︑当事者の意思も︑. ﹁所有権移転という効果を生じる契約がいつ成立︵完成︶す. 転的効果を発生させる契約を﹁成立﹂あるいは﹁完成﹂させる意思が問題になっている︒したがって︑フランスで は︑同じ問題が﹁いつ所有権が移転するか﹂ではなく︑ るか﹂というかたちで論じられている︒. この契約成立時確定の問題は︑民法典制定以前から議論されていたが︑今世紀初頭に始まった要式主義の復興. ︵霊お言器ωき8&ま﹃旨巴δヨo︶にともなう契約への国家の介入により︑不動産の取引過程において数多くの行政的. 手続が要求されるようになり︑登記も私署証書ではなく原則として公正証書によってなされなければならなくなって ︵10︶. から急速に議論が発展した︒というのも︑民法典一五八三条が物および代金に関する合意かされた時から売買契約は. 完成すると定めているとはいえ︑このような状況の下では︑物および代金に関する合意がなされた時に売買契約が成. 五. 立すると解するのが必ずしも当事者の意思に合致しないと考えられるようになったからである︒そして︑契約成立時 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶.
(6) 早法六五巻二号 ︵ 一 九 入 九 ︶. 六. の確定に関する議論と同時に︑契約成立前の当事者問の合意の解釈が盛んに論じられるようになった︒売買契約の成. 立を慎重に解するのが当事者の意思であるとしても︑売買契約成立まで当事者間に何の債権贋務関係も生じず各当事. 者は自由に契約から離脱し得ると解することは不当であり︑かえって当事者意思に反すると考えられたからである︒. そこで︑フラソスでは︑売買契約成立前の前契約︵奨壁ぎS畦緯︶に一定の拘束力を認めることが主張されるようにな ︵11︶. り︑それと同時に︑古法以来の伝統のある売買予約を前契約の一つとして見直す動きがでてきた︒売買予約には︑当. 事者の一方のみが契約を締結する債務を負う片務予約︵冥o琶窃8仁巳鄭驚巴︒号お暮o︶と︑当事者双方が契約を締結 ︵皿︶ する債務を負う双務予約︵Ro目88の春巴一品目蝕20号お三〇︶があるが︑このうち︑不動産売買契約の成立を考. える際に重要であるのは︑売買の双務予約である︒というのも︑一方では︑民法典一五八九条が﹁売買の予約は︑物. および代金について両当事者の相互の合意が存在するときは︑売買の効力を有する﹂と定めているので︑フランスで. は︑そもそも売買の双務予約が売買契約と異なる独自の存在たり得るかが議論されている︒他方︑不動産の売買契約. が締結される際には︑まず︑私署証書によって物および代金その他売買契約の諸条件について合意し︑そのなかで︑. 後目公正証書により売買契約を締結する旨定めることがしばしば行なわれている︒公正証書に先行する契約は︑実務. では仮契約︵8εδ巨の︶と呼ぽれているが︑この仮契約ということばは︑公正証書に先立って締結される契約を社会. 事象としてとらえたことばであって︑法律用語ではない︒そこで︑実際には︑売買契約の成立要件についてすでに合. 意がなされている仮契約を︑法的にどのように評価すべぎかが問題になる︒そして︑最近では︑仮契約を売買の予約 と解し︑これに独自の効果を認めようとする学説が有力に主張されるようになっている︒.
(7) 三. これまで︑わが国の学説は︑所有権の移転時期を考えるにあたって︑いつ契約が成立あるいは完成するかを問 ︵13︶. 題にしたことはほとんどなかった︒しかしながら︑目本法においても︑所有権移転時期の問題を解決するには︑売買. 契約の成立時期の間題を再検討することが必要不可欠である︒というのも︑たとえば︑債権契約時説は︑所有権移転. が当事者の意思に反して早く生じ過ぎる点で実際上妥当でないと批判されるが︑この学説を採用することによって生. じる結果の当否は︑債権契約締結時に所有権が移転すると解することの妥当性以前に︑売買契約の成立時期をどのよ. うに理解するかによるところが大きいからである︒また︑債権契約時説は︑わが民法がフラソス法主義を採用するこ. とをその重要な論拠とするが︑わが国の債権契約時説が考える売買契約の成立と︑フラソス法が前提とする売買契約 の成立とが同じ意味をもつのかどうかも検討されなければならない︒. わが国において売買契約の成立時期を再検討するといっても︑もちろん︑売買契約は諾成契約であるから︑抽象的. ︵4 1︶. には︑売主が財産権を移転し︑買主が代金を支払うことに合意することによって売買契約が成立することに異論はな. い︒しかしながら︑交渉期問が長期にわたることが稀ではない不動産売買において︑この合意がどの時点でなされる. かは必ずしも明確ではない︒実際︑実務においては︑契約書の作成や手付金等の授受が重視され︑目的物と代金につ. いて合意しただけでは売買契約が成立するとは考えられておらず︑司法書士による権利関係の調査がおわり︑登記手. 続に必要な書類が整えられて代金が支払われた時に初めて売買契約が成立すると考えるのが一般的国民感情であると ︵15︶ もいわれている︒また︑昭和五〇年代以降の裁判例の中には︑不動産売買契約の成立を慎重に解する判決がいくつか. 七. 現われている︒たとえば︑最高裁昭和五八年四月一九日の判決︵判例タイムズ五〇一号二一二頁︶は︑売買代金︑支 不動産売買契約 の ﹁ 成 立 ﹂ と 所 有 権 の 移 転 ︵ 一 ︶.
(8) 早法六五巻二 号 ︵ 一 九 八 九 ︶. 八. 払方法および付随的条件を取り決めて私署証書を作成した上︑公正証書による契約書を公証役場で作成することが合. 意された事例につき︑また︑東京地裁昭和五九年一二月一二日の判決︵判例タイムズ五四八号一五九頁︶は︑売買価. ︵16︶. 格︑代金支払条件等が合意され︑売渡承諾書が売主から買主に交付された事例につき︑それぞれ売買契約の成立を否. 定する︒これらの裁判例および﹁一般的国民感情﹂を含めた不動産取引実務を考慮するならば︑わが国においても︑. 売買契約の成立に関してフランス法を研究することは︑また︑近年頻繁に取り上げられている︑契約の成立を. 不動産売買契約がいつ成立するかを再検討し︑そのうえで所有権の移転時期に関する議論を再構成することが必要で ある︒. 四. めぐる諸問題の解決を促す︒契約の締結に向かって交渉が開始されたにもかかわらず︑契約が締結されるに至らなか. ︵17︶. った場合の当事者間の法律関係の規律は︑わが国でも﹁契約締結上の過失﹂の一態様としてしばしば論じられるとこ. ろである︒わが国の議論は主としてドイッ法を参照してなされているが︑フラソス法を見ると︑不法行為責任からの. ︵18︶︵19︶. アプ・!チのほかに︑契約成立前に当事者間で締結された前契約を基礎とする契約責任による解決というアプ官1チ. がなされている︒すなわち︑フランスでは︑不動産の売買など︑契約が成立するまでに長期の交渉を要する契約は︑. 当事者の小さな合意の積み重ねによって終局契約の締結に至ると解されており︑交渉が開始されたものの終局契約の. 成立に至らなかったときには︑契約準備段階において締結された前契約に基づく責任が追及され得ると考えられてい. る︒契約責任の基礎となる前契約の内容も様々であって︑たとえば︑交渉の初期段階では︑当事者が誠実に交渉を継. 続する債務を負う契約を締結したと解される場合があるし︑交渉が進むと︑片務予約により当事者の一方のみが拘束.
(9) され︑さらには双務予約により両当事者がともに終局契約を締結する債務を負ったと解される場合がある︒ ︵20︶. わが国においても︑最近は︑契約準備段階の法的責任を考えるにあたり﹁契約の熟度﹂に応じた段階的な責任を認. めるべぎであるとする学説が主張されている︒これらの学説はいずれもまだその方向性を示すにとどまっているが︑. ﹁契約の熟度﹂に着目し. 前契約を基礎に当事者間に契約責任を認めるフランス法の考え方は︑契約の成立を段階的にとらえる点でこれらの学 説と共通する視点をもつ︒したがって︑フラソスにおける前契約の効果を検討することは︑. て契約準備段階の法的責任を考察するにあたって︑契約がどの段階でどれだけ熟するのかを明確にするうえで参考に. なることが多いと思われる︒したがって︑フランスにおける前契約を検討することは︑これまでの学説をさらに一歩. 前進させ︑契約成立前の中間的合意を基礎として︑契約準備段階の実態に即した法的責任を具体的に認めることを可. 最後に︑わが民法は︑五五六条で売買の一方の予約について定めるが︑担保としての一方の予約の議論を除く. 能にすると考える︒. 五. ︵21︶. ︵22︶. ︵23︶. と︑売買予約が研究の対象とされることはわが国ではあまりない︒学説は︑わずかに︑五五六条の予約が停止条件付. 売買であるか︑本来の予約であるかを議論するにとどまるが︑その議論も実益のあるものでなく︑契約当事者間およ. び受益者と第三者との間の法律関係が具体的にどのようになるかが論じられたことはほとんどない︒他方︑五五六条. の起草過程を見ると︑本条がフランスの売買予約に関する議論の影響を受け︑フランス法系に属するベルギー民法草. 案を参考にして起草されたことがわかる︒フランスで売買予約が前契約のひとつとして発達していることは先に述べ. たとおりであるが︑フラソスおよびベルギー法を参考にすることによって︑わが国においても︑五五六条の予約をオ. 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶九.
(10) 早法六五巻二号︵一九八九︶. 考察の対象と構成. プショソ契約として位置づけ︑ その機能的発展を促すことができるであろう︒. 口. 一〇. 予約に代表されるフラソスの前契約を研究することは︑所有権移転時期の問題のみならず︑契約成立過程における. 契約当事者間および契約当事者と第三者との間の法律関係を考察するために非常に重要であり︑目本法に多くの素材. を提供するが︑本稿では︑不動産売買を念頭におき︑多種多様な前契約のうち︑とりあえず︑当事者双方が契約を締. 結する債務を負う双務予約に対象を絞って︑フラソスにおける双務予約論の歴史および現在双務予約が果たしている 実際的機能を考察する︒. 双務予約に焦点を絞るのは次の理由にょる︒すなわち︑フラソスでは︑先に述べたように︑当事者は目的物および. 代金その他売買契約締結の条件に合意すると︑まず︑合意した条項を私署証書に記載して仮契約を締結し︑一定期間. 後に公証人証書を作成してその際代金が支払うという慣行があり︑公証人による権利関係の調査の後公証人証書が作. 成され︑公証人証書が登記されて売買のプ目セスが終了する︒そこで︑社会事象としての仮契約を法的にどのように. 評価するか︑すなわち︑仮契約のなかで当事者が売買契約の成立要件である物および代金に合意しているので︑私署. 証書作成時に売買契約がすでに成立していると考えるか︑公証人証書作成時まで売買契約は成立せず︑双務予約が成. 立しているに過ぎないと考えるか︑あるいは︑何の債権債務関係も生じていないと解するのかが︑私署証書作成後当. 事者の一方が翻意して公証人証書を作成しなかった場合の当事者間の契約関係および︑私署証書作成後公証人証書作.
(11) 成以前に登場した第三者との関係をめぐって議論の対象となっている︒他方︑わが国における不動産売買のプβセス ︵24︶. を見ると︑実務においては︑契約当事者が目的物︑代金︑履行期等について合意して何らかの書面を作成したのち︑. あらためて正式に契約を締結するのが通常である︒このような状況において︑先に挙げた裁判例のように売買契約の. 成立を慎重に解するのが実務および﹁一般的国民感情﹂に適合するとしても︑こうした合意がなされた後︑一方当事. 者が翻意した場合に︑その者が何のサソクションも伴わず自由に契約関係から脱退することを許すのは妥当ではない. ので︑こうした合意にいかなる効力を認めるかが問題になる︒その際︑わが国の不動産売買のプβセスとフランスに. おける不動産売契買約のプβセスを対照させると︑ともに︑目的物︑代金︑履行期等に合意し︑何らかの書面が作成. された段階で︑当事者間の合意にどのような効力が認められるかが︑重要なポイントとなることがわかる︒したがっ. て︑フランスにおける双務予約に関する議論を研究することは︑わが国における不動産売買契約の成立を論じる際の 大きな手がかりとなる︒. ︵25︶. また︑比較法的観点からいっても︑フラソスにおける売買予約と終局的売買契約との関係が︑すでに指摘されてい. るように︑機能的に見るならばドイッ法における債権契約と物権契約の関係と同様に理解し得るかどうかも︑非常に. 興味深いところである︒したがって︑本稿では︑前契約のなかから双務予約を特に取り上げるが︑フランスにおける. 双務予約の意義およびその機能を考察する前提として︑まず︑前契約全体における双務予約の位置づけを理解するこ. 一一. とが必要である︒そこで︑本稿では︑はじめに前契約全体の概要を示し︑研究全体のなかでの本稿の役割について説. 明してから︑フランス双務予約の歴史および現在双務予約が果たしている機能について順に考察する︒ 不動産売買契約 の ﹁ 成 立 ﹂ と 所 有 権 の 移 転 ︵ 一 ︶.
(12) 三. 早法六五巻二号︵一九八九︶. 一二. 四号︵一九六一年︶︑同﹁物権変動の時期に関する判例の再検討︵一×二︶﹂富大経済論集七巻二号︑八巻一号︵一九六一年〜一九六二年︶︑同. ︵1︶学説および判例の整理については︑吉原節夫﹁﹃特定物売買契約における所有権移転時期﹄に関する戦後の判例について﹂富大経済論集六巻. 四年︶︑遠藤n川井目原島H広中H水本目山本・民法︵2︶四五頁︵一九八七年︶など参照︒. ﹁特定物売買における所有権移転の時期﹂民商法雑誌四八巻六号四頁︵一九六三年︶︑滝沢幸代﹁物権変動の時期﹂民法講座二巻一一二頁︵一九八. 注釈民法︵M︶八四頁︑金山正信﹁特定物の売買と所有権移転の時期﹂同志社法学一〇巻五号九八頁︵一九五九年︶︑滝沢章代﹁物権変動におけ. ︵2︶末広厳太郎・物権法上巻六二頁︵一九一コ年︶︑我妻栄・物権法五三頁︵一九五一年︶︑柚木馨・判例物権法総論九二頁︵一九五五年︶︑同︒. 物権変動の理論﹂所収︶など︒. る意思主義・対抗要件主義の継受−不動産法を中心にー︵一︶〜︵五︶完﹂法学協会雑誌九三巻九︑一一︑一二号︑九四巻四︑七号︵一九七六年〜一. ﹁物権行為ヲ論ズ﹂法曹記時二二巻一一号一八頁︵一九ご一年︶︑石坂音四郎・民法研究第二巻三二五頁︵一九一三年︶︑中島玉吉・民法釈義巻之. ︵3︶富井政章・民法原論第二巻物権上五二頁︵一九二三年︶︑岡松参太郎﹁物権変動論﹂法学協会雑誌二六巻一号五八頁︵一九〇八年︶︑横田秀雄. 二上物権篇上三二頁︵一九二七年︶︑石田文次郎・民法大要物権︵一九二六年︶︑末川博﹁特定物の売買における所有権移転の時期﹂民商法雑誌二. 巻四号五四九頁︵一九三五年︶︑勝本正晃・物権法概説上巻五六頁︵一九三八年︶︑山本進一・注釈民法︵6と三五頁など︒. 八頁︵一九八三年︶ ︑ 山 本 ・ 前 掲 一 三 六 頁 ︒. ︵4︶磯村哲﹁末川博著﹃物権法ヒ︵書評︶法律時報昭和三二年二月号一二七頁︑舟橋諄一・物権法八六頁︵一九五九年︶︑稲本洋之助・民法∬九. ︵5︶川島武宜・所有権法の理論︵新版︶二二二頁︵一九八七年︶︒しかし︑川島説は一方で︑売買の目的物が特定している場合には原則として引 五三頁︵一九六〇年︶︶︒. 渡をなすべき時に所有権は移転し︑不動産の取引においては︑代金支払がされていなくとも登記時に所有権が移転すると解する︵川島・民法−一. ︵6︶舟橋・前掲個所︒. ︵7︶広中俊雄・物権法︵第二版︶五四頁︵一九八二年︶︒. ︵8︶ そのほか︑物権行為の独自性を否定し︑登記︑引渡︑代金支払時に所有権が移転すると解する見解として︑吉原・前掲各論文および同﹁所有. 法提要物権法︵第四版︶二九頁︵一九八○年︶︑原島重義﹁特定物売買と所有権移転時期﹂民法の判例四九頁︵一九六七年︶などがある︒なお︑. 権移転時期の論争に寄せてー鈴木説への疑問と私見﹂富大経済論集二七巻三号一五二頁︵一九八二年︶︑磯村・前掲論文一二四頁︑松坂佐一・民 滝沢・前掲﹁物権変 動 の 時 期 ﹂ 四 九 頁 参 照 ︒.
(13) ︵9︶鈴木禄弥﹁特定物における所有権移転の時期﹂契約法大系H八五頁︵一九六二年︶︵﹁物権法の研究﹂所収︶︒同時期に発表された太田知行・. ﹁所有権移転の時期﹂不動産取引判例百選九八頁︵一九六六年︶︑星野英一・民法概論∬三七頁︵一九七三年︶︑湯浅道男﹁物権変動論序説のため. 当事者問における所有権の移転︵一九六三年︶は︑法哲学的視点からこの問題に取り組む︒そのほか︑この説に賛成するものとして︑奥田昌道. の覚え書口﹂愛知学院大学法学研究一九巻四号五七頁︵一九七六年︶︑三宅正男﹁売買による所有権移転の考え方e﹂判例時報九九六号七頁参照︒. ︵10︶ 叫五八三条売買は︑物がいまだ引渡されておらず代金がいまだ支払われていない場合であっても︑物および代金について合意するときから. フランスにおける前契約あるいは売買予約に言及するわが国の文献として︑田村耀郎﹁期待権及び未必の権利についての一考察⇔﹂島大法学. 事者問において完全であり︑買主は︑売主に離する関係で当然に所有権を取得する︒. 周知のように︑売買予約には双務予約と片務予約があり︑当事者双方が売買契約を締結しようと欲して申込をすれば︑相手方は承諾をしなけ. 我妻・債権各論中巻之一二五〇頁︵一九五七年︶︑柚木馨H高木多喜夫・注釈民法αの八六頁以下︒. 鎌田・前掲﹁不動産物権変動の理論と登記手続の実務﹂七四頁参照︒. 一四頁ー東京地裁昭和五九年一二月一二日判決評釈i︵一九八六年︶参照︒. 浦野雄幸ほか﹁不動産取引の実態③﹂NBL一七七号⁝一頁︵一九七九年︶︑鎌田﹁売渡承諾書の交付と売買契約の成否﹂ジュリスト八五七. また︑東京地裁昭和五七年二月一七日判決︵判例時報一〇四九号五五頁︑判例タイムズ四七七号一一五頁︶は︑目的物および代金について合. 不動産売買契 約 の ﹁ 成 立 ﹂ と 所 有 権 の 移 転 ︵ 一 ︶. 二二. 代金額がいかに高額なものであったとしても︑右意思表示について方式等の制限は何ら存しないものである反面︑交渉の過程において︑双方がそ. ﹁売買契約は︑当事者双方が売買を成立させようとする最終的かつ確定的な意思表示をし︑これが合致することによって成立するものであり︑. 意が取り交わされ︑ ﹁不動産仮契約書﹂と題する書面が作成された事例につき︑. ︵16︶. 号一. ︵15︶. ︵皿︶. ︵13︶. りのないかぎり︑双方の予約を含む意昧で双務予約という言葉を用い︑一方の予約を含む意味で片務予約という言葉を用いる︒. 示をする権利をもつものを一方の予約というが︑本稿では︑売買契約を締結する債務が発生する点に重点を置いて売買予約を論じるので︑特に断. 二五四頁︶︒また︑売買予約のうち︑当事者双方が予約完結の意思表示をする権利をもつものを双方の予約︑一方当事者のみが予約完結の意思表. ればならない債務を負うような権利をもつのが双務予約であり︑一方当事者のみがこの権利をもつのが片務予約である︵我妻・債務各論中巻之一. ︵扮︶. 年︶︑鎌田薫﹁不動産物権変動の理論と登記手続の実務﹂︵﹁不動産登記をめぐる今日的課題﹂五七頁︶︵一九八七年︶などがある︒. 七戸克彦﹁不動産物権変動における意思主義の本質−売買契約を中心としてi﹂慶応義塾大学大学院法学研究科論文集二四号一二一頁︵一九八六. 二七巻三号九五頁︵一九八四年︶︑同﹁契約と不確実性⁝フランス法における後悔権と合意の﹃完成﹄﹂島大法学二九巻三号一頁︵一九八六年︶︑. ︵11︶. 当.
(14) 早法六五巻二号︵一九八九︶. 一四. ﹁更に具体的細部事項を定めて正式契約を締結する﹂旨の条項を含む本件仮契約書は︑すでになされた売買契約の確認というような. れまでに合致した事項を書面に記載して調印したとしても︑さらに継続が予定され︑最終的な意思表示が留保されている場合には︑いまだ契約は. と述べて︑. 成立しない﹂. 単なる形式的なものではなく︑後日正式契約を締結し︑正式契約書を作成することにより売買契約を成立させるのが当事者の意思であると判示し. そのほか︑不動産売買契約の成立を慎重に解する判決として︑東京高裁昭和五〇年六月三〇日判決︵判例時報七九〇号六三頁︶︑東京高裁昭和五. て︑契約の成立を否定している︒. 四年一一月七日判決︵判例時報九五一号五〇頁︑判例タイムズ四〇八号一〇六頁︑金融商事判例五八九号一三頁−最高裁昭和五八年判決の原審︶. 決評釈ー︵一九八二年︶︑太田知行﹁契約の成立﹂現代法哲学第三巻二〇三頁︵一九八三年︶︑青山邦夫﹁売買契約の認定について﹂民事判例実務. がある︒これらの判決の分析につき︑鎌田・前掲評釈のほか︑同﹁不動産売買契約の成否﹂判例タイムズ四八四号一七頁ー東京地裁昭和五七年判. の成立﹄をめぐって1現代契約論への﹇考察⇔﹂判例タイムズ六五七号一四頁︑円谷峻・契約の成立と責任八○頁︵一九八八年︶がある︒. 研究第四巻二二二頁︵一九八五年︶︑今西康人﹁契約不成立に関する責任﹂神戸商大論集三七巻一n二号六二頁︵一九八五年︶︑河上正二﹁﹃契約. 三年︶︑上田徹一郎・注釈民法︵13︶五五頁︑森島章﹁﹃契約締結上の過失﹄に関する一考察﹂民事研修二八五号八頁︑二八七号九頁︑二九〇号二. ︵17︶契約締結上の過失に関する論稿として︑北川善太郎﹁契約締結上の過失﹂契約法大系−二二一頁︵一九六二年︶︑同・契約責任の研究︵一九六. 新報八七巻一二号一八七頁︵一九八一年︶︑同﹁契約締結上の過失における債務関係の基礎づけについて﹂比較法雑誌二〇巻二号四七頁︵一九八六. 頁︵一九八○年〜一九八一年︶︑田沼柾﹁締約上の過失責任の法的性質と付随義務についてー最近のわが国の判例の紹介と検討を中心として﹂法学. の傾向と﹃信頼責任﹄論﹂民商法雑誌八八巻二号二六〇頁︵一九八三年︶︑円谷・前掲書ならびに同﹁﹃契約締結上の過失﹄の法理は必要か︑必要. 年︶︑本田純一﹁﹃契約締結上の過失﹄理論について﹂現代契約法大系ω一九三頁︵一九八三年︶︑渡辺博之﹁契約締結上の過失責任をめぐる体系化. ︵一九八三年︶︑同﹁契約締結上の過失﹂判例タイムズ四九九号一〇七頁︵一九八三年︶︑平野裕之﹁フランス﹃契約締結上の過失﹄理論素描1わ. とすれば何故か﹂民法学⑤一二頁︵一九七六年︶︑同﹁契約締結上の過失﹂︵内山開黒木H石川還暦記念﹁現代民法学の基本問題︵中︶﹂一八三頁︶. が国の議論へのプ・官ーグー﹂法律論叢六一巻四・五合併号六六三頁︵一九八九年︶︑同﹁いわゆる﹃契約締結上の過失﹄責任について﹂法律論. 〇〇巻二号︑三号︑五号︵一九八九年︶などがある︒. 叢六一巻六号六一頁︵一九八九年︶︑山本顕治﹁契約交渉関係の法的構造についての一考察−私的自治の再生に向けてーe〜日完﹂民商法雑誌一. 8 ︵ 1︶熊田裕之﹁契約交渉破棄と契約締結上の過失責任﹂比較法雑誌一八巻二号五五頁以下によると︑ドイッ法においても︑契約交渉破棄の場合に.
(15) ついていわゆる契約締結上の過失責任による解決のほか︑拘束力ある申込.予約・条件付権利などの解釈論による解決が試みられている︒鎌田. 前掲﹁売渡承諾書の交付と売買契約の成否﹂一一七頁参照︒. は︑二〇世紀初頭以来まったく顧みられなくなったとしている︒イエーリングの学説がフランスで否定されたという意味ではこの指摘は正しい. ︵19︶平野・前掲﹁フランス﹃契約締結上の過失﹄理論素描1わが国の議論へのプ官官ーグi﹂六七一頁は︑前契約に基づく契約責任を認める学説. なる概念であることに注意しなければならない︒現に︑平野論文の依拠するシュミットも︑前契約の一種である交渉契約に基づき︑契約成立前の. が︑後述するように︑現在学説が契約責任を生じる合意として問題にしている前契約は︑二〇世紀初頭の学説が﹁疑制した﹂黙示の前契約とは異 契約責任を認めている︒. は︑入札契約につ い て ︑. ﹁入札公告−入札ー落札決定という段階を追ってそれぞれの段階ごとに当事者を拘束しつつ法律関係は発展して行く﹂こ. ︵20︶かなり以前に︑川島・法学協会雑誌七九巻一号一〇八頁ー最高裁昭和三五年五月二四日判決︵民集一四巻七号二五四頁︶評釈︵一九六三年︶. 例タイムズ五四三号一〇九頁ー大阪地裁昭和五九年三月二六目判決︵判例タイムズ五二六号一六八頁︶評釈︵一九八五年︶︑河上・前掲判例タイ. とを指摘している︒そのほか︑鎌田・前掲各評釈︑同﹁不動産取引法の再検討﹂土地問題双書⑲二六頁︵一九八三年︶︑松本恒雄・判例評論三一 七号一八八頁︵判例時報一一五一号︶ー最高裁昭和五九年九月一八日判決︵判例タイムズ五四二号二〇二頁︶評釈︵一九八五年︶︑本田純一.判 ムズ六五七号二四頁参照︒. ︵仁井田益太郎.債権. 各論︵早稲田大学明治三六年度講義録︶六二頁︶であると解し︑その後も五五六条の予約は理論上予約契約と解し得ないことを主たる論拠として︑. ︵21︶五五六条の予約を停止条件付売買と解する学説は︑古くは︑本条の予約は﹁只予約なる名称を有する一種の法律行為﹂. 本条の予約は本来の予糺ではなく︑停止条件付売買が契約であると主張する︒たとえば︑鳩山秀夫・日本債権法各論︵上︶︵増訂︶二九五頁︶一九三. また︑柚木・注釈民法⑳九五頁は︑受益者の意思表示のみによって売買の効力が生じるのであるから︑五五六条の予約が真の意味の予約であるは. 〇年︶は︑債務の給付を内容としない債務は債務の性質上考えられないので︑本条の予約の予約者が債務を負うと解することはできないとする︒. ずがなく︑受益者による予約完結の意思表示を停止条件とする売買契約と解さざるを得ないと主張する︒そのほか︑五五六条を停止条件付売買と. 解するものとして︑中島弘道・民法債権法論六八六頁︵一九三二年︶︑末広・債権各論二七〇頁︵一九二〇年︶︑戒能通孝・債権各論︵改訂再版︶. ﹁予約権利者の契約を成立せしめんとする意思表示だけで1相手方の承諾を侯たずしてー契約. 一二五頁︵一九五八年︶︑我妻・債権各論中巻之一二五七頁︑山本進一.債権各論七二頁︵一九七九年︶︑広中・債権各論講義︵第五版︶五〇頁 ︵一九七九年︶などがある︒このうち︑戒能説は︑. を成立せしめる一種の停止条件付契約﹂として︑売買契約の成立そのものが条件にかかると解する︒. 一五. ︵羽︶それに対して︑他の学説は︑五五六条が﹁予約﹂という文言を用いていること︑および本条の予約を予約契約と解することが当事者の意思に 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶.
(16) 早法六五巻二号︵一九入九︶. 一六. 合致することから︑本条の予約を︑受益者が売買完結の意思表示によって本契約を成立させる権利を有する予約契約であると解し︑五五六条の予. ことの説明がつかない︵薬師寺志光﹁売買一方の予約並に本契約成立の時期﹂法学志林二二巻二号八五頁︵一九二〇年︶として︑本条の予約を停. 約を停止条件付売買と解すると︑有償契約の完結の意思表示が停止条件になる場合のみを取り上げて五五六条二項のような規定が設けられている. 二五年︶︑石田文次郎・債権各論講義一九頁︵一九三七年︶︑末川博・法律学辞典第四巻二一八二頁︑同﹁売買一方の予約に関する若干の実際聞. 止条件付売買と解することに反対する︒五五六条をこのように解するものとして︑そのほか︑磯谷幸次郎.債権法論︵各論︶上巻三四一頁︵一九. 法コ一三頁︵一九八二年︶︑松坂佐一・債権各論︵第四版︶七二頁︵一九八二年︶などがある︒. 題﹂民法論集九九頁︵一九五九年︶︑西沢修.民事法学辞典下一六一二頁︵一九六四年︶︑来栖三郎・契約法二四頁︵一九七四年︶︑石田穣.契約. 大八木耐三. 吉田禧彌・民法講義下三五八頁︵一九〇六年︶は︑五五六条の予約は独立の予約ではなく︑したがって﹁売買ノ一方ノ予約トハ即チ. ︵23︶そのほか︑古くは︑五五六条の予約は真の予約ではなく実は売買契約の申込であると解する学説もあった︒たとえば︑巌谷孫三H岡本芳三郎. る代表的なものとして取り上げられているが︵薬師寺・前掲八一頁︑鳩山・前掲二九五頁︶︑中島博士は︑﹁予約トハ本契約トハ別個ノ契約﹂であ. 此取消サル申込ト其性質異ナルコトナシ﹂とする︒一般に︑中島玉吉﹁予約論﹂京都法学会雑誌三巻五号二四頁︵一九〇八年︶はこの説を主張す. るとし︑受益者の予約完結の意思表示によって売買契約が成立する理由として︑予約者の﹁将来ノ本契約二対スル意思モ同時二予約ニヨリ表示セ. また︑最近では︑五五六条の予約を︑契約の申込に付随する申込の拘束力に関する合意ととらえる見解︵三宅正男・契約法︵各論︶一四六頁. ラルル﹂からであると説明しているので︑中島博士をこの説に分類するのは正確ではないと思われる︒. ︵一九八三年︶︶もある︒. ︵鍛︶鎌田・前掲﹁売渡承諾書の交付と売買契約の成否﹂=四頁︒. ︵25︶俸藤道保﹁一九五五年︑フランス不動産登記制度の改正について﹂比較法研究一六号四〇頁注⑤および五〇頁注⑤︵一九五八年︶︑鎌田・前. においては︑債権契約が売買予約であり物権契約が本契約に相当すると明言していることを指摘する︒. 掲﹁不動産物権変動の理論と登記手続の実務﹂七四頁︒なお︑七戸・前掲一四四頁注︵86︶は︑旧民法の下で︑井上正一博士が︑形式主義の立法. 第一章前契約︵麩き言o艮曇︶概論 第一節法概念としての前契約.
(17) 序. 一. 前契約は︑フラソスにおいて︑契約の成立過程に関する教科書あるいは論文の記述のなかにしばしば登場する. が︑その法律用語としての意味はまだ確定していない︒前契約ということば自体︑もともとフランスで生まれたので. ︵1︶ はなく︑ドイッ語の.︑く○署①葺謎︑︑の翻訳として二〇世紀初頭にサレイユらによって紹介されてからフランスでも使. ︵2︶. われるようになったことばである︒ことばとしてはドイッから輸入された前契約が︑ドイッの学説の輸入にとどまら ︵3︶. ずフラソスで独自の発展を遂げたのは︑前契約研究の先駆けとなったルデュックの功績による︒ルデュックは︑ドイ. ︵4︶. ツにおけるくoミR嘗おに関するデーゲンコルプ︑ゲヅペルトらの議論を参照しながら︑これをフランスにおける従. 来からの予約の議論と結びつけ︑終局契約の締結準備を目的とする契約としての前契約の意義を説いた︒このルデュ. ︵5︶︵6︶. ックの見解がきっかけとなって︑前契約に関する議論は︑予約あるいは契約成立以前の合意一般の議論の発展と共 に︑フランス法独自の展開を遂げている︒. 二 現在︑前契約は大ぎく分けて三つの意味で使われているが︑狭い意味で用いられるほど︑当事者間により拘束 的な契約関係が生じる前契約を指す︒. 前契約は︑まず︑最広義には︑将来の契約を準備するすべての契約︑すなわち︑当事者間に賃権債務関係を生じさ. せる仮の契約全般を指す︒讐蓉聾δP基礎的合意︵88&儀︑℃ユぎ帯o︶などの交渉契約︵8昌昌98℃9壱毘9︒8霞9 ︵7︶. ︵8︶. 8泳鴨9豊呂︶もこの最広義の前契約に含まれる︒つぎに︑狭義の前契約は︑将来の契約を準備する契約のうち︑. 一七. 当事者の一方または双方が予め定められた条件で終局契約を締結する債務を負う契約を指す︒優先約款は狭義の前契 不動産売買契約 の ﹁ 成 立 ﹂ と 所 有 権 の 移 転 ︵ 一 ︶.
(18) ︵9︶. 早法六五巻二号︵一九八九︶. 一八. ︵10︶. 約に含まれるが︑交渉契約はこの意味では前契約ではない︒さらに︑最狭義の前契約は予約を意味する︒その場合︑. 予約は片務予約と双務予約の二つを指すが︑双務予約の独自性を認めない学説にとっては︑前契約は片務予約と同義 語になる︒. ︵11︶. このように︑ひとくちに前契約といってもその内容は様々である︒そして︑これらの前契約のうち︑契約当事者が. 互いに終局契約を締結する債務を負うという意味で売買契約にもっとも近いのが双務予約である︒本稿では︑売買契. 約の成立と所有権移転との関係を中心的に検討することを目的とするので︑先に述べたように︑これらの前契約のな. かから︑売買契約にもっとも近く︑それゆえその独自性が大きな間題となる双務予約に対象を限定する︒しかしなが. ら︑双務予約が売買契約にもっとも近接する前契約であることを理解するためには︑その前提として︑他の前契約. の︑売買契約の成立過程全体における位置関係を把握することが必要であると考える︒そこで︑本章では︑双務予約. に関するフラソスの議論にはいる前に︑前契約の右の三つの範疇に属する交渉契約︑優先約款︑片務予約について︑. それぞれに固有の間題点はとりあえず置き︑売買契約成立過程におけるその位置づけおよび相互の関係に︑本稿の目. 交渉契約. 的に必要な限度で簡単に触れる︒. 第隔款. 一 交渉契約という概念は日本ではほとんど知られていないので︑ まず︑交渉契約とは何かについて一般的な説明 をすることが必要であろう︒.
(19) 交渉契約とは︑交渉段階における当事者間の合意の総称であって︑終局契約を締結する債務以外の債権債務を当事. 者間に発生させる様々な契約が含まれ︑交渉契約として取り上げられる契約も︑その分類の仕方も︑学者によってか. ︵12︶ なり異なる︒たとえぽ︑シュミットは︑交渉する債務を負わせる契約として︑交渉契約︵︒8賃98泳α駿09蝕8︶およ ︵13︶ ︵14︶. ︵15︶. ︵16︶. び優先約款を︑交渉を組織する︵o茜き一ωR︶債務を負わせる契約として︑基本契約︵8暮寅ぎ&8︶︑部分契約︵8馨﹃暮. 冨註9︶︑一時契約︵8導鎧#o旨o邑8︶を挙げる︒また︑ムス冒ソは︑来たるべき契約を準備する予備契約として︑ ︵17︶. ︵18︶. 基礎的合意︵碧8a号冥β息需︶︑基本契約︑優先約款を挙げるほか︑当事者を交渉期間中拘束する債務を生じる契 ︵19︶. 約として︑一時契約と暫定契約︵8馨量け冥o≦8ぎ︶を挙げ︑第三の範疇として部分契約を想定する︒そのほか︑ゲ. スタソは︑基礎的合意と部分契約の二つを予備契約として取り上げる︒これらの例からもわかるように︑交渉契約. は︑まだ確定した内容をもつ概念ではなく︑交渉契約とされる契約相互の関係も明らかではない︒また︑個々の交渉. 契約から生じる債務の内容についても争いがある︒これら一つ一つの交渉契約に関する議論を検討することは︑契約. の成立過程を明らかにするために大変重要であるが︑本稿は不動産の売買を考察の対象としているので︑ここでは︑. 私署証書による仮契約が締結される以前の不動産売買契約の交渉段階でもっとも広く問題になる窟琴幹9一9および基 ︵20︶. 礎的合意をとりあげて若干の説明を加え︑他の前契約との関係を見る︒. ︵21︶. 二 ℃琶9呂9と基礎的合意は︑一般的にはほとんど同じ意味で用いられ︑交渉を継続する債務を生じる契約と理 ︵22︶. ︵23︶. 解されている︒℃臣99一呂は︑前契約と同様ドイッ法からフラソスに導入された概念であり︑陰琴鼠ぎpについて規. 一九. 定するプβイセソ一般ラソト法第一部第五章一ゴ○条︑一二五条︑ザクセン民法典七八三条︑八二七条に関する議論. 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶.
(20) 早法六五巻二号︵一九八九︶. ︵24︶. ︵25︶. 二〇. とともに︑二〇世紀初頭にルデュックによってフランスに紹介された︒ルデュックは︑冨琴鼠ぎ昌を認めることによ ︵26︶. り︑契約成立過程の初期段階から当事者間に契約責任を肯定し得ることを指摘したが︑讐琴聾一8が学説の活発な議. 論の対象となったのは︑破駿院社会部一九五八年三月二四日の判決が契約交渉中の当事者間に予約ではなく﹁基礎的 ︵27︶. 合意﹂が結ばれたと判示したのをきっかけとして︑判決のいう﹁基礎的合意﹂の解釈をめぐる議論が従来の℃§9呂自 ︵28︶. に関する議論と結びついて論じられるようになってからである︒とくに︑リークが︑それまで明らかでなかった. ℃巨9慧9の理論構成を明確にすることを試みてから︑唱毯9豊自は交渉を継続する債務を生じる契約として学説の 注目を浴びるようになった︒. ︵30︶. リークによると︑を琴§凶8は︑狭義には︑当事者がすでに合意した交渉事項を確定するために作成される書面の ︵29︶ ことであるが︑広義には︑継続的段階︵8蓉ぽωω蓉8ωω貯窃︶を通じた契約の成立を意味し︑破毅院社会部一九五八. 年三月二四日判決は広義のをぎ§一9を認めたものと評価される︒彼は︑申込と承諾によって契約が成立するという. 古典的図式は︑要式主義の要請などにより複雑化された契約締結の現実に適合しないと考える︒当事者は交渉の間︑ ︵31︶. 契約を構成すべき様々な要素について少しずつ合意をするのであり︑契約は交渉から生じる多くの契約によって成立. し︑狭義の℃毯9豊9はこれらの断片的契約を記載する書面である︒そして︑陰ぎ聾一8から生じる債務は終局契 ︵32︶︵33︶︵34︶. 約を締結する廣務ではなく︑交渉を継続する債務である︒当事者は︑すでに合意された要素を書面に記載することに. より︑契約の締結に達するために交渉を誠実に行なう債務を負う︒しかし︑℃§9呂9の債務不履行が生じた場合に. は︑契約から生じる債務は一般に強制履行の対象になるとはいえ︑℃巨︒鼠試窪から生じる債務は強制履行され得ず︑.
(21) ︵35︶ 債権者は損害賠償を請求し得るに過ぎない︒. このリークの見解が基礎となって︑現在では︑崔9翼一8︑基礎的合意︑あるいは交渉契約とその名称は学説によ ︵36︶︵37︶︵38︶. り様々であるものの︑多くの学説が交渉過程における一定の合意から交渉を継続する債務が生じることを認めること に賛成し︑交渉を誠実に行なわない者は債務不履行による損害賠償を負うと解している︒. このように︑℃昌9呂自の成立が認められると︑当事者間に終局契約の成立以前から契約関係が生じ︑両当事者は. 互いに交渉を継続すべき契約上の債務を負う︒したがって︑讐琴§一9は︑当事者間の契約責任を契約成立以前に遡. って拡大させる意味をもつ︒しかしながら︑℃養9豊8の成立時に終局契約の一定の要素が合意されているにもかか. わらず︑両当事者はいずれも終局契約を締結するか否かについては完全に自由であり︑契約の相手方の選択について. も自由である︒そして︑この点が︑優先約款や予約と異なる窟馨藝一8の特徴である︒. 優先約款は︑オブリ匹ローによれば︑ ﹁所有者が自己の物を売却することを決めるときに︑受益者に売却の申. 第二款 優先約款 一 ︵39︶. 込をする債務を負い︑第三者によって申込まれた代金を受益者が承諾するならば受益者を優先させる債務を負う約束. 一コ. 優先約款について︑売買契約の成立過程との関係でまず問題になるのは︑優先約款の法的性質である︒なぜな. ︵マo旨霧器︶﹂である︒実際には︑要約者が受益者に対して申込をする債務は︑優先約款の目的物について第三者から ︵如︶ 買受けの申込がなされることを条件として生じる旨の条項が優先約款のなかで定められることが多い︒. 二. 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶.
(22) 早法六五巻二号︵一九八九︶. ︵41︶. ︵42︶. ︵賂︶. 二二. ︵44︶. ら︑これをどのように解するかによって︑前契約としての優先約款の理解の仕方が異なってくるからである︒ ︵妬︶. ︵妬︶. ︵々︶. この問題に関して︑学説は二つに分かれる︒③まず︑ラルゥ︑モラソディエール︑アメル︑ゴベール︑マルティU. ︵51︶. ︵銘︶︵狙︶. ︵52︶. ︵53︶. ︵斑︶. レイノーらは︑優先約款を停止条件付片務予約と解する︒停止条件の内容は必ずしも明確にされていないが︑要約者. ︵50︶. が目的物を売却することであると一般に理解されている︒. ︵駈︶. ︵56︶. ㈲これに対して︑ヴォワラソ︑バルテ︑シュミット︑ベナヅク・シュ︑ミット︑マβリーHエネス︑コラール・デュ. ティユ1ル︑ジf一ネらは︑優先約款は要約者に目的物を売却しない自由が存する点で片務予約と決定的に異なるの. ﹁売買予約は予約者の側の新たな意思表示なしに実現され得. で︑優先約款を条件付片務予約に解消させることはできないとし︑優先約款を独自の前契約と構成する︒優先約款と 片務予約との相違について︑たとえば︑ヴォワラソは︑ ︵57︶. るので︑すでに輪郭の描かれた︵象き︒冨︶売買契約であるのに対し︑優先約款では︑売買契約の将来の締結が決まっ. ている︵冥蕊轟段︶わけでは全くない︒﹂と述べる︒また︑コラール・デュティユールは︑契約の成立要件は条件にな. り得ず︑要約者の売却の意思は契約の成立要件であるから︑これを条件と解することはできないとして︑優先約款を ︵58︶. 停止条件付売買と解する学説を批判し︑優先約款は︑片務予約とは異なる独自の前契約であり︑ただ︑要約者による. 申込によって優先約款の債務が履行されることにより︑片務予約に転換すると考える︒これらの学説によれば︑優先 ︵59︶. 約款は受益者に優先権を与えることをその本質内容とする独自の契約であり︑要約者は終局契約を締結する債務では なく︑要約者が目的物を売却するときは受益者を優先させる債務を負うことになる︒. これら二つの学説を比較すると︑③説の理解では︑優先約款は片務予約のひとつに過ぎないが︑㈲説では︑優先約.
(23) ︵60︶. 款は︑終局契約を締結する燈務を発生させず︑要約者に終局契約を締結しない自由を残す点で︑予約と明確な一線を. 画する前契約と解される︒すなわち︑㈲説によれば︑優先約款は当事者間に予約ほど強い契約的拘束力を生じさせな ︵61︶. いが︑要約者が契約の相手方を選択する自由には制限が加えられていることから︑予約と交渉契約との中間に位置す. 片務予約と優先約款との関係に関連してつぎに問題になるのは︑優先約款の公示方法とその効果についてであ. る前契約と理解される︒. 三 る︒. 後述するように︑片務予約は一九五五年のデクレ三七−一条により任意に公示することができるに過ぎない︵任意. 公示によっては対抗力を取得することがでぎない︶︒ところが︑優先約款については条文の定めがないので︑その公 ︵62︶ 示方法について争いがある︒この点につき︑破段院第三民事部一九七一年三月四目の判決は︑優先約款は一九五五年 ︵63︶. のデクレニ八条二号に定められた﹁処分権の制限﹂に該当するので義務的公示の対象となり︑したがって︑同デクレ. 三〇条一款三項により︑受益者は優先約款を公示することによって自己の権利を第三者に対抗し得ると判断した︒こ. の判決は大きな反響を呼んだが︑判決の評価は賛否両論である︒まず︑本判決に反対する学説として︑たとえぽ︑ダ. ゴは︑その評釈のなかで︑優先約款は条件付片務予約であり︑三七−一条は一般規定である二八条二号に優先する特. 別規定であること︑土地公示は二一年を超える賃貸借等の例外を除きあくまで物権に関するものであるから︑二八条 ︵64︶︵65︶. 二号に定められた処分権の制限は物権の制限でなければならないことなどを理由として︑優先約款は三七−一条によ. 二三. って公示され得るに過ぎないと主張する︒それに対して︑本判決に賛成する学説は︑二八条二号に定められた土地公 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶.
(24) ︵㎝︶. 早法六五巻二号︵一九八九︶ ︵66︶. ︵68×69︶︵70︶. 二四. 示の対象を物権に限定して考えるべきではなく︑土地公示は契約当事者の権利保護のために機能すべきであるとし. て︑優先約款の受益者の権利保護を強化した本判決を積極的に評価する︒この問題は︑優先約款から生じる権利の性. 質をどう考えるか︑また︑優先約款の受益者の第三者に対する地位をどの程度保護すべきか︑さらには土地公示のあ. り方全体に関わる重要性をもつ︒学説は︑一九五五年法の解釈論のレベルでは対立しているものの︑立法論も含める. と︑全体に優先約款の公示により受益者の権利に対抗力を付与することに好意的なようであるが︑この問題は前契約. 全体の対第三者効の問題として別個に検討するのが望ましいので︑ここでは問題点の指摘にとどめる︒. 片務予約︵オプション契約︶. 片務予約は︑当事者の一方が終局契約を締結する債務を負う契約である︒受益者が終局的売買契約締結の意思. 第三款. 一. 表示︑すなわちオプショソ権の行使をすることにより売買契約が成立することから︑オプション契約︵8艮嵩幹血.. o冨8︶とも呼ばれる︒片務予約は︑実際上もっとも利用度の高い前契約として︑不動産売買に限らずあらゆる領域 ︵72︶ ︵71︶ で様々な態様で用いられるが︑時には脱法的手段として悪用されることもある︒実務上は︑受益者がオプション権の. 対価を反対給付として支払うのが通常である︒この対価は︑具体的には︑予約者がオプショソ権を行使し得る期間の. 間目的物を処分できないこと︑すなわち︑資本の固定化に対する対価であり︑それゆえオプション契約の対価は固定 ︵73︶. オプション権は︑自己の意思表示のみにより契約を成立させることのできる権利である︒その法的性質を通常. 化補償︵一︑置号目昌竃餌︑ぎ目oげ簑の蝕暮︶とも呼ばれる︒. ニ.
(25) ︵符︶. ︵拠︶. の債権と解する学説もあるが︑債権と物権との中間的権利と位置づけようとする学説が現在では有力に主張されてい. る︒後者の見解は︑オプショソ権をより物権的に構成することにより︑受益者の権利の義務的公示を可能にし︑それ. によって︑片務予約の目的物をあとから二重に譲受けた第三者から受益者の権利を保護することを狙っている︒実. 際︑一九五五年のデクレでは︑片務予約は三七−一条により任意に公示することができるが︑受益者は片務予約を公 ︵拓︶ 示しても︑オプション権を善意の第三者に対抗することはできず︑現行法の下では︑オプション権の保護が不十分で. あることがしばしば指摘されている︒もっとも︑オプション契約の存在につき悪意の第三者は︑たとえオプショソ契 ︵77︶ 約が公示されていなくとも︑先行するオプショソ契約に対抗できないとするのが確定した判例である︒. 三 このように︑片務予約においては︑予約者である一方当事者のみが契約関係に拘束されており︑その意味で︑. 片務予約は前契約全体においては優先約款と双務予約との中問に位置する契約であるといえる︒片務予約の前契約と. しての特徴は︑受益者のオプション権行使により終局的売買契約が成立するところにあるが︑オプショソ権の法的性. 質およびその公示のあり方をめぐる議論は︑現在︑片務予約のみならず他の前契約の受益者の権利保護︑とりわけ前. 契約締結後に前契約の目的物を二重に取得した第三者に対する受益者の権利保護がいかにあるべきか︑という議論に 発展しつつある︒. 第二節 双務予約の位置づけ. 二五. 双務予約は︑両当事者が終局契約を締結する債務を負う契約である︒ 両当事者は終局契約の締結に向かって完 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶.
(26) 早法六五巻二号︵一九八九︶. 二六. 全に拘束されており︑その意味で︑双務予約は終局契約にもっとも近接する前契約であるといえる︒しかし︑双務予. 約成立時に両当事者が終局契約を成立させる意思をすでに表示していることから︑反対に︑諾成契約について双務予. 約が存在し得るか︑存在し得るとしても︑双務予約を独自の前契約と認める意義があるのかどうかが問題になる︒と. りわけ︑売買予約については︑民法典一五八三条によって︑物および代金に関して合意された時から売買契約は当事. 者間で完全であって︑買主に対する関係で売主から所有権が移転すると定められ︑一五八九条によって︑物および代. 金に関する両当事者の相互の合意の存する予約は売買の効力を有すると定められていることから︑双務予約の独自性 がしばしば議論されてきた︒. ︵78︶. 双務予約の独自性は︑実務上︑不動産売買契約を中心に締結される仮契約の評価に関して問題となる︒仮契約は︑. 通常は私署証書によって締結され︑先にも述べたように︑多くの場合︑仮契約のなかで︑後日公正証書が作成される. 時に代金全額が支払われ︑所有権が移転することが定められる︒そこで︑このような場合に︑所有権の移転時期に関. する条項を民法典一五八三条との関係でどのように解釈するかが議論される︒すなわち︑私署証書作成時に売買契約. が成立して即時に所有権が移転するのか︑所有権移転または契約の効果発生が公正証書作成時まで停止されると考え. るのか︑あるいは︑終局売買契約とは異なる独自の契約である双務予約が私署証書作成時に成立し︑公正証書作成時. したがって︑双務予約は︑不動産売買がいつ成立するのか︑そして︑日本において指摘されるように︑予約と. に終局的売買契約が成立すると考えるべぎかが︑学説あるいは裁判上激しく争われている︒. 二. 売買契約とがそれぞれ債権契約と物権契約に対応するのかどうかを考察するのにもっとも適した素材であるといえ.
(27) る︒そこで︑他の前契約の研究は将来の課題とし︑本稿は売買契約にもっとも近接する前契約である双務予約を︑不. ︵79︶. 動産売買契約の成立とその効果である所有権移転の関係という観点から考察する︒なお︑本稿の検討対象につき︑さ. らに二つの点を付け加えておく︒第一に︑双務予約が締結される際︑一方的解除権︵頴象︶が定められる場合がある. が︑一方的解除権条項付双務予約は︑通常の双務予約と区別して論じられるのが一般的であり︑また︑一方的解除権 ︵80︶ 条項は双務予約に固有の間題ではなく︑片務予約あるいは売買契約にも挿入される︒したがって︑この問題は︑一方. 的解除権付契約という項目の下でまとめて考察するのが適切であると思われるので︑本稿の検討対象からはひとまず. 除外する︒第二に︑双務予約の効力の問題は大ぎく分けて︑当事者間の効力の問題と︑第三者に対する効力の問題が. あるが︑本稿では︑当事者間の効力を中心に検討する︒というのも︑予約あるいは前契約の第三者に対する効力の問. 題は︑集積した判例を基礎として議論がなされているが︑裁判例において争われているのは︑主として片務予約と優. 先約款に関してであるので︑これらの裁判例を分析するには︑片務予約および優先約款に関する議論をまず検討しな ︵組︶. ければならないと考えるからである︒また︑予約の第三者に対する効力の議論は︑日本法との関係では︑いわゆる二. 重譲渡の問題と密接な関連性をもつ︒すなわち︑すでに指摘されているように︑日本法においていわゆる二重譲渡と. されるケースのほとんどは︑フラソスでは予約と予約︑あるいは予約と売買契約の優劣が争われるヶースである︒し. たがって︑第三者に対する効力の問題は︑双務予約について個別に検討するのではなく︑前契約一般の対第三者効の. 二七. 問題として︑日本における二重譲渡と比較しながら検討するのが望ましい︒したがって︑本稿では︑第三者に対する 効力 の 問 題 は 必 要 最 小 限 に 言 及 す る に と ど め る ︒ 不動産売買契約の﹁成立﹂と所有権の移転︵一︶.
(28) 早法六五巻二号︵一九八九︶. 前契約を予約と同義に用いている︒ 夢駐︒勺賃一︒︒∪おO曽. 二八. 毘︒. ︵1︶閃・ω巴一鉱=o即い餌冨80昌鍔露凱泳℃菰oo暮ロ①=o妙b3も8儀︑信ロo鋒ロ鮎①菰8暮P勾o︿.仲はB●血撃9く.ご03℃竜09ここで︑サレイユは︑. ︵2︶卑一︒馨①い①象PU霧帥く帥箏8暮量. o腎ひ冨﹃ピ&=9. ︵3︶U①αq①穿o登N鐸零ぼ︒ε旨<o讐︒葺鼻︾亀毘.斧一︒︒o ︒3幹ご09需芦N畦蒙ぼ①αR冨9麟号︒8霞魯︒&9寄く蒼ぼ. ルデュックは︑箕oヨo留oという表現からは︑契約がすでに締結されていることおよび︑債権債務を生じるゆえに単なる交渉とは区別される. 一ト一c o認噂ω●直OO旧︾&oび閃$一8旨量gq&くo暑R貸農︾冒①こび︒ω傷●ω一り一〇 〇〇bo︶ω・旨ρ. ことを引き出すことができないので︑震oe霧器よりも<o嵩①旨品の訳語である黛き学8ロ霞簿という表現の方がその準備的・債務的性質を. ︵4︶. マ官リー. o曾幹︵ただし︑この部分 チ評o↓o畦9おo︒9β︒器G. エネスおよびコラール・デュティユ!ルの分類による︒℃露ぎ需ζ巴壁鼠①曾ζ賃o旨︾旨雰ゆい①の8暮β富ω忌9き解這o︒9づ︒. いられている︒H①自蟻PoP9〜Poo噂50仲①どP刈ト. 表すのに適しているとする︒したがって︑ルデュックが前契約として想定しているのは実際には予約であり︑讐暮$瓜8は前契約と区別して用. ︵5︶. は一九八五年の刊行の際には削除されている︒以下では︑原則として一九八五年に刊行されたものを引用するが︑特に一九八三年のテーズを引用. 8ト隼き8冒Oo=貧け−U暮旨〇三︸い窃8旨声錺震ひ℃貸象9奉卿﹃奉耳o山︑一旨奪窪ぴ一①. と略す︒︶ する場合には︑Oo一一薗旨ーU暮罠o巳︶8も劉ふ伽﹂OGooG. ︵6︶そのほか︑特殊な使い方として︑イエーリングの契約締結上の過失に関する学説と関連して︑誠実に契約する債務を負わせる黙示の契約が交. ︒三一ρ. ︒︒ふ盆●︶一︒貫づ︒一一〇 ︒迄8目鋤ω畠醤聾. 一霧言&8号一鈴貯暮ε誌8馨声︒言︒一一︒﹄︒︿●艮ヨ己吋●9く︐一︒醤も蕊も︒9一︒目⑪饗窪5①茸. 渉当事者間に擬制され︑これが前契約と呼ばれたり︵頃窪二9ま象ζ器o讐儀9︾&み↓毒P↓量寡酔げ8ユ2Φ禽震&20お呂o霧卑ぴ鋒鼠. ︒. 一〇〇. も﹄轟︶︑あるいは︑期限付の申込をした者はその期限経過まで申込を撤回しない黙示の合意をしたと主張するドゥモ官ンブの学説につき︑. H︑ひくoξ畠8αo一卑話呂o冨ま旨ま箕ひ8簿量o言①一一〇窪象o響坤讐O践ω9一昌国<o一葺一8αo鼠おω8器一瓢簿仙念一一〇嘗①=o窪象o騨8目冨泳. 膿レcoOc oも︒Roヨ●智8琴の固o霞g︸o輩白蓉>昌R計■①ωoび犀σq暮一〇7. 一. 8暑・ひ儀. 一〇〇〇9ロ︒置o o 蜜βまω. この黙示の合意が煎契約と呼ばれることもある︵ただし︑ドゥモ官ンブ自身は前契約という用語を用いてはいない︶︒O﹃毘霧Uo彗o一〇百びρ. P訂8づ賃辞謡3這c︒o︒︶づ︒卜o墨なお︑平野・前掲﹁フランスにおける﹃契約締結上の過失﹄理論素描iわが国の議論へのプロ官ーグ﹂法律. Oo賃の血ΦOoαΦ280坐op. を認めることは擬制にほかならず︑事前契約に基づく契約責任を肯定する学説は二〇世紀初頭以来まったく顧みられなくなったとされるが︑平野. 論叢六一巻四・五合併号六六九頁︑六七一頁は︑これら特殊な意味で用いられる前契約を指して︑終局契約成立前に﹁事前契約︵餌惹韓6曾貫魯と. 駐お呂.
(29) 概念であることに注意しなければならない︒. 論文で扱われている事前契約はまさに特殊な︑擬制による前契約であり︑フランスで通常契約責任の基礎として挙げられる前契約とはかなり異な. 旨ω魯巨象い.薯◎一旨一9α︒ざ8︒︒b8ω一匿騨ひ鷺ぴ8葺寅︒ε︒一一︒9昏o胃ヰき禽富9唱●一紹⑦け. コラール・デュティユールの﹁予備契約︵8昌需暮質9費90ぼ①︶という概念も︑これに近い︒コラール・デュティユールは︑売買の予備契. 8・ごo︒o G り⇒︒謡8霧卯. マ・りIHエネスは︑優先約款は狭義の前契約に含まれるとするが︑後述のように︑優先約款を交渉契約の一つとして解する学説もあるの. 不動産売買 契 約 の ﹁ 成 立 ﹂ と 所 有 権 の 移 転 ︵ 一 ︶. マGoO9幹などがあるo. 5︒一曽も︒嵩伊≧負毒亀一︒件津きゆo冒↓︒⇒ρい霧oび凝盆op蒔盆. 二九. 一㊤︒︒①も︒一〇ト審き霊8a︸↓Φ魯三ρま8鼠く︒旨①儀︑巨旨Φ5一9. ︒り. ︵10︶O雪冒30P魯←ロ︒一㎝P前契約を予約と同義に用いるものとして︑O筈二巴竃貧29空R8閃錯尽&一ピ霧o露㎡豊oPN盆こ一〇〇︒G. で︑優先約款の位置づけは微妙である・蜜蝕壁昌09>旨貫び90劉. ︵9︶. 窪ρ一〇〇〇㎝も︒㎝①件ω9. 渉は排除されるので︑予備契約は交渉契約とも異なる概念であるとする︒Oo一再マU呂一一①8い88馨声富鷺9賛緯oぎ帥鼠諾韓①傷.誉目窪・. ていないという意味で予備契約に含まれるからであるとする︵反対︑Oひ艮器∬8怠r昌︒一①㎝︶︒また︑予備契約が締結されると︑その段階で交. 成されるのに対し︑停止条件付売買は成立した段階では︑終局的売買契約の効果を発生させないので︑まだ契約当事者の目的が最終的に達成され. コラール・デュティユールは︑停止条件付売買契約を予備契約と解する理由につき︑当事者の目的は売買契約の成立時ではなく効果発生時に達. 売買の双務的前契約+公正証書の署名等n終局的売買契約. 売買の片務予約+オプション権行使目売買の双務的前契約. 優先約款+売買の申込聾売買の片務予約. ような公式によって表していた︒Oo一一畦?U5筐o芦oP9侍. 先約款︑片務予約︑双務予約︑停止条件付売買契約の順番で終局的売買契約に近づくが︑彼は一九八三年のテーズのなかで︑前三者の関係を次の. 契約とは︑具体的には︑優先約款︑片務予約︑双務予約︵コラール・デュティユールによれば双務的前契約︶︑停止条件付売買のことを指し︑優. 約を︑売買契約の実現を準備することを目的とし︑将来売買契約によって生じる権利義務とは異なる権利義務を発生させる契約と定義する︒予備. ︵8︶. の●. ︒口Oo︒Oも﹄躍9ω 一.︒冨三ρ一・o. ︵7︶ζ陣臓冨Oひ三器計↓沫o膏oq魯曾巴鎚Φω麩き?8β賃讐の窪繕o禅質一<ρ昏ゆω①評ユω戸這G ︒90ぼ凶終き園誉窪旨︒計ピ窃oぴ語&oβ. る.
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