国立国語研究所学術情報リポジトリ
国定読本用語総覧2 : 第二期『尋常小学読本』明治 四十三年度以降使用 あ〜て
著者 国立国語研究所
ページ 3‑882
発行年月日 1987‑03
シリーズ 国立国語研究所国語辞典編集資料 ; 2
URL http://doi.org/10.15084/00001615
○﹃尋常小学読本﹄明治四十三年度以降使用 上二期﹁あ〜て﹂
国立国語研究所編
National Language Research Institute
The
◎
1987刊行のことば
国立国語研究所は︑その事業項目として国語辞典の編集を掲げている︒その一つは歴史的辞典であるが︑日本語の展開
発達を記述する基礎をなすものとして︑我々は日本大語誌とも名づけるべきものを構想した︒文献の上にたどられる限り
の日本語の足跡を︑用例として収集し整理しようとするものである︒
時代をかりに三百年︑百五十年︑五十年等に区切って見るとき︑一八五〇年以後の百五十年は︑日本語が近代的発展を
とげた︑著しい一時代である︒そして一九〇一年からの五十年は︑現代語の基礎の確立した時期と見ることができる︒
我々は︑まずこの五十年にしぼって︑用例収集の作業にとりかかった︒ここに取りあげる六種の国定読本は︑ちょうど
この時期に使用されたものであって︑この時期の国語教育の基本教材であり︑その用語は︑それ自身発展しつつ︑国民的
な現代語の成立の基礎をなすということができる︒
この作業は︑もともと︑この時期の用語を採集する方法の検討のために︑試験的に行ってきたものであるが︑その作業
の結果は︑現代言語生活の基幹である︑いわゆる標準語の確立の経過を示す基本的な資料となるものと考えられる︒
ここで国定読本というのは︑明治三十七年四月から昭和二十四年三月までの間に使用された文部省著作の小学校用国語
教科書六種のことである︒その六種を使用時期に従って示すと次の通りである︒
第第第第第第
六五四三ニー・
再築期期期期
明治三十七年より使用﹃尋常小学読本﹄︵今日イエスシ読本と俗称︶一〜八
明治四十三年より使用﹃尋常小学読本﹄︵今日ハタタコ読本と俗称︶巻一〜十二
大正七年より使用﹃縛韓国語読本﹄︵今日ハナハト読本と俗称︶巻一〜十二
昭和八年より使用﹃小学国語読本﹄︵今日サクラ読本と俗称︶巻一〜十二
昭和十六年より使用﹃ヨミカタ﹄一〜二﹃よみかた﹄三〜四﹃初等科国語﹄一〜八︵今日アサヒ読本と俗称︶
昭和二十二年より使用﹃こくご﹄一〜四﹃国語﹄第三学年︵上下︶第四〜六学年︵各上中下︶︵今日みんな
いいこ読本と俗称︶
第一期国定読本については︑﹃国定読本用語総覧1﹄︵第一期 あ〜ん︶をさきに刊行したが︑さらに第二期国定読本に
ついて国立公文書要所蔵本を用いて作業を進めた結果︑ここに編集を完了したので︑﹃国定読本用語総覧2﹄及び﹃国定
読本用語総覧3﹄の二分冊で刊行することにした︒二分冊にするのは義務教育年限が第一期当時の四年から六年に延長さ
れ︑したがって六年間の教科書として内容が倍以上になっているためである︒このたび刊行するのはその第一分冊﹃国定
読本用語総覧2﹄であるが︑これには第二期の用語﹁あ〜て﹂の部を収める︒
この﹃国定読本用語総覧2﹄の編集作業及び諸本の調査にあたったのは︑主幹飛田良文︵言語変化研究部長︶︑研究員
高梨信博︵兼任︶︑調査員林大︵前所長・名誉所員︶︑見坊豪紀︵元第三研究部長︶ほか非常勤調査員六名である︒
国定読本の諸本の調査にあたっては次の機関・大学及び諸氏のお世話になったことを記して謝意を表する︒
国立公文書館︑国立教育研究所附属教育図書館︑東書文庫︑福岡県教育センター︑藤沢市文書館︑横須賀市教育研究
所︑愛知教育大学附属図書館︑滋賀大学附属図書館教育学部分館︑筑波大学学校教育部︑奈良女子大学附属図書館︑
福岡教育大学附属図書館︑文化庁文化財国語課主任国語調査官安永実︑同国語調査官西田絢子︑滋賀大学教授鈴木
博︑岐阜大学助教授梶山雅史︑福岡大学助教授安井篤︑筑波大学専任講師塩澤和子
また︑前巻にひきつづき印刷刊行を引き受けられた三省堂にも謝意を表する︒
昭和六十二年三月三日
国立国語研究所長
野 元 菊 雄
説 (3)
解
解 説
(一
j はじめに
︵二︶ 国定読本第一期から第二期へ
︵三︶ 第二期国定読本について
︵三・一︶ ﹃尋常小学読本﹄の位置
︵三・二︶ ﹃尋常小学読本﹄編集の考え方
︵コ丁三︶ 書誌・諸本・底本
︵一︶ はじめに
国定読本の資料的意味と︑第一期国定読本については︑﹃国定読本用
語総覧1﹄の解説に記したので︑ここでは︑第一期から第二期への読本
改訂の事情と︑今回の作業対象である第二期国定読本について少しく解
説しておくこととする︒
︵二︶ 国定読本第一期から第二期へ
明治三十七年四月︑第一期のいわゆるイエスシ読本が使用されてから
明治四十三年四月第二期のいわゆるハタタコ読本の使用されるまで︑日
露戦争などいくつかの大きな出来事があった︒直接的には義務教育年限
の延長︑仮名遣いの改定などがある︒
時代の推移は教科書の材料・字句の訂正を余儀なくした︒例えば︑郵便 しゅ しゅ しゅ制度の改正は﹁第三種︑第四種とあって﹂︵巻八・四ページ︶を﹁第三種︑
しゅ しゅ第四種︑第五種とあって﹂のように訂正し︑第一期国定読本の第一種本と 第二種本とを区別する目安となっている︒こうした第一期﹃尋常小学読本﹄の修正作業は文部大臣官房図書課で行われ修正稿本が作成されたが︑仮名遣いを改正する論があったため︑修正稿本の確定を延ばしていた︒ 明治四十年三月二十日勅令第五十二号をもって﹁小学校令﹂の大改正が行われ︑それまでの義務教育年限が四年から六年に延長された︒﹁小学校令﹂の第三章第十八条には︑ 尋常小学校ノ修業年限ハ六箇年トス 高等小学校ノ修業年限ハニ箇年トス但シ延長シテ三箇年ト為スコト ヲ得と定められた︒ただし︑この勅令第五十二号には附則があり︑ 本令ハ明治四十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス︵中略︶ 特別ノ事情二依リ第十八条第一項二依リ難キ場合二於テハ市町村立 小学校二在リテハ市町村又ハ町村学校組合二於テ︑私立小学校二在 リテハ設立者二於テ期間ヲ定量テ府県知事ノ認可ヲ受ケ当分ノ内尋 常小学校二関シテハ傍従前ノ規定二依ルコトヲ得此ノ場合二於テハ 高等小学校二関シテモ傍従前ノ規定二依ルコトヲ得 前項二依ル尋常小学校ノ教科目二関シテハ文部大臣ノ定ムル所二部 ルと付記された︒ この改正にともない︑﹁小学校令施行規則﹂も文部省令第六号により明治四十年三月二十五日に改正された︒第一章第一節の第三条は国語で︑ 国語ハ普通ノ言語︑日常須知ノ文字及文章ヲ知ラシメ正確二思想ヲ 表彰スルノ能ヲ養ヒ兼テ智徳ヲ啓発スルヲ以テ要旨トス尋常小学校 二於テハ初ハ発音ヲ正シ仮名ノ読ミ方書キ方︑綴り方ヲ知ラシメ漸 ク進ミテハ日常須知ノ文字及普通文二及ホシ又言語ヲ練習セシムヘ シ
高等小学校鉱毒テハ稻々進ミタル程度二於テ日常須知ノ文字及普通
解 説
(4)
文ノ読ミ方︑書キ方︑綴り方ヲ授ケ又言語ヲ練習セシムヘシ
読ミ方︑書キ方︑綴り方ハ各々其ノ主トスル所二士リ教授時間ヲ区
別スルコトヲ得ルモ特旨注意シテ相聯絡セシメンコトヲ要ス
読本ノ文章ハ平易ニシテ国語ノ模範ト為り且児童ノ心情ヲ快活純正
ナラシムルモノナルヲ要シ其ノ材料ハ修身︑歴史︑地理︑理科其ノ
他生活二必須ナル事項乱取リ趣味二富ムモノタルヘシ
女児ノ学級二塁フル読本ニハ特二家事上ノ事項ヲ交フヘシ
文章ノ綴り方ハ読ミ方又混書ノ教科三二於テ授ケタル事項児童ノ日
常見聞セル事項及処世二必須ナル事項ヲ記述セシ辞書ノ行文ハ平易
ニシテ旨趣明瞭ナランコトヲ要ス
書キ方二君フル漢字ノ書体ハ楷書行書ノ一種苗ハご種トス
国語ヲ授クル際ニハ常二其ノ意義ヲ明瞭ニシ且既修ノ文字ヲ以テ通
常ノ人名︑地名等二応用セシメ単語︑短句︑短文ヲ書取ラシメ若ハ
改作セシメテ仮名及語句ノ用法二習熟セシメンコトヲ務ムヘシ他ノ
教科目ヲ授クル際二黒テモ常二言語ノ練習二注意シ又文字ヲ書カシ
ムルトキハ其ノ字形及字行ヲ正シクセシメンコトヲ要ス
と記されている︒
このように国定読本の文章は﹁平易ニシテ国語ノ模範﹂となり︑その
材料は﹁修身︑歴史︑地理︑理科其ノ他生活歯必須ナル事項二取り趣味
二富ムモノ﹂と規定された︒また︑第十七条では尋常小学校各学年の
﹁教授ノ程度及毎週教授時数﹂を定め︑第四号表に小学校五年六年の分を加え︑左表のように記している︒ 次に仮名遣い改定の問題は︑明治三十三年制定の小学校令施行規則の第二号表に原因がある︒それまでの教科書は歴史的仮名遣いを用いていたが︑生徒の習得に困難であるとして︑字音については発音にもとつくいわゆる棒引き仮名遣いを第二号表に採用した︒これが第一期国定読本に使用された結果︑生徒は歴史的仮名遣いを用いている国語の仮名遣いとの間に混乱を生じた︒そこで︑字音仮名遣いと国語仮名遣いとの統一をはかり︑国語教育の困難を除くため︑文部省は︑明治三十八年から高等教育会議︑国語調査委員会へ諮問し︑答申案が作成された︒しかし︑その内容については文部省内に反対があり︑そのままになっていた︒明治四十一年五月には国定教科書修正の事業のため臨時仮名遣調査委員会が設けられた︒審議の結果︑同年九月七日の文部省訓令第十号でそれまでの小学校令施行規則の第一号表から第三号表までが削除され︑棒引き仮名遣いが廃止されることになった︒その趣旨について文部大臣小松原英太郎は訓令で次のように述べている︒ 又字音仮名遣ハ当初改正ノ際ハ児童ヲシテ国語学習上二於ケル困難 ヲ避ケシメントスル趣旨二出テタルモノナレトモ実施ノ結果門鑑ミ 予期ノ目的二副フコト能ハサルヲ認メタルヲ以テ今回国定教科用図 書改正ノ時期に迫レルヲ機トシ之ヲ廃止セリ惟フニ仮名遣ハ時勢ノ国
韮口Fr
時教毎 数十十
一〇
第一学年
話綴書ノナ仮発 シリキ読ル名音 方方方ミ普及
方通近
文易
時教回 数授週
一二
第二学年
話方ミ普及須仮
藤十六名 瀬撫
時教回 数授週
一四
第三学叢
話綴書ノナ文日 シリキ読ル字二 方方方ミ普及須
方着癖知
文易ノ
時教毎 数授週
一四
第四学年
話綴書ノナ文日 シリキ読ル字二 方方方ミ普及須
方通学知
文学ノ
時教毎 数授十
一〇
第五学年
話綴方文文日
嘉善・鵡
楚瀞
時教毎 数十十
一〇
第六学年
話綴方文文日
労醤・簸
漿瀞
説 (5)
解
進歩二伴ヒ整理ヲ要スヘキコト勿論ナリト羅尚益々慎重ナル研究ヲ
積ミ以テ其ノ目的ヲ達センコトヲ期ス
省令改正ノ結果字音仮名遣ハ小学校二曹テモ他ノ学校二於ケルカ如
ク古来慣用ノ例二依ルヘク教科用図書亦無二依リテ編纂セラルヘシ
︵後略︶
こうして仮名遣いの問題が解決し第二期国定読本編集への条件がとと
のった︒その事情は保科孝一著﹃ある国語学者の回想﹄にくわしい︒
明治四十一年九月五日勅令第二百八号により教科用図書調査委員会の
官制が発布され︑その第三部において国語読本の編纂が開始された︒
この委員会は文部大臣の監督に属し小学校の修身︑歴史︑国語の教科
用図書を調査審議し︑またその他の教科用図書の調査を行う機関であっ
た︒会長︑副会長ほか委員三十四名によって総会と部会が構成された︒
総会は﹁編纂二関スル大体ノ主義方針︑部ノ主査ヲ経タル図書ノ確定﹂︑
部会は委員中から選任された主査委員が︑第一部﹁修身﹂︑第二部﹁歴
史﹂︑第三部﹁国語﹂を分担し︑各部における﹁編纂二関スル要旨︑起
草員ノ起草シタル図書ノ審査﹂を任務とした︒
会長 加藤弘之
副会長 菊地大麓
委員 松平正直︑古沢滋︑小笠原長生︑岡田良平︑吉川重吉︑大
島健一︑柴四朗︑高田早苗︑江原素六︑井上通泰
委員︵主査委員︶
第一部 ﹁修身﹂山川健次郎︵部長︶︑一木喜徳郎︑穂積八束︑森
林太郎︑中島力造︑渡部董之介︑三宅米吉︑森岡常蔵︑吉田熊次
第二部 ﹁歴史﹂辻新次︵部長︶︑三上参次︑萩野由之︑田中義成︑
牧瀬五一郎︑野山栄次︑喜田貞吉
第三部 ﹁国語﹂井上哲次郎︵部長︶︑芳賀矢一︑松村茂助︑市村
贋次郎︑和田萬吉︑下田次郎︑乙竹岩造︑出土忠造 ︵﹃官報﹄明治四十一年九月二十八日︑二十九日号︶ 各部四名以内の委員が起草を担当し︑若干の起草委員補助がおかれた︒第三部の﹁国語﹂は起草委員に芳賀矢一︑乙竹岩造︑三土忠造︑起草委員補助に高野辰之が任命された︒
︵三︶ 第二期国定読本について
︵三・一︶ ﹃尋常小学読本﹄の位置
第二期国定読本の﹃尋常小学読本﹄という名称は︑明治二十年五月文
部省編輯局蔵版のものを受けついだ第一期国定読本の名称を︑さらに受
けついだものである︒これはその巻一の冒頭によって︑今日俗にハタタ
コ読本と呼ばれる︒
この読本の使用にあたって文部省は編纂趣意書を公にしているが︑そ
こには第一期において示された国語の統一という基本的な目標が貫かれ
ている︒しかし具体的な方法には︑模範語から標準語へ︑言語の練習か
ら自然的口語へと︑編集の方針を発展させた︒
第一期の編纂趣意書には︑
文章ハロ語ヲ多クシ︑用語ハ主トシテ東京ノ中流社会二行ハルルモ
ノヲ取り︑カクテ国語ノ標準ヲ知ラシメ︑其統一ヲ図ルヲ務ムルト
共二︑出来得ル丈児童ノ日常使用スル言語ノ中ヨリ用語ヲ取りテ︑
談話及綴リ方ノ応用二適セシメタリ︒
と記されており︑﹁東京ノ中流社会二行ハルルモノ﹂が標準とされた︒
そして標準語という用語はなかった︒
第二期の編纂趣意書では︑
口語ハ略東京語ヲ以テ標準語トセリ︒但シ東京語ノ設音・卑語ト認 む む
ムルモノ蝦固ヨリ之ヲ採ラズ︒例ヘバヒラツタイトイハズシテヒラ
タイトイヒ︑イイ天気ヲ採ラズシテヨイ天気ヲ採レルが如シ︒国語
説 解
(6)
読本ハ一方二於テ国語統一ノ実効ヲ挙ゲントスルモノナレバ︑教授
者ハ成ルベク読本ノ言語二熟シテ︑註音及ビ方言ヲ匡正スルノ覚悟
ナカルベカラズ︒
打消ノ助動詞﹁ナイ﹂ハ東部地方二行ハレ︑﹁ン﹂ハ関西地方二行ハ
ル︒旧読本ハ主トシテ﹁ン﹂ヲ採りシガ︑新読本ハ東京語ヲ標準ト
シテ︑最初ハ多ク﹁ナイ﹂ヲ用ヒ︑後﹁ン﹂ヲ加ヘタル処アリ︒打 む 消ノ過去ニ猫撫クナカツタヲ用ヒタルモ亦同ジ︒︵第三章︶
と述べている︒﹁東京語ヲ標準語﹂とし﹁註音・卑語ト認ムルモノハ固ヨ
リ之ヲ採ラズ﹂という態度をとった︒打消の助動詞﹁ナイ﹂についても
東京語を標準とした︒そして東京語の認識と編集の態度を対照してい
る︒すなわち︑
旧読本ハ児童学習ノ便ヲ図りテ︑言語ノ形式ヲ論理的二文法的二解
剖シ︑単純ナル形式二練熟セシメテ︑次第二複雑ナル文ノ構造二入
ラントセリ︒故脚長ク連続セル文ハ殊更二之ヲ分解シ︑接続詞ヲ加
ヘテニ文トシ︑副詞的語句ノ遠ク隔壁リタルモノハ︑最後ノ述語ノ
部ヲニ回繰リカヘス等︑文学的趣味ノ低減ヲ犠牲トシテ専ラ言語ノ
練習呪力ヲ用ヒタルハ︑旧読本編纂趣旨書庫明言セルトコロナリ︒
然レドモ学齢児童ノ談話ハ必ズシモ嬰児ノ片言ニアラズ︑随分複雑
ナルロ語ヲ話シ得︑綴り得ルコト︑実例二徴シテ明白ナレバ︑寧ロ
自然的言語ノ形体ヲ採ルノ優レルニ三州ザルヲ信ジ︑今回ハ大体二
於テ簡単ヨリ複雑二進ムヲ方針トシテ︑出来得ルカギリハ自然的口
語二近カラシムルヲ期セリ︒︵第三章︶
さらに︑その口語は﹁未ダ確乎タル標準ヲ得ズ﹂として次のように記
している︒
然レドモ我がロ語ハ未ダ確乎タル標準ヲ得ズ︑社会ノ階級尊卑等二
於テ︑又ハ児童ノ男女間二於テモ特殊ノ言語アルヲ以テ︑学校用読
本トシテハ純然タル自然的言語ヲ写スコト能ハザル憾勘シトセズ︒ 教授外張読本以外片帆テ務メテ児童∠言語ヲ練習セシムル工夫ヲ積 マンコトヲ要ス︒ 第二期国定読本編纂の主眼は︑﹁大国民ノ品格ヲ造成スル﹂ことであった︒ 其ノ他海国思想ヲ養成シ︑田園趣味ヲ酒養シ︑又立憲自治ノ思想ヲ 確固ニシテ︑大国民ノ品格ヲ造成スルが如キ材料ハ笹野テ之ヲ採択 シ︑之ヲ一貫スルニ勲爵愛国ノ精神ヲ以テシ︑快潤・勤勉・忠誠能 ク其ノ職務二上スベキ国民ノ堅実ナル気風ヲ養成セントスルハ︑本 書編纂ノ主眼トスル所ナリ︒ そこで材料が吟味され︑日本特殊の材料︑国民的童話・伝説・謎・浬諺・金言等︑高学年用には抽象的訓誠が加えられた︒巻十一第十七課
﹁時間﹂はその代表的なものであろう︒
人生七十年と見るも六十万時間に過ぎず︒其の内寝食・談話・遊戯・
病気等の為に費す時間は三分の二を占め︑実際修学及び業務に用ふ
る心墨は僅かに二十万時間を越えざるべし︒身を立て︑父母をあら
はすも︑産を破り︑祖先をはっかしむるも︑功業を成し︑公益を広
むるも︑将又無為にして一生を終ふるも︑唯此の二十万時間を利用
するとせざるとにあり︒
百歳の長命を保ちて︑一生を坐食に費す者あり︒二三十歳の短命に
して美名を万世にとゴむる者あり︒人生の長短は事業の大小を以て
量るべく︑年歯の多少を以て量るべからず︒之を思へば一寸の光陰
も軽んずべからず︒
このような第一期と第二期の異なる点は編纂趣意書の次のことばに要
約されよう︒
漢字数ノ増加︑字音仮名遣ノ復旧︑義務教育年限延長ノ結果ヨリ生
ゼル材料排列ノ変更等ハ新読本ノ旧読本ト異ナル主点ニシテ︑特殊
国民的材料ノ加入︑文学的趣味ノ添加置土編纂者が従来ノ読本ノ欠
説 (7)
解
点ヲ補ハントシタル努力ヲ示スモノタリ︒︵第一章︶
この第二期国定読本﹃尋常小学読本﹄はその担当者によって芳賀読本
とも呼ばれた︒第四期国定読本の中心的編集者であった井上重氏は︑本
書を国民文学読本︑国民思想読本と評した︒
芳賀読本は文学読本だという世評が︑当時すでにありました︒そ
れは吉岡読本の言語主義に対し︑当然いわれるべき批評でありそし
て当時好評を得るゆえんでもありました︒しかし︑単に文学読本と
いって妥当であるかどうか︒吉岡読本に比べてたしかに趣味感情も
豊かであり︑文章の表現における芳賀先生のご苦心もいろいろ伝え
聞いていますが︑芳賀先生のねらわれたものは︑もう一つ奥にある
と私は思います︒
芳賀読本を通観して感じられる特色は︑単なる文学読本でなくい
わば国民文学読本︑もっと極言すれば国民思想読本といった趣きが
あることであります︒ 一つ一つの素材の選び方なり︑表現なりが︑
国民の思想精神を啓培することをもって目標とされている︒これは
吉岡読本と比較して︑特に注意される点であります︒
まず︑数多くの日本童話︑伝説︑神話︑史的人物︑特に皇室を中
心とする忠臣︑孝子︑英雄︑賢女︑才女︑文化的偉人等が読本教材
の根幹となっています︒しかし︑一面から見るとこれらは︑あえて
芳賀先生をまって始めて教科書に選び出されたものではありませ
ん︒︵中略︶国定第一回の吉岡読本でさえ︑こうした教材を少なか
らず民間読本から受けついでいます︒もちろん芳賀先生は︑その時
代の文章家をもって任じられ︑人も世も認めていたのですから︑こ
れらの素材をすべて新しく書きかえられ︑また現代の国家的︑社会
的生活事象は新しく選び︑新しく書かれたものが多い︒博学で︑ら
い落で︑物に拘泥せず︑多分にユーモアを蔵していられた先生とし
ては︑これらの正面切った教材の間を縫うように︑いかにも先生ら
しいと思われるものが随所に見出され︑それが国民思想読本として こん然一体となっている観があります︒︵国定読本の編集︶また五十筆力博士は﹃国定読本文章之研究﹄︵二松堂・明治四十五年刊︶
の中で︑ しういつ
又此の十二冊の中には以前の読本の秀逸を其のまN取り入れたの
とエの か もあり︑その他にもよく整って可なりに趣味のあるのが無いではな がい いが︑概していふと︑ヘ ヘ ヘ へ あ へ あ カ も へ も も へ ぬ 一︐妥当な語句が用ゐられて居らぬ︒ だたう へ あ へ も ヘ ヘ ヘ ヘ へ つぼ ぐあひ はな てん せうおう 一︑文脈が整って居らぬ︑続き具合︑離れ具合︑転じ具合.照応 ぶんみゃく と﹂の で き の具合が立派に出来て居らぬ︒ しやうめん ちしきてきろれつ そくめん はいめん りめん ないめん 一︑正面からの知識的腕列が多く︑側面︑背面︑裏面︑内面︑よ
くわんさつ ヘ ヘ セ ヘ へ あ ヘ カ ぬ ヘ へ り観察した趣味本位の文章が少ない︒
も ヘ へ あ あ ヘ へ あ へ はす あぶら 一︑文章に命がない︑品位がない︑弾んで居らぬ︑油がかΣつて
居らぬ︒
なん
といふ難があります︒知識的︑形式的にいふと︑いろくな材料が
広く集められて︑御献立もなかくよく整って居りまずけれども︑
じゅく しゅみ 文章として見ては︑落ちついた︑熟した文とは云はれません︑趣味せいめい 生命のある文章とは云はれません︒
と︑批判した︒
以上のほかに︑第二期国定読本は物語的教材が増加した反面︑児童の
生活をえがいた教材が少なくなっている︒
︵三・二︶ ﹃尋常小学読本﹄編集の考え方
第二期国定読本は第一期の﹁国語の統一﹂という根本方針を受けつぎ︑
さらに﹁大国民ノ品格ヲ造成スル﹂ことを主眼として︑その実現のため
の教育上の配慮をはらった︒第二期の﹁尋常小学読本編纂趣意書﹂によ
説 解
(8)
って︑第一期と比較しながらその要点を紹介しよう︒
形式については第六章に次のように述べている︒
①第二期国定読本は冊数及び毎冊の行数字数などはすべて第一期の体
裁をとり︑﹁其ノ品数ハ旧読本二輪シテ約一割六七分ノ増加﹂を示して
いる︒それが著しいのは画譜・十・十一・十二であり︑課外も増加して
いる︒第二期と第一期のページ数を比較した表は左の通りである︒
なお︑巻九・十・十一・十二が比較しているのは第一期の高等小学一︑
二年の分である︒
十十
巻ニー十九八七六五四三ニー
計
第二期
ニー〇九九九八八八七六五 一八四六五二六二三四六五
一〇七二 第一期
八八七七九八九七七六六五 六四九六四六〇四〇〇〇八
九一七
文字と符号については次の通りである︒
②片仮名は巻一から提示し︑範語法によってハタ・タコ・コトリ・タ
マゴなどのように二字もしくは三字を習得するようにした︒これは第一
期が模範語の語形を示さず︑椅子・枝・雀・石を図示してイ・エ・ス・
シの仮名を提示したのと異っている︒
仮名の新字を提示する場合は︑必ずしも名詞で行うことをせず︑﹁形 容詞・動詞・助詞二丁テセルコトアリしというように︑例えば﹁ヲ﹂は
﹁テヲヒイテアゲマス﹂のように助詞として︑﹁ヰ﹂は﹁トンボガトンデ
ヰマス﹂のように動詞として提示した︒これは第一期が発音教授を起点
として仮名の排列を考慮し﹁専ラ詑音矯正ノ便ヲ図りテ︑イエ・スシ・
チツ・ヒシ等ヲ対照シテ﹂提示したのと異っている︒
しかし︑発音教育をおろそかにしたのではなく︑コ語一語ノ発音ヲ
最モ正確二教授スベキハ言ヲ待タズ︒混清シ易キ発音二就キテハ教授者
ノ特二注意センコトヲ望ム︒しと重要性を強調している︒
⑧五十音図の仮名・その濁音・半濁音︑ハ行転呼音︑促音︑長音︵ケ
イ・ヘイやカア・ニイのごとき長音︶を巻一に示し︑拗音︑拗長音は巻
二に提示した︒また濁音・半濁音の仮名は便宜清音の字の後に提示し
た︒ 促音及び拗音の書き方は︑第一期が﹁トッテ﹂﹁シャシン﹂のように右
脇に細書したのに対して︑第二期は﹁トツテ﹂﹁シヤシン﹂のように通常
の音と同じく直書した︒ただし︑外国語は﹁此ノ限ニアラズ﹂であって
細書した︒
㈲平仮名は第二学年︑すなわち巻三から提示し﹁摘出スル語ノ意義ヲ
重ンジテ﹂︑﹁さくら・うつくしい﹂﹁やま・はな・とり・のはら﹂などの
ように提示した︒第一期が﹁へ・り・か・や﹂など字形・筆法が片仮名
と近似した平仮名から提示したのと異っている︒
なお︑平仮名四十七字は七三第一課から第六課までで全部提示した︒
⑤変体仮名は第一期にはなく︑第二期で提示したものである︒これは
﹁文部省令ノ結果トシテ新二加レルモノ﹂であって︑その趣旨は﹁国民教
育トシテ世上ノ慣用最モ弘キモノヲ知ラシメントスル﹂にあり︑読み方
に課し︑綴り方には必要ないと指示している︒この変体仮名について編
纂趣意書には﹁普通ナルモノニ十五字﹂は巻十から巻十二までの韻文の
中に提示したと記しているが︑実際には次の二十六字である︒
説 (9)
解
2}そム欲1め
(((((
わのたこあ
)))))
讃えちセ 二
((((( をはちさい
)))))
ふてしえ 渦てゑ陸
))))
セヤキ才こ
よとすお
))))
をふ謹う
(((( りなぞか
))))
豊ユさ争こ
れにたき
))))
⑥漢字の提示については︑第一期の第一学年が﹁一ヨリ十マデノ数字
ヲ教フルノミ﹂であったのに対して︑第二期では第一学年後期用の巻二
に︑﹁日月大小山川等ノ簡易ナル文字二十余丁﹂を提示した︒特に下級
学年の二年・三年・四年に注意をはらい︑同一課もしくは接近した課で工
夫をこらした︒すなわち︑①なるべく字形の類似したものを接近して排
列する︵遅牛・下思・鳥島・持待・類願など︶︒ ②観念の類似したもの
を接近して排列する︵東西南北・左右・前後・明暗・遠近・多少.表
裏・問答・内外・晴曇・寒暖など︶︒ ⑧結構の基本となる文字をなるべ
く前におく︵毎海・糸細紙・申碑・里野鯉・車輕・黄廣・霊室・貝買費
など︶︒なお︑平仮名を提示する時期には新漢字を提示していない︒
漢字の字数は︑第一期は尋常四学年間に五百字︑高等一・二学年を合
わせて八百五十字であったが︑第二期は十二巻を通じて一千三百六十字
となった︒趣意書の付録﹁新出漢字表﹂﹁読替漢字表﹂によると各巻の新
出の漢字︑読み替え字数は下表の通りである︒
第一期は八百五十字のほかに傍訓を施した漢字が多かったが︑第二期
は﹁読本中二現レタル漢字ハ必ズ新漢字トシテ教授スベキ方針﹂をと
り︑人名・地名の固有名詞を除き︑一切振り仮名を用いず︑必ず新字と
して提示した︒しかし巻九からはこの方針をゆるめている︒
新字は欄外に摘出し︑読み替えの字は傍線を施して示し︑熱語として
二字以上連続し離すことのできないものは︑その連続に傍線を施した
︵萄・弟子・大人・何時・何所など︶︒
一度使用した漢字は︑なるべく重ねて練習できるようにした︒例えば︑ 巻六の巻尾に﹁終﹂の漢字があるのは︑同巻中に﹁終﹂の字を学んだからである︒ 漢字選択の標準は﹁応用ノ最モ広キモノヲ採ル﹂ことにおき︑第一期においては人名・地名・代名詞・副詞・接続詞・助動詞に用いられる漢字を避けたが.第二期は︑例えば︑人名の﹁鈴木﹂﹁佐藤﹂の﹁鈴﹂﹁佐﹂︑代名詞の﹁其・此・之・是﹂の類︑接続詞・副詞の﹁又・亦・未.遂.互﹂の類は︑応用の最も広いものとみなし教授することとした︒ 漢字の字体については︑第一期では文字の簡易なるを主として﹁糸・
虫・蚕﹂を用い﹁綜・轟・鷲﹂は用いなかったのであるが.第二期は
﹁社会ノ用例二準拠﹂して﹁糸縣・虫轟⁝・鷲﹂を使用した︒
Gり﹁分別書方﹂すなわち分かち書きは︑丁重の終わりまで用い︑第一
期と同じである︒その分別法は明治三十九年文部大臣官房図書課で編成
し同年十二月国語調査委員会の議決を経た﹁分別書キ方案﹂による︒そ む
の結果︑第一期で﹁カラスガナイテヰマス﹂となっていたものを
計
十十
jー十九八七六五四三ニー
巻
一三六〇
一 __▲ 一 一 一 一一▲ 一 一■直
O四五五七七四二六五ニー l一六七七四六二八一四〇
新字
九八四
一 一 一 一 一
l七八六一八五三一
縺Z〇八七九四一五九二〇
読み替え
説
働 解
﹁カラス ガ ナイテ ヰマス﹂のように﹁テ﹂を上の動詞につけ﹁ヰマ
ス﹂を独立させた︒また︑人名の下の﹁サン﹂は︑﹁タケヲサン﹂のよう
になっていたものを﹁タケヲ サン﹂と分かち書きした︒
⑧送り仮名は︑明治四十年国語調査委員会編纂の﹁送仮名法﹂に準拠
した︒ただし︑二つの動詞の複合する場合︑上の動詞が二音のときはそ
の送り仮名を省いた︒これは同法の附則によっている︒また︑﹁審クス﹂
﹁分カツ﹂など三音の語で︑同法によるとこ音を送るべきものは︑便宜第
一期と同じく語尾のみを送った︒
⑨句読法については︑明治三十九年文部大臣官房図書課が編成し︑同
年十月国語調査委員会の議決を経た﹁句読法案﹂に準拠した︒第一期に
比べると﹁・﹂が減じた︒これは第一期の場合︑代名詞・副詞・接続詞
などは︑ほとんど各語の下に﹁・﹂を施したのを止めたためである︒第
二期は新たに︑同一種類の語を並列した中間に﹁・﹂を用いた︒
分かち書きで一語の二行にわたるものは︑前行の終りにロを用い︑改
行すべき箇所で前行に余地のないものは﹂を用い︑挿入文に﹁﹂を付
し︑挿入文中に他の挿入文のある場合は﹃ ﹄を用いた︒これらは第一
期と同じである︒
⑩外国の地名で仮名書きしたものには右側に双線財を施し︑また︑仮
名書きした外国人名には単線1を施した︒
働字音仮名遣いは︑第一期が発音にもとつく表記法であったが︑第二
期は歴史的仮名遣いによった︒︵三・一︶で詳述した通りである︒
文章については次の通りである︒
働口語は巻一から提示し︑韻文・独思・独語・引用文を除いて︑巻五
第十六課まですべて敬体︵編纂趣意書には崇敬体とある︶を用いた︒巻
五第十七課ではじめて常体の口語を用い︑文語に移る階梯とした︒巻九
以上の口語は記述体を用いた︒
働敬体には﹁アリマス﹂﹁ゴザイマス﹂﹁デス﹂を用い︑常体の記述体 には﹁ノデアル﹂の体を採用した︒ ㈱口語はほぼ﹁東京語ヲ以テ標準語﹂とし︑﹁自然的口語雌鶏カラシムル﹂ことを期した︒︵三・一︶で述べた通りである︒打消の助動詞は主に﹁ナイ﹂を用い﹁ン﹂を加えた︒過去に﹁ナカツタ﹂を用いたのも同じ趣旨による︒ ㈲文語は︑第三学年後期用巻六の初めから提出し︑第四学年以後文語を多くした︒左表の通りである︒ ⑯行文は趣味を多くすることにつとめ︑擬人法︑問答体を用い︑無味に流れることを防いだ︒ αη書簡文は︑下五第二十一課﹁はがき﹂の口語文から提示し︑候文は︑第五学年前期用巻九から提示した︒書簡文の送り仮名は︑巻九・十の第五学年用は﹁申上候﹂﹁願上候﹂﹁相成候﹂﹁存候﹂﹁仕候﹂の五種に限り送り仮名を省き︑他は﹁致し候﹂﹁致し居り候﹂﹁驚き入り候﹂のように送り︑巻十一からはすべて﹁致候﹂﹁致居候﹂﹁驚入候﹂とし︑書簡文の特例を示した︒ ⑱韻文は︑巻一に一︑巻二に二︑巻三以上に各三を収めた︒第一期から採るもの三︑修正稿本から採るもの六︑懸賞によりて採るもの八︑人に嘱して作らしめたるもの二︑その他十二篇は起草者の作である︒格調
は七五調︵一九︶︑七七調︵三︶︑五七調︵二︶︑五五調︵一︶︑八七調
説 ⑳ 解
(一
j、
ェ八調︵一︶︑雑体︵五︶と記されている︒
教材については趣意書の第四章にくわしい︒
働材料の選択については義務教育に最も有効な﹁実用ト趣味トノ両方
面ヨリ見テ﹂価値あるものを選択した︒特色の第一は﹁国民独有ノ材料
ヲ選択﹂したこと︒例えば︑巻一の﹁キクノゴモン・キリノゴモン﹂︑
巻四の﹁ワラ・のし・鰹節・雛祭﹂︑巻五の﹁梅干﹂︑巻七の﹁家の紋.
日本紙﹂︒
第二は国民的童話・伝説を採用したこと︒例えば﹁桃太郎.猿蟹合戦.
牛若弁慶・瘤取・餅ノ的・天神様・花咲爺・野見宿禰.下家.浦島太
郎・仁田四郎・因幡ノ白兎・那須与一・小子部螺嵐・鵯越の坂落し.天
岩戸・釜盗人﹂など︒
第三は謎・便諺・金言を随所に挿入したこと︒例えば巻六に浬諺の課
を置く︒
第四は抽象的訓誠を上級学年用に加えたこと︒例えば︑巻舌の﹁養
生﹂︑巻十一の﹁笑﹂﹁時間﹂︑二十二の﹁苦楽﹂﹁主婦の務﹂︒
第五は﹁大国民ノ品格ヲ造成﹂する材料として﹁海国思想ヲ養成シ︑
田園趣味ヲ酒養シ︑又立憲自治ノ思想ヲ確固﹂にする材料を採用し︑忠
君愛国の精神を以て一貫した︒
歴史材料と地理材料は︑巻九以上においたが︑これは︑﹁従来ハ義務
教育中︑別二歴史・地理等単独ノ教科ナカリシガ︑今や尋常第五学年以
後二於テ︑歴史・地理・理科等ノ授業ヲ受クルコト﹂となったことによ
る︒
⑳挿絵は︑﹁児童二適確ナル印象ヲ与フルヲ主眼﹂として︑人物.家
屋・衣服は︑なるべく﹁多数国民ノ階級ヲ標準﹂とし︑貴族的にならな
いようにした︒
季節は︑日本中央部を標準とした︒
以上は﹁尋常小学読本編纂趣意書﹂に述べるところである︒第一期の
﹁言語ノ練習﹂から﹁自然的口語﹂﹁大国民ノ品格ノ造成﹂へと重点が移っている︒ なお︑用語の特色の一端をここに述べておく︒ 第二期の用語の特色は︑やはり第一期で樹立された一人称.二人称の代名詞︑あるいは﹁おとうさん﹂﹁おかあさん﹂などの親族名称の体系を発展させた点に認められる︒一人称の場合︑﹁わたくし﹂﹁ぼく﹂であったものに︑﹁わたし﹂﹁おれ﹂﹁われわれ﹂などが加わり文学的趣味が添えられた︒親族名称においても︑﹁おかあさん﹂には山の手ことばの﹁おかあさま﹂︑下町ことばの﹁おっかさん﹂が加えられ︑自然的口語を反映させている︒ 第一期の用語と比較すると︑同義語でありながら変わっているものがある︒例えば︑︹第一期︺
ウミバタ︵海端︶
ゼニ︵銭︶
ともす︵点︶
タツトブ︵尊︶
よほど︵余程︶
リョーカバ︵両側︶
などがある︒
表記の面からみると︑
︹第一期︺ オホサカ 大坂 アキ 春︑夏︑秋︑冬
きかんしゃ
のように︑ ︹第二期︺ ウミベ︵海辺︶ おあし トボス たふとぶ よつぼど 両がは
例えば
︹第二期︺
大阪
春・夏・秋・冬
キクワン車
漢字の字体に変更のあるもの︑符号﹁︑﹂と﹁.﹂の交替し
たもの︑字音仮名遣いの反映するものなどがある︒表記上第二期が目立
解 説
② つのは︑﹁アメリカ﹂﹁イギリス﹂﹁ロシヤ﹂など外国地名の11線と︑﹁刈
チブンソン﹂など外国人名の1線である︒これらは朱引と呼ばれ漢文訓
読に使われてきたものの復活である︒付属語では︑打消の助動詞に変更がみられ︑第一期は﹁ン﹂が主で
﹁ナイ﹂は従の関係にあったが︑第二期は﹁ナイ﹂に統一され﹁ン﹂は﹁マセン﹂の形でのみ使われている︒過去形については︑﹁ナカツタ﹂で統一され﹁ナンダ﹂は見られない︒ 第二期の中で﹁ゆれ﹂のあるものは︑﹁大きいのは﹂﹁大きなのは﹂と いう場合の﹁い﹂と﹁な﹂である︒﹁小サイノヲ﹂﹁小サナノモ﹂﹁アタタ カイ日﹂﹁キイロナノ﹂など︑体言あるいは体言相当の助詞に続くときにゆれがみられる︒ 今日と異なるものには︑﹁世界最長の﹂﹁席末﹂﹁故里﹂﹁空中飛行器﹂﹁高高ユビ﹂﹁とや﹂などが目につく︒助詞の用法にも︑次の﹁に﹂のような例がみられる︒ みんなと橋のたもとに出合って︑川について四五町行くと︑︵巻六・
八ページ︶
マサヲトトモキチトオハナが三人デノハラ ニ ア
ソンデ ヰマス︒︵巻三・六ページ︶
逆に︑今日の用法の普及に力を発揮したと考えられるものに﹁電報を 打つ﹂がある︒第一期の﹁電報をかける﹂が﹁うつ﹂になり一般化した
のも︑この第二期国定読本に採用されたからであろう︒ 誰かすぐに東京へ電報を打つたのだらう︒︵巻八・四五ページ︶
︵三・三︶ 書誌・諸本・底本
第二期国定読本の編集は︑教科用図書調査委員会第三部が担当し︑
治四十一年十月に着手して明治四十二年十一月の初旬に完了した︒
起草にあたったのは次の四人であった︒
明
起草委員⁝⁝芳賀矢一・乙竹岩造・三三忠造
起草委員補助⁝⁝高野辰之
起草にあたっては︑明治三十七年四月以降使用した国定読本及び文部
省内において起稿した修正原本を基礎とした︒一巻の原稿が完成するこ
とに第三部会の修正をへて︑更に教科用図書調査委員会の総会に提出し
て可決された︒
教科書の翻刻・販売については︑明治三十六年に制定された﹁小学校
教科用図書翻刻発行規則﹂が明治三十八年四月に改定されて︑教科書の
製版印刷・製本の工場や事務所所在地が東京市と大阪市に限定された︒
このとき︑青照が翻刻発行を許可されている︒明治四十二年には文部省
が﹁小学校教科用図書翻刻二関スル規定﹂を告示し︑個人が翻刻発行す
ることを廃止し日本書籍︑東京書籍︑大阪書籍の三株式会社に限って許可
した︒発行の割合は四︑四︑二と定められ︑販売はすべて国定教科書共
同販売所を通すこととした︒共同販売所は各府県に一以上の特約販売所
を設けて︑その下にいくつかの取次販売所をおき︑各々その供給区域を
定めた︒ ところで︑教科用図書調査委員会の総会が可決した第二期﹃尋常小学
読本﹄には︑第一期のと同様に文部省原本があるのかどうか︑調査した
範囲では未見である︒翻刻本の奥付にも記載がない︒したがって︑第二
期﹃尋常小学読本﹄︵ハタタコ読本︶の初版がいつ発行されたか決定で
きないが︑われわれの調査の結果では最も早い時期のものは次の通りで
ある︒
巻一
巻巻巻巻 五四三二
明治四十二年九月十日翻刻発行 博文館
明治四十三年三月五日翻刻発行 東京書籍
明治四十二年八月七日翻刻発行 博文館
明治四十三年四月二十八日翻刻発行 日本書籍
明治四十二年十月五日翻刻発行 博文館
説 解
巻六
巻七巻八
巻九巻十
巻十一巻十二 明治四十三年五月十五日翻刻発行 日本書籍明治四十二年十月二十八日翻刻発行 博文館明治四十三年六月十五日翻刻発行 日本書籍明治四十二年十二月十日翻刻発行 博文館明治四十三年六月二十八日翻刻発行 日本書籍明治四十三年一月二十一日翻刻発行 日本書籍
明治四十三年七月二十一日翻刻発行 日本書籍
この第二期国定読本は何回かにわたって修正が加えられた︒修正事項
は次の文部省から刊行された﹁国定教科書使用上ノ注意﹂ほかの記事に
よって知ることができる︒
﹁国定教科書使用上ノ注意﹂のうち︑﹃尋常小学読本﹄の修正に関する
ものは次の五冊である︒なお︑その修正箇所には︑すでに修正されたも
のと︑これから修正する予定になっているものとが含まれている︒
明治四十三年十二月調 明治四十四年二月十日発行 文部大臣官房
図書課
明治四十五年二月調 明治四十五年四月十八日発行 文部省図書局
大正元年十月半 大正元年十二月七日発行 文部省図書局
大正二年三月調 大正二年四月八日発行 文部省図書局
大正二年十二月調 大正三年一月三十日発行 文部省
このほかには︑重複する部分もあるが︑次のものがある︒
小学読本小学書キ方手本︵二期︶修正事項 大正三年十一月 大正三年十
二月十二日発行 文部省
小学読本小学書キ方手本︵後期用︶修正事項 大正四年四月 大正四年六月
十三日発行 文部省
尋常小学読本正誤表 芳賀矢一 ︵﹃教育時論﹄第九五二号 明治四十
四年九月二十五日︶
これらの資料によって知られる修正事項およそ二五〇項目︵﹁国定読
本用語総覧3﹂の付録参照︶を︑以下の機関・大学・個人が所蔵してい
る翻刻本について調査した︒ 国立公文書館・国立教育研究所附属教育図書館・国立国語研究所・ 東書文庫・福岡県教育センター・藤沢市文書館・横須賀市教育研究 所・愛知教育大学附属図書館・滋賀大学附属図書館教育学部分館・ 筑波大学学校教育部・奈良女子大学附属図書館・福岡教育大学附属 図書館・飛田良文 これら約四百冊の所蔵本にみられる修正箇所の調査結果は別稿にゆずることとする︒第二期国定読本は明治天皇の崩御を境として大改正されたが︑全十二冊を通して︑課の移動︑また全文にわたる修正などで著しい変異のあるものは︑次の五課である︒この五課を基準として分類すると︑第二期国定読本は次の六種に分けられる︒第二種 第三旧型四種 第五種
一
第六種
三
十七
ほしとり 八月三十一日 ほしとり
八 二麸旧恩
︵全文訂正︶±﹁八
我が海軍︵全文訂正︶+三二+八卒業
冨民の至情行用「
年上国 守ノ定 三教 意科
L書
発使(明治43.4)
明治45.4一
大正元.12一
大正2.4
大正3.1
大正3.12一
(大正7.3)
本書の底本には国立公文書館︵内閣文庫︶所蔵本を使用した︒その翻
刻印刷・翻刻発行・発行所は次の通りである︒
巻一 明治四十三年一月二十一日翻刻印刷 二月十五日翻刻発行
説 解
日本書籍
巻二 明治四十三年二月十八日翻刻印刷 三月五日翻刻発行 日
本書籍
巻三 明治四十三年一月二十一日翻刻印刷 二月二十八日翻刻発
行 東京書籍
巻四 明治四十三年四月十五日翻刻印刷 四月二十八日翻刻発行
日本書籍
巻五 明治四十三年一月二十一日翻刻印刷 二月二十八日翻刻発
行 東京書籍
岩山 明治四十三年五月一日翻刻印刷 五月十五日翻刻発行 日
本書籍
巻七 明治四十二年十二月五日翻刻印刷 十二月二十一日翻刻発
行 日本書籍
巻八 明治四十三年五月二十八日翻刻印刷 六月十五日翻刻発行
日本書籍
巻九 明治四十二年十二月二十一日翻刻印刷 明治四十三年一月
十五日翻刻発行 日本書籍
巻十 明治四十三年六月二十一日翻刻印刷 六月二十八日翻刻発
行 日本書籍
巻十一 明治四十三年一月十日翻刻印刷 二月五日翻刻発行 東京
書籍
巻十二 明治四十三年七月十二日翻刻印刷 七月二十一日翻刻発行
日本書籍
この国立公文書館所蔵本は︑右の通り︑明治四十二︑四十三年に翻刻
発行されたことになっており︑第二期国定読本の初期のものと考えられ
る︒ただその内容は︑巻によってすでに修正が加えられており︑先の五
課の分類によれば︑第二種に属するものである︒ なお︑第二期国定読本には巻一から巻四の四冊について︑秋季に始業する学級のための秋季始業読本があった︒﹁編纂趣意書﹂の附記には﹁秋季二始業スル学級ノ為︑本会ハ別二秋季始業読本一ヨリ四二至ル四巻ヲ編纂セリ︒即チ尋常第一学年・第二学年用ニシテ︑是等ノ下級学生二対シテハ︑直観教授ノ上ヨリ︑季節二応ジテ材料ノ排列ヲ変更スルノ必要最モ大ナレバナリ︒﹂と記されている︒編纂の方針趣旨は春季始業用のものと差異がなく︑漢字も四冊を通じて同数を提示し︑巻五へ接続している︒ 解説の執筆にあたっては以下の文献を参考にした︒ 古田東朔﹃小学読本便覧﹄第六巻 昭和五十八年三月 武蔵野書院
海後宗臣﹃日本教科書大系﹄近代編四〜九国語e〜因 昭和三十
八〜三十九年 講談社 唐沢富太郎﹃教科書の歴史﹄昭和三十一年一月 創文社 秋田喜三郎﹃翻静国語教科書発達史﹄昭和五十二年十月 文化評論 出版 井上赴著.古田東朔編﹃国定教科書編纂二十五年﹄昭和五十九年五 月 武蔵野書院 西原慶一﹃近代国語教育史﹄昭和四十年十一月置穂波出版社 文部省総務局調査課﹃調査資料第十一輯 国民学校並に幼稚園関係 法令の沿革﹄昭和十八年三月 文部省﹃学制百年史﹄昭和四十七年十月 帝国地方行政学会 ﹃国語教育史資料﹄第五巻 教育課程史 昭和五十六年四月 東京 法令出版 ﹃複刻国定教科書︵国民学校期︶解説﹄昭和五十七年二月 ほるぷ 出版例 凡
凡
例
︵一︶内容 ︵二︶底本 ︵三︶用語採集の範囲 ︵四︶見
出し語の立て方 ︵五︶見出し語の注記 ︵五二︶見出し
︵五.二︶漢字 ︵五・三︶品詞 ︵五・四︶人名・地名などの注記
︵五.五︶度数 ︵五・六︶表記 ︵五・七︶活用形 ︵六︶見出し
語の排列 ︵七︶用例と所在 ︵七・一︶用例文 ︵七・二︶所在
︵七・三︶層別
(一
j内容
本書は︑明治四十三年度から用いられた第二期国定読本﹃尋常小早借
本﹄︵いわゆるハタタコ読本︒全十二冊︒︶の全用語を五十音順に排列し︑
その全用例のうちアからテの部までを収めたものである︒
︵二︶底本
国立公文書館内閣文庫所蔵のもの
して用いた︒︵解説参照︶
︵三︶ 用語採集の範囲
底本のうち︑
①目録
②本文
③図版
︵函架番号三七五・四七︶を底本と の部分を用語採集の対象とした︒ただし︑③のうち︑判読しがたい語は除いた︒ 表紙.扉.ページを示す数字・奥付などの部分は︑用語採集の対象としない︒ なお︑本文の上部欄外に示された︑仮名・漢字の新出と読み替えの表示は︑トの部以下の用例を収めた﹃国定読本用語総覧3﹄の巻末に別に
まとめて付録とする︒︵四︶ 見出し語の立て方
自立語は原則として文節から助詞・助動詞を切り離したものを一単位
とし︑助詞.助動詞は︑﹃現代語の助詞・助動詞一用法と実例一﹄︵国
立国語研究所報告3︶を参考にして単位を決定した︒ただし︑
①形容動詞は立てない︒形容動詞の語幹にあたる部分を﹁形状詞﹂
として一単位とし︑語尾にあたる部分を助動詞とする︒
②サ変動詞﹁する﹂︑および﹁いたす・くださる・なさる・もうし
あげる﹂など意味上ほぼサ変動詞﹁する﹂にあたるものが︑体言ま
たは体言相当のものにじかに接続している場合は切り離さない︒
③助詞.助動詞を構成要素に持つ副詞・接続詞等の処理は別に行う︒
④動植物名や固有名詞︵人名・地名・戦争名・県名・題名など︶は
全体で一単位とする︒
⑤同語形であっても品詞の異なるもの︑口語・文語などで活用の異
なるものは別見出しとして扱った︒ただし︑﹁会う﹂のように口語
五段活用と文語四段活用の終止形が同形で併存するものは︑一つ
の見出しにまとめた︒
なお︑単位決定の詳細については︑別に問題語一覧を作成する予定で
ある︒
例
㈹ 凡
複合語などの後部にあらわれる要素については︑次のように切り出し
て見出しに立て︑号で︑主となる見出しを参照させて検索できるように
した︒ あいて 号いくさあいて・はなしあいて
また見出し語のうち︑以下にあげるように︑国定読本に用いられた語
形が︑現代語として一般的な語形と異なっていたり︑漢字表記の語で︑
読みに二通りの可能性があったりして︑検索に支障をきたすおそれのあ
るものや︑相互に参照することが望ましいと思われるものは︑*印をつ
けた空見出しをもうけ︑参照すべき項目を示した︒
*いりよう 号にゅうよう︵入用︶
*かねだか 弓きんだか︵金高︶
*そぼ うおば︵祖母︶
︵五︶ 見出し語の注記
各見出し語ごとに︑次のような事項を記した︒
見出し 漢字 注記 度数 表記
一 卍﹂
いつくしま いつくしま ︻厳島﹈︹地名︺2 嚴島 嚴島十一19図嚴島
用例
十一205図
幻くしま嚴島は古より日本三景の一に敷へられて殊に名山
所在︵巻・ページ・行︶層別 品詞 活用形 ﹇ 一いわ・う﹇祝﹈︵四・五︶2 祝フ 祝ふ余ーフ︾
五186 鯉ガタキヲ上ルヤウニ︑ズンズンシユツセヲセヨト
イフ心デ祝フノデセウ︒︵五二︶ 見出し
現代仮名遣いによって︑和語・漢語は平仮名︑外来語は片仮名で記し
た︒ 活用語は終止形を見出しとし︑活用しない部分と活用する部分との間
に・︵中点︶を入れた︒
︵五・二︶漢字
語の識別のため︑必要に応じて︑見出し語にあたる漢字を注記した︒
︵五・三︶ 品 詞
品詞は次の通りとし︑後に記すような略号を用いて示した︒なお︑助
詞と動詞は︑さらに細分類を行った︒
名詞︵名︶ 代名詞︵代名︶ 形状詞︵形状︶ 副詞︵副︶
連体詞︵連体︶ 接続詞︵接︶ 感動詞︵感︶ 助詞
動詞 形容詞︵形︶ 助動詞︵助動︶
助詞は次のように分類し︑後に記すような略号を用いて示した︒
格助詞︵格助︶ 副助詞︵副助︶ 係助詞︵係助︶ 接続助詞
︵接助︶ 並立助詞︵並助︶ 準体助詞︵準助︶ 終助詞︵終
助︶ 間投助詞︵三助︶
また︑動詞は活用の種類によって分かち︑次のように示した︒
四段︵四︶ 五段︵五︶ 上二段︵上二︶ 上一段︵上一︶
下二段︵下二︶ 下一段︵下一︶ 力行変格︵力変︶ サ行変
⑭ 例
凡
格︵サ変︶ ナ行変格︵ナ変︶ラ行変格︵ラ変︶
︵五・四︶ 人名・地名などの注記
見出し語の意味・用法について︑必要に応じて︑﹁人名・地名・課名・
話し手名﹂などの注記を加えた︒
︵五・五︶ 度 数
見出し語ごとに︑その使用度数︵用例の数︶を記した︒
︵五・六︶表記
その見出し語の全用例について︑片仮名・平仮名・漢字や︑振り仮名
の有無などの表記の異なりを列挙した︒二種類以上の表記がある場合
は︑次の順とした︒
①片仮名
②平仮名
③変体仮名
④漢字︵片仮名の振り仮名つき︶
⑤漢字︵平仮名の振り仮名つき︶
⑥漢字︵振り仮名なし︶
⑦アラビア数字
⑧ローマ数字
︵五・七︶ 活用形
活用のある見出し語の用例について︑活用形の異なるものを列挙した︒
ただし︑ここでいう活用形の異なりとは︑未然形・連用形などの別では
なく︑語形上の異なりをさす︒
活用形を列挙する際︑活用しない部分︵見出しで︑中点・より前の部分︶ は一で記し︑活用する部分を︑原文通りの仮名遣いで︑片仮名によって示した︒ また︑二つ以上の活用形がある場合は︐五十音順に並べた︒
︵六︶ 見出し語の排列
見出し語の排列は現代仮名遣いの五十音順とする︒ただし︑片仮名は
平仮名に︑濁音・半濁音は清音に︑小字︵アイゥェォ つやゆよ︶は普通
の仮名に︑長音符号﹁I﹂は直前の仮名の母音に︑それぞれ置き換えた
ものとみなして︑一字目から順次︑五十音順に排列する︒
同じ仮名の連なりとなった見出しは︑次の各項を一字目から順に適用
して排列する︒
①清音←濁音←半濁音
②小文字←大文字
すなわち︑拗音←直音︑促音←直音
③普通の仮名←長音符号
以上によっても排列の決まらないものは︑次の各項を順に適用して排
列する︒ ①次の品詞順とする︒
名詞←代名詞←形状詞←副詞←連体詞←接続詞←感動詞←助詞←
動詞←形容詞←助動詞
a名詞のなかでは次の順とする︒
課名←話し手名←人名←地名←それ以外の名詞
b助詞のなかでは次の順とする︒
格助詞←副助詞←係助詞←接続助詞←並立助詞←準体助詞←終
助詞←間投助詞
c動詞のなかでは次の活用順とする︒
例
⑱ 凡
四段←五段←上二段←上一段←下二段←下一段←黒変←サ変←
ナ変←ラ変
②漢字表記の付けられるもの︑付けられないもの順とする︒
a漢字表記の付けられるものについては︑字数の少ないものか
ら多いものの順とする︒字数が同じ場合は︑一字目の画数順と
し︑一字目が同画数の場合は︑﹃康煕字典﹄の順に並べ︑同字
はまとめたうえで︑二字目の画数順とする︒
b漢字表記の付けられないものについては︑
平仮名←片仮名︵外来語︶の順とする︒
︵七︶ 用例と所在
︵七二︶ 用例文
用例は︑仮名遣い・分かち書きなどまで︑できるだけ原文通りとした︒
漢字字体は︑対応する普通の明朝活字体とした︒
用例の長さは︑五十字︵本書の三行︶程度を目安として︑一文を採用
したが︑必要に応じて長短がある︒用例文の一部を省略する場合は︑
︵略﹀のように示した︒
同一見出し語に含まれる用例は︑底本における出現順に排列した︒
用例中︑見出し語にあたる部分は太字で示した︒
なお︑五十音図・いろはは︑本文ではそれぞれ一部分を示すにとど
め︑﹃国定読本用語総覧3﹄の巻末の付録に全体の形を示す︒
︵七・二︶所在
用例は︑見出しにあたる語のはじまる位置によって︑
ジ・行の順で所在を示した︒
なお︑目録と図版中の語は︑それぞれ 底本の巻・ぺ一
六目3
七25図のように記し︑目録または図版中の語であることが分かるようにした︒
︵七・三︶層別
用例文の文体上の性格を次の三尊八種に分類した︒
①口語文文語文候文 ②散文韻文手紙文 ③地の文会話文
以上のうち︑口語文・散文・地の文については注記せず︑それ以外は︑
上記の分類の第一字目によって︑國塵魍團園のように区分を示した︒
なお︑目録と図版中の語については︑原則として層別の表示を行わな
い︒