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学 位 論 文 要 旨

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Academic year: 2021

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(様式第13号)

学 位 論 文 要 旨

氏名: 田 中 智 美

題目: サルボウガイの資源管理に関する分子遺伝生態学的研究

(Molecular genetic ecological studies on the stock management of ark shell Scapharca kagoshimensis

本研究では,サルボウガイScapharca kagoshimensisの資源復活および資源管理に 資する遺伝生態学的知見の蓄積を目的とし,ミトコンドリアDNAマーカーの探索か ら集団遺伝構造解析までの一連の研究により,サルボウガイの詳細な生産構造を解 明した.

第1章では,サルボウガイの水産利用についてまとめ,それに関連した遺伝学的問 題点を分析した.サルボウガイは国内で水産利用される二枚貝である.その生産量 は年変動が大きく,資源量の維持や補填を目的に漁場間で頻繁に移植されたため,

遺伝的攪乱が危惧されている.さらに,山陰地域の中海において1970年代以降消滅 していた本種資源の復活が取り組まれており,今後の持続的かつ安定的な生産には,

遺伝的多様性を考慮した資源管理が重要である.

第2章では,分子遺伝学的手法で汎用されるミトコンドリアDNAについてまとめ,

本種近縁種3属7種からDNAマーカーを探索した.ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子4 マーカー,

16S rRNA遺伝子2マーカー, Cyt b遺伝子および12S rRNA遺伝子各1マー

カーの合計8マーカーをPCR法により検討した結果,COI遺伝子1マーカーのみで全 種からの増幅が確認された.塩基配列の比較解析および近隣結合系統樹により,当 該マーカーは本研究に利用可能な精度を有していた.

第3章では,本種の遺伝的多様性や地理的分布パターンについて,種分化以降の分 布形成過程を推定した.ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子マーカーを用い,国内8 集団および韓国1集団を対象としてハプロタイプ解析および集団遺伝学的解析によ り集団間の遺伝子流動や集団毎の遺伝構造を詳細に検討した結果,各集団はそれぞ れ遺伝的に独立していることが明らかとなり,本種は各地の棲息環境に適応した固 有の遺伝構造を発達させていることが示唆された.

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第4章では,中海で自然発生するサルボウガイ稚貝を用いて詳細な再生産構造を検 討した.湖内9地点から天然採苗された2009年266個体および2010年220個体の合計4

86個体を対象として,第3章に準じて解析した結果, 2009年は湖北部,湖中央部およ

び湖南部の3つの局所個体群が,2010年は湖中央部および湖南部の2つの局所個体群 が確認され,中海の本種はメタ個体群構造を保持していることが明らかとなった.

第5章では,本種の資源管理における遺伝的リスク管理について検討した.本種は 過去に漁場間で移植による資源増産が実施されたが,何れも成功していない.本研 究により,本種は明瞭な地域集団を形成しており,各集団を単位とした資源管理が 必要であることが示唆された.さらに,中海の地域集団内部に複数の局所個体群が 確認されたことから,本種資源の復活を目指した採苗や放流を実施する際は,地域 集団の遺伝特性を詳細に把握し,遺伝的リスク管理に基づいた資源管理が必要であ る.

※なお、一部図表等を割愛しています。

参照

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