博 士 ( 工 学 ) 土 田 敬 之
学 位 論 文 題 名
Reaction of Ethanol over Hydroxyapatite Catalyst
( ハ イ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト 触 媒 に よ る エ タ ノ ー ル の 反 応 )
学位論文内容の要旨
近年プラジル,ロシア,インド,中国を筆頭とする振興発展国(BRICs)の著しい経済成長などによ り世界の原油消費量は年々増加し,ガソリンや石油化学製品の価格上昇が問題とをっている.また。
人間社会から排出されるニ酸化炭素による地球温暖化が問題とをっている.一方,バイオエタノール は現在最 も注目されている石油代替資 源の1つである.米国のトウモロコシからのバイオエタノー ルの場合 ,LCA分析の基準によっては 投入する化石工ネルギー(Input)より生産されるエネルギー (Output)のほうが少をくをる(Output/Inputく1)こともあるという報告があるが,バイオェタノー ル先進国 のプラジルのさとうきびからのバイオエタノールの場合,Output/Inputが9〜10との報告 もあり,農作物によってその値は大きく異をる傾向が見られる,しかし,プラジルのバイオエタノー ル 製 造 コ ス ト は す で に 国 際 原 油 価 格 を 大 き く 下 回 っ て い る こ と も 事 実 で あ る , 本研究 はこの安価をバイオェタノー ルを原料とし,ハイドロキシアパタイト(HAP)触媒を用いて 1―ブタノールを合成する反応に注目した.一般に低級アルコールから高級アルコールを合成する反 応はGuerbet反応として知られている ,m廿は他の塩基触媒より高い選択率でェタノールから1‐プ タノール を合成する能カを有すること がわかった.そこで,本研 究ではHAP触媒のCa卩比と触媒 表面の酸 塩基性の関係,および触媒のCa用比とGuerbetアルコール収率の関係から,Guerbetアル コ ー ル 生 成 の メ カ ニ ズ ム を 推 定 し 。HAP触 媒 の 特 徴 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た . 第1章で は,研究の背景およびHAPの 一般的特徴と既往の研究を 紹介し,最後に本研究の目的と 本論文の構成を説明した.
第2章で は,沈殿法によるHAP触媒調 製時の因子がHAPの物性に与 える影響について検討した.
触媒調製における主要を工程の因子として,原料の仕込み比,溶液のpH,溶液の温度,および撹拌時 間を取り 上げた,その結果,HAPのCa胆比は,調製過程の溶液のpHが原料の仕込み比よりも大き を影響カをもっており,次いで溶液の温度、撹拌時間の順であった,また,調製時の因子および水準 が 異を って い ても 得ら れたHAPのCa田比 が 同じ であ れば ほば 同 じ塩基量を持 つ,すをわちHAP の塩基量 は,沈殿法により調製した場合,′ヾルクのCa問比のみに依存することを明らかにした.
第3章で は,HAP触媒とエタ丿ールの 反応で最も特徴的を反応であった1‐プタノールの高選択的 合成に着 目した,色々を塩基性触媒の スクリーニング試験結果と比較しても,Caア比の高いHAPに て最も1‐ブタノールの収率が高かった.また,生成物を精査した結果,1.ブタノールのほかに偶数の 高級アルコールが生成していることがわかった:反応温度および接触時間の検討の結果,1−プタノ―
ルを含む高級アルコール生成は,エタノールの逐次反応による1と推察され,シミュレーションを行 をったところ実験結果と一致した,
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第4章 では,HAP触媒を 用いる ことで エタノールからガソリン代替燃料を1段反応で選択的に合 成する手段と生成スキ―ムを検討した,このガソリン代替燃料の特徴は,ゼオライト触媒で得られる メタ ノール からの ガソリン合成(Methanol to Gasoline: MTG)の成分とは異をり,C6からCloの炭 化水 素を中 心とし た成分 であるがMTGプロ セスでは存在しをい含酸素炭化水素を有することであ る.さらに,HAP触媒によるエタノールからのガソリン成分生成のスキームを確認するため。原料が エタ ノール のみの 反応のとき得られるGuerbetアルコールのうち生成量の多い5種を選定し,これ らアルコールとェタノールとの等モル混合アルコールを原料に用いた転化反応試験を行をった,そ の結 果,HAP触 媒によるエタノールの転化反応では,増炭反応は直鎖アルコール同士のGuerbet反 応で,ジェン類はkbedev反応で,アルデヒド,オレフインは主に分岐アルコールの脱水素反応およ び脱水反応で得られることを明らかにした.
第5章 では,Ca伊比が 異謡るHAPのエタ ノール 転化特 性と表 面酸塩基性の関係について検討し た,その結果,HAPのCa卩比により触媒表面の酸塩基の分布が連続的に変化し,反応生成物である エチレン,1‐ブタノールおよび1,3 ̄ブタジェンの生成量が触媒の酸塩基比と強い相関があることを 見出した.さらに,HAP触媒に特徴的を生成物である1‐プタノールをどの高級アルコールの収率は、
原料工タノールの活性化確率(a)の関数で示せることを見出した.
第6章 では, 第1章から第5章を総括し,最後に得られた結論を要約した.すをわち,HAPは沈殿 法の プロセ ス因子 を適宜 選択する ことでCa田比を任意に変えることができ,その結果HAP表面の 酸塩 基バラ ンスを 制御で きること ,くmerbet反応がCa田比の高いHAP触媒で高選択的におきるこ とを明らかにした.その理由としては,HAP構造中のりン酸の水素保持作用にあると考えた,また.
工タノールからのGuerbetアルコールの生成確率は,原料工タノールの活性化確率(d)という指標 であらわせることを明らかにし,今後の展望とした.
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 上 田 渉 副 査 教 授 増 田 隆 夫 副 査 教 授 林 潤 一 郎 副 査 准 教 授 竹 口 竜 弥
副 査 教 授 福 岡 淳 (触 媒化 学研究 セン ター )
学 位 論 文 題 名
Reaction of Ethanol over Hydroxyapatite Catalyst
(ハイドロキシアパタイト触媒によるエタノールの反応)
近年 ブラジ ル,ロ シア ,イン ド,中 国をど の国の 著し い経済 成長を どによ り, 世界の 原油消 費量は年々 増 加 し, ガ ソ リ ン や石 油 化 学 製 品 の価 格上昇 が問 題と放 ってい る,ま た,人 間社 会から 排出さ れるニ 酸 化 炭素 に よ る 地 球温 暖 化 も 問 題 とを っ て い る .こ の よ う を 中, バ イ オ エ タノ ー ルが 石油代 替資源 の1っ とし て 注 目 さ れ、 燃 料 や 化 学 物質 合 成 の 原 料と し て の 利 用が 広 く 検 討 され て い る 。 本 論文 は バ イ オェ タ ノ ー ル を原 料 と し . 石 油化 学 工 業 の 重要 製 品 の ひとつ であ る1‐ プタ ノール を合成 する反 応 に 注目 し 、 そ の ため の 触 媒 化 学 検討 を 進 め た 結果 を ま と め てい る 。 エ タ ノー ル 利用 の合成 化学は 様 々 に検 討 さ れ る 中、 エ タ ノ ー ル から 直 接 高 級 アル コ ー ル を 合成 す る 反 応 につ い て検 討し、 ハイド ロ キ シ ア パ タ イ ト(Ca10(P04)6(〇H)2:HAP)触 媒 が 従 来 の 塩基 性 酸 化 物 触媒 よ り 極 め て高 い 選 択 率 で エ タ ノ ー ル2分 子 か ら 脱 水 し て1゛ プ タ ノ ー ル を 合 成 す る 能カ を 有 す る こと を 見 出 し 、HAP触 媒 のCa/P比 と 触 媒 表 面 の 酸 塩 基 性 の 関 係 , 触媒 のCa/P比 と ア ル コー ル 収 率 の 関 係を 詳 細 に 調 ベ、 エ タ ノ ー ルが 炭 素 成 長 し て高 級 ア ル コ ール が 生 成 す る反 応 機 構 を 考察 し ,HAP触 媒 の 特 徴 を明 ら か に して いる,
第1章「 General introduction(緒 言) 」では ,研究 の背 景およ びHAP触媒の 一般的 特徴 と既往 の研究 をま とめ. 最後に 本研 究の目 的と本 論文の 構成を 説明 してい る,
第2章l‑Influence of preparation process on the Ca/P ratio and surface basicity of HAP(HAP触媒の Ca/P比 と 表 面 塩 基 に 与 え る 調 製 因 子 の 影 響 ) 」 で は , 沈 殿 法 に よ るHAP触 媒 調製 時 の 因 子 がHAP の 物 性に 与 え る 影 響に つ い て 検 討 して いる. 触媒 調製に おける 主要謡 因子と して ,原料 の仕込 み比,
溶 液 のpH, 溶 液 の 温度 , お よ び 撹拌 時 間 を 取 り 上げ 、 そ の 影 響を 調 べ た 結 果,HAPのCa/P比 には , 調 製 過 程 の 溶 液 のpHが も っ と も大 き を 影 響 を及 ば し 、 原 料 の仕 込 み 比 は それ に 次 ぐ 影 響が あ る こ と を 見 出 し て い る . ま た , 調 製 時 の 各 条 件 が 大 き く 異 を っ て も得 ら れ るHAPのCa/P比 が 同 じ であ れ ば ほ ば 同 じ 表 面 酸 ・ 塩 基 量 を 持 つ こ と を 見 出 し ,HAPの 表面 酸 ・ 塩 基 性質 はCa/P比 に 強 く 依存 する 物性で あると 結論 してい る。
第3章FDirect synthesis of n‑butanol from ethanol over nonstoichiometric HAP(非化 学量 論HAP触
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媒を用いたエタノールからのn‐プタノールの直接合成)」では,HAP触媒上でのエタノール反応によ る1―プタノールの高選択的合成について検討している,様々を塩基性酸化物触媒の試験結果と比較 し、Ca/P比が1.67のHAP触媒が最も高い1‐ブタノール収率を与えることを見出している.また,
1‐プタノールのほか に偶数の炭素鎖からをる直 鎖1級アルコールおよび側鎖1級アルコールが生成 することを見出している.反応に対する反応温度および接触時間の影響を検討し,1‐ブタノールを含 む高級アルコール生 成はエタノールの逐次反応によると推論し、これをもとに生成物質の生成挙動 を シ ミ ュ レ ー シ ョ ン し て 実 験 結 果 を 再 現 さ せ 、 逐 次 反 応 挙 動 を 確 認 し て い る 。 第4章「Syn血esisofbiog鵠01inefromem跚oloverHAPca讎yst(HAP触 媒を 用い たエタノール か らのバイオガソリンの合成)」では,HAP触媒においてエタノールの反応は逐次的に進行する特徴を 利用し、より炭素ー 炭素結合形成が進む条件でのガソリン代替燃料(混合有機化合物)合成の可能 性を検討している。高い接触時間と高い反応温度条件のもと、エタノール転化率100ワ。で混合有機 化合物収量(c5+)65ワ。を達成している。このガソリン代替燃料の特徴は,ゼオライト触媒で得られ るメ タノ ールからのガソリン合成(MemanoltoGasoline:MTG)の 成分とは異をり,C6からC10の 炭化 水素 を中心とした成分であるがMTGプロセスでは存在しをい 含酸素炭化水素を有すること で あるとしている.
第5章 「ReacnonofemanoloverHAPafF託tedbyCaアrぬonofcぬdyst( 触媒 のC¢/P比 が異 をる HAP触媒 上で のェ タ ノー ルの 反応) 」では,CガP比が異をるHAP触媒のエタノール転化特性と 表 面酸 塩基 性の関係について検討して いる,HAP触媒のCガP比によ り触媒表面の酸塩基の分布が 連 続的に変化し,反応生成物であるエチレン,1‐ブタノールおよび1,3‐ブタジェンの生成量が触媒の酸 塩基比と強い相関があることを見出している.また、1−プタノールをどの高級アルコールの生成は,
原料エタノールの活 性化確率(d)で整理できる ことを見出し、この値により各種塩基性酸化物触 媒を 比較 している。これらの結果を もとにHAP触媒の持つ優れた 触媒性能の要因を反応機構論 か ら考察している。
第6章 「 Genermconclusion( 総 括 ) 」 で は , 第1章 か ら 第5章 を 総 括 し て い る 。 これを要するに、著 者は、HAPの触媒性能の設計 および制御因子に係る基礎的知見を与えており、
エタノールを利用し た化学の構築に対し学術上、実用上貢献するところ大誼るものがある。よって 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。
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