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代謝生化学の講義をして

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Academic year: 2021

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!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 私は医科単科大学の教員である.今年度で定年を迎える.大学での生活のうち講義について振り返ってみ ようと思う. 私の分担授業科目のおもなものは代謝生化学である.後期に90分講義を28回行っている. さてその講義であるが,若い頃は量子化学や熱力学を背景として講義をしていた.今となってはドエライ 講義をしていたと思う.チョット反省し,進化を中心に代謝全体を組み立てて講義したり,脳を中心にした 体まるごとの代謝を論じたり,またある時はエネルギー代謝を軸にして講義してきた. 紆余曲折はあったものの,最終的にはエネルギー代謝を軸に糖質・脂質・アミノ酸の各代謝を構成して, ヒトにおける物質代謝の臓器特異性と臓器相関に重点をおき,「脳の,脳による,脳のための代謝とその調 節」というストーリーのもとに講義をしてきた.こうすれば物質代謝と自律神経系や内分泌系との関わりを 統一的に理解でき,さらにこれらの知識を運用できるようになる,と考えたからである. 具体的な講義内容をいくつか示そう. たとえば定義であるが,ビタミンは13種の化合物群で定義される.補酵素の触媒型と基質型のうち,基 質型補酵素を「補酵素」とよぶのはやめる.またヒトでの糖新生は血糖供給過程まで含めるべきである. 解糖系の調節は,Aグルコースの細胞への取り込み,BNAD+の供給(酸化還元反応のカップリング), C不可逆反応の酵素,DADP の供給(細胞の仕事)の4つの視点から論じると,機能分化した細胞や臓器 によって解糖系の調節機構がちがうことが理解できる. 脳や赤血球の解糖系では積極的に止めようとする制御はかかるはずがない.もしそうなると ATP ができ ずニューロンは死に,赤血球では Na+/K-ATPase が働けず,赤血球膜は浸透圧に耐えられず細胞膜は破壊 され,溶血がおこる.その結果ヒトは死ぬことになろう.一方肝臓の解糖系は脂肪酸とコレステロール (VLDL)の合成経路の一部となっていて,合成系として働く(副交感神経優位状態).腎皮質の近位尿細管 細胞や小腸の粘膜上皮細胞は(再)吸収したグルコースの通り道であり,グルコースをエネルギー源として 分解しないようになっている.腎髄質ではグルコースのみを燃料にして ATP を産生している. 運動時の交感神経優位状態において,肝臓で筋肉(白筋)由来の乳酸から糖を合成し100% 再び筋肉へ輸 送すれば(コリ回路),低血糖で脳死になってしまう.コリ回路(?)の意義として脳への血糖供給の方を 強調すべきであろう. 肝臓でのβ酸化の意義は糖新生のための ATP を供給することで,肝においてβ酸化の亢進は糖新生と連 動している(交感神経優位).同時に,肝外組織でのエネルギー源となるケトン体の合成原料であるアセチ ル CoA の供給も意義の一つである.このとき肝臓でのクエン酸回路は抑制されている. アミノ基転移反応の意義は次のように考えることができる.アミノ酸の炭素骨格を利用するときアミノ基 をはずさなければならない.そのまま脱アミノすると特に脳にとって有毒なアンモニアになるので,とりあ えずそのアミノ基を2-オキソ酸に渡しておく.すなわちアミノ基処理問題の先送り,一時棚上げである. 尿素回路は有毒なアンモニアを無毒にするので,亢進系の調節はあっても積極的に抑制しようとする機構 はない.肝臓では尿素合成のために多くのアルギニンが分解されるが,小腸と腎臓が連係してアルギニンを 合成し補充している.ヘムの分解代謝において肝門脈系はビリルビン脳症を防ぐために大切である. 間脳の視交叉上核が自律神経を介して,体全体のエネルギー代謝を制御している.などなど. こうして生命の実体は,講義の便宜上の解剖・生理・生化などではなく,一つであることが体得され,そ の結果,生命のすばらしさ・すごさ,そして大切さが自然科学を基盤にして具象的に理解される.そのこと がのちの医療の現場で役に立つ.そのように希望しながら講義をしている. 学生は学校の宝である.このことを今一度肝に銘じたい.そうすれば,産学連携事業,高校大学連携事 業,単位認定制度など,大学をとりまく問題に対する視点や対処方法が変わるかもしれない.そう期待す る.

代謝生化学の講義をして

堀 池 喜 八 郎

* 〔生化学 第84巻 第8号,p.623,2012〕

アトモスフィア

滋賀医科大学医学部生化学・分子生物学講座(分子生理化学部門)

参照

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