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生活道路の安全

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Academic year: 2021

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交通科学 Vol.51, No.1(2020) - 1 -

生活道路の安全

柳 原 崇 男*

1.はじめに 我が国の交通事故死者数は,1993 年ごろから減少傾 向にあり,2020 年には,過去最少の 3000 人を下回る数 字となった 1).しかし,一方で生活道路に着目すると, 死傷者数の減少量は,幹線道路に比べ小さく,歩行者, 自転車事故による死傷者の約 5 割が自宅から 500m以内 で事故にあっていると言われており 2),安定的な事故減 少には至っていない. また,2019 年滋賀県大津市で散歩中の保育園児ら 16 人が死傷した事故を受け,国や自治体は子どもの安全確 保の取り組みを急いでいる.内閣府の報告 3)によると, 事故後に保育所や幼稚園などの子どもが集団で移動する 経路を緊急点検した結果,2019 年 10 月末までに,実施 箇所全体の約 7 割に当たる約 3 万 6 千カ所で安全対策が 必要との報告があったとされている.事故があった大津 市では保育施設周辺の道路を塗装するなどして,ドライ バーに注意を呼びかける「キッズゾーン」を全国に先駆 けて設置した.一方,全国に先駆けて,キッズゾーンを 導入した大津市担当者によると「車のスピードが落ちた という目に見えた効果は報告されていない」という意見 4)もあり,ハンプなどのデバイスを用いたハード面との 両面で安全確保につなげる必要がある. 生活道路の安全確保に関しては,「改訂 生活道路の ゾーン対策マニュアル」(2017)5)の出版や国土交通省 による「生活道の交通安全対策に関するポータルサイ ト」の立ち上げなど,様々な情報が提供され,各地で 様々な取り組みが実施されているところである.しかし, 現状でも生活道路に関しては,課題が多く残され,各地 での交通安全対策の事例や,様々な研究知見などを集め, さらに効果的な取り組みが望まれる. そこで,本特集では,生活道路に関する具体的な対策 事例や研究を取り上げ,生活道路の安全について議論を 深めたいと考えている. 2.本特集の構成 橋本論文では,交差点の隅切り半径縮小が,左折中や 左折直後の走行速度抑制に与える影響を実証的に検証し たものである.特に加速度に着目し,左折中,左折直後 の加速度について考察している.左折中の加速度抑制に 影響を与えている要素は,隅切り半径に加え,横断歩道 の有無や左折前の制限速度などの要因が影響している. しかし,左折直後は速度を回復するために加速度は上昇 するなど,ドライバー心理と街路要素の複雑な関係も明 らかにし,非常に興味深い論文である. 海野論文では,生活道路をどのような空間と捉えてい るかの意識や利用頻度と個人の特性,自動車運転に関す る意識,社会との繋がり等との関連を分析している.生 活道路の安全対策として,ゾーン 30 のようなゾーン対 策をする中で,利用者が生活道路をどのように考えてい るかを把握することは,対策を効果的にするためにも非 常に重要な要素となる.論文の結果では,生活道路の利 用意識とソーシャルキャピタル,行動基準尺度との関連 性が見られ,生活道路に対する意識が高い回答者ほど, 社会との繋がりやそれに基づく信頼関係,社会活動を活 発に行っており,行動基準に関しても自分より他者や地 域を意識していることが示されている.ゾーン対策では, 歩行者を優先すべき区域であるか気づいてもらい,規制 を遵守してもらうかが重要な要因となるが,地域のソー シャルキャピタルを高めることが,地域の安全にも繋が ることが示唆され,今後の住民主体型のまちづくり活動 等にも参考になる論文である. 稲垣論文では,交通弱者である視覚障害者に着目し, 視覚障害者の生活道路での交差点横断支援の具体的方策 を検討している.特に,視覚障害者の屋外歩行を支援す る視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)は,幹線 道路やバリアフリー法の生活関連経路(多数の人が利用 する施設の間を結ぶ道路)などに限定されており,生活 道路のような単断面道路にはほとんど導入されていない. 本論文では,生活道路交差点におけるドットラインと交 差点カラー舗装を対象にロービジョン者(弱視者)と全 交通科学 Vol.51, No.1 1~2(2020)

〈総 論〉

〈 General Article〉 Road safety in residential areas by Takao YANAGIHARA

*近畿大学理工学部社会環境工学科

Kindai University Department of Civil and Environmental Engineering

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交通科学 Vol.51, No.1(2020) - 2 - 盲者が安全に横断できるかを検証している.その結果, ドットラインはロービジョン者にとって有用性が高いが, カラー舗装は視認性が低く,横断の手掛かりとしては実 用的ではないとしている.全盲者に対しては,ドットラ イン,カラー舗装ともに,触覚的コントラストが低いた め,横断の手がかりとするには難しいことを明らかにし ている.視覚障害者の屋外の単独歩行を支援するデバイ スは,点字ブロック以外ほとんどなく,重要な研究に取 り組んでいる.ロービジョン者にとっては,道路の白線 が歩行の支援になると言われており,今回の実験でも, ドットラインはロービジョン者に有効であったことから, この研究を基にさらなら視覚障害者の単独歩行の安全性 を高める方策の検討が期待される. 谷口の報告では,神戸市の生活道路エリアを対象に, ETC2.0 データを用いた交通安全対策の検討行い,対策 検討の一環として,可搬型ハンプの効果検証を実施して いる.その結果,ハンプによる速度低減が見られ,交通 安全確保に有効であることが確認されている.ETC2.0 は走行経路や加速度といった車の挙動情報が取得できる ため,近年では交通の実態の分析,渋滞対策,交通安全 対策などに様々な分野に活用が期待されている.本報告 でも,ETC2.0 のデータから車両の走行速度が速く,道 路を横断する歩行者との錯綜時に急減速挙動が多数発生 している地点を明らかにし,そこでの対策を行っている. その効果も見られ,ハンプの本設設置も検討されている ことから,今後の生活道路の安全対策にとって,非常に 参考になる事例報告である. 奥野の報告では,生活道路の機能と道路交通安全対策 の一考察として,生活道路の機能,生活道路における交 通安全対策の概念,交通安全対策の事例がまとめられて いる.交通安全対策の概念としては,交通安全対策を実 施する領域(区域)をつくるゾーニング,通行を制限又 は抑制するブロッキングについて解説があり,ゾーン 30 やスクールゾーンの役割を説明している.また,交 通規制と道路の関係についても,制限速度 30 ㎞/hの箇 所における実データから,制限速度を超える約 15%の 走行速度をいかに抑えるかを考えることが必要であるこ とを述べるなど,生活道路の交通安全対策について考え 方などを網羅的に知ることができる資料である. 参考文献 1) 警察庁:令和2年中の交通事故死者数について https: //www.npa.go.jp/news/release/2021/20210104001jiko.html (最終閲覧日 2021 年 2 月 1 日) 2) 国土交通省:生活道路の安全対策に関するポータル サイト https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/sesaku/pdf/ 2-2-1.pdf(最終閲覧日 2021 年 2 月 1 日) 3) 内閣府:令和 2 年交通安全白書 4) 日本経済新聞 大阪夕刊 社会面 19 ページ 5) 交通工学研究会:改訂 生活道路のゾーン対策マニ ュアル,2017 (令和 3 年 2 月 16 日受付)(令和 3 年 2 月 16 日受理)

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