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多椎間頚椎前方除圧固定術における除圧方法の組み合わせとC5麻痺の関係

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Academic year: 2021

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原 著

第 49 回日本脊椎脊髄病学会優秀論文 J. Spine Res. 12: 694-702, 2021

多椎間頚椎前方除圧固定術における除圧方法の

組み合わせと C5 麻痺の関係

尾立 征一 四方 實彦 山村 知 岡畠 章憲 川口 慎治 田中 千晶 要 旨 はじめに:頚椎前方術後 C5 麻痺に関して椎体亜全摘と椎間除圧の違いに焦点を当てた報告は無い. 対象と方法:C4/5 を手術椎間に含んだ 839 症例を対象として,C5 麻痺発症のリスク因子を調査し,特に 椎体亜全摘と椎間除圧の組み合わせが C5 麻痺発症に及ぼす影響を検討した. 結果:C5 麻痺は 57 例(6.8%)で発症し, 麻痺発症の有無で 2 群に分けて比較した. 麻痺群で男性が多く, 年齢が高く,手術椎間数が多かった.手術椎間数が増えるほど麻痺発生は高頻度であった.C4/5 椎間に関 わる除圧は 4 パターンに分けられたが,C5 麻痺発症率は C4 と C5 椎体亜全摘を行った場合に最も高く (10.1%),C4/5 椎間除圧を行った場合が最も低かった(4.1%).独自に除圧組み合わせスコアを創り結果の 分析に用いたところ,高スコアの術式であるほど麻痺は高率に発症していた.ロジスティック回帰分析で は,性別(男性),除圧組み合わせスコア,年齢が関連因子として挙げられた. 結語:C5 麻痺は,高齢・男性・多椎体亜全摘症例で発症しやすく,C4/5 椎間除圧症例では発症頻度が低 いことから,椎体亜全摘後の過剰な硬膜拡大と固定椎間短縮による椎間孔狭窄の関与が示唆された. キーワード:C5麻痺,頚椎前方除圧固定術,危険因子

はじめに

頚椎手術後 C5 麻痺はよく知られている遅発性合 併症である.その発症メカニズムに関しては様々な 説が提唱されているものの,各種条件の多様性も影 響しこれまで統一した見解が得られていない.麻痺 は後方手術後でも前方手術後でも発症するが1)∼3),後 方手術後の C5 麻痺に関する文献4)∼7)と比較して前 方手術後の文献は少ない8)∼13) 前方手術における除圧手段としては椎体亜全摘と 椎間除圧が挙げられ,それぞれに特有の長所と短所 がある.椎体亜全摘の長所は椎体後面の病変を切除 しやすいことにあるが,除圧後には正常解剖では存 在しない大きな空間を作り,前方への過度な硬膜拡 大を認めることがある.一方,椎間除圧は圧迫を受 けて変形し走行が変わっていた神経組織を正常解剖 に近い形態に復位させるにとどめられ,椎体後壁は 温存されるため椎体亜全摘後に見られるような過度 な硬膜拡大も見られない.このことに加えて椎体亜 全摘よりも固定椎間の安定性が高く,術後の沈み込 みによる固定椎間短縮量が椎体亜全摘後よりも少な い14)∼16) 今回著者らは,自施設で行った頚椎前方除圧固定 術施行症例で C5 麻痺発症の危険因子を検討し,椎 連絡先:尾立 征一([email protected]) 学研都市病院整形外科 受付日:2020 年 11 月 6 日,採用日:2020 年 11 月 25 日 本研究は第 49 回日本脊椎脊髄病学会学術集会で発表した.原著論文であり,過去に他の雑誌に掲載されたことはなく,掲載予定 もない.

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図 1 手術椎間数と C5 麻痺発症率 手術椎間数が増えるごとに C5 麻痺発症率が高くなる傾向があった(p<0.01, Cochran-Armitage の傾向検定). 体亜全摘と椎間除圧の組み合わせと C5 麻痺発症へ の関連に焦点を当てて検討を行い文献的考察も踏ま えて報告する.

対象と方法

2006 年 4 月∼2019 年 9 月に頚椎前方除圧固定術 を行った 1,097 症例のうち,腫瘍・外傷・感染・変 形矯正・後方同時固定例を除外し,C4/5 椎間を手術 椎間に含み,1 年以上追跡可能であった 839 症例を 抽出した. 全例左側からの Smith-Robinson アプローチによ り手術を行った.後縦靭帯骨化や遊離した椎間板ヘ ルニアなどの圧迫病変が椎体後面にまで存在する場 合には椎体亜全摘を適用し,肥厚した後縦靭帯を菲 薄化し,硬膜が露出する程度まで正中部分は切除し た.1 椎体亜全摘では腸骨を,2 椎体以上の亜全摘で は腓骨を移植した.椎間板ヘルニアや骨棘などの圧 迫病変が椎間板高位にとどまっている部位には椎間 除圧を適用し,除圧部には腸骨を充填した椎体間 ケージを挿入した.椎体亜全摘,椎間除圧,ハイブ リッド除圧(前 2 者の併用)のいずれを用いるかは, 症状と画像所見に応じて術者が決定した.全例で頚 椎プレートを併用した.術後に三角筋筋力が徒手筋 力テスト(MMT)で術前よりも 2 段階以上低下した 場合に術後 C5 麻痺として記録した. 検討項目は,患者背景(年齢,性別,疾患),術式 (手術椎間数,手術高位,除圧手段の組み合わせ), C5 麻痺発症の有無とし,C5 麻痺発症群と非発症群 の 2 群間で単変量解析を行った.また C5 麻痺発症 の有無を目的変数として多変量解析を行った.説明 変数には年齢・性別と前述の 2 群比較で挙げられた 危険因子を採用した.また,追加検討項目として C 5 麻痺発症例と C4/5 椎間除圧が適用された症例の 術後画像所見(術後の硬膜拡大量,固定椎間の短縮 量)も計測した. 統計学的手法として,単変量解析には student の t 検定と Fisher の正確検定を,多変量解析にはロジ スティック回帰分析,各群の比率が外的基準と線形 傾向があるかどうかの検定には Cochran-Armitage の傾向検定を行い,p<0.05 を有意差ありとした. 本研究は当院倫理委員会の許可を得て行った.

結 果

術後 C5 麻痺は 57 例(6.8%)で発症していた.C 5 麻痺を生ずるまでの平均日数は 4.6±5.6 日(1∼28 日)であった.最終観察時には 41 例で麻痺は完全回 復し,16 例で MMT は 4 以下にとどまっていた. 手術椎間数が増えるほど C5 麻痺発生頻度が高い 傾向にあった(p<0.01;図 1).C4/5 椎間に関わる除 圧方法によって 4 群に分けられ(C5 麻痺症例/全症 例,発症率)はそれぞれ麻痺の発症率が高い順に「C 4 と C5 椎 体 亜 全 摘」(30/280 例,10.1%),「C4 椎 体 亜 全 摘」(4/69 例,5.8%),「C5 椎 体 亜 全 摘」(21/441 例,4.8%),「C4/5 椎間除圧」(2/49 例,4.1%)となり,C

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図 2 C4/5 椎間に関わる除圧手段と C5 麻痺発症率 多椎間前方除圧固定術を行った 839 症例で C4/5 椎間 の除圧方法によって 4 群に分類した.C5 麻痺発症率 は「C4 および C5 椎体亜全摘」を行った場合に発症頻 度が最も高く,次いで「C4 椎体亜全摘」,「C5 椎体亜 全摘」と続き,「C4/5 椎間除圧」を行った場合の C5 麻痺発症率が最も低かった(p<0.05,Fisher の正確 検定). 図 3 除圧組み合わせスコアの配点ルール C4/5 椎間に関わる除圧方法と手術椎間数が与える C5 麻痺発症への影響度を,今回の調査結果をもとに重み づけして配点した.C4 亜全摘を 1 点,C5 亜全摘を 1 点,それ以外の椎体亜全摘を 0.5 点,C4/5 椎間除圧を 0.5 点,それ以外の椎間除圧を 0 点として,症例ごと に施行された除圧の組み合わせを合算した. 図 4 除圧組み合わせスコアと C5 麻痺発症率 高スコアの術式であるほど C5 麻痺発症率が高くなる傾向があった(p<0.01, Cochran-Armitage の傾向検定). 5 麻痺発症は「C4 と C5 椎体亜全摘」群が最も高率 で,「C4/5 椎間除圧」群が最も低率であった(p< 0.05;図 2).以上の結果をもとに,独自に除圧組み合 わせスコア(図 3)を創り結果の分析に用いた.除圧 組み合わせスコアが高スコアの術式であるほど C5 麻痺発生率は高率であった(p<0.01;図 4).表 1 に全 839 症例の除圧の組み合わせ,手術椎間数,除 圧組み合わせスコア,C5 麻痺発症率をまとめた. C5 麻痺発症の有無で 2 群に分けて前述の各調査 項目について群間で比較したところ(C5 麻痺群/非 麻 痺 群),C5 麻 痺 群 の 方 が 男 性 が 多 く(86% vs. 63%;p<0.01),年 齢 が 高 く(66 歳 vs. 59 歳;p< 0.01),手術椎間数が多く(3.5 椎間 vs. 3.1 椎間;p <0.01),除圧組み合わせスコアが高かった(1.8 点 vs. 1.5 点;p<0.01).疾患は OPLL 症例が多い傾向 があった(37% vs. 25%;p=0.05)(表 2). C5 麻痺発症の有無を目的変数とし,前述の単変量 解析で挙げられた危険因子を説明変数としてロジス ティック回帰分析を行うと,性別(男性),除圧組み 合わせスコア,年齢が関連因子として挙げられた(表

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表 1 全 839 症例の除圧組み合わせと C5 麻痺発症数 手術椎間数 手術範囲 除圧の組み合わせ※ 除圧組み合わせ スコア 症例数 (人) C5 麻痺症例数 (人) 発症率 1 椎間 C4 ∼ 5 4/5 0.5 点 8 0 0% 2 椎間 C4 ∼ 5,C6 ∼ 7 4/5,6/7 0.5 点 1 0 0% C4 ∼ 5 ∼ 6 ⑤ 1 点 134 1 0.7% 4/5/6 0.5 点 8 1 13% C3 ∼ 4 ∼ 5 ④ 1 点 40 1 2.5% 3/4/5 0.5 点 3 0 0% 3 椎間 C4 ∼ 5 ∼ 6 ∼ 7 4/5/6/7 0.5 点 7 0 0% ⑤⑥ 1.5 点 203 8 3.9% ⑤ 6/7 1 点 14 1 7.1% 4/5 ⑥ 0.5 点 10 1 10% ④ 6/7 1 点 5 0 0% 4/5 ⑦ 0.5 点 2 0 0% C3 ∼ 4 ∼ 5 ∼ 6 ④⑤ 2 点 124 12 10% ④ 5/6 1 点 8 2 25% 3/4 ⑤ 1 点 10 0 0% 3/4/5/6 0.5 点 1 0 0% C2 ∼ 3 ∼ 4 ∼ 5 ③④ 1.5 点 9 0 0% 4 椎間 C4 ∼ 5 ∼ 6 ∼ 7 ∼ Th1 ⑤⑥⑦ 2 点 4 0 0% ⑤⑥ 7/1 1.5 点 1 0 0% 4/5/6/7/1 0.5 点 2 0 0% C3 ∼ 4 ∼ 5 ∼ 6 ∼ 7 ④⑤⑥ 2.5 点 63 8 13% ④⑤ 6/7 2 点 71 5 7.0% 3/4 ⑤⑥ 1.5 点 67 11 17% ④ 5/6/7 1 点 5 1 20% 3/4/⑤ 6/7 1 点 5 0 0% 3/4/5/6/7 0.5 点 5 0 0% 3/4/5 ⑥ 0.5 点 1 0 0% C2 ∼ 3 ∼ 4 ∼ 5 ∼ 6 ③④⑤ 2.5 点 10 0 0% 5 椎間 C3 ∼ 4 ∼ 5 ∼ 6 ∼ 7 ∼ Th1 ④⑤⑥⑦ 3 点 5 1 20% 3/4 ⑤⑥ 7/1 1.5 点 1 0 0% 3/4 ⑤⑥⑦ 2 点 2 0 0% ④ 5/6/7/1 1 点 1 0 0% 3/4/5/6/7/1 0.5 点 1 0 0% ③④ 5/6/7 1.5 点 1 0 0% C2 ∼ 3 ∼ 4 ∼ 5 ∼ 6 ∼ 7 ③④⑤⑥ 3 点 5 3 60% 6 椎間 C2 ∼ 3 ∼ 4 ∼ 5 ∼ 6 ∼ 7 ∼ Th1 ③④⑤⑥⑦ 3.5 点 1 0 0% 2/3 ④⑤ 6/7 2 点 1 1 100% ※除圧の組み合わせについて,椎体亜全摘は「〇」,椎間板除圧は「/」で表記した.例えば C5 椎体亜全摘は「⑤」,C4/5 椎間 除圧は「4/5」と表記した. 3).C5 麻痺発症の有無について ROC 曲線を用いて 導出したカットオフ値は除圧組み合わせスコアが 1.5 点(AUC 0.656)で,年齢が 59 歳(AUC 0.675)で あった. 手術前後の画像所見について C5 麻痺を生じた 57 例と C4/5 椎間に対して椎間除圧されたうちで C5 麻痺を生じなかった 47 例の比較では,術後硬膜拡大 量(7.2 mm vs. 1.9 mm, p<0.01)と 1 椎間あたりの短 縮 量(0.9 mm vs. 0.4 mm, p<0.01)は い ず れ も C5 麻痺症例で大きかった(表 4). 典型症例を図 5(非 C5 麻痺症例)と図 6(C5 麻痺 症例)に示す.

考 察

本研究は,多椎間頚椎前方除圧固定術後 C5 麻痺 発症に関する椎体亜全摘と椎間除圧の違いに焦点を 当てて検討したものである.今回の検討における C 5 麻痺の発症率は 6.8% で,手術椎間数が増えるほど 発症率は高く(図 1),発症の予測因子に関する統計 解析結果も含め,前方除圧後 C5 麻痺に関する従来 の報告と矛盾しないものであった1),8)∼11),13) C4/5 椎間に関わる除圧は 4 パターンに分けられ

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表 2 患者背景の 2 群間比較 C5 麻痺群 非 C5 麻痺群 p 患者数,人 57 782 性,男性:女性,人(%) 49:8(86:14) 495:287(63:37) <0.01 平均年齢,歳(範囲) 65.9±8.7(40 ∼ 83) 58.6±11.6(28 ∼ 84) <0.01 診断,CSM:CSR:OPLL,人(%) 32:4:21(56:7:37) 490:97:195(63:9:25) 0.05 手術椎間数(範囲) 3.5±0.7(2 ∼ 5) 3.1±0.8(1 ∼ 6) <0.01 除圧組み合わせスコア,点(範囲) 1.8±0.5(0.5 ∼ 3) 1.5±0.5(0.5 ∼ 3.5) <0.01 CSM,頚椎症性脊髄症;CSR,頚椎症性神経根症;OPLL,後縦靭帯骨化症 表 3 C5 麻痺発症に関連する因子(多変量ロジスティック回帰分析) オッズ比(95% 信頼区間) p 性別(男性) 3.77(1.72 ∼ 8.26) <0.01 除圧組み合わせスコア(1 点上がるごとに) 2.09(1.28 ∼ 3.44) <0.01 年齢(1 歳上がるごとに) 1.08(1.04 ∼ 1.11) <0.01 表 4 術後硬膜拡大量と固定椎間短縮量 C5 麻痺を生じた症例 (57 名) C5 麻痺を生じなかった C4/5 椎間除圧症例(47 名) p C4 ∼ C5 高位の硬膜拡大量,mm(範囲) 7.23±2.76(0 ∼ 12) 1.87±1.40(0 ∼ 5) <0.01 1 椎間あたりの短縮量,mm(範囲) 0.92±0.76(0 ∼ 2.67) 0.42±0.48(0 ∼ 1.67) <0.01 たが,C5 麻痺発症率は C4 と C5 椎体亜全摘を行っ た場合が最も高く(10.1%),C4/5 椎間除圧を行った 場合が最も低かった(4.1%)(図 2).しかし,この 2 者は除圧高位や除圧椎間数が異なり,C5 麻痺発症へ の影響について単純に比較出来ない.従って,椎体 亜全摘と椎間除圧の C5 麻痺発症への関与について 評価するためには,手術椎間数・手術高位・除圧手 段の要素を融合させて解析する必要があると考え た.そこで,今回の結果をもとにして独自に「除圧 組み合わせスコア」(図 3)を創り,検討に用いた.統 計解析の結果,除圧組み合わせスコアが高スコアの 術式であるほど C5 麻痺発症率は高く(図 4),多変量 解析でも,除圧組み合わせスコアは C5 麻痺発症の 関連因子であることが確認された(表 3).ROC 曲線 から導かれた除圧組み合わせスコアのカットオフ値 は 1.5 点であった.例えば,C3/4/5/6 の 3 椎間病変 を有する頚部脊髄症の手術計画として,C4 と C5 椎体亜全摘(1+1=2 点)を適用すれば C5 麻痺発生 リスクが高い術式であると予想され,すべての椎間 に椎間除圧(0+0.5+0=0.5 点)を適用できるなら C 5 麻痺発生リスクは低いと予想できる. C5 麻痺発症機序について,一つの要因だけですべ てを説明することは難しく,複数の要因が重なって 発症するものと考える.後方手術における有力な説 の一つに,後方への脊髄移動に伴う神経根牽引と椎 間孔狭窄が重なって C5 麻痺が生ずる説(tethering effect)がある4)∼7),17).後方手術と比較して数は少ない ながら,前方手術後に生ずる C5 麻痺でも脊髄前方 移動と椎間孔狭窄との関連が指摘されている. Ikenaga らは,563 例の多椎間頚椎前方除圧固定 術後に生じた 18 例の C5 麻痺症例について調査し, 術後の硬膜拡大と C5 麻痺発症の関与を示した9) Hashimoto らは,199 例の頚椎前方除圧固定術後 に生じた 17 例の術後 C5 麻痺症例について調査し, 術前の脊髄障害の存在・椎間孔狭窄の存在・脊髄前 方移動と神経根牽引など,複数要因の関与を示し た10) 著者らも,459 例の多椎間頚椎前方除圧固定術後 に生じた 32 例の C5 麻痺症例について調査し,幅広 い除圧・硬膜の拡大・椎間孔狭窄と C5 麻痺発症の 関与を示した11) 高瀬らは,65 例の多椎間頚椎前方除圧固定術後に 生じた 3 例の C5 麻痺症例の検討から,脊髄前方移 動・椎間孔狭窄と C5 麻痺発症の関与を示した12) また,tethering effect 説から派生し,C5 麻痺予防 策として除圧の幅を狭くして硬膜拡大や除圧方向へ の脊髄移動の抑制を推奨する文献は後方手術18),19) 多いが,前方手術8),11)でもある.

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図 5 C5 麻痺を生じなかった症例 C3/4/5/6/7 を椎間除圧した.除圧組み合わせスコアは 0+0.5+0+0=0.5 点. 術後 C5 麻痺を生じなかった. 図 6 C5 麻痺を生じた症例 C3/4/5/6/7 を C4・C5・C6 の 3 椎体亜全摘で除圧した.除圧組み合わせスコアは 1+1+0.5 =2.5 点.術後 C5 麻痺を発症した.C4/5 高位での硬膜は前方に 9 mm 拡大し,固定部分は 術後 6 mm の短縮を認めていた.

C5 麻痺発症に関する椎体亜全摘と椎間除圧

の違い

今回の検討で椎体亜全摘は椎間除圧よりも C5 麻 痺発症が高頻度であることが示唆された.両者には 明確な違いが 2 つある.1 つは,除圧後の神経周囲環 境変化の違いである.椎体亜全摘後には正常解剖で は見られない過剰な硬膜拡大をしばしば認め,この 変化は神経組織への牽引力を生ずることになると考 える.一方で椎間除圧は椎体後壁は温存しつつ脊柱 管側に膨隆した椎間板や骨棘を切除するだけで,過 剰な硬膜拡大・神経組織への牽引力はほとんど生じ

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表 5 椎体亜全摘と椎間除圧の違いと C5 麻痺発症との関連について (著者らの推測) 椎体亜全摘 椎間除圧 硬膜の拡大→神経根の牽引 + − C4/5 椎間の短縮→医原性椎間孔部狭窄 ++ + C5 麻痺発症リスク +++ ± ないと考える.2 つめは,固定部分の沈み込み(短縮) 量の違いである.Oh らは,2 椎間の椎間除圧と 1 椎体の亜全摘の比較で,臨床成績は同等であったが 椎体亜全摘では固定椎間の短縮量が多かったと述べ ている14).椎間除圧では,ルシュカ関節と椎体を残す ことから,前方固定術後にある程度は避ける事の出 来ない術後の固定椎間の短縮14)∼16)の軽減が期待でき る.椎間孔の高さを維持することで C5 神経根に とって健全な環境が保たれる. このたびの追加検討でも,C5 麻痺発症群は C4/5 椎間除圧施行群より有意に固定椎間短縮量が多く, 硬膜拡大量も多かった(表 4).今回検討した 57 名の C5 麻痺は手術直後には見られず,術後平均 4.6 日で 発症していた.椎体亜全摘後の経時的な固定椎間短 縮に伴う椎間孔狭窄がこのような遅発性麻痺と関連 している可能性がある. 過去の文献と今回の検討結果から,C5 麻痺発症率 が椎体亜全摘施行症例で高く C4/5 椎間除圧施行症 例で低かったのは,術後の硬膜拡大と医原性椎間孔 狭窄の程度の違い,つまり C5 神経根に対する teth-ering effect の差によるものと推測した(表 5). 本研究の問題点として,後ろ向き研究であり患者 背景が一定ではなく術式選択も術者の判断に委ねら れていること,C4/5 椎間孔の術前後の変化や硬膜拡 大に伴う神経組織への牽引力が計測できていないこ と,除圧組み合わせスコアの配点の重みづけに関す る統計学的妥当性が検証されていないこと,が挙げ られる.今後は治療方針を画一化して症例を蓄積し て,解析を続ける必要がある.

まとめ

頚椎前方除圧固定術後 C5 麻痺は,高齢・男性・ 多椎体亜全摘症例で発症しやすく,一方で C4/5 椎 間除圧後には発症頻度が低いことから,椎体亜全摘 後の過剰な硬膜拡大と固定椎間短縮による医原性椎 間孔狭窄の関与が示唆された.多椎間頚椎前方除圧 固定術を行う際,C5 麻痺予防の観点からは,椎間孔 の可及的開放を意識することはもとより,病態が許 される限りにおいて,椎体亜全摘を避けて椎間板切 除を選択することが推奨される. 利益相反 本論文に関連し開示すべき利益相反はなし. 謝 辞 本論文の作成にあたり,除圧組み合わせスコアと統計解析につい てご助言を頂いた京都市立病院整形外科の竹本充先生に感謝の意 を表します. 文 献

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Original Article

J. Spine Res. 12: 694-702, 2021

Effects of Various Combinations of Anterior Cervical Decompression

Procedures on Postoperative C5 Palsy

Seiichi Odate Jitsuhiko Shikata Satoru Yamamura Akinori Okahata Shinji Kawaguchi Chiaki Tanaka

Department of Orthopaedic Surgery, Gakkentoshi Hospital

Abstract

Introduction: Postoperative C5 palsy (C5P) is a common complication after cervical spine decompression surgery. The eti-ology of C5P after anterior cervical decompression with spinal fusion (ASF) has not yet been fully described. Among ante-rior cervical decompressive procedures, both corpectomy and discectomy are important surgical methods, and both have their peculiar advantages and disadvantages. Corpectomy induces excessive dural expansion and shortening of the fixed segments. We thought that the environmental changes occurring after corpectomy might cause C5P, but it is unknown whether corpec-tomy affects the incidence of C5P. In the present study, we analyzed the effects of various combinations of decompression procedures on the incidence of C5P.

Methods: We retrospectively analyzed 839 patients who underwent ASF at a single institution. The surgical choice to use corpectomy, discectomy, or hybrid decompression (corpectomy combined with discectomy for an adjacent segment) was based on same treatment strategy depending on local compressive pathology and presenting clinical symptoms. For assessing the effects of various combinations of decompression procedures on C5P and the disc segments operated, we used an original “decompression combination score,” which integrated both factors.

Results: C5P occurred in 57 (6.8%) patients. C5P did not occur immediately after surgery; the mean latency from surgery to its development was 4.6±5.6 days. A larger number of operated disc segments were significantly associated with C5P (p < 0.01). The incidences of C5P following various decompression procedures around the C4/5 segments were as follows: C4 and C5 corpectomy (10.1%)> C4 corpectomy (5.8%) > C5 corpectomy (4.8%) > C4/5 discectomy (4.1%). The decom-pression combination score was significantly higher in patients with C5P than in those without C5P (1.8 points vs. 1.5 points; p< 0.01). Higher scores were significantly associated with C5P (p < 0.01). Multivariate analysis revealed male sex [odds ratio (OR): 3.77, 95% confidence interval (CI): 1.72-8.26], higher decompression combination score (OR: 2.09, 95% CI: 1.28-3.44), and older age (OR: 1.08, 95% CI: 1.04-1.11) as significant risk factors. The estimated optimal cutoff values for predicting C5P using receiver-operating characteristic curve analysis were 1.5 points for the decompression combination score (area under the curve: 0.656) and 59 years for age (area under the curve: 0.675).

Conclusions: While performing ASF, C4/C5 corpectomy increased the incidence of C5P, whereas C4/C5 discectomy de-creased the risk. The lower incidence of postoperative C5P after discectomy may be due to minimizing the tethering effect. As a preventive measure against C5P after ASF, corpectomy should be avoided, and discectomy is recommended as much as possible.

図 1 手術椎間数と C5 麻痺発症率 手術椎間数が増えるごとに C5 麻痺発症率が高くなる傾向があった(p<0.01, Cochran-Armitage の傾向検定). 体亜全摘と椎間除圧の組み合わせと C5 麻痺発症へ の関連に焦点を当てて検討を行い文献的考察も踏ま えて報告する. 対象と方法 2006 年 4 月〜2019 年 9 月に頚椎前方除圧固定術 を行った 1,097 症例のうち,腫瘍・外傷・感染・変 形矯正・後方同時固定例を除外し, C4/5 椎間を手術 椎間に含み,1 年以上追跡可能であっ
図 2 C4/5 椎間に関わる除圧手段と C5 麻痺発症率 多椎間前方除圧固定術を行った 839 症例で C4/5 椎間 の除圧方法によって 4 群に分類した.C5 麻痺発症率 は「C4 および C5 椎体亜全摘」を行った場合に発症頻 度が最も高く,次いで「C4 椎体亜全摘」, 「C5 椎体亜 全摘」と続き,「C4/5 椎間除圧」を行った場合の C5 麻痺発症率が最も低かった(p<0.05,Fisher の正確 検定). 図 3 除圧組み合わせスコアの配点ルール C4/5 椎間に関わる除圧方法と手術椎間数が
表 1 全 839 症例の除圧組み合わせと C5 麻痺発症数 手術椎間数 手術範囲 除圧の組み合わせ※ 除圧組み合わせ スコア 症例数(人) C5 麻痺症例数(人) 発症率 1 椎間 C4 〜 5 4/5 0.5 点 8 0 0% 2 椎間 C4 〜 5,C6 〜 7 4/5,6/7 0.5 点 1 0 0% C4 〜 5 〜 6 ⑤ 1 点 134 1 0.7% 4/5/6 0.5 点 8 1 13% C3 〜 4 〜 5 ④ 1 点 40 1 2.5% 3/4/5 0.5 点 3 0 0% 3 椎間 C
表 2 患者背景の 2 群間比較 C5 麻痺群 非 C5 麻痺群 p 患者数,人 57 782 性,男性:女性,人(%) 49:8(86:14) 495:287(63:37) <0.01 平均年齢,歳(範囲) 65.9±8.7(40 〜 83) 58.6±11.6(28 〜 84) <0.01 診断,CSM:CSR:OPLL,人(%) 32:4:21(56:7:37) 490:97:195(63:9:25) 0.05 手術椎間数(範囲) 3.5±0.7(2 〜 5) 3.1±0.8(1 〜 6) <0.01
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参照

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