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中学・高等学校の体育における弱視生徒が抱える困難さ

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Academic year: 2021

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(1)アダプテッド体育・スポーツ学研究 6(1):2-5, 2020. 中学・高等学校の体育における弱視生徒が抱える困難さ 井上幹智1) 齊藤まゆみ2) 筑波大学大学院1) 筑波大学体育系2). Difficulty of participation in Physical Education class for the students with low vision Inoue Masatoshi1) Saito Mayumi2) Graduate School of Comprehensive Human Sciences, Master's Program in Physical Education, Health and Sport Sciences, University of Tsukuba1) University of Tsukuba2) キーワード:通常校 体育 弱視生徒 困難さ Ⅰ諸言 通常の学校における視覚障害生徒は、健常の生徒に比べ体育授業で活動が不十分である こと(木村,2015)やスポーツ機会が少ないこと(木村,2016)が報告されている。現在日本では インクルーシブ教育が重視され、通常校では何らかの支援を必要とする生徒の在籍数が増 加している。そのため、弱視生徒が十分な教育を受けているとは言い難い現状は、早急に 解決するべきであると考える。また学校体育の面において弱視生徒は、見た目からは障害 のあることが分かりづらい。そのため周囲からの目や障害者スポーツの実施に抵抗を覚え ることがある。これは通常校に在籍する弱視生徒特有の悩みであり、周囲と自分を比較す ることで感じる否定的な感情である。このような心理的側面に加え、体育への参加は物理 的な危険性も含んでいる。大山ら(2013)は、小・中学校に在籍する弱視児童・生徒は体育 の授業、特に球技において困難を感じていることを明らかにした。 先行研究より、通常校において弱視生徒が体育実技の面で困難を抱いていることは明ら かになったが、その詳細や具体的な改善点は提示されていない。また通常校に在籍してい る弱視生徒の現状も未だ明らかにされていない。 そこで本研究では、中学校・高等学校に在籍していた弱視者が感じた困難さを見つけ出 し、学校体育において弱視生徒が十分に参加できる授業を検討する為の基礎資料を得るこ とを目的とする。 Ⅱ方法 対象者は、中学及び高等学校に在籍経験のある成人の弱視者 3 名(対象者 H、N、S)であ. 2.

(2) アダプテッド体育・スポーツ学研究 6(1):2-5, 2020. った。対象者 H、N、S は全員が中途障害であり、また中学及び高等学校では通常校に在 籍しており、特別支援学校の在籍経験はない。対象者には、本研究の趣旨を説明し研究参 加への了解を得た。 調査方法は、対象者ごとに約 50 分の半構造化面接を行い、対象者同意のもとに録音し た。調査項目は、体育に関すること、教師に関すること、仲間に関することの3項目とし た。 分析方法は、得られたデータを逐語化し、そこから得られたデータをコード化し類似す る項目ごとにカテゴリー化を行う質的分析を行なった。 Ⅲ結果 表1は対象者から得られた困難さに関する回答をカテゴリー化し、表にまとめたもので ある。最も上位のカテゴリーとして 10 通りに分類し、それらの下位カテゴリーとして2 段階のカテゴリーに分類した。以下、 【大カテゴリー】 、 《中カテゴリー》 、 〈小カテゴリ ー〉と表記する。 表1 カテゴリー別の回答一覧. 結果として、体育に関する項目では6つの大カテゴリーに分類された。 【実施】は〈自. 3.

(3) アダプテッド体育・スポーツ学研究 6(1):2-5, 2020. 活的な活動〉と〈強制〉から構成された。 【参加条件】は《ボールサイズ》と《運動経 験》で構成され、その下に〈困難〉 〈可能〉 〈種目〉が位置付けられた。 【見学時の活動】 は《場所》と《行動》で構成され、その下に〈授業の場〉と〈別室〉が位置付けられた。 【体育の成績】は《納得あり》と《納得なし》から構成され、その下に〈事前に決定〉 〈自己評価との合致〉 〈ニーズが満たされていない〉が位置付けられた。 【体育場面での支 援】は〈教員の支援〉 〈場や用具の支援〉 〈仲間の支援〉から構成された。 【体育への動 機】は《肯定的》 《否定的》から構成され、その下に〈種目〉 〈仲間〉が位置付けられた。 教師に関しては2つの大カテゴリーに分類された。 【教師の障害理解の有無】は《理解 あり》と《理解なし》から構成され、その下に〈双方向からの関係性〉 〈生徒からの一方 通行〉 〈両者からのアプローチ無〉 〈教師間での連携不足〉が位置付けられた。 【教師に対 する意識】は〈ネガティブ〉と〈ボジティブ〉から構成された。 仲間に関しては2つの大カテゴリーに分類された。 【仲間に抱く心理】は〈苦悩〉と 〈期待〉から構成された。 【体育場面での支援】は〈協働〉と〈個〉から構成された。 Ⅳ考察 本研究からは、対象者それぞれに共通する課題と、各対象者に関する課題が浮かび上が った。まず共通の課題としては、教師の障害に関する知識の不足および授業における工夫 が不十分という点が挙げられる。これは【教師の障害理解の有無】の点で挙げられたが、 教師の障害に関する知識に対して、対象者は不十分に感じていた。この点から、教師の更 なる知識獲得と教師間での連携の強化を図る必要性が考えられる。加えて、教師からの言 葉がけやコミュニケーションによる信頼関係の構築が考えられた。また弱視生徒は健常生 徒に対し、自らの障害の程度を伝えることに抵抗があり心理的側面で困難を抱えているこ とが明らかとなった。先述した通り、弱視生徒は周囲の仲間に対して否定的な感情を抱く ことがあり、生徒・仲間間でのコミュニケーションは弱視生徒の体育での十分な活動にと って重要であり、周囲が弱視生徒の状況や苦悩を受け入れる雰囲気づくりが必要になると 考えられた。 個別の課題としては、教師の関係性や話し合いの場の有無が、生活の困難さに大きく影 響を与えていることが明らかとなった。齊藤(2018)は「視覚障害に対する配慮や工夫を検 討・提供する場合、一定の手段を用意すればすむものではない。 」と述べている通り、個々 の見え方に合わせた対応が求められることが明らかとなった。ボールサイズや運動特性、 経験から、弱視生徒が最も参加しやすい形式の考案や配慮が求められる。 Ⅴまとめ 本研究では、弱視生徒に焦点を当て、通常校での弱視生徒が参加する体育の課題を明ら かにした。その結界「体育に関して」では、見え方や運動特性による活動量の少なさや放 任授業などの授業形態が課題となった。 「教師に関して」では、教師の障害理解や授業改善. 4.

(4) アダプテッド体育・スポーツ学研究 6(1):2-5, 2020. が不十分と弱視生徒が考えていることが明らかとなった。 「仲間に関して」では、仲間に対 して自らの障害を打ち明けることができないといった心理的側面で困難さを抱えているこ とが明らかとなった。 引用参考文献 木村敬一(2015):インクルーシブ教育における視覚障害生徒のスポーツ活動の現場に関す る研究:視覚障害生徒自身が持つスポーツに対する考えから. アダプテッド体育・スポ ーツ学研究, 1: 22-25. 木村敬一(2016):インクルーシブ教育における視覚障害生徒のスポーツ活動を阻害する要 因とは何か. 教育學雑誌, 52: 15-28. 大山歩美, 小林秀之, 森まゆ(2013):小・中学校において弱視児が感じる困難とその対応― 教育学習に着目して―障害科学研究,37: 1-12. 齊藤まゆみ(2018):教養としてのアダプテッド体育・スポーツ学. 大修館書店.. 5.

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