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学生による学生のための大学生版元気回復行動プラン(Campus Wellness Recovery Action Plan: CWRAP)実施報告

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日本橋学館大学紀要 第 14 号(2015) 報告・資料

1.はじめに

2013 年 8 月、N 大学心理学系学科 1・2 年生 夏期合同ゼミナール内の1 講義枠(90 分間)を使 い、同ゼミナール出席者を対象に、同学科卒業 生及び3 年生有志がファシリテーターとなり、 大学生版元気回復行動プラン(Campus Well-ness Recovery Action Plan: 以下 CWRAP)を 実施したので報告する。なお、本報告は筆者の 一人、CWRAP を企画施行した卒業生Mの報告 を中心に構成した。

WRAP とは Wellness Recovery Action Plan の略で「元気回復行動プラン」と訳されている。 これは、精神的に困難になった人々のリカバリ ー(回復)のために、自らが気分障害で悩まさ れた経験を持つMary Ellen Copelsnd PH.D. によって、自分らしい方法で自分らしさを取り 戻す方法として開発されたワークである(Mary, 2008)。 近年WRAP は精神科領域を始め、企業、大 学などで導入され、広がりを見せている。 CWRAP はその大学生版として開発され、学 生が充実した学生生活を送り精神的に充実でき るように、自身の状況に合わせた元気回復プラ ンを立て、自己の内面をワークを通して確認し、 周囲と自己の関わり方を発見することを目的と している(福井, 2012)。 WRAP や CWRAP では、「希望」、「責任」、「学 ぶ」、「権利」、「サポート」がリカバリーに必要な キーコンセプトとなる。 1 つ目の「希望」とは、元気になり、元気を持 続し、自身の定めた目標や夢に向かって意識す ること。2 つ目の「責任」とは、自分で自分をコ ントロールが出来ること。3 つ目の「学ぶ」とは、 自己を変化させ、様々な選択肢を取り入れて増 やすことができること。4 つ目の「権利」とは、 自分にとって必要なこと大切なことの主張であ る。5 つ目の「サポート」とは互いに協力し支え あ る 環 境 を 作 る こ と で あ る(Mary. 2008) 。 WRAP または CWRAP を実施する際にこれら キーコンセプトに意識を向けることにより、参 加者が充実した心境になり、これを生活の場面 でも生かせるようなることを目指す。 さらにWRAP では、人生にある状態の 6 つ のプランを設定する。1.「日常生活管理プラン」、 2.「引き金となる出来事に対処するプラン」、3. 「注意サインに対応するプラン」、4.「調子が悪 くなってきているときのプラン」、5.「クライシ スプラン」、6.「クライシスを脱したときのプラ ン」である。これらプランそれぞれの状態を記 2014 年 10 月 2 日受理

A Practice report of Campus WRAPⓇ(Campus Wellness Recovery Action Plan)- peer support for university students-

*1 Yuko SAKUMA

日本橋学館大学リベラルアーツ学部 *2 Yusuke MUKAI

学 生 に よ る 学 生 の た め の 大 学 生 版 元 気 回 復 行 動 プ ラ ン

(Campus Wellness Recovery Action Plan: CWRAP)実施報告

佐久間 祐子

∗1

向井 佑輔

∗2

……… キーワード ……… 大学生版元気回復行動プラン(Campus Wellness Recovery Action Plan: CWRAP) ストレス・マネジメント ピア・サポート

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述し、その対応として「元気に役立つ道具箱」 という各自のアクション(行動)を考え、記述 を加える。それにより、良い感じの時、外ある いは内で何かが起こるときに、自分の道具箱を 使って対処方法を行動に移し、元気を回復する。 これがWRAP の仕組みである(増川, 2014)。 CWRAP を N 大学で実施するに至った出発 点は、2012 年 3 月 11 日、N 大学学生であった 筆者Mが日本学校メンタルヘルス学会第 15 回 大会プログラム、東京学芸大学グループ主催の ミニワークショップ「大学生版CWRAP」に参 加した経験であった。 その際のMの体験をまとめる。 「CWRAP では学生スタッフを含む東京学芸大 学グループがファシリテーターを務め、大学生 が参加者となりワークが開始された。まず、参 加者全員が、自分が呼んでもらいたいニックネ ームをカードに記名し、身につけることから始 まった。ミニワークショップ中はこのニックネ ームで呼び合うことを義務付けられたが、ニッ クネームが思いつかない場合は表記は自由であ った。ニックネームを使う利点は、互いをニッ クネームで呼び合うことによって居心地のよい 空間を保持し、不特定多数の人々の交流で生ず る緊張感を軽減するとのことにあるとされる (福井, 2012)。 会場ではサブファシリテーターと呼ばれる 学生スタッフの案内に従い指定のグループにわ かれた。 ここでは WRAP のプランを基にした 6 つの プランが設定された。会場内に設置してあるブ ース毎に6 つのプランの対処法を記述するシー ト(模造紙)が用意された。グループ内各々が 思いついたプランへの対処法を順序や方向など の決まりもなく自由に記述するスタイルで、サ ブファシリテーターと雑談しながら終始穏やか な雰囲気の中記入していった。シートにプラン を記入後、各プランに記入された参加者の記述 のなかから自身に合った解決方法(プラン<気 分がよくなるまで毎日すること>において「誰 かに話を聞いてもらう」)や共感した状況(<元 気であるために毎日しなければならないこと> において「夜更かしをしない」など)を選択する。 そして、各々のグループ席に戻り、グループ内 で情報を共有、ディスカッションを行った。そ の後、グループ内で出た感想を1 枚の用紙にま とめ、最後に各グループ代表者1 名がそれを発 表、会場の参加者全体で共有した。」 このミニワークショップの目的は、CWRAP を通して、学生が悩みや不安を個人で抱えるの ではなく、同じ悩みや不安を抱えた人あるいは そうでない人の価値観・悩み・不安の対処方法 や解決方法を参加者全体で共有し、自身にあっ た対策や方法を吸収し、生活の場で実践してい き、大学という場の居心地感を充実させようと することであった。CWRAP は大学生ひとりひ とりの生活や人生がより豊かになることを目指 し、語り合いのなかで元気の鍵や生活の工夫、 アイディアを共有し交換していくのである(福 井, 2012)。 CWRAP を体験することにより、日常の様々 な場面において参加した全員がそれぞれの生活 の工夫や状況を共有し、自らの生活の場面で実 践することが可能となる(福井, 2012)。つまり、 グループ内の仲間同士で検討することにより、 肯定的解決に結びつき、未来への指向性が切り 開けるという結果が生まれる。そして、CWRAP には様々な人々の価値観や考え方を見て聞いて 情報や体験を共有することで、参加者の気持ち が楽になるなど認知に働きかける認知行動療法 的な側面があり、他者のストレス対処を参考に 自らの対処法を再確認するというストレス・マ ネジメントの側面を持つ。 このミニワークショップが開催された 2012 年3 月 11 日時点で、主催の東京学芸大学内で 4 クールに渡り継続的にCWRAP が実施されてお り、これまで参加した学生には、自分および他 者への信頼感の向上、不安の軽減などがみられ、

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大学生活の面においても、授業の出席率や取得 単位数の増加が認められている(福井, 2012)。 このように、CWRAP は大学生の大学適応に も期待できるものである。大学生の学校適応と 精神健康度が関連することが推測されており (佐久間, 2010)、授業への長期欠席や休学、退 学 な ど 学 校 不 適 応 へ の 予 防 対 策 と し て 、 CWRAP の効果が期待される。 N 大学心理学系学科では、例年夏期休暇の 2 日間授業枠6 コマを使って、1・2 年ゼミナール 夏期合同集中グループワークを行っている。こ れは、授業の一環ながら、夏期休暇中という比 較的リラックスした時間の中で、心理学への興 味関心を広げ深めること、学生同士の関係性を 深めることなどを目的に、様々なコミュニケー ションワークやゲームを取り入れたグループワ ーク、メンタルヘルスの維持向上にも関連する 心理臨床的演習などを行っているものである。 2013 年度のプログラム枠 1 コマ 90 分をこの CWRAP にあて、実施した。 本報では、東京学芸大学グループ主催のミニ ワークショップでの筆者Mの体験を参考に、N 大学において学生(CWRAP 実施時は筆者 M は 卒業生)自身がファシリテーターとなり実施し たCWRAP を報告する。 本報の目的を以下に示す。 1.先輩学生・卒業生がファシリテーターとな り、後輩学生がCWRAP を体験することによっ て、学生のメンタルヘルスにどのような効果を もたらすのか、その心境にどのような変化が見 られるかを、学生たちの記述や行動を観察する ことから明らかにし、その可能性を含めて検討 する。 2.大学カリキュラムにおけるゼミナールの枠 を使い、学生が主体となる自主的学習・活動を 教員が支えるという構造をとることにより、学 生集団全体の主体性を刺激し、自主的な学習・ 活動の輪が広がる可能性を検討する。

2.方法

2.1 参加者と実施時間 2013 年 8 月に行われた N 大学心理学系学科 の1・2 年生における夏期合同ゼミナールを受講 した、47 名(男性 23 名、女性 24 名)の学生を対 象に講義室にて実施した。参加者はそれぞれゼ ミナールに所属をしており、ゼミ別の1 年生、 2 年生混同 4 グループ(A ゼミナール、B ゼミナ ール、C ゼミナール、D ゼミナール、以下グル ープ表記とする)にわかれた。 全体のスケジュールの内訳として、1 枠 90 分 の う ち 、 ブ ー ス の 設 営 準 備 に 前 半 30 分、 CWRAP 実施時間に後半 60 分を充て実施した (表 1)。 2.2 使用した教材と材料 CWRAP に使用する記述シートにはケント紙 を使用した。記述シートのサイズは 1091× 788:4/6 判全判、1 枚にサブプラン 1~2 項目 で計16 枚を使用した。CWRAP のモデル(福井, 2012.:Mary, 2008.)を引用し、作成した。 2.3 記述シートの内訳 CWRAP ミニワークショップと同様に、1「日 常生活管理プラン」、2「引き金となる出来事に 対処するプラン」、3「注意サインに対処するプ ラン」、4「調子が悪くなってきているときのサ インプラン」、5「クライシスプラン」、6「緊急 状況を脱したときプラン」の6 つのプランを設 定した。 各プランの内訳は以下の通りである。 1.「日常生活管理プラン」のサブプランは、① <普段の私について>、②<元気であるため に毎日しなければならないこと>、③<幸せ な気分でいるために、時にはしたほうがよい こと>である。このプランでは、元気を維持

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するためにはどうすればよいのかを意識して シートに記述し、それを他者と共有すること が目的となる。 2.「引き金となる出来事に対処するプラン」の サブプランは、①<調子を崩すきっかけにな るかもしれないこと>、②<引き金となる出 来事が起きた時、乗り切るためにやっている こと>である。このプランでは、調子が悪く なるときの気づきをもとに対応する幅を広げ ていくことが目的になる。 3.「注意サインに対処するプラン」のサブプラ ンは、①<自分で気がついている注意サイン >、②<気分がよくなるまで毎日すること>。 このプランでは、自分自身が発見した注意サ インをもとに、体調が悪くなる前に気持ちや 行動を和らげることができることを目的とす る。 4.「調子が悪くなってきているときの対処プラ ン」のサブプランは、①<状態が悪く、緊急 事態に近いことを意味する気分や行動リスト >、②<調子が悪くなったときの対処プラン >である。このプランでは、調子が悪くなる 状態を客観的に把握することでそのような状 態に陥った際に自分のために最大限行動をす ることができ、悪化を未然に防ぐことが可能 となることを目的とする。 5.「クライシスプラン」のサブプランは、①< 普段の私について>、②<症状について>、 ③<サポートしてもらうと助けになること>、 ④<サポートしてもらわなければならないこ と>、⑤<助けにならないこと>、⑥<終了 のサイン>である。 6.「緊急状況を脱したときプラン」のサブプラ ンは、①<緊急状況を脱した時の感じ>、② <この時期にサポートをしてくれる人>、③ <家に戻ってすぐにしなければならないこと >である。このプランでは、元気なときにク ライシスプランすなわち危機状態に陥った際 や回復した際に周囲にしてほしいサポートや 対処を、あらかじめ検討しておくことで危機 状態時でも自己の責任を保持し、対処行動を 迅速に行動できるよう促すことが可能となる ことを目的とする。 会場ではプランごとにブースを設け、記述シ ートを計16 枚設置した。 2.4 CWRAP を実施する前に CWRAP を実施するにあたり、参加者及び ファシリテーターはあらかじめ 10cm ほどの布 テープでニックネームの名札を作り、見えやす い位置に貼った。

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参加者及び各グループにメモ用紙を配布し、 CWRAP についてのグループ内での感想や意見 を自由に記述してもらった。 2.5 本活動における倫理面への配慮 本活動を実施する前にファシリテーターより 口頭で、倫理面の配慮として、本活動をまとめ 大学紀要等に報告する予定であること、活動中 の撮影や各自が記述した情報は個人が特定され ない様配慮すること、及び活動報告を作成する こと以外には一切使用しないことを伝え、参加 者全員より拒否がないことを確認した。 2.6 CWRAP の全体の流れ(メインファシリ テーターである筆者Mの報告) 2. 6. 1 メインファシリテーターとサブファ シリテーターの役割について 司会進行を務めるメインファシリテーターは 卒業生である筆者Mが担当し、そのほかにその 補助としてサブファシリテーター3 名(同学科 有志3 年)を配置した。 はじめに、メインファシリテーターが CWRAP 及び当日の活動の概要について、パワ ーポイントと配付資料を使用して説明を行った (表 1.②)。記述シートについては、難しく考え ず直感的に記述してもらうよう口頭にて説明し た。 CWRAP 中の 30 分間はメインファシリテー ターは全体の進行を見つつ、参加者の行動観察 と質疑応答を行った。サブファシリテーターは 活動記録係1 名、他 2 名はメインファシリテー ターと共に、参加者と会話しながらサポートに 従事した。主なサポートの内容は、参加者がリ ラックスして取り組めるように参加者らと会話 をし、各プランへの不明な点の質疑応答や書き 方の提案を行った。 2.6.2 CWRAP の実施(表 1.③) 参加者は、グループを超えて各ブースを自由 に移動し、直感的に気になるプランのシートに 自由に記述してもらう形とした。 2.6.3 気になるキーワードと対処法の取得 (表 1.④) CWRAP 後に、各シートに記入された多くの 言葉から、気になった言葉や各人にとってキー ワードと思われる言葉をあらかじめ配布した個 人用のメモ用紙に記入するようにメインファシ リテーターより口頭で説明し、参加者にとって 日常起こりうる様々な状況や状態を考えてもら い、日常の生活に取り入れやすい解決方法をシ ートのなかから選択してもらった。 2.6.4 グループ内での振り返り(表 1,⑤) メインファシリテーターの指示によりグルー プにもどり、CWRAP を体験して感じた印象や 感想、メモに記入したキーワードをグループ内 で共有し、提出用のメモ用紙にCWRAP につい ての感想を記入してもらった。 2.6.5 各グループ、代表者発表(表 1,⑥) 各グループ代表者1 名にグループ内の意見を まとめて発表してもらった。

3. 結果

(メインファシリテーターである筆者Mの報告) 3.1 学 生 サ ブ フ ァ シ リ テ ー タ ー の 動 き と CWRAP 全体の様子について CWRAP 説明中は、メインファシリテーター やサブファシリテーターが参加者の多くと学生 同士の顔見知りということもあり、参加者全体 がリラックスした雰囲気であった。しかし、 CWRAP 開始直後では、参加者の表情が堅く緊 張した様子になり、開始 10 分間は記述シート の前でただ眺めていたり、記入の仕方に戸惑う 様子が見られた。

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そこでメインファシリテーターとサブファシ リテーターが、プランごとのブースに立ち寄り、 ブース近くの参加者とニックネームで呼び合い 会話をしながら記入を促した。会話の内容とし ては、記述の仕方の提案、またはCWRAP につ いての質疑応答で専門用語(e.g.クライシスプラ ンとは)などの説明に従事した。活動の場で質疑 応答やCWRAP の専門用語について補足するこ とはミニワークショップに倣った。その後、サ ブファシリテーター自らがシートに記述してみ せると、それに続いて次第に参加者の自発的な 記述がみられるようになった。CWRAP 開始 15 分後には会場全体が賑やかに、笑い声なども聞 こえるようになり、参加者の表情も柔らかくな った。 学生たちの行動は次第に緊張した堅い動きか ら、自発的な自由な行動に変わっていった。記 述シートには全く記述しないものの周囲の参加 者と学年を問わず交流を図る者、黙々と記述シ ートに記入する者、ただ記述シートを眺めてま わる者なども見られた。活動には参加せず会場 の隅で友人同士会話している者も見られた。 CWRAP ならではの自由な活動内容だからこそ 起きる現象であろう。積極的に記述シートに記 入している者には楽しんでいる姿が多く見られ た(写真1)。 3.2 シートごとの記述内容及び語彙数 文字は角度、大きさ、色など自由に記述され た。また、他の人の記述にコメントを入れるな ど、シート上でのコミュニケーションも見られ た。以下に、シートごとに記入された記述内容 と語彙数を示す。 ① 「日常生活管理プラン1」<普段の私につい て>ポジティブ、元気、笑顔、バイト、ネ ガティブなど、記述数12。

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② 「日常生活管理プラン2」<元気であるため に毎日しなければならないこと>運動、ね る、ダイエット、音楽を聴く、ドラム!、 笑顔でいるなど、記述数30。 ③ 「日常生活管理プラン3」<幸せな気分でい るために、時にはしたほうがよいこと>友 達や家族と一緒にすごす、本を読む、ゆめ をもつ、睡眠、妄想など、記述数25。 ④ 「引き金となる出来事に対処するプラン1」 <調子を崩すきっかけになるかもしれない こと>○○の課題、バイト、疲れ、天気、 季節の変わり目、金欠、人間関係など、記 述数30。 ⑤「引き金となる出来事に対処するプラン2」 <引き金となる出来事が起きたとき乗り 切るためにやっていること>無心、スルー、 身近な人に相談、がまん、現実逃避など、 記述数23。 ⑥「注意サインに対処するプラン1」<自分で 気がついている注意サイン>無表情、イラ イライラ、疲れ、テンションが上がる、ね れないなど、記述数23。 ⑦「注意サインに対処するプラン2」<気分が よくなるまで毎日すること>友達と連絡、 食事、暗くなるまで遊ぶ、明るくなるまで 正座、夜寝ないなど、記述数25。 ⑧「調子が悪くなってきているときの対処プラ ン1」<状態が悪く、緊急事態に近いこと を意味する気分や行動リスト>何かとう まくいかない、自分のすることすべてがだ めだと思う←よくわかる、眠気が増す、頭 痛など、記述数17。 ⑨「調子が悪くなってきているときの対処プ ラン2」<調子が悪くなったときの対処ラ ン>たくさん寝る、旅行に行く、走る、食 事、落ちるところまで落ちるなど、記述数 23。

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⑩「クライシスプラン1」<普段の私につい て> ねむい、はらぺこ、運動不足、活字不 足、金欠など、記述数26。 ⑪「クライシスプラン2」<症状について> 発熱、頭痛、吐き気、元気です、生きること に疲れる、ねむいなど、記述数24。 ⑫「クライシスプラン3」<サポートしてもら って助けになること>学業、学費、金など、 記述数10。 <サポートしてもらわなければならないこと >学費、金、この世界、日本の政治など、記 述数14。 ⑬「クライシスプラン4」<助けにならないこ と>同情、友情、愛情、夢、希望など、記述 数15。 <終了のサイン>気分が良くなる、脱力感、 あくびなど、記述数5。 ⑭「緊急状況を脱したときのプラン1」<緊急 状況を脱したときの感じ>よし!次はがん ばろう!!、無重力感、ほっとする、ふー、 ぶっはーなど、記述数16。 ⑮「緊急状況を脱したときのプラン2」<この 時期にサポートしてくれる人>親、恋人、妹、 どっかの誰か?そんな人いない!など、記述 数23。 ⑯「緊急状況を脱したときのプラン3」<家に 戻ってすぐにしなければならないこと>放心、 手洗い、うがい、寝る、課題、部屋の掃除な ど、記述数25。 3.3 各グループの感想 シート及び各自のメモへの記入後グループに 戻り、タイムテーブルに従い(表 1,④,⑤)、各グ ループ内で記述シートのなかで気になった言葉 やCWRAP の感想などをフィードバックしても らった(写真3)。これを以下にまとめた。

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3.3.1 Aグループの感想 「気分が軽くなった。」、「1 つの項目でも色々 な事が書いてあって面白かった。参加にもなっ た。」、「他の人のサインや対処法を知り、自身 の生活に取り入れていければなと思いました。」、 「色々な考え方があるのだと感じた。人ととらえ 方も違うのでそれを言い合うのも楽しかった。」、 「ねむる、食事など一般的なものの他、自分には 思いつかない方法もあり、おもしろいと感じ た。」、「日常生活管理プランの『暴れる』とい うのが印象的だった。」、「サポートしてどうに かしなきゃいけないのは日本の政治だと思っ た。」、「多くの人が『暴れる』事によって、ス トレスを発散しているようで、物騒な世の中だ と思う。」、「色々な意見がみれて楽しかった」、 「なにかあったときや、気分を良くするときの対 処法は何ら特別なものではなく、日常的なあそ びなどが当てはまると感じた。その中には、趣 味の本を読むことなどのものは、すでに実行で きるのでなかなか良いと思う。」など11 名中 10 名の感想があげられた。 3.3.2 Bグループの感想 「いろいろな対処法が知れて良かった。」、「ネ タが多少あった。」、「同じような対処法が多く ある所もあったので、考えることにはあまり違 いはないなと思った。」、「色々な価値観や対処 法などがあって、とてもおもしろかった。」、「対 処が沢山あったのがすごかった。」、「人それぞ れの多様な考え方があるのだと思った。」、「楽 しかったよ~。」、「色々な考え方の人がいるな と思いました。」、「緊張した。」、「おもしろい 考えの人がいて楽しかった。」、「色んな意見や 考えがみれておもしろかった。」など、11 名全 員の感想があげられた。 3.3.3 Cグループの感想 「金欠と書いてあるのが多くて、全員お金が欲 しいんだなと思いました。」、「独創的」、「自分 とは」、「困ったらレッドブルという人がいて、 その気持ちに共感でました。元気になるからが んばれる。」、「ポケモン頻出率の高さに戦慄。」、 「やんでる人がいた。」、「痛んでいる人がいた。」、 「意外と同じことを書いてる人が何人かいた。」 など、13 名中 8 名の感想があげられた。他、「電 車の中の腹痛」、「教員の課題」、幸せになるため として「妄想」、助けにならないこととして「同 情」、気分がよくなることして「寝ること」などの 回答がみられた。 3.3.4 Dグループの感想 「他の人の意見などが分かり面白かったです。 役に立つことがあるといいです。ありがとうご ざいました。」、「人それぞれ、考え方が違って 面白かった。グチがいっぱい書いてあったし、 自分も書けて少しすっきりした。」など、12 名 中2 名の感想があげられた。このグループは、 感想の数自体は少ないが、「おかえり」、「メシを 食う」、「目の前にお花畑が見える」、「運動不足」、 「一人旅」、「寝る」、「ただいま」、時にはした方 がいいこととして「一人旅」、「暴れる」を記入し ている。他、助けになる人として「両親」、サポ ートになることについては「学費」の記述があり、 緊張状態の時の行動として「手洗いうがい」、調 子が悪くなった時の対処プランとして、「落ちる とこまで落ちる」などの記述がみられた。

. 考察

4.1 メインファシリテーターである筆者Mに よる考察 4.1.1 CWRAP実施後の各グループの感 想から CWRAP の体験を通して、他者の考え方やも のの見方について肯定的かつ共感的な意見が多 く見られた。 参加者が記述シートへ自由に言葉を記入し、 同時進行で書かれる他者の言葉を客観的に見る

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ことを介して、他の参加者の多様な解決法や価 値観、感じ方に気づき共有し、また、その類似 性や多様性を知ることにより、参加者同士が互 いをより良く知り、関係性が深まる効果が得ら れたと思われる。さらに、参加者自らが自分自 身にあった対処法に気づき、感情を書き込みそ の言葉への他者の反応を得ることで、カタルシ スを得て、さらに自らを客観視することにつな がり、結果、気分の改善がみられた者もいたと 考える。 4.1.2 全体的考察 本報告では、学生(あるいは卒業生)がファ シリテーターとなり、後輩学生がCWRAP を体 験することによって、学生のメンタルヘルスに どのようなプラスの効果をもたらすのか、その 心境にどのような変化が見られるかを、学生た ちの記述や行動を観察することから、その可能 性を含めて検討することを目的とした。 多くの学生が各プランに直感的に記述し、後 輩の素の言葉をファシリテーターとして聞くこ とができた。ポジティブな言葉やネガティブな 言葉、交わされる意見や会話など、実際会場に 居合わせて各プランに記述された情報と同様に その場で記述されない会話による言葉のやり取 りや参加者たちの行動を見ることができた。積 極的に活動に参加の意欲をみせる者、活動には 参加せず隅で気の知れた友人と雑談をする者、 記述には参加せず、ひたすら会話による交流を 図る者など、枠にとらわれない、ファシリテー ターと参加者が顔見知りの学生同士であるリラ ックスした関係性のもと、CWRAP ならではの 自由なプログラムが行われたことにより起きた 現象であろう。 つまり、CWRAP 後の感想からもわかるよう に、本活動においては、ひとりひとりの生活や 人生がより豊かになることを目指し、語り合い のなかでみんなの元気の鍵や生活の工夫、アイ ディアを共有し交換していく(福井, 2012)とい う、CWRAP の目的に沿った結果が得られたと いえる。 4.1.3.本活動の限界と今後の展望 4.1.3.1 記述シートとその専門用語の説明 について 記述シートへの記述の仕方やその用語につい て説明不足が否めない点があり、活動中に参加 者が戸惑うことあったため、CWRAP 活動中に メインファシリテーターとサブファシリテータ ーから随時口頭にて補足説明を行った。 この点については、口頭だけではなく、用語 と記述の仕方に関する資料の配布や、よりわか りやすい説明の仕方についての検討など、改善 していく必要がある。 4.1.3.2 ファシリテーターの教育について ファシリテーターは全員事前にCWRAP を体 験し、CWRAP のやり方や概要を理解した。ま た、活動当日の参加者からの質疑応答に対応で きるように訓練した。しかし、今後CWRAP を より効果的に行うには、WRAP の正式なファシ リテーター養成講座への参加によって、より専 門性を高めるなど WRAP へのさらなる理解や 経験の積み重ねが必要となるであろう。 4.1.3.3 実施回数について 1 回限りの実施では参加者への効果は限定的 であり、大学生生活においてCWRAP 本来の効 果を十分に発揮するには継続的な活動及び継続 的かつ客観的な効果指標の測定も必要であると 考えられる。 4.2 教員の視点から 今回、卒業生である筆者Mを中心に本報告の 執筆を進めた。 本活動は、3,4 年生が所属するゼミナールの 研究活動の一環として、2012 年 1 月日本学校メ ンタルヘルス学会大会に学生が任意で参加した

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ことにはじまる。様々な大会プログラムの中、 大学生を対象とした東京学芸大学グループによ るCWRAP に興味を持った数名の学生がこのミ ニワークショップに参加し、学生がファシリテ ーターに加わる自由な雰囲気の中、様々な興味 深い体験を得たようである。学会終了後すぐに WRAP の文献研究をはじめ、年度がかわった 4 月に、4 年となった筆者Mがファシリテーター を務めるかたちで、メンタルヘルスをテーマと する所属3,4 年ゼミナール内で、新ゼミ生を含 めてCWRAP を試行した。ここで、参加者から 気分状態の改善など、肯定的かつ好意的な感想 が得られたため、この活動を広げるべく準備を 行い、Mが大学を卒業した後の2013 年 8 月に、 在学生をサブファシリテーターとして巻き込む かたちで、後輩学生 1,2 年を対象に教員のサ ポ ー ト の 元 実 施 し た の が こ こ で 報 告 し た CWRAP である。 ただし、教員はサポートと言っても、時間枠 の提供、当日必要な物品の準備、他者への侵入 的な言動や危険な行動がないか距離を置きつつ 臨床的視点で配慮を行いながらの観察、実施に 向けての簡単なアドバイスなど、あくまでも学 生自身の自主的な行動を全面に支持することに 徹したのみである。また、これは卒業研究など、 ある意味義務のある学習ではなく、学生自身の 興味関心による完全に自主的な学習・研究であ ることを付け加えたい。在学生がCWRAP を体 験し、準備研究・予備施行を行い、それを教員 が支持し、実施のサポートを行うという構造は、 ゼミナールにおける学生による自主学習、すな わちアクティブラーニング型の教育実践にあた る。その活動が刺激となり、学生集団全体の自 主的学習のモチベーションを賦活するというポ ジティブな循環を生み出す可能性もあるだろう。 本活動は学生によって学生のために実施され た、ピア・サポートの側面を持つ。参加者であ る学生自身、自らの中に、日常起こりうる様々 な問題に対する自分らしい解決法を持っている と考える。しかし、この多くは他者の視線や社 会的価値観に押さえ込まれて心の中にとどまり 自覚されず、そのために日常生活で困難を抱え、 ストレス・マネジメントがうまくいかずに悩み を持ち、結果、メンタルヘルスの低下を来すも のも多い。 参加者はCWRAP を通して、教員や専門家主 導のある意味堅いワークとは違う、同級生や先 輩後輩というピアのリラックスした関係性の場 で自由に思いや解決法が書き出される中で、他 者と出会い、自分自身の解決法を自覚し新たな 発見をした。さらにこれは、認知行動療法の認 知再構成法における歪んだ認知の再構成やスト レス・マネジメントとしての側面からも、大学 生のメンタルヘルスの予防的効果、維持向上が 期待されるものと考えられる。 今後、学生による学生のための自主的なメン タルヘルス活動や学習を、後輩学生が引き継ぐ ことを期待したい。 謝辞 本報告におけるCWRAP を実施するにあたり 協力してくださったN 大学心理系学科各ゼミナ ールの先生方、積極的にサブファシリテーター としての協力を申し出てくださった櫻山亘、野 田貴之、山田耕平の3 名に感謝致します。 また、本活動の参加者であるN 大学学生の皆 様、参加いただき感謝致します。ありがとうご ざいました。 引用文献

Mary Ellen Copeland:2008,「元気回復行動プラン WRAP」,WRAP 研究会,福岡.

Mary Ellen Copeland:2008,「リカバリートピック WRAP Recovery Topic」,WRAP 研究会,福岡. 福井里江:2012,「キャンパス WRAP-学生一人ひ とりの生活や人生の充実をめざして-」,『日本学校 メンタルヘルス学会第15 回大会プログラム・抄録 集』,27 項. 福江里江,大盛り美湖,増川ねてる:2012,「キャン パスWRAP-大学生向け元気回復プラン体験-」, 『学校メンタルヘルス』,Vol.15(2),213-215 頁.

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佐久間祐子, 柴原宜幸, 村上千鶴子:2010,「大学 生の学校適応過程に関する縦断的研究(1)-大 学入学時と大学1 年前期の精神健康度-」,『日本 橋学館大学紀要』9 号,63-70..

メアリー・エレン・コープランド:2011,元気回復 行動プランWRAP Wellness Recovery Action Plan,道具箱,愛知.

増川ねてる:2014,WRAPⓇとはなんだろうか-僕 の体験を通して-」,『精神科看護』263 巻,41 号, 14-20 頁.

参照

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