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画像を用いたパン生地膨張過程の計測

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Academic year: 2021

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※ 1)山 陽学 園短 期大 学 :〒 703-8501 岡山 県岡 山市 中 区平 井 1-14-1 ※ 2)岡 山大 学: 〒 700-8530 岡 山 県岡 山市 北区 津島 中 1-1-1

画像を用いたパン生地膨張過程の計測

藤井久美子

※1

・大田真平

※2

・難波和彦

※2

・門田充司

※2 [keyword] パン生地,膨張率,画像,3 次元計測,非接触 製パンにおいては,生地の材料や調製条件がそ の品質に大きく関わっており,発酵時に高い膨張 を示す生地ほどパンの評価が高いとされている。 しかし,これまでのパン生地膨張の計測は接触式 の方法であり,本来の生地の挙動を正しく観察す ることは困難である。また,数値の読み取りにも 誤差が生じる場合が多い。そこで本研究では,画 像を用いて非接触かつ定量的にパン生地の膨張過 程を 3 次元的に計測する手法を検討した。 1.はじめに 一般的にパンの品質評価においては,生地の材 料や配合,調製方法,焼成後の食味・物性など様々 な要素が存在するが,それらの評価方法は必ずし も定量的とはいえない。生地の材料や配合がパン の品質を左右することはいうまでもないが,発酵 時における生地の膨張も影響しており,高い膨張 を示す生地で作られたパンほど高い評価を得ると いう報告1)がある。したがって,発酵工程 に お け るパン生地の膨張の程度を定量化すれば,生地の 素材や配合の違いを客観的に比較できる。 我が国では,日本イースト工業会が規定したパ ン用酵母試験法2)があり,パン生地の膨張過程を 観察する方法としては,ガラス製のシリンダーに パン生地を隙間なく詰め込み,生地上部の高さの 変化をシリンダーの目盛から読み取る方法がある。 この方法はパン生地の上部以外の面はシリンダー で拘束されているので,高さ方向にしか生地が膨 張できず,生地の 3 次元的な形状や寸法の変化を 把握することは困難である。また,シリンダーの 直径や生地の量が同じでないとデータを比較でき ず,丸く膨らんだ生地頂部の高さを目盛から読み 取るので誤差が生じる可能性が高い。この方法以 外にも,膨張過程でパン生地から発生する炭酸ガ スの量から間接的にパン生地の膨張を計測するウ オルフ改変法やガソグラフ,Hosomi らの炭酸ガス 発生・生地膨張測定装置 3),パン生地の膨張によ って溢れ出した水の容積を測定する藤井・大高ら の装置4)などがあるが,これらもシリンダー法と 同様,不自然なパン生地形状での計測やパン生地 への外力の影響,読み取り誤差などの問題がある。 自然な状態のパン生地の膨張を観察するために は,外力を加えることなく非接触で計測すること が望ましい。非接触による体積の計測方法として は,音響共鳴を利用したもの 5)などがあるが ,対 象の寸法や形状を計測することはできない。よっ て,本研究では対象の 3 次元的形状や寸法も非接 触で連続的に計測可能な画像を用いた計測システ ムを検討した。 2.計測装置 図 1 に試作した計測システムを示す。発酵過程 におけるパン生地の膨張を計測するため,発酵器 (大正電気(株),SK-15)を用いて温度と湿度を 調整しながら画像による計測を行った。なお,湿 度に関しては,水を入れた加湿皿を発酵器のヒー

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ターで加熱することで調整した。パン生地の上方 向からの画像(上画像)および横方向からの画像 (横画像)を撮影するためにデジタルカメラ(上 画像用:Cannon(株),IXY 30S,横画像用:Cannon (株),Power Shot SX1 IS)を発酵器の外に配置 した。さらに,対象を 3 次元的に計測するため, ターンテーブルによってパン生地を回転させた。 ターンテーブルの周囲には 5°間隔に目盛が付け られており,その回転軸には紐が巻き付けられて いる。紐の端を発酵器の外から手動で引けば,内 部の温度,湿度を変化させることなくパン生地を 回転させることができ,全ての方向から横画像を 取り込むことができる。発酵器の上部は透明なア クリル板,周囲は透明なビニールシートで覆い, 横画像の背景には黒色の紙を配置した。またター ンテーブルの表面もパン生地の上画像が鮮明に入 力できるよう黒色とした。上画像用カメラのレン ズ中心とターンテーブルの回転中心,そして横画 像用カメラのレンズ中心とターンテーブルの表面 がそれぞれ一致するように配置した。 3.実験材料および計測方法 (1)実験材料 計測に用いるパン生地は,表 1 に示すように一 般的な低糖パンの材料,配合とした。表の数値は パン生地 1 個分の配合量である。これらの材料を 自 動 製 パ ン 機 ( 三 洋 電 機 ( 株 ), SPM-KP1) で 13 分 間 混 捏 し , パ ン 生 地 の 捏 ね 上 が り 温 度 が 29~ 31℃になるよう,蒸留水を加温して調節した。 今回のパン生地発酵工程における各所要時間と 温度,湿度を表 2 に示す。捏ね上がったパン生地 を手で丸めて発酵器内のターンテーブルに配置し た。60 分間の一次発酵の終了後,自動製パン機で 羽根を 1 分間回転させてガス抜きを行った。その 後,一次発酵と同様の手順で 40 分間の二次発酵と ガス抜きを行い,パン生地を手で丸めて室温で 15 分間のベンチタイムをとった。この時,パン生地 の乾燥を防ぐためにプラスチック製の密閉容器に 入れた。ベンチタイム終了後,パン生地を再び発 酵器に移し,40 分の焙炉工程を経て発酵を完了し た。 (2)計測方法 図 1 の計測装置を用い,一次発酵,二次発酵お よび焙炉におけるパン生地の膨張をそれぞれ 5 分 間隔で撮影した。各工程における画像の入力方法 は次の通りである。まず,寸法のキャリブレーシ ョン用の白色球(直径 40 mm)をターンテーブル の中央に配置し,上画像用および横画像用カメラ で画像入力を行う。次に球を取り除き,パン生地 をターンテーブルの中央に配置し,目盛の 0°が ターンテーブルのベースに記された基準点(横画 像用カメラの正面)と一致するように調整する。 そして,上画像(静止画)の画像入力を行い,次 表 2 パン生地発酵工程における所要時間,温度,湿度 順番 工程 時間(分) 温度・湿度 1 一次発酵 60 30±1 ℃・70~80 % 2 ガス抜き・丸め 1 3 二次発酵 40 30±1 ℃・70~80 % 4 ガス抜き・丸め 1 5 ベンチタイム 15 25~26 ℃ 6 焙炉 40 38±1 ℃・85 % 図 1 計測装置の概要 表 1 パン生地の材料と配合量 材 料 配合量(g) 小麦粉 100 食 塩 1 砂 糖 5 蒸留水 60 イースト 1

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にターンテーブルの回転軸に巻き付けられた紐を 一定の速度で引きながら 180°以上回転させて横 画像(動画)撮影する。撮影終了後に横画像を動 画ソフトで再生し,ターンテーブルの目盛を目視 で確認しながら,5°回転するごとに静止画を PNG 形式で計 36 枚(0~175°)保存する。複数の横画 像を保存した理由は後述する。撮影中に発酵器の アクリル板やビニールシートに結露が発生したと きにはドライヤの熱で除去した。 (3)パン生地体積の算出方法 上画像,横画像で得られたパン生地の画像をキ ャリブレーション用の球の大きさと比較すること で寸法は知ることができるが,パン生地の膨張を 計測するためには体積を求める必要がある。画像 の 2 次元のデータから体積を求める方法としては, 複数の投影面積から算出する方法や幾何学的形状 に換算して推定する方法,対象物の任意の軸を中 心にして断面を分割して求める方法など6)がある。 本研究で対象とするパン生地においては,投影 面(横画像)を回転軸(上画像の重心)で回転さ せて積分し,体積を求める方法を用いた。図 2 に その概要を示す。図中の回転軸は,同じパン生地 の上画像から算出された重心を通る直線であり, ターンテーブルの回転中心を意味するものではな い。回転軸に対して左右に分割された横画像の投 影面積をSln,Srnとし,それ ぞれの重心を Gln,Grn, 回 転 軸 か ら重 心 ま での 水 平方 向 の 距 離を Xln,Xrn とする。同様の計算を 36 枚の横画像に対して行い, 投影面積を積分すると,体積Vは下記の式(1)で近 似できる。式(1)で用いるパラメータの算出および 体積Vの計算は自作した Visual Basic のプログラ ムで行った。 図 3 および図 4 に自作プログラムによる上画像 と横画像の例を示す。(a)は撮影した原画像であ り,(b)は処理結果である。上画像においては, ターンテーブルが黒色をしているので,画像内を 任意の値で二値化を行い,ノイズ処理などを行っ た後にパン生地のみを抽出し,重心の位置を求め た。横画像においては,パン生地以外にもターン テーブルなどが画像に入るため,あらかじめ画像 処理を行う領域を設定しておき,その範囲内に対 して二値化,ノイズ処理などを行い,パン生地を 抽出した。そして,上画像で得られた重心位置に 相当する部分に回転軸を設定し,左右のパン生地 部分の重心などを求めた。 ・・・(1) 図 2 パン生地体積の算出方法 図 3 上画像の例 (a)原画像 (b)処理結果 (a)原画像 (b)処理結果 図 4 横画像の例

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4.実験結果と考察 図 5 から図 10 に計測結果例として,一次発酵か ら焙炉に至るまでのパン生地の幅と高さの経時変 化,ならびに各工程の開始,終了時のパン生地の 画像を示す。幅に関しては,いずれの工程におい てもほぼ一定の割合で増加している様子が計測さ れた。一次発酵においては,初期段階で高さが減 少し,その状態をしばらく保持した後,45 分頃か ら増加した。二次発酵では,ガス抜き直後は高さ が減少したが,その後増加する様子が計測された。 焙炉の工程では,高さは減少することなく増加を 続けた。このことは,発酵次数が進むにしたがい, 発生した炭酸ガスを保持するパン生地の物性が変 化したことを捉えている。パン生地は,発酵時間 の経過とガス抜き操作との加工硬化により,ガス 保持力を有するように生地の腰持ちを良くする抗 図 5 パン生地の幅と高さの変化(一次発酵) 図 6 パン生地の横画像(一次発酵) (a)0 分 (b)60 分 図 7 パン生地の幅と高さの変化(二次発酵) 図 8 パン生地の横画像(二次発酵) (a)0 分 (b)40 分 図 9 パン生地の幅と高さの変化(焙炉) 図 10 パン生地の横画像(焙炉) (a)0 分 (b)40 分

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張力と弾性が増し,物理性における熟成が進む 7) とされている。その状態を生地の高さの変化から 知ることができる。 図 11 に一次発酵から焙炉までのパン生地の膨 張率の変化を示す。膨張率とは混捏したパン生地 の初期状態に対する体積の変化割合を表す。一次 発酵の初期状態(0 分)の体積を 0%とし,膨張率 100%は体積が初期状態の 2 倍に膨張したことを意 味する。二次発酵および焙炉の初期状態(0 分) も一次発酵の初期状態の体積に対する割合で表し ている。一次発酵では 10~20 分頃から膨張率の増 加割合が高くなっている。これは,時間の経過に 伴いグルテンが形成され,イーストの活性化によ り増加する炭酸ガス発生を保持できる状態になっ た現象であると考えられる。また,一次発酵に比 べて二次発酵では直線的に膨張率が増加し,さら に焙炉では高い膨張率に達している。このことか ら,直捏ね製パン法において 3 回の発酵を行う理 由が理解できる。 上述したものとは別のパン生地を用いて捏ね上 がりから 90 分までの膨張率と高さの経時変化を 図 12 に示す。上記の一次発酵と同様に初期の段階 で高さは減少しているが,膨張率は増加を続けて いる。その後,パン生地の物性における熟成が進 むと高さが増加し始め,膨張率は直線的に上昇す る状態となる。60~70 分で高さの増加が小さくな り,70 分を経過した段階で高さが急激に減少し, それに伴って膨張率も減少している。これは,炭 酸ガスの漏洩が発生を上回った状態と考えられる。 また,膨張率が減少するよりも早く,高さの増加 が小さくなり始めており,生地は上方向への膨張 が弱まり,横方向の膨張になった状態と考えられ る。これは,松本,団野が生地の膨張をモデル化 した考察 8)と合致している。すなわち,生地のガ ス泡膜の抗張力が弱まるとガス内圧が小さくなり, 生地の上部は落ち込み,下部は横に張り出し偏平 になりガス泡膜の崩壊になってゆく状態である。 したがって,高さの増加が小さくなる時点ではガ ス抜きを行い,生地の加工硬化が必要と考えられ る。 5.おわりに 複数の画像を用いて連続的にパン生地の挙動を 観察することにより,従来の方法では困難であっ た,パン生地の高さや幅,膨張率などの複数のパ ラメータを同時に計測し,パン生地の物性と膨張 との関連性を知ることができた。発酵工程におけ る経時的変化を知ることは,製パン工程の改善等 に大いに役立つとされている 9)が,これまで製パ ン性に関する検討の多くは,パンを焼成して製パ ン要因を評価している。これに比べ,パン生地膨 張の測定は,簡易に少量の試料で偏差が小さいデ ータが得られ,材料の特性やその配合および発酵 図 11 膨張率の変化 図 12 膨張率と高さの変化

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温度などの製パン条件が,パンの品質に及ぼす影 響を推測できると考える。さらにガス抜き時機な どの発酵工程を定量的データに基づいて判断し, 製パン工程の改善を図るために有用である。 本研究で試作した計測システムには,ターンテ ーブルの回転や撮影した動画の静止画への変換, 結露対策など,自動化への課題が残されているが, パン生地の非接触の 3 次元計測が可能であること が示された。今後,パン生地の膨張のみならず焼 成後のパンの形状や体積の計測も可能となれば, さらに製パン工程を定量的に評価できると考えら れる。 参考文献 1) 松本博,団野源一:パン生地の熟成と生地改 良,「製パンプロセスの科学」,田中康夫,松 本博,光琳,東京,p.75,1991. 2) 日本イースト工業会:パン用酵母試験法,東 京,pp.1-4,1996.

3) Kazuko Hosomi, Mayumi Uozumi, Kunuki Nishio and Hiroshi Matsumoto : Studies on Frozen Dough Baking – The Effects of Sugar

Esters with Various HLB Values - , Journal of The Japanese Society for Food Science and Technology 39(9), 806-812,1992. 4) 藤井久美子,大高壽彦,笠井八重子:直捏ね 法 に よ る 製 パ ン に お け る ガ ス 抜 き 時 機 の 検 討,日本調理科学会誌 35(4),368-374,2001. 5) フ ァ イ ト テ ク ノ ロ ジ ー 研 究 会 : フ ァ イ テ ク How to みる・きく・はかる,養賢堂,東京, pp.52-53,2002. 6) 近藤直,門田充司,野口伸:農業ロボット(I), コロナ社,東京,pp.54-56,2004. 7) 内田迪夫:パンの種類と製法,「製パンプロ セ ス の 科 学 」, 田 中 康 夫 , 松 本 博 , 光 琳 , 東 京,p.25,1991. 8) 松本博,団野源一:パン生地の熟成と生地改 良,「製パンプロセスの科学」,田中康夫,松 本博,光琳,東京,p.76,1991. 9) 高野博幸:パン生地の醗酵,「製パンプロセ スの科学」,田中康夫,松本博,光琳,東京, p.144,1991.

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