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海洋バクテリオファージの増殖に及ぼす培養温度と培地中無機塩の影響

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海洋バクテリオファージの増殖に及ぼす培養温度と

培地中無機塩の影響

著者

日高 富男

雑誌名

鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of

Fisheries Kagoshima University

32

ページ

133-146

別言語のタイトル

Effect of Incubation Temperature and Mineral

Environment on the Propagation of Marine

Bacteriophages

(2)

MemFac・Fish.,KagoshimaUniv・ Vol、32 pp,133∼146(1983)

海洋バクテリオファージの増殖に及ぼす

培養温度と培地中無機塩の影響

日 高 富 男 * ’

EffectoflncubationTemperatureandMineralEnvironment

onthePropagationofMarineBacteriophages TomioHIDAKA*’ abstract Theauthorinvestigatedtheeffectsofculturalconditions,temperatureandmineral composition,onthepropagationoffivebacteriophagesystemsisolatedfromseawater・For testofthem,amethodofone-stepgrowthexperimentwasusedinthiswork・Itisdesigned toobserveonecycleofphagepropagation,i、e、adsorption,multiplication,andburst.The resultswereasfollows・ First,thehostbacteriagrewwithintherangeoftemperaturefroml7oto35oCwithoptimum at32oC,however,thephagespropagatedonlybetween25.and28oCwithoptimumat25oC・ Secondly,thehostbacteriashoweddifferentbehavioursonthemineralrequirementfor growthTowofthemrequiredmediasupplemented3%NaClforgrowth,andtheotherthree requiredK−,M9-,andCa−saltaswellasNaCl・Butallofthetestedphagespropagatedonly inthesamemineralconditionasseawater,Theseresultsdemonstratethattemperatureand mineralconditionsforthephagepropagationinhostcellaremorerestrictivethanthatforthe growthofhostbacteriumalone.Thepropertiesofthetestedphages,psychrophilicand specificmineralrequirementforpropagation,definedthemasmarinephages. 海洋微生物を性格づける特徴は,その増殖における低温性と海水無機塩要求性にあると言 える.海洋細菌の特性については,古くから多くの研究者によって究明されてきている.バ クテリオファージ(単にファージともいう)はその増殖に必要な素材の全てを宿主菌に依存 し,若く活力ある宿主細胞内でのみ増殖するため,海洋ファージの増殖に係わる性状には宿 主である海洋細菌の性状が重複することは避けられない.ファージ液中でのファージ粒子の 安定性やファージ粒子自体の理化学的性状については,宿主細菌から離れた状態で検討しう るが,それらはいわばファージ粒子の静的な状態での性状である(CHAINA,1965;EsPEJo andCANELo,1968,1969;HIDAKA,1972,1973;HIDAKAandlcHIDA,1976;NAKANIsHIe/

β/、,1966;SKLARowejα/、,1973).海洋ファージの増殖におよぼす培養条件の影響を検

*’鹿児島大学水産学部微生物学研究室(LaboratoryofMicrobiology,FacultyofFisheries,Kagoshima University)

(3)

134 鹿児島大学水産学部紀要第32巻(1983)

討する場合に,宿主細胞とファージ粒子とを混ぜて寒天重層平板に流込承,いろいろな条件

で培養して溶菌斑形成能を観察する方法がとられている(JoHNsoN,1968;SPENcER,1960;

WiEBEandLIsToN,1968;ZAcHARY,1976).その方法では,前述の理由からファージ単独の

性状を解析することは難しい.ファージの増殖は,宿主細胞へのファージ粒子の吸着と感染

に始まり,細胞内で増殖,成熟した子孫ファージの放出に至る.この過程を1サイクルだけ

行なうように仕組んだ実験として一段増殖実験法(ELLIsandDELBRucK,1939)がある.本

報においてはこの実験法を用い,所定条件下における海洋ファージの一段増殖過程を観察し

た.これによって,宿主菌とファージとの挙動を解析しながら,海洋ファージの増殖に及ぼ

す培養温度や培地中の無機塩組成の影響を検討しえたので,その結果を報告する.

実験材料および方法

1.供試海洋バクテリオファージ系本報で供試した海洋ファージ系は,さきに九州南方

海域の海水から分離したファージ系のうち代表5系(O6N-l2EO6N-24P,O6N-34P,O6N

-52P,O6N-58P)である.それらはすでに,宿主菌の性状や溶菌斑形態,ファージ粒子構造を

調べ(HIDAKA,1971),ファージ粒子の安定性をも検討している(HIDAKA,1972).

2.使用培地海水培地(SeaWaterBroth,SWB)は,HERBsT,s人工海水Mにポリ

ペプトン59,酵母エキス19を溶解,pH7.6∼7.8に調節したものである.海水寒天培地(Sea

WaterAgar,SWA)とするため,上記SWBに1.5%寒天を加えた.またSWBに0.5%濃

度の寒天を加えたものを軟寒天培地(SoftSeaWaterAgar,sSWA)とした.次に無機塩

要求性を調べるための5種所定培地(HIDAKA,1965)は,(a)純水,(b)0.5%NaCl水溶液,

(c)3%NaCl水溶液,(d)1/6濃度人工海水,(e)人工海水,のそれぞれにポリペプトン0.05%,

酵母エキス0.01%濃度に溶解し,pHを7.6∼7.8に調節したものである.なおHERBsT's人

工海水の組成はNaCl,30;KC1,0.7;MgC12.6H20,10.8;MgSO4・7H20,5.4;CaCl2.

2H20,1.09/LでpH7.6∼7.8に調節したものである. 3.バクテリオファージ定量法ファージの定量はADAMS(1959)の寒天重層法に準じ

て行なった.SWBで適宜10-"希釈を行なったファージ液1mlを宿主菌新鮮培養物(lO8cfu/

mD1mlと混ぜ,室温に5∼10分間放置して宿主細胞にファージ粒子を吸着させる.その吸

着液0.2mlを,予め溶解し45°Cに保温したsSWA3mlに注加し手早く混和した後,その

すべてをSWA平板上に流込承重層する。重層寒天の固化するをまって25.Cにて1晩培養 した.この方法で1枚の平板に形成された溶菌斑数は〔plaqueformingunit(pfu)/供試希釈

ファージ液0.1ml〕を表わす.この測定値を10倍し希釈倍数を乗じてpfu/mlを算出した.

4.−段増殖実験法培養温度の影響をみるための一段増殖実験は,基本操作の中で培養 時の温度条件を変えたのみである.宿主菌をSWBで1晩培養し,その0.5mlを4.5mlの

SWBに移植してさらに2∼3時間振鎧培養する.その宿主菌新鮮培養液(108cfu/ml)4.5

mlと当該ファージ液(lO7pfu/ml)0.5mlとを振渥培養管に入れて混和(MOI,0.01),所定

温度で振逼培養する.その間にファージ粒子は宿主細胞に吸着される.所定吸着時間後,そ

の培養液(A)0.1mlをSWB9.9mlに加えて希釈液⑪とする.その希釈液(Dリ0.05mlを,さらに 別に準備したいた振逼培養管中のSWB5mlに加えて希釈し,各所定温度で振湯培養を続け

(4)

日高:海洋ファージ増殖への温度と無機塩の影響 135 増殖液⑥とする.希釈液⑪は直ちにその中の全ファージ数を測定すると同時に,Millipore

filter(HA,孔径0.45〃、)で傭過し,その憶液について未吸着ファージ数を測定する.それ

ら両測定値の差から吸着ファージ数を知り吸着率を算定する.増殖液(G)はその後所定培養時

間(5∼10分)毎に,その一部必要量を無菌的にとり出し,適宜希釈してフアージ数を測定

する.各測定値から未吸着ファージ数を差引いて片対数方眼紙にプロットし,一段増殖曲線

を作成する. 培地中の無機塩組成の影響を承るための一段増殖実験は,宿主菌の前培養液中やファージ 液中の無機塩ができるだけ実験系に導入されないように修正してある.宿主菌をSWBで1 晩培養し,その0.5mlを4.5mlの5種所定培地(a,b,c,d,eの各培地)に移植してさらに 2∼3時間25°Cで振漫培養する.その宿主菌の新鮮培養液0.05mlと当該ファージ液(l07 pfu/ml)0.05mlとを5mlの5種の所定培地(前培養に相応する培地)を入れた振逼培養管に 加えて混和(MOI=0.1),25.Cで振鎧培養する.所定吸着時間後に,その培養液(A)1mlを 相応する所定培地9mlに加えて希釈液、とする.その希釈液⑪0.05mlをさらに振鐙培養管 中の所定培地5mlに加え,振逼培養を続ける.以下の操作は前記と同様に行う. 実験結果および考察 一段増殖実験(onestepgrowthexperiment)によって画かれた一段増殖曲線(onestep growthcurve)からは,ファージが宿主細胞に感染してから子孫ファージ粒子を放出し始め るまでの時間,潜伏期(latentperiod)と,その時間の拡がり,上昇期(riseperiod),感染 菌1個あたりの平均ファージ放出数(averageburstsize)などを知りうる.また曲線には現 れないが,この実験から宿主細胞に対するファージ粒子の吸着率(absorptionrate)も算定 できる.供試海洋ファージの一段増殖実験法に際し,温度条件や培地中の無機塩組成を変え て培養し,それによってもたらされた一段増殖曲線の変化をとらえた.それから海洋ファー ジの増殖に及ぼす培養温度や培地中無機塩組成の影響を知り,それらの至適条件を考察する. 1.培養温度の影響 (1)宿主菌の発育温度曲線:供試ファージ系の宿主菌をSWBに接種し,温度勾配振渥培 養装置(ヤマト科学,ModelSC-21)を用い6段階(17.,21。,25。,28.,32.,36.C)の温度条件 で4時間培養した.発育度は光電比色計(ELeitz製,ModelM)で波長550nmの吸光値 として表わした.かかる振渥短時間培養によっては,長時間培養よりも発育温度域及び至適 温度が高温側に出るのが普通である.ファージの一段増殖実験は数時間の培養で終了するの で,それに類する条件で実験した.その結果をFi9,1に示した.供試菌のうち06N-24を除 く他の4菌について,この培養条件での発育温度域は17∼35℃であり,37.Cでは発育しな かった.至適発育温度は32℃付近にあった.これに対し,O6N−24の発育温度域は20∼32°C で,至適温度は25°Cであり,すべて他の4菌より低温側にあった. (2)各温度で前培養された宿主菌へのファージ吸着率:供試ファージ系の宿主菌をSWB の中で5段階温度で培養し,その培養菌に対する当該ファージの吸着率を25°C培養条件下 で測定した.その結果をTablelに示した.供試ファージ系の全てが25℃前後で前培養さ れた宿主菌に対して最も高い吸着率を示した.その値はほぼ80%以上であった.しかし,

(5)

136 0 0,6 1 5 2 0 2 5 3 0 3 5 Incubationtempe『ature(oC) Growth-temperaturecurvesofhostbacteriaofusedphagesystems・ Symbols:−□−,06N-21;一○-,06N-24;−▲−,06N-34;−●−,O6N−52; 一■−,06N-58. 4 0 ︵ニーーの匡①ロ一m○一︺Q○一 2 0 二︺量O﹄① 鹿児島大学水産学部紀要第32巻(1983) Condition:Hostcells,107/ml;MOI,0.01;Absorptiontemperature,25°C;Adsorption time,lO-20min. Ⅳ|卵Ⅲ師蛇別 O6N−21P O6N−24P O6N−34P O6N−52P O6N−58P Fig.1. O6N-24Pは全体的に吸着率が低く,25℃培養菌に対しても60%程度であった.同一宿主菌 であっても前培養温度の違いによって,それに対するファージ吸着率が少しずつ異なること が知られた.このことによって,ファージ実験における宿主菌の新鮮培養物は,培養条件を 細かく吟味して作成しなければならないことがわかる. (3)各温度での宿主菌へのファージ吸着率:供試ファージ系の宿主菌を25°Cで培養し,そ の培養菌に対する当該ファージの吸着率を5段階の温度で測定した.その結果をTable2に 示した.これらの温度段階において,吸着率は17.,21°Cで低いが,25.,28.,32℃ではほぼ 同じであり,むしろ吸着温度が高いほど吸着率は除々に上る傾向ぎ見られた.このことを前 TableLAdsorptionratesofusedphagestothehostcellsculturedatvarious temperatures. Phage Subculture 21 65 18 72 74 80 temp、ofhost 2 5 2 8 8 5 8 9 5 5 4 0 7 7 7 5 8 9 8 6 9 5 9 3 耽一闘肥惣師刀

(6)

Condition:Hostcells,107/ml;MOI,0.01;Adsorptiontime,lO-20min 137

項の結果も合わせ考える時,宿主細胞の条件が整っておれば,吸着の適温域はかなり広いよ

うである.この実験においても,O6N-24Pは他のファージ系と異なり低温側において吸着率

が高くなっていた.

(4)各温度での一段増殖実験:供試ファージ系の宿主菌を25℃で培養し,それを宿主細

胞として5段階温度で一段増殖実験を行った.各ファージ別に各温度における一段増殖曲線

をFig.2∼6に示した.またそれら一段増殖曲線から読象とられた潜伏期と放出数をTable

3にまとめた.Fi9,2に示されたO6N-21Pの一段増殖曲線が培養温度の違いによって変化す

る様子は,他のファージ系のそれと異っていた.すなわちO6N-21Pにおいては,培養温度の

低下に伴って,潜伏期と上昇期が増し,放出数は減少していた.このように各培養温度によっ

Table2.Effectoftemperatureonthephageadsorptiontothehostcells. Fig.2. 3 0 6 0 9 0 1 2 0 1 5 0 lncubationtime(min.) One-stepgrowthcurvesofO6N-21P-systemincubatedatvarioustemperatures・ Hostcells,107/ml;MOI,0.01;Adsorptiontime,20min. Adsorptionrateat 2 1 2 5 6 4 8 5 7 2 5 4 6 5 8 9 8 4 9 0 8 2 9 2 Phage Ⅳ|弱、帥田汚 肥一別別的蛇蛇 耽一朋師兜妬鯛 O6N−21P O6N−24P O6N−34P O6N−52P O6N−58P 日高:海洋フアージ増殖への温度と無機塩の影響 a四 3 ︽U 1 E﹄①。﹄①]仁①。①ン−5の↑亡 104 102 一 ● − ●

(7)

鹿児島大学水産学部紀要第32巻(1983) 138 Fig.3. Fig.4. 3 2 0 1 0 1 −E﹄①Q﹄のEの。①ン一︾・の↑匡一

・●

2

5

0

l

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-

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.

_

.

l70C 1 1 1 ‐ 3 0 6 0 9 0 Incubationtime(min.) One-stepgrowthcurvesofO6N-24P-systemincubatedatvarioustemperatures・ Hostcells,107/ml;MOI,0.01;Adsorptiontime,l0min. 102 3 0 6 0 9 0 l 2 0 Incubationtime(minJ Ono-stepgrowthcurvesofO6N-34P-systemincubatedatvarioustemperatures・ Hostcells,107/ml;MOI,0.01;Adsorptiontime,10min. 3 0 1 E﹄の。﹄①︺匡①。①ン戸。の↑匡 104 。四 戒一 M〃’一一 一一一

(8)

139 103 日高:海洋ファージ増殖への温度と無機塩の影響 105 て,一段増殖曲線はそれぞれ潜伏期,上昇期,放出数を異にしていた.一方Fig.3における O6N-24Pの曲線とFig.4におけるO6N-34Pの曲線では,培養温度が違っても潜伏期はほと んど変わらず,放出数だけが変化していた.次いでFig.5におけるO6N-52Pの曲線とFig.6 におけるO6N-58Pの曲線では,培養温度のある段階から潜伏期に違いがふられ,O6N-52Pで は培養温度32.,28.,25.Cでは潜伏期は同じであったが,21.Cではそれがやや延長し,17℃ ではかなり延びていた.これに対しO6N-58Pでは,32.,28.,25°C培養と21.,17℃培養との 間に潜伏期の大きな違いが見られた.もちろん両ファージ系とも培養温度によって放出数も 異なっていた.このように各ファージ系の一段増殖曲線から見られる潜伏期,上昇期,放出 数は,培養温度によってそれぞれ異なる挙動を示していた.O6N-52Pが28℃で最大の放出 数を示したのに対し,他の4つのファージ系は25.Cで最大放出数を示した.32°Cでファー ジの増殖がみられるO6N-52P,60N-58Pとも,その温度での放出数は最大放出数の1/10∼1/5 に減少していた.17.,21℃においての放出数は25°Cの時の1/3∼1/2程度であった。一段 増殖曲線から,潜伏期が最も短かく放出数が最大である培養温度がそのファージ増殖のため つ0 L】 4 0 1 E﹄の。﹄①E①。①ン一一・①↑仁 Fig.5. ■ D ● − ● 一 102 3 0 6 0 9 0 1 2 0 lncubationtime(min.) Ono-stepgrowthcurvesofO6N-52P-systemincubatedatvarioustemperatures、 Hostcells,107/ml;MOI,0.01;Adsorptiontime,l5min.

(9)

団也 140 104 3 0 勺1 E﹄①。﹄①↑匡①。①ン一芯の↑仁 ・−25.C 102 鹿児島大学水産学部紀要第32巻(1983) の至適温度と見倣すならば,供試海洋ファージ系の増殖のための至適温度は25°C付近にあ ることがわかった.この至適温度条件においての各供試ファージ系の潜伏期と放出数は Table3に見られる.それによるとO6N-21Pの潜伏期は50分,放出数は70であった.同様 にO6N-24Pのそれは40分,4;O6N-34Pのそれは25分,240;O6N-52Pのそれは50分, 500;O6N-58Pのそれは35分,170;と5つの供試ファージ系相互でもその増殖力にはかなり の違いが見られた. これらの結果より,ファージが宿主菌へ吸着しその菌体内で増殖する時の温度域は,一般 に宿主菌の発育温度域より狭く,その至適温度は宿主菌のそれより低い.すなわちその宿主 菌がゆとりある代謝作用を営んでいる時に,ファージは旺盛に増殖するものと考えられる. また供試海洋ファージ系の増殖至適温度は,陸棲細菌に感染するファージ(例えばPS. αeγ姻伽saPなど)のそれ(32。∼36°C)より低かった. 2.培地中の無機塩組成の影響 (1)5種所定培地中での宿主菌の発育挙動:無機塩の組成及び濃度を異にする5種類の所 定培地に細菌を接種し,25.Cで6日間培養してそれらの発育パターンから細菌の発育にお ける無機塩要求パターンを知り,陸棲型(T-type)菌,好塩型(H-type)菌,海洋型(T-type) 3 0 6 0 9 0 1 2 0 lncubationtime(minJ One-stepgrowthcurvesofO6N-58P-systemincubatedatvarioustemperatures・ Hostcells,107/ml;MOI,0.01;Adsorptiontime,15min. Fig.6.

(10)

02005

5528

13 141

0050554253

Latentperiodandburstsizeofusedphagesatvarioustemperatures.* Medium,Seawaterbroth;MOI,0.01;Adsorptiontime,10-15min. Table3. Lp.:Latentperiod(min.)Bs.:Burstsize *Averagesof3-4experimentsforeachphage 50444 1 143 32.C L.P. B、s、 0 0 0 50 37 35 25 28 L.P. B、s、 21 L.P. B、s、 ■ ︻一一︶ ● 一”匡叩一 一‘︻ロ亜﹀ ︵叩〃︽︺ ● 孟叩︺且 ● ︾●●●堅] 17 L.P. B、s、 Phage O6N−21P O6N−24P O6N−34P O6N−52P O6N−58P

04000

7407

241

0050544253

6307

03005

5 95

2817

70505

5050064367

日高:海洋フアージ増殖への温度と無機塩の影響

3607832343

055497 *Alltypesofmedia(pH7.6)containO,05%ofpolypeptoneandO,01%ofyeastextract anddissolveinfollowingdiluents:(a)purewater,(b)0.5%NaClsolution,(c)3% NaClsolution,(d)artificialseawaterdilutedsix.fold,(e)artificialseawater. **H,Halophilictype;M,Marinetype 菌に型別されている(HIDAKA,1956).本報での供試海洋ファージ系の宿主菌にもその方法 を適用して,それらの無機塩要求性を型別した.その結果をTable4に示した.Table4に見 られるように,供試菌O6N-21と06N-34は5種所定培地のa,bに発育せず,c,d,eに発育す る好塩型であった.それらは3%程度のNaClの存在下で発育し得て,必ずしも海水成分中 のK−塩,Mg-塩,Ca-塩を要求しない.これに対し,06N-52とO6N−58は5種所定培地のa, b,cに発育せず,d,eに発育する海洋型の菌であった.それらは発育のために海水中の無機塩 組成を要求するものであった.O6N−24は海洋型菌のなかでも,さらに発育のための塩類濃度 範囲が狭くe培地の承に発育した. (2)5種所定培地中での一段増殖実験:供試海洋フアージ系の宿主菌は5種所定培地に おいてTable4に掲げられたような発育パターンを示した.5種所定培地のうち,宿主菌が発 育可能な培地についてそれら培地条件下で一段増殖実験を行った.それによって画かれた一 段増殖曲線を各ファージ系別にFig.7∼11に示した.またそれらの曲線から読ふとられた潜 Growthextentsofhostbacteriainfivetypesofdefinedmedia、Thegrowth extentsindicatethemaximumturbidityduring6daysincubationat25oC. Table4.

HMHMM

Fivetypesofdefinedmedia* ( a ) ( b ) ( c ) , ( 。 ) ( e ) Growth(0.,.X100)in Host bacteria Type**

1442822355

−一一一一

NNNNN66666

00000

00000

00000

22

60000

(11)

102 142 Fig.8.

伏期と放出数をTable5にまとめた.Fig.7∼11にふられるように,供試海洋ファージ系の

全ては5種所定培地のうちe培地での象増殖し,他の培地(c,d)では180分間培養しても

増殖してこなかった.つまり供試海洋ファージが宿主細胞に吸着・感染し増殖するためには,

1 1 1 1 ● e ⑪一 ● 〃I● 一 ″一 ● 、﹄● 一 に一 ●///〃,,●,,,,,,,,,,,, ● ● ●‘’,,,,〃,”,,,,雲●卿卿顧.,’,’,〃〃一 ● ● ● ● 104 3 0 1 E﹄のQ﹄の↑仁①。のン一︾。①↑仁 3 0 6 0 9 0 l 2 0 Incubationtime(min.) One-stepgrowthcurvesofO6N-24P-systeminvariousmediachangedinmineral compositionlncubationtemperature,25℃;Hostcells,106/ml;Adsorption time,20min. 鹿児島大学水産学部紀要第32巻(1983) 3 0 6 0 9 0 1 2 0 lncubationtime(min.) One-stepgrowthcurvesofO6N-21P-systeminvariousmediachangedinmineral composition・Incubationtemperature,25.C;Hostcells,106/ml;Adsorption time,20min. Fig.7. 3 2

,︾n︾

11

−E﹄のQ﹄2仁①。①シ一︾◎の↑匡一 e ● “/●//・ノ ● ● ● ●

(12)

143 102 日高:海洋ファージ増殖への温度と無機塩の影響 e ● ● ●〆 ●/〃”〃,,,,︲,,︲’’’,● 104 3 0 1 E﹄①。﹄巴匡①。①ン宮。①↑匡 Fig.9. 培地中の無機塩組成は海水の無機塩成分,NaCl,KC1,M9-塩,Ca-塩などが,海水と同様 な濃度組成にあらねばならないことがわかった.これに対して陸棲ファージ(PS. αeγ噸伽saPなど)は5種所定培地のb,dで増殖するが,a,c,e培地では増殖しなかった. これらのことは海洋ファージと陸棲ファージを鑑別する場合,それらの増殖段階における無 機塩要求性が重要な指標になり得ることが知られた.また,Table4とTable5を比較して, 宿主菌の発育における無機塩要求性とファージ増殖の時の無機塩要求性との間に相違が承ら れた.すなわちファージ増殖における無機塩の要求は宿主菌の発育に対するそれよりも厳し い条件にあると言える.それに関連して一段増殖実験中の吸着率を見ると,例えばO6N-34P にあっては,5種所定培地のc,d,e培地のうちe培地に比べc,d培地で吸着率がやや低下す るが決定的な欠陥ではなかった.それにも拘わらず,c,d培地でファージが増殖できなかった ことは,吸着後のファージ核酸の注入や菌体内でのファージ増殖過程に,培地中の無機塩組 成が大きく影響しているものと思われる. 120 3 0 6 0 9 0 Incubationtime(min.) One-stepgrowthcurvesofO6N-34P-systeminvariousmediachangedinmineral composition・Incubationtemperature,25°C;Hostcells,106/ml;Adsorption time,lOmin.

(13)

/// e肋 VI F 144 media (d) 0 0 0 ㈲|/// e ● 、J一 個●

●・

一 ● ● 一 ● ● グク/〃〃”.●‘.〃,,,,,,,‘‘,,,’,●,,’,’,,,,,,,,,︲’,,,●,,,,,’’,,,,,,,,’’.”一 ● ● ● ● ● ↑仁﹄①Q﹄の︾この。のン一一○の↑仁 (e) 70 4 220 3 0 6 0 9 0 Incubationtime(min.) 120 One-stepgrowthcurvesofO6N-52P-systeminvariousmediachangedinmineral composition・Incubationtemperature,25°C;Hostcells,106/ml;Adsorption time,20min. Fig.10. Table5.Burstsizeofusedphagesinvariousmediachangedinmineralcompositionat 25°C. // // Burstsize typesofdefined (c) 0 / 0 Phage 鹿児島大学水産学部紀要第32巻(1983) O6N−52P O6N−58P Ps.αeγugj− 7zosaP 0 70 O6N−21P O6N−24P O6N−34P 0 0 // 120 00 400 160

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-

1

-

-

145 102 1 1 1 1

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104 3 0 1 E﹄①。﹄①E①。①シ一]。①↑匡 日高:海洋ファージ増殖への温度と無機塩の影響 供試海洋ファージ系,O6N-21P,O6N-24P,O6N-34P,O6N-52P,O6N-58Pの増殖に及ぼす 培養温度と培地中無機塩組成の影響について検討した.その結果,各宿主菌の発育温度域は 17∼35℃であり,発育至適温度は32°C付近にあった.これに対し,各供試ファージの菌体 内増殖の温度域は宿主菌発育のそれに比して狭く25。∼28°Cで,至適温度は宿主菌のそれよ り低い25.C前後にあった.また,各宿主菌の発育のための無機塩要求性には差異があり,そ れを型別すると,06N-21,06N-34はNaClを要求する好塩型,06N-24,06N-52,06N-58 はNaCl,KC1,M9-塩,Ca-塩などの海水無機塩成分を要求する海洋型であった.しかしそ れらに感染するファージは,培地中の無機塩成分,NaCl,KC1,M9-塩,Ca一塩が海水と同 様な濃度組成にある時にの承増殖した.このように宿主菌体内でのファージの増殖には,宿 主菌が発育できる温度域や無機塩組成より狭く厳い、条件下においての承増殖することが知 られた.そして供試ファージの増殖における低温性と,厳い、海水無機塩要求性は,それら が海洋ファージであることを性格づけていた. 要 Fig.11. 3 0 6 0 9 0 1 2 0 lncubationtime(min.) Ono-stepgrowthcurvesofO6N-58P-systeminvariousmediachangedinmineral composition,Incubationtemperature,25°C;Hostcells,106/ml;Adsorption time,l5min. 約

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146 鹿児島大学水産学部紀要第32巻(1983) 文 献 ADAMS,M,A、(1959):“Bacteriophages",IntersciencePublishers,Inc.,NewYork・ CHAINA,P.N・(1965):Somerecentstudiesonmarinebacteriophages・ノ.g”・Mc”伽/、,41, ProceedingsXXV・ ELLIs,E,LandM・DELBRUcK(1939):Thegrowthofbacteriophage.、ノ.Ge".PノZysjo/,,22,365. EsPEJo,RT・andES,CANELo(1968):PropertiesofbecteriophagePM2:Alipid-containing bacterialvirus・Vjmノ。gy,34,738-747. EsPEJo,RT・andES、CANELo(1969):TheDNAofbacteriophagePM2、Ultracentrifugalevidence foracircularstructure,脇γ0ノogy,37,495-498. JoHNsoN,RM.(1968):CharacteristicsofamarineVibrio-bacteriophagesystemノ.Aγ/zo"αAcad・ Sc/・’5,28-33. HIDAKA,T、(1965):Studiesonthemarinebacteria.I1.Onthespecificityofmineralrequirementsof marinebacteria./1鹿”・Rzc・例sノZ.,Kαgひsノz"αU”zノ.,14,127-180. HIDAKA,T・(1971):Isolationofmarinebacteriophagesfromseawater.B"".、ノヒzP,SOC・FjsノZ.,37, 1199-1206. HIDAKA,T、(1972):Onthestabilityofmarinebacteriophages.B〃".、ノ”・SOC.Fisノ2.,38,517-523. 日高富男(1973):新たに分離した海洋バクテリオフアージの性状.鹿大・水・紀要.22,47-61. HIDAKA,T・andK・IcHIDA(1976):PropertiesofamarineRNA-containingbacteriophage、此加.Rzc. Fisル.,Kczgひsノz伽αU畑Zノ.,25,77-89. NAKANIsHI,H,Y・IIDA,KMAEsHIMA,andT・TERAMoTo(1966):Isolationandpropertiesof bacteriophagesinW伽0”γαノzae"oIy"cz‘s、B娩e"'s、ノ.,9,149-157. SKLARow,S,S,,R・RCoLwELL,G、BCHAPMAN,andS.F・ZADE(1973):Characteristicsofa W6γj0Pαγαノzα"ojy"c"sbacteriophageisolatedfromAtlanticcoastsediment.C”.、ノ. Mcm6i0/、,19,1519-1520. SPENcER,R,(1963):Bacterialvirusesinthesea、I、'mSymposiunonmarinemicrobiology",350-365,ed、 byOppENHEIMER,C、H,CharlesC・Thomas,Springfield,Illinois・ WIEBE,W、J、andJ・LIsToN(1969):IsolationandcharacterizationofamarinebacteriophageノMZzγ"G B〃.,1,244-249. ZAcHARY,A,(1976):PhysiologyandecologyofbacteriophagesofthemarinebacteriumBe"ecルeα 認α/γiegc〃s:Salinity.A”/、E"zノノ、"、ノリicγo6jo/,,31,515-422.

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清水 悦郎 国立大学法人東京海洋大学 学術研究院海洋電子機械工学部門 教授 鶴指 眞志 長崎県立大学 地域創造学部実践経済学科 講師 クロサカタツヤ 株式会社企 代表取締役.

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