正と負の屈折率粒子をランダムに配置したゼロ屈折率媒体
大坊
真洋
†Zero-Index Medium by Randomly Distributed Positive and Negative Index Cells
Masahiro DAIBO
† あらまし 正と負の屈折率媒体セルを面積比率1:1 でランダムに配置したゼロ屈折率媒体の性質を FDTD に より調べた.この媒体中では電界強度の分布がランダムになり,波面は完全に乱れるが,媒体の厚さが十分に厚 ければ,媒体から出射される波面は,入射波の波面,入射面形状,媒体中の空隙のいずれの影響も受けず,常に 出射面に平行であった.セルの大きさが波長の20 分の 1 以下になると空間的に均一な媒体とみなすことができ, 屈折率がゼロの性質である位相速度無限大,媒体の入射面と出射面での位相の接続が現れた.これらの性質は, 光軸や焦点の調整が不要な集光器に利用することができる.混合比を変えることによって,屈折率を負から正ま で調整することができるので,負の屈折率媒体の絶対値を正確に調整する必要がなくなる.また,正と負の屈折 率媒体セルを規則的に層状に交互に配置したところ,層に直交する方向にゼロ屈折率の性質が現れ,異方性のあ るゼロ屈折率媒体となった.この異方性媒体では,球面波を入射すると入射波面と同じ波面で出射面から放出さ れる.また層を斜めに配置した場合は,横方向に伝搬方向がシフトする効果も現れた. キーワード 負屈折率,ゼロ屈折率,波面制御,FDTD1.
ま え が き
我々の 身 の 回 り に あ る 物 質 の 屈 折 率 (n = /0 μ/μ0)は正であり,真空(自由空間)も屈 折率は正(n = 1)である.光の周波数になると電子ス ピンは追従できず比透磁率はμr= 1となる.透明材 料である誘電体の比誘電率rは材料によって大きさ は異なるが極性は正であり,その結果,典型的な透明 材料の屈折率は1以上で大きくても2–3程度である. 誘電率及び透磁率μの正負については,例えば金 属の場合は誘電率が負,反磁性体であれば透磁率が負で あり,実際の物質として存在する.しかし,かμの一 方だけが負の場合( < 0, μ > 0または > 0, μ < 0) は,速度が虚数となり電磁波伝搬ができない. 1968年にVeselagoは,注目する周波数でとμの 両方が負となる,すなわち < 0, μ < 0の場合は,電 磁波伝搬が可能であり,屈折率が負になると予測した. 同時に,負の屈折率の厚板(スラブ)によりレンズが 形成できることを示した[1].またPendryは負の屈折 率による平面レンズは,エバネッセント波が増強され †岩手大学理工学部,盛岡市Faculty of Science and Engineering, Iwate University, 4–3–2 Ueda, Morioka-shi, 020–8551 Japan
て伝搬するので解像度が非常に高いパーフェクトレン ズとなることを示した[2].しかしながら,パーフェク トレンズについては,損失のある現実的な材料では, 実現できないことがZiolkowskiらによって指摘され ている[3].Ziolkowskiは,負の屈折率材料では負の
Goos-H¨anchen (lateral) shiftが発生することも示し た[4].
さて,の方は金属において高周波まで応答し負値に なるが,μの方は負値で高速応答できるものがなく,自 然界では負の屈折率を示すものが存在しない.そこで,
Pendryらはマイクロ波領域でSplit Ring Resonator (SRR)と呼ばれる二重のC字型の金属箔の構造を考 案し,負の透磁率が可能であることを示した[5].透磁 率は磁性に関係し,電子のスピンに由来するものであ るが,磁界はベクトルポテンシャルの回転であるから, 自由電子を金属中でループ状に移動させれば磁界が発 生でき,これを透磁率の代わりにしたと解釈できる. 最初の負の屈折率のデモンストレーションは,金属 の誘電率を直線導体により調整し,それと負の透磁率 をもつSRRを組み合わせることによって,Smithら によって行われた[6].当初はマイクロ波の領域[7], [8] であったが,周波数が向上し,金属ストリップ対構造 により,既に可視光全域[9]にまでになっている.
さて,ポインティングベクトルをS,電界をE,磁 界をHとすると,S = E × Hの関係で表されるが, 自然界に通常存在する均質な物質は,波数ベクトルk とSは同じ向きを向いている.このような通常の媒体 は右手系媒体(RHM: Right-Handed Media)と呼ば れており,情報は群速度でSと同じ方向に伝搬する. 一方,kがSと逆方向を向いており,位相速度と群速 度が反対の媒体は,左手系媒体(LHM: Left-Handed Media)と呼ばれている.LHMは負の屈折率をもっ ており,この媒体に電磁波を入射させると,あたかも 時間反転しているかのように入射した界面に戻ってい くように位相が移動する.しかし,エネルギーの伝搬 は反転せず,群速度が低下して前方に進行する. LHMには,フォトニック結晶のように周囲との相 互作用を積極的に利用し周期的構造を利用したタイプ と,周期構造を必要とせずに単独でLHMの特性をも つタイプの2種類がある.この論文では後者のタイプ を前提としている. 電波や光の領域の電磁波は,波長が原子のサイズに 比べると大きいので,その注目する帯域の電磁波に とって原子のように振る舞う構造を作ることができる. この代表的な例は,前述の二重のC字構造のメタマ テリアルである.周囲との相互作用を使わないので, 波長に対して構造を十分に小さくすれば,異なる特性 のメタマテリアル粒子を体積比を調整しながら混合す ることによって,等価屈折率を任意に調整することが 可能ではないかと我々は考えた.このような粒子が三 次元で異方性がなく実現できれば,例えば液体に自然 に分散させる簡単方法により,特に正確に位置を決め て配置することなくゼロ屈折率を実現できる可能性が ある. 実際の材料を使用し,微細加工にも限界がある状況 で,エネルギーロスの少ないゼロ屈折率のメタマテリ アルを作製することは簡単ではない.しかし,いった ん,負の屈折率材料が得られた後,その絶対値に応じ て正の屈折率と混合比率を調整することにより屈折率 ゼロに調整できるのであれば,実用上のメリットは大 きい. 近年になって,ゼロ屈折率や誘電率がほぼゼロのメ タマテリアルの研究が進んでおり,例えば媒体中に空 孔があった場合でも波面が乱れずに透過する[10],折 れ曲がった経路でも伝搬する[11]などの報告がある. ゼロ屈折率の概念は,超音波の領域[12]にまでも拡 大している.またPendryは,屈折率の分布を設計す ることにより,内部の物体を外部から見えなくするク ローキングと呼ばれる技術も提案[13]しており,大き な驚きを与えた. 屈折率がゼロになれば,位相速度が無限大になる. その場合,媒体の形状や内部構造は電磁波の伝搬に どのような影響を及ぼすのか興味深い.本論文では, 正と負の屈折率をもつ微細なセルを混合したゼロ屈 折率媒体中の電磁波伝搬をFDTD(finite-difference time-domain)[14]によりシミュレーションした結果 を報告する.
2.
シミュレーション方法
正(n = 1)及び負(n = −1)の屈折率をもつセルを ランダムに配置した媒体のモデルを図1に示す.図中 で黒色のセルが負,水色のセルが正の屈折率をもって いる.ランダム構造は,c言語のsrand関数に実行時 の時刻を引数に与えて発生させた.この媒体のモデル では,屈折率の空間分布が滑らかに変化するのではな く,波長の数十分の1の細かさで急激に変化するので, 空間の標本化は十分に細かくすることが重要である. 媒体をモデル化するときのセルサイズは,電磁波の波 長(600 nm)の120分の1波長に相当する5 nmと した.タイムステップはΔt = 5 × 10−18sとした. 作成したFDTDプログラムは,3次元モデルである が,計算量の制限により計算空間のサイズは,紙面に 垂直な厚さ方向(z方向)では1層(1セル),紙面と 水平な方向(x方向,y方向)では,横600セル,縦 800セルとした.光源には,紙面と垂直な方向に磁界 があり,紙面と平行な方向に電界のある偏光(TE波) を用いた. 図 1 ランダムゼロ屈折率媒体からなる厚板(スラブ)の モデル吸収境界はBerengerのPML(Perfectly mached layer)[15]を使用し,PML層の厚さは8層とした. LHMには誘電率,透磁率μともに下記のような LossyなDrude分散をもつ媒体[3]を使用した. (ω) = 0 1− ω 2 pe ω(ω + iΓe) (1) μ(ω) = μ0 1− ω 2 pm ω(ω + iΓm) (2) ここで複素誘電率の実部を,虚部を,同様に複 素透磁率の実部をμ,虚部をμとすると,それぞれ 次にように表すことができる. r = 1− ω 2 pe ω2+ Γ2 e, r = Γeωpe2 ω(ω2+ Γ2 e) (3) μ r= 1− ω 2 pm ω2+ Γ2 m, μ r = Γmω 2 pm ω(ω2+ Γ2 m) (4) ωpe,ωpmは,それぞれ誘電率,透磁率のプラズマ 周波数であり,ωpe=ωpmとした.Γe, Γmは,それ ぞれ誘電率,透磁率の衝突周波数であり,Γe= Γmと した.
3.
シミュレーション結果
3. 1 等方性媒体 3. 1. 1 波 面 変 換 最初に,入射面も出射面も平面で平行なランダムゼ ロ屈折率スラブに,球面波を入射したときの電磁波 伝搬のスナップショットを図2に示す.スラブと自由 空間の境界を白い点線で示している.セルサイズは, λ/120である.媒体の損失はゼロとした.広いダイナ ミックレンジで画像化するために,紙面と平行な電界 Ex, Eyからlog(Ex2+Ey2)1/2を求め,その大きさを 擬似カラーで示した.光源の最大電界で規格化してい るので,図2 (a)–(c)の相対的な比較は可能である. スラブの内部では,波面が保存されずランダムにな るが,電磁波が出射面に到達すると,元の波長で自由 空間に放出される.興味深いことに,入射波の波面が 球面波であるにもかかわらず,出射されるときの波面 は,平面波となっている. スラブの厚さが波長λと等しい図2 (a)のとき,出 力波面が球面波のようにやや丸みを帯びているが,厚 さが2λ以上となる(b), (c)では平面波になってい る.均一なゼロ屈折率媒体による球面波の平面波化 はZiolkowskiにより報告されている[16]が,ランダ ムゼロ屈折率スラブでも同様の機能が発現できた.な 図 2 球面波から平面波への波面変換機能のスラブ厚さ依 存性Fig. 2 Dependence of wavefront conversion function from spherical wave to plane wave with thick-ness of the slab.
お,誘電率も透磁率もゼロで損失のないゼロ屈折率媒 体は,自由空間とインピーダンスがマッチングするの で,シミュレーション結果でも入射面での反射は見ら れなかった.また,波長とスラブの厚さの関係は相対 的なものであり,スラブの厚さが同じであっても,入 射波長が短くなれば,より平面波になった. 3. 1. 2 入射波面に依存しない集光作用 次にゼロ屈折率の長方形スラブの出射面から半径 1.5λで半円形に一部を取り去った場合のシミュレー ション結果を図3 に示す.図3 (a)は平面波が,(b) は球面波が入射されている.いずれの場合も取り除い た円の中心付近の自由空間に集光している.すなわち, 出力波面が平面波になることが,この媒体の特徴の本 質ではなく,出射波面が出射面の幾何学的な形状と平 行になることが本質である. 一般に集光光学系は光強度を高くできる大きなメ リットがある一方で,焦点合わせが必要となり,入射 光の角度依存性もあるため,限定された条件でのみ機 能を発揮する.それと比較して,ゼロ屈折率媒体は,
図 3 入射波面に依存しないゼロ屈折率凹レンズの集光 Fig. 3 Light focusing by zero-index concave lens,
which does not depend on the input wave-front. 任意の波面が入射しても,常に焦点に集光するのでそ のような調整は不要となる.この特性は通常の光学系 では実現できることではなく,応用価値は高い. なお,筆者らのグループは媒体の出口付近を半円形 にくり抜いた同様の構造で,媒体に負の屈折率を用い た集光レンズを提案している[17].負の屈折率のスラ ブレンズと比較して,スラブ中での集光がなくなるの で,エネルギー密度が高くならないことと,媒体の厚 さを半分にできることが利点であったが,入力波面に よって出力波面が変化する.今回のゼロ屈折率媒体は 入力波面によらず出力波面がほぼ一定であり,特性が 全く異なる. 3. 1. 3 充てん率による屈折率調整 図4にLHMの充てん率を変化させたときに,出 射波面がどのように変化するかシミュレーションした 結果を示す.スラブの厚さは2.6λである.充てん率 (Filling Factor, FF)は,媒体全体に対するLHMの 面積比,FF = LHM/(LHM + RHM),で定義して いる.図4 (a)はFF = 30%であるので,平均屈折率 は+0.4に相当する.スラブ中で波長が長くなってお り,屈折率が正であるので出射波面が入射波面と同様 の球面波となっている.一方(c)や(d)では平均屈折 率はそれぞれ−0.2, −0.4となり,LHMスラブのよう な集光特性を示し始める. ここで示した結果は,LHMとRHMの屈折率の絶 対値が等しく,nLHM=−1, nRHM= 1の場合の例で あるが,絶対値が等しくない場合であっても,実効屈 折率neff は,neff= FF× nLHM+ (1− FF) × nRHM の関係により調節することができる.マイクロ波から 光の領域に周波数が上昇するにつれて,負の屈折率の 図 4 出射波面と LHM の充てん率との関係 Fig. 4 The relationship between output wavefronts
and filling factors of LHM.
実装は困難になるが,正と負の屈折率媒体の絶対値を 厳密に合わせる必要がなく,充てん率でゼロ屈折率に 調整できることは,実用上大きなメリットとなる. 3. 1. 4 セルサイズの効果 次に,台形状の媒体を構成しているLHMのセルサ イズを波長λに対して変化させたときの出射波面の違 いを図5に示す.セルサイズが1/20λよりも大きく (粗く)なると出射波面が出射面に平行になる効果が 失われる.セルサイズを1/20λよりも小さくすれば, 台形や三角形のような斜面からも平面波を出射するこ とができ,斜面の角度によってビームの進行方向を制 御することが可能である.なお,図5以外のランダム 媒体のセルサイズは1/120λである. 3. 1. 5 経路中に障害物がある場合 図6 (a)のように,表面を波長オーダの高さのノコ ギリ波状に凸凹させた場合であっても,出射波面は平 面スラブのときと同じ平面波のままである.光は表面 粗さの影響を受けずに透過する.例えば手触りや熱伝 導に影響する表面のテクスチャ構造と,見え方に影響 を及ぼす光学的表面を,独立に設計できる新たな自由
図 5 出射波面へのセルサイズの影響 Fig. 5 The effects of cell dimension on output
wave-front.
図 6 表面にノコギリ状の凹凸がある媒体,及び内部に四 角形の空孔のある媒体
Fig. 6 The zero-index media with (a) sawtooth shaped input surface, and (b) a square void in the body. 度を提供する. (b)に示したように,ゼロ屈折率媒体の内部に四角 形の空孔を設けても,出射波面は空孔がないときと同 じように集光する.空孔が円の場合は,その対称性に より波面の擾乱は四角の場合よりも少なくなる.ゼロ 屈折率媒体は光を透過するが,その中に空孔があって もその存在を光学的には検出できない. なお,先行研究の[10], [11]は,一見すると入力され た波面が,乱されずに伝搬されているかのように見え るが,平面波が入射され,出射面も平面なので,元と 同じ平面波面が再生されていると思われる.我々の研 究では,波面はあくまで出射面に平行な波面となって おり,その証拠に図6 (a), (b)いずれも入射波面と出 射波面は異なっている. 3. 1. 6 位 相 接 続 ゼロ屈折率媒体は位相速度が無限大となるが,ラン ダム媒体内部では波面が擾乱される.このような媒 体での入射面と出射面の位相はどうなるのだろうか. 図7 (b)は,平面波をランダム媒体からなるスラブに 入射したとき,中央のx = 300の線に沿った電界強度 の分布である.スラブの入射面はy = 200,出射面は y = 500である. この分布は,ある時刻におけるスナップショットで あるが,丁度入射面で電界強度がピークになっている. スラブ内ではランダムに増減し位相情報が喪失してい るように見えるが,出射面では,電界強度は低下して いるものの,出射波はピークから位相が始まっている. なお,損失のない媒体にもかかわらず出射面での電 界強度が低下しているのは,一層の3次元モデルを使 用しているため,ランダム媒体の上下の面を通しての 散乱損失があるためである. 3. 1. 7 損失のある媒体 次に,LHM媒体に損失がある場合についてシミュ レーションした結果を図8に示す.LHMの複素比誘電 率をr=−1 + i0.1,複素比透磁率をμr=−1 + i0.1 とした.損失がある場合は,スラブ内部での減衰が大 きくはなるが,入射波面によらず,出射面に平行な波 面が出力されるランダムゼロ屈折率の基本的特徴は保 たれている.なお,図8以外は損失のない媒体につい てのものである. 3. 2 異方性媒体 3. 2. 1 水平多層構造 これまで,波長よりも十分に細かく,正と負の屈折 率のセルを平面上にランダムに配置した等方的なゼ ロ屈折率スラブについて述べてきたが,次に規則的に 配置して異方性をもたせた場合について述べる.水平 方向に等間隔で層状に並べた場合のモデル及びシミュ
図 7 スラブの入射面と出射面の間の位相接続,(a) 二次 元電界分布,(b) x = 300 での電界分布
Fig. 7 Phase connection between input and output surface of the slab. (a) Two-dimensional elec-tric field distribution, (b) the elecelec-tric field along x = 300. レーション結果を図9に示す.(b)の左側の図は十分 に時間が経過した時点での電界強度の分布を示してい る.この媒体中では層の直交方向に等位相で入射波と 出射波が接続される.均一なゼロ屈折率スラブでは, スラブ全域で等位相となるが,それとは異なり横方向 に電界の分布が現れている. スラブの全域に電磁波が侵入してしまった後は,ス ラブ上面に入射波が到達した時点の位相と,スラブ下 面から再放出される位相が同じになる.あたかも瞬時 に媒体を通り抜けているかのように見えるが,あくま で群速度は有限であり,位相速度が無限大になる.(b) の右側の図のように,スラブ中の波面を画像処理で取 り除いて,媒体入射前と媒体出射後の電界分布を接続 すると,位相が接続されていることがよく分かる.(c) 図 8 LHMの損失成分の有無による比較 (a) 損失のある スラブの二次元電界分布,(b) 損失のないスラブの 二次元電界分布,(c) 損失のあるスラブの中心軸上 の電界強度分布,(d) 損失のないスラブの中心軸上 の電界強度分布
Fig. 8 Comparison between lossy and lossless LHM. Two-dimensional electric field distribution of (a) lossy media, (b) lossless media; electric field along the center of (c) lossy media, (d) lossless media.
は(b)の中心軸に沿って電界分布をグラフ化したもの であり,入射地点y = 200と出射地点y = 500の電 界がほぼ等しく,媒体中での電界の変化はほとんどな
図 9 等間隔に交互に RHM と LHM の多層膜を配置し た異方性媒体 (a) モデル,(b) 入射波と出射波の位 相接続,(c) 中心軸に沿った電界分布
Fig. 9 The anisotropic media by LHM and RHM multi-layer stacked alternately in parallel with equally spaced intervals. (a) Modeling, (b) phase connection between incoming and out-going wave, (c) electric field along the center of the media. く,電界が接続されていることがわかる. 3. 2. 2 斜め45度多層構造 次に,斜め45度方向に等間隔で層状に並べた場合 の結果を図10に示す.この場合も層と直交方向に電 磁波が進行する.媒体内部で電界はほぼ均一になり, 出射波は平面波になっている.出射波の位置は横方向 にシフトしており,平面構造でビームの進行方向と波 面の制御が同時に実現可能である. 3. 2. 3 厚み比率による屈折率変調 正と負の屈折率媒体の層の厚み比率を変えた場合の 図 10 45度斜めに配置したときの進行方向のシフト Fig. 10 The shift of traveling direction when the
multi-layer tilted 45-degree.
図 11 RHMと LHM の厚み比率を変えたときの伝搬 Fig. 11 Propagation when changing the thickness
ra-tio of RHM and LHM.
結果を図11に示す.正の屈折率は+1,負の屈折率は −1とし,(a)は正の屈折率層の厚みが10 nm,負の 屈折率層の厚みが5 nm,(b)は逆に正が5 nm,負が
5 nmである.(a)は平均して正の屈折率を示し,(b) は負の屈折率を示している.このように正と負の屈折 率層の厚みの比率を変えることにより,全体の屈折率 の調整が可能である.
4.
む す び
正の屈折率と負の屈折率をもつセルを波長よりも十 分に小さい構造で混合したゼロ屈折率媒体をFDTD によりシミュレーションした.ランダムに混合したゼ ロ屈折率媒体では,出射波面は媒体の出射面に平行に なり,入射波の波面や,入射面の形状,媒体途中の空 孔に影響を受けなかった. この機能を発揮するためにはセルのサイズが1/20λ 以下で,スラブの厚さが2λ以上の条件が必要であっ た.屈折率は,正の屈折率と負の屈折率をもつセルの 混合比を変えることによって調節が可能であった. 一方,ランダムではなく水平に交互に積層したスラ ブでは異方性を示し,スラブに垂直な方向に位相が接 続され,入射波と出射波の波面が完全に接続された. ゼロ屈折率媒体は,位相速度が無限大となるので, 媒体に侵入した地点から抜け出る地点までの距離の意 味がなくなる.そのために入射面が凸凹していても, 媒体の途中に空孔が空いていても影響を受けない.同 様の理由により,入射波が平面波であっても,球面波 であっても出射側の波面は影響を受けず同一となる. エネルギーは保存されなければならないので,光は媒 体中に留まることができず,また線形であるので出射 光は入射光と同一周波数で放射されならなければなら ない.出射面ではランダム配置した微細な構造は電磁 波からは見えず,出射面全体が等エネルギー面となり, 出射面のマクロな構造から電磁波が再放出される. ゼロ屈折率媒体は,光から電波の領域まで幅広い応 用が期待できる.受光の無指向性は,例えば集光型の 太陽電池やエナジーハーベスティングなど受光機器に 有益であろう.太陽光エネルギーは光エネルギー密度 が低く,そのままのエネルギー密度で大面積の半導体 を使用するのは低効率であり経済的でない.このゼロ 屈折率媒体を使用すれば,能動的にトラッキングする ことなく可動部不要で太陽電池に集光することができ る.また,光軸合わせをする必要がなく,同一の波面 を生成することができるので,半導体プロセスで製造 する超小型光源からレーザー照明に至るまで光を放射 する機器にも有効であろう. 提案するランダム媒体は,負の屈折率媒体に合わせ て,屈折率がゼロになるように正の屈折率媒体を混合 すれば良いので,材料や製造プロセスによる制限を大 幅に緩和すると考えられる. 謝辞 FDTD及び画像化のプログラミングの多く は,大学院生であった朝倉 逍 君,大河内駿太郎 君 及び三浦季喜 君による貢献が大きく感謝する. 文 献[1] V.G. Veselago, “The electrodynamics of substances with simultaneously negative values of and μ,” Sov. Phys. Usp., vol.10, no.4, pp.509–514, 1968. [2] J.B. Pendry, “Negative refraction makes a perfect
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(平成 28 年 11 月 9 日受付,29 年 2 月 15 日再受付, 6月 7 日公開) 大坊 真洋 (正員) 1988東北学院大学工学部卒.1990 東北 学院大学大学院工学研究科博士課程前期 課程修了.1990 新日本無線株式会社入社. 1994岩手県工業技術センター入所.1996 岩手大学大学院工学研究科博士後期課程入 学.1999 岩手大学大学院工学研究科博士 後期課程修了.博士(工学).2002 岩手大学工学部講師,2005 岩手大学工学部助教授,2007 国立大学法人岩手大学准教授.