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特集「学習支援におけるモデリングの科学と工学」にあたって

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Academic year: 2021

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191 人 工 知 能  35 巻 2 号(2020 年 3 月) 人間の知的な活動としての「学習」の促進や支援に関 する研究においては,新たな技術によって学習効果を向 上するだけでなく,多様な学習対象や目標,学習者の能 力や学習過程によって異なる学習活動を計算機可読な形 で記述的に表現する「モデリング」を通じて,学習支援 の設計意図や妥当性を説明できることが重要である. 本学会の「先進的学習科学と工学研究会(SIG on Advanced Learning Science and Technology:ALST)」 では,2017 年度から 2019 年度の全国大会において,オー ガナイズドセッション「エビデンス指向 / プロセス中心 のシステムデザインとラーニングアナリティクス」を継 続的に企画し,こうした問題意識を活発に議論してきた. こうした背景のもと,本特集においては, (1)人工知能その他の諸技術に基づく適応的な支援技術 の実現のために扱われる学習工学的なモデリング (2)理論や分析によって導かれた学習の特徴の妥当性を 実践により立証する学習科学的なモデリング (3)学習支援サービス企業における研究動向や国際的な モデリングに関する研究動向 について,具体的な研究事例に基づいて各研究者に紹介 いただくことで,8 件からなる「学習支援におけるモデ リングの科学と工学」解説特集を企画した(以下,執筆 者は敬称略). (1)の学習工学の観点からは最初に,堀口・東本・平 嶋による,「知識モデリングに基づく学習支援」において, 教材知識をベースに学習者モデルや教授知識を設計すべ きであるとする情報構造志向アプローチの観点から,対 象領域における知識構造を記述する知識モデリングにつ いて議論いただき,物理領域を中心とする学習支援シス テムの事例を通じてその実装方法について解説いただい た.次に,柏原には,「学習支援システムにおける学び のモデルデザイン」と題して,学習者モデルによる支援 手法・要素技術,学習観の変遷,メディアによる学びの 多様化について整理していただくとともに,興味や楽し みを感じながら学習することを促進するエンゲージメン ト支援のデザインについて説明いただいた.さらに,瀬 田・Jouault・林は,「オープンエンドな学習空間におけ る主体的学びの知的支援」のテーマで,大規模知識モデ ルとしての Linked Open Data と,学習者に対して「問 い」を生成する基盤となるオントロジーを組み合わせる ことで開発された,歴史領域を対象とした主体的学習支 援システムの事例について紹介している.これらの解説 では,学習工学で主に扱われる,知識モデル,学習者モ デル,問い(教授)モデルそれぞれについて理論的・技 術的な背景を丁寧にまとめていただいており,学習工学 におけるモデリングの在り方を概観できるようになって いる. (2)の学習科学の観点についてはまず,田和 ・松居 に,「アフェクティブラーニングとモデリング」に関し て,学習中の心的状態(affective states)がどのように 生成されるかという「生成モデル」構築の重要性に基づ いて,神経科学的知見をベースに構築する Pedagogical Agents(PA)や,機械学習に基づく心的状態推定を「生 成モデル」の観点から議論いただいた.また,森田か らは,「機械学習時代における認知的学習モデルの役割」 というタイトルで,認知的モデルを「限定合理的な人間 の知能の仕様」と位置付け,そのアーキテクチャを実装 した,Adaptive Control of Thought-Rational(ACT-R) による研究事例に基づいて,認知モデルにおける知識表 現や学習の仕組みを解説いただいた.加えて,田村から は,「ラーニングアナリティクスとモデリング」を題材に, 学習やその環境の理解や最適化を目的として学習データ の測定や分析を行う Learning Analytics(LA)研究の 導入から始めて,学習者モデルから見た LA,LA のため の分析モデルという相反する観点からの関連研究を整理 いただいた.これらは,いずれも認知科学や神経科学, データ分析の観点から見た学習のモデルを近年の人工知 能技術と組み合わせて活用ないしは理解しようとする, 学習科学と学習工学の融合への道筋を示していただいた ものとなっている. (3)については,当該領域に関連する近年の動向と して,竹原・石川に「オンライン教育サービスにおける データ活用」ということで,サービス運営企業における 大規模データを利用した実践的な事例研究や実務上の課 題について紹介いただいた.合わせて,長谷川は「2010 年代の学習支援研究におけるモデリングのトレンド」と 題 し て, 国 際 会 議 Artificial Intelligent in Education (AIED)を題材に,モデリングを扱う国際的な研究の動 向をその種類と用途,手法の観点からまとめた. このように立場の異なる解説から得られる最新の知見 を組み合わせることで,学習支援研究における「モデリ ング」は,科学と工学を併せもつ新たなステージにたど り着くことが期待される.本解説がこうした次の一歩を 考えるきっかけになれば幸いである.

特集「学習支援におけるモデリングの科学と工学」にあたって

長谷川 忍

(北陸先端科学技術大学院大学情報社会基盤研究センター) (大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科)

瀬田 和久

参照

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