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富山県の森づくりと街づくりに対する富山県民の態度

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1.はじめに

 富山県では、県民全体でとやまの森を守り育てるため、 「富山県森づくり条例」(平成18(2006)年6月)を制定し、 この条例に基づき「水と緑の森づくり税」(平成19(2007) 年4月~)を導入している。県では水と緑の森づくり税を活 用して、とやまの森づくりの基本計画である「富山県森づ くりプラン」(計画期間10年間:平成19(2007)年度∼28 (2016)年度)に沿って、多様な森づくりと、とやまの森 を支える人づくりを進めてきた。  平成28(2016)年9月には、これまでの10年間の実績と タウンミーティングや水と緑の森づくり会議での意見、県 民意識調査[1]の結果などを踏まえ、平成29(2017)年度か らの「富山県森づくりプラン」(計画期間 平成29(2017) 年度から平成38(2026)年度)が策定された。この「富山 県森づくりプラン」では6つの事業が新たに拡充して実施 されることになっている[2]。具体的には、里山林の整備、 混交林の整備、優良無花粉スギ「立山 森の輝き」の植栽、 森林ボランティア活動の支援、森づくりへの理解を醸成する 取り組み、及び森づくりにつながる県産材利用の推進である。  一方、富山県も含まれる中部地方の太平洋側(伊勢湾流 域圏)では、森林の多面的機能を享受している都市で木材 の利用促進をはかり、森林・林業の再生と都市の活性化を 同時に目指す異分野連携プロジェクト(「都市の木質化プ ロジェクト」)が名古屋大学を中心として2011年より進め られている[3, 4]。具体的には、木の駅プロジェクト(間伐 による林地残材の回収による山間部の地域づくり)を通じ た森側の意識改革、都心部(名古屋市錦二丁目長者町地区)

富山県の森づくりと街づくりに対する富山県民の態度

要約:富山県の今後の森づくり、及び森づくりと連携した街づくり(都市の木質化)に対する県民の態度に関するインター ネット型社会調査を実施した。今後の富山県における森づくりで拡充される予定の6事業については、いずれも8割から 9割を超える回答者が重要と考えていること、8割以上の回答者が県産材によるお祭り時の休憩所・ベンチや県産材を使っ た地域共同利用施設の利用意向を有すること、約6割の回答者が木材利用を通じた市民参加型の街づくりに関心を示して いることがわかった。森林ボランティアへの参加意向があるほど、森づくり事業を重要と考え、県産材の利用意向があり、 木材利用を通じた参加型街づくりに関心がある。女性についても同様の傾向がある。市民・地域主導で森づくりと街づく りの連携を進める上で、潜在的森林ボランティア層、特に都市部女性を中心に働きかけ、協働していくことが始めの一歩 として適切である。 キーワード:森づくり、街づくり、都市の木質化、社会調査

中村 秀規

(工学部環境工学科) でのストリートウッドデッキの実験的製作・設置、キャン パス(名古屋大学)の木質化、そして森と街の連携のため の人づくり(森側と街側の交流と街側ユーザーの教育、森 と街の双方を理解できる若手人材育成)である[4]。  森づくりと街づくりを連携させ、異なる立場からそれぞ れの課題やビジョンを理解し、協働による実践を行うこと は、まだ新しい試みであり、富山県においてそのような位 置づけに基づく木材利用促進活動は行われていない。

2.目的

 本稿では、富山県の今後の森づくり、及び森づくりと連 携した街づくり(都市の木質化)に対する県民の態度を明 らかにし、今後の森づくりや都市の木質化を進める上での 示唆を得ることを目的とする。

3.調査の方法

 富山県民の態度を尋ねるため、インターネット・パネル (楽天リサーチ)に登録する富山県民(18歳から69歳)男 女1,000人を対象とする社会調査を実施した。県内各市町 村の平成27(2015)年10月の対象年齢人口[5]に比例して、 市町村別の割付を行った(富山市399人、高岡市160人、魚 津市40人、氷見市44人、滑川市31人、黒部市38人、砺波市 46人、小矢部市28人、南砺市46人、射水市87人、舟橋村3人、 上市町19人、立山町25人、入善町23人、朝日町11人)。男女、 年代に関する割付は行っていない。調査票は平成28(2016) 年11月22∼24日にかけて配信、回収された。

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 調査票では、まず、富山県森づくり条例、水と緑の森づ くり税、及び富山県森づくりプランに関する説明を行い、 同プランに示されている10年間の実績を文章及び図表で説 明した。その上で、平成27(2015)年11月に無作為抽出に より実施された県民意識調査(20歳以上の男女2,500人対 象、有効回答数1,415人(一部無回答含む)、有効回答率 56.6%)[1]でも尋ねられた、重要と思う森林の機能を7つ の選択肢から最大3つまで尋ねた。そして、平成29(2017) 年度からの森づくりプランで拡充して実施される6つの事 業について、それぞれ同プランより150字程度の説明文と 写真1から4点を示し、どの程度重要と思うか、4段階尺 度で尋ねた。  また、森づくりと街づくりの関係に関し、環境面で持続 可能な社会に向けての、都市での木材利用の必要性と意義 について説明した上で、都市の木質化に関する3つの問い を尋ねた。具体的には、お祭りでの一時的に設置される休 憩所やベンチなどを県内産木材で製作する場合の、休憩所 やベンチの利用意向(4段階尺度)、共同で利用する施設や 設備(地域交流センターや子育て支援センターの床、バス 停ベンチ、駐輪場など)を県内産木材で製作する場合の、 施設の利用意向(4段階尺度)、及び街づくりの課題解決(中 心市街地活性化、商店街にぎわい創生など)のために、市 民が参加し、イベントや公共的施設での木材利用を行って、 森づくりにも貢献する活動への関心度(4段階尺度)である。  最後に、個人属性と態度との関係を分析できるように、 居住環境(市街地、郊外か農山漁村地域か)、森林所有状況、 及び森林ボランティア(ドングリ拾い、植樹、下草刈りなど) の参加経験と今後の参加意向について、平成27(2015)年 実施県民意識調査[1]と同じ問いと同種の選択肢で尋ねた。  社会調査によって得たデータを用いて、今後の森づくり、 及び森づくりと街づくりの連携に関する態度と個人属性と の関係について、統計解析(ロジスティック回帰分析)を 行った。

4.結果

4.1 回答者の基本属性と重視する森林機能、森林ボラ ンティア参加意向         本調査への回答者の年代別、性別の度数分布、および対 応する年代の富山県全体の平成27(2015)年10月の統計に 基づく年代別、性別の人口分布は表1の通りである(母集 団統計で性別不詳者がいるため、年代合計と男女合計は一 致しない)。母集団と比べて、本調査回答者は、20代、60 代が5パーセント・ポイント以上少なく、40代、50代が5 パーセント・ポイント以上多い。また男性が10パーセント・ ポイント以上多い。なお、本調査は無作為抽出による社会 調査でないため、本調査における回答の分布は、母集団に おける分布を反映しない。  続いて、居住環境と森林所有状況の本調査および平成27 (2015)年県民意識調査における回答の分布は表2の通り である。県民意識調査の回答者と比べて、本調査では農山 漁村地域の居住者及び森林所有者の割合が5パーセント・ ポイント以上少ない。  重要と思う森林の機能(3つまで回答可能)の本調査及 び県民意識調査での分布は表3のようになっている。重要 度の順位は、自然との共生機能と生物多様性保全機能との 間を除き、2つの調査で同じであり、重要度順に、 土砂 災害防止/土壌保全機能、 地球環境保全機能、 水源涵 養機能となっている。ただし、本調査において地球環境保 全機能と水源涵養機能を挙げている回答者の割合は、県民 意識調査と比べて10パーセント・ポイント以上少ない。ま た、カイ二乗独立性検定によれば分布は異なる(有意水準 5%で判断。p < 0.001)。 表1 本調査回答者及び富山県母集団の年代別、性別分布 本調査回答者 母集団 度数 割合(%) 度数 割合(%) (年代) 18−19歳 4 0.4 19,843 3.0 20−29歳 69 6.9 86,461 12.9 30−39歳 184 18.4 118,828 17.8 40−49歳 359 35.9 150,274 22.5 50−59歳 273 27.3 125,830 18.8 60−69歳 111 11.1 167,416 25.0 計 1,000 100.0 668,652 100.0 (性別) 男 642 64.2 336,776 50.9 女 358 35.8 325,505 49.1 計 1,000 100.0 662,281 100.0 表2 居住環境と森林所有状況 本調査 県民意識調査 度数 割合(%) 度数 割合(%) (居住環境) 市街地、郊外  818 81.8 1,009 72.4 農山漁村地域  182 18.2 384 27.6 計 1,000 100.0 1,393 100.0 (森林所有) 所有していない  892 89.2 1,153 82.4 所有している  108 10.8 247 17.6 計 1,000 100.0 1,400 100.0

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 表4は森林ボランティア(ドングリ拾い、植樹、下草刈 りなど)参加経験及び意向の結果を示す。本調査の分布と 県民意識調査での度数分布を比較すると、同一といえる(カ イ二乗独立性検定でp = 0.604、有意水準5%で判断)。 表4 森林ボランティアへの参加意向 本調査 県民意識調査 度数 割合(%) 度数 割合(%) 参加したことが あり,今後も積 極的に参加した い 16 1.6 19 1.5 参加したことが あり,今後もで きる範囲で参加 したい 71 7.1 98 7.5 参加したことは あるが,今後は 参加したくない 532 3.2 30 2.3 参加したことは ないが,今後は 参加してみたい 435 43.5 596 45.6 参加したことが なく,今後も参 加したくない 446 44.6 565 43.2 計 1,000 100.0 1,308 100.0 4.2 今後の森づくりに対する態度  平成28(2016)年に策定された、二期目となる「富山県 森づくりプラン」(平成29(2017)年度∼平成38(2026)年度) で新たに拡充して実施されることとなっている6つの事業 に対する、本調査回答者の重要度評価の分布は表5の通り となっている。里山林及び混交林の整備については90%以 上の回答者が、無花粉スギ植栽、森林ボランティア活動支援、 理解醸成(教育)活動及び県産材利用促進については80% 以上の回答者が、「重要である」または「どちらかといえ ば重要である」と回答している。 表5 拡充する森づくり事業への評価の度数分布 重要である ば重要である どちらかといえ ば重要でない どちらかといえ 重要でない 計 里山林の整 備 400 511 61 28 1,000 混交林の整 備 385 515 76 24 1,000 優良無花粉 スギ「立山 森の輝き」 の植栽 425 409 133 33 1,000 森林ボラン ティア活動 の支援 319 534 121 26 1,000 森づくりへ の理解を醸 成する取り 組み 325 513 125 37 1,000 森づくりに つながる県 産材利用の 推進 357 464 150 29 1,000  拡充する森づくり事業と回答者の個人属性との関係を調 べるため、6つの事業それぞれについて「重要である」ま たは「どちらかいえば 重要である」と回答したか否かを 非説明変数(ダミー変数)とし、農山漁村地域に住んでい るか(ダミー変数)、森林を所有しているか(ダミー変数)、 今後森林ボランティアに参加したいか(表4の第1、第2 または第4選択肢を選択したか否か、ダミー変数)、女性 であるか(ダミー変数)、及び年齢を説明変数とする二項 本調査 県民意識調査 度数 割合(%) 度数 割合(%) 山崩れや洪水などの災害の防止(土砂災害防止/土壌保全機能) 753 75.3 1,011 74.4 二酸化炭素の吸収や、大気の浄化(地球環境保全機能) 550 55.0 888 65.4 緑のダムとして水資源を蓄える(水源かん養機能) 422 42.2 754 55.5 クマ、イノシシ、サルなど野生生物との棲み分けの場(自然との共生機能) 361 36.1 399 29.4 多様な動植物の生息の場(生物多様性保全機能) 262 26.2 431 31.7 心の安らぎ・レクリエーションの場や野外における教育の場の提供(保健・ レクリエーション機能) 165 16.5 236 17.4 木材やきのこなどの生産(物質生産機能) 96 9.6 136 10.0 計 1,000 100.0 1,358 100.0 表3 重要と思う森林の機能

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ロジスティック回帰分析を行った。結果を表6に示す。  統計解析の結果によれば、6つの事業すべてについて、 他の個人属性(説明変数)を統制した上で、今後の森林ボ ランティアへの参加意向を持つ回答者ほど、事業を重要で ある/どちらかといえば重要であると考えている(回帰モ デルにおける説明変数の係数の統計的有意性は有意水準 5%で判断する。以下同様)。また、その効果を回帰モデル の係数を用いて評価すると、例えば、森林ボランティアへ の参加意向を有する人は、有しない人と比べて、ボラン ティア支援事業を重要/どちらかといえば重要と考える人 の、そうは考えない人に対する割合が、6.7( = exp(1.908)) 倍となる。また、女性は、男性よりも、4つの事業(里山 林整備、ボランティア支援、森づくり理解醸成、及び県 産材利用促進)について、より事業を重要/どちらかとい えば重要と考えている。例えば、女性は、男性と比べて、 県産材利用促進事業を重要/どちらかといえば重要と考え る人の、そうは考えない人に対する割合が、2.4( = exp (0.855))倍となる。里山林整備に関しては、年齢が上が るほど、重要/どちらかといえば重要と考える人が増える。 なお、森林ボランティア支援事業については、農山漁村地 域の居住者は、市街地/郊外の居住者よりも重要度評価が 低い傾向が確認された(農山漁村地域の居住者は、市街地 /郊外の居住者と比べて、森林ボランティア支援事業を重 要/どちらかといえば重要と考える人の、そうは考えない 人に対する割合が、0.63 ( = exp(−0.459))倍となる)。 また、森林所有の有無については、他の要因を統制した上 で、森づくり事業の重要度評価との相関がない。 4.3 森づくりと街づくりの連携に対する態度  森づくりと街づくりを連携する観点からの、県産材で製 作された、お祭りでの一時的に設置される休憩所やベンチ、 及び地域での共同利用施設の利用意向、並びに木材利用を 通じた市民参加型街づくり活動への関心度の回答結果は表 7のようになっている。一時的設備か恒久的な施設かを問 わず、県産材を用いた設備を利用したいとする回答者は 80%以上を占めた。一方で、より直接的に森づくりと街づ くりを連携するための、木材利用を通じた市民参加型街づ くり活動への関心は、60%以上の回答者が示した。  続いて、県産材による設備、施設の利用意向と木材利用 を通じた参加型街づくり活動への関心について、利用して みたい/どちらかといえば利用してみたい、および関心が ある/どちらかといえば関心がある、をそれぞれお利用意 向と関心度の非説明変数(ダミー変数)として、4.2と同 様の説明変数に対する二項ロジスティック回帰分析を行う。 その結果を表8に示す。  分析結果によれば、森林ボランティア参加意向があるほ ど、他の説明変数を統制した上で、県産材を利用して製作 した一時的または恒久的な設備や施設の利用意向、及び木 材利用を通じた参加型の街づくり活動への関心度がいずれ も高いことが確認された。例えば、森林ボランティア参加 意向のある人は、参加意向のない人と比較して、森づくり と街づくりを連携した参加型活動への関心のある人の、関 心がない人に対する割合が、13( = exp(2.563) )倍になる。 また、女性も、男性と比べて、利用意向及び関心度ともに 高い。年齢が上がるほど、木材利用を通じた参加型街づく り活動への関心も高まる。なお、県産材で制作した地域共 同利用施設の利用意向と木材利用を通じた参加型街づくり への関心度については、農山漁村地域への居住者は、市街 地/郊外の居住者と比べて、低いことも確認された。森林 所有の有無はこれらの利用意向や関心度と相関がない。 里山林整備 混交林整備 無花粉スギ植栽 ボランティア支援 森づくり理解醸成 県産材利用促進 係数 p値 係数 p値 係数 p値 係数 p値 係数 p値 係数 p値 定数 0.089 0.872 0.794 0.126 1.001* 0.019 0.176 0.703 0.416 0.347 0.210 0.623 農山漁村 0.051 0.864 0.066 0.814 −0.170 0.434 −0.459* 0.044 −0.220 0.327 −0.045 0.838 森林所有 0.103 0.786 −0.115 0.730 −0.161 0.547 0.213 0.494 −0.035 0.903 0.028 0.920 森 林 ボラ ン ティア 参加意向 1.639* <0.001 1.174* <0.001 1.030* <0.001 1.908* <0.001 1.773* <0.001 1.594* <0.001 女性 0.818* 0.003 0.478 0.052 0.224 0.246 0.676* 0.002 0.404* 0.047 0.855* <0.001 年齢 0.031* 0.008 0.017 0.110 0.003 0.721 0.017 0.079 0.010 0.245 0.009 0.281 サン プ ル サイズ 1000 1000 1000 1000 1000 1000 対数尤度 −270.8 −307.9 −430.5 −364.4 −395.6 −420.0 *: p < 0.05 表6 拡充する6つの森づくり事業への重要度評価と個人属性の関係に関するロジスティック回帰分析結果

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表7 県産材による設備、施設の利用意向と木材利用を通    じた参加型街づくり活動への関心の度数分布 利用してみ たい してみたい いえば利用 どちらかと したくない いえば利用 どちらかと ない 利用したく 計 お祭りでの 一時設置式 休憩所、ベ ンチ 332 520 112 36 1,000 地域での共 同利用施設 364 497 104 35 1,000 関心がある がある いえば関心 どちらかと がない いえば関心 どちらかと 関心がない 計 木材利用を 通じた市民 参加型街づ くり活動 181 441 303 75 1,000 表8 森づくりと街づくりの連携に関する態度と個人属性    の関係に関するロジスティック回帰分析結果 県 産 材 に よ る お 祭 り 時 の 休 憩所・ベンチ 県 産 材 を 使 っ た 地 域 共 同 利 用施設 木 材 利 用 を 通 じ た 参 加 型 街 づくり 係数 p値 係数 p値 係数 p値 定数 0.318 0.493 0.589 0.211 −1.409* <0.001 農山 漁村 −0.239 0.311 −0.483* 0.035 −0.595* 0.003 森林 所有 0.296 0.354 0.147 0.637 0.491 0.054 森林 ボラ ンテ ィア 参加 意向 2.090* <0.001 1.767* <0.001 2.563* <0.001 女性 0.709* 0.001 0.716* 0.002 0.397* 0.021 年齢 0.011 0.242 0.010 0.303 0.015* 0.050 サン プル サイ ズ  1000 1000 1000 対数 尤度 −360.6 −357.2 −500.3 *: p < 0.05 5. 考察  4.1で示したように、本調査の回答者と平成27(2015) 年実施県民意識調査の回答者の、重要と考える森林機能の 順位や、森林ボランティア参加経験・参加意向の回答分布 は類似しており、特に森林ボランティア参加意向について は分布が統計的に同じである。郵送配布郵送回収型の県民 意識調査と比べて、年齢・性別に関する割り付けを行って いないインターネット調査である本調査は、高齢者が少な く、男性が多いという違いがあるが、強制ではない、森づ くりに関する社会調査に回答しようとする点で共通性があ り、森づくりへの態度に関して、本調査の回答者は県民意 識調査の回答者と比べて極端に偏っていることはないと考 えられる(ただし、母集団における分布を反映していると は言えない)。  表5に示されているように、今後の富山県における森づ くりで拡充される予定の6つの事業については、いずれも 8割から9割を超える回答者が重要性を認めている。各事 業の必要性、妥当性、および過去の実績を評価していると 考えられる。森づくり事業の重要度判断と個人属性との関 係性分析(表6)からは、全ての事業で(他の属性を統制 した上で)今後の森林ボランティア参加意向が強いほど、 事業を重要と考える傾向が確認された。森林ボランティア 参加意向を示した回答者のうち、90%は森林ボランティア 未経験者であり、これら潜在ボランティア層が事業の形態 によらず森づくり一般を支持していると考えられる。また、 女性は男性よりも、里山林整備、森林ボランティア支援、 森づくり理解醸成、及び県産材利用促進の4つの事業につ いて、より支持的である。これら4事業は、他の2事業と 比べて県民が場を利用したり、活動に参加したり、産物に 手に触れたりする機会のあるものと考えられ、女性がそう した事業をより重視しているのかもしれない。なお、森林 ボランティア支援事業については、農山漁村地域居住者よ り、市街地/郊外居住者のほうが、より重要と判断している。 森林ボランティアについて、都市的環境の個人ほど効用を 感じているためと考えられる。  森づくりと街づくりの連携(都市の木質化)に関しては、 県産材によるお祭り時の休憩所・ベンチや、県産材を使っ た地域共同利用施設の利用意向を見ると、8割以上の回答 者が利用してみたいと回答している(表7)。また木材利 用を通じた市民参加型の街づくりについては、およそ6割 の回答者が関心を示している(表7)。県が進める県産材 利用促進事業を重要と考える回答者がやはり8割以上であ り、利用意向の回答は、政策の重要度判断と整合的である。 一方で、木材利用と通じた参加型街づくりは、市民の参加 が求められる点で、県の政策に対する支持より踏み込んだ

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ものであり、また県内に先行事例がないことから、利用意 向ほどの関心が示されなかったと考えられる。  地域での木材利用意向(お祭り時休憩所・ベンチと共同 利用施設の2パターン)、及び木材利用を通じた参加型街 づくりへの関心と、個人属性との関係性分析からは、いず れも森林ボランティア参加意向があるほど、利用意向・関 心度が高まることがいえる(表8)。森林ボランティア参 加意向がある人ほど、森づくり事業を重要と考え、県産材 で制作された設備・施設を地域で利用したいと考えるだけ でなく、市民参加型の森づくり・街づくり連携活動に対し ても関心がある。また、女性は利用意向、関心とも高い傾 向がある。一方、農山漁村地域居住者の、県産材を使った 地域共同利用施設の利用意向及び木材利用による参加型街 づくりへの関心が低い。都市的環境のほうが木材利用の効 用を感じやすいことを意味する可能性がある。  伊勢湾流域圏で始まった都市の木質化プロジェクトのよ うに、木材利用を通じた参加型街づくりを富山県で進める 上では、森林ボランティア参加意向のある人々(潜在的ボ ランティア層)をまず対象とし、特に市街地/郊外居住の 女性を中心とした一般市民と、森側・街側の関係者(森林 組合、木材加工業者、建築家、工務店、商工会、商店街、 地域振興会など)とをつないでいくことが有効と考えられ る。

6.結論

 本調査では、富山県の今後の森づくり、及び森づくりと 連携した街づくり(都市の木質化)に対する県民の態度を 明らかにし、今後の森づくりや都市の木質化を進める上で の示唆を得ることを目的として、インターネット型社会調 査(居住市町村による人口割り付けを行った18歳から69歳 までの男女1,000人対象)を実施した。その結果、今後の 富山県における森づくりで拡充される予定の6つの事業に ついては、いずれも8割から9割を超える回答者が重要性 を認めていること、8割以上の回答者が県産材によるお祭 り時の休憩所・ベンチや県産材を使った地域共同利用施設 の利用意向を有すること、そして、およそ6割の回答者が 木材利用を通じた市民参加型の街づくりに関心を示してい ることがわかった。統計解析によれば、森林ボランティア への参加意向があるほど、森づくり事業を重要と考え、県 産材の利用意向があり、木材利用を通じた参加型街づくり に関心がある。女性についても同様の傾向がある。  環境面で持続可能な社会をつくっていくには、有限な地 下のエネルギー・鉱物資源によって作られた人工構造物を 資産として維持管理し受け継ぐとともに、生物が再生する 範囲で生き物からの恵みを消費・利用することが必要であ る。都市での木材利用は、そのような社会づくりを担う方 法の一つと考えられる。木材利用を進めるには、山で森づ くりを行い、森を適切に保全するだけでなく、街づくりに 木を活かし使うことが必要となるが、そのためには、木の 特性を良く知り、特性に合わせた利用をする必要がある。 したがって、都市部でも、自然に学び、自然に合わせる文 化と技術を受け継ぎ、創造していくことが求められる。  本調査は、市民主導、地域主導で森づくりと街づくりの 連携を進める上で、森林ボランティア候補者(多くは未経 験者)、特に都市部女性を中心に働きかけ、協働していく ことが始めの一歩として適切であることを示唆する。森づ くりと街づくりをつなぐ場づくりが、持続可能な社会に適 合した文化と技術の継承・創造となることが期待される。 引用文献 [1]富山県(2016):水と緑の森づくりに関する県民意識調 査報告書,富山県,120. [2]富山県(2016):富山県森づくりプラン,富山県,28. [3]佐々木康寿(2012):森林・林業の再生に向けた都市の 木質化をめざして,木材工業,67, 1, 35-38. [4]山崎真理子,佐々木康寿,古川忠稔,村山顕人,山田容三,高野 雅夫(2014):森と街の再生をめざす臨床環境学-都市の 木質化を通じた連携構築-,渡邊誠一郎,中塚武,王智弘(編) 『臨床環境学』所収,名古屋大学出版会,146-167. [5]富山県(2016):平成27年富山県の人口、富山県 謝辞  本研究は、平成28年度富山県立大学奨励研究費(地域的 課題研究)の助成を受けた。調査内容の検討にあたり、貴 重な情報提供や助言をくださいました富山大学秦正德先生、 富山県農林水産総合技術センター木材研究所園田里見先生、 富山県農林水産部森林政策課森づくり推進班松井俊成様、 滝口明信様、栗山直樹様に感謝申し上げます。

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