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[講演要旨]『金木屋日記』に見る幕末の災害情報

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Academic year: 2021

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(1)歴史地震 第26号(2011) 112頁. [講演要旨] 『金木屋日記』に見る幕末の災害情報 弘前大学. §1. はじめに 『金木屋日記』(弘前市立弘前図書館蔵八木橋文 庫)は,酒造業を営む金木屋(屋号山一)又三郎敬之 (武田正三郎)が,天保八年(1837),賀田(よした・現 弘前市賀田)へ転居してから文久二年(1862)に至る 期間の日記である. 記述内容は日々の天候の詳細,日常生活,村人 の動向,風聞など多岐にわたる.さらに,金木屋は弘 前藩家老の大道寺家,藩医の手塚家・小山内家など とも交際があり,両浜(青森・鰺ヶ沢)の豪商らと姻戚 関係を結んでいたため,伝達され同史料に記された 情報は,領内外にわたる金木屋の広範なネットワーク を示している.当時の知識人層の持つ知的好奇心の 強さ,興味の方向性などについて知ることのできる好 史料であり,幕末の地域を知る上での様々な情報の 宝庫でもある. なお,同史料はこれまでに,全体の抄録訳として斎 藤昭一解読・編集『山一金木屋又三郎日記 抜粋 編』(青研・1995 年)が刊行されているほか,『新編弘 前市史 資料編3(近世編2)』(弘前市・2000 年)に嘉 永六年(1853)分,『新編弘前市史 資料編 岩木地 区』(弘前市・2010 年)に安政元年(1854)分が翻刻 抄録されている.しかし,内容が膨大であることなどか ら割愛部分も多く,概要は紹介されながらもテーマに 沿った検討を加えられ,研究対象となることは,ほとん ど無かったと言って良い. 本報告では,主に安政年間を中心として,同史料 中における災害に関する記録と,瓦版を含む災害情 報,同情報の伝達経路について検討する. §2. 領内の災害情報 領内の災害については,災害時の様子や被害・対 応などについて,主に金木屋が直接見聞した情報を 記している. 2.1 硫黄山出火 岩木山の硫黄山出火は火山性の水蒸気爆発など によって露出した硫黄が延焼するというものであった が,実際的に城下町や在方の人が居住している地域 にほとんど影響は無い.それにもかかわらず弘前藩 はこの出火に対応し,領民は動揺を見せながらもそ の消火に自主的に加わった. 2.2 地震と「地震用心」の災害教訓 当該時期に津軽領において小規模な有感地震は いくつか散見されるものの,大規模な地震災害は発 生していない.しかし,江戸地震の情報などを得た金. 白石 睦弥. 木屋では「地震用心のため」に雪下ろしをさせたり, 商売柄火を多く使うとして地震の際の消火の用心をし たりするなど,領内で過去に発生した災害や,他地域 での災害情報に基づいた防災意識の高さが窺える. 2.3 火災・水害 地震と比較して頻発していた火災や水害は比較的 に多くの記述が見られる.災害そのものの記述もさる ことながら,「いたこ」など民間信仰者の「口寄せ(お 告げ)」や「夢見(夢占い)」などが災害情報として領内 で流布することに注目したい.幕末の民衆心理を考 える上で興味深い記述である. §3. 領外の災害情報 領外から伝達された災害情報は,主に 2 系統に分 けられる.ひとつは商売関係のルートを通じて入手さ れる情報、もうひとつは藩役人などからのリーク情報 である. 3.1 1854 安政東南海地震と 1855 安政江戸地震 両地震の被害や復興,災害情報などについては 重厚な先行研究が存在する.そのため,ここでは北 辺に住居する金木屋において、両地震はどのようにと らえたか明らかにする. 家老や諸役人とつきあいのあった金木屋は藩から のリーク情報として藩邸被害などの情報を詳細に記し ており,また各方面から入手した情報の時系列も情 報の伝達ルートなどを考える上で重要である. 3.2 1854 嘉永京都大火・1855 安政江戸地震と瓦版 主に書写された瓦版は 2 種類である.ひとつは嘉 永京都大火の 1 点で,これは得意先などの被害を知 らせるのに便利と多くの瓦版に記されるように,被災 地に近い場所から金木屋本家に伝達され,敬之は本 家から借用して写している.もう 1 種は,安政二年 (1855)日記の巻末に書き写された安政江戸地震の 瓦版であり,朱色と薄墨で巧みに描かれた.. 『金木屋日記』写真(弘前市立弘前図書館蔵八木橋文庫). - 112 -.

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