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政策統合の場としての地域

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Academic year: 2021

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【巻頭言】

政策統合の場としての地域

Region as an Arena of Policy Integration

学 長 八木紀一郎 一昔前には日本の経済政策の特徴は積極的な産業政策であると言われた。通産省などの 政策官庁が間にはいって企業間の調整をおこない、政府系金融機関で後押しすることによ って戦略的な産業を育成することが行われた。しかし、こうした政府介入型、あるいは官 民協調型の政策が実際に日本経済の発展に寄与したかどうかについては、研究者の評価は 分かれている。静態的な視点からみれば、競争的市場への介入は一般に効率性を妨げるも のであるし、また産業の発展を念頭に置いた動態的な視点からみても、介入による方向付 けが正しい情報・予測にもとづくものとは限らないからである。さらに、それ以上に、国 民のおさめた税にもとづく公的資金を、特定の営利企業、特定の産業の発展のために用い ることが許されるかという正当化の問題が存在している。 経済のグローバリゼーションと規制緩和のなかで、かつてのような直接介入型の「産業 政策」は行われなくなった。いまでは衰退産業の構造調整を除けば、政府の介入が正当化 できるのは、せいぜいのところ、競争の場を整える「市場拡張的」役割に限定されるとい うのが標準的な見解である。 それに対して、地域を場とした政策はどうであろうか。地域政策は、利潤で成功の度合 いが評価される企業・産業ではなく、生活者を含む地域全体の福祉の向上を目的としてい る。企業・産業の振興も含むが、それは地域全体の福祉に従属するもので、逆ではない。 産業開発・企業誘致に従属する地域開発は、地域政策というより産業政策というべきであ ろう。地域政策においても、産業政策と同様に、効率性問題や情報問題が存在し、成功す るとは限らない。しかし、民主主義的に運営された地方自治体および当該地域の住民の意 思および利害が反映されるならば、積極的な政策の正当化は産業政策以上に容易である。 もちろん、中央から地方への財政資金の移転が国民的合意にもとづいておこなわれている という前提が満たされる必要がある。 地域政策の利点は、特定可能な地域空間とそこで生活している住民の社会のための政策 であることによって、政策統合の可能性に富むことである。たとえば環境保護政策や保健・ 衛生の政策、雇用や起業支援の政策である。それらを結びつけ、地域振興の総合政策とす ることは正当化可能であると同時に、現実的である。自然的・人工的環境、社会状態と経 済状態は地域において相互に結びついているので、それに適切に対応した政策統合は、ば らばらに行う場合に比べて効率的にもなりうるからである。環境保護に矛盾しないエネル ギー政策・産業振興政策、住民の福祉増進に結びつく雇用・起業支援政策、市民社会の活 性化に結びつく文化・教育政策、等々。日本のすべての地域は、その意味で地域を基礎に 1

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-した政策統合を課題にしているだろう。 国境・国籍・文化という壁のある国と異なり、地域間の移動は、人にとっても企業にと っても自由である。地域政策の成否は人と企業の移動にも影響すると同時に、人と企業の 移動が地域政策の実効性を妨げることもある。人と企業の移動の可能性は地域政策の現実 的な適切さを要求している。他方で、移動の自由があるなかで特定地域に居続けるという 在住の自発性は、地域における民主主義を実のあるものにする。いいかえれば、地域政策 は自由な国家のもとで、民主主義を実践するものでなければならないということである。 2

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