Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
インプラント埋入時の下歯槽神経損傷に対して神経修復
術を選択した3例
Author(s)
村山, 雅人; 村松, 恭太郎; 別所, 央城; 成田, 真人;
大畠, 仁; 佐々木, 研一; 髙野, 伸夫; 柴原, 孝彦
Journal
歯科学報, 111(2): 224-224
URL
http://hdl.handle.net/10130/2360
Right
目的:インプラント治療の普及に伴い,当該治療に 関するトラブルの紹介を受けることが多くなった。 特に下歯槽神経障害は増加傾向にある。これに対し ては薬物療法や星状神経節ブロックを行い,経過観 察するのが一般的である。しかし,軸索または神経 の挫滅や断裂などの症例では,神経修復術が必要と なり,早期に病態を診断し,修復術に導くことが重 要である。 今回インプラント埋入後に下歯槽神経障害を認め 神経修復術を選択した3例を経験したので報告す る。 症例:症例1:左側臼歯部にインプラント周囲炎を 認めたためインプラント除去術を施行。その直後よ り左側オトガイ部,歯槽部の知覚低下を自覚。6年 後,当科紹介来院,初診時,同部位の錯感覚,CT より下顎管の断裂と上方への走行変位を認めたため 全麻下に下顎管移動,神経断端腫除去による修復術 を行った。術後,不快症状は改善された。 症例2:近医にて右側臼歯部インプラント埋入手 術を施行。その際に誤って下顎管を貫き,1か月後 に当科紹介来院。初診時,右側下口唇からオトガイ 部にかけての知覚低下,蟻這感を認めた。CT より インプラント体の下顎管への穿通を認めたため直ち に全麻下にインプラント体除去,神経縫合,および オトガイ孔移動を行った。術後6か月には錯感覚, 知覚回復傾向を認めた。 症例3:近医にて右側臼歯部インプラント埋入手 術を施行。埋入時に強い痛みを自覚。術後翌日よ り,インプラント埋入部から右側下唇の疼痛,痺れ を自覚。4か月後,改善の傾向がないため,当科紹 介受診。初診時,右側下口唇部のピリピリ感,埋入 部の麻酔奏功感,埋入部の圧迫感を認めた。CT よ りインプラント体の下顎管への圧迫所見を認めたた め初診2か月後,全麻下にインプラント体除去,神 経縫合,オトガイ孔移動を行った。術後5か月まで は知覚の回復傾向をみとめ,現在は異感覚の症状を 認める。 考察:今回,神経障害の診断には自覚症状,SW テ スト,CT 所見を併せ総合的な評価を行った。手術 所見から当該下歯槽神経部は圧迫か断裂の病態であ り,薬物療法のみでは回復が得られなかったと思わ れる。3例とも術後に症状の改善があり,神経修復 術の選択は妥当であったと考える。神経断裂などは 特に正確に障害の病態を把握することが重要であ る。また神経修復術を選択する場合は可及的に早期 に行うことも必要であることが確認された。今後よ り確実なクライテリアの設定を行いたい。 目的:破骨細胞の機能を強力に抑制し骨密度を増加 させるビスフォスフォネート製剤(以下 BP 製剤) は,骨粗鬆症患者における椎体骨折や大腿骨骨折な どの発生頻度を抑制することから,多くの福音をも たらしている。一方,顎口腔領域では同薬服用中の 抜歯に際しての顎骨壊死(以下,BRONJ)が問題 となっている。そこで最近の指針では,BRONJ の 予防として,BP 製剤の投与期間や BRONJ 発症の リスクファクターにより抜歯前後の休薬を推奨して いる。しかし,その休薬中に歯性炎症の急性転化や BRONJ を発症した例もみられる。そこで,BRONJ 発症と休薬期間との関係を明らかにするために本研 究を行った。 方法:2009年4月1日から2010年8月30日の間に都 立大塚病院口腔科において抜歯を行った患者1043例 のうち,経口 BP 製剤服用の既往があった48症例に 対して,BP 製剤の使用期間,指針で定められ た BRONJ のリスクファクタ ー,休 薬 期 間,BRONJ 発症について調査し検討を行った。 成績:経口 BP 製剤服用の既往があった48症例のう ち,BP 製剤を3年以上服用していたか,あるいは 服用が3年未満でも糖尿病やステロイド投与などの リスクファクターを有する患者は29例みられ,この 中の1例では既に BRONJ を発症して い た。さ ら に,5例で抜歯後の BRONJ が認められた。それ以 外の患者,すなわちリスクファクターを持たず,さ らに BP 製剤の服用が3年未満の患者には抜歯後の BRONJ は認められなかった。 次に,BP 製剤を3年以上服用していた,あるい はリスクファクターを有していた29症例を,抜歯前 後の12週間休薬したか否かによって分類した。その 結果,休薬しなかった症例や休薬期間が12週未満で あった14症例中,来院時に BRONJ を発症していた 症例が1例みられ,さらに抜歯後の BRONJ の発症 が2例に認められた。しかし,12週間休薬して抜歯 を行った15症例でも3例で抜歯後に BRONJ を発症 しており,両者に差は認められなかった。 考察:今回の調査では,休薬による BRONJ の発症 予防に明らかな効果は認められなかった。それらの 中には,抜歯以前に既に BRONJ を惹起していた症 例も含まれていた。したがって,BP 製剤を内服し ている患者の抜歯に際しては,当該歯が急性転化を 起こす可能性があるかなどの状態に応じて,休薬す るか否かを判断する必要があると考えられた。