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わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開

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(1)81. わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開 富田 Tbe. Spatial by. Organization Piano. Major. ToMITA,. 隆一**. 和暁*・服部. of Marketing. Networks in. Manufacturers. Kazuaki. HATTORI,. and. Japan. Ryuicbi. SUMMART. The. o艮ces and level and. but. We. could. of the. second The. We. in. The could. piano. point. lag of the. time turer・. we. can. out. two. that. are. not. factors. that. and. was cases. ofhces. special. be. demand. of. by. the. 1). ピアノの商品特性. 2). 2大ピアノメーカーの概要と流通機構 全国的な販売網の時空間的展開. 1)販売網の展開の概要 福岡県における販売網の時空間的展開. *. **. 地理学教室(Dept.. 福岡市立北崎小学校. 1). Y社の販売網の展開. 2). K社の販売網の展開 結. 論. of Geography). principles, developments. location. economic. and. the. second. principles. Tbose. patterns.. former.. 論. 2)販売網の時空間的展開の分析. Ⅴ. the. ピアノの商品特性と流通. Ⅳ. the. the. special. sales system. 次. Ⅲ. :. economic. for. by. the. explained. 日. Ⅱ. The. agents.. explained. is casued. 序. of national. Prefecture.. temporo-spatial. of and. tbresbold. the latter factor. Ⅰ. from. arised. space. follows. as. summarized. of branch. activities. can. patterns. the. are. some. branch. for marketing. establishment say. in. principles. special. in the manufacturers level study is Fukuoka. that. pattern. manufacturer's. travelling above. local. patterns. special. piano. considerations. general. economic. above. e鎧cincy 3.. the. see. for. developments. the temporo-spatial. consider. major. area. the. and the. recognized. we. 2.. two. of special agents local level. The. results of the analysis 1.. is to. of this paper. purpose. piano. are. manufac・.

(2) 富田. 82. 工. 和暁・腹部. 序. 隆-. 論. 近年, ′地理学において大企業の支店・営業所などの空間的分布・立地に関する研究が進 これらの研究のはとんどは,国民経済における大企業による空間の組織化の 実態把撞とその原理の解明,およびこの空間的組織化の発現としての地域・都市システム 展しているo. の解明にその目的があるといえよう。しかし,個々の研究の分析視角,および分析の視角 とも関連する考察対象とする企業の業種・産業ほかなり多様である。これらの点を整理し てみると,大きく二つに分けられよう。. 一つは,大企業の支所の地域的分布から都市の階層性や都市システムあるいは地域シス テムを分析,考察しようとするものであり,その研究はかなり多い。これらは,広汎な産 業を対象とした研究(P一ed, 1977;Abe, 1984;日野, 1986b;山本, 1987など)および銀 行など特定の産業・業種を対象とした研究(書津,. 1980;阿部,. 1981. ;千葉, 1981など) に細分できる.いま一つほ,主に寡占的な耐久消費財メーカーを対象としてその支所や販 売会社の立地,すなわちメーカーの販売網の空間的形態を分析,考察しようとするもので ある(日野,. 1979;日野,. 1983a;日野,. 1983bなど)0. 小論が属す後者の研究は比較的少ないが,これまでに明らかにされたことを要約すれば 以下のとおりである。大手家庭電気製品メーカーの支所とメーカー販売会社の立地分析の 結果, ①メーカーまたは販売会社の営業所は広域中心都市に配置され,それぞれ広域ブロ ックを管轄地域としている。 ②地区販売会社の配置は,市場規模の条件が前提とされるが, 府県単位による配置を基本としている。また,地区販売会社の本社ほ,府県内の営業を効. 率よくかつ隈なく行う必要から中心性の高い各府県内の第1中心都市に配置されている. ③地区販売会社の営業拠点は,府県を2-4に分割した地域ごとに配置されており,そ の配置点には,この分割地域内で卓越した中心性を有する都市が選択されている(日野, 1979)。また,複写機メーカーの販売事業所の全国的な立地展開の場合,必要需要量の原 則および営業社員の空間的移動の効率性などの経済的側面が重要であることが論じられて いる(日野,. 1983a)0. 要するに,これらの事業所の一般的な立地ほ,地域的な需要量および需要地域の空間的 範囲や同一企業の他事業所との距離などの空間的要因によって規定されると考えてよい。. 日野正輝(1986b)ほ,これらの要因を考慮した理論的な支店の配置条件や支店の配置地点 の選定の基準についても検討している。本稿の分析に際しても,これらの成果を多く参考 にした。. 上記の諸研究においてほ,販売網の立地展開の空間的次元を研究対象とし,時間的展開 についてほとくに検討されていない1)。販売網にかぎらず,立地現象の研究には時間次元. も考慮することが重要である。なぜならば,時空間的な展開を検討することによって立地 現象のメカニズムを把握・理解することができ,さらに,この把捉・理解ほ立地原理の考 察に寄与するからである。 大企業の支店・営業所の時空間的展開に関するこれまでの成果としては,管見の範囲で ほ,次に述べる日野の研究があるのみである。日野(1983b)紘,自動車,家電,タイヤ.

(3) 83. わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開. などのメーカーの地区販売会社の営業拠点の配置順位を理論的・実証的に研究したoこの概 要は次のとおりである.日野が行ったアンケート調査によ-'ても,営業拠点の配置ほ「地. 域の需要量」と「営業効率(既存拠点からの距離)」の2要素が,基本的な検討事項にな っている。そこでこの2要素,すなわち,市町村を単位地区とした需要ポテンシャルおよ び営業活動のための空間的効率性をともに等しく勘案したモデル2)を構築したoそして, 現実の宮城県における19社の営業拠点の時空間的展開を調査した結果,全体的にみればモ デルとよく対応することを明らかにした。. 以上の諸研究によって,市場指向の支店・営業所の時空間的展開についての基本的な理 解ほできる.しかし,現代日本において市場をめく.1る同一業種の企業間競争ほ激しく,企 業の販売網の時空間的展開は他企業のそれとの相互作用的なメカニズムのなかで営まれる といえるが,この観点からのアブp-チほこれまでみられなかったo. たとえば,寡占的な. 先発メーカーの販売網の展開と後発メーカーのそれほ同じであるのか異なるのか.この点 について実証的に分析するためには,研究対象業種が次の4条件を満たす必要があるとい えよう。. ①少数の大メーカーが市場で寡占的な地位を占めていること。 発・複発のちがいがあること。. ②これらメーカー間に先. ③メーカーの生産する商品は,一般の卸売業を通さないで. 流通していること。換言すれば,販売会社や直営店などのチャンネルで販売されているこ とo. もし,卸売業が介在すれば,その本来の機能からいってメーカー販売網の研究対象と. Lて不適当であるo. ④全国的な販売網を確立していることo. これは,既存甲研究結果との これら. 比較および同一地域における販売網の企業間の差異を検討するための条件であるo. の4条件のすべてにはば適合する業種として,検討の結果,ピアノメーカーをとりあげた。 わが国の2大ピアノメーカーほ 後述するように上記③と④の条件を満たし,両社の市場 また,. シェアは90%をもつ寡占メーカーであるo. 2大メーカー間には先発・後発のちがい. があり,これと関連して販売チャンネルが異なるが,両社ともに卸売業は介在していないo したがって,これらの4つの条件を基本的に満たしているといえる。. とはいえピアノは,他の商品と比較して特殊な商品といえる。それゆえ,このことも勘 案して分析しなければならない。したがって本稿ほ,ピアノメーカーの販売網の時空間的 展開を,これを規定する,あるいはこれと関連すると考えられる,以下の3つのことを視 点において分析することを目的とする.. ①既存の諸研究で明らかにされた,メーカー販売. 網の空間的展開に関する一般的な原理,. ②先発メーカーと後発メーカーの違い,. ③特殊な. 商品であるピアノの商品特性。要するに,このう、ち普遍的な経済的原理ともいえる①が優 越的に作用しているのか,またほ,特殊要因ともいえる②や③の影響が大きいのかを検討 することが,本研究の主要な目的である。 Ⅱ. り. ピアノの商品特性と流通. ピアノの商品特性. 川端基夫(1986)紘,卸売業の空間的展開を考察する際に考慮すべき商品特性項目を整 ①商品自体の 理して, ①商品自体の特性, a)供給特性および③需要特性に3分している..

(4) 富田. 84. 特性としてほ,商品の形状,運賃負担九. 和暁・服部. 隆一. 品質,品種および規格度が,. 紘,供給頻度,供給の不規則性および供給者の数と位置などが,. ②供給特性として ③需要特性としては,需. 要ロット,需要頻度,需要の不規則性,需要者の数と位置および需要の種類があげられて いる。Ⅵ. 上記の整理を参考として,重要と思われるピアノの商品特性項目についてみると,以下 のようになろう。. ①商品自体の特性としてほ,. ④耐久消費財であり,しかも他の耐久消費財(家庭用電気 製品など)と比較してもかなり長期間の使用に耐える商品である。また, ⑥商品価格が高 く, ⑥重量と質量が大きく,輸送と保管が比較的困難であるo. これには下記㊥の特性も関. 係している。こうしたことから,ピアノは一般に専門家によって輸送される例外的な商品 である.さらに,. ④定期的な調律などアフターサービスの必要性が高く,. ㊥震動や湿気に. 弱いといったデリケートな特性をもち,. ①生活必需性が低い商品である。これらの諸特性 により, ⑧比較的,ブランドへのし好性が高い商品といえよう。 ②供給特性としてほ, ④供給者の数が比較的少なく,しかも寡占がきわめて進展してい る.. ⑥寡占的なメーカーの工場が浜松地域に集積している.. ⑥供給の頻度は相対的にかな. り低い。. ③需要特性としてほ, ④需要頻度がきわめて低い。これほ前記①の④と⑥の商品自体の 特性に基づいている。 ⑥需要者は一般家庭と幼稚園,学校,大学などの法人が中心である。 したがって,需要者の数は多く,その空間的分布は全国的である。このような商品特性を もつピアノ(アップライト型とグランド型に大別される)の国内市場のシェアほ,ヤマ株式会社(以下, であり,. Y社という)が約60%,河合楽器製作所(以下,. K社という)が約30% 2大ピアノメーカーによる寡占状況にある。両社以外のピアノメーカーほ,全国. 的な販売網を確立していないため,小論でほ分析対象としていない。本稿で用いた主な資 料は,両社の社史と経歴書(1985・1986年)の他,両社の本社・支所および特約販売店(以 下,特約店という)において入手した資料,およびこれらにおいて行った聞き取り調査に よる。以下,とくに出典を示していない場合ほ,これらによっている。調査期間ほ1985年 3月-1986年11月である。したがって,本稿で「最近」あるいほ「現在」という場合は, 原則として1985年ないし1986年をいう。 2). 2大ピアノメーカーの概要と流通機構. (1) 2大ピアノメーカーの概要 わが国最大のピアノメーカーであるY社は,オルガンメーカーとして1897年に設立(秩 式会社として)された。. 1900年よりピアノの製造を始め,後述するように第2次大戦前に 全国的な販路を設けていた。第2次大戦後,製造品目と事業の多角化をすすめ, 1985年の 資料では販売経常に対するピアノの割合ほ20%,エレクトーン,電子楽器およびその他の 楽器は紛38%であり,楽器全体で約60%を占める。楽器以外にステレオ,家具,スポーツ 用品などを製造・販売している。. 1985年の従業員数は14,000人,資本金は135億円である。 Y社につぐピアノメーカーである民社の創業は1927年であり,同年,ピアノの製造・販.

(5) わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開 売を開始した.すなわち,. 85. Y社より約30年後にスタートした後発ピアノメーカーであるo. 1951年に株式会社に改組し,その後事業の多角化を進めた。最近の販売総額に対するピア ノの占める割合は52%であり,その他を電子オルガン,その他の楽器,音楽教室などが占 めている。. 1985年の従業員数は6,500人,資本金ほ36億円である。. このように両社は,創業開始時期および会社規模に違いがあるが,本社が浜松市にある こととピアノの生産は浜松地域で行われていることは両社共通している。両社のこれらの 共通点は販売網の時空間的展開を分析するのに適した条件といえる。すなわち,企業の販 売網の展開はその本社や生産拠点の地理的位置によって影響される場合があるが,この点. の影響は考慮しなくてよいといえる。 なお,両社のピアノの生産ほ,基本的に見込み生産である。したがって,生産計画のた めに市場動向や需要者の評価などの情報を収集する横能が重要である0 (2). 2大ピアノメーカーの流通機構. Y社とK社の流通機構は基本的には同じであるが,若干の差異もある.彼の分析にも関 係するので,最近の両社の流通機構の概略について述べ,両社の共通点と相違点を整理し ておく(第1図,第2図)0 Y社とK社の流通機構の共通点ほ,次の4つにまとめられる。 ①商流は本社--・支店 (支社)--小売店(直営店,特約店)の3階層から構成されており,他の商品よりも複雑 でない。 ②商流と物流が分離している。. ③卸売業が介在していない。つまり,メーカーに. よって流通機構における卸売段階の垂直的統合化が進展している。 ④物流についても比較 的単統な経路から構成されている。これらの共通点は,既述のピアノの商品特性(寡占的 メーカーの存在や輸送の困難性など)に基づいていると考えてよいであろう.それゆえ, 第1図. Y社の流通機揖の概要. 聞き取り調査により作成 第2国. 正社の涜通機構の概要. ピアノセンター. 聞き取り調査により作成.

(6) 富田. 86. 和暁・服部. 隆一. これらはまたピアノの流通機構の特徴ともいえる。 両社の流通機構の相違点は次の2つである。 ①物流の拠点とその機能に相違がある。. Y. 社の場合は,共同配送センターとよばれる配送業者所有の倉庫を物流の拠点としている.. この共同配送センターの境能は,商品の中継,在庫管理焼能である。また,第1図には示 されていないが, Y社には支店倉庫もある。これに対しK社の場合は, Y社と同様な共同 配送センターもあるが,. K社直営のピアノセンターが物流の拠点となっている。このピア. ノセンターは,商品の中継,在庫管理機能の他に商品の展示機能をもっている。こ・のため, ここには広いショールームが併設されている場合もある. ②直営店の機能に相違があるo Y社の販売の主力は特約店にあり,全国に13店ある直営 店の主な機能ほ試験的な販売機能を含む情報収集機能とPR機能であるという。一方, 社の販売の中心ほ全国に344店ある直営店(営業所)である。したがって,. K社の直営店. は販売磯能と情報収集機能が中心である。これらの直営店にほ展示棟能がないため,ピア Y社には(秩)ヤマ-プランズ(旧 ノセンターにこの機能をもたせているのである.なお, 名,ヤマ-月販)という系列会社が全国的に支店・営業所を展開しており,いわば直営店 として販売機能などを果たしている。 以上のような相違は,.両社の販売戦略の相違ともいえるが,後述するように先発メーカ ーと後発メーカーの競合関係から生じたとみることができる。 Ⅱ. 全国的な販売網の時空間的展開. 1)販売網の展開の概要 (I) Y社の販売網の展開. Y社は,会社設立9年後の1909年に早くも東京支店を開設し,以後,大阪市(1922年), 福岡市(1925年),名古屋市(1940年)に支店を展開させた(第3図).第2次大戦前は, これらの支店が各地域の楽器商の他,文具店,書店,時計店などを媒介としてピアノの販 売活動を行っていた3)。第2次大戦後,ピアノの生産を再開したY社は,札幌市(1946年), 第3図. Y社支店の醜設年と管轄地域(1986年). Y社の社史と経歴書などにより作成. 氏.

(7) わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開. 87. 仙台市(1951年),広島市(1964年)にも支店を開設した。そして,各支店によって戦前 から取引きのあった販売店の他に新規の特約店を開拓し,全国的な販売網を整備した。現 在でほ,この(楽器)特約店数ほ2,000を越えるという。. このように特約店を中心に販売網を組織したY社であるが,直接的な顧客の情報収集機 能を主な目的として, 1960年質より直営店の開設を始め,現在では13店を数える。後述す るように, K社では1959年から直営店(営業所)による販売システムへと大転換を図った. 上記の,. Y社の直営店開設はK社の直営店システムに対抗する意図もあったと考えられる。. Y社は,自ら構築した特約店による販売システムゆえに,つまり特約店保護のために, 社軒こ対抗して積極的な直営店システムをとることができなかったとみなされる.しかし. K. 1970年代以降, 1963年に割賦販売と月掛予約販売のため創設したY社の子会社であるヤマ -月販(秩)に,訪問販売による現金販売機能を保持させた.この販売機能ほしだいに強化 され, 1985年にほヤマ-月販(樵)は(秩)ヤマ-プランズ(以下, YP社という)と改称し, 名実ともに販売会社として機能している.. YP社の現在の支店,営業所などの数は全国で. 58である。 (2). E社の販売網の展開. K社の社史によれば,関東地方への販路の拡大を意図して東京に1930年,販売会社を設 置した。しかし,これほ成功しなかったようである。というのほ,第2次大戦前から1954. 年までK社は,関東と関西の大手楽器商を販売の総代理店としていた,つまり,独自の販 売網をもたない生産機能のみの企業であったといえる記載が社史にあるからである。 年から自社による販売網の整備を始めたo同年,福岡市と札幌市に,. 1954. 1955年に名古屋市に 1956年には,これら3出張所を支社に昇格させるとともに東京と仙台 市にも支社を開設した(第4図)o これらの出張所・支社を拠点として1954年から特約的 出張所を開設した。. の開拓を始めたが,大手楽器店は既にY社と契約していたことおよびY社による特約店の. 専売化政策などにより,特約店による販売網の構築は思うように進展しなかった. 第4国. 正社支社の開設年と管轄地域(1986年). K社の社史と経歴書により作成 ( )内の年次は出慕所としての開設年次.

(8) 富田. 88. 和暁・服部. 隆一. こうした状況を打開するため, 1959年から直営店システムによる全国市場の組織化を急 速に展開した4).社史によれば,これは「占有率が低く,広告量伝力は小さく,販売網は. 弱い状況のなかで販売方法の決め手」として考えられたものである。直営店は訪問販売の 拠点として位置づけられ,店頭販売機能はほとんどもっていなかった。つまり,営業所の 機能に特化していた。このことは上記のように,当時のK社ブランドの知名度が全国的に みて低かったことによるであろう。また,訪問販売を可能にしたピアノの商品特性として, 需要頻度が低く,価格の高い耐久消費財であることを指摘できる。 1960年と1961年の2年間に直営店が全国135ヵ所に開設され,現在では344店におよぶo また,直営店の開設と管轄を業務とする支社も大増設され,. 高松市,. 1964年までに大阪取. 広島市,浜松市などの他,第4図には示されていないが,合計21支社(当時ほ,支店とよ ばれていた)を数えるに至った。この21支社体制ほ,直営店の全国配置がほぼ完了した後, 現在の12支社に縮小された.この縮小ほ営業の効率性のためとされている. K社は,短期 間で多くの直営店を拠点都市に配置したため,多くの資本を要した。資本の負担をできる だけ軽減するために,直営の店舗は賃貸によったはか,ピアノセンターを考案して,直営 店の機能を補完させた。すなわち,直営店は一般に営業活動の利便性などから地代の高い 繁華街に立地しているが,広い空間を必要とするピアノの展示・保管を直営店内でするこ とほ経済的に困発である。そこで,比較的地代の低い地区にピアノの展示・保管および配 送を目的とするピアノセンターを設置したのである。これに類似したものは1964年から開 設され,. 1970年から現在の名称になり,全国に約100ヵ所配置されている。直営店3店に. つき1ピアノセンターという配置であるoただし,ピアノセンターが直営店に併設されて. いる場合も多い。この場合のピアノセンターは主に展示機能のみをもち,保管・配送機能 はない。 現在,. K社の売上高の7-8割を直営店(営業所)が占めているとのことである。この. ように直営店は, のほとんどは,. K社の販売の主力であるが,特約店制度も併存している。. K社の特約店. K社の直営店展開が一応の終息をみた1960年代半ば以降に契約をしたとい. う。現在の特約店数は1,500とされているが,比較的小規模の店が多い。 2)販売網の時空間的展開の分析 (1)支店・支社の分析. Y社の支店の主要機能ほ,テリトリー内の特約店・直営店と本社との情報伝達,特約店 の販売促進活動の支援,エリア・マーケッティング戦略の立案,およびアフターサービス 棟能である。現在,支店は全国の7つの大都市に配置され,管轄地域ほ県境によって定め られている(第3図)。四国地方には支店が配置されてなく,大阪支店のテリトリーに属 している点を除桝ま,多くの大企業の支店配置およびその管轄地域と類似している(日野, 1985)。 第3図の,. Y社支店の時空間的展開ほ地域の需要量およびテリトリーの地理的位置によ. って規定されているとみなされる。すなわち,需要量の大きい東京,ついで大阪に支店が 配置され,ついでこれらの支店からみて遠隔地である福岡と札幌,そして東京と大阪につ.

(9) 89. わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開. く小犬都市であった名古屋市に,さらに東北地方をテリトリーとする仙台市および中国地方 をテリトリーとする広島市に配置された。 テリトリーの地理的位置が支店の立地に関係することは,日野(1986)によって論じら れている。日野は「既存の支店から遠隔に位置する地域は近接する地域に比べると支店の. 配置を伴うテリトリーとして分離・設定さjtやすい」とし,その表われとして札幌市と仙 台・広島の支店数の差を指摘している。つまり,東京あるいは大阪に既存の支店がある場 合は,仙台・広島より先に札幌・福岡に支店を配置することが示唆されているo 全国レベルにおける現実の支店の時間的展開と比較できる理論的研究はみられない。し たがってY社の場合,理論的な展開といえるかどうかについて結論は示せないが,おおむ ね理論と一致していると思われる.日野(1983b)が宮城県について行った理論的な支店配. 置の順序の算出を,全国レベルで行うことが望まれる。 一方, K社の支社は全国の8広域ブロックの中心都市の他に6つ,計14配置されており, K社支社の主要機能は,それぞれのテ Y社の支店より多い配置となっている(第4囲). リトリー内の直営店(営業所)の釈括,テリトリー内の特約店・直営店と本社間の情報伝 逮,エリア・マーケティング戦略の立案,およびアフターサービス機能などであるo 日野(1986)によれば, 「同じ業種の企業でも,市場占有率が高い企業はど一般に多くの 支店をもつ」.しかしこのことほ,ピアノメーカーの場合,支店・支社の数に関するかぎ り該当しない。ピアノメーカーにみられるこの特殊性ほ,メーカーによる販売システムの 相違にあると考えてよい。既述のように,. Y社は主に特約店システムであるため,支店と. 特約店の間の直接的・間接的な接触の頻度は比較的少ない。これほピアノの商品特性の一. っである需要頻度がきわめて低いこととも関連していよう。 一方,直営店システムをとっているK社の支店の場合は,テ1)トリー内の営業所の販売 促進や統括などのために営業所との接触の頻度が多い。両社の支店・支社のこうした差異 紘,. 1つの支店・支社が管轄できる特約店・営業所数の,いわば上限の差を生じさせる。. 直営店システムの場合はこの上限が低く,特約店システムの場合ほこれが高く,それゆえ, K社の支社数はY社のそれより多いといえるo. したがって,.上記の日野の指摘ほ,同じ販. 売システムの場合にあてはまる,つまり,条件付きで一般性をもつと思われる。. K社の各支社が管轄する営業所数をみると,名古屋と九州の両支社の41が最高である (第1表)。東京支社のテリトリーほ1979年に,北関東,東関東,城北の3支社が増設され, それまでの東京支社のテリトリーの多くを分割して,管轄することになった。これに伴い, 従来の東京支社は西関東支社としての営業と関東4支社の統括を業務とすることになった。. この支店の増設の1困ほ,テリトリー内の営業所数の増加により,効率的かつきめこまか い支社業務に支障が生じたことにあろう.同様のことが京阪神地域についてもいえる.す なわも, 1980年に京都・神戸両支社が増設され,大阪支社のテリトリーを分割・管轄する ことになった。両支社が増設された当時の旧大阪支社テリトリー内の営業所数ほ,現在の. 京阪神3支社が管轄する営業所数(59)と大差ないであろう。これらのことから,. K社の. 支社が効率的に管轄できる営業所数の上限は約50店と推定できる. K社の1960年代までの支社の時空間的展開は,以下の諸点できわめて特殊であるといえ.

(10) 富田 第1表. 和暁・月艮部. 隆一. 正社の支社別管轄直営店数. 計. i. 344. 資料: K社の経歴書(1986年)より作成 注1) る。. :東関東,西関東および城北の3支社の合計数。. ①最も早く立地したのは,札幌市と福岡市である(ただし,出張所として)。これほ,. 地域的な需要量からほ説明できない。. ②関西地方への立地が最も遅く,大阪市など(広島. 市,高松市)に配置されたのは1961年のことである。これは,名古屋,仙台への配置から 5年後のことである。 これらの特殊性は, K社が自社の販売網を長期間もたず,かつY社と比べると後発メー カーであることに起因しているといえる。すなわち社史によると, Y社と同じ特約店制度 による自社の販売体制を志向した1954年当時は,戦前から取引があった東京と大阪の総代 理店の影響力が強く,両者の販売エリア外から特約店開拓を始めざるを得なかった.とく 「やっとの思いで総代理店制を排除し に,関西の総代理店であった三木楽器の力は強く, た」という。それゆえ,上記の①と②の特殊な展開がみられたのである。. (2)直営店(営業所)の分析 Y社の直営店とY社の販売会社という性格をもつYP社の概要はⅢ-1)で述べたとおり である.国内に13あるY社の直営店にはテリトリー制はない.これは,同店に期待されて. いる主要機能が市場の情報収集機能とPR機能であるためと,全国市場を分割するはどに は全国的な立地展開をしていないためである。直営店が配置されている都市は, Y社の支 店が立地する7大都市と神戸市,高松市,浜松市の10都市である。このうち,東京都と大 阪市には複数配置されている。したがって,これらの配置ほ需要規模と密接な関係がある. といえる.なお,直営店についての開設年は把撞できなかったo YP社の全国58に及ぶ支所(支店・営業所など)についても,開設年に関する資料は得 られなかった。. YP社の支所の分布ほ第5図のとおりであり,. 3大都市圏および全国の主. 要都市-の立地がみられる。つまり,基本的には市場規模に対応した立地展開とみなして よい。このことは,. Y社の特約店との関係を勘案するとより重要である。すなわち,. 社は訪問販売が中心とほいえ,. Y社特約店と競合関係にあるともいえるが,この競合は市. 場規模が大きな地区でほ相対的に少なくなるからである。換言すれば,市場観模の小さな. 地区-のYP社の立地ほY社特約店を圧迫することになるといえよう。このようにみれば, 比較的市場規模が小さい都市(青森県八戸市,愛媛県新居浜市など). -のYP社の支所の. 立地の多くほ,有力なY社の特約店がこれらの都市にないことをカバーするための配置と. YP.

(11) わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開 第5図. YP社直営店の配置(1986年). 第6国. 正社直営店の配置(1986年). 91. YP社店舗一覧表より作成. K社経歴書(1986年)により作成 推定できる。 K社直営店は全国180の市町に344店が配置され,全国市場を網羅している(第6図).一. 般的には各府県に2-6の直営店が府県内の拠点都市に配置されている。とくに需要量が 大きい東京大都市圏と京阪神圏には多く配置されている。たとえば,東京都,神奈川県, 埼玉県,大阪府などでは都府県内の8-10都市に配置されている。これに対して,秋田県, 島根県,高知県など市場規模が小さい県ではその県庁所在都市にのみ配置されているo れらにほテリトリー制がとられているo. このテリトリーの境界は一般に,行政的な競界を. 利用したものであるという(Ⅳ-1)参照)0. 全国のK社直営店の開設年月についても資料が得られなかったが,初期の3店の都市名 2号店は三重県四日市市, のみ社史に記載されている.直営店の第1号店は青森県弘前市, 3号店は北海道旭川市とつづき,半年間に80ヵ所に開設された。初期の3店に限定すれば, その時空間的展開には既述の支社と同様,特殊な要因が作用しているといえよう。もし,. こ.

(12) 富田. 92. 和暁・服部. 隆一. すべての直営店の開設年月が分かったとしても,その時空間的展開の分析の意義は大きく ないと考えられる。というのは,直営店ほ初期の2年間はどほ1ヵ月に10店内外というペ ースで開設されたため,開設の時間的差にそれほどの意味がないこと,および開設の順序. ほ事務所の確保などに要した時間の差や既存のK社特約店との関係などの個別事情も影響 していると思われるからである。したがって全国レベルにおいては,支社の場合と同様に,. 特殊な時空間的展開であったという理解でよいであろう。 以上のK社直営店の展開を要約すれば,その空間的展開のプロセスをミクロにみると地. 域的需要量に規定されない特殊性がみられたが,プロセスの結果として現われた現在の静 態的な空間的分布ほこれとの関連性が強いといえるo Ⅳ. 福岡県における販売網の時空間的展開. 前章で2大ピアノメーカーであるY社とK社の全国的な販売網の展開を把撞・分析したo. 本章では福岡県を対象として,全国レベルでは把握できなかった特約店の契約年,直営店 の開設年とテリトリーなどを把握・分析することにより,地域(県)レベルにおける販売 網の時空間的展開を考察する。福岡県は比較的市場規模が大きく,両社の支店・支社が配. 置されている他,直営店・特約店もかなり多く立地している。また,同県は東京・大阪の 両商圏の影響もないとみなされることから,地域レベルにおける販売網の展開を検討する のに適した地域と考えられる。 1). Y社の販売網の展開. y社はピアノの他,エレクトーンなどの楽器,ステレオ,家具などの生産・販売もして いるoこのため,. Y社と特約店との契約は商品別である.. Y社特約店の時空間的展開を分′. 析するために,福岡県におけるピアノの特約店5'の契約年を聞き取りによ・,て調査したo なかには,第2次大戦前からの取引店もあるが,戦争によって取引が中断していたことも あり,すべて戦後の契約年とした。この結果,特約店のはとんどほ1950年から1965年の問 にY社と最初に契約をしたことがわかった。なかでも1955年以前の契約店は多く,現在の Y社の福岡県支店が 特約店数の半数近くを占めている(第7図)。これは既述のように, したがっ 1922年に開設され,戦前から販路の開拓をしてきた基盤があってのことであるo Y社特約店は福岡市場を て, K社が特約店制度による販売網の開拓を始めた1954年当時,. ほとんどおさえていたと推定できる。. なおY社ほ特約店保護を方針とし,. Y社側から解約することはほとんどなく,特約店の. 入す替わりは少ないという.このことから,現在の特約店のみの契約年に基づく分析によ ってその時空間的展開が検討できる。なお,第7図では特約店の支店ほ含まれていないo なお, Y社による特約店のテリトリー制はないとのことである.. y社特約店の時空間的展開を検討するために,その実終年を第7図のように4区分したo Ⅰ期(1955年以前)に契約した特約店は計14店であり,福岡市,旧小倉市,旧八幡市,旧 1950年の市町村別人 門司市,飯硬市,久留米市,大牟田市などの9都市に立地していた。 口(第8図)と対比すると,これら9都市のうち行橋市6'を除く8都市は人口が約6万以.

(13) 93. わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開 第7園. 福岡県における契約時期別Y社特約店の分布(1986年). ′. 一′. ①1955年以前 ②1956-1960年 ③1961-1965年 ④1966年以後. ③甘木市 10 ③③ノ′0ヒ===:≡:=±===q ン. ノ\、ノ・ノア、. I-I-・・・・・・・大都市の行政境界 契約時期別特約店の所在地. l・ ---/. ′「. 一. .J. ①① 久留米市 【、-・. T■. ーーー・-′. (. ③. ヽ. rid:. ③. I J. -. ヽ ヽ●ヽ. 、ノ1I′/. 八女市 柳川市. 20km. .---1<. 聞き取り調査などにより作成 上の,比較的人口規模の大きい都市であることが明らかである。人口6万以上でⅠ期の特. 約店が立地していないのほ,旧若松市と旧戸畑市のみである。これは,両市が小倉市など 3市の特約店の商圏内に位置しているためと推察できる。周知のようにこれら旧5市ほ 1963年に合併して現在の北九州市となった。 Ⅱ期(1956-1960年)に契約をした特約店は6店であり,このうち4店は現在の北九州 市に立地する。この要因として次の2点を指摘できる。 ①1960年当時は現北九州市域の人 ②北九州市は市域が 口は約100万であり,福岡市のそれ(68万)を大幅に上回っていた。 広く,中心商業地区も分散していた。これらのことから,. Ⅰ期における現北九州市内の3. 特約店でほ不十分であったための開設と説明できよう。. Ⅲ期(1961-1965年)の展開は,それまでの県内拠点都市における開設と異なっている。 すなわち, Ⅲ期の9特約店のうち, 7店が拠点都市でない宗像町,甘木市,梯川市,八女 市などに位置するo第7図から分かるように,これらほⅡ期までの特約店からなかなり距. 離がある。つまり,この期間に契約を開始したはとんどの特約店ほ,既存特約店の商圏外 の市場を対象としたものとみなせる。これによって,県内市場を網羅したといえよう。販 売網の時空間的展開の一つの原則ほ,他の条件が同じであれば,市場規模の大きな都市か.

(14) 富田. 94. 和暁・服部. 隆一. 第8図1950年の福岡県の市町村別人口規模. 人口規模 。. 2万人未満. ●. 2万-4万人 4万-6万人 6万一10万人. ●. ●. ● 107i-30万人. ● 30万以上. 1950年国勢調査報告書より作成 注:町村名は省略。市町村境界は多くの場合, ら始め,順次小さな都市-展開させることである。. 1950年当時と異なっている。. Ⅲ期の展開はこの原則に適合するもの. である。しかし,後述するように, 1960年以降のK社直営店の福岡県内主要都市における 立地に対応した展開・布石という推測もできよう。すなわち, Y社ほ市場における優位性 を維持するため,既存商圏外の地域への特約店配置を図ったとも考えられるのである。 1966年以後(Ⅳ期)の特約店はわずか3店である。このことから,福岡県内の販売網の 基本的な空間的整備がⅢ期で終ったといえよう。このようなY社特約店の空間的配置過程 から,テリトリー制をとっていないとほいえ,地域内のブランド内競争を避けながら,市 場空間を組織化してきたといえる。 Y社特約店のなかには規模の大きなものもある.九州最大のY社特約店である日本楽芸 社をはじめ,福岡県内においても支店をもつ特約店がかなり多い。日本楽芸社の場令,宿 岡県内に3支店をもつ他, みれば,. 10の音楽教室センターを開設している。これらの支店を含めて. Y社の販売網はより密に組織化されていることが分かるであろう。. Y社の直営店は現在,福岡市の1店(1964年開設)のみである。また,. YP社の九州支. 店は福岡市博多区にあり,その直営店の配置は福岡市の博多区.同両区,北九州市小倉区,.

(15) わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開. 95. 飯塚市に各1店,計4店である.配置都市の市場規模が比較的大きいことについてはⅢ-. 2)-(2)で述べたとおりである。なおこれらの開設年ほ比較的新しく,. 1978年(博多店)-. 1985年(小倉店)の間である。 2)瓦社の販売網の展開 (I)直営店の展開 福岡県におけるK社の直営店の立地展開は,同社の直営店方式-の転換が始まった直後 の1960年からであるo同年,福岡店,小倉店および八幡店が,翌年には大牟田店,久留米 店および飯塚店が開設された(第9図)。これらの都市は,既に述べたY社のⅠ期の特約 店所在都市とほぼ同一である.すなわち,市場規模の大きな都市から販売拠点を配置する という原則と一致した展開を示している。この後10年以上,民社直営店の立地はなかった が,. 1973年に福岡市東店と福岡市西店が開設されたo. これは,福岡市およびその周辺地域. における著しい人口増加に対応したものといってよい。 現在の各直営店の!聞き取り調査を基にした推定テリトリーは第9図のとおりである。. これに基づいたテリトリー別の人口(1985年)を算出した結果が第2表であるo 第9図. 福岡県におけるK社直営店の開設年と推定管轄地域(1986年). \. ぐ′ヽノ>ー). ′.. L. し-I_.→/1 I. 大牟田′・★1961 J. 聞き取り調査などにより作成. ヽ 一一ヽ 、・. これによ.

(16) 富田. 96. 第2表. 福岡県におけるE. 和暁・服部. 隆一. れば,はとんどのテリトリーは人口50万-70万(平均値は約. 社直営店別の推定管轄. 58万)である。大牟田店のみが,テリトリー人口が25万と少. 地域内人口(1985年). ないのは,次の理由による。すなわち,聞き取り詞査による. 店. 名l人口(万人). と,大牟田市ほ熊本県との県境近くに位置しており,熊本県 の一部(荒尾市など)もテ1)トリーとしているが,この部分 の人口ほ除外されているからである。一方,福岡市内の3店 のテリトリー人口を合計すると170万となり,効率的な販売 活動をするためにはテリトリーの分割をする必要があったと みなしてよい。また,こうしたテリトリー分割・販売拠点増 設は, 「従業員規模が,一定限度をこえると,管理事務要員 増大のため,販売効率が低下する(佐久間,1974 ことが関係していることもあろう。. ;日野1983)」. 1973年の福岡東店と福岡. 西店の開設の場合ほ,前述のようにテリトリー内人口の増大 第9囲と1985年国勢調査報 告より作成. が直接的な要田と推察される。 K社直営店のテリトリーの境界ほすべて市区町村境界と-. 致している。この理由として,日野(1987)が考察しているように,市場に関するデータ. (たとえば,世帯数)のほとんどは行政地域区分単位であること,行政地域区分ほ誰もが 共通に認識できる地域区分であることなどが指摘できる。これらのことほ,全国レベルに おけるテリトリー設定の場合にもあてはまる.. (2) R社特約店の展開 K社と小売店との契約はY社のように商品別でなく,一括契約である。つまり,ピアノ だけでなく,電子*)レガン,ギターなど他の楽器や楽譜なども取り扱う。それゆえ,ピア ノを販売する特約店のみを抽出することは困難である。そこで,. K社支社での聞き取りと. 特約店の名称一楽器店またはこれと類似の名称か否か一によって判断した.これによ って,楽器特約店と判断した小売店との契約年をK社支社の資料などにより調べ,第10図 を作成した。なお,民社特約店もテリトリー制はない。 第10図で認められる,福岡県下のK社特約店の時空間的展開の特徴は次の二つであるo. ①現在の特約店のK社との契約時期ほ,すべて1969年以降である。したがって,福岡県に おけるK社直営店の展開が始まった1960年以前からの特約店は皆無であるo. ②地域的にほ,. おむおね需要の空間的分布と対応した展開のようにみえるが,とりわけ福岡市とその周辺 に集中している.. ①ほ, K社の販売政策が基本的に直販制度をとっていることによる現象と解釈できようo っまり,. K社は特約店をとくに保護することはないといえる。このため,直営店の開設前. からの特約店はその資本力の限界から,訪問販売を主体とする直営店とのブランド内競争 1960年以前から現在まで続いてい K社を離れていったものと推察できる。 に対抗できず, る特約店は,全国的にみてもきわめて少数であるという。 直営店システムによる販売活動が軌道にのったと判断される1970年頃から,特約店の開 拓を再開した。これを直販システムの限界の表われとみるか,より一層のシェア拡大のた.

(17) 97. わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開 第10国. 福岡県における契約時期別荘社特約店の分布(1986年). ヽ.. \. .′■ヽ.. 大都市の行政境界、1J/. 開設時期別特約店の所在地. ・)③ t・ガ如 ③久留米市 市. へl. ①③. 0. 10. 20km. ヒ==コ===ヒ=====∃. {'J. L.). ∫. ノ\、′ノ.. ①1975年以前 ②1976- 1980年 ③1981-1985年. ③. ノ. ーーーー′. I. rく. ③. ②. r'1. J. 柳川市. /. ヽ-1'' ヽ 、t. --I-1<. 聞き取り調査などにより作成. めの転換とみるか,判別は困難である。おそらく,両者ともに関係しているであろう。つ まり,広い市場空間におけるシェア拡大のためには,販売店の増設が必要であるが,直営. 店の設立ほ経費の点で容易でないし,リスクもある。そこで,特約店の開拓が再開された と推察できる。 上記②の福岡市とその周辺地域における特約店の集中要因の一つとして,同地域ほ需要 の規模と密度が他地域より大きいことが指摘できる。それでほ,福岡市内にK社の直営店. が3店もあるのに特約店が多いのはなぜであろうか。それほ,以下のように説明できる。. 福岡県内のK社の特約店はY社のそれと異なり,零細規模かつ主たる商品がピアノでない 場合がはとんどである。実際,店内にピアノを展示していない特約店もかなりあり,いわ ばK社ピアノの取次店という程度のものもある。また,販売契約についても小売店舗側か ら求められてするこ'tもある7)o. こうしたことからか,. K社での聞き取り調査でも,特約. 店に販売上の期待ほあまりしていなかった.別の見方をすれば,外販を主とするK社直営 店にとって,このような特約店は競合する存在ではない。つまり,メーカーからみて一般. 的に望ましいと考えられる特約店の配置基準一所与の直営店の販売エリア外の市場に特 約店を配置する-紘.この場合には該当しないo要するに,. K社の特約店の空間的展開.

(18) 富田. 98. 和暁・服部. 隆一. ほ必ずしも地域的な需要量およびK社直営店の立地との関連で規定されているのでほない といえる. 上述のいくつかのことが,. K社の特約店数が全国的にみてもまた福岡県においても,そ Y社の. の市場シェアからみて相対的に多いことに関連しているのであるo. これに対して,. 特約店ほ相対的に多くない。この理由として次の2点がある。. Y社ほ特約店制度による販. 売を中心としていることから,ブランド内競争を避けるため,すなわち特約店保護のため に,一定地域内の特約店の数を制限せざるをえない。また,. Y社の特約店ほ上記のことお. よびそのピアノ販売の歴史が比較的古いこともあって,規模を拡大してきているものが多 い。つまり,比較的少数の店舗で需要を満たすことができるのである。 Ⅴ. 結. 論. わが国における2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開を全国レベルと地域レベル. (福岡県)で検討した結果,以下の場合は,これまでの研究で考察された経済的な原則と 基本的に適合した展開であるといえることが明らかとなった。 Y社の直営店とYP社. a.全国レベルにおける展開・--(i)Y社の支店の時空間的展開, の現在の空間的展開。. (ii)K社の直営店の現在の空間的展開。. b.福岡県における展開・-・・(i)Y社の特約店の時空間的展開。. (ii)K社の直営店の時空間. 的展開。 ①全国的なレベルに これに対して,経済的な原則によって説明できない展開としては, おける, K社の支社の時空間的展開および同社の直営店の時間的展開,および②福岡県に ●. おけるK社の特約店の空間的展開をあげることができる。. 上記①ほ, K社がピアノメーカーとして後発であることに,そして②はK社の販売シス テムである直販システムに,それぞれ主因を求めることができる。つまり,これらの特殊 な展開ほ,ながい期間有力な総代理店に販売を任せ,自社の販売網をもっていなかった後 発メーカーの販売政策の空間的反映の一面と理解することができる. K社の販売戦略や販 売システムは,ピアノの商品特性の一つであるブランド性の高さも関係していると考えら れる.ただし,この点については,他業種のメーカーについての研究がみられないので推 論の域をでない。. 上述のとくに①は,. 2大ピアノメーカーの競合に基づく両社間の相互作用的な販売網の. 時空間的展開の一例といってよい.また,このようなことは既述の,福岡県におけるY社 の特約店のⅢ期の展開にも現われていると解釈できる。空間的次元においては明瞭でない が,両社間の相互作用的なメカニズムによる販売形態などの変化ほ,既にみたようにかな. り顕著であるといえよう。ただし,販売形態の変化は社会・経済的な諸条件の変質,とり わけ市場環境の動向への対応策という面もある。したがって,. 2大ピアノメーカーでみら. れた変化が,特殊な事例であるかについてほ今後の課題の一つである。 以上のことから,次のように結論できる.わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間. 的展開は,後発メーカーであるK社の販売網の展開の一部に特殊性がみられたが,その他 の展開については,さまざまなピアノの商品特性およびこれと関連する流通経路などの特.

(19) 99. わが国2大ピアノメーカーの販売網の時空間的展開 殊性にもかかわらず,一般的な原則に基づく時間的あるいは空間的展開を認めることがで. きると。すなわちⅠで述べた,特殊要田ともいえる先発メーカーと後発メーカーの違い, および特殊な商品であるピアノの特性による影響も部分的にあるが,とくに時間的展開の 結果として表れた現在の空間的組織化の規定困は,メーカー販売網の展開に関する一般的u な経済原理であると結論できる。ここでの一般的な経済的原理は,必要需要量の原則と営 1983b)0. 業活動の空間的効率性の原則である(日野,. したがって,メーカーによる卸売段階の垂直的統合化が進展した2大ピアノメーカーの. 販売網の時空間的展開の基本は,中心地理論を援用することによって説明できるといえるo 系列卸売業と統合卸売業を中心とした卸売業の一部は,その立地原理から中心地機能と考 えられるが(富田,. p.26),小論の結果から,. 2大ピアノメーカーの主要な流通・販売磯. 能についても,これが妥当するといえるのである。. 〔付記〕 本稿の作成に際し, Y社とK社の本社,支所および特約店の多くの方々にご協力いただ いた。記して,厚くお礼申しあげます。 〔註〕. 1)日野(1983a,. pp.79-80)は,複写機メーカー4社の全国における販売車某所の時空間的展開. の概要についても調べ,おおむね3大都市と広域中心都市に初期に開設され,ついで他の県庁所 在都市に配置されることなどを指摘し,個別企業の販売網にはそれぞれ特殊な推移と固有の形態 が認められるが,それ以上に一般的形態が確認できるとした. 2)モデル構築の前提として,営業拠点の増設ほ既存の営業拠点に追加する形で行う,および各市 町村への販売は最近接の営業拠点がすべて担当するなどの条件を設けている(日野, 174)0 3). 1983b,. p.. 1920年代のY社の主要な販売網ほ,東京銀座の書籍兼楽器商,共益商社と関西の三木楽器の日 1977, 本を2分していた専売ルートであったという(日本楽器製造株式会社, p.51.本文中と以 下ではY社の社史という)。■ 1955年以前は,ピアノほ数少ない「ぜいたく品」だ、、ったが,第2次大戦後の音楽教育を基盤に. 4). 1961年頃から急速に音楽熱が高まり,楽器ブームが始まったため,楽器業界はフル生産に入った 1963年の国内のピ (河合楽器製作所, 1977, p.43.本文中では「K社の社史」という)。しかし, アノ普及率は3.7%という低い水準であった(Y社の社史,. p.187)。最近のピアノ普及率(世帯. 単位)は19%ほどであるという。. 5)実際にはピアノのみの契約店はなく,多くはエレクトーン,オルガン,キーボードなどのライ Y社とK トミュージック(LM)楽器,電子ピアノなどの商品についても契約している。なお, Y社とK社それぞれ 社の両社のピアノを販売する非専売特約店も少数ある.これらについてほ,. の特約店として分析した。 6)行橋市の1955年の人口は43,000人であったが,当時の京都郡の中心地であったため,人口規模 に比して早く特約店が成立したと考えられる。 7)たとえば,レコード店などが販売商品の多角化からピアノなどの楽器も取り扱いを希望する場 合。. 〔文 秋田量正(1977). 献〕. :企業の流通政策と系列化。松下満雄編:. 『流通系列化と独禁法』日本経済新聞.

(20) 富田. 100. 和暁・服部. 隆一. 社, 87-124.. 阿部和俊(1981) :近代日本における銀行支店網の展開。経済地理学年報, 53, 大塚昌利(1980) :浜松地域における楽器工業の集積o地理学評論, 河合楽器製作所 (1977) : 『河合楽器50年の歩み』76pp. 川端基夫(1986). 27,. 99-115.. 157-170.. :卸売磯関の立地指向性-商品特性による類型化の試み-o経済地理学年報,. 32, 142-151.. 佐久間博(1974). 1973年変名古畳. :市場空間の′くターンに関する研究一自動車産業の場合-。 大学大学院文学研究科提出修士論文(未発表)0. 鈴木安暗・田村正紀(1980). :. 『商業論』有斐閤, 248pp. 26, 255-269.. 千葉立也(1980). :地方銀行の県外店舗網の展開と資金移動。経済地理学年報, 日本楽器製造株式会社(1977) : 『社史』447pp.. 富田和暁(1986) :流通諸株能と中J亡J地検能-卸売業を中心として-o 『中心地研究の展開』大明堂, 15-29.. 西村睦男・森川. 日野正輝(1979) :大手家電メーカーの販売網の空間的形態の分析。経済地理学年報,. 25,. 洋編 1-18.. 29, 69-87.. 日野正輝(1983a) :複写横メーカーの販売網の空間的形態。経済地理学年報, 日野正輝(1983b) :宮城県における「地区販売会社」の事業所の配置形態。東北地理,. 35, 169-. 182.. 洋編『中心地研究の展開』大明堂,. 日野正輝(1986) :都市の拠点性について,西村隆男・森川 30-44.. 日野正輝(1987) :企業の支店配置と都市の階層分化。 Ⅰ.F. Report(石田財団発行), 15, 498-503. 山本健児(1987) :西ドイツ経済における支配・従属・相互依存の空間的パターン一企業による 33, 158-180. 事業所展開を手掛かりにして-。経済地理学年報, 書津直樹(1980). :明治期-第二次大戦前における金融網の地域的展開-「五大銀行」を中心とし 26, 57-77. て-。経済地理学年報, 冗. (1984) : Head in Abe, enterprises and branch a氏ces of big private major cities of Japan. GeoBraPhical Review Japan 57, 43-67. (Ser. B), of Hino, M・ (1984) : The location of head branch in Japan. and o缶ces of large enterprises Sci. Rep. Pred,. A・. Tohoku.. (1977). Univ.,. Ser.. : City-Systems. 7. (geography),. in Advanced. No.. Economies.. 2,. 41-60. Hutchinson,. 256pp..

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参照

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