ミツバ チ科 学 (2000)21(1):40-43
第
1
回 ミツバ チ の
童話 ・絵本 コ ンクール
開催 にあた って
山田 英生
「幼 い頃, ミツバチや 自然か ら学んだ温かな 『こころ』を,現代の子 どもたちに伝えたい」そ んな願 いを込め,山田養蜂場では,99年,
「第1 回 ミツパテの童話 ・絵本 コンクール」を開催す ることとな った .3
月23
日の コ ンクールの募集告知 以来,6
月30
日の締 め切 りまでに寄せ られた作品 は総 数4,224編.なかには,遠 くアメ リカ,ニュー ジーラン ド,シンガポール, ドイツ,イギ リス, 中国,- ンガ リーといった海外か らの応募 もあ り,我 々の呼びかけに対 して,想像 をはるかに 超える実 に多 くの作品が寄せ られた. そ こで今 回 は なぜ我 々が,
「ミツパ テの童 話 ・絵本 コンクール」を企画す ることにな った のか,そ して,当社 に寄せ られた作品について, 以下 に報告 したい. 子 ど もた ち の心 を育 む 農 業 を基 盤 とす る コ ミ ュニ テ ィ 現在, 日本全EEIで10万人 を超 え る子供 たち が学校 への不適応症候群 と して数 え られて い る. そこには不登校か ら学級崩壊 まで, さまざ まな問題が内包 されている. その原因 は,学歴 偏重の風潮や経済優先の社会など,大人たちが 作 り出 した価値観 にあると考え られ,そのひず みが子 ど もたちに確実 に暗 い影 を落 と して い る. 当社が, ミツバチをテーマと した 「童話 ・絵 本 コ ンクール」の開催 を決定 す るに至 ったの は,現代の子供 たちが置かれているこうした社 会環境 に心を痛めたか らにはかな らない. 養蜂 とい う農業 を原点 とす る山田養蜂場 で は,農業社会 において育て られる 『こころ』を 何 よりも大切 に したいと考 えているか らだ. 古来 よ り,農業者 は, 自らが育てた物が食 と して,人の身体 と命を支 えているということを 自覚 して農産物 を作 って きた. 自分 たちが作 っ た ものは単 なる 『モノ』ではな く,愛情であ り, 思 いや りであ り,
『こころ』その ものである. し か も自然 との共生 によって成 り立っ農業 におい ては自然の恵みに感謝す る謙虚 さも育 まれ る. それが互 いを思 いやる温かな 『こころ』 とな っ て,農業社会特有の コ ミュニテ ィとな っていっ たのである. そ して, こうした コ ミュニティで は,地域社会の人 々が温か な目で子供 たちの人 間性を育んで きた.子供 たちを社会が育てると いう仕組 みが自然 と成立 していったのだ.つま りは自然 との関わ りの中で,
『共生』の心 も育 ま れていったのである. ところが,近代 においては,経済社会の発展 の過程のなかで, こうした ライフスタイルが急 激に変化 して きた.農業 という共同社会 によっ て子供 たちを育て るという教育の場が失われ, 自然 と触 れ合 う機会 も極端 に少 な くな って い る.その結果,
『心の温か さ』や 『人間同士 のつ なが り』 など,大切 な ものが忘れ られつつある のではないか と思 う. 養蜂業 は農業の中で も自然をまった く壊す こ とな く営む ことので きる仕事である.だか らこ そ ミツバチや 自然を通 して教え られた,そ うし た温かな 『こころ』を,地域社会 とともに,千 どもたちに伝えてい くことは私 たち養蜂家にと 図 1 国内はもとより,遠くアメリカ, トイツ,シン ガポールからも寄せられた作品たち (全4,224 編)図2 審査員の先生方を交え, 受賞者の方々と記念撮影 っての重要 な使命にはかな らない.
本を通 して人生の
喜びや悲 しみを知る
では, この 『こころ』 をどのよ うに して子 ど もたちに伝え るか. その方 法 を模索 して いた ときに出合 ったの が,98年 9月 21日,イ ン ドのニューデ リーで 開催 された国際児童図書評議会 の第26回世界 大会の新聞記事だ った. この大会 において,美 智子皇后様が ビデオを通 じて基調講演を行われ たのだが,その内容 は皇后様が子供の頃に読 ま れた本の思 い出につ いてだ った. そのなかに新見南吉氏 の 「でんでん虫のかな しみ」 という話が紹介 されていた. これは,あ る日突然, 自分が背中に背負 っている殻の中に 悲 しみがいっぱい詰 まっているとい うことに気 がつ いたでんでん虫の話 である. そのでんでん虫 は,友人 を訪ね,
「自分 はもう 生 きて行 けないか もしれない」 と自分の背負 っ て い る不幸 を話 す.す る と友達 のでんでん虫 は,
「それはあなただけではない,私 の背中の殻 にも,悲 しみはいっぱい詰 まっているんだよ」 と応える.小 さなでんでん虫 は,別の友達, ま た別の友達 と訪ねていき,同 じことを話すのだ が, どの友達か らも返 って くる応えは同 じだ っ た.そ して,でんでん虫 はようや く気がつ く. 「誰 もが悲 しみを背負 っているんだ」 とい うこ とを.「自分が背負 って いる悲 しみを こらえて ・日 いかなければな らない」 ということを. 人生の中で自分の殻の中に悲 しみが多 いとい うことは,それだけ他人の悲 しみや痛みがわか るということなのか もしれない. このよ うに本を通 して人生の喜 びや悲 しみを 知 ることは,その人の人生 に厚みを加え,他者 への思 いを深めることがで きることなのではな いか.そ して, これか らの新 しい時代を担 って い く子 どもたちに,童話 や絵本 を通 じてメ ッセ ー ジを送 ることがで きれ ば, と考 えたのであ る. そ して これ を コ ンクールの形態 に したの は, より多 くの方 に思 いを共有 して もらいたい とい う思 いを抱 いたか らにはかな らない.今回 の 「ミツバチ童話 ・絵本 コンクール」 は, そん な私 たちの想 いがカタチになった ものだ. チ ャー ミングな応募作品あ りが とうございます
冒頭で紹介 したように,第 1回 ミツバチの童 話 ・絵本 コンクールには,4,
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2
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編 もの素晴 ら しい作品が寄せ られた. 立体感のあるカラフルなイラス トで最優秀賞 を受賞 した絵本 『と ・も ・だ ・ち』(東京都武蔵 野市 斎藤好和)や, シンプルな色使 いとホワ イ トスペ ー ス を うま く使 った優 秀 賞 の絵 本『HoneyBee・-Dee』 (東京都世 田谷区 石 田有 二),少女 とおばあ さん と ミツパテの心温 まる ふ れ あいを描 いた童話 『ミツバ チがや って き た』(東京都町田市 吉野孝子)など,新 たな ミ
図3最優秀賞の斉藤氏に表彰状を授与 (作品名 『と・も・だ ・ち』)
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「ミツパテの童話 ・絵本 コンクール」入賞者
最優秀賞 1名 『と ・も ・だ ・ち』 (絵本) 東京都 斉藤 好和様 あらす じ 新米働 きパテの ビビ.巣の中の仕事を終え, いよいよ ミツや花粉集めに出発することになり ま した. ヒキガェル,カマキ リ, クモの巣など 外には危険がいっぱい. ビビはなんとクモの巣 に引 っかか って しまいます.食べ られる ! と 思 った ら,犬のタロが助 けて くれました.その 時か らビビとタロはともだち.それぞれの暮 ら しを話 してますます仲良 しになる二人ですが, 冬が近づ くにつれ元気のな くなるビビ. ミツバ チの寿命は半年なのです. 現れな くなった ビビ.で もタロは,春に自分 の小屋にや って くる ミツバチに話 しかけます. いっか どビに会えると信 じて-. 優秀賞 2名『
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』 (絵本) 東京都 石田 有二様 あ らす じ ミツバチ ・ディーは, 6人のお姉 さん と5人 のお兄 さんのいる12人 きょうだい.英語 の 1 月か ら12月までがそれぞれの名前です.森の 中でホットケーキ屋 さんをするディーの家のた めに, きょうだいみんなはよく働 きます.おっ ちょこちょいのディーですが,みんなの元気の もとです. くまんパテさんや足ながバチさんの ホッ トケーキサー ビスに負け じと, ドーナ ッツ 型 のホ ッ トケーキサー ビスを始 め るデ ィーた ち.たちまち人気が出て・・・. 『ミツバチがや って来た !』 (童話) 東京都 古野 孝子様 あ らす じ 小 さな村.土 も悪 くなかなか作物の育たない 村 に,一台のオ ンポロ車 に乗 って,歯のないお ばあさん と小 さな女の子がや って来 ます.草に うもれたぼうぼ う屋敷 に住みついた2人は,お い しいパ ンケーキを焼 き,たっぷ り-チ ミツを かけて皆にふるまいます.村人 はす っか り2人 と仲良 し.栄養満点の ミツバチジュースもおい しくて村人はぜひ ミツバチを呼びたいと考えま す.おばあさんは ミツバチに手紙を書 き,村人 はレンゲの種をまいて花を育て準備を整えて待 ちます. ミツバチは大群でや って来て,たっぷ りの ミツを村人にプ レゼ ン トしま した. 佳作賞 7名 『ふ しぎな レス トラン』(童話) 東京都 /羽田 幸男様 『変身 ミツバチ物語』 (童話) 兵庫県 /持田 横子様 『ひとりば っちの ミツバチ』 (童話) 愛知県 /後藤みわこ様 『はちみつ くださ∼い』(絵本) 岡山県 /大谷 基栄子様 『魔女の ミツバチ作戦』 (絵本) 埼玉県 /北野 玲様 『ぶんぶんぶん』 (絵本) 神奈川県 /小泉 貴子様 『ミツバチ プルちゃん』 (絵本) 栃木県 /中島 勇弥様 その他,努力賞 として 『蜂丸の大大大冒険』
『け ん太印のハチ ミツ』
『-ニーグランパ』等,い く つかの作品を選定 しま した. 審査員 の先生方 木村尚三郎氏 (東京大学名誉教授),松香光夫氏 (玉川大学 ミツバチ科学研究所施設教授),明石 要一氏 (千葉大学教授),向山洋一氏 (教育技術 法則化運動代表),横田稔氏 (画家),吉田たろ う氏 (グラフィック ・デザイナー),杉本広之氏 (薬学博士),高城修三氏 (作家) 順不同13 図4 表彰式当 日には作品が閲覧できる 展示コーナーも設けられた ツバチ文化の芽生えを感 じさせ るさまざまな作 品が寄せ られた. 10月2日には岡山市内のホテルにおいて, 入賞者の表彰 も行なった.表彰式 に先立ち審査 員の教育技術法則化運動代表 ・向山洋一氏 「子 供たちの生 きる力を育む教育∼学校崩壊か らの 生還