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政治団体の不可入性

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Academic year: 2021

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(1)Title. 政治団体の不可入性. Author(s). 吉川, 宏. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. B, 社会科学編, 19(1): 57-68. Issue Date. 1968-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4340. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 第 19 巻 第 1 号. 北海道教育大学紀要 (第一部B). 昭和43年9月. 政 治 団 体 の 不 可 入 性. 吉. 宏. 川. 北海道教育大学釧路分校政治学研究室. Hi ) b1nくA、VA roshi Y( 1mpenet l i i i ty of Pol t caI ASS0ciation rabi. は. し. が. き. 現代の国際社会では, 国家間の相互依存や従来の国境の枠をこえた経済的統合が進行している. また科学技術の急速な発達は, 国境のもつ軍事的意義を変化させることとなった, ところで, 近代 i i l i t t t e o 国家は領域国家として成立したのであり, 領域性 ( r r r a y) は近代国家の主要特徴の一つと されている. 近代国家がこのような標徴をもつものであるとすれば, 上述のような動きは, 領域性 に変化をもたらすことにおいて, 近代国家それ自体の変容をうながす事象といわなけれ ば な ら な. し.. 近代国民国家をとりまく諸与件の変化を指摘し, 国際社会の基本的単位としての国家の変容を説 く議論自体は目新しいものではない, (たとえば, 国際社会における国家主権概念の変質に関する 議論など. ) しかし, そのような議論においても, これまで, 現代国際社会における領域国家体系 の位置づけや国境の現代的意義が, 重要な研究対象とされ, あるいは十分に究明されるということ. はなかったといえよう, こうした状態のなかで, 現代国際社会研究の視角を領域性に据えたものと し て 注目 さ れ る べ き は, ジ ョ ソ ・ H ・ ハ ー ツ の 研 究 で あ る,. ハーッは, テクノロジーの発達が主権的国民国家に与えた強力な衝撃という問題視角から, 近代. 国 家 の領 域 性 の 変 質 を 捉 え て い る, 彼 が 述 べ て い る こ と は, お お よ そ 次の よ う に 要 約 し う る で あ ろ. imPermeabi l i ty), あ る い は 不 可 う, 彼 に よ れ ば, 近 代 国 家 の 特 質 は, な に よ り も そ の 不 浸 透 性 ( l i ty) , あ る い は 簡 単 に 領 域 性 ( i ial i tor impenet terr ty) と い わ れ る も の に あ る 入性 ( rabi , こ の. i i i l l t o abi 不浸透性あるいは不可入性は, 国際法にいう不可侵性 ( nv y) とは異なった概念で, 近代 塞-- に よ 「国家性の実体的, 軍事的表現」 - 国家が, 城砦や要 っ て, 外 か ら の 侵入 に 対 し て そ の安全を確保している状態を指すのに, 特にハーッによ って用いられた術語である,. 近代領域国家の勃興と衰退は, この不浸透性あるいは不可入性の成立と減退の 過程として捉えら れる, 中世封建社会で, 封建領主達は彼らの安全の実体的基礎を城や壕に求めていた. このような 基礎をも っ た独立的単位は, 「火薬革命」 のインパク トに起因する社会変動のなかで 消滅 し て ゆ e) と し て 成 立 した の で あ る が, く, こ の 過 程 の な か で, 近 代 国 家 は, 大 き な 地 域 国 家 (area-Stat h d l l 城 の ) と な っ た の は, 城 砦 や 要 に か て 近 代 「堅 殻」 a She て の や壕 わ 国 家 い ( r その際 かっ っ ,. ) このような 「堅い殻」 を盾として 近代国家の不浸透性あるいは 塞で固められた国境であった,2 , 一 57 -.

(3) . 吉. 川. 宏. ‐世紀に入ると, 古典的国家体系を脅かす傾向が発生 不可入性が成立していたのである, ところが19 した, すなわち, 18世紀的な限定戦にかわる武装した国民による非限定戦, そして武器の破壊力の. 増大などがこれである, さらに今世紀に入ると, 経済封鎖, イデオロギー的コ政治的浸透, 聖戦, 原子戦争といった新しい諸要因がこれに加わる, 特に, 「原子力革命」 は上に述べた傾向に決定的 な 意 義 を も つ, 現 代 の 国 家 は い よ い よ 浸 透 可 能 (permeabl e) なも の と な っ て おり, こ こ に お い て ) 「領 域 国 家 の 衰 退」 が も た ら さ れ る に い た っ た, と い う の で あ る, 3 国 家 の 領 域 性 は, 「固 い 殻」 と い っ た も の だ け で 守 ら れ て い る も の で は ない し, そ の 歴 史 的 な 形. 成過程から考えて, ハーッのいう不浸透性や不可入性によって説明しつくされるものでもない, し かし, いわゆる権力政治のなかでの国家の領域を考える場合, 「不浸透性」 あるいは 「不可入性」 は, 内容的により深く検討する必要のある概念であるといえよう,. 本稿は, 不可入性の語を手がかりとして, 政治団体による地域支配の権力構造の一端を明らかに しようとする一つの試みである, ただし, 不可入性の語は, 本稿では, ハーッの用語と多少異なっ た意味内容で用いられる, また, 不可入性の考察にあたって, 内戦における政治団 体の不可入性と いう特殊な問題設定を試みた, このことは, 内戦のように赤裸々な力の対決がみられる状況におい て こ そ, 政 治 団 体 に よ る 支 配 地 域 の 保 全 が, 不 可7v性 と し て 現 わ れ る と 考 え た こと に よ る, こ の よ. うな権力的契機の面で, 不可人性と領域性は区別されなければならないであろう, 一般 に, 国家の 領域のごときは, 民族が地表上のある特定地域を占拠するにいたる構成的 過程ぬきにしては解明し えない要因を含んでいる. また, それは地形, 地域内の資源の分布, 地域を劃する自然的境界の有. 無といった生態学的要因によって規定されているところ大である, したがっ て, 国家領域それ自体 は権力的契機のみからは捉えがたいし, またそれに関係する国内的, 国際的要因の多様性から考え て, 不可入性の構成条件もまたきわめて複雑である. 本稿における問題設定は, これらのことを考 慮してのことであり, それは問題の限定と不可入性の方法論的純化を助けるであろう, 以下, 一 つの政治共同社会内で, 不可入性の獲得が政治団体間に争われるにいたる状況の検出か ら始めて, 政権奪取を目指す政治団体が, それ自体の不可入性を造出してゆ G過程を考察してみる こ と と す る,. i i t 1 ) J ohn H. Herz, lnternationaI Pol csin the Atomi c Age( 1 9) 95 ,p,40. 2) lbid. , Chapters 工, n and m,. “ se and Demi i iaI State’in McLe 3) 工bid. m and X m ;Herz tor seofthe Terr ‐ , Ri , Chapters 期,X. 1 lan ice of lnternat i lat i son and Sondermann ed. onaI Re ons (1960), , 0l , The Theory and Pract. p .57 ,. i t 共同体 ( commun ) は必ずある地域を占有する社会として存在する, しかし, その占有地域 y. の 限 界 は 必 ず し も 明 確 で は なく, 相 互 浸 透 的 で あ る さ ら に 一 般 の 結 社 体 (associat i on) と な る .. と, 一定地域の占有はその存在の基礎をなすものでなくなる, そのなかでただ国家だけが, 領域的 境界を所有している. これは 国家を他の結社体から区別する特性の 一つである ウ ェ ーバー は , , i i t 「政 治 団 体」 (Pol scher Verband ウ ェ ー バ ー は Verband と い う 譜 を 国 家 と か 教 会 の 意 味 で 使. っている, ) を特徴づけるものとして, 諸秩序保証のための暴力行使とともに, 「政治団体はその 行政幹部およびその諸秩序が一地域を支配することを要求しかつこのことを暴力的に保証するとい う標徴」 をあげている, 彼のいう地域支配の暴力的保証は, ハーッにおける不可入性に相当すると - 58 -.

(4) . 政治団体の不可入性 いえるであろう. 地域支配の暴力的保証ということば, ある地域をめぐ って権力単位間の反発によ i terr tory) と い う も の は, 強 制 っ て 示 さ れ る 地 理 的 空 間 の 独 占 に ほ か な ら な い. そ こ で, 領 域 (. 的な力と反発の契機を含んでいるといわなければならない, 領域は社会的接触を 崩じて形成される. ものであり, 領域を有する単位の側からみれば, それは支配妥当の範囲であるが, 単位間の関係か ら み れ ば, そ れ は 反 発 で あ る. し た が っ て, そ の 特 徴 は, あ る 政 治 的 単 位 に よ っ て 占 有 さ れ た 地 域. へ, 侵入しよ うとする他の単位があれば, これに対して攻撃を加え侵 入を防止しようとすることに ある, そうして, 多くの単位が接触, 交渉をもちながら, 一定の広がりの地域内に, それぞれの領. 域を形成する場合には, その一定地域はそれぞれの単位によって完全に分割されたものとなる, こ の場合, 領域は占有さ れ防衛される地域であると同時に, 単位間の関係における支配妥当の限界を. 明確化するものであり, またこれによ っ て単位間の秩序の形成に機能する. 以上のような相互交渉 あるいは接触の関係においてある単位の不可入性は成立する, この脈絡において, 不可入性とは,. ある政治的単位が占有 している地域は, 同時にほかの政治的単位によ って占有されることがないこ と, と 定 義 す る こ と が で き る,. 政治共同社会にはいくつもの権力単位が存在しているが, それらの総体は一つの権力体系を構成 している, 国民共同体の場合には, 国家がその権力体系の頂点に位置し, 国家と他の権 力 単 位 と の関係は, 「合法的な上位者-下位者の関係」 である そこで, 国内政治の権力関係で圧倒的な比 . 重をもつのは, 権力単位相互の横の関係よりも, 権力体系の階統制の維持や変革をめぐる, 国家な いし政府と国内の他の権力単位との縦の関係である, すなわち, 国内政治においては, 権力 と 社 - 会, 政府と世論というよ うな 「垂直的権力関係」 がその中核をなしている2 .. 近代国家の権力体系におけるように, 国家の統合力が他の権力単位に比して圧倒的であれば, 国 家以外の権力単位が不可入性をうる余地はない, しかし一定の社会的条件の下では, 単一支配の組. 織枠を残した上で, 複数の権力単位が領域支配権をうるということはありうる, 政治的統合の度合 いが低く, 政治権力による大衆支配の直接性が永続化しえないような社会においては, 「主従関係」 あるいは 「誠実関係」 を担保として, 上位の権力単位が下位の複数権力単位に実質上領域 支配権を ) またこのように政治的統合の度合の低 授与し, これによって権力体系の保全を図ることがある. 3. い社会では, 支配構造が分権割拠的なものになるにとどまらず, 非合法的武装集団 (たとえば山賊 など) が歌唱することにもなる.. 以上で述べてきたように, 政治共同社会は一つの権力体系としてあるのであるから, その内部で 二つ以上の権力単位が不可入性を獲得することがあれば, そのことは既存の権力秩序の崩壊を示す. ものである, 他方, 下位権力単位による不可入性の造出ということに則していえば, 権力秩序の崩 壊はそのような不可入性造出の機会を与える状況であるということである. この状況は, 次に述べ. るような権力関係における変動を含んでいるといえよう, まず, 権 1力体系の統合が弛緩すると, こ れと相関的に, 下位権力単位の自律性が増大する, この自律性を制約する統合力が社会に存在しな くなったとき, そこには 「主権者的権力」 が存在しない状況が現出する, この状況においては, 権 力単位間の関係が, 「合法的上位者-下位者の関係」 から事実上《平等に》に行動する単位間の関 係へと変化する, そうして, 政治共同社会に単一支配化への力が働いている限りにおいて, 権力闘 争は激化し, 分極化した権力単位は相互に横の関係で 捨抗し合うことになり, その権力関係は, 一 方の権力増大が他方の権力減退に通ずるという関係になる, このような 「垂直的権力関係」 か ら 「水平的権力関係」 への転化の極点を現わすのが内戦であるといえよ う. 1) マックス・ウェーバー 『社会学の基礎概念』 阿閉吉男・内藤莞爾訳, 86頁,. - 59 -.

(5) . 吉. 川. 宏. 2 ) 垂直的権力関係と水平的権力関係に つい て は, 永井陽之助 「政治学の基礎概念」 (『法学政治学論集』所 5一26頁参照. 収)32. 3) いうまでもなく, このような支配の構造はその社会の封鎖性に照応している. なお, その 典型は 西 欧 封 建 社会におけるインムニテートにみられる, 世良晃志郎 『封建社会の法的構造』56-7 , 68一71頁, マックス. 4一38頁参照, 1』 世良晃志郎訳, 33 ウ ェーバー 『支配の社会学1. 4) 歴史上の諸革命においては, 革命勢力による権力奪取の過程で, 垂直的権力関係から水平的権力関係への転 化という状況が現出しない場合もある, 特に, 「一回の巨大反乱による革命」 (K・ゴーリー) の場合がそう である. だが, このような革命においても, 革命政権成立後に内戦状況が現出していることが記憶さるべきで あろう, たとえば, フランス革命についてさえ, われわれはヴァンデーの反乱を指摘することができる, この ような例は, 新しい権力体系の統合力低下として捉えるよりも, 水平的権力関係へ転化させる契機が, . 革命政 ろう ることの方が適当であ 権成立後にも, 強く存続していたというふうに捉え ,. 権力体系の統合力の弱小化は, 「合法的上位者一下位者の関係」 を水平的権力関係に 転 化 さ せ る契機を与えるものであるが, また主権者的権力の欠如は社会に内乱状態 とよばれる状 況 を 現 出 させる, 内乱状態は, まず, 政治共同社会全体に貫徹 する統治の欠 如, すなわち権力体系 の構成単 位全体あるいは社会のす べ ての構成員に対し, 「有効に命令するある他者」 が事実上存在しないと いう状態である, 安定した政治共同社会においては, 権力体系の頂点に位置す る支配団体の政策・ 命令が, 共同社会で効果的に遂行され, 権力単位間にはたらく圧力あるいは誘引力の分布は, 一定 のパターンを形成している, これに対し, 既存の権力体系の瓦解期には, 支配団体に対す る各種の 「圧力団体」 の活動が活発化するのに他方, 支配団体はこのような動きに効果的な対策を講じ えな い, 支配団体による服従の規則的な調達は次第に失われ, また反抗や命令の無視に対する制裁も, その規則性を失うにいたる, かくて, 支配団体の側における自 己の指導的機 能の喪失, 自己の力に 1 ) 対する自信喪失, あらゆる種類の創造的イニシアチブに対 する能力の喪失 などが一般 化する, こ の結果, 支配団体の活動は fた んに自動的な反射運動と化する」 にいたり, 社会の安定期には存在 し権力単位間の圧力分布のパターンが, 漸次失われていくことになる. これは支配団体の権威の凋 た, 落 を 意 味 す る も の で あ る,. 支配団体の権威が弱体化すると, 支配の継続は権力 の手段における 「最後の切札」 により多く依 ) なぜなら 命令の履行が 蓋然的なものとなっている以上,命令の実施を強要す 存することになる2 , , る ことが, 支配団体の威信維持政策の基本とならざ るをえないか らである, しかも, 権威 の 維 持 が, こ の よ う に 強 制 力 に よ り 多 く 頼 ら ざ る を え な い こ とは, 権 威 を 構 成 し て い る も う 一 つ の 要 素,. ) 正統性の喪失を大衆の前に暴露することなのである3. ・が, ますます赤裸 な力の衝突 をひき起すことにな このような状況では, 社会内のさまざま な抗争 る, しかも, 赤裸な力の衝突は, 弱体化した 支配団体の実態をいよい よ露呈させることとなる, か ー くて, それまでの制御関係を通じ, 相手の潜 勢力の大きさについて相互に暗黙のうち に 了解されて いたことが失われる, この事態は, 政権奪取を目 指す政治団体に武 力闘争展開の決断をうながす事 態 で あ る,. それでは, 国内における武力衝突 は, 支配団体の領域支配にどのような変化をもたらすであろう ・が尖鋭化して, それが武力衝突にまで進展した場合においても, この状況から直ち か. 政治的抗争 に政治集団間に不可入性が造出されるという ことはない. だが, 武力衝突自体は, 局地的に場の暴 力的占拠を現出させるし, また武装蜂起は, 一時的にもせよ, 一 定地域内で蜂起勢力に完全な政治 -6 0-.

(6) . 政治団 体の不可入性 的自律性を与える, これによって支配妥当の範囲が問題とならざ るをえない, 支配団体と革命・反 乱勢力それぞれの勢力範囲の流動化, さらに共同社会の四分五裂化ということになると, 社会は内 乱状態を呈することになる. 支配団体の組織は各所で分断され, 底辺の各地域社会は 遠心運動を起 こす, このようにして,支配団体の統制力は国土全体に 及ばなくなる. 支配団体は,合法的上位者に 与えられた特典のすべてを失い, 《反乱者》と 「平等な」 政治的資格で, 力の場--赤裸な暴 力が 大 きく も の をい う 政 治 戦 場- - に 現 わ れ る こ と に な る,. 以上に述べてきた既存の権力体系瓦解の過程で, 政治におけ る垂直的権力関係 の水平的権力関係 への転化が押し進められる, さて, 内乱状態は, 「国家内における諸小国家発生」 の状態にほかな らないのであり, そこには垂直的権力 関係 (権威関係) におけ る支配団体の勢威の凋落と同時に, 支配団体=中央政府の勢威の低下がみられる, すなわち, 権威関係の瓦解は, 国土の全域にわたっ 1 ) の 弱体 化を 伴ってい る 政 治ポ テ ia l i l i t ). caI Potent て, 中 央 政 府 の 「政 治 ポ ラ ソ シ ャ ル」 (Po ,. ンシャ ルの分布状態は, 現代内戦を考察する際には, 特に重要な点である といわねばなら ない. さて, 領域が地理的空間である以上, 領域支配は権 力と空間的距離の関係を含ん でいる. 一般に 近代領域国 家におい ては, これが問題とならないが, それは, そこには高度の政治的統合を通じ, 権力関係が領域的単位間の関係として現われる余地か ないからにすぎない, 権力と空間的距離との 関係について, ラッ セルは 次のように指摘している, 「国家の権力は多かれ 少なかれ地 理的なもの 5 ) で, 普通, 国家の権力 は中心から放射し, 中心からの距 離に比例して小さくなってゆく」 と, 社 会関係にお ける単位間 の距離は, 単なる長さで捉えることはできない, それは輸送, 通信, および 接近などの難易を含むものでなければなら ない, このことから, それは容易に測定可能なものでは. ない, しかし, 空間 的長さを基礎に場所的単位間の距離を考えることは可能である. 権力単位が機の関係 で相互に精抗し合うように なると, おのおの支配妥当の範囲が地域的に局限 さ れ る よ う に な る, こ の よ う な 関 係 に お い て, 政 治 ポ テ ン ツ ブル は 距 離 に 比 例 し て 小 さ く な る. ま. た, 生産力が低く, コミ ュ ニケーショ ン手段が未発達で, 下部の地域社会が全体として封鎖的な社 会 に お い ては, 一 般 に 中 央 政 府 の 政 治 ポ テ ン シャ ル は, 辺 境 に お け る ほ ど 小 さ く な る, し た が っ. て, 社会的・政治的統合の程度の低い社会で, 支配団体の統合力が弱まった場合, 支配団体に反抗 する集団は, 運動への参加者獲得の問題を別として, 辺境においてより 容易に反乱の機会をとらえ ることができる, 現代の後進国革命において, 反乱や武装蜂起の戦略論は, このような中央政府の 6 政 治ポ テ ン シャ ル 分布 の パ タ ー ン に 着 目 し て た て ら れ て い る と い え る, ). 以上において, 内乱状態におけ る権力関係を考察してきたが, 支配団体の統合力の減退は, 革命 ・反乱勢力の統 合力の増大と関係する. また, 政治権力の変革は, 政権奪取を目指す勢力の統合能 力を予定してい る, そこで権威関係の瓦解は, 革命・反乱勢 力の統合能力の面からみる ことも必要 である, 以下物理的強制手段, 意思決定センター, 政治的同一 化の焦点の三つを指標として, 政権 ) 奪取を目 指す政治団体の統合能力を考察してみる,7 まず物理的強制手段についてであるが, これなくして, 政権奪取を目指す政治団体は内戦を勝ち と る こ と が で き な い, そ の 獲 得 に つ い て は 次 節 で考 察 す るこ と と す る, と こ ろ で, 近 代 国 家 に お い. ては, 物理的強制手段が国家によって合法的に独占されている. これに対し, それが成立する以前 の社会では, 権力体系内の主要権力単位の各々が, 独自の物理的強制手段を保持している. したが 景に おいて っ て, 同 じ く 内 戦 と い っ て も, 個 々 の 内戦 は, 国 内 闘争・に 武 力 が 用 い ら れ る に いた る 背 違 っ て い る とい わ ね ば な ら な い, た だ し, 20世 紀 に 起 き た 多 く の 内 戦 が, 国 民 的 統 一 の 遅 れ, 統 治. 機構の合理化の遅れ (非 「合理的国家」), 民主的政治制度の欠如, 中央政府の政治ポテンシャ ル - 61 -.

(7) . 吉. 川. 宏. の 弱ノト性を 背 景 と し て い る と い え る ,. 次 に, 政 治 集 団 は, 意 思 決 定 セ ン タ ー を 有 す る こ と な し に は 組 織 単 位 と し て 存 立 しえ な い 内 , ,. 戦の場合, 政権奪取を目指す政治集団は, 支配団体という強力な組織単位と抗争するの で あ る か ら, それに対決する強力な闘争自体, 意思決定センタ ーの存在を前提としている 旧体制の動揺の , な か か ら, 各 地 で さ ま ざ ま な 政 治 的 エ ネ ル ギ ー が 噴 出 し て く る が こ れ ら の エ ネ ル ギ ー は 結 集 さ , , れ る こ と が なけ れ ば, 無 益 に 発 散 さ れ, あ る い は 支 配 団 体 に よ る 強 制 に 個 々 的 に 服 さ せ ら れ る こ と. になる, 政治権力に反抗する政治集団 が, 政治目的を同じくする部分的なグループの総計から, 組 織された 全体へとその形態上の発展をみ せたとき, それは政治団体としての組織形態を整えたとい. うべきである. 政治団体の内部では, コミ ュニケーショ ン網の整備, 責任の分担や裁量権の範囲の 画定などが行なわれ, 意思決定センタ ーを権力中枢として, 組織は上級・下級とい った関係で機関 上の分化を みせることとなる, このよ うな政治団体が, 物理的強制手段を保持し それを有効に管 , 理 し て い る と い う こ と は, 政 治 共 同 社 会 双 極 化 の 指標 を な す も の で あ る .. さて政治的統 合の弛緩は, 支配団体が, 政治的に自覚した政治社会構成員の多くにとっ て 支配 , 的な忠誠対象たりがたくなってくることから始まる 旧体制崩壊の前夜には 支配団体力\社会的価 , , 値の配分を有効に決定しえなくなっ ているだけではなく, 既存の体制が作りあげてきた政治的同一 化 の 焦 点 が, ドミ ナ ン トな も の で は な く な っ て い る い わ ゆ る 民 心 の 離 反 が 進 行 し て い る , , 革 命. ・と被支配者との間の結び目の 完全な消滅であり また新しい忠誠と威力 ( は, 「支配者 fo ) 構 rce , ) 政治共同社会の統合が弛緩し しかも新しい同 造が古いものに代わっ て興起することである. 」9 , 一 化 焦 点 が, 古 い 同 一 化 焦 点 に 代 わ っ て, ドミ ナ ン トな も の と し て 形 成 さ れ て こ なけ れ ば そ こ に ,. は内乱状態が継続するだけである, 新しい政治同一 化焦点は, 政治団体と社会の構成員とを, 旧体 制の場合 とは違った構造で結びつける結節 点である それは, 反体制運動が目的としあるいは政治 . 的 課 題 と し て い る こ と の 違 い に よ っ て, 異 な っ た も の に な る が, 明 確 な 政 治 的 同 一 化 焦 点が あ っ て. はじめて, 運動の参加者は, 暴力行使 --特に, テロや武力行使-- によっ て落ち入るフラス トレ 0 ) ー シ ョ ン を 克 服 し え, ま た 自 己 を そ の よ う な 活 動 に 投 入 し う る の で あ る 1 ,. 1 ) C・プリントン 『革命の解剖』 ! 岡義武・篠原一訳, 47-8頁, トロッキー 『ロシア革命史Hj 山西英一訳 , 137頁,. 2) Cf r(1 96 4), p ,lnternaI Wa , H. Eckstein ed, .205 , i ty) は, 威力 ( f 3) 「権威 ( autho r rce )と一連の社会的目的についての同意との均衡である, 権威の二要素, o 同意と威力とは, 自由に交換可能でないにせよ, 相互補完的である.」 A. C .Janos , The Seizure of pow- er: A Study of Force and Popular Con t( 1 964 sen ),p ,2 . 4) これはスプラウトによって提起された概念で, 権力や勢力を含む集合概念として用いられてい る. H, and i ionaI Po M, Sprout i l i t ons oflnternat 1962 c ) s( , Foundat ,158 , なお, ポテンシャルの概念構成にあ ,p. た っ て は, 次の書に示唆されたと こ ろ大 き い. W.lsard ed i i onaI Sc 1 96 1 ence( ) . , Methods of Reg , Ch‐ apter li ,. ポテンシャルの意味を, 言葉で正確に表わすのが困難であることをことわった上で, スプラウ Hば, その意 味に最も近いものとして, 「圧力, あるいは引く力, あるいは引力, あるいは単に物理系で重力と か 電 圧 の f f t 語によって表わされる効力 ( ) の大きさ」 と定義することができるとしている. そうして, これを国際 e ec 政治体系に類推・援用して, 政治ポテンシャルと‘ は, 他の国の行動様式に対する国家の有効な圧力, 引力, あ るいは単に効力であると定義している, この定義から明らかなように, ここでいうポテンシャルは, いわゆる ia l t i t 潜勢力 (po ent y) とは異なる, スプラウトの政治ポテンシャル概念は, 単位間の距離を考慮することな しに構成されているが, ここでは, ある地点にはたらく力が, 単位の位置が変わるに従って変化するというこ. とにかかわらせて, 政治ポテンシャルを考えてみたい.. - 62 -.

(8) . 政治団体の不可入性 パートラン ド・ラッセル 『権力』 東宮隆訳, 170頁. 毛沢東 『中国の赤色政権はなぜ存在することができるか』, 『中国革命戦争の戦略問題』, ポー・グェン・ ザップ 『人民の戦争・人民の軍隊』 真保潤一郎訳, lo頁, エルネスト・チ ェ・ゲバラ 『ゲリラ戦争』 五十間忠. 00一20頂. 人民戦争展開の条件, あるいは革命政権存立の条件として, 国土の広さや 発願機 行訳, 15 , 49 ,2 4一95頁, 邦訳 『レーニン全 関の貧弱さを指摘したものとして, クラウゼヴィッツ 『戦争論』 淡徳三郎訳, 29. 1巻, 50-1頁. 集』3. ) これらの指標をとりあげるにあたっては, エツィオーニが, 政治共同体統合のメカニズムとしてあげている 7. ものを参照した, エツィオーニは, コミ ュニティは, 自足的な統合のメカニズムを有する場合にのみ, 形成さ れるものであると規定し, 特に政治共同体は, 次にあげる三っの種類の統合を有する共同体である と し て い ) コミュニティ全体にわたって資源と褒賞の配分に影響を b る, ( a ) 暴力手段の行使に対する効果的な制御, (. c )政冶的に自覚した市民大多数のための ドミ ナ ン トな政治 与えうる意思決定センターを有すること, および( f i i l i i i t i i P t IUn 1 96 5) ) 彼のいう 政治共同体 が, ca a on( z o c on 的同一化焦点を有すること, (A,Bt ,4 , . ,p 政治的統一をなしとげた近代市民社会をモデルとしていることは明らかである. これら三種の統合を完全に満 足させる政治共同体は, 近代国家成立以前には存在しない, 本稿でいう政治共同社会とは, 暴力に訴える態勢. をととのえることにより, ある地域およびそこに存在する人間の行為を, 権力体系の統制下におくことを目指 位間の利害調整が行なわれるような社会, といったほどの意味で用いている, 従 して, 支配団体による社会単, っ・てエツィオーニのあげる三種の統合のメカニズムを有していないような社会でも, 権力体系の存在を指標と して, ここでは政治共同社会とみなしている, 政治共同社会をこのようにとらえた場合には, 権力単位 (政治 共同社会の発展段階によりその主要単位は異なる) の結合・整化 (=統合) の程度がより重要な問題となる,. たとえば, 分権割拠的構造, 物理的強制手段の独占など, 統合のメカニズムの中心にあるのは支配 団 体 で あ る. そこで《準》支配団体はかかる統合形成の能力を有していなければならない.. 8) 周知のことであるが, 国内政治の対立が武力衝突にまで発展することは, 社会発展の段階と密接な関係をも ・ っている. デュヴェルジェは, 国家権力維持のための正規な兵器使用を別として, 兵器が政治闘争に用いられ る主要な場合として, 次のような場合をあげている, 第一に, 社会発展の未開段階で, 国家がなおあまりに弱. 体で兵器を独占できない場合, 第二に, 野党が武器以外に政治闘争の手段をもたぬ場合, 第三に, 軍人が国家 に奉仕し支配者の命令に服することを止め, 自ら権力闘争にとび込む場合, の三つである. (M・デ ュヴェル. 1頁,) これらの三場合のうち, 最初の二例は特に, 政治的近代化と 9-1 o ジ ェ 『政治学入門』 横田地弘訳, f 密接に関連しているといえるであろう,ハンティントンは, 政治的近代化の標徴として,権威の合理化, 政治的 機能の分化・専門化, およびさまざまな社会集団による政治参加の増大をあげている, デュヴェルジェのあげ る第一の場合は 「権威の合理化」 に, 第二の場合は政治参加の制度的な保障にそれぞれ関係している, 国家に よる物理的強制手段の合法的独占の問題は, 歴史的にはまず 「権威の合理化」 の問題である. ハンティントン i i i thor ty) について, それは, 「無数の伝統的, 宗教的, 人種的 l i t t za on ofau ra ona は 「権威の合理化」 (. な政治的権威が, 単一の世俗的, 民族的な政治的権威にとって代わられること」 であり, また 「民族国家が超 国家的な勢力に 対しその対外主権を主張することであり, また中央政府が地方的, 地域的な権力に対しその対 ‘ Po i i l i I Modemi t i t za ngt ca on on 内主権を主張すること」 を意味している, と述べている, (S ,‘ ,P,Hungt. ” i l ld Pol i t - m, No i cs 6 ) このような権威の合理化が なお達成 : Amer ca vs ,vo , ×\ .37 .3,p , Europe , Wor .. されていない社会では, 権力秩序そのものが, 各権力単位による武力行使を容易ならしめる構造をもっている といわねばならない, 次に, 国家の政策に民意を反映させるための径路を欠いた社会では, 反体制勢力ないし 野党は, 政治闘争の手段として武力行使に訴えるしかない場合が多い, 特に現代の後進国の場合, 政治参与の 要求が, ほとんど無権利の状態から一挙に大衆参与の実現を求めるといった内容をもつことが多い. このラデ ィカルな要求は, 旧 (伝統的) 体制の適応の範囲を越えることになり, しかもその拒絶は, 要求者の用いる手 段を激烈なものにさせる.. i t 9) Janos . ,3, ,p ,op.c . ‘ i ivat i i i d i l la aud Sabo tage:organi ons on” Z zat K on ons n w J a o y , BScalat , l o ) Cf , Mot , operat , Guerr ,. , 1 M i iaI Sc i l CCC×L i l and Soc t ( i a l 9 6 ) 2 ence v y The Annal ca o can Academy of Pol s ofthe Amer , ,. ,. - 63 -.

(9) . 吉. 川. 宏. P ,lo,. 《力の場》におけるヘゲモニーの掌握を目指して, 二つの相対立する政治勢力が武力衝突するに いた った場合, 力の場における革命・反乱勢力の存立は, 独自の武装集団組織化の成否にかかっ て ) このよ う な武 装集団がど のよ うに して作られ ま たい か なる組織形態 を とるか く る よ う に な る, 1 ,. は, 所与の政治共同社会の統合の程度, 革命・反乱の規模・性格によって異ならざるをえないが, ともあれ内戦という事態は, 政権奪取を目指す勢力が, 武装し武力闘争に転ずることがなければ起. らない, 次に, 政権奪取を目指す勢力が武装蜂起して, 政府の軍隊と武力衝突を繰り返したが, 支 配団体の組織的暴力がすぐには壊滅せず, 他方反乱勢力もまた 一 部地方的権力奪取をみただけで政. 権奪取に成功しえなかった場合には, 武力闘争は新しい局面を迎えることになる, というのは, こ の政治勢力が, 支配団体に暴力的に対抗しうる手段を有していることから, それ自体の不可入性を 形 成 し て ゆ く こ と に な る か ら で あ る, ウ ェー バ ー が 指摘 し てい る よ う に, 「お し な べ て, 暴 力 を 行. ) 武力衝突は 常に 局地的に場所の占拠をめぐ 使する準備態勢は地域支配と結びついている, 」2 , , る戦闘を展開 させるし, このような戦闘の積 重ねは, ある地域が 一方の占拠地域である と相互に認 知し合うような状態を作り出してゆく. このような状態においては, 反体制勢力もまた, 闘争目標 のなかに, 一定地域の持続的占拠とその《統治》を組み入れてゆくことになる. この場合, 反体制 勢力は, 前節で検討した統合能力を有する限り, 一 定範域内に自らの 秩序系を作り出し, これを暴 力的に保証する 組織単位として存在していることになる. いわばそれは, 支配団体と同様な組織機 能のず E様をもっ て存在している, この局面において, 政治共同社会は, 四分五裂の無政府状態では i. なくて, 《支配団体》間の戦争 ‐状態にあるといえる、 双方の団体が, それぞれの不可入性をかけて 武力を行使するにいたっ たとき, 権力闘争+±戦争の力学でとらえねばならなくなる. 内戦が内戦た るゆえんのものは, 単に既存の権力体系の互解下における武力衝突にあるのではなくて, 既存体制 を攻撃する政治勢力が, 不可入性を争 ・うまでに強力な実力的基盤を有していることにあるといわね 〕 ば な ら な い. 3. interna l wa ドイ ッチ ュは, 「内 戦」 ( ) の大きさを表わす量的側面と して, 持続期間, 広 が r. り, および闘争している勢力おのおのにおける戦闘員の徴募と損失の割合を あげ, これらのうち内 戦を測るのにもっ とも簡単な特徴はその持続期間であっ て, 20世紀に勃発した内戦が, 著しく長期 に わ た る 持 続 性 を み せ て い る こ と を 指 摘 し て い る, “ ところで国内での武力衝突の長期化は 権力 ,. 闘争が不可入性をめぐる争 ・いの形態をとることにはたらく, 決定的な要因である, その長期化は, もとより, 政治的対立の根の深さいかんによるものであるが, 《戦争》の側からこれを眺めれば, 内戦が, 双方の存立をかけた 「絶対戦争 ・ 」 の性格を帯びざるをえないことにある. 内戦は, 政治共 同社会の全域にわたる支配の一元化を目指す闘争なのであるから, それは敵の トータ ルな破壊を目. 標とせざるをえなくなるし, またそれが政治参与 .の範囲のひろがりを触発して行 なわれることにな れば, それはいよいよ総力戦の様相を濃くする といわねばならない, 要するに, ある一定の国家領 域における支配一元化のための闘争 ・は, 「たえまない必死の闘争 ・ 」 となり, 二 つの《支配団体》の 5 } 間に妥協の成立する余地はほとんどないのである, このように両者の存立をかけて戦われる限り, 内戦はその目標の範囲において全面化せざるをえ. な い わ け で あ る が, 内 戦 は も とも と イ デ オ ロ ギ ー 戦 で あ り, こ こ で は 自 己 の 体 制 へ の 民 衆 の 信 従 の. 獲得, あるいは動員が, 圧倒的に重大な意義をもつ, しかも, 双方の《支配団体》がいかにそれぞ - 64 -.

(10) . 政治団体の 不可入性 れ の 不 可ノv性を 堅 固 に しよ う と, 双 方 に と っ て の母 体である政治共同社会は いろいろの共通項を , 残存させている, このような与件を とらえて, 革命・反乱の組織は, 現実の戦力における圧倒的な 差を, 持続的な闘 争のなかでせばめ, その力関係を逆転させる可能性をみとおすことができるので あ る, こ の よ う な, 内 戦 に おけ る 権 力 関 係 の 特 性 に つ い て は 後 述 す る と し て 次に 内 戦 の 持 続 化 と ,. 政治団体による不可入性造出の過程を検討してみることとする , 個々の内戦においては, 政権 ー奪取を目指す政治団体によっ て志向される領域の範囲, およびその コド可入性造出の過程は, 内戦をとりまく政治的, 社会的 経済的諸条件の違いに従っ て異ならざる , をえない‘ ここでは, 領域の範囲において国土の全域支配を目標とし, また不可入性造山の過程に おい て 一 部 地 方 的 な 占 拠 か ら 出 発 す るも の に つ い て 考 察 す る こ と と す る さ ら に 既 存 の 権 力 体 系 , ,. との関係については, 内乱状態の進行を仮定して論述することにしたい まず 内乱状態において , . は, 既述のように既 存の支配団体あるいは中央政府の統制が国土全域には及ばず 他方これによっ , て既存の権力体 系から離反した 諸単位が, 自足的な統合のメカニズムを有する団体として現われ , 国土内にはそれらによる占拠地域が分散して成 立することになる 国内政治の両極化は, これら諸 . 単位の結合・整化 を進めるが, 全般的には主要権力単位の支配 妥当の範囲が交錯し混然としたもの に な っ て い る, そ し て, 戦 闘 地 区 が 各 地 に 入 り 乱 れ て 現 出 す る こ と に も な る しか し 内 戦 の持 続 , ,. 化の過程で, 入り乱れていた戦闘地区が整理 もされてゆくことは必定で, 国土内には両陣営の力関係 ) す な わ ち 一 方 の 兵 力 が 優 勢 な 地 区 か ら はf世方が にみ 、あ っ た 《 戦 線 》 が 形 成 さ れ る こ とと な る, 6 , 後 退 す る こ と に な る し, ま た 戦 略 の 基d 一-- 兵 力の 結 集--- -しこの っ と っ て, 地 域 的 な 兵 力 集 中 が 戦. 線の形成と整備を うながすのである, 戦線が整備され, 帯状に連続して, 両陣営の軍隊が相対時し て配置されることとなった場合, 戦線の後方は, 相手の権力単位からの一切の 強制を排除して独占. された範域とLて存在する. 力の場で成立しているこのような範域を, 国家領域と区別 す る 意 味 で, 政治団体の領分ということにすると, 領分は政治団体の支配麦 ・当地域であり, また そ の 境 界 は, 彼 我 の 力の 均 衡 点 の 連 続 と して の 戦 線 に ほ か な ら な い ,. 国土を二分する領 分の成立は, 内戦の持続化の結果であると同時に, またそれを一段深める要因 でもある, 政権準1取を目指すかの政治団体は, それ自身のための領分を形成しえたことによって, その戦力の重要な実体的基盤をえ, L た が っ て ま た 内 戦 の 長 期 化 に 耐 え うそ か ら で あ る. 内 戦 と い. う闘争場狸で, かの政治団体はその存立のために, すなわち内戦遂行のために, 人 的・物 的 資 産 ial s) を必要とす る, 戦 力 (war potent (asset ) の 維 持 ・ 増 強 と い う 問 題 に 限 っ て も, そ の た め. には税あるいは物品の徴収・ 調達と兵員の徴募を必要とする, このような徴募・調達は, 社会的価 値の配分さらには服従調達の問題にかかわるものであり, それは明らかに政治的組織化ないし動員 の問題である, 各戦線における力関係を決する最大の要因は彼我の戦闘力にある が, 戦闘力はまさ :力 (n l i l i tary st に 動員さ れた軍事 ・obi zed mi rength) の こ と で あ る, か の 政 治 団 体 に と っ て, 軍. 事〃の動員は 「政治的」 動員の性格を強くもたざるをえない. それは政治的統合能力 の 関数 で あ. る, したがって, 内戦の激化とそれに伴う戦闘力増強の要請は, また政治的統合の強化を要請する ものである. このようなわけで, 内戦の長期化とその激化は, 国土を軍事的に分断するだけではな く, 住民の生活を全面的に包括して, 全住民を分断することへと導くものである, それぞれの領分 内では, 異なった統治が行なわれ, 双方の勢力は戦力維持のため, 住民の移動や財貨の流通に制限 を加えて, それらの流出を阻止しようとする, 統治におけるこのような職能を通じて, 政治団体の. 保全にとって最も重要な機能を果たすのが, その強制組織である, 地域住民の統治と領分の維持を 講じて, 同志的結合から出発した政治団体が, ここで独自の強制組織を装置 したものと な っ て ゆ - 65 -.

(11) . 吉. 川. 宏. ノ \. さて, 政権奪 取を目指す政治団体が, 既存の支配団 体と抗争するところの一つの《支配団 体》と なったとき, 両者間の権力闘争は, 一方の権力増大は同時に他方の権 力減退に通ずるといった関係 にたつ, それはいわば 「零和ゲーム」 で, その変化は領分の変化において実体的に捉えられる, こ うして, 敵の撲滅という目標の達成程度は, 敵の領分の獲得によ って測られることとなり, 領分の 拡大が当面の目標として重要なも のとなっ てくる.. 以上の考察から明らかなように, 政治共同社会内で分極化が進行し, 二 つの《支配団体》が, そ れぞれの領分の維持・拡大をめぐり武 力抗争するにいたったとき, 両者間の武力による闘争は, 国 家間の戦争とほとんど変わらないものとなるのであった, だが, 内戦は国内の政 治闘争に武力が用. いられた場合の 一形態であり, たとえそれが国内闘争の極限形態であるにせ よ, やはり国家間の戦 争とは異 ならざるをえない, 両者の違いを主に戦闘している双方の戦力相互の関係についてみ るこ とにし ょう, 内戦において は, それが共同社会を背景としていることから, 住民の多くがなお双方 の媒介体として存在している, かくて, 一 方における動員能力 の向上は, 他方の動 員能力に直接的 に 影 響 せ ざ る を え な い 1 戦が民衆動員によっ て遂行されようとし, また政治的統合が な お 相 互 ,. 浸透的な場合には特にそのような関係にたつ, 近代国家成立以前 の社会におけるように, 国内での 戦さが, 兵力として一般民衆をほとんど 動員することなしに行なわれる場合には, 双方の戦力間の 相関関係は, 陣営内の一部将書中の寝返りの出た場合に しかほとんど生じない, これに対し, 現代内 戦におけるように, 革命・抵抗運動の激 化、 武装蜂起, 内戦への発展といっ た一連の政 治闘争激化 の 過 程 で, 民 衆 の 政 治 「参 与 の 爆 発」. ion) が 起 る 場 合 に は, 民 衆 の 動 き i i on explos ciPat (Part. が内戦の帰趨を決するようになる, ところで社会の両極化は, 民衆が忠誠対象 の選択によって彼の 居住地を一 方の領分内に求めることを必ずしも許さない, 多くの民衆は, それまでの居住地にとど ま っ ている. しかも, 内戦勃発の原因となった社会的矛盾は, 一方の領分が成立した地域に偏在し て い た と い え る よ う な 性 格 の も の で は な い, こ こ に 一 方 の 同 化 力 が, 戦 線 を 突 き 通 し て, 相 手 側 に. 作用する条件があ る. このような同化力が作用するということは, 相手の統合力が自 陣の戦力にま で及んでいる ことである, かくて, 戦力の相関関係が緊密である限り, 戦力動員の問題は, 動員率 向上といっ た技術的なものであるよりも, 政治的統合能力 の問題なのである, 内戦においては, 彼 我の戦闘力が競われているだけ でなく, 双方の統合能力が競われているのである, 「内戦では政治 ) といわれ るゆ えん である こ そ が 決 定 的 な 武 器 で あ る」 7 ,. このように彼我の統合力が競われる場合, 権力維持にとって領分のもつ意義は, 既存の支配団体 と反乱勢力とでは異ならざるをえない, この違いは, 主に, 武装蜂起した勢力の実力的基盤に由来 するものである, ところで, 等しく武装蜂起といっ ても, 民衆を主体とした武装蜂起の場合もあれ ば, 既存体制の軍隊の多くを抱き込んで行なわれる場合, さらに軍隊を 中心とした場合もある, ま た, 軍隊を中心とした 場合でも (ただしクー デターのように, 自然発生的大衆行動に依存する こと を極小化しょ うとするものは除く), 反乱が, 旧体制の打倒・変革を目指すものであるか, あるい は成立したばかり の革命政権の打倒を目指すものであるかによっ て, おのおのその実力的基盤を異 にすることは明らか であろう, 内戦遂行の過程で, 領分獲得の意義が, 支配団体と顕著な対比をみ せるのは, 民衆を主体とした武 装蜂起の場合である, この場合には, 武装蜂起が旧体制からの民心. の離反を背景としているのであるから, これを制圧しようとする支配団体の強制力は, 裸の暴力に 圧倒的に依存せざるをえない. その中核をなすのは, いうまでもなく, 正規軍であり, 内戦の初期. の段階においては, それはその装備, 指揮・統率, さらにはその 委員数においてさえ, 民衆の即成 6- 一6.

(12) . 政治団体の不可入性 の軍隊に対し優位にたつ, このような兵力における優位と民心の離反という条件から 既存の支配 , 団体の政策目標は《軍事的》 勝利に集約きれてくるよ うになる 民心の離反をみた政治権力にと , っ て, 武力における優位を槌子として反乱者を武力平定すること が, 支配妥当を地域的に保証すると 考えられる最も容易な 途であり, かくてその領分の拡 大, すなわちかっ ての支配領域の回復が そ , の戦略の基本とされることになる, しかし, 支配団体による領 分の支配が, 地域住民によっ て敵意 と反抗をもっ て迎えられるものでしかない場合, 領分の獲得は暴力に よる地域の排他的占有に終っ て, 地域の統合とはなりえない. 換言すれば, 地域住民の支持をうることができないよ うな支配団 体は, その領分の外殻を暴力的に保証しているようにみえながら, 実は外からの政治的浸 透に も , ろくも崩れるような地域支配を続けているにすぎないのである. 既存の支配団体が採らざるをえないこのような基本戦略に挑戦しているものこそ, 現代における 人民戦争の戦略である, それによれば, 「もっ とも重要なのは, 政治的要素, 人民的要素である, 」 ポ ー ・ グ ェソ ・ ザ ッブ は, 抵 抗 戦 争 に お け る ゲリ ラ 戦 の 目 標 に つ い て, 次 の よ う に 述 べ て い る .. 「戦闘の主目標は, 敵の兵力の破壊でなければならない, また味方の人力は土地を守り, 占領しよ ) と この言葉は 既存の政治権力とそれに対して武装蜂起した うとして消耗されてはならない」8 , .. 勢力との間にみられる, 領分獲得の 意義の違いを端的に表現している, 既存の支配団体にとっ て, 内戦における領分の拡大が, その権力体系維持のための至高の目標たらざるをえないのに対し, 政. 権奪取を目指す政治団体にとっ て, 領分の形成は彼我の力関係の変化に従 う第二次的な目標でしか ない, またその不可入性の基礎は, 狭義の軍事力すなわち兵力よりも, むしろ新しい政治的同一化 焦 点に 向け ら れ る 民 衆 の 政 治 的 エ ネ ル ギ ー の 大 き さ に 求 め ら れ る の で あ る.. 内戦のように, 軍事力が大きくものをいう状況においても, 政治団体の不可入性は, 強制力とと もに統合の強さにも大きく依拠しているのであっ た, しかも社会内の相互依存関係が増大し, 権力 l ) になっ ていればいるほど, 内戦状況における不可入性の維持 単位間の関係が浸透的 ( rmeab e pe は, 統 合 能 力 に 強 く 依 拠 す る こ と に な る, か っ て マ キ ャ ヴ ェリ は, 国 家 の 防 衛 に と っ て 用 い る に た. る勢力の道具をなすのは, 傭兵や金銭ではなくて, 国民軍であると説いた, また, 現に 「参与の爆 発」 を起している社会で, 民族解放戦や革命戦争の指導者達は, 彼らの政治目的達成にとって, 人 民軍こそが用いるにたる勢力の道具であると説いている, 政治権力の基礎の拡大という歴史的趨勢 のなかで, 政治団体一般の不可入性を支える条件もまた大きく変化しつつあることが認識されなけ れ ば な ら ぬ, こ の よ う な 変 化 は, 国 民 国 家 の 領域 性 に も そ の 影 を 落 し て いる と い わ ね ば な ら な い で. あろう,. 1 ) K・ゴーリー 『軍隊と革命の技術』 神川信彦・池田清訳, 325頁,. ) マ ックス・ウ ェーバー 『権力と支配』 浜島朗訳, 1 2 76頁. 人間集団と地域支配の関係についていえば, 最初 に成立するのは, 集団内の支配関係であり, 土地の支配はこれに続くものである, たとえば, 民族の王は, 定. 住集団の支配者となった後に, 国土の支配者として現われてくるのである. (日, Jenks, The St t a e and. the Na i t 93 5), p,1 rev.ed., 1 29, ) 「存在の統一としての血のゲマインシャフトは, 共同居住をその on(. 直接の表現としている場所のゲマインシャフトに発展し分化する. 」 (テンニ ェス 『ゲマインシャフトとゲゼ ルシャフト』 杉之原耕一訳, 50頁. ). 3) 内戦という譜は,戦争の語が一般に国家間の武力闘争を指すにいたった後に,異常事態としての国内の武力闘 争を意味するものとして造語されたものと考えられる.封建社会のように分権割拠的な構造の社会や,国民的統 一がなお政治的課題となっていないような政治共同社会については, そこで起った集団間の武力闘争を内戦と. - 67 -.

(13) . 吉. 川. 宏. 呼称することはない, このことは, 内戦が, まず政治共同社会の統合の程度を内容的に含んだ概念であること ine str i fe であるが, <武力> を示唆している, 次に, 内戦は, 国内の権力単位間の闘争, すなわち intest を行使しての闘争であるという点で, 一般の政治闘争とは区別される. それはまさに 「血を流す政治」 で あ る, 用いられる手段におけるこのような特性から, 内戦は戦争の一形態として捉えられているのである. そこ i l war ) という言葉で nt erna で, 国内の政治闘争に暴力が用いられた場合, このような闘争をすべて内戦 ( ま 「内戦」 を定義して, それは広義には, r 現わそうとする用語法が生まれることにもなる. エックシュタイン{ 「ある政府の政策, 支配者あるいは機構を, 暴力あるいは暴力の威嚇によって変えようとする試み」 であると i in,op.c t ) この場合, 「内戦」 は社会体系に起った擾乱を意味し, この擾乱の t e している, (Bchs , , p.1 契機において, 革命も内乱も植民地戦争も等しく 「内戦」 のカテゴリーに含まれることとなる, (このような. i es of 概念構成に対する方法論的批判については, L, Stone, Theor. i i i t Revolut cs, VOI on, World Pol .. ) Xm,No 2 . , ,PP,160一61 最後に, 内戦の当事者たる権力単位が問題にされなければならない, 戦争は古くから集団間で行な つれる武 力による闘争を意味してきたが, 近代社会においては国家間の武力闘争を指す言葉となった. 先に指摘したよ. うに, この意味での戦争からの類推で, 内戦の語が造られたと考えられるから, 内戦の譜は, 「国家的」 集団 間の武力闘争という意味を内容的に 含んでいるといわねばならない, したがって, 内戦を, 政府以外の権力単 位による暴力行使によってもたらされた国内の単なる擾乱として捉えることは, 適当でないのであって, それ は政府と他の組織的権力単位-武装の面のみならず, 統冶機能のさまざまな面で高度に組織化された権力単位 -との間の武力闘争として捉えらるべきであろう.. i in, op, c t, p. 104, te 4) Ecks. 33頁, 邦訳 『トロ ッキー選集工』 高島健三訳, 5) ソコロフスキー 『ソ連の軍事戦略』 宮倉寿郎・実松譲訳, 1 3 92頁, f i l・ are ) の戦略を探った場合を想定し て い る, c onvent ona var 6) こ こ で は, 一応、 蜂起した勢力が通常戦 ( 双方の兵力のある程度の接近において可能となる 戦線の形成は, 内戦の場合, , 兵力に大きな差があるのに, 弱小な側が戦線を形成し, 決戦をいどんだのでは, 敗北は目に見えている, そこで, 当面の兵力関係における 圧倒的差という条件の下では, 通常戦におけるようには, 一定地域へ兵力を結集して陣地戦を行なわない戦略 があみ出された, これがゲリラ戦や遊撃戦である. これらの戦闘方法は, 相手の軍隊との接触点の分散性や部 隊の機動性に特徴をもっている, ただし, これらの場合にも, 根拠地を必要とするのであり, かくて不可入性. i l warfare) の 場 ona が細分化された特殊な形態で形成されるのが認められる. いわば非通常戦 (unconvent 合には, 陣地戦が主となる段階に至るまでに, 不可入性造出の独特な態様が見出だされることにな る の で あ る.. 7) フェリ ックス・モロウ 『スペインの革命と反革命』 山内明訳, 31頁, 8) ボー・グェン・ザップ, 前掲書, 59頁.. - 68 -.

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