特別支援教育における大学の果たすセンター的機能に関する検討 : 3つの大学特別支援教育研究センターの視察を通して
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第62巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.62,No.1. 平成23年8月 August,2011. 特別支援教育における大学の果たすセンター的機能に関する検討. −3つの大学特別支援教育研究センターの視察を通して−. 北村 博幸・五十嵐靖夫・細谷 一博 北海道教育大学函館枚障害児臨床教室. ExaminationontheCentralFunctionsofUniversitiesinSpecialNeedsEducation. −InspectionofThreeResearchCenters− KITAMURAHiroyuki,IGARASHIYasuoandHOSOYAKazuhiro DepartmentofSpecialEducation,HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本研究では,宮城教育大学特別支援教育総合研究センター,上越教育大学特別支援教育実践研究センター,. 筑波大学特別支援教育研究センターの視察調査を通して,3つの大学の特別支援教育におけるセンター的機 能の特徴を明らかにし,北海道教育大学函館校が担う特別支援教育におけるセンター的機能のあり方を検討 することを目的とした。結果,各大学の特別支援教育研究センターの共通の特徴「2機能5事業」と独自の 特徴「3タイプ」を明らかにすることができた。結果から,北海道教育大学函館校が担う特別支援教育にお けるセンター的機能として,専門性の向上・発展の機能である「研修事業」「情報発信事業」「実践研究事業」. と,地域の専門機関の機能である「教育相談事業」「支援事業」をあげることができた。また,支援地域と しては実効性の面から道南地域が考えられた。. Ⅰ.はじめに 「今後の特別支援教育のあり方について(最終. 教育総合研究所)とともに特別支援教育に関する 専門性を向上させ発展させるための役割を有して いるというものである。もう一つは,特別支援教. 報告)」(文部科学省,2003)において,現在の特. 育は支援地域の中で推進していくことになるた. 別支援教育体制の基盤となっている数多くの考え. め,当該支援地域の中核となる専門機関としての. 方が示された。. 役割を有しているというものである。特別支援教. その中で,大学が果たす役割として二つの点が 明示された。一つは,豊富な研究実績のある大学 は国立特殊教育総合研究所(現在,国立特別支援. 育において大学が果たすセンター的機能を考える 時,これら2つの点が重要な機能であるといえる。. まず,専門性の向上・発展に関しては,2003年. 81.
(3) 北村 博幸・五十嵐靖夫・細谷 一博. に国立特殊教育総合研究所が「特別支援教育コー. の特徴を明らかにし,北海道教育大学函館校が担. ディネーター指導者養成研修」を2日間の日程で. う特別支援教育におけるセンター的機能のあり方. 開催した。この研修会を受講した都道府県教育委. を検討することを目的とする。. 員会の指導主事等が地域に戻り,地域の教員を対 象に特別支援教育コーディネーターに関する研修 会を開催していった。同時に,規模の大きい都市 が独自に専門研修を開催するといった取り組みも. Ⅱ.方 法 本研究は,北海道教育大学学術研究促進経費に. みられた。(京都市立養護学校,2003:中田,2003). よる研究「道南地域における特別支援教育推進の. 大学が関係した研修としては,筑波大学心身障害. ためのセンター的機能構想」の一環として行った. 学系(現在,障害科学系)の教員と筑波大学附属. ものである。. 大塚養護学校が開催した「特別支援教育コーディ ネーター養成研修」の例がある。(瀬戸口ら,2004a). 研究は,以下の二つの内容で計画されている。 (研究1)大学附属特別支援教育研究センターの 実態調査. 一方で,地方の小規模の自治体においては,研修. 機会の乏しさや研修費用の過重負担といった課題. (研究2)特別支援教育に関する研修会の開催. があるとの指摘もあった。(瀬戸口ら,2002) また,大学と地域の関係においては,大学附属. 養護学校のセンター的機能の実践研究を通して支 援地域の設定の根拠を示した報告(瀬戸口ら,. 1.研究1 (1)対 象. 大学附属の特別支援教育研究センターとして先. 2004b)はあるものの,大学そのものと支援地域. 導的で特色のある取り組みを行っている,宮城教. の関係に関する報告はみられなかった。. 育大学特別支援教育総合研究センター,上越教育. 2004年以降,大学附属の特別支援教育研究セン. 大学特別支援教育実践研究センター,筑波大学特. ターの設置がされるようになった。(斎藤,2004a :斎藤,2004b)この,特別支援教育研究センター. 別支援教育研究センターを調査対象とした。 (2)調査方法. の設置には二つのタイプがある。一つは宮城教育. 各大学附属の特別支援教育研究センターの専任. 大学や筑波大学の様に新たにセンターを立ち上げ. スタッフとの面談による聞き取り,専任スタッフ. るタイプであり,もう一つは上越教育大学のよう. の案内による施設・設備の視察,センターが発行. に従来からあった特殊教育研究センターを名称変. している資料の収集による実態調査を行った。. 更するタイプである。. (3)時 期. これらの大学附属特別支援教育センターの設置. 2010年12月∼2011年1月の期間に各大学に1回. 以降,大学による特別支援教育のセンター的機能. 訪問した。. は,このセンターが担うことになった。. (4)調査内容. ただし,各大学附属特別支援教育センターの機. 調査内容は,設置に関する項目として設置年と. 能にはそれぞれの特徴があり,支援地域に関して. 目的,組織に関する項目として関係組織とスタッ. も特徴があることが予想される。. フ構成,機能に関する項目として事業内容と研究. 北海道教育大学函館校が地域の特別支援教育の. 紀要についてとし,各大学が発行している資料に. センター的機能を担おうとする時,先達の特別支. 基づき回答を求めた。. 援教育研究センターの機能の特徴と支援地域の考. (5)分析方法. え方を参考にすることが必要となる。. 「今後の特別支援教育のあり方について(最終. そこで,本研究では,先導的な取り組みを行っ. 報告)」で示された大学の二つの役割である,専. ている3つの大学附属特別支援教育研究センター. 門性の向上・発展という機能と地域の専門機関と. 82.
(4) 特別支援教育における大学の果たすセンター的機能に関する検討 いう機能を「研修事業」「情報発信事業」「実践研. 必要とする幼児・児童・生徒等への適切な教育支. 究事業」「教育相談事業」「支援事業」の5カテゴ. 援を可能にするため,①特別支援教育と適応支援. リーに分け,各大学の附属特別支援教育研究セン. 教育の情報収集・発信,②コンサルテーション活. ターの事業内容をこのカテゴリーに分類した。. 動を通した基礎的・実践的研究及び支援,③デー タベースの集積と公開を通した支援・指導方法の. 2.研究2 北海道教育大学函館校の特別支援教育における. センター的機能の一つと考えられる研修事業の実 践を行った。 (1)名 称. 名称を,平成22年度北海道教育大学函館校特別 支援教育フォーラム2010「特別支援教育の最前線 Partl∼小・中学校と特別支援学校の連携∼l とした。 (2)内 容. 小・中学校と特別支援学校の連携をテーマとし たシンポジウムを行った。. 宮城教育大学附属特別支援学校教諭,横浜市教 育委員会特別支援教育課長,北海道函館養護学校. 開発研究,という活動を基盤とし,地域社会に積. 極的に貢献すること,であった。 (3)関係組織. 関係する学内耕織としては,特別支援教育講座,. 附属特別支援学校・附属幼稚園・附属小学校・附 属中学校,他講座・他附属センターであった。 (4)スタッフ構成. スタッフ構成は,センター長(教授・兼務),. 専任教員2名(教授2名),兼務教員9名(教授 7名・准教授2名),客員研究員2名(教授1名・ 准教授1名),研究協力員5名(附属特別支援学 校教諭3名・県立特別支援学校教諭2名),事務 補佐員1名であった。 (5)事業内容. 教諭,厚沢部町立厚沢部小学校教諭の4名が話題. ① 特別支援教育分野. 提供をし,北海道教育大学附属特別支援学校副校. 特別支援教育分野の事業内容としては,以下の. 長が指定討論者となり,討論を行った。 (3)時期及び会場. 2011年3月,北海道教育大学函館校を会場とし. 4点があげられた。. 1点目は「教員・指導員・保育士等に対するコ ンサルテーション,特別支援教育コーディネー. 開催した。. ターの養成・研修,その他の学校生括支援活動を. (4)参加者. 行うこと」,2点目は「障害児・者とその保護者. 参加者は,道南地域の小学校教員,中学校教員,. 等への社会・学校生括支援,学校適応に関する教. 特別支援学校教員,特別支援教育を学ぶ大学生で. 育相談を行うこと」,3点目は「データベースの. あった。. 構築と公開,活用方法の開発研究を行うこと」,. 4点目は「障害児のための感覚代替,コミュニケー 本稿では,研究1について報告する。. ションシステムの適応方法の開発研究を行うこ と」であった。. Ⅱ.結 果 1.宮城教育大学特別支援教育総合研究センター (1)設置年. 「今後の特別支援教育の在り方について(最終. ② 適応支援分野. 適応支援分野の事業内容としては,以下の3点 があげられた。. 1点目は「教員や指導員等の教育関係者に対す るコンサルテーション,研修,その他の学校生清. 報告)」が示された翌年の2004年に設置された。. 文援活動を行うこと」,2点目は「児童生徒とそ. (2)目 的. の保護者等への社会・学校生括支援,学校適応に. 目的は,特別な教育的ニーズや適応上の配慮を. 関する教育相談を行うこと」,3点目は「データ. 83.
(5) 北村 博幸・五十嵐靖夫・細谷 一博. ベースの構築と公開,活用方法の開発研究を行う こと」であった。 ③ 統括・企画部門. 統括・企画部門の事業内容としては,以下の7 点があげられた。. 1点目は「センター運営委員会による統括・運 営を行うこと」,2点目は「特別支援教育コーディ. 2.上越教育大学特別支援教育実践研究センター (1)設置年. 附属障害児教育実践センターの名称で1987年に 設置され,特別支援教育が制度として始まった 2007年に現名称に変更された。 (2)目 的. 目的は,特別支援教育における実践的な研究及. ネーター養成講座の企画・実施をすること」,3. びその研究の推進を図るとともに特別支援教育諸. 点目は「フォーラムやセミナー等の企画・実施を. 学校の教員の研修を行うことと,特別支援教育に. すること」,4点目は「プロジェクト研究の企画・. 関する教育臨床や教材開発を通じて大学院生の実. 実施をすること」,5点目は「国内外の大学及び. 践的指導力の向上を図るとともに,教育相談や指. 研究機関との共同研究・交流等の企画・実施をす. 導者研修により地域の教育・福祉に資すること,. ること」,6点目は「学外研修会等への講師派遣. であった。. を行うこと」,7点目は「啓発活動・広報及び活. (3)関係組織. 動報告等を行うこと」であった。 (6)研究紀要. 研究紀要として,宮城教育大学特別支援教育総 合研究センター研究紀要という名称で,2005年度. 関係する学内組織は,特別支援教育講座であっ た。 (4)スタッフ構成. スタッフ構成は,センター長(教授・兼務),. に第1号を発行し,以降年間1冊の発行を行って. 兼務教員3名(教授),特任教員8名(特任教授. いる。. 2名,特任准教授6名)であった。. 平成21年度の研究紀要(第5号)では,研究報. (5)事業内容. 告6編,研究紹介1編,センター活動報告3編,. (丑 臨床部門. がその内容となっていた。. 臨床部門の事業内容としては,以下の2点があ. (7)分析結果. (5)に示した事業内容は,5つのカテゴリーにお いて以下の様に分類できた。 「研修事業」には,特別支援教育分野の1点目,. げられた。. 1点目は「障害児教育講座に所属する大学院生 の臨床指導を行うこと」であった。具体的には, センターに来所する障害児の診断,教育プログラ. 適応支援分野の1点目,統括・企画部門の2・. ム作成,指導,評価を実際に体験させ,障害児指. 3・6点目が分類された。「情報発信事業」には,. 導の原理,技術を学習させることと,その際VT. 特別支援教育分野の3点目,適応支援分野の3点. Rを用いた場面分析やコンピューターによるデー. 目,統括・企画部門の7点目が分類された。「実. タの処理・管理も学習させることと,新潟県や東. 践研究事業」には,特別支援教育分野の4点日,. 京近郊の養護学校を見学して,教育現場の実態を. 統括・企画部門の4・5点目が分類された。「教. 学習させるとともに,夏期休暇中に特別支援学. 育相談事業」には,特別支援教育分野の2点目,. 校・特別支援学級や福祉施設の行事等に参加さ. 適応支援分野の3点目が分類された。「支援事業」. せ,指導者のもとで障害児の指導を学習させるこ. には,特別支援教育分野の1点目,適応支援分野. とであった。. の1点目が分類された。. 2点目は「障害児の発達,就学,問題行動等に 関して,面接相談や継続指導を行うこと」であっ た。具体的には,心理,言語,聴覚,視覚,医学 等の検査によって,総合的な診断を行い,その結. 84.
(6) 特別支援教育における大学の果たすセンター的機能に関する検討. 果に基づいて,教員と大学院生がチームを組み,. 臨床部門の2点目が分類できた。「支援事業」には,. 知的障害児の早期発見,構音障害児の指導,言語. 臨床部門の2点目が分類できた。. のでにくい障害児の早期発見,聴覚障害児の言語 訓練と行動訓練などを行うことと,障害児に関わ る人々や環境の調整,他の医療機関,教育機関へ の紹介などのケースワークも行うことであった。. 3.筑波大学特別支援教育研究センター (1)設置年. 「今後の特別支援教育の在り方について(最終. ② 研修部門. 報告)」が示された翌年の2004年に設置された。. 研修部門の事業内容としては,以下の2点があ. (2)目 的. げられた。. 1点目は「指導者研修を行うこと」であった。 具体的には,校長,教頭など指導的立場にある現 職教員,福祉関係施設の指導者,及びアジアを中. 目的は,筑波大学障害科学系等の研究耕織と, 附属視覚特別支援学校(視覚障害)・附属聴覚特 別支援学校(聴覚障害)・附属大塚特別支援学校 (知的障害)・附属桐が丘特別支援学校(肢体不. 心とした海外の指導者を招いての研修を行い,一. 自由)・附属久里浜特別支援学校(自閉症)の5. 般へのサービス活動,PR活動を行うとともに,. つの附属特別支援学校を基盤として,特別支援教. 大学院生が将来教育実践のリーダーとして活躍す. 育の発展に資する様々な社会的要請に応えること. る際に役立つ幅広い知識を獲得させることであっ. ができる研究拠点になること,であった。. た。. (3)関係組織. 2点目は「障害児一人一人の障害状況に合わせ. 関係する学内組織は,附属学校教育局,障害科. た教材・教具の開発を行うこと」であった。具体. 学系,附属視覚特別支援学校・附属聴覚特別支援. 的には,開発した教材・教具を実践的に利用して. 学校・附属大塚特別支援学校・附属桐が丘特別支. いく中でより効果的な教材のあり方を追求してい. 援学校・附属久里浜特別支援学校であった。. くことと,大学院生用や指導者研修会用の視聴覚. (4)スタッフ構成. 教材を作成したり,各種特別支援学校において使. スタッフ構成は,センター長(教授・専任),. 用されている教材・教具に関する資料収集したり. 専任教員9名(教授3名,助教1名,附属特別支. することであった。. 援学校教諭5名)であった。. (6)研究紀要. (5)事業内容. 研究紀要として,上越教育大学特別支援教育実 践研究センター紀要という名称で1995年度に第1 号を発行し,以降年間1冊の発行を行っている。. 平成21年度の研究紀要(第15号)では,特別論. ① 連携・コーディネート. 連携・コーディネートの事業内容としては,以 下の2点があげられた。 1点目は「筑波大学の研究部門と附属特別支援. 文1編,論文6編,地域の情報1編,教材・教具. 学校間との相互連携的活用の拠点となること」,. の紹介1編,センターセミナーの報告1編,セン. 2点日は「様々な社会的要請に応えうる特別支援. ター活動報告1編,がその内容となってい7,〈. 教育の連携拠点となること」であった。. (7)分析結果. (5)に示した事業内容は,5つのカテゴリーにお いて以下の様に分類できた。 「研修事業」には,研修部門の1点目が分類で. ② 研究開発. 研究開発の事業内容としては,以下の5点があ げられた。. 1点目は「センター企画重点研究として,セン. きた。「情報発信事業」には,研修部門の1点目. ター教員が筑波大学内外の研究者や機関と連携. が分類できた。「実践研究事業」には,研修部門. し,附属特別支援学校の教員の協力を得て研究を. の2点目が分類できた。「教育相談事業」には,. 行うこと」,2点目は「附属特別支援学校間連携. 85.
(7) 北村 博幸・五十嵐靖夫・細谷 一博. 研究として,センター教員が附属学校間のコー ディネーターとなり研究を行うこと」,3点目は 「助成研究として,附属特別支援学校の教員から テーマを募集して研究を行うこと」,4点目は「外. 部資金導入研究を行うこと」,5点目は「図書の 出版を行うこと」であった。. 開設すること」であった。 ④ 理解啓発・交流機能. 理解啓発・交流機能の事業内容として,以下の 2点があげられた。. 1点目は「研究交流セミナーとして,障害科学 系とセンターとが共同で企画するセミナーを開催. ③ 教員研修. すること」で,2点目は「主催セミナーとして,. 教員研修の事業内容として,以下の5点があげ. センターが企画し主催するセミナーを開催するこ. られた。. 1点目は「現職教員研修事業として,高い指導 法の専門性を持つ教員の養成,及び特別支援教育. と」であった。 (6)研究紀要. 研究紀要として,筑波大学特別支援教育研究と. コーディネーターの養成を目的とし,一定の教員. いう名称で2006年度に第1号を発行し,以降年間. 経験を持つ教員等を対象に研修生の受け入れを行. 1冊の発行を行っている。. い,附属特別支援学校5校での実習と,センター. 平成21年度の研究紀要(第4号)では,実践研. 及び大学院教育研究科特別支援教育専攻での講. 究4編,実践報告2編,資料1編,事業報告1編,. 義・演習を組み合わせた長期研修プログラムを提. がその内容なっていた。. 供すること」であった。2009年度より海外からの. (7)分析結果. 現職教員の受け入れを開始し,国際教育協力にも 貢献している。 2点目は「遠隔地配信型研修システムとして,. (5)に示した事業内容は,5つのカテゴリーにお いて以下の様に分類できた。. 「研修事業」には,教員研修の1・2・3・4・. インターネット回線を媒介としたテレビ会議シス. 5点目が分類できた。「情報発信事業」には,理. テムを利用し,センターが主催している各種セミ. 解啓発・交流機能の1・2点目が分類できた。「実. ナーや公開講座,現職教員向けの講義や演習の内. 践研究事業」には,研究開発の1・2・3・4点. 容等を,他大学や教育委員会等が開催する複数の. 目が分類できた。「教育相談事業」には,連携・コー. 研修会にも同時に配信すること」であった。. ディネートの1・2点目が分類できた。「支援事. 3点目は「講師派遣型システムとして,特定の 拠点(地域)で,一度に複数の受講者のニーズに. 業」には,連携・コーディネートの1・2点目が 分類できた。. 対応するために,附属特別支援学校の教員を組織 し,東京から遠い地域の研修会場に直接講師を派 遣すること」であった。. 4点目は「研修教材碇供型システムとして,セ. Ⅳ.考 察 3つの大学附属の特別支援教育研究センターの. ンターが主催している各種セミナーや公開講座,. それぞれの特徴をみたところ,3つのセンターに. 長期研修生向け講義や演習の内容をDVD等の映. 共通する部分と独自の部分に分けることができ. 像教材としてデータベース化し,提供すること」. た。. であった。. 5点目は「免許法認走公開講座として,障害科. 共通する部分としては,「今後の特別支援教育 のあり方について(最終報告)」で示された大学. 学系の教員と附属特別支援学校の教員の連携協力. の二つの役割である,専門性の向上・発展という. のもと,特別支援学校教諭免許状の視覚障害者,. 機能と地域の専門機関という機能である。. 聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者の各特別. 支援教育領域の一種,二種の取得に必要な講座を. 86. 専門性の向上・発展の機能の具体的な事業とし ては,「研修事業」「情報発信事業」「実践研究事業」.
(8) 特別支援教育における大学の果たすセンター的機能に関する検討. をあげることができる。地域の専門機関という機. 支援教育分野の専門性の両方の専門性で子どもを. 能の具体的な事業としては,「教育相談事業」「支. 支援していくことが重要となる。この意味から,. 援事業」をあげることができる。. 両分野が連携することの意義は大きいといえる。. 「研修事業」「情報発信事業」「実践研究事業」. 上越教育大学は,二つの特徴があった。一つは,. に関しては,学校教育現場や福祉現場そして保護. センターの事業と大学院修士課程特別支援教育. 者を対象としている事業であるため,実践的具体. コースの授業とが強く関連しているという点であ. 的な内容となっているという特徴があった。「研. り,大学院生の専門性の向上に大きな役割を果た. 修事業」に関しては,各年度の研修講座等の内容. しているといえる。(村中,2009)もう一つは,. の変遷から,学校教育現場の教員のニーズをしっ. 教材・教具の開発と紳介という点であり,学校教. かりと把握して研修プログラムを計画しているこ. 育現場の教員のニーズに応じた支援であるといえ. とが推察された。「情報発信事業」に関しては,. る。(小野ら,2010:関根,2010:石本,2010:. 専門的になりがちな内容をニューズレターやブロ. 斎藤,2010). グを活用して分かりやすぐ情報を伝える取り組み. 筑波大学は,二つの特徴があった。一つは,附. がなされていた。「実践研究事業」に関しては,. 属特別支援学校と有機的に連携しているという点. 研究紀要に掲載されている論文の多くが実践研究. である。5附属特別支援学校の教諭をセンターの. であり,実際の教育現場で活用できる内容が示さ. 専任スタッフとしたり,附属特別支援学校を研修. れているという特徴がみられた。. のフィールドにしたり,センターと5つの附属特. 「教育相談事業」「支援事業」に関しては,大. 別支援学校が日常的に連携して事業を展開してい. 学が所在する地域における,高い専門性を有する. ることが窺えた。(障害科学学会,2009:前川,. 地域資源という特徴があった。また,大学が行う. 2009)もう一つは,支援地域が全国規模に加え海. 「教育相談事業」「支援事業」については,別々. 外にも及んでいる点である。筑波大学のセンター. の二つの事業というより相互に関係し合っている. が開催している免許法認定公開講座は全国の教員. 事業という大きな特徴もあった。相談事業に関し. を対象としているものであり,e−ラーニングを. ては大学以外でもいくつかの専門機関があるが,. 用いての研修会は九州や沖縄を対象としていた。. 大学附属の特別支援教育研究センターが行う教育. (筑波大学特別支援教育研究センター,2006)ま. 相談は単に相談にとどまらず,必要があれば個別. た,JICA海外青年協力隊への支援や海外の現. 臨床支援につながったり,場合によっては相談者. 職教員の研修受け入れなど国際協力も行ってい. の所属する学校等へのコンサルテーションにもつ. る。(筑波大学特別支援教育研究センター,2007). ながったりするものであった。. 一方で,3つのセンターのそれぞれ独自の特徴 も明らかとなった。 宮城教育大は,二つの特徴があった。一つは,. 支援地域が宮城県中心と明確なことである。(宮. これらの特徴の違いから,3つの大学附属の特 別支援教育研究センターを次のタイプに分けるこ とができた。. 宮城教育大学特別支援教育総合研究センターは 「地域支援型」,上越教育大学特別支援教育実践. 城教育大学特別支援教育総合研究センター,2010). 研究センターは「大学院教育型」,筑波大学特別. もう一つは,センターの中に特別支援教育分野と. 支援教育研究センターは「全国・国際型」といっ. 適応支援教育分野を併置させている点である。特. たタイプである。. 別支援教育の対象となる子どもたちの中で,特に. 以上のことをふまえて,北海道教育大学函館校. 知的な遅れのない発達障害の子どもたちは二次的. のめざす特別支援教育のセンター的機能について. な問題から不適応状態になることも少なくはな. 考えてみる。. い。その場合,特別支援教育分野の専門性と適応. 上記3つのタイプのうち宮城教育大学特別支援. 87.
(9) 北村 博幸・五十嵐靖夫・細谷 一博. 教育総合研究センターの「地域支援型」が参考に. 必要な機構と研修システムのあり方一総合性・地域性 の下で養護学校の教育課程はどうあるべきか−.文部. なると考える。 まず,支援地域を明確にする必要があるが,実 効性のともなう圏域という視点から考えると,「道 南地域」と設定してよいのではないだろうか。. 次に,果たす機能としては,やはり3つの大学 附属の特別支援教育研究センターに共通してい た,専門性の向上・発展の機能「研修事業」「情 報発信事業」「実践研究事業」と,地域の専門機 関の機能「教育相談事業」「支援事業」をあげて. 科学省教育開発学校3年次報告書. 前川久男(2009):特別支援教育体制における盲・聾・ 養護学校のセンター的機能の確立・発展に関する研究. 科学研究費補助金研究成果報告書.1−6. 宮城教育大学特別支援教育総合研究センター(2010): 宮城教育大学特別支援教育総合研究センター活動記録. 宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要. 5,75−115.. 文部科学省(2003):今後の特別支援教育のあり方につ いて(最終報告). 村中智彦(2009):特別支援教育実践研究センターにお. よいのではないだろうか。. ける研究事例.上越教育大学大学院修士課程特別支援. また,これらの具体的な事業を展開していく際 には,上越教育大学の特徴であった学生指導にセ ンターの「支援事業」を活用するという点が参考. 教育コース教員養成・研修システム.101−103. 中田正敏(2003):盲・聾・養護学校地域支援担当教員 の養成システムヘの視点.養護学校の教育と展望.129, 13−16.. になると考える。加えて,筑波大学の特徴であっ. 小野絵里香・村中智彦(2010):知的障害の重い自閉症. たセンターと附属特別支援学校と有機的に連携し. 児の歯磨き行動を促す回数ライトと電動歯ブラシ.上. て事業を推進していくという点も参考になると考. 越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要.16, 39−41.. える。. 今後,北海道教育大学函館校がセンター的機能 を果たしていく際に,物理的に独立したセンター を作ることは現時点では現実的ではない。しかし, 限られたスタッフではあるものの,道南地域にお. 斎藤一雄(2010):リズムに合わせて足踏みするための 自作曲「ひだりあしドン」.上越教育大学特別支援教育 実践研究センター紀要.16,47−48. 斎藤佐和(2004a):筑波大学の取り組み一特別支援教育 研究センター(仮称)の構想−.養護学校の教育と展望. 132,13−16.. いて,実効性のある事業を展開することを通して,. 機能を発揮することは十分に可能であると考え. 斎藤佐和(2004b):筑波大学特別支援教育研究センター の設置と聴覚障害教育.聴覚障害.639,29−33 関根一美(2010):表現の困難な子どもの音楽的な活動. る。. のための教具「打楽器演奏のためのスイッチ」.上越教 育大学特別支援教育実践研究センター紀要.16,43−44.. 謝 辞. 瀬戸口裕二・安部博志・北村博幸・篠原善徳(2002):. 特別支援教育における養護学校の役割一時別支援教育. 本研究の調査にご協力いただきました,宮城教 育大学特別支援教育総合研究センター,上越教育 大学特別支援教育実践研究センター,筑波大学特 別支援教育研究センターのスタッフの皆様に心よ. コーディネーターの役割−.筑波大学学校教育論集.25, 41−50.. 瀬戸口裕二・安部博志・北村博幸(2004a)専門性の向上 一特別支援教育コーディネーター(校内型)養成研修−. 筑波大学附属大塚養護学校支援部研究紀要.1,94−106. 瀬戸口裕二・安部博志・北村博幸(2004b):コーディネー. りお礼申し上げます。. ションの実践一義護学校のセンター的機能−.LD研. 究,13,231−238. 引用文献. 障害科学学会(2009):障害科学会大会報告.第4回,1−4. 筑波大学特別支援教育研究センター(2006):平成17年. 石本悠(2010):集中して絵本を見るための教材・教具「巻 物絵本」.上越教育大学特別支援教育実践研究センター 紀要.16,45−46. 京都市立養護学校(2003):総合性・地域性養護学校に. 88. 度筑波大学特別支援教育センター事業報告.筑波大学 特別支援教育研究.1,61−71..
(10) 特別支援教育における大学の果たすセンター的機能に関する検討. 参考文献 上越教育大学特別支援教育実践研究センター(2010):. 上越教育大学特別支援教育実践研究センターパンフ レット. 上越教育大学特別支援教育実践研究センター(2008): 上越教育大学特別支援教育実践研究センター設立20周 年記念誌. 上越教育大学大学院(2009):上越教育大学大学院修士 課程特別支援教育コース教員養成・研修システム. 宮城教育大学(2010):宮城教育大学大学概要. 宮城教育大学特別支援教育稔合研究センター(2010):. 宮城教育大学特別支援教育総合研究センターパンフ レット.. 筑波大学特別支援教育研究センター(2010):筑波大学 特別支援教育研究センターパンフレット. 筑波大学特別支援教育研究センター(2008):筑波大学 特別支援教育研究センター事業資料集.. (北村 博幸 函館校准教授) (五十嵐靖夫 函館校准教授) (細谷 一博 函館校准教授). 89.
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