子どもを中心としたまちづくり -札幌市児童会館の事例から-
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第61巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.61,No.1. 平成22年8月 August,2010. 子どもを中心としたまちづくり 一札幌市児童会館の事例から−. 亀原めぐみ・古村えり子. 北海道教育大学札幌枚生涯教育研究室. TheCreationofCommunityforChildren. −ACaseStudyofChildCenterinSapporoCity− KAMEHARAMegumiandFURUMURAEriko DepartmentofLifelongEducation,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 すべての小学校区から歩いていける距離にある札幌市の児童会館はすでに地域における子どもの居場所と して定着している。これまでの実践のなかで児童のみならず,まちの中心として大人が子どもと関わる場と しても発展しているのではないだろうか。本論文では,札幌市すべての児童会館・ミニ児童会館を対象とし た郵送調査により,「子どもを中心としたまちづくり」を実践し,そのこと自体が市民教育ともなっている 札幌市児童会館の事例を明らかにする。. はじめに ∼進化する「子どもの居場所」としての児童館 社会教育の現場では地域おける「子どもの居場所」を巡っていつも議論がかわされてきた。. 「ドラえもん」. 世界にでてくる「空き地」のような場所が現在なくなっていることが問題にされるが,大人とのかかわりの 変化も大きい。1960年代はまだ地域に商店や食堂,市場(いちば),町工場(まちこうば)などが存在し,子 どもたちはそこで働く大人たちの間で見守られ,時にはインフォーマルな教育を受けて育っていった。また,. 高学年や中・高生もそうした環境のなかで,地域社会で暮らすルールを身につけていった。地域からこれら が消え,サラリーマン家庭が増える中で,子どもの居場所は学校,家庭のほかは塾や習い事に取って代わら れ,遊びといえばゲームが大きな比重を占めてくる。公園でさえ安全な空間とは必ずしもいえない社会状況 のなかで,子どもの生活圏を把握し,安全で,なおかつ子どもが放課後自由に友達とあそべる空間を意識的 に確保するのは地域の大人の責務であろう。. 1970年代には「親子劇場」「児童文庫」などの活動が市民の手でなされ,働く母親の増加にともない「学. 25.
(3) 亀原めぐみ・古村えり子. 童保育」を自主的に作る動きも活発になった。筆者(古村)は80年代後半から子育てのなかで「おやこ劇場」. 「学童保育」の運営に関わってきたが,熱意のある大人たちの中で子どもたちは居場所を確保し,なかば組 織的な「学校外教育」を受けることができた。1990年代くらいから公園での遊びも専門家あるいは訓練をう けたボランティアのスタッフによって指導される地域も出現した。これらは大人による意識的な「地域の教 育力」再生ともいえる。これらは熱意と経済的余裕のある大人でなければ支えられない活動でもある。. 他方,後述するが,行政による「子どもの居場所」づくりも70年代から徐々にはじまり,その中心が児童 館である。児童館には厚生員がいて子どもを見守るだけでなく,多様な教育的プログラムをもって子どもの 遊びを援助する。近所の公園での遊びも児童館の厚生員が児童を引き連れ子どもの安全を確保しながら実現. している。高学年になっても,児童館に集合してから公園や友達の家に遊びにいくというような習慣もでき つつある。監視でなく,インフォーマルに子どもを見守るための要としても児童館が機能しているのである。 児童館と地域の大人の関わりも進化している。自治体によって関わりは多様である。児童館に通う子ども. の親が運営に関わるところもあれば,親に限らず地域の団体がボランティアとして多様な関わりを持つ児童 館もある。地域で普通に暮らす市民が日常のくらしのなかで児童館を通して子どもに関わることのできる状 況が出現しつつあるのではないか。本論文で紹介する札幌市はその事例である。. 研究目的・方法. 筆者(亀原)はこれまで,家庭科の福祉分野における高校生と高齢者・地域とのかかわりについて,教育 現場での実践を行ってきた。家庭総合,家庭看護・福祉,総合的な学習の時間,あるいは他教科との連携等 においてである。その様々な取り組みにより,高校生が登下校の際に,そこで交流したお年寄りとあいさつ するなどの発展が見られた。 しかしそれは学校の周辺に限られた場面であって,生徒達自身が住んでいる場所での地域交流活動には,. つながっていかなかった。おそらくそれは,交流という形ばかりに目が向けられて,それを通して市民教育 (シティズンシップ)を育む,という段階まで至っていなかったからなのだと思う。. では,交流や取り組みに市民教育を盛り込むには,何が必要なのだろうか。本大学のある札幌市について 調べてみたところ,『市民自治が息づくまちづくり』ということをまちづくりの根本に据え,全市を挙げて の取り組みを行っていることを知った。また札幌市の児童会館でのボランティアを体験したところ,そこで は地域住民,ボランティアなどが自然体で活動し,また中・高枚生が,小学生と当たり前に一緒に遊んでい た。そこで,札幌市の児童館の取り組みを詳しく調べることで,市民教育を育む授業実践に,活かせる何か をつかめるのではないだろうか。. このような仮説をもとに,①ボランティアとして関わることによる参与観察,②厚生員に対するインタ ビュー調査,③郵送によるアンケート調査を実施し,札幌市の児童会館・ミニ児童会館について詳しく調べ ることにした。. 序章 地域の教育力において重要性を増す児童館. 戦後,地域社会の変化や働く既婚女性の増加が「地域の教育力」を失わせるといわれてきたが,それが正 しいかどうかは別として,「カギっ子」対策として児童館が増加したことは結果として「教育力」を増すこ ととなった。. −ご(;.
(4) 子どもを中心としたまちづくり (1)戦後日本の児童館施策の動向. 児童館とは,児童福祉法第40条に定められた児童厚生施設のひとつで,「児童に健全な遊びを与えて,そ の健康を増進し,又は情操を豊かにすることを目的とする施設」1である。全国に4,693か所館(平成16年10 月1日現在2)ある。対象はすべての児童である(この場合児童とは,児童福祉法により満18歳未満である)。 戦後の日本の児童館に対する施策は,次のような流れである。3. 表1.戦後日本の児童館施策の流れ 【第一期 創設期】. S.22年 児童福祉法 S.26年 児童厚生施設運営要綱 戦後の混乱期における,戦災孤児の増加に対する,児童館の啓発と普及の時期。. 〈1947(S.22)年 ∼1959(S.34)年〉. 【第Ⅱ期 発展期】. S.38年 児童館の設置及び運営費に対し,国庫補助 (留守家庭児童固有の対策ではなく,一般児童を対象とした施策として) S.43年 厚生省に育成課の新設 S.43年 全国児童館連絡協議会の結成 高度成長期で増加した「カギっ子対策」への需要が高まり,児童館の整備・拡充が進む。 S.37から児童館設置が増え続ける。. 〈1960(S.35)年 ∼1973(S.48)年〉. 【第Ⅲ期 転換期】. S.53年 新しい型の児童センターの創設 S.61年 運営布交付要綱改変(補助金の抑制) S.63年 大型児童センターの設置 第2次ベビーブーム世代の需要が高まりピークになる。 また,非行化が社会問題となり,中・高生等の年長児童のための施設の要望が高まる。. 〈1974(S.49)年 ∼1989(H.元)年〉】. 【第Ⅳ期 地域福祉展開期】 〈1990(H.2)年∼〉】. H.2年 特殊合計出生率の低下(いわゆる1.57ショック) H.6年 エンゼルプラン発表(少子化対策) H.3年 ミニ児童館の設置が叶能に H.18年 放課後子どもプラン 少子化への対応の必要性が迫られる。(放課後児童対策) 子どもが巻き込まれる凶悪事件の多発や,家庭・地域の教育力の低卜が問題となり, 国や自治体はもとより,企業・職場や地域社会の役割の見直しが図られる。…地域の人々 の参画,交流活動の取り組み. 芋蔓妄≡童童主要蔓書蔓至童童童葺芋蔓葦宣羞皇室雲毒 酷恥醗紬脚腑批恥賢鞋辟許警護轟榔柳談掴. 全国の児童館の設立年月日を見ると,図1のよ 50. t■丑年月日(件■■) 100. 150. 200■ト. うである。. 昭和40年代,50年代と,高度成長期や,第2次 ベビーブームの需要から,. 設置が増加しているこ. とがわかる。昭和60年代はやや減少するものの,. その後も毎年ある程度の設置がされていることか ら,エンゼルプラン後の少子化対策が,児童館設 置に良い影響を与えていることがわかる。 児童館についての全国調査4. ㈲児童健全育成推進財団 所管:厚生労働省機会均等・. 図1.設立年月日. 児童家庭局育成環境課 調査対象:全市区町村,児童館 回収率:市区町村票1,786件(97.7%) 児童館票4,794件(96.3%). 1 児童福祉法(昭和22年12月12日法律第164号) 2 平成16年10月1日現在厚生労働省『社会福祉施設等調査報告』. 3 八重樫牧子,戦後日本の児童館施策の動向−「児童館の設置運営要綱を中心に」−,川崎医療福祉学会誌VOL.9 NO.1,1999 4 平成18年度全国児童館実態調査結果(2006/10/1現在:財団法人 児童健全育成推進財団調査)全国の児童福祉法第40条 「児童厚生施設」に基づく児童館(屋内型児童厚生施設)のすべてを対象. 27.
(5) 亀原めぐみ・古村えり子. (2)児童館の現状と課題. 設置・運勢に関しては,「児童館の設置運営要綱」5に定めがあり,表2のようになる。6設置した時期の状 況が変化して,小型の児童館が手狭になったり,逆にいつもすいていたりというような問題が生じている。 こうしたなかで,地域の状況に適合した運営のあり方が求められ,地域住民の利用促進も課題となる。 表2.児童館の種類 区分. 小型児童館. 児童センター 児童センター 大型児童センター. 大型児童館 A型. B型. C型. 児童厚生員2名以上 児童厚生員2名以上. 職 員. 体力増進指導者 年長児童指導者. 面 積. 設備. 217.6Ⅰポ以上. 336.6Ⅰポ以上. 集会室,遊戯室,図 書室,事務執行に必 要な設備,必要に応. じ,相談室,捜索活. 動室及び静養室等. 500Ⅰポ以上. 左に加え. 2,000Ⅰポ以上. 左に加え. 1,500Ⅰポ以上. 左に加え. 劇場,ギャラリー, 年長児童用の設備 研修室,展示室,多 宿泊室,食堂,浴室, 屋内プール,コン (例えばスタジオ, 目的ホール,ギャラ キャンプ設備 ピュータプレイルー トレーニング室,小 ム,歴史・科学資 ホール等) 料展示室,宿泊研 修室,児童遊園等. 第1章.全国的な動向と現状∼様々な到達点 児童館の機能を整理すると,①利用児童に対する遊びを中心としたサービスの提供,②留守家庭児童等の 健全育成,③児童のための子育てセンターの3つに集約される。. 近年はこれらの児童館機能に加え,親子教室の開催,子育て情報の提供,子育てについての相談事業,青 少年のボランティア養成,さらには不登校児童・生徒や中・高生の居場所として,より多くの機能が求めら れてきている。また,対象を児童に限ることなく,その親に対処するための相談員としてのソーシャルワー カーとしての力量形成も求められてきており,そのための資格や研修の充足も望まれてきている。 さらに,子どもにとって魅力ある事業を展開するためには,地域住民を加えた運営委員会の設置や子ども の意見を傾聴する仕組み作りが進められている。この考え方を取り入れて先導的に建設・運営されてきてい るのが「杉並区児童青少年センター(ゆう杉並)」,「町田市子どもセンター(ばあん)」,「桜橋コミュニティ センター」(東京・墨田区,運営は社会福祉法人)などである。また,「赤坂子ども中高生プラザ(プラザ赤 坂なんで∼も)」(東京・港区,運営は社会福祉法人,廃校舎活用),NPO法人による「子ども交流センター」 ≪「ゆう杉並」事業係・片山さんのお話≫ 電話でのインタビュー調査(平成21年‖月10日実施) 杉並区には41舘の児童館があり,中・高生の受け入れもしていた。しかし既存の建物だけでは,施設・設備の面で+ 分な受け入れが難しくなり,中・高生のための建物が望まれた。自分たちのやりたいことをできる施設の要望。 平日は15時過ぎから集まり始め,土日は朝から来館している。19時以降,団体を組んだりして活動をすることが多い(19 暗からは自由利用になるため)。利用の仕方は千差万別で,一人でいる子も,グループで来る子も,ここに来て仲良くなっ て遊ぶ子も,また勉強,読書,苦楽,スポーツなど過ごし方も様々。文化祭などの学校行事の準備で利用する場合もある。 全体で何かやるということはないが,運営委員会があり,意見をまとめたり広報などを行っている(HPに詳しく載って いる)。41館のうち7館に,運営委員会がある。 地域の人の利用はあるが,中・高生と一緒に何かというかたちでなく,むしろ午前中の空いている時間に施設を利用 する(有料)。中・高生の活動を,ということで,そういった住民の会館に対する意識はない。. 5 児童館の設置運営要綱,厚生事務次官通知(平・2・8・7発児123号) 6 停馬淳一郎,今日の児童福祉における児童館機能の再検討−「子育て支援」の視点から−,北星学園大学大学院論集10, 63−74,20070300. ?8.
(6) 子どもを中心としたまちづくり. (東京・大田区,廃校舎活用)などがある。. 他方,児童・生徒数の減少にともなって,学校の余裕教室や統廃合校舎が増えてきており,これを活用し ようという動きも目立ってきている。7 次に,全国調査をもとに児童館の現状について述べたい。. 8. 児童館や児童センターの設置の有無については,「設置あり」が60.0%,「設置なし」が40.0%であり,6. 割の自治体が児童館または児童センターを設置している。設置運営形態については,「公設公営」が65.2% と最も多く,次いで「公設民営」が28.0%,「民設民営」が2.8%であり,児童館の6割以上が公設公営となっ ている(図2)。 児童館で取り組まれている活動内容(複数回答)については,「児童(′ト学生)の集団及び個別指導」が85.6%, 「/ト学校就業前児童の親子を対象とした活動」が66.9%,「子育てに関する相談等の子育て支援活動」が60.4%, 「母親クラブ,子ども会等の地域組織活動の育成」が44.6%,「中学生・高校生の自主的な活動に対する支援」 が38.8%,「保育所代替機能」が,6.2%「その他」が7.3%となっている(図3)。. 児童館と協力関係にある関係機関等として,学校・教育機関を挙げた児童館は85.1%,保育所が55.5%, ボランティアが41.0%,警察署が33.8%,保険所・医療機関が33.6%,消防署が30.1%,幼稚園が26.9%, 福祉事務所が26.0%,児童相談所が22.7%,その他が18.6%,協力なしが1.6%である。ほとんどの児童館 で関係機関等と協力しており,特に学校・教育機関と協力している児童館の割合は高い(図4)。 「交流活動の実施状況」(複数回答)については,「異年齢児との交流・ふれあい活動」が71.8%,「子ど もと高齢者との交流・ふれあい活動」47.2%,「乳幼児と中・高生の交流・ふれあい活動」が12.4%,「その 他」が8.1%,「実施なし」が11.1%となっている(図5)。. O. 18. 20. 30. 敗t5■書輝!■ ●8 50 00. 三■tt■におけるI放りI■みり■廿t■l書〉. 0. 70. 20. ■0. 00. 80 10q. 児暮(小事生)の■l弔及び1■別 事■]■. 公設公て■. 小事穣一l事1町1t】■の■l子を対1■ とした責■l 子▼てにl町ナーも一書聯■の千l■て. 公役昆暮. 文士■意t8. 月‖■クラブ、子ども!■■の廻■ l■l■清一の★虞. 畏敬氏暮. 中・コ■生の白玉的な!喜一lこ対す ,も貴書t. 優I■斬代●■¶!. モの他. その他 九】司苔. ,■liI讐. 図2.設置運営形態 0. 児1■lとIlt■l●■■とのti力状況 20 ■0. 図3.児童館における取り組み 00. 80. 1(〉○. ヽ. 肇1険・書■‖■ll. 優★所 ボランティ丁 ■l■」■. 倶1■断・薗1暮l■l1 5■肪■ 錮‖■■I. 事■杜事】事所 児t相■斯 ti力なし. モの†也 1■匡l書. 図4.関係機関との協力 7 社会教育・生涯学習ハンドブック,社会教育推進全国協議会編,エイデル研究所,2005 8 平成18年度全国児童館実態調査結果(2006/10/1現在:財団法人 児童健全育成推進財団調査)全国の児童福祉法第40条「児 童厚生施設」に基づく児童館(屋内型児童厚生施設)のすべてを対象. 29.
(7) 亀原めぐみ・古村えり子. 第2章.札幌市の児童館への取り組み 札幌市は児童が歩いていける距離にすべて児童館を設置している。しかも館長は館長試験を突破した専門. 的な職員を配置しており全国的にみても地域を網羅しているという点で先進的といえる。. (1)札幌市の状況. 札幌市の小学校の児童数は,昭和58年(1983年度)の約14万人をピークに,減少の一途をたどっている。 合計特殊出生率も,全国1.32に対し,1.03(平成18・2006年)と大きく下回っている。少子化問題を,重要 課題の一つとして位置付け,取り組んでいる。9. 札幌市では,急速な少子化の進行を受けて,「子どもを生み育てやすいまちさっぼろ」を目指すため,「子 どもを安心して育てること(子育て)」,「子どもが豊かに育つこと(子育ち)」を総合的に支援する5か年計 画の策定作業を現在進めている。. 「児童会館・ミニ児童会館」そのものが,市の局である「子ども未来局」の事業であり,運営自体は外郭 団体である㈲青少年女性協会に委託(2009年現在)しているが,方針は市政に沿ってなされている。. 児童会館などの事業内容をより良くするための取り組みとして,学校や地域との連携強化を図っている。 市長の「市民が主役のまちづくり」方針とともに,地域住民の参画やボランティアの受け入れなどとも積極 的に進められている。 表3.札幌市の子育て支援関連施策(2004年∼現在・関係分) 平成16(2004)年度∼ 平成21(2009)年度. 「札幌市次世代育成支援対策推進行動計画」−さっぽろ子ども未来プランー(前期計画). 地域での子育て支援(小学校区に1か所の子育てサロン),各区に子育て支援セン ターの設置,全市単位としての札幌市子育て支援総合センターの設置. 平成19(2007)年度∼ 平成22(2010)年度. 「第2次札幌新まちづくり計画」. 子どもを生み育てやすい環境づくりと,未来を担う子どもが健やかに育つ環境の充 実。. 平成20(2008)年度∼ 平成22(2010)年度. 「札幌市放課後子どもプラン」 国の「放課後子どもプラン」の考えに基づき,札幌市における子どもたちの放課後 の居場所づくりについての,総合的な放課後対策として,子ども未来局と教育委員会 が連携して,小学校のすべての子どもたちが安全で安心に放課後などを過ごすための 「ヰL幌市放課後子どもプラン」を策定している。(平成20年度から平成22年度までの 3年間). 『すべての子どもたちが安全で安心に過ごすことができる放課後の居場所づくり』を 基本理念に,児童会館やミニ児童会館での事業を基本として,放課後などの居場所を. 増やす。また事業内容の充実を図る。このプランに基づき,小学校区に一児童館を目 指し整備が進められている。 平成22(2010)年度∼. 「札幌市次世代育成支援対策推進行動計画」−さっぽろ子ども未来プランー(後期計画). 平成26(2014)年度 基本目標1子どもの最善の利益を実現する社会づくり 基本目標2安心・安全な母子保健医療のしくみづくり 基本目標3働きながら子育てできる社会づくり 基本目標4すべての家庭の子育てを支援するしくみづくり 基本目標5特別な配慮を要する子どもを支えるしくみづくり 基本目標6子どもが豊かに育つ環境づくり 基本目標7子どもと子育て家庭が暮らしやすいまちづくり. 9 札幌市役所公式ホームページ http://www.city.sapporo.jp/city/. 30.
(8) 子どもを中心としたまちづくり. また,子ども達が自主的に意見を発表する機会を増やすための子ども運営委員会を設置し,子ども自身の 地域への愛着や市民自治に関する関心を育む取り組みも実施している。. これらのことから札幌市は,政令指定都市の中でも自治体として児童館事業に重点をおいている。その意 味でも先進地といえる。. ※札幌巾では児童館に「児童会館」という名称を使用している。. (2)札幌市の児童会館・ミニ児童会席亭業. 札幌市の児童館の歴史は古く,昭和24年7月「中島児童会館」が開館した。設立数を年代別に見ると,図. 6のようである。児童会館以外に,平成3年から学校の空き教室などを利用した「ミニ児童会館」の設置も 可能となった事もあり,最近はその整備が進められている。. 平成7年∼ 昭和60年∼平成6年 昭和50年代 昭和40年代 昭和30年代 昭和20年代 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 館の数. 図6.札幌市児童会館の年代別設立数(平成21年10月1日現在)10 (児童会館のみ n=104 nは総数). 現在,札幌市の児童会館・ミニ児童会館事業11は,次のように展開している。 児童会館・ミニ児童会館は,遊びを通して健康を増進し情操を豊かにするために設置している施設で, 子ども達の校外(放課後)生活を豊かにし,異年齢集団での遊びを通して,地域における子どもの交流を より一層深めることを目的としている。 対象は,高校生までの子ども(児童福祉法では満18歳未満を児童)が自由に利用できる。学校で授業の ある子どもは一度帰宅してからの利用。就学前の子どもは,保護者の方と一緒に遊んだり,子育てサーク ルの活動の場としても利用できる。 また児童クラブとして,留守家庭となる児童(′ト1∼′ト3対象。障害のある児童は′ト6まで。)の受け 入れを,保護者と連携しながら実施している。 【開館日時】月から土曜日 8時45分∼1郎寺00分(ミニ児童会館は,授業のある日は下校時∼1郎寺00分) 【休館日】日曜日,祝日,振替休日,年末年始(12月29日∼翌年1月3日) 【利用料】無料。ただし,行事参加の場合,材料費などの実費が必要となる場合あり。 【施設数】児童会館104館,ミニ児童会館55館 【活動内容】・自主活動・クラブ・サークル活動・保護者の方などと共に参加できる各種つどいを通し, 世代相互間の交流。(親子工作会,・野外活動・合同行事・子育て支援事業(児童会館のみ). 10 児童館住所録,財団法人 北海道青少年育成協会 11札幌市役所公式ホームページ http://www.city.sapporo.jp/city/. 31.
(9) 亀原めぐみ・古村えり子. 第3章.札幌市の児童会館の調査・集計と分析 札幌市は「札幌市放課後子どもプラン」のもと,「すべての子どもたちが安全で安心に過ごすことができ る放課後の居場所づくり」として,児童会館やミニ児童会館の事業を基本に,学校や地域との連携を推進す る取り組みを行なっている。/ト学校区に一児童会館を目指し整備が進められている。「市民が主役のまちづ くり」方針とともに,地域住民の参画やボランティアの受け入れなど,地域との連携が図られている。. このように札幌市は,政令指定都市の中でも自治体として児童会館に重点をおいている。 これらのことから,札幌市の児童会館の取り組みについて詳しく調べることで,まちづくりとは何かが, わかるのではないだろうか。市民教育を育む授業実践に,活かせる何かをつかめるのではないだろうか。そ のように考え,札幌市の児童会館を中心に,児童館の研究に取り組むことにした。 1調査目的:札幌市児童館の現状と取り組みを知る。 2調査方法:質問紙郵送方法 3調査対象:札幌市内の児童会館・ミニ児童会館全館 4調査期間:2009/9/11∼9/30 5調査項目:児童会館の様子/学校・地域とのかかわり/ 子育て支援としての取り組み/今後の取り組み等 6回答数:115(児童会館70・ミニ児童会館45). 【調査結果】 ≪常勤の職員数≫. 会館の規模により,職員数にやや開きがある。2人 が最も多く48%,次いで3人が34%であった。常勤職 員以外に,非常勤職員などの配置もある。「ブロック. 7回収率:74%. 単位で依頼して勤務数名」,「必要に応じて派遣指導員. 8有効回答率:98%. を要請」,「+α」との記述もあり,常勤以外の職員や. 9分析方法:MicrosoftOffice Exce12007による単純集計. 図7.常勤の職員数 (n=115 nは回答稔数・以下同様). ボランティアなどのスタッフ等で構成されている。. 図8.来館者数 (n=107). ≪来飽者数≫. 会館によって利用者数は差がある(559∼3378人/4月一か月の調査)。長期休業や会館休業日(お盆,お 正月等)に多少左右される。 冬期に減ると答えたのは全体の60%であった。児童会館とミニ児童会館との比較では,ミニ児童会館の方 が,減り方が小さい。ミニ児童会館は小学校内にあり,環境的に来やすいからではないかと思われる。 取り巻く自然環境,地域の状況は,会館によって差がある。それは札幌市自体が広く,官公庁の集まって いる中心部から山間部まで範囲が広いことと関係していると思われる。その違いによる,地域とのつながり 方の違いにも差があることがわかった。 全体としては,住宅街に位置する会館が多いことが分かる(87%)。遊べる公園も「整備されている」(83%), 「ゲームセンター,パチンコ店,繁華街に近い」というほか,「子どもの溜り場になっているコンビニがある」 (10%)もあり,子どもを取り巻く状況はすべて良いとは言えないが,「比較的静かで落ち着いている」(50%) と多い。 「町内会とのつながりがある」のは65%と高く,存在するだけでなく互いのつながりがあるということが,. 32.
(10) 子どもを中心としたまちづくり. 注目すべき点である。そして,老人会・老人クラブ,福祉施設等も近くにある会館が多い。つまり,人の集 まる環境に児童会館も位置しているということであろう。そのことから,児童館は人のつながりの拠点になっ ている場所であることがわかる。. ク)積雪が比較的少ない キ)積雪が多い. カ)交通量の多い道路がある オ)交通量の少ない道路がある. 0. カー戸建てが多く建っている シ)高齢者の福祉施設がある ナ)老人会や老人クラブがある コ)町内会とのつながりがある. め賑やかな商店街がある ク〉比較的静かで落ち着いている. カ山が近い ケ)森林がある. イ)遊べる河原がある ア)公開が近くにある. キ)子どもの溜り場のコンヒ’=がある. 抑繁華街に近い カバチンコ店がある ⇒ゲームセンターがある の高校が歩いて行ける甜にある 欄工業地域である カ住宅街である. 17. 0. 20. 40 % 60. 57. y)アパートが多く建っている セ)マンションが多く建っている. 8さ. 80. 100. 図9.周辺の白然環境 (n=109). 20. 40. 00 %. 図10.周辺の地域の状況 (n=110). ≪子ども達の様子≫ 「一人遊びより集団遊びが好きな子」が多く(58%),「学年を越えた交流が活発である」(64%)という,. 児童館ならではの特徴が活かされている。「取り組みをしてきた成果があり,増えた」との記述もあり,子 ども達をその環境にただ置くばかりでなく,指導も必要であり,また効果の出るものだとわかる。 また,「学校の先生に言えないことを職員に話す」(28%),「親に言えないことを,職員に話す」(24%). とあり,家や学校とは違う,安心して話せる,また相談できる大人のいる場所になっていることがわかる。 それは児童館が子どもにとって,良い役割を担っているといえる。. 記述部分より. タ)親に言えないことを職員に話す ソ)家でのことなどを話す. ・自分のことを話す(気持ちだった. セ)先生に言えない事を職員に話す. り,休み中の出来事だったり)。. 力学校の友達のことを話す. ・「先生聞いて」という児童が多. シ)学校の先生のことを話す サ)学校の出来事を話す. くいる。. コ)学年ごとに遊ぶこと多がい. ・取り組みをしてきた成果あり,. 力学年を越えた交流が活発. 最近は集団遊びが増えた。. ク)一人遊びより集団遊び好き多い キ)集団遊びより一人遊び好き多い カ)全体的に活発な子が多い. カ全体的におとなしい子が多い. ・年々,自分勝手な子どもが増え. エ)思っている事をハ沖り言えない多. ている気がする。. サ)明るい. ・他館と比べると落ち着いている. イ)人見知りする子が多い ア)人なっっこい. が,個々に問題を抱えている子 0. 20. 40. 80. は多い。. %. 図‖.来館する子ども達の様子 (n=115) 児童会館・ミニ児童会館の,学校とは違う良さについての質問に対して,「カリキュラム等にとらわれない」. (44%)であった。学校のようなカリキュラムはないが,運営内容は市全体で統一されたものである。これ は,子どもがどの会館に行っても,同じようなサービスが受けられるというメリットである。札幌市が一つ の事業者にまとめて委託していることによる,大きな利点である。 「学年を越えた交流ができる」のは84%と高く,これは児童館の大きな特徴といえる。「思いやりが育つ」. 33.
(11) 亀原めぐみ・古村えり子. (32%)は意外に低く,学年を超えた交流だけでは育ちにくく,働きかけも必要ということなのであろう。. 「子どもが学校とは違う面を見せられる」のは82%と高かった。またプラスの面ばかりを思い浮かべがち だが,「家や学校で見せる顔(良い顔)と違う本来の姿を見せる場。」ともあり,職員が子どもへの対応に苦慮. している面もあるのではないだろうか。学校のような評価がないため,対応が難しい面もあるだろう。職員 の指導力だけでなく,職員間の指導方針や意思統一でこれに対処していると思われる。 「いろんな遊びを覚えられる」のは67%で,記述からも,遊びから様々な事を学べる児童館の良さがわか る。. カ)ボランティアや地域の大人との交流. わいろんな遊びを覚えられる カ子ども学校と違う面見せられる ウ)思いやりが育つ. イ)学年を越えた交流ができる ア)カリキュラム等にとらわれない. 0 20 40% 60 80 100. 図12.児童館の,小学校とは違う良さとは (n=115). 記述部分 より ・「おもいっきり」遊べる。 ・自分たちで考え,工夫して遊ぶことができる。. ・子どもたちの自発的な活動ができる。 ・枠はあるが,自由な発想でしたいことを具現化できるところ。. ・遊びを通して様々な事を学ぶことができる。 ・遊びを通した人間関係の構築。 ・遊びを通して,社会ルールを学べる。子どもにとって社会への第1歩となる入口。. ・遊びを核として仲間を作れる。基本的生活習慣が身につく。 ・協調性,忍耐力,初めての体験の場。 ・先輩,後輩のつきあい方。 ・友達との交流内容や成長がわかり,課題が出た場合には,保護者や学校に連絡して,成長の手助けや見守りをしやすい。 ・(幼児∼中高生になるまでと)長い目で,一人の子どもの成長を見ることができる。 ・校則に縛られることなく,多少学校のルールからはずれた子も受け入れることができる。. ・健常児と障害児の関わり。 ・学校も色々な事をしていると思う。 ・学年を越えた交流ができるは,学校でもある。 ・家や学校で見せる顔(良い顔)と遣う本来の姿を見せる場。. 来館する中・高生は,自由来館としてスポーツや音楽活動,友達との会話等で過ごすばかりでなく,会館 の行事に積極的に関わり参加していることがわかった。「夜間利用ふり∼たいむの開始で,5∼6年前,小 学生の頃に利用していた高校生が戻ってきました。」とあるように,中・高生の居場所の確保という面で, 児童会館はとても大きな役割を果たしている。. また「/ト学生の中に高校生も混ざって過ごすという日が多くありました。時には一緒に体育室やゲームで 遊んでくれたり,ちょっとびくびくしながらも高校生とお話ししてみたり,図書室で一緒にマンガを読んだ り。」このように,小学生にとっても中・高生にとっても,お互いを気遣うやさしさが生まれてくる。. 34.
(12) 子どもを中心としたまちづくり. 「/ト学生に楽しんでもらおうと企画した高校生。」「お泊まり会では,高校生や児童会館OBスタッフの活. 躍も」などのように,企画・運営側にも中・高校は役立っている。そのように育てていこうという姿勢が職 員側にもある。. 図14.高校生の来館数 (n=63) 図13.中学生の来館数 (n=70) ≪学校との連携≫. 学校との関係は,様々な場面において密であることがわかった。入学式(92%),卒業式(89%),運動会 (95%),行事の参観(78%)のような学校行事に限らず,「子ども状況を知りたい時」(84%),「知らせた い時」(83%),「問題がおこった時」(82%)など,連携をとっていることがわかった。. 特にミニ児童会館では,「日常的に職員室へ行く。」「連絡日誌を朝職員室までとりに行き夕方届ける。」「日 常的に連絡をとりあい学校とミニ児が共通理解をもとに子どもや保護者への対応をするようにしている。」 など,お互いが常に連絡を取り合い,子どもに対して同じ情報を持ちながら指導にあたっている様子がわか る。. 児童会館においても,学校説明会やPTA主催行事,学校評議員会等で関わりを持っている。子ども達を 健全に育てるためには,多くの視点から,常に連携を取っていくことが大切である。学校にとっても児童会 館にとっても,お互い補足し合いながら,子どもに対してより良い対応ができるということである。. め広報やお知らせ等を持参する時. 93. ク)子どもに問題がおこった時. 82. キ)子どもの状況を知らせたい時. 83. カ)子どもの状況盈知りたい時. わ卒業式 ⇒入学式. 89. 92. り)行事の参観. 78. イ)授業参観. 46. ア)学校の運動会. 96. 0. 20. 40. 60. 80. 図16.中学生の学校としての来館(n=34)12. 100 %. 図15.小学校との連携・交流 (n=114) 中学生の学校としての来館は,「職場体験・インターンシップ」(56%)で高く,「ボランティア活動」(26%). でも来館している。「あかちゃんひろばを見学に来た中学生が,あかちゃんを抱かせてもらい,ぬくもりを 実感」という記述などもある。 高校生の学校としての来館は,数は少ないものの,「ボランティア活動」(27%),「職場体験・インターン. シップ」(27%)と,高校行事の一環として来館する生徒もいる。地域の高校との交流として,「会館での行 事の参加」(50%)や,「部活動への参加・交流」(11%),「高校の文化祭への参加」(6%)もあり,今後に. 12 中・高生の学校としての来館数が少ないが,実際少ないのか数えていないのかは明らかでない。(図16.17). 35.
(13) 亀原めぐみ・古村えり子. 期待したい。. ケ)子どもたちと、遊ぶ ク)子どもたちへ、遊びを教える キ)技術的な事を教える カ子どもたちヘスホ●−ブを教える. カ子どもたちへ、勉強を教える エ)全館での行事への高校生の参加 ウ)部活動への参加・交流. 図17.高校生の学校としての来館 (n=11). 小高校の行事への参加 乃高校の文化祭への参加. 図18.地域の高校との交流 (n=18) 記述部分より。独自な(あるいは特徴的な)取り組みについて。 ・地域とのかかわりは年に数回,機会を設けていますが,中学,高校とは,これからかかわりを作っていく段階です。 ・バザー,老人ホーム訪問,幼稚園との交流,音楽会の開催,学校のPTA活動との連携。 ・小学校に設置されているため,行事も連動されている。土曜参観日,集団下校訓練など。 ・PTAとタイアップした校内のお祭り的な行事(真栄フェスタ)。 ・地域のお宝企画委員会に参加。町内会,学校,大学生,商店街と協力して,宝を発掘,共有。. ≪地域とのかかわり≫ 会館を利用する,地域の団体は全体としては,「はい」が64%であった。 「近隣のスポーツサークル」(70%)と高く,次いで「町内会・自治会」(47%)であった。. 町内会・自治会の利用場所になっている点は,注目すべきである。児童の活動時間と重ならない時間帯の 利用であるが,普段から会館を利用しているということは,大人にとっても垣根の低く来やすい場所である ということである。それゆえ,会館の行事などにも参加しやすい状況にあるといえる。. ケ〉雪かき ク)赤ちやんと遊ぶ(子育てサル等) キ)料】整数重. 力)花を植える・花壇づくり オ)会館の清掃 工)畑づくり ク)伝承遊び イ)読み聞かせ ア)子どもとの日常遊び. 0. 図19.児童会館を利用する地域の団体 (11=74). 20 40 % 60 80 100. 図20.来館する地域の人 (n=100). 児童会館は三世代交流の場であるほか,大人に とっての居場所にもなっている。「地域の祭りで 交流」(70%),「地域の清掃活動参加」(37%),「防. 犯の連携」(13%)など,児童会館は地域を構成 している要素の橋渡し的な役割をも担っているこ とがわかった。なおミニ児童会館は,近年整備さ 図21.近隣町内会・自治会との交流 (n=79). れつつある施設なので,地域との連携は確立途上 といえる。. 36.
(14) 子どもを中心としたまちづくり. ≪子育て支援として≫. 会館主催(『子育てサロン』72%)の他,子育て支援NPO法人等の活動の場にもなっている。いじめや 虐待への対応もすばやく適切である(『いじめや虐待に気づく』60%)。調査の数字からは,子育て支援は求 めればとても多くあるということがわかった。行けば職員や来館者,ボランティア等が必ずいる安心感や, そのことで得られる帰属感は,子育て中の,特に知り合いの少ない親にとっては,とても重要なことである。. 親子行事も多く開催されている。親子のつながりだけでなく,親同士の交流が自然に育まれている。長期 休暇中などは父親の参加もあり(64%),そういう場の碇供は児童館ならではのものである。. 図22.子育て支援「あかちゃんひろば」. 記述部分より。いじめ・虐待への対応。 ・学校に,連絡,確認。教師(担任,教頭,総務)との話し合い。 ・学校との話し合い,本人への聞き取り場合によっては保護者や関係する子とも話し合う。. 虐待への場合は義務がある。児童相談所へ通報しつつ児童の様子をしっかりみていく。ただしこれらについてはケー スバイケース。 ・来館した時の様子や,体調(キズ,アザの有無)を確認し,どのようなことがあったか話せるように,気持ちを落ち着. かせて対応する。 ・本人に話を聞きだすようにアプローチします。素直に話をしてくれる場合でも状況等を整理するために周囲にもいじ め,虐待の事実を調査します。その後,関係機関と連絡をとり,状況の改善につとめていきます。 ・「何か悩んでいることはない?」ときいて,その子の話をじっくり聞く。対処の時期が早ければ早いほど,解決も早 いので,気づいた時は早めに聞く。 その子を含めたグループ活動,集団遊びを積極的に行う。 ・親から相談を受けることが多い(いじめについて)。 ・いじめになる前くらいの,からかいについて報告を受けることがある。. ・現時点ではないと思われます。 ・虐待,いじめがない学校なのか,被害にあった子は児童会館に来ていないのかとも思います。. 終章.まとめ・考察 調査の結果から,札幌市の児童会館・ミニ児童会館が,地域における独自の地位の確立し,子どもを中心 としたまちづくりにおける重要な役割を実現しつつあることが,明らかになった。 会館に集まるのは子ども達だけでない。町内会の打ち合わせ,子育て中親子のサロン,近隣のスポーツサー クル等々の活動場所として機能している。また会館で遊ぶ子ども達のために,ボランティア,地域の高齢者, 中・高生,大学生,地域企業など,様々な人々がかかわっている。このように児童館は,子ども達だけでな く大人にとっても,自分を活かすことのできる,地域での居場所なのである。将来的に小学校区に一館の児 童会館・ミニ児童会館が整備されれば,ますます,まちの中心的存在になっていくであろう。. 37.
(15) 亀原めぐみ・古村えり子. 図23.子どもを取り巻く相関図. 子育ては親だけがするものではなく,子どもを育てるのはすべての大人の使命と考える。地域として子ど もの成長を多角的に見守ることができるということは,子どもにとっても安心して健やかに育つことができ る環境なのである。そしてそのような環境の中で育った子ども達は,自らも,地域づくり,まちづくりに参 加していく大人になるに違いないと確信した。. 総合的な学習の時間を利用して来館した中学生と,児童会館での赤ちゃんとのふれあいのように,児童館 は学校の中だけではできない体験ができる貴重な場となっている。学校側から児童館へもっと働きかけ,児 童館を通して地域とつながりを持つことで,学校単独で行う以上の効果が期待できる。ぜひ人の集う児童館 の特質を活用したい。. 調査を通じて,まちに出かけかかわりを持たせるだけでなく,地域社会の一員であることを意識させるこ とが必要であることがわかった。やってもらうだけではなく,自ら進んで参加すること,そこから生まれる 郷土愛こそに,市民教育の本質がある。. おわりに ∼日常生活のなかで子どもたちとかかわれるまちへ 札幌市の児童会館はまだまだ進化していくであろう。調査の結果をみても地域住民との関わりは一様では ない。児童館によって地域の大人のかかわりもまだ落差かある。しかし,とくに一つの児童会館だけが傑出 しているというのではない。熱心な市民がまちづくりを子ども視点から実践している事例は他の自治体にも ある。13札幌市の事例が優れているのは大人が日常生活のなかで気軽に子どもとかかわれるところにある。. 13 池本美香『子どもの放課後を考える』(勤草書房1999年)ではNPOによる「子ども視点からのまちづくり」が紹介されて いる。. 38.
(16) 子どもを中心としたまちづくり. 活動参加への敷居が低いのである。1960年代までのように大人の仕事場に子どもがいることが普通であった 時代には戻れないとしても,気軽に市民が児童館に集うことによって,日常生活の延長線上に子どもとの関 わりが可能となる。大人だけでなく,中・高生にとってもこのような場に集うことにより学校では学べない 生きた地域社会を実感できる場である。彼らは小学生の頃に通った児童館にまた集うことにより今度は一段 進んだ立場で子どもたちに接することができる。異年齢手段の持つ教育力の回復も展望できる。これらはか. って地域社会が持っていた,地域社会で暮らすルールを教育する機能,生きた市民教育を再生する一つの可 能性でもある。. 活発な活動が展開されている児童館においては子ども育成会や元気な町内会の役割が欠かせないであろ. う。本報告では施設としての児童会館・ミニ児童会館に焦点をあてたが,その活動を支える地域における諸 団体の分析はこれからの課題である。. 本論文作成にあたっては,札幌市あいの里児童会館古野由美子館長を始めとして多くの方々にご教示いた だきました。この場を借りて感謝を申し上げます。. (亀原めぐみ 札幌佼大学院生) (古村えり子 札幌校教授). 39.
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