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日本語のアクセント学習におけるF0のバリエーションの効果 ―中国語母語話者を対象として―

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Academic year: 2021

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日本語のアクセント学習におけるF0のバリエーショ

ンの効果 ―中国語母語話者を対象として―

著者

Sirikanerat Thanasak

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

国博第190号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00121808

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論 文 内 容 要 旨

日 本 語 の ア ク セ ン ト 学 習 に お け る F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン

の 効 果

― 中 国 語 母 語 話 者 を 対 象 と し て ―

東 北 大 学 大 学 院 国 際 文 化 研 究 科

国 際 文 化 交 流 論 専 攻

シ リ カ ネ ラ ッ ト タ ナ サ ッ ク

指 導 教 員 菅 谷 奈 津 恵 准 教 授 , 吉 本 啓 教 授 ,

北 原 良 夫 教 授 , 中 村 渉 准 教 授

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1

日 本 語 の ア ク セ ン ト 学 習 に お け る F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン

の 効 果

― 中 国 語 母 語 話 者 を 対 象 と し て ―

国 際 文 化 交 流 論 専 攻 ( 異 文 化 間 教 育 論 講 座 ) B 4 K D 1 0 1 2 シ リ カ ネ ラ ッ ト タ ナ サ ッ ク

1 は じ め に

日 本 語 の ア ク セ ン ト は 中 国 語 の 声 調 ほ ど , 弁 別 力 が 高 く な い が , ア ク セ ン ト 型 を 間 違 え る と , 母 語 話 者 に よ る 単 語 認 識 が 難 し く な り , 間 違 え て 認 識 さ れ る 場 合 が あ る こ と が 指 摘 さ れ て い る ( M a s u d a - K a t s u s e , 2 0 0 6 ; M i n e m a t s u & H i r o s e , 1 9 9 5 ) 。 こ の よ う に , ア ク セ ン ト 習 得 は 重 要 で あ り , 日 本 語 教 育 に お い て , ア ク セ ン ト も 重 要 な 学 習 項 目 の 1 つ で あ る と 考 え る 。 し か し , 日 本 語 学 習 者 に と っ て , そ れ ぞ れ の 語 の ア ク セ ン ト 型 を 覚 え て , 正 確 に 発 音 す る こ と は 容 易 で は な い 。 こ の よ う に , 学 習 者 が よ り 効 果 的 に ア ク セ ン ト 型 を 覚 え ら れ る 教 授 法 は , 日 本 語 教 育 で 重 要 な 課 題 で あ る 。 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン が あ る 音 声 ( 様 々 な 速 さ , ピ ッ チ , 話 者 な ど で 発 音 さ れ た 音 声 ) で 単 語 を 学 習 す る と , よ り 覚 え や す く な る と の 報 告 が あ る ( B a r c r o f t & S o m m e r s , 2 0 0 5 , 2 0 1 4 a ; S o m m e r s & B a r c r o f t , 2 0 0 7 ) 。 さ ら に , 語 彙 学 習 を 検 証 し た 実 験 で は , 分 節 音 ( 子 音 と 母 音 の 組 み 合 わ せ ) の 学 習 だ け で な く , 超 分 節 音 で あ る 中 国 語 の 声 調 学 習 に も 効 果 が 見 ら れ た と の 報 告 も あ る ( P e r r a c h i o n e , L e e , H a & W o n g , 2 0 1 1 ) 。 し た が っ て , 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン が あ る 音 声 で ア ク セ ン ト を 学 習 す る と , よ り ア ク セ ン ト が 覚 え や す く な る 可 能 性 も あ る 。 し か し , 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン が 日 本 語 の ア ク セ ン ト 学 習 に も 有 効 か ど う か は , こ れ ま で に 検 証 さ れ て お ら ず , 不 明 で あ る 。 本 研 究 で は , 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン が 日 本 語 の ア ク セ ン ト 型 を 覚 え る 際 に も 効 果 が あ る か ど う か を 検 討 す る 。 ま た , P e r r a c h i o n e e t a l . ( 2 0 1 1 ) で は , 知 覚 能 力 が 高 い 学 習 者 に は , 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン は 促 進 効 果 を 生 む の に 対 し , 知 覚 能 力 が 低 い 学 習 者 に は , 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン が 学 習 の 妨 げ と な っ て い た 。 教 育 に 応 用 す る 際 は , 音 響 的 バ リ エ ー シ

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2 ョ ン と 知 覚 能 力 の 関 係 を 把 握 す る 必 要 が あ る 。 だ が , そ の 点 を 検 討 し た の は P e r r a c h i o n e e t a l . ( 2 0 1 1 ) の み で , ア ク セ ン ト 学 習 に 関 し て ど う な る か 不 明 で あ る 。 本 研 究 で は , ア ク セ ン ト 学 習 に お け る 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 の 検 討 に 加 え , 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン と ア ク セ ン ト の 知 覚 能 力 の 関 係 に つ い て も 検 討 す る 。 本 研 究 の 具 体 的 な 研 究 課 題 は 以 下 の 通 り で あ る 。 研 究 課 題 1 : F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン は ア ク セ ン ト 学 習 に 効 果 が あ る か 。 1 - 1 産 出 能 力 に お い て , F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン は ア ク セ ン ト 学 習 に 効 果 が あ る か 。 そ し て , そ の 効 果 は 一 定 時 間 持 続 す る か 。 1 - 2 受 容 能 力 に お い て , F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン は ア ク セ ン ト 学 習 に 効 果 が あ る か 。 そ し て , そ の 効 果 は 一 定 時 間 持 続 す る か 。 研 究 課 題 2 : F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 は ア ク セ ン ト の 知 覚 能 力 と 関 係 が あ る か 。 2 - 1 産 出 能 力 に お い て , F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 は ア ク セ ン ト の 知 覚 能 力 と 関 係 が あ る か 。 2 - 2 受 容 能 力 に お い て , F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 は ア ク セ ン ト の 知 覚 能 力 と 関 係 が あ る か 。

2 研 究 方 法

F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 を 検 討 す る た め に , 対 象 者 に 対 象 語 彙 9 語 ず つ を 「 バ リ エ ー シ ョ ン な し 」 「 バ リ エ ー シ ョ ン 中 」 「 バ リ エ ー シ ョ ン 高 」 で ア ク セ ン ト を 学 習 さ せ た 。 そ し て , 被 験 者 内 の 比 較 で , 各 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 の 伸 び 率 を 比 較 す る 。 F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 と ア ク セ ン ト の 知 覚 能 力 の 関 係 を 検 討 す る た め に , 各 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 の 伸 び 率 と , 知 覚 課 題 の 間 に 相 関 が あ る か ど う か 分 析 す る 。

2 . 1 対 象 者

対 象 者 は 日 本 の 大 学 , 及 び , 大 学 院 に 在 学 す る 中 国 語 母 語 話 者 3 8 名 で あ る 。 全 員 , 中 国 語 の 標 準 語 話 者 で あ る 。 日 本 語 レ ベ ル は , 日 本 語 能 力 試 験 N 1 合 格 者 が 3 6 名 , N 2 合 格 者 が 2 名 で あ る 。 日 本 滞 在 歴 は 調 査 時 点 で 平 均 2 年 4 ヶ 月 で あ っ た 。

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3

2 . 2 調 査 概 要

調 査 は 2 回 に 分 け て 実 施 し た 。 1 回 目 の 調 査 で は , 既 知 語 テ ス ト , 知 覚 課 題 , 事 前 テ ス ト , 処 遇 ( ア ク セ ン ト 学 習 課 題 ) , 直 後 テ ス ト の 順 で 調 査 を 行 っ た 。 事 前 テ ス ト で は , 読 み 上 げ 課 題 ( 産 出 能 力 の 測 定 ) , ア ク セ ン ト 判 断 課 題 ( 受 容 能 力 の 測 定 ) の 順 に 実 施 し た 。 直 後 テ ス ト で は , 事 前 テ ス ト と 同 様 に 読 み 上 げ 課 題 , ア ク セ ン ト 判 断 課 題 の 順 に 実 施 し た 。 2 回 目 の 調 査 は , 遅 延 テ ス ト と フ ォ ロ ー ア ッ プ イ ン タ ビ ュ ー か ら な り , 約 7 日 後 に 行 っ た 。 遅 延 テ ス ト で は , 読 み 上 げ 課 題 , ア ク セ ン ト 判 断 課 題 を 行 っ た 。 フ ォ ロ ー ア ッ プ イ ン タ ビ ュ ー で は , 参 加 者 の 専 門 , 滞 在 歴 , 日 本 語 学 習 歴 な ど を 日 本 語 で 尋 ね た 。

2 . 3 既 知 語 テ ス ト

既 知 語 テ ス ト で は 2 7 語 の 単 語 リ ス ト が 載 っ て い る 紙 に そ れ ぞ れ の 単 語 の 読 み 方 を 書 か せ , そ の 単 語 は 日 本 語 で ど う い う 意 味 か わ か る か 回 答 さ せ た 。

2 . 4 知 覚 課 題

ア ク セ ン ト の 知 覚 能 力 を 測 定 す る た め に O d d i t y タ ス ク を 採 用 し た 。 O d d i t y タ ス ク は 3 つ の 刺 激 の う ち , ア ク セ ン ト 型 が 異 な る も の は ど れ か 判 断 さ せ る タ ス ク で あ る 。 例 え ば ,「 平 板 型 ― 頭 高 型 ― 平 板 型 」 の よ う な 刺 激 を 与 え た 場 合 ,2 つ 目 の 刺 激 が 異 な る の で ,「2 」 が 答 え と な る 。 刺 激 に は 「 モ ノ モ ノ 」 と い う 4 拍 の 無 意 味 語 を 用 い た 。 D u p o u x , P a l l i e r & S e b a s t i a n ( 1 9 9 7 ) を 参 考 に し , 女 性 2 名 と 男 性 1 名 の 音 声 で 刺 激 を 作 成 し た 。 刺 激 作 成 に あ た っ て , ま ず , 3 名 の 日 本 語 母 語 話 者 の 4 拍 の 実 在 語 音 声 と 「 モ ノ モ ノ 」 の 音 声 を 録 音 し た 。 収 集 し た ア ク セ ン ト 型 は , 平 板 型 , 頭 高 型 , 中 1 高 型 ( 高 く 発 音 さ れ る 拍 が 1 拍 の 中 高 型 ) , 中 2 高 型 ( 高 く 発 音 さ れ る 拍 が 2 拍 の 中 高 型 ) の 4 種 類 で あ る 。 続 い て , 実 在 語 の 音 声 の 各 拍 の 母 音 の 始 ま り , 中 間 , 終 わ り の ピ ッ チ を 抽 出 し , 1 語 に つ き 計 1 2 ポ イ ン ト を 測 定 し た 。 こ れ に 基 づ き , 音 声 処 理 の ソ フ ト ウ ェ ア P r a a t を 使 用 し , 各 ア ク セ ン ト 型 , 各 話 者 の ピ ッ チ 曲 線 を 再 合 成 し た 。

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4 刺 激 の 長 さ は 全 て 0 . 5 2 秒 に 統 一 し た ( 刺 激 の 長 さ の 平 均 は 0 . 5 2 秒 で あ っ た ) 。 O d d i t y タ ス ク で 可 能 な 刺 激 の 組 み 合 わ せ は 「 A A B 」 「 A B A 」 「 B A A 」 「 B B A 」 「 B A B 」 「 A B B 」 の 6 パ タ ー ン で あ る ( 例 え ば , A A B の パ タ ー ン だ と 「 平 板 型 ― 平 板 型 ― 頭 高 型 」 ) 。 課 題 で 使 用 す る ア ク セ ン ト 型 は , 先 行 研 究 で 知 覚 が 困 難 だ と い わ れ る 頭 高 型 , 中 1 高 型 , 中 2 高 型 の 3 つ の ア ク セ ン ト で , 弁 別 さ せ る ア ク セ ン ト 型 の ペ ア を 6 つ の 可 能 な 提 示 パ タ ー ン で 提 示 し た 。

2 . 5 処 遇 ( ア ク セ ン ト 学 習 課 題 )

ア ク セ ン ト 学 習 課 題 で は , 対 象 語 彙 の 文 字 表 記 を 提 示 し た 後 , 音 声 を 流 し , ア ク セ ン ト を 覚 え さ せ た 。 文 字 表 記 は 「 漢 字 ( ひ ら が な ) で す 」 と い う 形 式 で 提 示 し た 。 「 で す 」 は 平 板 型 と 尾 高 型 を 区 別 す る た め に 加 え た 。 後 述 の よ う に , 学 習 単 語 は 2 7 語 で あ り , A ~ C の 単 語 セ ッ ト に 分 け た 。 1 セ ッ シ ョ ン で は 一 つ の 単 語 セ ッ ト ( 9 語 ) を 6 回 提 示 し た た め , 各 セ ッ シ ョ ン は 5 4 ト ラ イ ア ル と な る ( 9 語 × 6 回 ) 。 具 体 的 に は , 1 回 目 は ラ ン ダ ム 化 さ れ た 単 語 1 ~ 9 を 提 示 し , 2 回 目 か ら 6 回 目 は 全 て 1 回 目 と 同 じ 順 で 提 示 し た 。 計 3 回 の セ ッ シ ョ ン の 間 に は , 1 分 の 休 憩 を は さ ん だ 。 処 遇 は 休 憩 も 含 め て 全 体 で 約 2 0 分 か か っ た 。

2 . 5 . 1 対 象 語 彙

処 遇 で 使 用 す る 2 7 語 の 単 語 は , 表 1 に 示 す よ う に , 全 て 漢 字 表 記 が 可 能 な 2 拍 の 名 詞 で あ る 。 表 1 対 象 語 彙 単 語 セ ッ ト 平 板 型 頭 高 型 尾 高 型 A セ ッ ト 紐 ( ひ も ) 謎 ( な ぞ ) 釘 ( く ぎ ) * 肌 ( は だ ) 種 ( た ね ) 息 ( い き ) * 岩 ( い わ ) 鬼 ( お に ) 旅 ( た び ) * B セ ッ ト 床 ( ゆ か ) 桁 ( け た ) 傷 ( き ず ) * 生 ( な ま ) 宿 ( や ど ) 針 ( は り ) * 粉 ( こ な ) 泥 ( ど ろ ) 腹 ( は ら ) * C セ ッ ト 布 ( ぬ の ) 袖 ( そ で ) 杉 ( す ぎ ) * 数 ( か ず ) 鍋 ( な べ ) 説 ( せ つ ) * 錆 ( さ び ) 骨 ( ほ ね ) 穴 ( あ な ) * * は ア ク セ ン ト の ミ ニ マ ル ペ ア が あ る こ と を 示 す

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5 ア ク セ ン ト 学 習 課 題 , 及 び , 事 前 テ ス ト , 直 後 テ ス ト , 遅 延 テ ス ト の ア ク セ ン ト 判 断 課 題 で 使 用 す る 刺 激 を 作 成 す る た め に , 2 0 代 の 日 本 語 標 準 語 話 者 ( 女 性 ) の 2 7 語 の 対 象 語 彙 の 発 音 を 録 音 し た 。 音 声 フ ァ イ ル の 作 成 に あ た っ て は , B a r c r o f t & S o m m e r s ( 2 0 1 4 a ) と 同 様 の 方 法 に て , F 0 ( ピ ッ チ ) を 再 合 成 し た 。 具 体 的 に は , 各 単 語 の 全 体 の F 0 を 1 0 % , 2 0 % , 3 0 % 上 昇 ( 以 下 + 1 0 % , + 2 0 % , + 3 0 % ) 及 び 下 降 さ せ ( 以 下 - 1 0 % , - 2 0 % , - 3 0 % ) , 元 の 高 さ を 含 め て 計 7 種 類 の 音 の 高 さ の 音 声 を 作 成 し た 。

2 . 5 . 2 カ ウ ン タ ー バ ラ ン ス

対 象 者 を 3 つ の グ ル ー プ に 分 け , バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 と 単 語 セ ッ ト を 割 り 当 て た 。 各 単 語 は 6 回 ず つ 提 示 さ れ る が , 「 バ リ エ ー シ ョ ン な し 」 条 件 は 6 回 と も 同 じ F 0 の 刺 激 で 学 習 し , 「 バ リ エ ー シ ョ ン 中 」 条 件 は 3 種 類 の F 0 で , 「 バ リ エ ー シ ョ ン 高 」 条 件 は 6 回 と も 異 な る F 0 の 刺 激 で 学 習 す る 。 例 え ば , グ ル ー プ 1 の 参 加 者 は , 単 語 セ ッ ト A を 「 バ リ エ ー シ ョ ン な し 」 , B を 「 バ リ エ ー シ ョ ン 中 」 , C を 「 バ リ エ ー シ ョ ン 高 」 で 学 習 す る 。 各 対 象 者 の グ ル ー プ の 違 い は , 単 語 セ ッ ト と バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 の 組 み 合 わ せ で あ る 。 同 じ グ ル ー プ 内 は 半 数 , 「 バ リ エ ー シ ョ ン な し 」 と 「 バ リ エ ー シ ョ ン 中 」 で 使 用 す る F 0 の 種 類 が 異 な る 。 例 え ば , 単 語 セ ッ ト A を , グ ル ー プ 1 の 半 数 に は - 1 0 % の 音 声 を 6 回 提 示 し , 残 り 半 数 に は + 1 0 % の 音 声 を 6 回 提 示 す る 。 単 語 セ ッ ト B を , 半 数 に は - 2 0 % , + 1 0 % , + 3 0 % の 音 声 を そ れ ぞ れ 2 回 ず つ 提 示 し , 残 り 半 数 に は - 3 0 % , - 1 0 % , + 2 0 % の 音 声 を 2 回 ず つ 提 示 し た 。

2 . 6 効 果 測 定

2 . 6 . 1 読 み 上 げ 課 題 ( 産 出 能 力 )

読 み 上 げ 課 題 は , 提 示 さ れ た 単 語 を 読 み 上 げ る 課 題 で あ る 。 ア ク セ ン ト 学 習 課 題 と 同 様 に , モ ニ タ ー 上 に 「 布 ( ぬ の ) で す 」 の よ う に 文 字 表 記 を 提 示 し た 。 単 語 の 提 示 順 番 は 一 度 ラ ン ダ ム 化 し て , 全 員 同 じ 順 番 で 課 題 を 行 っ た 。 な お , 事 前 テ ス ト , 直 後 テ ス ト , 遅 延 テ ス ト の 提 示 順 番 は 全 て 異 な る 。 各 単 語 の 提 示 回 数 は 1 回 で , 問 題 数 は 計 2 7 問 で あ る 。

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6

2 . 6 . 2 ア ク セ ン ト 判 断 課 題 ( 受 容 能 力 )

ア ク セ ン ト 判 断 課 題 は , 3 つ の ア ク セ ン ト 型 で 発 音 さ れ た 対 象 語 彙 を 聞 き , 何 番 目 の 発 音 が 正 し い か を 判 断 す る 課 題 で あ る 。 例 え ば , 「 種 で す 」 の 発 音 を 「 平 板 型 」 「 頭 高 型 」 「 尾 高 型 」 の 順 で 提 示 さ れ た 場 合 , 答 え は 2 番 と な る 。 ア ク セ ン ト 学 習 課 題 と 同 様 に 「 布 ( ぬ の ) で す 」 の よ う に 文 字 表 記 を 提 示 し た 後 で , 音 声 を 流 し た 。 2 7 の 対 象 語 彙 は 各 3 回 出 題 し て お り , 問 題 数 は 計 8 1 問 と な っ た 。 各 単 語 の ア ク セ ン ト 型 の 提 示 順 は , 「 平 板 型 , 頭 高 型 , 尾 高 型 」 「 尾 高 型 , 平 板 型 , 頭 高 型 」 「 頭 高 型 , 尾 高 型 , 平 板 型 」 と い う 3 種 類 を 設 定 し た 。 問 題 の 提 示 順 は , 一 度 ラ ン ダ ム 化 し た 上 で , 同 じ 単 語 が 連 続 で 提 示 さ れ な い よ う に 設 定 し た 。 全 員 が 同 じ 提 示 順 番 で 課 題 を 行 っ た 。 事 前 テ ス ト , 直 後 テ ス ト , 遅 延 テ ス ト の 提 示 順 番 は 全 て 異 な る 。 刺 激 作 成 に あ た っ て , 録 音 し た 音 声 の 3 つ の ア ク セ ン ト 型 の F 0 を 計 測 し , そ れ ぞ れ の ア ク セ ン ト 型 の F 0 曲 線 の 平 均 を 算 出 し た 。 計 測 し た 点 は 母 音 の 始 ま り , 中 間 , 終 わ り で , 各 単 語 は 9 点 計 測 し た 。 計 測 し た F 0 曲 線 を 元 の F 0 曲 線 に 置 き 換 え , 2 7 語 × 3 つ の ア ク セ ン ト 型 , 計 8 1 の 刺 激 を 作 成 し た 。

3 結 果

3 . 1 知 覚 課 題

表 2 は 知 覚 課 題 の 結 果 を 表 わ し た も の で あ る 。 表 2 知 覚 課 題 の 結 果 平 均 S D 最 小 値 最 大 値 8 3 . 4 % 1 3 . 8 % 4 2 . 6 % 1 0 0 . 0 %

3 . 2 F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 に つ い て ( 研 究 課 題 1 )

3 . 2 . 1 読 み 上 げ 課 題 ( 産 出 能 力 : 研 究 課 題 1 - 1 )

図 1 は , 読 み 上 げ 課 題 の 各 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 の 正 答 率 を 表 わ し た も の で あ る 。

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7 図 1 読 み 上 げ 課 題 の 正 答 率 表 3 は , 各 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 の 直 後 テ ス ト の 伸 び 率 を 示 し て い る 。 い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 で 学 習 し て も 伸 び 率 が 約 2 0 % で あ っ た 。 本 研 究 の デ ー タ は 正 規 分 布 し て い な い た め , 平 均 値 の 比 較 に は ノ ン パ ラ メ ト リ ッ ク 手 法 で あ る フ リ ー ド マ ン 検 定 を 用 い る 。 フ リ ー ド マ ン 検 定 の 結 果 , バ リ エ ー シ ョ ン の 条 件 間 に 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た ( χ2( 2 ) = 2 . 5 1 5 , p = . 2 8 4 ) 。 表 3 産 出 能 力 の 伸 び 率 : 直 後 テ ス ト バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 平 均 S D 最 小 値 最 大 値 な し 2 0 . 5 % 1 9 . 3 % - 2 2 . 2 % 5 5 . 6 % 中 2 3 . 4 % 2 0 . 8 % - 2 2 . 2 % 6 6 . 7 % 高 2 6 . 0 % 2 3 . 0 % - 1 1 . 1 % 7 7 . 8 % 表 4 は 遅 延 テ ス ト で の 伸 び 率 を 示 し て い る 。 い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 で 学 習 し て も 伸 び 率 が 約 1 0 ~ 2 0 % で あ っ た 。 フ リ ー ド マ ン 検 定 の 結 果 , バ リ エ ー シ ョ ン の 条 件 間 に 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た ( χ2( 2 ) = 4 . 2 6 6 , p = . 1 1 9 ) 。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 なし 中 高 正答率( % ) バリエーション条件 事前 直後 遅延

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8 表 4 産 出 能 力 の 伸 び 率 : 遅 延 テ ス ト バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 平 均 S D 最 小 値 最 大 値 な し 1 6 . 4 % 1 3 . 6 % 0 . 0 % 5 5 . 6 % 中 1 2 . 3 % 2 2 . 6 % - 3 3 . 3 % 6 6 . 7 % 高 2 0 . 8 % 2 0 . 5 % - 2 2 . 2 % 7 7 . 8 %

3 . 2 . 2 ア ク セ ン ト 判 断 課 題 ( 受 容 能 力 : 研 究 課 題 1 - 2 )

図 2 は , ア ク セ ン ト 判 断 課 題 の 各 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 の 正 答 率 を 表 わ し た も の で あ る 。 図 2 ア ク セ ン ト 判 断 課 題 の 正 答 率 表 5 は 直 後 テ ス ト で の 伸 び 率 を 示 し た も の で あ る 。 い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 で 学 習 し て も , 伸 び 率 が 約 2 0 % で 大 き な 差 は な か っ た 。 フ リ ー ド マ ン 検 定 の 結 果 , バ リ エ ー シ ョ ン の 条 件 間 に 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た ( χ2( 2 ) = 2 . 1 5 7 , p = . 3 4 0 ) 。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 なし 中 高 正答率( % ) バリエーション条件 事前 直後 遅延

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9 表 5 ア ク セ ン ト 判 断 課 題 の 伸 び 率 : 直 後 テ ス ト バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 平 均 S D 最 小 値 最 大 値 な し 2 4 . 5 % 1 6 . 7 % - 1 8 . 5 % 7 0 . 4 % 中 2 2 . 0 % 1 9 . 6 % - 7 . 4 % 6 6 . 7 % 高 2 6 . 5 % 1 7 . 7 % - 7 . 4 % 7 0 . 4 % 表 6 は 遅 延 テ ス ト で の 伸 び 率 を 示 し た も の で あ る 。 い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 で 学 習 し て も 伸 び 率 が 約 1 0 % で あ っ た 。 フ リ ー ド マ ン 検 定 の 結 果 , バ リ エ ー シ ョ ン の 条 件 間 に 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た ( χ2( 2 ) = 3 . 7 6 6 , p = . 1 5 2 ) 。 表 6 ア ク セ ン ト 判 断 課 題 の 伸 び 率 : 遅 延 テ ス ト バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 平 均 S D 最 小 値 最 大 値 な し 1 4 . 2 % 1 5 . 9 % - 2 9 . 6 % 5 5 . 6 % 中 1 0 . 9 % 1 9 . 2 % - 2 2 . 2 % 4 8 . 2 % 高 1 3 . 3 % 1 5 . 6 % - 1 4 . 8 % 5 9 . 3 %

3 . 3 F 0 バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 と 知 覚 の 関 係 ( 研 究 課 題 2 )

3 . 3 . 1 読 み 上 げ 課 題 と 知 覚 課 題 の 関 係 ( 産 出 能 力 : 研 究 課 題 2 - 1 )

表 7 は , 直 後 テ ス ト に お け る 読 み 上 げ 課 題 と 知 覚 課 題 の 相 関 係 数 を 表 わ し た も の で あ る 。 無 相 関 の 検 定 結 果 か ら , 「 バ リ エ ー シ ョ ン な し 」 と 「 バ リ エ ー シ ョ ン 中 」 条 件 で は , 有 意 な 相 関 が 見 ら れ な か っ た 。 一 方 , 「 バ リ エ ー シ ョ ン 高 」 に 弱 い 正 の 相 関 が 見 ら れ た 。

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10 表 7 直 後 テ ス ト に お け る 読 み 上 げ 課 題 と 知 覚 課 題 の 相 関 係 数 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 r p な し . 3 1 4 . 4 2 1 中 . 0 1 6 . 3 3 1 高 . 3 6 8 . 0 2 3* * は 有 意 水 準 5 % で 有 意 な 相 関 が あ る こ と を 示 す 表 8 は , 遅 延 テ ス ト に お け る 読 み 上 げ 課 題 の 伸 び 率 と 知 覚 課 題 の 相 関 係 数 を 表 わ し た も の で あ る 。 無 相 関 の 検 定 結 果 か ら , い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 に お い て も 有 意 な 相 関 が 見 ら れ な か っ た 。 表 8 遅 延 テ ス ト に お け る 読 み 上 げ 課 題 と 知 覚 課 題 の 相 関 係 数 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 r p な し - . 0 0 6 . 9 7 3 中 . 1 8 6 . 2 6 3 高 . 1 4 0 . 4 0 3

3 . 3 . 2 ア ク セ ン ト 判 断 課 題 と 知 覚 課 題 の 関 係 ( 受 容 能 力 : 研 究 課

題 2 - 2 )

表 9 は , 直 後 テ ス ト に お け る ア ク セ ン ト 判 断 課 題 と 知 覚 課 題 の 相 関 係 数 を 表 わ し た も の で あ る 。 無 相 関 の 検 定 結 果 , い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 に お い て も 有 意 な 相 関 が 見 ら れ な か っ た 。 表 9 直 後 テ ス ト に お け る ア ク セ ン ト 判 断 課 題 と 知 覚 課 題 の 相 関 係 数 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 r p な し . 0 8 5 . 6 1 3 中 . 0 5 0 . 7 6 5 高 . 1 3 5 . 4 1 9

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11 表 1 0 は , 遅 延 テ ス ト に お け る ア ク セ ン ト 判 断 課 題 と 知 覚 課 題 の 相 関 係 数 を 表 わ し た も の で あ る 。 無 相 関 の 検 定 結 果 , い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 に お い て も 有 意 な 相 関 が 見 ら れ な か っ た 。 表 1 0 遅 延 テ ス ト に お け る ア ク セ ン ト 判 断 課 題 と 知 覚 課 題 の 相 関 係 数 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 r p な し . 1 1 9 . 4 7 7 中 . 2 9 5 . 0 7 3 高 . 2 6 6 . 1 0 7

4 考 察

4 . 1 産 出 能 力 に つ い て ( 研 究 課 題 1 - 1 )

読 み 上 げ 課 題 に お け る 各 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 の 伸 び 率 を 比 較 し た と こ ろ , 直 後 テ ス ト に お い て も , 遅 延 テ ス ト に お い て も , バ リ エ ー シ ョ ン の 条 件 間 に 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た 。 本 研 究 で 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 が 見 ら れ な か っ た の は , 対 象 者 が ア ク セ ン ト を 学 習 で き な か っ た か ら と も 考 え ら れ る 。 そ こ で , 本 研 究 の 対 象 者 が ア ク セ ン ト を 学 習 で き た か ど う か 検 討 す る 。 フ リ ー ド マ ン 検 定 の 結 果 , 事 前 テ ス ト , 直 後 テ ス ト , 遅 延 テ ス ト の 間 に 有 意 差 が 見 ら れ た 。 ま た , ウ ィ ル コ ク ソ ン の 符 号 検 定 で , 事 前 テ ス ト と 直 後 テ ス ト , 事 前 テ ス ト と 遅 延 テ ス ト を 比 較 し た 結 果 , い ず れ も 有 意 に 事 前 テ ス ト よ り 高 く な っ て い る こ と が わ か っ た 。 こ の よ う に , 本 研 究 の 対 象 者 は ア ク セ ン ト を 学 習 で き た 結 果 と な っ て い る 。 つ ま り , バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 が 見 ら れ な か っ た の は , ア ク セ ン ト を 学 習 で き な か っ た か ら で は な い と 考 え ら れ る 。

4 . 2 受 容 能 力 に つ い て ( 研 究 課 題 1 - 2 )

ア ク セ ン ト 判 断 課 題 に お け る 各 バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 の 伸 び 率 を 比 較 し た と こ ろ , 産 出 能 力 と 同 様 に , 直 後 テ ス ト に お い て も , 遅 延 テ ス ト に お い て も , バ リ エ ー シ ョ ン の 条 件 間 に 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た 。

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12 ア ク セ ン ト 判 断 課 題 の 全 体 の 正 答 率 に 関 し て , 産 出 能 力 と 同 様 に , 事 前 テ ス ト , 直 後 テ ス ト , 遅 延 テ ス ト の 成 績 の 間 に 有 意 差 が 見 ら れ た 。 ま た , ウ ィ ル コ ク ソ ン の 符 号 検 定 で , 事 前 テ ス ト と 直 後 テ ス ト , 事 前 テ ス ト と 遅 延 テ ス ト を 比 較 し た 結 果 , 産 出 能 力 と 同 様 の 結 果 が 得 ら れ た 。 こ の よ う に , い ず れ の 測 定 方 法 に お い て も , 対 象 者 は ア ク セ ン ト を 学 習 す る こ と が で き , か つ , 学 習 効 果 は 一 定 時 間 持 続 す る と い う 結 果 が 得 ら れ た 。

4 . 3 研 究 課 題 1 の 総 合 的 考 察

本 研 究 の 結 果 は , 第 二 言 語 の 語 彙 学 習 や 声 調 の 学 習 に お け る 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 を 検 討 し た B a r c r o f t & S o m m e r s ( 2 0 1 4 a ) , S o m m e r s & B a r c r o f t ( 2 0 0 7 ) , P e r r a c h i o n e e t a l . ( 2 0 1 1 ) な ど と 異 な る 結 果 と な っ た 。 以 下 で は な ぜ 先 行 研 究 と 異 な る 結 果 と な っ た か に つ い て 考 察 す る 。

4 . 3 . 1 第 二 言 語 の 語 彙 学 習 に お け る 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン の 影 響

に 関 す る 仮 説

第 二 言 語 の 語 彙 学 習 に お け る 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン の 影 響 に 関 し て , B a r c r o f t ( 2 0 0 1 ) は 次 の 3 つ の 仮 説 を 立 て た 。 1 ) 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン は 語 彙 学 習 に 影 響 し な い , 2 ) 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン は 語 彙 学 習 を 妨 げ る , 3 ) 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン は 語 彙 学 習 を 促 進 す る と い う 仮 説 で あ る 。 先 行 研 究 で は ほ と ん ど , 3 つ 目 の 仮 説 を 支 持 す る 結 果 と な っ て い る 。 し か し L u d i n g t o n ( 2 0 1 6 ) で は , 2 つ 目 の 仮 説 を 支 持 す る 傾 向 が 見 ら れ た 。 こ の よ う に , 実 験 デ ザ イ ン , 対 象 者 の 母 語 , 対 象 言 語 な ど の 違 い に よ り , 有 効 な 仮 説 が 異 な る 場 合 も あ る と 言 え る 。 本 研 究 も , 先 行 研 究 と 様 々 な 点 で 異 な っ て い た た め , 1 つ 目 の 仮 説 を 支 持 す る 結 果 と な っ た と 考 え ら れ る 。

4 . 3 . 2 知 覚 能 力 の 影 響 に 関 す る 考 察

P e r r a c h i o n e e t a l . ( 2 0 1 1 ) で は , 知 覚 実 験 の 成 績 上 位 群 は バ リ エ ー シ ョ ン が あ る 音 声 で 学 習 し た ほ う が 効 果 的 で あ る が , 下 位 群 は バ リ エ ー シ ョ ン が な い 音 声 の ほ う が 効 果 的 だ と 報 告 し て い る 。 し か し , 両 群 の 対 象 者 の 結 果 を 総 合 す る と , 対 象 者 の グ ル ー プ 間 に , 成 績 の 差 が 見 ら れ な か っ た 。 つ ま り , 知 覚 が 得 意 な 対 象 者 と 苦

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13 手 な 対 象 者 の 結 果 が 混 ざ る と , バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 が 見 ら れ な く な る 。 本 研 究 で バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 が 見 ら れ な か っ た 原 因 と し て , 知 覚 が 得 意 な 対 象 者 と 苦 手 な 対 象 者 の 結 果 が 混 在 し て い た こ と が 考 え ら れ る 。 そ こ で , 知 覚 の 成 績 が 低 い 対 象 者 の デ ー タ を 除 外 し , 分 析 を 試 み た 。 除 外 の 基 準 は , 知 覚 課 題 の 成 績 が 2 S D 以 上 , 平 均 値 か ら 離 れ て い る こ と で あ る 。 除 外 さ れ た の は 3 名 の 対 象 者 の デ ー タ で あ る 。 そ の 結 果 , 産 出 能 力 に お い て も , 受 容 能 力 に お い て も , や は り バ リ エ ー シ ョ ン の 条 件 間 に 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た 。 こ の よ う に , バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 が 見 ら れ な か っ た の は , 知 覚 の 成 績 が 低 い 対 象 者 の デ ー タ が 混 在 し て い る か ら で は な い こ と が わ か っ た 。

4 . 3 . 3 実 験 デ ザ イ ン の 相 違 点

本 研 究 は 次 の 3 点 で , 先 行 研 究 と 異 な っ て い る 。 1 ) F 0 と 対 象 者 の 母 語 話 者 の 組 み 合 わ せ , 2 ) 刺 激 の 提 示 方 法 , 3 ) 対 象 者 の 習 熟 度 と 既 知 語 の 使 用 で あ る ま ず , F 0 と 対 象 者 の 母 語 の 組 み 合 わ せ に つ い て 考 察 す る 。 F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン は 声 調 言 語 話 者 に 有 効 だ と 報 告 し て い る 研 究 は B a r c r o f t & S o m m e r s ( 2 0 1 4 a ) の み で あ る 。 し か し , 声 調 は 言 語 に よ っ て , 声 調 の 数 や 制 約 な ど 様 々 な 点 で 異 な っ て い る 。 F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン は , 全 て の 声 調 言 語 話 者 に 有 効 で は な く , 対 象 者 の 母 語 の 声 調 体 系 も 関 係 し て い る 可 能 性 も あ る 。 本 研 究 の 学 習 項 目 で あ る ア ク セ ン ト も , F 0 と 対 象 者 の 母 語 の 組 み 合 わ せ と 関 係 が あ る と 考 え ら れ る 。 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン は , 声 調 学 習 に も 効 果 が あ る と の 報 告 が あ っ た ( P e r r a c h i o n e e t a l . , 2 0 1 1 ) 。 声 調 の 場 合 , ピ ッ チ を 担 う 単 位 は 音 節 で あ る た め , 一 つ 一 つ の 音 節 に 声 調 が 付 与 さ れ る ( D u a n m u , 2 0 0 7 ) 。 一 方 , ア ク セ ン ト の 単 位 は 「 単 語 + 助 詞 」 で あ り , 「 単 語 + 助 詞 」 レ ベ ル で ピ ッ チ が 決 ま る ( H a r a g u c h i , 2 0 0 2 ; L a b r u n e , 2 0 1 2 ) 。 そ の た め , 1 拍 ず つ ピ ッ チ を 覚 え る 必 要 が な く , ア ク セ ン ト 核 の 位 置 の み 覚 え れ ば , 各 拍 の ピ ッ チ が 予 測 で き る 。 こ の よ う な 相 違 点 か ら , 学 習 す る 際 の ス ト ラ テ ジ ー も 異 な る と 考 え ら れ る 。 次 に , 刺 激 の 提 示 方 法 に つ い て 考 察 す る 。 超 分 節 音 の 学 習 を 検 討 し た P e r r a c h i o n e ら の 研 究 で は , 分 節 音 が 同 一 で , 声 調 だ け が 異 な る 単 語 ( ミ ニ マ ル ペ ア ) を セ ッ ト で 学 習 さ せ た 。 し か し , 本 研 究 で は ミ ニ マ ル ペ ア を セ ッ ト で 学 習 さ せ

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14 な か っ た 。 し た が っ て , 対 象 者 は ア ク セ ン ト の み に 注 目 す る こ と が 困 難 と な り , バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 が 見 ら れ な か っ た と も 考 え ら れ る 。 最 後 に , 対 象 者 の 習 熟 度 と 既 知 語 の 使 用 に 関 す る 相 違 点 に つ い て 考 察 す る 。 こ れ ま で の 研 究 で は , 未 習 者 ま た は 学 習 開 始 し た ば か り の 初 級 者 を 対 象 に し て い た 。 そ れ に 対 し て , 本 研 究 の 対 象 者 は 中 上 級 学 習 者 で あ り , 対 象 語 彙 の 約 8 割 が 既 知 語 で あ っ た 。 既 知 語 に は , 対 象 者 が 既 に 覚 え て い る ア ク セ ン ト 型 が 存 在 し , 記 憶 の 干 渉 が 起 こ り や す い 可 能 性 も あ る 。

4 . 3 . 4 方 法 論 上 の 課 題

方 法 論 上 の 課 題 は 1 ) 対 象 語 彙 の 選 択 , 2 ) ア ク セ ン ト の 学 習 経 験 の 有 無 , 3 ) 効 果 の 測 定 方 法 が あ げ ら れ る 。 ま ず , 対 象 語 彙 の 選 択 に は ま だ 検 討 す る 余 地 が あ る と 考 え る 。 本 研 究 で は , 対 象 者 の 学 習 負 担 を 減 ら す た め に 既 知 語 を 用 い た 。 事 前 テ ス ト の 単 語 別 の 正 答 率 を 確 認 し た と こ ろ , 正 答 率 が 1 0 % ~ 2 0 % と 低 い 語 も あ れ ば , 7 0 % ~ 8 0 % と 高 い 語 も あ っ た 。 事 前 テ ス ト の 正 答 率 が 同 じ 程 度 の 単 語 の み を 対 象 に す れ ば , 本 研 究 と 異 な る 結 果 が 得 ら れ る と 思 わ れ る 。 次 は , ア ク セ ン ト の 学 習 経 験 の 有 無 に つ い て 考 察 す る 。 調 査 後 の フ ォ ロ ー ア ッ プ イ ン タ ビ ュ ー で , ア ク セ ン ト の 学 習 経 験 の 有 無 を 尋 ね た 。 そ の 結 果 , 3 8 名 の う ち , 1 3 名 が ア ク セ ン ト に つ い て 学 習 し た こ と が な い と 回 答 し た 。 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 は , 対 象 者 の ア ク セ ン ト の 学 習 経 験 の 有 無 も , 結 果 に 影 響 し た 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 測 定 方 法 に つ い て も , さ ら な る 検 討 が 必 要 だ と 考 え る 。 本 研 究 は 受 容 能 力 を 測 定 す る た め に , 3 つ の ア ク セ ン ト 型 の う ち , 正 し い ア ク セ ン ト 型 を 選 択 さ せ る ア ク セ ン ト 判 断 課 題 を 採 用 し た 。 ア ク セ ン ト 判 断 課 題 の 問 題 点 は , 課 題 を 実 施 す る こ と に よ っ て , さ ら に イ ン プ ッ ト を 与 え る こ と に な る 点 で あ る 。 例 え ば , 「 床 」 の 場 合 , 「 平 板 型 」 「 頭 高 型 」 「 尾 高 型 」 の 3 つ の ア ク セ ン ト 型 を 提 示 す る と , 対 象 者 は 3 つ の イ ン プ ッ ト を 与 え ら れ る こ と に な る 。 つ ま り 本 研 究 の 対 象 者 は 正 し い イ ン プ ッ ト だ け で な く , 間 違 っ た イ ン プ ッ ト も 与 え ら れ , 混 乱 し た 可 能 性 が あ る だ ろ う 。 こ れ ら の こ と か ら , ア ク セ ン ト 判 断 課 題 を 使 用 し , 誤 答 の イ ン プ ッ ト を 与 え , 記 憶 の 干 渉 を 起 こ し た 可 能 性 も あ る 。

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4 . 4 F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 と 知 覚 能 力 の 関 係 ( 研 究 課 題 2 )

本 研 究 で は , 概 ね 相 関 が な い 結 果 と な っ て お り , 高 橋 ( 2 0 1 3 ) や P e r r a c h i o n e e t a l . ( 2 0 1 1 ) な ど と 異 な る 結 果 と な っ た 。 本 研 究 の 対 象 者 は 中 上 級 の 中 国 語 母 語 話 者 で あ り , 全 体 的 に 知 覚 の 成 績 が 高 か っ た の で , 相 関 が 見 ら れ な か っ た と 思 わ れ る 。 本 研 究 の 対 象 者 よ り 知 覚 が 苦 手 な 対 象 者 を 対 象 に 調 査 を 行 う と , 異 な る 結 果 が 得 ら れ る か も し れ な い 。 本 研 究 で 概 ね 相 関 が 見 ら れ な か っ た 原 因 と し て , 知 覚 課 題 の 高 い 正 答 率 が あ げ ら れ る 。 知 覚 課 題 の 正 答 率 は , 平 均 8 0 % ほ ど と 高 く , 天 井 効 果 に 近 く , ば ら つ き が 小 さ か っ た 。 こ れ は , 中 国 語 母 語 話 者 は 音 の 高 低 に 慣 れ て お り , か つ 日 本 の 大 学 に 在 学 中 の 中 上 級 者 学 習 者 を 対 象 に し た た め だ と 考 え ら れ る 。 相 関 を 見 る 際 は , よ り ば ら つ き が 大 き い デ ー タ , か つ 全 体 の 正 答 率 が よ り 低 い デ ー タ が 必 要 だ と 考 え ら れ る 。 今 後 , 本 研 究 の 対 象 者 よ り 知 覚 が 苦 手 な 中 国 語 母 語 話 者 , ま た は 他 の 母 語 話 者 を 対 象 に す る 研 究 が 必 要 に な る と 考 え る 。 さ て , 知 覚 能 力 と 受 容 能 力 と の 相 関 が 見 ら れ な か っ た に も か か わ ら ず , な ぜ 産 出 能 力 と の 間 に 弱 い 相 関 が 見 ら れ た の だ ろ う か 。 日 本 語 の ア ク セ ン ト 習 得 に 重 要 な 能 力 に 関 し て , ア ク セ ン ト の 知 覚 能 力 , ア ク セ ン ト の 記 憶 , 自 己 モ ニ タ ー , ピ ッ チ の 調 整 が あ る と 指 摘 さ れ て い る ( 高 橋 , 2 0 1 3 ) 。 こ の よ う に , 知 覚 能 力 を 除 い て , 産 出 能 力 と 関 係 し 得 る 能 力 は , 記 憶 , 自 己 モ ニ タ ー , ピ ッ チ の 調 整 の 3 つ で あ る 。 そ の 3 つ の 中 で も , 直 接 産 出 能 力 と 知 覚 能 力 と 直 接 関 係 す る 可 能 性 が 高 い の は , 自 己 モ ニ タ ー で あ る と 考 え る 。 な ぜ な ら , 自 己 モ ニ タ ー は 自 分 が 発 音 し た 音 声 を 聞 き 取 っ て , ど の よ う に 発 音 し た か , 正 確 か ど う か な ど 判 断 す る 能 力 で あ り , 産 出 と 知 覚 の 両 方 が 含 ま れ る た め で あ る 。 U e m u r a ( 2 0 0 2 ) は 韓 国 語 母 語 話 者 に よ る 日 本 語 の 有 声 子 音 と 無 声 子 音 の 知 覚 , 産 出 , 自 己 モ ニ タ ー を 検 討 し た 。 そ の 結 果 , 知 覚 能 力 と 産 出 能 力 の 相 関 係 数 は r = . 3 8 3 ( p = . 1 1 7 ) で , 自 己 モ ニ タ ー と 産 出 能 力 の 間 に 強 い 相 関 が 見 ら れ た ( r = . 9 1 1 , p < . 0 1 ) と 報 告 し て い る 。 U e m u r a ( 2 0 0 2 ) は , 産 出 能 力 と 直 接 関 係 す る 能 力 は 知 覚 能 力 で は な く , 自 己 モ ニ タ ー で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 ま た , U e m u r a ( 2 0 0 2 ) で 得 ら れ た 産 出 能 力 と 知 覚 能 力 の 相 関 係 数 は , 本 研 究 と 類 似 し て い る ( 本 研 究 の 相 関 係 数 は r = . 3 2 3 で あ る ) 。 こ れ ら の こ と か ら , 本 研 究 で 見 ら れ た 相 関 は , 疑 似 相 関 で あ る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。

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5 お わ り に

5 . 1 研 究 ま と め

以 下 で は そ れ ぞ れ の 研 究 課 題 の 結 果 を ま と め る 。 研 究 課 題 1 : F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン に つ い て 1 ) 産 出 能 力 に お い て , い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 で 学 習 し て も , 伸 び 率 は 同 じ 程 度 で , 有 意 差 が 見 ら れ な か っ た 。 一 方 , 全 体 の 正 答 率 か ら み る と , 直 後 テ ス ト と 遅 延 テ ス ト の 正 答 率 は 事 前 テ ス ト よ り 有 意 に 高 か っ た 。 つ ま り , 対 象 者 が 短 時 間 で ア ク セ ン ト を 学 習 で き , か つ そ の 学 習 効 果 は 尐 な く と も 約 1 週 間 持 続 す る こ と が わ か っ た 。 2 ) 受 容 能 力 に お い て , 産 出 能 力 と 同 様 の 傾 向 が 見 ら れ た 。 い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 で 学 習 し て も , 大 き な 違 い は な か っ た 。 全 体 の 正 答 率 か ら み る と , 直 後 テ ス ト と 遅 延 テ ス ト の 正 答 率 は 事 前 テ ス ト よ り 有 意 に 高 か っ た 。 つ ま り , 対 象 者 は 短 時 間 で ア ク セ ン ト を 学 習 で き , か つ そ の 学 習 効 果 は 尐 な く と も 約 1 週 間 持 続 す る こ と が わ か っ た 。 研 究 課 題 2 : F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 と 知 覚 能 力 の 関 係 に つ い て 1 ) 産 出 能 力 に お い て , 「 バ リ エ ー シ ョ ン 高 」 条 件 の 伸 び 率 と 知 覚 能 力 の 間 に 弱 い 正 の 相 関 が 見 ら れ た 。 つ ま り , 知 覚 能 力 が 高 い ほ ど , 「 バ リ エ ー シ ョ ン 高 」 で の 学 習 も 上 昇 す る 傾 向 が あ る こ と が わ か っ た 。 2 ) 受 容 能 力 に お い て , い ず れ の バ リ エ ー シ ョ ン 条 件 も 同 様 に , 知 覚 能 力 と の 相 関 が 見 ら れ な か っ た 。 本 研 究 で は , 両 者 の 関 係 が 確 認 さ れ な か っ た 。

5 . 2 ア ク セ ン ト 教 育 へ の 示 唆

本 研 究 の 結 果 か ら , や は り 各 単 語 の ア ク セ ン ト を 覚 え る こ と は 困 難 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ま た , 日 本 の 大 学 に 在 学 し て い る 中 上 級 学 習 者 で も 正 確 に ア ク セ

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17 ン ト を 覚 え て な い 場 合 が 多 か っ た 。 こ れ ら の こ と か ら , 日 本 語 教 育 で は ア ク セ ン ト 学 習 に も 注 目 し , 効 果 的 に 指 導 を 行 う 必 要 が あ る と 考 え る 。 授 業 時 間 が 限 ら れ た 現 状 で は , ア ク セ ン ト 指 導 に 十 分 な 時 間 を 増 や す こ と が 容 易 で は な い が , 本 研 究 は , 学 習 者 は 短 時 間 で ア ク セ ン ト を 覚 え る こ と が で き た 結 果 を 示 し た 。 さ ら に , そ の 学 習 効 果 は 学 習 直 後 だ け で な く , 約 1 週 間 後 ま で 持 続 し て い た 。 中 上 級 学 習 者 で あ れ ば , そ れ ほ ど の 練 習 時 間 は 必 要 な く , 短 時 間 の 練 習 で も 十 分 か も し れ な い 。

5 . 3 今 後 の 課 題

本 研 究 の 結 果 か ら , 今 後 F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 を 検 討 す る た め に , タ イ 語 や ベ ト ナ ム 語 な ど , 様 々 な 声 調 言 語 話 者 を 対 象 と し た 研 究 が 必 要 だ と 考 え る 。 ま た , 刺 激 選 択 に 関 し て も , よ り 正 答 率 の 低 い 単 語 の み 使 用 す る と , 異 な る 結 果 が 得 ら れ る か も し れ な い 。 刺 激 の 提 示 方 法 に 関 し て , P e r r a c h i o n e e t a l . ( 2 0 1 1 ) の よ う に ミ ニ マ ル ペ ア を セ ッ ト で 提 示 す る 方 法 に つ い て も 検 討 す る 余 地 が あ る 。 ま た , 測 定 方 法 に つ い て も 検 討 す る 余 地 が あ る だ ろ う 。 先 行 研 究 で は 受 容 能 力 も 測 定 さ れ て い る 。 し か し , ア ク セ ン ト 判 断 課 題 の 使 用 に よ っ て , 間 違 っ た イ ン プ ッ ト を 与 え る こ と に な っ た 。 対 象 者 は 正 し い 選 択 肢 と 間 違 っ た 選 択 肢 を 与 え ら れ , そ れ ら の イ ン プ ッ ト を 全 て 記 憶 に 符 号 化 し た 可 能 性 も あ る 。 今 後 , 異 な る 受 容 能 力 の 測 定 方 法 を 用 い る か , 産 出 能 力 の み 測 定 す る よ う な 研 究 が 必 要 だ と 考 え る 。 本 研 究 の 第 二 の 目 的 は , F 0 の バ リ エ ー シ ョ ン の 効 果 と 知 覚 能 力 の 関 係 を 検 証 す る こ と で あ っ た 。 し か し 知 覚 課 題 の 全 体 の 正 答 率 が 高 く , ば ら つ き が 小 さ か っ た 。 よ り ば ら つ き が 大 き い デ ー タ で あ れ ば , 両 者 の 間 の 相 関 も 出 や す く な り , 本 研 究 と 異 な る 結 果 が 得 ら れ る だ ろ う 。 個 人 差 の 影 響 に つ い て も , さ ら に 検 討 す る 必 要 が あ る 。 本 研 究 の 結 果 か ら 個 人 差 に よ る 相 違 が 見 ら れ た が , そ れ は 対 象 者 の 知 覚 能 力 の 違 い で は 説 明 で き な い 。 今 後 , 知 覚 能 力 以 外 の 変 数 と , 音 響 的 バ リ エ ー シ ョ ン の 関 係 を 検 討 し た 研 究 が 必 要 だ と 考 え る 。

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別 記 様 式 博在-Ⅶ-2-②-A 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 学 位 の 種 類 博 士 ( 国 際 文 化 ) 氏 名 タ ナ サ ッ ク シ リ カ ネ ラ ッ ト 学 位 論 文 の 題 名 日 本 語 の ア ク セ ン ト 学 習 に お け る F0 のバリエーションの効果 ― 中 国 語 母 語 話 者 を 対 象 と し て ― 論 文 審 査 担 当 者 氏 名 ( 主 査 ) 菅 谷 奈 津 恵 、 吉 本 啓 、 杉 浦 謙 介 、 北 原 良 夫 、 中 村 渉 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 ( 1、 000 字 内 外 ) 本研究は、様々な音響的バリエーションのうち、音の高さのバリエーション(F0 のバリエー ション)に着目し、日本語学習者のアクセント学習における効果を検証したものである。 音響的バリエーションがある音声をインプットとして与えた場合には、第二言語の音声知覚 トレーニングや語彙学習を促進することが報告されている。最近では、中国語の声調学習にお ける効果も確認されているが、日本語のアクセント学習にも効果があるかどうかは解明されて いない。日本語の発音の自然さには、分節音(子音と母音)よりもアクセントなどの音の高低 が重要であるという。だが、単語のアクセント型を正確に記憶するのは、上級レベルの日本語 学習者にとっても容易ではない。本研究は、中上級レベルの中国語母語話者を対象として、呈 示する単語音声の F0 を操作し、F0 のバリエーションの有無による指導効果の違いを実験的方 法により検討した。分析の結果、単語のアクセントの正答率は、全体的には事前テストよりも 直後テスト、遅延テストで向上しており、学習が進んだことがわかった。しかし、いずれのバ リエーション条件においても伸び率は同程度であり、F0 のバリエーションの有無は学習効果に 影響を及ぼしていないことがわかった。以上の結果から、先行研究で指摘されていた音響的バ リエーションの効果には、バリエーションのタイプや学習項目等による制約があると結論づけ ている。 審査会では、F0 の上昇・下降範囲の設定をより慎重に検討すべきであるといった指摘や、話 者間のバリエーションなど F0 以外の音響的バリエーションでの検証を優先すべきであるとの指 摘がなされた。しかしながら、本研究は、日本語のアクセントの習得研究の知見を網羅的に検 討し、日本語以外の言語の語彙習得の成果も踏まえた上で、丹念に実験をデザインしたもので あ る 。特 に 、 従 来 の 語 彙 習 得研 究 は 、 ほ と ん ど が 単語 の 意 味 と 分 節 音 の 学習 に 限 定 さ れ てお り、本研究が超分節音の学習に取り組んだことは特筆すべき点である。アクセント学習におけ る F0 のバリエーションの有効性は示されなかったが、今後の音声習得、語彙習得研究への重要 な手がかりを提示する先駆的な試みであったといえる。 以上より、本研究の成果は、論文執筆者が自立して研究活動を行うに必要な高度の研究能力 と学識を有することを示している。よって、本論文は、博士(国際文化)の学位論文として合 格と認める。

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