大学アドミニストレーション研究 第9号(2018年度) 51
「学術情報基盤実態調査」から読み解く大学の情報化の現状
粂川 二郎 【要旨】 文部科学省が毎年実施している「学術情報基盤実態調査」の「コンピュータ及びネッ トワーク編」の公表データを元に、大学の情報化に関する現状分析を行った。その結 果、国立大学は情報センター等の情報処理施設を中心として、公立、私立大学では事 務局本部が中心となって管理を行っていること、および、全体としては国立大学が情 報化について進んでいるものの、特に業務的側面の情報化については私立大学も相対 的に力を入れている可能性が示唆された。 キーワード:学術情報基盤実態調査、情報化、情報システム、組織論、パソコン 1.はじめに現代において、情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)はあらゆる領 域の営みに欠かせないインフラである。それは学術領域においても例外ではなく、大学のICT 環境整備は教育研究活動を推進し、経営を安定する上での重要課題となっている。 本稿は、文部科学省が毎年実施している「学術情報基盤実態調査」の集計結果の分析を基に、 重要性を増す大学の情報化についての現状と、課題について報告するものである。特に、国公 私立という設置形態および、大学の学生数規模ごとの違いや、調査が開始されてから現在まで の最大12年間の変化に焦点をあてる。 (1)学術情報基盤実態調査の概要 学術情報基盤実態調査は「国公私立大学の学術情報基盤(大学図書館、コンピュータ及びネッ トワーク等)についての現状を明らかにし、その改善の基礎資料とすること」(文部科学省)を 目的として、文部科学省が国公私立の大学長に対して行う調査である。元々は「大学図書館実 態調査」という名称で、図書館に関する調査として昭和41(1996)年から実施されていたものに、 コンピュータ及びネットワーク等に関する実情に関する調査が加えられ、現在の形となってい る。内容にはICT環境の管理・運営組織、人員、情報戦略の有無、PCやネットワークなど情報 環境整備の状況等が含まれる。本稿で扱うのはこの追加された「コンピュータ及びネットワー ク編」についてである。 データについては、調査が開始された平成17年度から平成29年度まで、最大で13年分(12年 間)の実態が蓄積されている。しかも統計法に定められた悉皆調査であり、回答率は100%であ
表2 学生数を統制した本稿で利用する規模区分(数値は平成29年度) 集計値のデータもWeb サイト「政府統計の総合窓口(e-Stat)」(独立行政法人統計センター) から全てダウンロードして閲覧できる。なお、e-Stat からダウンロードできるデータは、大学 を設置形態と学部数で12 の区分(表 1)に分け、その区分ごとの集計値となっている。個票は 開示されていない。 表 1 文部科学省「学術情報基盤実態調査」における集計区分
(2)分析の方法
文部科学省の公表しているとりまとめ(例えば、(文部科学省2018))は、本調査における調 査票の中でも一部の設問についてのみ扱っているほか、表1 に上げた区分ごとの詳細な比較は ないなど概要にとどまるものであるため、本稿では公表データをさらに深く分析していく。 分析をする上で、国公私立の設置形態および大学の学生規模ごとの差異や、12 年間の変化の 傾向に注目する。それらを精緻に見ていくことで、大学の情報化の現状に対するより正確な把 握が可能になると考えられるためである。 分析にあたり、表1 の 12 区分を表 2 のように組み替えている。これは設置形態別に比較を する上で、表1 の区分では同じ区分内でも平均的な学生数が大きく異なる場合があるため、大 学の規模の影響を充分に統制できないと考えられるためである。例えば、平成29 年度のデー タでみると、同じ8 学部以上である A の区分において含まれる大学の 1 校あたりの平均学生数 は、国立で15,811 人、私立で 19,241 人に対し、公立は 8,333 人と大きな差異がある。表 2 に おいて、「規模大」には国立A と私立 A のみを含めた区分で 1 校あたりの学生数は 18,207 人 となっている。「規模中」は国立B・C、公立 A・B、および私立 B を含めた区分で 1 校あたり の学生数は6,975 人である。「規模小」は公立 C と私立 C を含めた区分で 1 校あたりの学生数 表 2 学生数を統制した本稿で利用する規模区分(数値は平成 29 年度) 国立大学 公立大学 私立大学A(8学部以上) A(8学部以上) A(8学部以上) B(5~7学部) B(5~7学部) B(5~7学部) C(2~4学部) C(2~4学部) C(2~4学部) D(単科大学) D(単科大学) D(単科大学) 学生数 (人/校) 元の 区分 大学数 割合 学生数 (人/校) 元の 区分 大学数 割合 学生数 (人/校) 元の 区分 大学数 割合 学生数 (人/校) 規模大 18,207 A 19 22% 15,811 A 44 7% 19,241 規模中 6,975 B 21 24% 7,439 A 1 1% 8,333 B 74 12% 7,707 C 20 23% 4,319 B 7 8% 5,233 規模小 2,378 C 35 39% 1,950 C 266 44% 2,434 単科大学 1,520 D 26 30% 2,556 D 46 52% 886 D 224 37% 1,530 計 4,049 計 86 100% 7,087 計 89 100% 1,730 計 608 100% 3,959 - - - -規模区分 全体 国立大学 公立大学 私立大学 る。調査結果は文部科学省が毎年ポイントをとりまとめて公表しているほか、設問ごとの集計 値のデータもWebサイト「政府統計の総合窓口(e-Stat)」(独立行政法人統計センター)から全 てダウンロードして閲覧できる。なお、e-Statからダウンロードできるデータは、大学を設置形 態と学部数で12の区分(表1)に分け、その区分ごとの集計値となっている。個票は開示されて いない。 表1 文部科学省「学術情報基盤実態調査」における集計区分 国立大学 公立大学 私立大学
A(8学部以上) A(8学部以上) A(8学部以上) B(5~ 7学部) B(5~ 7学部) B(5~ 7学部) C(2~ 4学部) C(2~ 4学部) C(2~ 4学部) D(単科大学) D(単科大学) D(単科大学) (2)分析の方法 文部科学省の公表しているとりまとめ(例えば、(文部科学省2018))は、本調査における調 査票の中でも一部の設問についてのみ扱っているほか、表1に上げた区分ごとの詳細な比較は ないなど概要にとどまるものであるため、本稿では公表データをさらに深く分析していく。 分析をする上で、国公私立の設置形態および大学の学生規模ごとの差異や、12年間の変化の 傾向に注目する。それらを精緻に見ていくことで、大学の情報化の現状に対するより正確な把 握が可能になると考えられるためである。 分析にあたり、表1の12区分を表2のように組み替えている。これは設置形態別に比較をす る上で、表1の区分では同じ区分内でも平均的な学生数が大きく異なる場合があるため、大学 の規模の影響を充分に統制できないと考えられるためである。例えば、平成29年度のデータで みると、同じ8学部以上であるAの区分において含まれる大学の1校あたりの平均学生数は、国 立で15,811人、私立で19,241人に対し、公立は8,333人と大きな差異がある。表2において、「規 模大」には国立Aと私立Aのみを含めた区分で1校あたりの学生数は18,207人となっている。「規 模中」は国立B・C、公立A・B、および私立Bを含めた区分で1校あたりの学生数は6,975人であ
3 は2,378 人である。この区分内で比較することで、元の区分内で比較するよりも規模の影響は かなり低減されると思われる。ただ「単科大学」については学生規模にかかわらず1 区分にま とめている。これは区分内で設置形態別の比較対象がなくなってしまわないようにするための、 やむを得ない措置である。
2.情報環境の管理体制
(1)教育研究用システムと事務用システム
情報システムは、PC やサーバ、ネットワークといったハードウェア、教育研究や業務を処 理するためのソフトウェア、そしてそれらを効率的・効果的に利用するための決めごとや手順 を指す運用など、多様な側面から構成される。これらの側面が有機的に統合することで初めて 価値を生み出すことが可能となるのであり、そのためには目的の達成に向けた全体のコント ロール、すなわち運用管理が欠かせない。 大学の情報システムは、その目的や利用者、扱う情報の質が教育研究用と事務用で大きく異 なる。そのため、教育研究用と事務用で異なる組織が運用管理を行うことがある。まずはその 状況を見てみよう。 図1 は、教育研究用と事務用を一元的に管理している大学の割合1)を示したものである。経 年変化の傾向をみるため、図は平成18、23、29 年度の 3 時点の数値を示している2)。公立大 学と私立大学ではおおよそ60%台後半から 80%台後半が一元的な管理を実施していることが 確認できる。一方で国立大学では相対的に一元管理している大学の割合が少なく、おおよそ半 数程度である。これは規模区分にかかわらず言える特徴となっている。また、その傾向に平成 18 年度から大きな変化はない。国立大学の構造的な特徴と言って良い。 図 1 教育研究用と事務用を一元的に管理している大学の割合(%) 図1 教育研究用と事務用を一元的に管理している大学の割合(%) 大学アドミニストレーション研究 第9号(2018年度) 53 る。「規模小」は公立Cと私立Cを含めた区分で1校あたりの学生数は2,378人である。この区分 内で比較することで、元の区分内で比較するよりも規模の影響はかなり低減されると思われる。 ただ「単科大学」については学生規模にかかわらず1区分にまとめている。これは区分内で設置 形態別の比較対象がなくなってしまわないようにするための、やむを得ない措置である。 2.情報環境の管理体制 (1)教育研究用システムと事務用システム 情報システムは、PCやサーバ、ネットワークといったハードウェア、教育研究や業務を処理 するためのソフトウェア、そしてそれらを効率的・効果的に利用するための決めごとや手順を 指す運用など、多様な側面から構成される。これらの側面が有機的に統合することで初めて価 値を生み出すことが可能となるのであり、そのためには目的の達成に向けた全体のコントロー ル、すなわち運用管理が欠かせない。 大学の情報システムは、その目的や利用者、扱う情報の質が教育研究用と事務用で大きく異 なる。そのため、教育研究用と事務用で異なる組織が運用管理を行うことがある。まずはその 状況を見てみよう。 図1は、教育研究用と事務用を一元的に管理している大学の割合1)を示したものである。経年 変化の傾向をみるため、図は平成18、23、29年度の3時点の数値を示している2)。公立大学と 私立大学ではおおよそ60%台後半から80%台後半が一元的な管理を実施していることが確認 できる。一方で国立大学では相対的に一元管理している大学の割合が少なく、おおよそ半数程 度である。これは規模区分にかかわらず言える特徴となっている。また、その傾向に平成18年 度から大きな変化はない。国立大学の構造的な特徴と言って良い。 一般論として、物事を複数の組織が管理する場合、それぞれが個別に最適化を図りやすい一方で、逆に全体の最適化は難しくなる。国立大学が教育研究用と事務用を分けて管理すること が多い理由について明らかにできれば、大学での情報システム管理における全体最適と個別最 適の在り方に関する示唆が得られると思われる。今後の課題である。 (2)管理組織 大学の情報システムを教育研究用と事務用で一元管理している大学の割合は、(規模区分別・ 設置形態別でそれぞれ程度の差や幅はあるものの)全体の傾向としては変化していない。一方 で、実際に運用管理を担う組織の傾向は大きく変化した。 データを見る前に、調査票における選択肢としてあげられている組織名称について確認して おく。調査票にはそれぞれの組織に関する明確な定義は見られず、各大学は選択肢として示さ れた文字面から解釈して回答をしていると考えられる。したがって推測とはなるが、その中で も主なものについての見解を示しておく。 「情報処理関係施設」とは、学内の情報センター /メディアセンターなど、情報システムの維持・ 開発および関連した教育研究を行うことを目的として設置された施設を指し、国立大学におけ る当該施設相当の組織を想定していると考えられる。なお、図書館は、調査票に別途選択肢と して準備されているため、これには含まれない。 「事務局本部」は、大学としてだけではなく、各種法人の下におかれる教育研究にとどまらな い全体の事務を統括する、主に非教育職員が中心となる組織を想定していると考えられる。事 務組織としての情報システム部門は、他の選択肢に独立した項目がないことから、本項目に含 めて回答される場合が多いと推察される。 なお、その他の選択肢には、「学部・研究科」、「研究所」、「図書館」、「教職員による運営委員会 等」、「その他」、「全ての業務を外部委託」がある。 図2は、一元管理している大学における主要な管理組織として、情報処理関係施設と事務局 本部の状況を示したものである。図中の数値は、各規模区分・設置形態における該当大学数の、 全大学数に対する割合である3)。 まず、国立大学では大部分(77~ 90%)を情報処理関係施設が運用管理を担っていることが 分かる。これは規模区分にかかわらず同様である。また、平成18年度時点からの変化も比較的 わずかである。 一方で、私立大学は情報処理関係施設が運用管理を行う割合が、国立大学に比べて少ない。 しかも、平成18年度時点から明確な割合の減少が見られる。当時は30%(単科大学)から66%(規 模大)を占めていたが、最新の平成29年度は、19%(単科大学)から40%(規模大)まで急激に 落ち込んでいる。そしてその減少分を埋めるように事務局本部が管理する割合が増加している。 増分は、同22%(規模大)から39%(単科大学)だったものが、同41%(単科大学)から57%(規模 中)にもなっている。この傾向は、公立大学でもまったく同じである。 なお、図2は教育研究用と事務用を一元管理している大学について示しているが、国立大学 では半数は教育研究用と事務用を別管理している。その場合の主な管理組織の状況は次の通り
5 では半数は教育研究用と事務用を別管理している。その場合の主な管理組織の状況は次の通り である(紙幅の関係で図表は省略)。平成29 年度時点の教育研究用システムの管理は、情報処 理関係施設が80%(規模大)から 100%(単科大学)、事務用については事務局本部が 85%(規 模中)から100%(規模大)となっている。平成 18 年度の調査開始時点からこの傾向に大きな 変化はない。この点は一元管理している大学と同様である。 図 2 運用管理を行っている主な組織の割合(教育研究用と事務用を一元管理している大学) 図2 運用管理を行っている主な組織の割合(教育研究用と事務用を一元管理している大学) 大学アドミニストレーション研究 第9号(2018年度) 55 である(紙幅の関係で図表は省略)。平成29年度時点の教育研究用システムの管理は、情報処理 関係施設が80%(規模大)から100%(単科大学)、事務用については事務局本部が85%(規模中) から100%(規模大)となっている。平成18年度の調査開始時点からこの傾向に大きな変化はな い。この点は一元管理している大学と同様である。 以上をまとめると、情報システムの管理の状況は次の通りとなる。国立大学の大部分は情報
処理関係施設が管理を担うが、一部事務系のみ事務局本部が担う場合もある。公立大学、私立 大学では急速に情報処理関係施設から事務局本部への変化が生じている。この大きな変化の背 景については、今後の課題である。 (3)人員の構成 運用管理を担う組織の状況を確認したところで、組織の構成員について見ていく。大学の情 報システムの管理運営には教員、職員、管理職の全てが関わる。また職員については、一般の事 務とは別に、情報システムに関する技術を扱う専門知識・技能が必要となることも重要な点で ある。調査票では、この点を「事務職員」「技術職員」と分けて調査している。 図3は、平成29年度の調査結果をもとに、各規模区分・設置形態の大学における、運用管理を 行う組織の1校あたりの実人数4)と、職種・職務別の割合内訳5)を示したものである。 1校あたりの人数は概して規模区分に応じて多くなる。特に規模大の区分は規模中以下の区 分に比べ倍以上の人員を要しており、国立大学で46.7人、私立大学で32.9人となっている。同 じ規模区分の中では、いずれの場合でも国立大学の人数が最も多いことも一貫した傾向として 確認できる。 続いて、職種・職務別の内訳を見てみよう。まず、全ての場合において事務職員が占める割合 が最も多いことが分かる。国立大学で30%(規模中)から41%(規模大)、公立大学で39%(規模小) から49%(単科大学)、私立大学に至っては36%(単科大学)から52%(規模大)と、過半数を超 える場合もある。 技術職員は、国立大学においては規模区分にかかわらず20%台を占めている。公立・私立大 学も、規模中・規模大の場合は同程度の水準を占めるが、小規模や単科大学ではその割合は大 きく落ちて、4%(公立・単科大学)から14%(私立・規模小)となる。 教員は、国立・公立大学では規模によらずおおよそ一定の割合を占めており、26%(公立・単 科大学)から36%(公立・規模小)の間にある。一方で私立大学は規模区分により大きく割合は 変わる。単科大学で34%あるが、規模大では7%しかいない。概して、規模が大きいほど教員の 占める割合は減る傾向にある。 なお紙幅の関係で図表は省略するが、職種・職務別割合も調査開始時点から変化している。 特徴的なのは国立大学では教員の割合が減少傾向にあることだ。平成18年度当時は37%(規模 中)から46%(単科大学)もあり、平成29年度時点より10から20ポイントも高かった。逆に事 務職員は、平成18年当時は21%(単科大学)から34%(規模大)であり、やはり10ポイント程度 上昇している。公立・私立大学にはここまで大きな変化は見られないが、国立大学も含めて全 ての大学で管理職の割合が増加傾向にあることも興味深い変化である。 国立大学で急激に教員が減少したことは、明確に課題として認識されている。図4は教員不 足を課題として上げた大学の割合6)を示しているが、全ての規模において国立大学が飛び抜け て高い数値を示している。平成29年度時点でいうと、42%(規模大)から70%(規模中)の国立 大学が課題としてあげている。そしてその割合も増加傾向にある。対象的に私立大学では教員
7 教員不足を課題としてあげる割合は相対的に低い。同じく平成29 年度でみると 20%(規模中) から32%(単科大学)にとどまっている。特に、規模大の私立大学では管理人員に占める教員 の割合は7%しかないが、課題と捉えている大学は 20%程度である。国立大学と私立大学で、 教員による管理に対する認識は対照的であることが分かる。 図 3 職種・職務別 管理人員 1校あたり平均 10.5人 1校あたり平均 7.2人 1校あたり平均 7人 1校あたり平均 32.9人 1校あたり平均 17.3人 1校あたり平均 12.2人 1校あたり平均 14.8人 1校あたり平均 11.5人 1校あたり平均 6.5人 規模中 規模大 規模小 単科大学 1校あたり平均 46.7人 国立 公立 私立 10% 26% 23% 41% 15% 7% 26% 52% 13% 28% 29% 30% 10% 27% 23% 40% 17% 18% 22% 43% 13% 36% 12% 39% 26% 16% 14% 44% 16% 27% 24% 33% 21% 26% 4% 49% 20% 34% 10% 36% 管理職 教員 技術職員 事務職員 図3 職種・職務別 管理人員 大学アドミニストレーション研究 第9号(2018年度) 57 不足を課題としてあげる割合は相対的に低い。同じく平成29年度でみると20%(規模中)から 32%(単科大学)にとどまっている。特に、規模大の私立大学では管理人員に占める教員の割合 は7%しかないが、課題と捉えている大学は20%程度である。国立大学と私立大学で、教員によ る管理に対する認識は対照的であることが分かる。 まとめると、大学の情報システムの管理人員は事務職員が最も多いが、教員の参画率は国公
8 まとめると、大学の情報システムの管理人員は事務職員が最も多いが、教員の参画率は国公 立・小規模ほど多い。国立大学は教員から事務職員への、国公私全体としては管理職への比重 が増加傾向にある。また技術職員は学生規模が大きい大学ほど多い傾向がある。なお、本稿で は常勤・非常勤、専任・兼任の区別をせず集計しているが、公表データではこの区別ごとに集 計されている。今後はこれらの内訳ごとの検討も課題である。 図 4 教員不足を課題にあげる大学の割合(%)
3.情報戦略
(1)情報戦略の策定状況
大学における情報化を促進するためには、情報環境の計画的な整備が重要となる。本調査に は平成17 年当初から各大学の情報戦略の策定状況についての項目が含まれている。表 3 は、 各大学区分における情報戦略の策定割合をパーセンテージで示したものである7)。例えば、「コ ンピュータ及びネットワークの持続可能な整備・運用計画に関すること」という情報戦略を策 定した大学の割合は、国立・規模大の区分においては89%である。なお、情報基盤的側面、業 務的側面、その他の3 つの分類は戦略の内容から筆者が分類したもので、調査票には 8 つの戦 略が並列に記載されている。また、太字に下線を引いている数値は、大学区分別に見た時に最 も策定割合が高かったものであり、逆に太字にイタリック体としている数値は、最も策定割合 が低かったものを表している。 この結果を見ると、全体の傾向として戦略の策定割合は規模区分が大きいほど高くなってい る。例えば私立大学の全施策を合計した策定割合8)は、規模大の区分では55%あるが、規模が 小さくなるほど数値も小さくなり、単科大学では27%まで落ちる。国立大学、公立大学でも同 様の傾向がある。大規模な大学ほど、戦略的な整備の必要性に迫られるためと思われる。 また設置形態別に比較すると、国立大学、私立大学に比べて公立大学は総じて戦略の策定割 合が低い。例えば、規模中の区分において、国立大学では全施策の策定割合が47%、私立大学 で49%であるのに対し、公立大学は約半分の 23%しかない。規模小、単科大学の区分内での比 図4 教員不足を課題にあげる大学の割合(%) 立・小規模ほど多い。国立大学は教員から事務職員への、国公私全体としては管理職への比重 が増加傾向にある。また技術職員は学生規模が大きい大学ほど多い傾向がある。なお、本稿で は常勤・非常勤、専任・兼任の区別をせず集計しているが、公表データではこの区別ごとに集計 されている。今後はこれらの内訳ごとの検討も課題である。 3.情報戦略 (1)情報戦略の策定状況 大学における情報化を促進するためには、情報環境の計画的な整備が重要となる。本調査に は平成17年当初から各大学の情報戦略の策定状況についての項目が含まれている。表3は、各 大学区分における情報戦略の策定割合をパーセンテージで示したものである7)。例えば、「コン ピュータ及びネットワークの持続可能な整備・運用計画に関すること」という情報戦略を策定 した大学の割合は、国立・規模大の区分においては89%である。なお、情報基盤的側面、業務的 側面、その他の3つの分類は戦略の内容から筆者が分類したもので、調査票には8つの戦略が並 列に記載されている。また、太字に下線を引いている数値は、大学区分別に見た時に最も策定 割合が高かったものであり、逆に太字にイタリック体としている数値は、最も策定割合が低かっ たものを表している。 この結果を見ると、全体の傾向として戦略の策定割合は規模区分が大きいほど高くなってい る。例えば私立大学の全施策を合計した策定割合8)は、規模大の区分では55%あるが、規模が 小さくなるほど数値も小さくなり、単科大学では27%まで落ちる。国立大学、公立大学でも同 様の傾向がある。大規模な大学ほど、戦略的な整備の必要性に迫られるためと思われる。 また設置形態別に比較すると、国立大学、私立大学に比べて公立大学は総じて戦略の策定割 合が低い。例えば、規模中の区分において、国立大学では全施策の策定割合が47%、私立大学で表3 情報戦略の策定大学の割合(%) 9 較でも同様に公立大学は数値が低い。公立大学の構造的な特徴とみられる。 次に戦略の内容別に見てみると、「コンピュータ及びネットワークの持続可能な整備・運用計 画に関すること」、「全学的な情報セキュリティの確保に関すること」の策定割合が最も高かっ た区分が多い(太字・下線)。この2 点は特に重視されていると読み取れる。逆に、多くの区 分で最も策定割合が低かった(太字・イタリック)のは、「人材確保・専門家養成に関すること」 であった。先に、教員の人材不足が重要な課題と認識されていることを見たが、教員に限らず 職員の不足も同様に大きな課題となっている(図表省略)。一方で、解決に向けた戦略策定は進 んでいないことが分かる。 なお規模別・戦略別に国立大学と私立大学を個々に比較していくと、情報基盤的側面に関す る戦略は国立大学の方が高いケースが多いが、業務的側面に関する戦略は逆に私立大学の方が 高いケースが多い。特に「教育の情報化に関すること」の規模中の区分内での比較では、国立 大学48%に対して私立大学 70%となっており、22 ポイントもの差がついている。概して、国 立大学は情報基盤的側面をより重視し、私立大学は相対的に業務的側面を重視している傾向が あると読み取れる。私立大学の方が国立大学よりも、業務的側面に対する情報戦略の必要性を 感じていることを示している可能性はないだろうか。仮説として指摘しておきたい。 表 3 情報戦略の策定大学の割合(%) 太字・下線は、(同一規模区分・設置形態の中で)策定割合が最大、太字・イタリックは、 (同一規模区分・設置形態の中で)策定割合が最小であることを示す。
(2)情報戦略を策定した会議
その他 コン ピュータ 及びネッ トワーク の持続可 能な整 備・運用 計画に関 すること 全学の情 報システ ムの一元 化・集中 化に関す ること 人材確 保・専門 家養成に 関するこ と 危機管理 対策に関 すること 全学的な 情報セ キュリ ティの確 保に関す ること 業務改 善・業務 高度化の 推進に関 すること 教育の情 報化に関 すること (e-learning の推進、 教育用コ ンテンツ の充実 等) その他 国立 規模大 89 84 57 63 89 73 68 10 67 規模中 73 58 21 43 85 39 48 7 47 規模小 - - - -単科大学 57 34 19 50 69 26 38 0 37 公立 規模大 - - - -規模中 62 37 12 0 50 12 12 0 23 規模小 42 28 5 22 54 14 17 0 23 単科大学 30 21 6 19 32 15 21 0 18 私立 規模大 88 75 27 52 77 54 68 0 55 規模中 81 62 14 41 70 47 70 5 49 規模小 72 50 10 33 61 37 56 0 40 単科大学 51 32 8 21 41 28 33 0 27 区分 全施策 情報基盤的側面 業務的側面 太字・下線は、(同一規模区分・設置形態の中で)策定割合が最大、太字・イタリックは、(同一規模 区分・設置形態の中で)策定割合が最小であることを示す。 大学アドミニストレーション研究 第9号(2018年度) 59 49%であるのに対し、公立大学は約半分の23%しかない。規模小、単科大学の区分内での比較 でも同様に公立大学は数値が低い。公立大学の構造的な特徴とみられる。 次に戦略の内容別に見てみると、「コンピュータ及びネットワークの持続可能な整備・運用計 画に関すること」、「全学的な情報セキュリティの確保に関すること」の策定割合が最も高かっ た区分が多い(太字・下線)。この2点は特に重視されていると読み取れる。逆に、多くの区分で 最も策定割合が低かった(太字・イタリック)のは、「人材確保・専門家養成に関すること」であっ た。先に、教員の人材不足が重要な課題と認識されていることを見たが、教員に限らず職員の 不足も同様に大きな課題となっている(図表省略)。一方で、解決に向けた戦略策定は進んでい ないことが分かる。 なお規模別・戦略別に国立大学と私立大学を個々に比較していくと、情報基盤的側面に関す る戦略は国立大学の方が高いケースが多いが、業務的側面に関する戦略は逆に私立大学の方が 高いケースが多い。特に「教育の情報化に関すること」の規模中の区分内での比較では、国立大 学48%に対して私立大学70%となっており、22ポイントもの差がついている。概して、国立大 学は情報基盤的側面をより重視し、私立大学は相対的に業務的側面を重視している傾向がある と読み取れる。私立大学の方が国立大学よりも、業務的側面に対する情報戦略の必要性を感じ ていることを示している可能性はないだろうか。仮説として指摘しておきたい。情報戦略については、誰が策定するかによっても特徴が現れることが推測される。図5 は情 報戦略を策定した大学のうち、策定を担った主な会議体の割合9)である。 おおよそ、「複数の学部等が参加する委員会等」が多く、次に「情報関係の最高責任者の諮問 機関」が多いという傾向がある。しかしそれ以外に、規模区分や設置形態別、経年変化のいず れにおいても明確な傾向や特徴を抽出することはできない。情報戦略に関する意思決定につい ては、各大学がそれぞれの学内事情に応じて行われており、定式化した在り方というものは存 在しないとみることができると思われる。教員・職員・役員など、多様な人材が集う大学とい 図 5 情報戦略を策定した会議の割合(%) 図5 情報戦略を策定した会議の割合(%) (2)情報戦略を策定した会議 情報戦略については、誰が策定するかによっても特徴が現れることが推測される。図5は情 報戦略を策定した大学のうち、策定を担った主な会議体の割合9)である。
表4 情報化施策の実施状況(平成29年度) 11 う組織自体の特性を鑑みれば、意思決定のプロセスに大学ごとの多様性があるのは、情報化に 限らないことである可能性もある。なお、選択肢には「学長による諮問機関」という選択肢も あるが割合は少ない。学長を中心としたガバナンスの強化は、情報化という面に関しては進ん でいるようには見えない。より詳細な調査が望まれる。
4.情報化施策の状況
(1)情報化施策の状況
ここまで大学の情報化に関して、誰が実施しているか(管理組織・人員)、および、どのよう に推進しようとしているか(情報戦略)を見てきた。最後に本章では、何をどの程度実施でき ているか、すなわち情報化施策の状況についてみていく。 表4 は各大学の情報化施策についての平成 29 年度の回答状況をまとめたものである。太字・ 下線は規模区分別に国公私立で比較した場合に最も数値が高いものを示している。なお、表に 載せている施策10)は調査対象のうちの一部である。例えば学内LAN、対外接続(WAN)、情 報リテラシー教育、高速計算機、クラウドの運用などの施策状況は除外している11)。これらの 状況については別途検討が必要である。 表 4 情報化施策の実施状況(平成 29 年度) 太字・下線は、(同一規模区分の中で)数値が最大であることを示す。 ※本施策のみ平成28 年度。平成 29 年度から選択肢変更があり、経年比較のため。 無線LANの導 入校割合 (100Mbps以 上)* 学内LANに接 続され、全学 的な利用を目 的としたパソ コン台数 シングルサイ ンオン 導入校割合 学内認証基盤 導入校割合 遠隔教育(講 義数) 講義のデジタ ルアーカイブ 化(講義数) 単位 (%) (台/千人) (%) (%) (講義数/万人) (講義数/万人) 規模大 国立 89 58 74 95 291 232 公立 - - - -私立 75 135 60 88 499 57 規模中 国立 73 85 68 100 209 75 公立 50 119 37 100 17 0 私立 90 152 46 94 17 76 規模小 国立 - - - -公立 68 201 44 79 50 4 私立 67 220 26 79 68 40 単科大学 国立 81 189 54 96 472 58 公立 67 362 26 80 84 76 私立 56 198 20 69 476 54 区分 情報基盤的側面 業務的側面 太字・下線は、(同一規模区分の中で)数値が最大であることを示す。 *本施策のみ平成28年度。平成29年度から選択肢変更があり、経年比較のため。 大学アドミニストレーション研究 第9号(2018年度) 61 おおよそ、「複数の学部等が参加する委員会等」が多く、次に「情報関係の最高責任者の諮問 機関」が多いという傾向がある。しかしそれ以外に、規模区分や設置形態別、経年変化のいずれ においても明確な傾向や特徴を抽出することはできない。情報戦略に関する意思決定について は、各大学がそれぞれの学内事情に応じて行われており、定式化した在り方というものは存在 しないとみることができると思われる。教員・職員・役員など、多様な人材が集う大学という組 織自体の特性を鑑みれば、意思決定のプロセスに大学ごとの多様性があるのは、情報化に限ら ないことである可能性もある。なお、選択肢には「学長による諮問機関」という選択肢もあるが 割合は少ない。学長を中心としたガバナンスの強化は、情報化という面に関しては進んでいる ようには見えない。より詳細な調査が望まれる。 4.情報化施策の状況 (1)情報化施策の状況 ここまで大学の情報化に関して、誰が実施しているか(管理組織・人員)、および、どのよう に推進しようとしているか(情報戦略)を見てきた。最後に本章では、何をどの程度実施できて いるか、すなわち情報化施策の状況についてみていく。 表4は各大学の情報化施策についての平成29年度の回答状況をまとめたものである。太字・表5 各施策の調査時点からの数値の変化 この表を規模区分別に設置形態間の違いに注目してみると、国立大学が最も進んでいる施 策・規模区分が多い。全体としては、国立大学が私立大学、公立大学に比べて情報化が進んで いる傾向があるといえる。ただし、公立大学、私立大学の方が進んでいる施策・規模区分も多 く、国立大学が圧倒しているというような状況ではない。情報化施策の推進状況については、 施策ごとにより精緻に検証していくことが必要と考えられる。 なお、学生あたりのパソコン台数はいずれの規模区分においても国立大学が少ない。例えば、 規模大で見ると国立大学は学生千人あたり58 台なのに対し、私立大学は同 135 台である。パ ソコン台数は、少なければ学生の利用する機会を奪う可能性がある一方で、需要以上に多いの は無駄な投資である。したがって、少ないから情報化が進んでいないと言い切れないが、興味 深い傾向である。 次に各施策の経年変化の状況について見てみよう。表5 は各施策の調査開始時点と最新の平 成29 年度時点の数値の差をとったものである。ほとんどの施策の数値は上昇傾向にあること が見られる一方で、パソコン台数のみ明らかな減少傾向が見て取れる。 表 5 各施策の調査時点からの数値の変化 ※1 平成 25 年度調査開始時点からの変化。 ※2 平成 20 年度調査開始からの変化。
(2)消えた 30 万台のパソコン
大学におけるパソコン台数については減少傾向にあること、国立大学は私立大学に比べて学 生あたりの設置台数が少ないことを見てきた。より詳細に年度ごとの経年変化を示したのが図 無線LANの導 入校割合 (100Mbps以 上) 学内LANに接 続され、全学 的な利用を目 的としたパソ コン台数 シングルサイ ンオン 導入校割合 *1 学内認証基盤 導入校割合 遠隔教育(講 義数)*2 講義のデジタ ルアーカイブ 化(講義数) *1 単位 (%) (台/千人) (%) (%) (講義数/万 人) (講義数/万 人) 規模大 国立 83 ▲ 603 0 51 214 94 公立 私立 70 ▲ 49 4 18 400 ▲ 160 規模中 国立 71 ▲ 433 33 56 187 45 公立 50 ▲ 213 ▲ 5 34 8 ▲ 10 私立 86 ▲ 61 11 16 ▲ 44 62 規模小 国立 公立 68 ▲ 168 22 24 38 ▲ 2 私立 65 ▲ 31 6 12 48 ▲ 3 単科大学 国立 77 ▲ 280 ▲ 6 50 456 31 公立 67 ▲ 113 1 30 21 74 私立 53 ▲ 22 3 10 443 25 区分 情報基盤的側面 業務的側面 *1 平成25年度調査開始時点からの変化。 *2 平成20年度調査開始からの変化。 62 下線は規模区分別に国公私立で比較した場合に最も数値が高いものを示している。なお、表に 載せている施策10)は調査対象のうちの一部である。例えば学内LAN、対外接続(WAN)、情報 リテラシー教育、高速計算機、クラウドの運用などの施策状況は除外している11)。これらの状 況については別途検討が必要である。 この表を規模区分別に設置形態間の違いに注目してみると、国立大学が最も進んでいる施策・ 規模区分が多い。全体としては、国立大学が私立大学、公立大学に比べて情報化が進んでいる 傾向があるといえる。ただし、公立大学、私立大学の方が進んでいる施策・規模区分も多く、国 立大学が圧倒しているというような状況ではない。情報化施策の推進状況については、施策ご とにより精緻に検証していくことが必要と考えられる。 なお、学生あたりのパソコン台数はいずれの規模区分においても国立大学が少ない。例えば、 規模大で見ると国立大学は学生千人あたり58台なのに対し、私立大学は同135台である。パソ コン台数は、少なければ学生の利用する機会を奪う可能性がある一方で、需要以上に多いのは 無駄な投資である。したがって、少ないから情報化が進んでいないと言い切れないが、興味深 い傾向である。 次に各施策の経年変化の状況について見てみよう。表5は各施策の調査開始時点と最新の平 成29年度時点の数値の差をとったものである。ほとんどの施策の数値は上昇傾向にあることが13 6 である。これを見ると、平成 17 年度から平成 18 年度にかけての 1 年間に急激な減少が見ら れる。国立大学がもっとも急激だが、公立大学の減少もかなり大きい。一方で私立大学はそれ に比べると穏やかな変化である。実台数でいうと、国公私の全ての大学で平成17 年度には 918,659 台のパソコンがあったものが、平成 18 年度の同回答では 609,965 台となっている。 この1 年間で日本の大学から約 30 万台のパソコンが「消えた」ことになる。これは平成 17 年 度比35%減に相当する。 これには何らかの理由があると考えるのが妥当である。1 つには、回答する際に対象パソ コンの認識が変わった可能性が考えられる。平成17 年度も平成 18 年度以降も、調査票の補足 資料である「凡例」には、「全学的な利用を目的とした」パソコンを調査対象としていることが 明記されていることに変わりはない。一方で調査票の教示文には違いが見られる。平成17 年 度が「学内LAN に接続された PC 端末数」であるのに対し、平成 18 年度以降から「学内 LAN に接続され、全学的な利用を目的としたパソコン台数」になっている。すなわち、平成17 年 度の数値は、全学的な利用ではない特定利用を目的としたパソコン台数が含まれていたという 点で「凡例」に反するものであった可能性がある。もしそうであれば、国立大学は全学利用を 目的としないパソコンを、私立大学に比べて大量に有していることを示すことになり、情報環 境整備に対する考え方の違いを表していることになる。他にも国立大学で特に減少が大きいこ とから、平成16(2004)年度からの国立大学法人化や、時期的に平成 17(2005)年の個人情 報保護法の完全施行による影響の可能性もある。いずれにしても、詳細な調査が望まれる。 図 6 学内 LAN に接続され、全学的な利用を目的としたパソコン台数の推移(台/学生千人)
5.おわりに
文部科学省の「学術情報基盤実態調査」の「コンピュータ及びネットワーク編」についての 公開データを設置形態と学生規模に分けて分析を行い、情報システムの管理・運営体制、情報 戦略、情報化施策の3 点を俯瞰的にみてきた。その結果、同じ大学でも情報化の在り方には大 きな差異や変化が生じていることが分かった。 国立大学は情報処理センターといった情報専門の機関・施設が情報化の中心を担っており、 公立・私立大学に比べて教員が重要な役割を果たしていた。逆に公立大学、私立大学では事務 図6 学内LANに接続され、全学的な利用を目的としたパソコン台数の推移(台/学生千人) 大学アドミニストレーション研究 第9号(2018年度) 63 見られる一方で、パソコン台数のみ明らかな減少傾向が見て取れる。 (2)消えた30万台のパソコン 大学におけるパソコン台数については減少傾向にあること、国立大学は私立大学に比べて学 生あたりの設置台数が少ないことを見てきた。より詳細に年度ごとの経年変化を示したのが図 6である。これを見ると、平成17年度から平成18年度にかけての1年間に急激な減少が見られる。 国立大学がもっとも急激だが、公立大学の減少もかなり大きい。一方で私立大学はそれに比べ ると穏やかな変化である。実台数でいうと、国公私の全ての大学で平成17年度には918,659台 のパソコンがあったものが、平成18年度の同回答では609,965台となっている。この1年間で日 本の大学から約30万台のパソコンが「消えた」ことになる。これは平成17年度比35%減に相当 する。 これには何らかの理由があると考えるのが妥当である。1つには、回答する際に対象パソコ ンの認識が変わった可能性が考えられる。平成17年度も平成18年度以降も、調査票の補足資料 である「凡例」には、「全学的な利用を目的とした」パソコンを調査対象としていることが明記 されていることに変わりはない。一方で調査票の教示文には違いが見られる。平成17年度が「学 内LANに接続されたPC端末数」であるのに対し、平成18年度以降から「学内LAN に接続され、 全学的な利用を目的としたパソコン台数」になっている。すなわち、平成17年度の数値は、全 学的な利用ではない特定利用を目的としたパソコン台数が含まれていたという点で「凡例」に 反するものであった可能性がある。もしそうであれば、国立大学は全学利用を目的としないパ ソコンを、私立大学に比べて大量に有していることを示すことになり、情報環境整備に対する 考え方の違いを表していることになる。他にも国立大学で特に減少が大きいことから、平成16 (2004)年度からの国立大学法人化や、時期的に平成17(2005)年の個人情報保護法の完全施行 による影響の可能性もある。いずれにしても、詳細な調査が望まれる。5.おわりに 文部科学省の「学術情報基盤実態調査」の「コンピュータ及びネットワーク編」についての公 開データを設置形態と学生規模に分けて分析を行い、情報システムの管理・運営体制、情報戦略、 情報化施策の3点を俯瞰的にみてきた。その結果、同じ大学でも情報化の在り方には大きな差 異や変化が生じていることが分かった。 国立大学は情報処理センターといった情報専門の機関・施設が情報化の中心を担っており、 公立・私立大学に比べて教員が重要な役割を果たしていた。逆に公立大学、私立大学では事務 局本部が管理を行い、事務職員も多い傾向にあった。また戦略、施策ともに全体としては国立 大学が最も進んでいた。しかしより詳細に見ると、私立大学は業務的側面を重視している可能 性が示唆された。 今後は、本稿で示したそれぞれの大学の差異や変化傾向の原因についてより詳細に調査して いく必要がある。特に、大学の法制度や体制、設置している学部の分野等との関連を検討する ことで、大学の情報化に向けた示唆が得られると思われる。本分野の研究の進展が望まれる。 注 1) (教育研究用と事務用を一元的に管理している大学の大学数)/(大学数)×100 2) 調査は平成17年度から実施されているが、設問によっては後で追加されたものもある。そのため、 経年比較のために3時点を選ぶ場合には、調査における最初の年度、と平成29年度、およびその 中間の年度としている。以降の図も同様である。 3) (教育研究用と事務用を一元的に管理している大学において主な管理組織を当該組織と回答した 大学数)/(大学数)×100 4) (主な管理組織における各職種・職務別の計)/(大学数) 5) (各職種・職務別の注4の値)/(全職種・職務別の注4の値の合計)×100 6) (教員不足の解消を課題とあげた大学数)/(大学数)×100 7) (各戦略を策定していると回答した大学数)/(大学数)×100 8) (各戦略を策定していると回答した大学数の8戦略の合計)/(大学数×8戦略)×100 9) (各会議体と回答した大学数)/(情報戦略策定済みと回答した大学数)×100 10) 「学内認証基盤」は、複数のシステムに共通の利用者認証の仕組みを指し、「シングルサインオン」 は、さらに一度で複数のシステムに同時ログインできる仕組みを指す。 11) 規模区分・設置形態で差異が生じやすいと思われるもの、推進状況を把握するために経年の変化 が大きいもの、解釈によって回答に幅が出づらいもの、等を念頭に対象を選択した。例えば、学 内LANの整備は平成17年度時点で95%以上の大学がすでに実施しており、差が出にくい。また、 クラウド運用については、パブリック/プライベート、オンプレ/オフプレ、IaaS/ PaaS/ SaaSの区分のいずれも含むと解釈ができ、一つの指標で比較するには適さないと判断した。 引用(参考)文献 独立行政法人統計センター,「学術情報基盤実態調査」『政府統計の総合窓口(e-Stat)』(https://www. e-Stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400601&tstat=000001015878&second2=1,2018.9.26). 文 部 科 学 省,『 学 術 情 報 基 盤 実 態 調 査 』(http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/ jouhoukiban/1266792.htm,2018.9.26).
大学アドミニストレーション研究 第9号(2018年度)
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文部科学省,2018,『平成29年度「学術情報基盤実態調査」について(概要)』(http://www.mext.go.jp/ component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/03/23/1402578_1.pdf,2018.9.26).