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我が国の大学学長挨拶文にみる人材育成方針の考察 : -大学Webサイトの学長挨拶文全件調査-

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我が国の大学学長挨拶文にみる人材育成方針の考察

-大学Webサイト上の学長挨拶文全件調査-

岡本 崇宅

【要旨】 21 世紀の今日、量的、規模的にも拡大の一途をたどる我が国の大学の役割は大 きな転換期を迎えている。平成 26 年度学校基本調査によると、国公私立大学あわ せて 781 校に学部生約 2,855,000 人が在籍している。また、同調査の高等学校卒業 者約 1,047,000 人中の大学(学部)進学者数は約 502,000 人であり、大学(学部)へ の進学率は約 48%である。このようなユニバーサルアクセス時代の大学に対し、 2011(平成 23)年には、大学設置基準第四十二条の二として、学生が卒業後に社 会的及び職業的自立を図るために必要な能力を培うための体制を義務化した。大学 による学生に対してのいわゆるキャリア教育の義務化である。本稿においては、収 集した各大学の学長挨拶文情報を基に各学長は人材育成方針を述べているのかを分 析した。前半部分では、大学Webサイト上の学長挨拶文調査について基礎的な分 析を行った。後半部分では、分析によって得られた結果をまとめ、本稿で明らかに なったことを踏まえて、残された課題を提示する。 キーワード:学長挨拶、人材育成、キャリア教育、グローバル、社会的汎用能力 1. 学長挨拶文内容の分析概要と手順 (1) 分析調査対象校 当初、我が国の国公私立大学の学長の「学生の人材養成・育成の方針、目的」を抽出する ために、各大学長の大学Webサイト上での挨拶文内容に着目した。対象校は、国立大学 86 校中 82 校、公立大学 92 校中 81 校、私立大学 603 校中 592 校の 755 大学の学長挨拶文・メッ セージ文について収集作業を行った。 (2) 学長挨拶文の収集方法 先ず、Webサイトのトップページから、収集すべき「学長挨拶」の閲覧を進めた。トップペー ジから階層をいくつか進む必要も多かった。 抽出した学長の挨拶文・メッセージ文の内容については、対象、読み手として誰を想定し ているのかに関しても様々であり、学生、卒業生、保護者、高校生、高校教員、学内教職員、 社会全般、企業、地域などであった。

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挨拶文全文の文字情報量は、国立大学で最大約 5,000 字から最小約 200 字、平均文字数約 1,460 字。公立大学で最大約 3,000 字から最小約 50 字、平均文字数約 900 字。私立大学で最大 8,500 字、最小 150 字、平均文字数 800 字であった。 (3) 対象挨拶文・メッセージ文の調査項目の選定 分析の対象とする挨拶文・メッセージ文は、いわば「自由記述」として書かれたものであり、 先述のとおり対象も様々である。そのため、今回の調査項目である「人材育成・養成の方針、 目的」に着目する前に、全データの印字出力を行い全文約 17 万文字に目を通す作業から入っ た。各大学のWebサイト上での学長挨拶文・メッセージ文の存在確認の結果、「学長挨拶」「学 長メッセージ」等の掲載が確認できた。 (4) 対象挨拶文の抽出、データの整理 挨拶文・メッセージ文の内容情報を整理するため、情報のテキストデータ化として電子情 報化を行った。Webサイト上の文字情報を全件表計算ソフトのセルに 1 大学 1 セルとして 取り込んだ。その後、テキストデータとして抽出した。 (5) 分析の概要 大学単位でデータとなる文章が「1 行」となる処理を行い、データ集計のためにエクセル を利用した。集計は、単純集計としてすすめた。分析の後半では、テキストマイニングによ る分析のため「TinyTextMiner」(以下 TTM)を利用した。分析の流れとしては、挨拶文・メッ セージ文の全文の表現に関して内容を分析した。次に本稿の主目的となる人材育成・養成の 表現に関する内容を分析した。 第二にテキストマイニングによる手法を用いて、人材育成・養成の内容から具体的な頻出 単語の抽出をおこなった。頻出単語としての「人材」に関する一語にのみ着目しても、頻出 単語間の関係性は明らかにすることができない。そのため、頻出する単語を抽出した後、出 現の仕方が似ている単語を分類化し単語類を確認した。 (6) 解析の手続き 「分析前処理」では、対象となるテキストデータに対して TTM により形態素解析をおこなっ た。「統計的解析」では、分類対象挨拶文の人材育成・養成内容の全テキストデータ 750 校に わたって頻出する単語がどのように出現するかを調査し、その出現の仕方が類似している複 数の単語を分類化した。 第一段階:①単語の抽出(形態素解析) テキストマイニングによる分析をおこなう際には、テキストから形態素を抽出し、各形態 素の品詞の特定をすすめる。本稿での分析対象となっている学長挨拶文はすべて日本語で記 述されている。そのため、文を形態素に区切ることは容易ではない。このようなキーワード

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については、キーワードファイルを作成することで形態素としてキーワード処理するように した。 第一段階:②データ表の作成 データ表作成については、形態素解析の結果を用いて抽出された要素の出現頻度を集計す る。これが第二段階で用いる分析データの基となる。先に用いたデータマイニングソフト TTM の出力結果を利用してテキストごとに要素を集計しデータ表を作成した。 第二段階:統計解析 第一段階で作成したデータ表をもとに、人材育成・養成の方針を抽出し、形態素解析デー タを統計処理ソフトウェアRにより統計処理による分析を進めた。 2. 国公私立大学長の挨拶文にみる人材育成方針内容分析 本節では、学長挨拶文等の基本情報を分析した。基本情報の分析をおこなうことで、各大 学の学長の挨拶文そのものから人材育成・養成の傾向を明らかにしようと試みた。 (1) 出現単語数の頻度 掲載全内容から抽出をおこなった「名詞」「複合名詞」のキーワードである。キーワードの 出現件数、出現率を国公私立大学のそれぞれと全体で見ることとした。全体での出現数 200 件以上、出現率 28%以上のキーワードを表 1、図 1 にまとめた。 表 1 学長挨拶文全文内容に関するキーワード出現件数「名詞、複合名詞」 名詞 出現件数 出現率 語 国立 公立 私立 全体 国立 公立 私立 全体 1 本学 45 61 383 489 55% 75% 65% 65% 2 大学 63 59 359 481 77% 73% 61% 64% 3 社会 49 44 328 421 60% 54% 56% 56% 4 教育 51 57 312 420 62% 70% 53% 56% 5 学生 43 47 303 393 52% 58% 52% 52% 6 育成 29 36 254 319 35% 44% 43% 43% 7 人材 40 37 238 315 49% 46% 41% 42% 8 貢献 42 35 185 262 51% 43% 32% 35% 9 精神 11 12 232 255 13% 15% 40% 34% 10 力 31 20 193 244 38% 25% 33% 33% 11 時代 26 26 188 240 32% 32% 32% 32% 12 人 17 17 192 226 21% 21% 33% 30% 13 世界 41 28 152 221 50% 35% 26% 29% 14 地域 41 47 130 218 50% 58% 22% 29% 15 建学 5 8 199 212 6% 10% 34% 28% 16 学部 25 35 152 212 30% 43% 26% 28% 17 研究 46 35 129 210 56% 43% 22% 28% 18 発展 41 29 139 209 50% 36% 24% 28% 19 活躍 23 30 154 207 28% 37% 26% 28% 20 知識 16 29 162 207 20% 36% 28% 28%

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㪇㩼 㪈㪇㩼 㪉㪇㩼 㪊㪇㩼 㪋㪇㩼 㪌㪇㩼 㪍㪇㩼 㪎㪇㩼 㪏㪇㩼 ಴⃻₸㩷࿖┙㩷 ಴⃻₸㩷౏┙㩷 ಴⃻₸㩷⑳┙㩷 ಴⃻₸㩷ో૕㩷 図 1 出現率 国立・公立・私立・全体レーダーグラフ化 名詞、複合名詞に限定すると、「本学」、「大学」が多いことについては、学長挨拶文である ことから、学長本人が、「私」の一人称を使用する以上に、「本学では」「○○大学では」で文 章が始まるためとの理由が考えられる。全体出現率で以下に多いのは、「社会」、「教育」、「学 生」、「育成」、「人材」、「貢献」と続くが、国公私立大学間の大きな差はない。 特徴的なのは、次に続く「精神」は、「建学の精神」などの文中表現の多い私立大学の特徴 がよく表れており、同じ特徴が「建学」についても表れている。 「世界」、「研究」の表現は国立大学の特徴として学長が言及していることがわかった。 「地域」について公立大学の場合は、県や市が設置する大学であり、出現数が高く出るこ とは予測された。また、国立大学についても高い頻度であったが、これは文部科学省の COC プログラム1)も関係しているのではないだろうか。結果として①本学・②大学・③社会・④ 学生・⑤教育・⑥育成・⑦人材・⑧人・⑨地域・⑩力・⑪世界・⑫皆さん・⑬時代・⑭貢献・ ⑮研究・⑯人間・⑰自分・⑱精神のキーワードを概観する限り、21 世紀社会の中で我が国の 高等教育機関の求められる役割、機能に収斂されいるとの仮説からすすめることとする。 (2) 品詞別の出現頻度 下記、表 2 のとおり、「全品詞」について、全体での出現率 20%以上のキーワードに限定 すると頻出語は 50 件であった。その中で、名詞 38 件、複合名詞 1 件、動詞 9、形容詞 2 件 である。名詞については、上記(1)のとおりである。動詞に着目すると、「学ぶ」、「考える」、「目 指す」、「行う」「求める」、「思う」、「育てる」、「迎える」、「取り組む」など教育、研究、学問 に関連するもの、入学者受け入れや人材育成に関連するキーワードが出現した。

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表 2 学長挨拶文全文内容に関するキーワード出現件数「全品詞」 語 品詞 出現 全体出現率 語 品詞 出現 全体出現率 本学 名詞 489 65.2% 知識 名詞 207 27.6% 大学 名詞 481 64.1% 多く 名詞 206 27.5% 社会 名詞 421 56.1% 求める 動詞 204 27.2% 教育 名詞 420 56.0% 必要 名詞 199 26.5% 学生 名詞 393 52.4% 思う 動詞 198 26.4% 学ぶ 動詞 321 42.8% 新しい 形容詞 195 26.0% 育成 名詞 319 42.5% 皆さん 名詞 183 24.4% 人材 名詞 315 42.0% 歴史 名詞 182 24.3% 考える 動詞 290 38.7% 人間 名詞 180 24.0% 貢献 名詞 262 34.9% 自分 名詞 180 24.0% 目指す 動詞 261 34.8% 充実 名詞 179 23.9% 精神 名詞 255 34.0% 日本 名詞 178 23.7% 身 名詞 246 32.8% 実現 名詞 175 23.3% 力 名詞 244 32.5% 支援 名詞 174 23.2% 時代 名詞 240 32.0% 現在 名詞 171 22.8% 人 名詞 226 30.1% 育てる 動詞 170 22.7% 高い 形容詞 224 29.9% 大切 名詞 168 22.4% 世界 名詞 221 29.5% 心 名詞 168 22.4% 地域 名詞 218 29.1% 新た 名詞 162 21.6% 行う 動詞 215 28.7% 迎える 動詞 161 21.5% 学部 名詞 212 28.3% 環境 名詞 160 21.3% 建学 複合名詞 212 28.3% 伝統 名詞 160 21.3% 研究 名詞 210 28.0% 分野 名詞 159 21.2% 発展 名詞 209 27.9% 取り組む 動詞 158 21.1% 豊か 名詞 209 27.9% 以下省略 活躍 名詞 207 27.6% (3) 頻出語の分類化 図 3 は、全体で 20%以上の出現率の語についてRを用いてクラスター分析した樹形図(デ ンドログラム)である。各クラスターを確認すると、①「16:人」、「17:高い」、「18:世界」、「19: 地域」4 語、②「32:新しい」、30:「必要」、「31:思う」3 語 ③「29:求める」、「28:多く」、「26: 活躍」、「27:知識」/「23:研究」、「24:発展」、「25:豊か」、/「20:行う」、「21:学部」、「22: 建学」10 語、これらは、相互に関係性があり、少数要素で登場していることを示している。 ①から③に連なるキーワードにより学部や研究により「世界的研究機関」2)や「地域中核拠点」 等の表現が挨拶文上に多くみられる。④「45:新た」、「46:迎える」、「47:環境」、「48:伝統」、「49: 分野」、「50:取り組む」については、新たに学生を迎え入れること、学びの環境があること、 伝統校で新たな分野にも取り組んでいることの言及が多い証左である。⑤「33:皆さん」、「34: 歴史」、「35:人間」、「36:自分」、「37:充実」、「38:日本」についても、在学生や新入生へ の呼びかけと同時に人間教育や自己の自立の重要性のために充実した生活をすること、我が 国日本のことを語る学長が多いと考えられる。⑥「39:実現」、「40:支援」、「43:大切」、「44: 心」、「41:現在」、「42:育てる」については、下記⑧も含めて人材育成や、そのための支援

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を説いていると考えられるが、在学生ではなく、受験者向けの受け入れの方針(アドミッショ ンポリシー)の説明関係とも考えられる。⑦「1:本学」、「2:大学」/「5:学生」/「3:社会」、 「4:教育」は大学と学生が最も関係性が高く挨拶文中で多くの学長が言及していることが考 えられる。⑧「15:時代」、「13:身」、「14:力」、/「12:精神」、「10:貢献」、「11:目指す」 は国際競争下にさらされている中で「能力」を発揮して貢献できるようになる卒業生を輩出 することのメッセージであったり、学生自身への励ましであったりなどが考えられる。⑨「9: 考える」、/「8:人材」、「6:学ぶ」、「7:育成」この項目は、まさに人材育成について言及し ているが、それは考えること、学ぶことと説いていると考えられる。学長の挨拶文では決し て「キャリア教育」や「就職活動」の語が多く使われているのではない。学生たちが大学と いう機関に属す間にさまざまな学び、経験、体験等を通じて培うことが人材育成の重要な要 件と受け取れた。こうして、クラスター分析を行う(下記図 3-1)と⑦の 5 が「学生」であるが、 その⑦の大学、本学、教育、社会が最も関係性が高く、その⑦に⑧、⑨が関連付けられてい ることが明らかになった。一方①から⑥までは、学生との関係性よりも高等教育機関の機能や、 そのトップとしての意見に近いものとも考えられた。  図 3 (4) 頻出語の関連性 頻出語の「本学」、「大学」、「社会」、「学生」、「教育」、「育成」、「人材」、「人」、「地域」、「力」、 「世界」、「皆さん」、「時代」、「貢献」、「研究」、「人間」、「自分」、「精神」と関連するキーワー ドがどの程度出現しているかについて見た。関連性分析として以下の 15 の項目に分類化を行 い、関連性の分析をすすめた。各項目とも出現数は数件など少ないものもあるが、学長の挨 拶文として表現の差として分析に加えることとした。下記①~⑮の項目を関連性として、そ れぞれ分析をすすめた。①「歴史、建学」20 語、1651 件、②「社会」14 語、766 件、③「多 様化」4 語、209 件、④「知識」10 語、835 件、⑤「高度化」18 語、199 件、⑥「職業人」14

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語、97 件、⑦「教育研究、学問」25 語、1224 件、⑧「学生」28 語、1959 件、⑨「支援、指導」 4 語、354 件、⑩「育成」8 語、1342 件、⑪「地域」6 語、487 件、⑫「国際化、グローバル化」 29 語、1245 件、⑬「改革、改善、新規取組」23 語、1643 件、⑭「キャリア教育関係」37 語、 285 件、⑮「社会的汎用能力(学士力、社会人基礎力)」38 語、1473 件 ①「歴史、建学」(表①) 「建学」が最も多い頻度で出現するキーワードを分類化し関連付けた。この項目では、学長 が自大学のことを紹介、説明をしている。特徴的なのは、私立大学でのみ用いられているキー ワードとして、創立者、設立者、の 2 つのキーワード。各大学の本文では、それら個人の尽 力で大学が創られたことや個人名が掲げられており、明治時代から続く伝統的な大学だけで なく、戦後の新制大学でも同様の傾向があった。この歴史について、多くの学長が「建学」、「歴 史」、「伝統」を重要視していると考えられる。 ②「社会」(表 2) 社会と密接に関係していることを意味している。 すなわち、山本の指摘のとおり「高等教育に大きな影響を与える社会の変化として、工業 社会から知識社会への転換と経済のグローバル化をあげている。大学改革を方向付ける様々 な規制緩和や構造改革は、単に高等教育のみの視点で捉えるのではなく、社会の変化の視点 で捉えなければならない。」(山本 2006:22)と、「社会の変化」に対して、「高等教育の視点」 としてのメッセージととらえることができるのではないだろうか。 学長挨拶文の中では、広義の「社会」、「日本」、「地域社会」が多く出現したが、関連するものは、 「現代社会」、「実社会」、「日本社会」「人間社会」、「人類社会」。「国際社会」や「グローバル社会」 については、競争下にさらされている日本の立場に言及している学長が多かった。同時に「知 識基盤社会」を意識しているのは、21 世紀の社会構造の変化をとらえ、「持続可能」、「持続的」 な社会3)については、資源問題や環境問題と密接にかかわることを意識したもの。また、今 後の日本人口の少子高齢化について言及する学長が「高齢化社会」について触れている。 ③「多様化」(表③) ②の「社会」とも関係するキーワードであり、社会構造についての挨拶文が多かった。「多 様化する学生」4)といった表現はなく、画一化が重要視される工業社会から、多様化がキーワー ドとなる知識社会に転換する今日、高等教育も社会のニーズに対応した機能分化が求められ ていており、21 世紀を迎えた今日の社会ニーズに対して言及していると考えられる。 ④「知識」(表④) 各学長は、大学とは知識獲得のための場であり、また獲得した知、知見を社会で使えるよ うにとの想いを挨拶文中で述べている。

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すなわち、今、問われている高等教育の構造改革は、社会が、知識社会に移行していくこ とである。一方で「知性」については教養と同義あるいは連動して用いられ、社会に出る学 生への人間として生きる上で持つ大切な感性を説く学長が多かった。 ⑤「高度化」(表⑤) 「高度化」のキーワード 18 件は、さらに次の 5 つに細かく分類ができる。 1. (5)高度、高度化、複雑化高度化、年々高度化、 2. (6)高度情報化社会、高度情報社会、高度情報化、高度テクノロジー社会、高度IC、 高度情報通信技術 3. (3)高度医療、高度先進医療、高度獣医療 4. (3)高度研究機関、高度機能、高度専門的、高度専門化 5. (1)高度実践能力 各学長は今日の大学の取り組むべき課題から、我が国の新たな高度な社会構造について触 れている。1 については、社会構造の状況と関連して言及している学長が多くあった。2 につ いては、社会構造の中でも「情報化社会」「テクノロジー社会」の高度化について触れている。 1,2 の両方とも、社会構造の変化があり、変化する社会からの要請を受けて自大学が教育研究 に取り組むことの重要性を挨拶文で触れている。3 については、医学部や医療技術系学部等 の大学の学長の挨拶文で、医療や獣医系についても高度化が進んでいることに触れている。4 については、大学の持つ研究機能、専門について触れている。5 は学生に対して社会に出る にあたって必要な能力について触れている。高度に多様化された教育目的を社会のニーズに したがって、それぞれの大学が達成していくことが重要であるとの認識が読み取れる。 ⑥「職業人」(表⑥) 出現数は多いとは言えない。全体で 97 件と他のキーワードに比して「職業」にかかるキー ワードは頻出しない。多くの大学でキャリア教育の義務化もあり、具体的に取り組まれてい るが、そんな中、学長が「職業」に対して少なくとも挨拶文の中で言及がなされていないこ とが分かった。国公私立大学すべてで出現したのは「職業人」29 件、「専門職業人」20 件、「高 度専門職業人」12 件であった。平成 21 年 12 月の中央教育審議会 大学分科会 質保証システ ム部会の指摘では、「社会的、職業的自立に関する指導等として,各大学がどのような取組を 行うかは(中略),その教育活動の全体が,卒業後の職業との関わりを重視して構成されてい るように,分野により多様であることを踏まえる必要がある。」とあるが、学長の挨拶文では 頻出しないといえる。 ⑦「教育研究、学問」(表⑦) これまでの②から⑥までのキーワードは「社会」との結びつきを説明するものであったが、 「教育」のキーワードは大学トップの学長として挨拶文の内容でも多くの文字数となってい

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る。「教育」「研究」は国公私立大学各々で出現するが、次の「教育目標」は私立大学では多 く言及しているが国立では 1、公立 2 と私立大学に特徴づけられるキーワードである。ほか にも国立、公立では出現しないキーワードが 2 件で私立大学のみの出現となったのは、「人間 教育」21 件、「女子教育」16 件、また、「実学教育」(国立 1. 私立 14)や「生涯教育」(公立 1、 私立 10)でもほぼ私立大学のみであった。これは、山本の指摘する「職業生活に必要な知識、 技術を学校教育において、人生のあらゆる時期に学びなおす、ということを前提とした概念」 (山本 2006:309)の教育を一部の私立大学で教育を行っていると考えられる。 ⑧「学生」(表⑧) 学生に対して、あるいは受験者の大半を占める高校生等への大学紹介に近い個所にあたる。 この項目は、学生に対しての学長の見方の表れと受け取れる。すなわち「学生生活」を謳歌 してほしい等が挨拶文にも見られた。「アルバイト」については、学長によって学業との関係 で、賛否両方の言及があった。 ⑨「支援、指導」(表⑨) 学生に対して、なんらかの教育課程内や課程外を含めての言及であった。また「サポート」 については、国立、公立では各 1 件の出現というのも私立大学で使われるキーワードと受け 取れる。今回、人材育成を調べる中で関連するこれら「支援」について同様に見たが、国立 大学が 60 件で同一校の重なりがあっても出現率 73%と高く、公立、私立は 44%で大きく差 が出る項目となった。 ⑩「育成」(表⑩) 本稿の調査目的の核になる、学長の「人材を育成する」等の直接言及しているキーワード である。出現の合計のみをみると、大学ごとに繰り返し、「人材を育成する」や「優秀な卒業 生を輩出する」、「高度職業人を養成する」等の言及があった。卒業後に向けた「人材育成・ 養成」に言及しているかについて挨拶文・メッセージ等の内容を通して確認出来たものは、 国立大学は、82 校のうち 81 校で確認でき、公立大学では、81 校のうち 78 校で確認し、私立 大学では 587 校のうち確認できた学校は 480 校となった。学長によるメッセージ発信としては、 一部の大学で「人材育成に言及すること」の重要性を認識していない可能性も考えられた。 ⑪「地域」(表⑪) 公立大学で、もっとも繰り返し「地域」のキーワードが出現した。「地域」には、「地域社会」 があり、そこに暮らす「地域住民」と大学との「地域連携」を図り、「地域貢献」をする。など、 公立大学の地元地域とも結びつきが強く表れるキーワードである。また、国立大学、公立大 学においても地元密着型の協同事業を行うなどの紹介や、公私協力方式の私立大学などでは、 学長挨拶ページの同じページ内に地元の首長挨拶があるなど、地元の地域を意識したキーワー

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ドと受け取れる。文部科学省の平成 25 年度「地(知)の拠点整備事業」1)により、「大学等 が自治体と連携し、全学的に地域を志向した教育、研究、社会貢献を進める大学を支援する ことで、(中略)人材や情報、技術が集まる、地域コミュニティの中核的存在としての大学の 機能強化」を図ることを目的とし、国公私立大学がそれぞれ、これまで以上に国の後押しも あり、地域コミュニティの中核的存在をめざすことになる。 ⑫「国際化、グローバル化」(表⑫) グローバル人材について友松(2012:4)は、「グローバル社会には、グローバルな課題にロー カルに取り組む人々、およびローカルな課題にグローバルに取り組む人々が存在する」と定 義している。まさに国際競争下の大きな転換期を迎える我が国においてグローバル人材の育 成は大きな課題であり、今まさに取り組むべきこととして重要視されている。各学長の内容 についても、「グーバル」だけでなく、「世界」、「国際」、「海外」や「アジア」「欧米」、また 国名では「アメリカ」、「中国」、「韓国」などのキーワードにより、社会の要請による「グロー バル人材」や「国際人」の育成に言及している。 「世界」については、人材ではなく、大学そのものが世界的研究機関、世界トップレベルの 大学2)になる宣言が多かった。 ⑬「改革、改善、新規取組」(表⑬) 喜多村によると、「大学の役割が、研究主体から教育主体へと転換すること、教員主体から 学習者主体へと転換していくこと。それを円滑に実行できる組織改革、教育改革が求められ ているというのが、大綱化以降の大学改革の一つの側面であろう。」(喜多村 1999:124)出 現したキーワードについても「未来」に向けて「独自」に「新設」するために、「改善」をす る、そのために「教育改革」であり、「本学独自」の「取組」であるなど、その目的の多くは、 学長のいう自大学の役割や強みへの言及である。 ⑭「キャリア教育関係」(表⑭) 「キャリア」関連のキーワードは、37 件と多くのキーワードが出現したが、頻度を見ると、 一番多い「就職」で 48 校、次に「資格」、「就職率」と続き、4 番目の「キャリア教育」で 24 校と決して高い頻度とは言えない。⑥の職業人の項目と同様の傾向で、学長の挨拶文としては、 直接的職業のための「プログラム」や「施設」の紹介の表現にはならないと考えられる。

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⑮「社会的汎用能力(学士力、社会人基礎力)」 学部教育、学士課程教育を通して培う力や能力に対して、教室の中だけで身に付くもので ないことを言及している。さまざまなキーワードを使っており、最も多い「能力」は、専門 能力も含まれるが、その次の「人間性」「人間力」「個性」「可能性」などを身につけさせるこ とについて、説いている。クラスター分析(図⑮)を行ったところ、能力、人間性、個性、 可能性、人間力、専門性、感性、知性の上位 8 つのキーワードの関連性が強く、次の 9 位か ら 20 位の関係性が強いことも明らかになった。 図⑮(⑮の全体出現数のクラスター分析)

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表① 歴史、建学 語 国立 公立 私立 全体 建学 8 10 253 271 歴史 33 41 176 250 伝統 24 18 181 223 理念 28 26 152 206 創立 9 8 119 136 設立 11 17 86 114 開学 4 28 79 111 教育理念 1 4 97 102 開学以来 3 8 30 41 基本理念 6 10 19 35 創立以来 3 3 28 34 創立者 0 0 24 24 戦後 2 2 14 18 学風 4 2 9 15 伝統文化 2 4 8 14 創設以来 3 0 10 13 建学以来 0 2 10 12 創設者 0 0 11 11 戦争 0 2 9 11 由来 0 0 10 10 集  計 141 185 1325 1651 表② 社会 語 国立 公立 私立 全体 社会 49 44 328 421 日本 32 27 212 271 地域社会 24 40 109 173 国際社会 23 13 40 76 現代社会 5 12 58 75 グローバル社会 11 6 14 31 実社会 1 1 24 26 日本社会 2 1 13 16 人間社会 0 3 13 16 高齢社会 0 4 9 13 地球社会 4 0 7 11 知識基盤社会 2 3 6 11 人類社会 4 1 5 10 持続可能 6 2 14 22 持続的 5 1 9 15 集  計 168 158 861 1187 表③ 多様化 語 国立 公立 私立 全体 多様 35 14 82 131 多様化 3 7 26 36 多種多様 2 0 9 11 多様性 8 2 21 31 集  計 48 23 138 209 表④ 知識 語 国立 公立 私立 全体 知識 34 45 261 340 知 66 33 67 166 知る 17 5 90 112 知性 11 6 43 60 専門知識 10 9 41 60 知恵 2 3 31 36 専門的知識 6 5 15 26 知見 5 5 2 12 知的 5 0 7 12 知識基盤社会 2 3 6 11 集  計 158 114 563 835 表⑤ 高度化 語 国立 公立 私立 全体 高度 25 27 99 151 高度化 2 5 16 23 高度情報化社会 1 0 3 4 高度情報化 0 1 3 4 高度医療 1 0 2 3 高度機能 0 0 2 2 複雑化高度化 0 0 1 1 年々高度化 0 0 1 1 高度専門的 0 1 0 1 高度専門化 0 1 0 1 高度先進医療 1 0 0 1 高度情報通信技術 0 0 1 1 高度情報社会 0 0 1 1 高度獣医療 0 0 1 1 高度実践能力 0 0 1 1 高度研究機関 0 0 1 1 高度テクノロジー社会 0 0 1 1 高度IC 0 0 1 1 集  計 30 35 134 199 表⑥ 職業人 語 国立 公立 私立 全体 職業 2 0 14 16 職業人 1 4 24 29 専門的職業人 1 2 4 7 専門職業人 4 2 14 20 実践的専門職業人 1 0 0 1 実践的職業人 0 0 1 1 実践的高度専門職業人 1 0 0 1 高度専門職業人 5 1 6 12 高度職業人 1 0 0 1 高度国際職業人 0 0 1 1 高度会計専門職業人 0 0 4 4 基礎的職業能力 0 0 1 1 会計専門職業人 0 0 1 1 医療専門職業人 0 1 1 2 集  計 16 10 71 97 表⑦ 教育研究、学問 語 国立 公立 私立 全体 教育 51 57 312 420 研究 46 35 129 210 教育研究 22 15 27 64 教育目標 1 2 54 57 教養教育 5 12 27 44 教育環境 4 2 37 43 大学教育 3 5 35 43 専門教育 3 8 27 38 教育プログラム 5 1 23 29 学術 7 3 16 26 学術研究 10 4 9 23 教育方針 0 2 20 22 人間教育 0 0 21 21 教育課程 3 3 14 20 教育体制 1 2 17 20 教育改革 4 0 15 19 教育システム 4 3 11 18 教育活動 3 3 12 18 教育研究活動 5 4 8 17 女子教育 0 0 16 16 実学教育 1 0 14 15 生涯教育 0 1 10 11 学部教育 1 1 8 10 教育内容 0 2 8 10 教育面 2 4 4 10 集  計 181 169 874 1224

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表⑧ 学生 語 国立 公立 私立 全体 学ぶ 84 77 518 679 キャンパス 28 25 165 218 学び 15 15 173 203 カリキュラム 10 19 84 113 授業 7 14 80 101 生活 10 17 71 98 学生生活 4 9 68 81 学習 2 5 60 67 大学生活 8 3 43 54 ボランティア活動 4 6 31 41 学修 7 5 21 33 学べる 0 3 26 29 サークル活動 2 4 19 25 課外活動 2 2 14 18 クラブ活動 0 2 15 17 ボランティア 5 0 12 17 学業 2 2 13 17 学舎 0 2 14 16 キャンパスライフ 0 1 14 15 学生同士 0 8 7 15 卒業研究 2 1 12 15 サークル 2 1 11 14 ゼミ 2 0 12 14 学習環境 2 0 11 13 日常生活 5 2 5 12 アルバイト 1 1 10 12 ゼミナール 0 2 9 11 学生時代 2 1 8 11 集  計 206 227 1526 1959 表⑨ 支援、指導 語 国立 公立 私立 全体 支援 44 31 156 231 指導 12 4 63 79 サポート 1 1 32 34 学生支援 3 0 7 10 集  計 60 36 258 354 表⑩ 育成 語 国立 公立 私立 全体 育成 56 61 462 579 育てる 21 16 187 224 輩出 26 12 60 98 育む 13 9 75 97 養成 34 21 145 200 人材育成 16 14 56 86 育つ 6 5 27 38 教員養成 16 0 4 20 集  計 188 138 1016 1342 表⑪ 地域 語 国立 公立 私立 全体 地域 41 47 130 218 地域医療 11 5 18 34 地域貢献 9 14 14 37 地域社会 24 40 109 173 地域住民 1 4 10 15 地域連携 1 5 4 10 集  計 87 115 285 487 表⑫ 国際化、グローバル化 語 国立 公立 私立 全体 世界 41 28 152 221 グローバル化 10 22 66 98 海外 26 9 49 84 国際的 24 15 40 79 国際社会 23 13 40 76 グローバル 16 10 39 65 アジア 13 10 41 64 英語 3 7 44 54 国際化 8 9 33 50 留学生 23 1 23 47 国際交流 5 5 31 41 国内外 10 12 13 35 米国 4 2 26 32 グローバル社会 11 6 14 31 国際性 4 7 20 31 中国 7 4 17 28 グローバル人材 10 0 13 23 国際人 5 2 16 23 外国 7 1 13 21 外国語 1 6 14 21 留学 10 1 10 21 国際的視野 1 4 11 16 韓国 1 4 10 15 外国人留学生 1 2 10 13 海外研修 3 0 9 12 海外留学 2 1 9 12 ヨーロッパ 1 0 10 11 欧米 2 2 7 11 グローバリゼーション 1 2 7 10 集  計 273 185 787 1245 表⑬ 改革、改善、新規取組 語 国立 公立 私立 全体 新しい 32 57 228 317 新た 42 26 156 224 取り組む 40 28 146 214 未来 31 16 135 182 世紀 18 22 106 146 特色 25 12 65 102 改革 22 10 46 78 取り組み 18 4 47 69 新設 4 4 29 37 独自 9 3 24 36 改善 7 3 21 31 最新 3 5 17 25 改組 7 4 12 23 取り入れる 0 4 17 21 教育改革 4 0 15 19 取組 6 5 7 18 革新 7 1 9 17 独創的 4 8 5 17 次世代 5 1 10 16 取組む 3 3 9 15 進取 7 2 4 13 本学独自 1 0 11 12 先取り 1 0 10 11 集  計 296 218 1129 1643

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おわりに 国公私立大学の学長の挨拶文分析してきた。前半は、学長がWebサイト上で広く社会に 何を発信しているのか、キーワード分析を進めた。大学の機能、社会情勢、転換期にある大 学のトップとしての問題意識など、大学が抱える様々な問題や課題の分析を行ったが、その ことは、次世代の社会を担う入学者や学部、大学院の在学生、学内の教職員、また地域や広 く社会へ発信をしている大学の重要な機能と役割の言及であった。学長は、多くの大学We bサイト上で広く「社会」の抱える問題、課題について言及していた。その校数は全体の 56%に上った。詳細に見ても、国立 60%、公立 54%、私立 56%とその差は見られず、多く の学長が大学と社会の密接な関係を認めているという傾向が見られた。 今回の我が国の国公私立大学学長のWebサイトによる「挨拶文」「メッセージ文」を詳、 細に分析した結果を俯瞰してみる。その中で各学長が発信する情報は、大きく 15 の「テーマ」 にまとめることができた。その各テーマ内容が、それぞれ関連性を持ち、単独で存在するテー マはなかった。俯瞰してみるため概念図化(図 4)を試みた。 各学長の発信する情報には、第一に、自「大学」「本学」と、強く「社会」の結びつきを意 識した情報発信を行っていることが分かった。そこには、我が国が 21 世紀のグローバル化し た国際競争社会の中で生き抜くために、あるいは、我が国日本のために、急速な少子高齢化 表⑭ キャリア教育関係 語 国立 公立 私立 全体 就職 5 4 39 48 資格 0 1 43 44 就職率 3 8 24 35 キャリア教育 0 3 21 24 インターンシップ 4 2 15 21 就職活動 3 2 11 16 資格取得 1 0 13 14 キャリア形成 0 2 11 13 就職支援 1 1 9 11 国家試験 1 2 8 11 キャリアセンター 0 1 5 6 キャリア 0 1 5 6 キャリアアップ 0 1 4 5 キャリア支援 0 0 4 4 教職キャリア開発センター 2 0 0 2 キャリア形成教育 0 0 2 2 キャリアサポート 0 0 2 2 キャリアカウンセリング 0 0 2 2 本学キャリア支援センター 1 0 0 1 キャリア選択 0 0 1 1 キャリア支援体制 1 0 0 1 キャリア支援科目 0 0 1 1 キャリア形成支援体制 0 0 1 1 キャリア形成支援委員会 0 0 1 1 キャリア形成支援 0 1 0 1 キャリア形成科目 0 1 0 1 キャリア開発学科 0 0 1 1 キャリア開発 0 0 1 1 キャリア科目 0 0 1 1 キャリアライフ 0 0 1 1 キャリアプログラム 0 1 0 1 キャリアプラン 0 0 1 1 キャリアデザイン講座 0 1 0 1 キャリアデザイン教育 0 1 0 1 キャリアデザイン科目 0 0 1 1 キャリアサポートプログラム 0 0 1 1 キャリア開発中国プログラム 0 0 1 1 集  計 22 33 230 285 表⑮ 社会的汎用能力(学士力、社会人基礎力) 語 国立 公立 私立 全体 能力 28 15 146 189 人間性 10 18 98 126 個性 7 10 87 104 可能性 8 5 82 95 人間力 15 2 59 76 専門性 8 12 55 75 感性 18 7 38 63 知性 11 6 43 60 コミュニケーション 5 6 37 48 実践力 3 6 35 44 関心 3 11 22 36 コミュニケーション能力 1 3 29 33 国際性 4 7 20 31 創造性 6 5 20 31 特性 8 4 19 31 活力 4 5 20 29 倫理観 2 7 20 29 リーダーシップ 8 6 14 28 行動力 2 2 24 28 創造力 7 3 18 28 興味 3 1 21 25 人間性豊か 1 4 20 25 社会人基礎力 0 1 22 23 研究力 9 8 5 22 コミュニケーション力 1 1 18 20 判断力 2 2 16 20 社会性 5 0 13 18 思考力 4 2 10 16 基礎学力 4 0 11 15 専門力 3 0 11 14 チャレンジ精神 3 1 8 12 学士力 2 1 9 12 個性豊か 3 2 7 12 自主性 0 6 6 12 語学力 0 2 9 11 想像力 3 0 8 11 品性 0 1 10 11 洞察力 1 1 8 10 集  計 202 173 1098 1473

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社会のために大学が、多くの教育・研究の成果、 資源を提供する強い意志の表れであった。 広く社会の抱える課題解決のために、大学 はまず、教育研究、学問を推進し、その第一 のステークホルダーは、「学生」であることが 明確に分かった。今回の学長挨拶文を探るう えで、「学生」と「育成」が強く結びついてい ることが明らかとなった。そうして教育を行 い、鍛え上げる覚悟、学生時代を経て自大学 から巣立つ卒業生を「人材」、「人財」と言い切る多くの学長の挨拶文を見ることができた。 人材は「職業人」であり、決して「高度職業人」「高度専門職職業人」としての人材を言って いることでもなかった。 「人材」「人財」として輩出する向こう側に、「貢献」の役割を明確に言い切っている。 その貢献すべき向こう側に「世界」水準の研究(研究成果と研究人)を提供することがで きる高度化した日本の高等教育機関があること、地域中核拠点としての役割も担うこと、な どが分かった。 天野が「現代の日本社会は世界でも有数の、著しく発達した高等教育制度を持っている。 (中略)明治の初年に近代的な高等教育制度の建設に着手してから一世紀半、我が国の高等教 育は世界的に見ても、際立った速度で量的拡大の過程をたどってきたといってよい」(天野 2013:189)と指摘したことの、世界有数の発達した高等教育制度は、急速に量的拡大の方向 に舵を切ったが、それは 150 年前の先人たちの「近代国家建設のための人材養成のための大学」 が、21 世紀の今日でも時間軸で連続をしていることとは言えないだろうか。それゆえ、私立 大学の多くの学長が、建学の精神、理念を 21 世紀社会の中での大学に生かせることと認識し ているのではないだろうか。 高校生たちに、学びの楽しさを伝えることも重要だが、受験者となる「こどもたち」を明 確に大人扱いし、情報を読み取ってほしい、そして将来の役割を「気づいて」ほしいと願う 多くの学長のメッセージと受け止めた。 明治から築きあげてきた、我が国の高等教育機関との役割として、時代の変遷があろうとも、 教育・研究を絶え間なく前進させ、学部学生のみならず、教職員、大学院生、そして卒業生 についても「人材育成」を継続してきたことが明らかになった。またこれからは、地域地元 住民の「学び直し」を含めた貢献も明らかになった。 『「一隅を照らす人」になりなさい。』と言う学長の言葉が宗教的表現として仏教系(天台宗) の大学の学長の挨拶文には見られたが、国立大学の学長の挨拶文に 1 校だけ同じメッセージ を見つけた。戦後政教分離のGHQ政策の中での「学制改革」から 60 年が経過している中で の変化ではないだろうか。今後も定期的に「学長挨拶文」を読み、経年変化を探りたい。今 回明らかにできなかったのは、大学の地域別、定員規模別などの細分化した調査や、学長の 図 4 分析結果から導いた概念図

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経歴(出身大学、出身大学院)による調査である。また、組織としての当該大学の教育理念、ミッ ションステートメント、アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー と個人としての学長挨拶の関係性についても整理をすすめたい。今後も継続して関連研究を 行っていく所存である。 1) 「地(知)の拠点整備事業(大学 COC 事業)」は、大学等が自治体と連携し、全学的に地域を志向した教育・ 研究・地域貢献を進める大学を支援することで、課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、 地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ることを目的としている。 2) スーパーグローバル大学創成支援は、背景として経済社会のグローバル化が進む中、我が国が今後も 世界に伍して発展していくには、大学の国際競争力向上と、多様な場でグローバルに活躍できる人材 の育成が不可欠。そのため、徹底した「大学改革」と「国際化」を断行し、我が国高等教育の国際通 用性、ひいては国際競争力強化の実現を図ることを目的としている。世界トップレベルの大学との交 流・連携を実現、加速するための新たな取組や、人事・教務システムの改革、学生のグローバル対応 力育成のための体制強化など、国際化を徹底して進める大学を重点支援。(http://www.mext.go.jp/ b_menu/houdou/26/09/__icsFiles/afieldfile/2014/09/26/1352218_01.pdf,2014.9.26)

3) 持続可能な開発のための教育、ESD とは、持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)の頭文字を取ったもの。地球規模の環境破壊や、エネルギーや水などの資源保全が問 題化されている現代において、人類が現在の生活レベルを維持しつつ、次世代も含む全ての人々によ り質の高い生活をもたらすことができる状態での開発を目指すことが重要な課題となっている。 4) 大学入学者総数に占めるアドミッション・オフィス入試による入学者数と推薦入試による入学者数の 和の割合は、平成18年度入学者以降、4 0%台前半で推移している。    「文部科学白書」(平成20年度版以降)によれば、総じて大学入学者の基礎学力の担保が課題となっ ている。 引用文献 天野郁夫,1986,『高等教育の日本的構造』玉川大学出版部 天野郁夫,1999,『大学-挑戦の時代』東京大学出版会 天野郁夫,2003,『日本の高等教育システム-変革と創造』東京大学出版部 天野郁夫,2004,『大学改革―秩序の崩壊と再編』東京大学出版会 天野郁夫,2009,『大学の誕生』中央公論新社 天野郁夫,2013.03.25,『高等教育の時代(上・下)』中央公論新社 大﨑 仁 ,1999,『大学改革 1945 ~ 1999』有斐閣 金子元久,2007,『大学の教育力』筑摩書房 喜多村和之,2000,『高等教育と政策評価』玉川大学出版部 喜多村和之,2002,『現代の大学、高等教育―教育の制度と機能』玉川大学出版部 絹川正吉,2006,『大学教育の思想』東信堂 大学審議会答申 ,1998,『21 世紀の大学像と今後の改革方策について』 舘昭,2007,『改めて「大学制度とは何か」を問う』東信堂 中央教育審議会(答申),2005,「我が国の高等教育の将来像」 德永保・籾井圭子,2011,『グローバル人材育成のための大学評価指標』協同出版 友松篤信,2012,『グローバルキャリア教育』ナカニシヤ出版 松村真宏・三浦麻子,2009,「人文・社会科学のためのテキストマイニング」誠信書房 文部省,1981『学制百年史』帝国地方行政学会 (http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1317552.htm,2013.09.30) 文部科学省,2014 全大学リンクページ 国立大学(http://www.mext.go.jp/b_menu/link/daigaku1.htm,2013.09.30) 公立大学(http://www.mext.go.jp/b_menu/link/daigaku2.htm,2013.09.30) 私立大学(http://www.mext.go.jp/b_menu/link/daigaku4.htm,2013.09.30) 山本眞一 ,2006,a『知識社会と大学経営』ジアース教育新社 山本眞一 ,2006b『大学事務職員のための高等教育システム論』文葉社 吉見俊哉,2011,『大学とは何か』岩波書店

表 2 学長挨拶文全文内容に関するキーワード出現件数「全品詞」 語 品詞 全体 語 品詞 全体 出現 出現率 出現 出現率 本学 名詞 489 65.2% 知識 名詞 207 27.6% 大学 名詞 481 64.1% 多く 名詞 206 27.5% 社会 名詞 421 56.1% 求める 動詞 204 27.2% 教育 名詞 420 56.0% 必要 名詞 199 26.5% 学生 名詞 393 52.4% 思う 動詞 198 26.4% 学ぶ 動詞 321 42.8% 新しい 形容詞 195 26.0%

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