喘息の既往. 1ヵ月前からの頭痛あり, 複視, 嘔吐みられ, 近医で脳腫瘍と診断され, 当科紹介入院した. 神経学的に頭痛, 複視, 軽度の右片麻痺を認めた. 左側 頭部に, 50×45×40mm, 八つ頭状の, 内部に粗大な石灰 化部 を伴う, 著明に造影される腫瘍を認めた. 脳血管撮影により, 左中 膜動脈 枝から栄養される 著明な腫瘍濃染像を認め, 腫瘍血管塞栓術を施行した. 画像所見から, 錐体前面 膜から発生した髄膜腫を疑い, 腫瘍摘出術施行した.腫瘍は灰赤色,弾性軟,やや出血性, 境界明瞭, 周囲脳との剥離は容易であった. 錐体近くは, く繊維性で出血性であった. 石灰化病変も含め肉眼的 に全摘出し, 膜付着部は十 電気凝固を加えた. 術後, 頭痛, 複視,右片麻痺は改善.術後,髄液鼻漏あり,腰椎ド レナージ, 膜閉鎖術施行. その後, 経過良好で独歩退院 した. 病理所見 : 類円形ないし楕円形の核と淡明な狭い 細胞質をもつ腫瘍細胞が密に増殖し, 細胞配列に特徴的 な細胞配列はない. 核にはクロマチン増加があり, 核 裂増が散見される. 鹿角状に拡張した間質血管に富む. 腫瘍内に散在性に軟骨組織を認める. 以上の所見から mesenchymal chondrosarcomaと病理診断された.後療法 として左錐体を中心に局所照射 60Gy施行した. chon-drosarcomaの亜型である Mesenchymal chondrosarcoma の悪性度は WHO grade IVで, 局所再発, 遠隔転移を生 じ, 予後不良とされる. 現在, 慎重に経過観察を行ってい る. 4.鞍上部腫瘍に対する手術戦略 赤尾 法彦,石内 勝吾,山口 玲 好本 裕平 (群馬大医・附属病院・脳神経外科) 鞍上部腫瘍に進展した 66歳女性 atypical meningioma および 61歳男 性 recurrent Solitary Fibrous Tumor (SFT) の症例につき提示する. 前者は左視力低下にて発 症し, 術後視力は温存され sympson grade の摘出を試 行した. 後者は右眼窩, 中頭蓋窩, 海綿静脈洞内に浸潤す る腫瘍で 1999 年に部 摘出, 再燃腫瘍に対して 2001年 ガンマナイフ加療後の状態で経過中右視力は失明してい る. 2006年 8月頃より腫瘍増大を認め左視力, 視野の急 激な悪化を認め, 術前は指数弁程度. 失明を回避するた め左視神経, 視 叉の減圧を目的に手術を施行した. 両 者との pterional approachにて前頭洞は開放せず, 眼窩 上縁と正中部まで開頭した. まず正中部にて嗅神経を oxycelと fibrin glueにて保護. 髄膜腫では重要構造物の ない正中部より腫瘍付着部位を十 凝固し, 腫瘍をくも 膜露出面より内減圧すると腫瘍被膜ごと剥離摘出が可能 である. SFT は表面は乳白色の組織学的に膠原線維に 富む い腫瘍で, 腫瘍を構成する紡錘型腫瘍細胞は脳実 質に突き刺すように浸潤するため視床下部や下垂体茎と の剥離に際しては腫瘍被膜を薄く残すことが術後の機能 温存にとって重要である. 両腫瘍とも ipsilateral の視神 経後方の腫瘍の剥離に際しては患者頭位を同側に傾け顕 微鏡を正中部から振り approachすると視神経を損傷せ ず摘出が可能である. また腫瘍細胞の生物学的特性を 慮した手術戦略が重要である. 5.診断に苦慮した中頭蓋窩―傍鞍部腫瘍の一例― 本多 文昭,藤巻 広也,橋場 康弘 相島 薫,朝倉 ,宮崎 瑞穂 (前橋赤十字病院 脳神経外科) 伊藤 秀明 (同 病理部) 平戸 純子 (群馬大院・医・病態病理学) 症例は 72歳, 女性. 2006年 11/21, 自宅で倒れている 所を発見され搬入された. 来院時 JCS -20, 瞳孔不同 (右>左) を認め, 対光反射は両側消失, 重度の左片麻痺 を認めた. 頭部 CT では右側頭葉∼大脳基底核に周囲に 浮腫を伴う出血を認めた. MRI では同部に 6 cm大の不 一な massを認め一部が造影されることから腫瘍内出 血が疑われた. 全身検索では原発巣を疑う病変は認めず 腫瘍マーカーも陰性, 脳血管撮影では腫瘍濃染像は認め なかった. 11/29, 右前頭側頭開頭で摘出術を施行. 腫瘍 は中頭蓋窩から一部後頭蓋窩に伸展していたが肉眼的に は周囲脳との境界は比較的明瞭. しかし発生母地は不明 であった. 後 通動脈の穿通枝付近, 前脈絡叢動脈上方 の一部を残して亜全摘された. 病理所見では類円形の核 をもつ多角∼紡錘形の腫瘍細胞が中∼高度の細胞密度で 増殖, MIB-1LI は 29.4%と高値であった. 以上の症例に ついて若干の文献的 察を加えて報告する. 本症例は術 前診断が困難で術中所見も特異的, さらに病理組織診断 にも苦慮した一例であった. 最終病理診断については口 演時に明らかにしたい. 6.高身長,頭蓋骨肥厚を合併した1例 栗原 秀行,曲沢 ,霜田 茂 渡邊 孝 (桐生厚生 合病院 脳神経外科) 高身長, 無月経を主訴に受診し, 頭蓋骨肥厚を合併し た症例を経験したので報告する. 症例は 14歳女性 家 族歴, 身長は 親 175cm, 母親 159cm, 姉 157cmと, 特別 高身長の家族無し. 高身長, 無月経で平成 18年 8月 9 日, 当院小児科受診. 身長 177.6cm, +3.9SD. 無月経で GH : 14.3, PRL :36.4, IGF-1:1180, LH 2.0, FSH 6.9, E2:24, 骨年齢 14歳程度, 腹部エコーにて内性器に著変無し. 視 力, 視野に異常無かった. MRI にてトルコ鞍内から突出 し, 視神経に接する腫瘍を認めた. また, 頭蓋から下顎に 第 38回群馬脳腫瘍研究会 294
及ぶ骨の腫脹を認め, fibrous dysplasiaと えられた. 蝶 形骨内も同様の病変で, conchal typeとなっており,円蓋 部にも同様の病変が存在した. 本症例の治療法などにつ き, 文献的 察を加え, 報告する. 7.鞍外のみに進展した GH産生腺腫の一例 三塚 太郎,八木 伸一,井上 洋 清水 庸夫 (関東脳神経外科病院 脳神経外科) 下垂体腺腫が, トルコ鞍底を破壊し, 副鼻腔や上咽頭 へ進展する nasopharyngeal extensionを呈する場合があ るが, 比較的稀である. 今回, 蝶形骨洞内下垂体腺腫の一 例を経験したので報告する. 症例は 46歳の女性. 15年前 に甲状腺機能亢進症, その後, 糖尿病, 高血圧を合併し, 5 年前から acromegaly, 半年前から糖尿病性網膜症による 両側の視力障害が出現した. MRI にて蝶形洞内に腫瘍を 認め紹介された. 画像では, 腫瘍は蝶形骨洞内に限局し, トルコ鞍底部の erosionを認めたが, トルコ鞍の拡大は なかった. トルコ鞍内から鞍上部にかけては, 明らかな 異常はなかった. 血液検査上, GH 及び PRL は高値を示 していた. 経鼻的経形骨洞手術を行ったが, 鞍底部の一 部に骨破壊と 膜の欠損を認め, 腫瘍は鞍内から進展し たものと えた. 病理診断は, GH 産生腺腫であった. 8.海綿静脈洞および近傍腫瘍に対する最近の手術 井上 洋 (神経機構研究所 神経外科) 放射線外科の進歩により海綿静脈洞および近傍腫瘍の 安全な手術が行えるようになった. 演者が経験した 362 例 (手術 166例, radiosurgery 196例, 下垂体腫瘍 : 240, 髄膜腫 : 80,神経 腫 : 13,脊索腫 : 10,転移性腫瘍 : 12, ほか : 7) をもとに, 機能保存と tumor control を目的と した最近の手術法について報告する.