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紫外線照射処理による下水を用いた衛生工学実験実習の実施と課題

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Academic year: 2021

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*環境都市工学科 **教育研究支援センター

紫外線照射処理による下水を用いた

衛生工学実験実習の実施と課題

宮里 直樹* 宮本 正雄** 荻野 和夫** 谷村 嘉恵* 堀尾 明宏*

(2020年11月25日受理)

1.はじめに

群馬工業高等専門学校(以下、群馬高専)の環境都市 工学科4年における学生実験(科目名:環境都市工学実 験実習)では、河川水や生活排水などを使った様々な水 質検査を行っている。この実験の目的は、基本的な水質 分析を行うことにより,各水質指標の意味を理解すると 共に、基本的な分析技術を身につけること、および基本 的な浄化反応(浄水場での濁度除去・下水処理での基質 除去)について実験を行うことにより、水処理プロセス を理解することである(実験指導書より抜粋)。そのた め、実験に用いている試料水には、河川水や汚濁された 水を用いている。その1つである本校の合併浄化槽流入 汚水の扱いには、衛生面で安全対策が必要となる。校内 である病気に罹患している人がいた場合、病原微生物混 入の可能性が考えられるからである1)2)3)。特に、自然 界で抵抗性が高いサルモネラ、ノロウイルスなどは長期 間水中で生存するため4)、この汚水を使用した実験では 危険を伴う可能性が考えられた。このリスク排除に向け て、過去に人工排水を用いた学生実験を試み、安全性の 確保ができたものの、下水中や人工排水中の有機物濃度 が高い理由について具体的な説明が行われないと、下水 中の有機物やその処理に関する考察がねらいとは異なっ たものになることを報告した5)。また、令和2年から、 新型コロナウイルス感染症の影響が世界的にも広がりを みせ、様々な研究が行われてきた。その一つとして、富 山県立大学を中心とした研究グループにより、下水から の新型コロナウイルス検出の報告がある6)。群馬高専の 下水において検出されたわけではないが、使い捨て手袋 やマスク、安全眼鏡の使用に加え、リスク管理として何 らかの対応が必要だと考えられた。そこで、学生実験に 用いる下水に対して紫外線照射処理を行った場合の実験 結果、および学生の報告書作成に及ぼす影響について検 討を行ったので報告する。

2.衛生工学実験の概要

本校4年生の環境都市工学実験実習では、2種類の実 験を行っている。環境水の分析を行う衛生工学実験と、 橋梁模型の製作や載荷実験を行う構造実験である。著者 らが担当する衛生工学実験では、身近に存在する河川水 や生活廃水などの環境水を使用し、基本的な水質分析を 行うことにより、学生に各水質指標の意味を理解させ、 分析技術を修得させる。更に、濁度除去や基質除去など の浄化反応実験を行うことで、水処理プロセスを理解させ ることを目的としている。 実験に使用する手順書は、下水試験方法7)などを参考 に環境都市工学科の教員が作成したものを、毎年度、改 良して用いている。表-1 に実施内容の一覧を示す。環 境水の水質分析を実施する項目は、pH、水温、透視度、 濁度、溶存酸素、化学的酸素要求量(COD)、生物化学 的酸素要求量(BOD)、アンモニア態窒素、リン酸態 表 1 衛生工学の実施内容(15 回) 実 験 項 目 1. ガイダンス及び実験器具の使い方の練習 4. アンモニア態窒素及び、リン酸イオン態リン 7. 凝集試験・原生動物、後生動物の顕微鏡観察 8. 利根川水質データからの総合考察 6. 浮遊物質(SS)・大腸菌群 6-1 浮遊物質・大腸菌群 6-2 18~22時間培養(35~37℃)後、菌数の計測 5. 生物化学的酸素要求量

(BOD : Biochemical Oxygen Demand) 5-1 生物化学的酸素要求量(DO1)及び溶存酸素Ⅱ …1日目の消費量測定 5-2 生物化学的酸素要求量(DO5)…5日後の消費量測定 2. 温度・pH・電気伝導度(EC)・濁度・透視度・色度・ 塩素イオン・溶存酸素(DO)Ⅰ 3. 化学的酸素要求量

(COD : Chemical Oxygen Demand)

(2)

リン、大腸菌群、浮遊物質(SS)である。水質分析以外 の観察として、原生動物・後生動物を顕微鏡で検鏡し、 名称や特徴などを調べる項目がある。またジャーテス ターによる凝集実験を行い、上水試験方法も理解しても らっている。但し、凝集実験では、環境水ではなく、カ オリン懸濁液を利用している。

3.紫外線照射の利用

紫外線は可視光よりも短い波長(100nm~380nm)の光 であり、UV(Urtra Vioret)とも呼ばれている。殺菌や消 毒、ウイルスなど不活性化には250nm~270nmが効果が高 いことが知られている。なお、下水処理における紫外線 の利用としては、放流水の殺菌消毒として、塩素剤に代 わるものとして利用されている。塩素剤は水中の有機物 と反応し、トリハロメタンなどの消毒副生成物を発生す る可能性のあること、放流域の生態系に影響を与える可 能性の問題が指摘されているためである。また、農村集 落排水処理施設の処理水殺菌に用いられる事例8)や、都 市下水処理における一次処理水(最初沈殿池越流水)中 の難分解性有機物の可溶化に適用されて、効果のあるこ とが報告されている9)

4.実験で使用する試料水と紫外線照射の概要

4.1 試料水の概要 衛生工学実験で使用する試料水の一覧を表-2 に示す。 採水は、教職員が行っている。 Aの利根川河川水は、水質が良好な環境水として、 群馬大橋もしくは中央大橋の付近から採水している。環 境基準でA類型の実験結果が期待できる。Bの校内西湖 の流入河川水は、生活雑排水で汚濁している可能性があ る河川水である。Cの本校合併浄化槽流入汚水のBODは 下水流入水相当であり、Dの浄化槽処理水のBODは、 10~20mg/L程度であり、窒素とリンが残留している。こ れらの試料水のうち、Cの合併浄化槽流入汚水には、有 機物質や病原微生物が混入している可能性が考えられる。 特に、サルモネラやノロウイルスなどは長期間水中で生 存するため、この試料水を使用した実験は常に衛生面で 十分な安全対策が必要となると判断して、UV照射を行っ た。また、実験で用いている浄化槽処理水は塩素消毒前 の処理水であり、こちらに対しても紫外線照射を行った。 これらの排水を衛生工学実験に用い、各実験項目に与え る影響を考察した。 4.2 紫外線照射方法 今回、消毒効果があるとされている波長253.7nmを照射 できる15wの殺菌ランプ(東芝製,GL-15)を1本が設置さ れたパソナグローブボックス(AS-600V)を用いた(図 1)。試料水CおよびDに対する紫外線照射を一般的な殺菌 時間を考慮し、試料水をガラス製の1Lビーカーに入れた 後、グローブボックス内に静置し、約20時間の照射を行っ た。照射した試料を実験項目2から6(大腸菌群は除く)に 適用した。

5.照射後の試料水を用いた実験結果

5.1 予備試験結果 実験項目2の実施前にUV照射した試料CおよびDにおける 大腸菌群数を、学生実験と同様に下水試験方法5)に掲載さ れているデスオキシコール酸塩培地による重層平板培養法 を用いて確認した。以下にその手順を示す。 約45℃に保温したデスオキシコレート寒天培地(45g / 1L)10mLを、ディスポーザブルの滅菌プラスチック製 シャーレ(90φx 20mm)に入れ、その上に試料水1mLを加 えて蓋をする。シャーレを左右前後に回転させて、培地 と試料水を十分に混和させ、水平状態に静止して、放置冷 却する。培地がある程度固まったら、更に培地を10mL加 えて重層し、冷え て固ま ったら、 表 2 衛生工学実験の用いる試料 A 利根川河川水(群馬大橋付近) B 校内西湖の流入河川水(生活雑排水) C 本校の合併浄化槽流入汚水 D 本校の合併浄化槽処理水 図 2 UV 照射試料による大腸菌群の培養試験結果 (右側が無希釈、左側が×10) 35cm グローブボックス 対象試料水 (1L) 東芝製 GL10 (波長:253.7nm) 図 1 グローブボックスを用いた簡易 UV 照射 78  THE GUNMA-KOSEN REVIEW,No.39,2020

(3)

シャーレの上下を反転させた状態で、フラン器に入れ て、 37℃で24時間培養させる。以上、全ての手順は無 菌状態で行った。その結果、UV照射試料CおよびDにおけ る大腸菌群の個数は無希釈の条件でも0 MPN個/mlであっ た(図2)。昨年度の結果では試料Cで約103~105 MPN個/ ml、試料Dで約102~103 MPN個/mlであったことから、十 分に消毒効果が得られていると判断された。 5.2 UV照射試料を用いた水質分析結果  学生実験においてUV照射を行った試料水の分析機器を 用いた各種水質分析による結果を表3に示す。pHおよび 塩素イオン濃度に大きな変化はないが、濁度及び色度は 浄化槽による処理によって、大きく値が減少しているこ とがわかる。また、試料Cでは流入下水中に存在する微 生物によって溶存酸素が消費されるため、非常に低い値 であったと考えられる。昨年までの値と比較しても大き な違いはなく、UVによる影響はほとんどないと考えられ る。なお、試料Cの電気伝導度は異常値であると判断さ れたため、データなしとした。 次にCODおよびBODの分析結果を図3に示す。試料Cにお いてUV照射後の値がやや下がっていた。UV照射は難分解 性有機物の分解に用いられることもあり、低い波長のも のほどその効果が高いとの報告がある10)。本報告で用い たUVの波長は殺菌効果のあるとされている253.7nmを用 いたが、この作用による影響であると考えられる。な お、試料Dにおいて違いはほぼなかった。試料CのCODの 値が下がったものの、浄化槽によるCODの除去効果を確 認できる値であった。また、微生物による分解性の高い 有機物であるBODにおいてはほぼ違いはなく、UV照射に よる影響は小さいと考えられる。 アンモニア態窒素およびリン酸態リン濃度の分析結 果を図4に示す。学生実験では分析結果の値のばらつき が多かったため、教職員が分析した結果を用いた。アン モニア対窒素の分析結果において、試料CではUV照射後 の濃度値が大きく上昇していた。先に述べたCODの減少 による影響でアンモニア態窒素に一部の有機物が分解さ れた可能性が考えられ、そのために上昇したものだと思 われる。なお、リン酸態リンの濃度値において、アンモ ニア態窒素と比較して大きな違いはなく、UV照射による 影響は小さいと考えられる。 UV照射によりCODとアンモニア態窒素の濃度値に変化 がある結果となり、実験レポートを作成する際には学生 に対して、①UV照射によってCODの値がやや下がること、 ②アンモニア態窒素の値が上昇している可能性のあるこ と、③両者の関係とその理由、について説明を行うとと もに、教職員によりUV照射を行わない試料の分析結果を 同時に提示することも検討する必要があると考えられた。 なお、実験項目6の大腸菌群について、UV照射を行うと 計測ができないため、この項目実施についてはUV照射を 行わなかった。

6.おわりに

本報告において、リスク管理の一つとして衛生工学実 験に用いる浄化槽流入下水と浄化槽処理水に対して、UV 照射による消毒を行った際の実験結果に及ぼす影響およ び学生に対する説明が必要であることが考えられた。 ①分析機器による水質分析結果において、UV照射による 影響はほぼないと考えられる結果を得ることができた。 ②COD値の減少、およびアンモニア態窒素濃度が上昇す る可能性が示唆された。 ③実験レポート作成に向けて、学生には上記②について の説明や、UV照射を行わない試料による実験結果の提 示が必要である 参考文献 1) 国土交通省: 処理水,再生水の衛生学的水質検討プロジェ 0 100 200 300 400 500 試料C 試料D 濃度 (mg/ L) COD COD-UV BOD BOD-UV 図 3 COD および BOD の分析結果 0 2 4 6 8 10 12 14 試料C 試料D 濃度 (mg/ L) NH4-N NH4-N(UV) PO4-P PO4-P(UV) 図 4 アンモニア態窒素とリン酸態リンの分析結果 表 3 UV 照射試料を用いた水質分析結果 分析項目 試料名 29.1 7.38 - >50 >50 11 0.0 28.7 7.27 53.3 2.6 15 9 6.22 塩素イオン 濃度 (mg/L) 溶存酸素 濃度 (mg/L) C (UV) D (UV) 水温(℃) pH EC (mS/m) 濁度 (度) 色度 (度)  紫外線照射処理による下水を用いた衛生工学実験実習の実施と課題  79

(4)

クト活動報告書:国土技術製作総合研究所: ISSN1346-7328, 第460号, 平成20年4月 2) 内田勉、諏訪守、安井宣仁、岡本誠一郎:下水処理水の再 生水利用における処理水質の信頼性評価手法検討:平成23年 度 下 水 道 関 係 調 査 研 究 年 次 報 告 書 集 : 土 木 研 究 所 : ISSN0386-5878, 第4241号, pp.1-17, 平成24年10月 3) 金子光美:水の安全性と病原微生物-その歴史と現状、そ して未来:モダンメディア:栄研化学株式会社:pp.20-27, 52巻, 3号, 2006 4) 文部科学省:調理場における衛生管理&調理技術マニュア ル:文部科学省スポーツ青少年局学校健康教育課: pp.60-62, 平成23年3月 5) 宮里直樹,大野佳代子,宮本正雄,堀尾明宏:人工廃水を用い た衛生工学実験の実施と課題, 群馬高専レビュー33号,p.103-107,2014 6)社団法人日本下水道協会:下水試験方法(上巻):1997年版 (第7版):平成19年11月 7) 富 山 県 立 大 学 web サ イ ト , https://www.pu-toyama.ac.jp/news/news_outline/2020/06/16/8214/, (2020.11.20閲 覧) 8) 堀尾明宏, 浅野秀昭, 中島 淳::生活排水処理施設における紫 外線消毒効果,日本水処理生物学会誌, Vol.38, No.3, p.137-143, 2002 9) 岩崎達行,柴田陽光:紫外線処理と生物処理を併用した難 分解性排水の浄化, 第12回日本水環境学会シンポジウム講演 集, pp.17-18, 2009 10) 渡辺秀人, 本間英夫:紫外線処理による有機性汚濁指標と してのCOD除去,表面技術, Vol.46, No.6, p.563-566, 1995

Issues of Sanitary experiment

using UV radition water by on-site

wastewater treatment facility

Naoki MIYAZATO, Masao MIYAMOTO, Kazuo OGINO

Yoshie TANIMURA and Akihiro HORIO

We suggest that UV applied wastewater and treated water for the experiments in sanitary engineering of 4th grade student in department of civil engineering. The safety management was concerned for sanitary conditions. The results of water quality using some analyzers is not affected by UV radiation. The similar data were obtained at 7 kinds of water quality analysis, when we used wastewater and treated water from the septic tank. However, the difference of COD and NH4-N data used UV radiation were a little higher as compared with wastewater and treated water data. The method of explanation for using UV radition has to be improve. These results indicate that using the artificial wastewater on experiments for students in sanitary engineering has a few improvement.

参照

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