金属のころがり磨耗の研究(第1報) : 軟鋼について
著者
宇都 龍行, 南 孝一
雑誌名
鹿児島大学教育学部研究紀要. 自然科学編
巻
17
ページ
47-61
別言語のタイトル
Study of abrasion of the rolling metal steel.
(1st Report) : On the low carbon steel
47
金属のころがり磨耗の研究(第一報)
-軟鋼につい て-宇 部 寵 行, 南 孝 一
Study of abrasion of the rolling metal steel. (lst Report)
On the low carbon steel
-Tatuyukl UTO and Kouichi MINAMI
緒
機械工学に於て材料面から問題になるのV1, 1に磨耗, 2に疲労, 3に切欠という現象である。特に 瑳耗現象は複雑機構を含むためにその体系化は困難といわれている1)。今日まで多数の研究発表2)3)4) がなされているが,軟鋼(0.14%C, 0.21%C)については発表されていないようである。 それには理由があるけれども,磨耗の現象を調べるには最も軟鋼が適当であり,基礎的磨耗現象 の機構解明には適切であると思う。この観点にたって筆者は乾性と湿性とにわけて根本的にその磨 耗進行過程を追ったつもりである。 磨耗は材料のいかなる物理的変化から起ってくるかを特に塑性変形(特に加工硬化)から研究し ようとしたものである。 A 乾 性 篇 1.実 験 材 料 使用した材料の機械的性質は, Table・ 1に示す。その顕微鏡組織はFig・ 1に示す。なお試験片 はいずれも熱処理は施さずそのましの状態である。 2.実 験 方 法畔夕諦・
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金属のころがり磨耗の研究(第一報) / ず 800略槍:I
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30 80OltlI… Table l 材料の機械的性質 (推定値JISより) 炭 素 量(%) ピッカース Hv ショア硬度 Hs 猿労限 owkg/mm2 勇断強さ r kg/mm2 降伏点 oskg/mm2S_s 3_4 I :_S__ll_
0.14i o.21 97, 14 16. 19 17. 00 25. 50 17. 00 伸 び(%)6137・19【 117. 14 19. 52 20. 50 30. 75 20. 50 33・9351 61・43 Fig,2 試 験 片 実験は西原式磨耗試験機(アムスラー式磨耗試験機と同様)にFig. 2の円筒状試験片を使用し た。接触面は, --ルバイトで仕上げたのちペーパー(♯ 150)で研磨したもので,表面あらさは, 大越式超アラサ検査機で測定の結果, SS34及びSS41は平均2Iら 7/3黄銅0.6i`種皮を得た。 上下試験片の取付軸の回転速度は800 rev/mnで,したがって上下試験片の外周速度は1・256 m/secである。磨擦圧力は50 kg/mm2, 100kg/mm2. 150kg/mm2,すなわち最大圧縮応力は約 55 kg/mm2, 78 kg/mm2, 96 kg/mm2,という大きな応力のもとで実験した。 磨耗量は試験前に試験片をアルコールで充分洗醸し,繰返数約103, 104, 105, 106回転毎に取外 し,アルコールで洗い,乾燥後ただちに滞密化学天秤で秤量し,その重量の減少より磨耗量を測定 した。なお極端な磨耗5)が発生した時は実験を中止した。試験に供した金属面の組合わせは次の4 種類である。 SS 34-SS 34, SS41-SS 41, SS34-7/3黄銅, SS41-7/3黄銅。 5.実験結果および考察 SS 34-SS 34の組合わせの場合の磨耗経過は, Fig. 3。磨耗量一繰返数一圧力(応力)線図は, Fig. 4のごとくで 下試験片磨耗量が上試験片より大きい結果を示している。 Fig. 3の50kg/ mm2荷重の時は大越氏の分類6)からいえば103回転は酸化磨耗, 104回転は輝面, 105回転におい て綬労(これを斑と判断してよいかどうか疑問である)による破壊磨耗を示している。 100kg/ mmg荷重になれば104回転において,すでに波労破壊現象を起している。 105回転になれば流動と 剥離が起り大きな磨耗量を示す。 その結果Fig. 4のごとき線図が現われた。ちなみに西原氏の分類をかりるならば, 103回転が第 1期であり, 104回転が第2期, 105回転で第3期(湿性ならば 斑といえる) 106回転で疲労破壊 磨耗と思われる。105 104 材料: SS34 P -50kg/mm2 105 104 材料: SS34 P- 100kg/mm2 (Fie. 3 同 種 組 合 せ の 磨 耗 面 経 過) 塙 蟄 諦 部.却 ︹車rZt.L謡.A.・漣]7騰U
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0103104105-数lOe Fig.6 SS41の磨耗曲面 同様にFig. 5より SS41-SS41も機械的性鰭は SS34より一段とすぐれた性質をもつもの であるが, Table l程度の材料では同じ傾向を示しているようである。しかし. Fig. 6の線図か ら荷重50 kg/mm2の場合は上下ともに103回転は1 mg程度の磨耗最を示すが, 104回転では減 少し, lo§, 106回転は共に急激な培加をたどっている。 この傾向はわずかではあるが, Fig.4のSS 34も同様である。これを判断するには50kg/mm2 から100kg/mm2の間に磨耗愚を最少にする適当な圧力が考えられる。これを西原氏7)も認めて いる。 又SS34-7/3黄銅, SS 41-7/3黄銅の線図の場合も,すなわち,Fig. 7, Fig. 8のごとく前述の SS34同士と同じような傾向と認めてよいと思う。しかし. 7/3黄銅の場合は105回転近辺で熔着 現象を起して実験続行不可能であった。その経過は, Fig・ 9のとおりである。なお106回転後にお ける表面硬化層の顕微鏡組織は. Fig・ 10のごとくである。aO 良 咽 滋. 鞄. i ii i i i 途8囮;「亦亦末ニ俣メメ闔ィネ6ィネ6白ツレ2メ窒トbツ、 i.
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×〇〇〇54 金属のころがり磨粒の研究(第一報) R.湿 挫 篇 1.実 験 材 料 これは乾性篤と同じ材料を使用した。 2.実 験 方 法 乾性籍と同試験機を使用し, Fig. 11の給油装置を使用し連続的にTable 2の潤滑油を供給し つつ乾性篇同様に磨耗置,磨耗進行状態を調べてみた。給油壷はスピンドル油28cc/mn,マシン 油16 cc/mnの条件で接触面に給油した。上下試片の回転速度,摩擦圧力は共に乾性と同じ条件で あるo 給油管 主軸給油加減把手て一一 上武残片 ギヤ-ポンプ./, I Fig.11給 油 装 置 Table2 潤 滑 油 性 状 一一、---_ 性状へ、--種類 一一一へ、 一一一一一一一-、 986移86ィ5h98揩
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引火点oC 3 決 2 160以上可一高「i亘
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銅板腐食(100eC,3h)il以下 以下 流動,i-モ「-5以下 以下 5.実験結果および考察 a) SS34同士の場合 Fig. 12, Fig. 13のごとく乾性と同様な傾向を示しているが荷重が100kg/mm2を超すと磨耗 盤が105回転までの傾向に比較して105回転以上では大きな磨耗が見られる。これは, Fig. 14に 見られるごとく乾性では見られない大きな剥離現象を起している。この現象は西原氏8)9)が, Fig・15のような流体圧力分布線図軸しているが・この流体圧力が剥離の最大の原因であると考えられ
のは明瞭である。 b) SS41同士の場合 Fig. 16, Fig.17のごとき磨耗曲面を得た。スピンドル油,使用のさいはほとんどSS34のマシ ン油使用の場合と同じような傾向を示す。マシン油使用の場合は100 kg/mm2において磨耗量が上 下共に105回転まで僅少であるということは興味のあることと思われる。 Fig. 18よりSS 34と同 じような斑磨耗発生の経過をたどっているが,とくに, Fig. 18のごとく大きな剥離を起すのは, Fig.19のごとく表面硬化層が大きいために起るのだと考えられる。 Fig・19からスピンドル油の場 令, SS 41が亀裂を起しているようである。この点については潤滑油の粘性と材料の硬度の間に何宇 部 龍 行,南 孝 一 〔研究紀要 第17巻〕 55 Gas,/+, 弐 ツ 一一___一己_I__務 I i i i こき 陳稈 稲R テB 586メ 5 ツ 珍 〇 一〇● 惑 刺 * 〇 〇 一°● くシ ー1 悠 蒋 「 Bul畢封塾 88_合一{ 霊,3,,;,, 、●●
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Fig.15 斑磨耗孔の発生機構 か関係があるものと解してよいと思う。ちなみに, Fig.20, SS41は斑磨耗の発生過程を現わして いる。 SS 34-7/3黄銅は省いた。 結請
以上の実験結果を要約すれば,次のごとくである。 1) Fig. 21の磨耗正一繰返線図から降伏点応力の2倍以上の圧縮応力では, 105回転過ぎに変 融点を生ずるものと思われる。 2)表面硬化層Qj:, Fig・ 22の105回転の厚さになれば斑磨耗を徐々に発生するものと思われ る。これには硬化層の硬さ,および深さが非常に影響するものと思われる。それで硬化層の硬度と 深さを, Fig. 22, Fig. 23のごとく微小硬度計で極力精密に求めた。すなおち, SS34, SS41のi 一同瞭片 i i 賢し 'i ・十一一一一一一一-,一一一一一∴?,;I---:一一一十や
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103104105練速数106や Fig・17 SS41の 磨 耗 曲 面 (潤浦田:マシン油)‥/問
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103104105鞘生数106 Fig.16 SS41の 磨 耗 湘 南 (瀾瀞油:スピンドル油) Lm ︹紳卜丁無 駄媒罵萬︺ 1 料 000 00 陛 〝虻 邁 遣・..i.,-韻、一
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ej・ " -- . ト◆ 一一'議 Fig.22 表 面 硬 化 層(材料SS34,P-50kg/mm2)×100 OOP-50kgん2 一一乾性一一一---103剛..I. 〇一潮,I:_(.マシン油)一一一一10用転 一一一105[【i施; -106回転し
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50接触面からの深さmm loo ×Xoo Fig.23 硬 化 層 の 硬 度 一oo 一oo 00 00 俤驅 ・533B -●-乾僅 一〇一粒性 -スピンドル泊給油 -一一マシン油給油 I ー I噂遺業p-looks,hm2
---p--50kg4-m2、一一 II 5 50接触面からの深さmm lOOX‰ Fig.24 硬 化 層 の 硬 度 3 T E ( 雷 S ・ . ・ 圭 > わ ー浩
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一 o o 0 0 俤 陷 Η 5 3 3 B 2一 趣 愚 s J e " 蓑 > I-宇 部 紀 行,南 孝 一 ⊂研究紀要 第17巻〕 61 50 =接触面からの深さ mm Fig.25 硬 化 層 の 硬 度 100 ×.者oo 如何を問わず(もちろん低素鋼であるが) 105回転において,硬化層は荷重の大きさに比例した傾斜 をなして, 50/100mm位まで硬化しているようである。もちろん1mmの深さまでほ硬化影響を うけている。なお, Fig・ 24, 25の湿性においてほ乾性の1/2,すなわち25/100mm位の硬化層 を形成する。これは潤滑油の効果といえる。もちろん前述のごとくマシン油が高荷重において効果 が大きいことを示している。 3)表面あらさは2itまでならばあまり影響はなかった。 4)ころがり摩擦においては発熱は無視できるようである。 終りにこの実験に協力くださった,工学部末永教授.平山副手に感謝します。 文 献 I) 倉:機械学会論文集:5-21 (1940) 1-75 2) 倉他;機械学会論文集:6-25 (1941) 1-1 3) 越他:機械学会論文集: 8-35 (1943) 1-65 4) 藤他:機械学会論文集: ll-61 (1951) 1-156 5) 原:機械学会誌24, p. 187 (1934) 6 越;機械学会論文集:7-29 (1941) 1-29 7 原:機械学会論文集:3-13 (1938) 1-292 8 原:機械学会論文集:5-21 (1940) 1-89 9 原:機械学会論文集:7-29 (1941) 1-67 10 藤:表面工学概論:p. 138 (1962)