• 検索結果がありません。

Academic Knowledge Archives of Gunma Institutes: 臨床看護にリラクセーション法を取り入れることを目指して ―看護介入としてのリラクセーション法の研究・教育・実践―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Academic Knowledge Archives of Gunma Institutes: 臨床看護にリラクセーション法を取り入れることを目指して ―看護介入としてのリラクセーション法の研究・教育・実践―"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

この間におよそ 20年間の月日が流れており, 基礎研究におけるリラクセーション反応の検証, 臨床研究を通しての安全で 有効なリラクセーション法の効果の検証や指導法の検討などを行ってきた. さらに群馬大学医学部付属病院における日本 で初めてのリラクセーション外来の開設と運用の経緯について解説した. 最近は, リラクセーション法の研究も進み, 臨床 での取り組みも増えてきているものの, 今後さらに質の高い指導者を育成することで, この技法が多くの人々に活用される ことを目指している.セルフケアとしてのリラクセーション法は, 自 への (無用な)攻撃をやめること」により,おのずと 本来の生体機能が改善し, 心身の調和を取り戻すことで, 康生成に活用できるものである. はじめに 1.リラクセーション法に出会う 今日, 眠りに何らかの満足が得られていないと訴える 人々が, 国民全体の 3∼ 4割を占めると報告されるまでに 至り, 眠りの質をいかに高めるかは, 国民的問題に発展し てきている. 厚生労働省でも国民の 康に重大な影響を及 ぼす恐れがある課題として, 睡眠の知識・対処法の普及を 図る取り組みについて表明した. 日本看護協会は, 睡眠へ の支援ができる看護師の育成が必要として, 卒後研修の重 点課題として研修会を企画している. 今からおよそ 20年前, その当時眠れないと訴えるのは, 病気の苦しさや症状に悩まされる患者であると思われてい た. 夜勤の看護師にとって, そうした患者の訴えに有効な 対処法を見つけ出すことはなかなか難しい課題であった. 当時の睡眠の援助には, 暗さを保つ工夫や, 隣のいびきの 高い患者を個室に移動させて静かな環境を保つこと, 湯た んぽで保温されたベッドといった物理的な環境調整が主な ものであった. より有効な睡眠援助法がないものかと探し ていたところに, 渡辺の論文である積極的休養のすすめ 「リラクセーション法」に出合った. そこに紹介されてい たのがリラクセーション法の一つである筋弛緩法であった が, それは睡眠援助に活用できるものであると期待できる 内容であった. 早速, 弛緩法に関する研究について検索し たところ, 1995年当時の医中誌に リラクセーション> の Key wordsで出てきたのは, 筋肉弛緩薬の効果についての 報告のみであった. それから約 20年経った今, 日本の看護 領域におけるリラクセーション法の研究は確実に増えてき ている. その適用範囲も広がっており, 不眠や不安といっ 文献情報 キーワード: セルフケア, リラクセーション法, 看護介入としての活用, 指導者育成 投稿履歴: 受付 平成26年11月25日 採択 平成26年12月4日 論文別刷請求先: 小板橋喜久代 〒607-8175 京都府京都市山科区大宅山田町34 京都橘大学看護学部看護学科

(2)

た精神的な問題から, 痛みや吐き気などの身体症状の緩和 にも活用されている. 2.リラックスとリラクセーション ところで, 普段用いられる用語に, リラックス (relax) と 表現されるときと, リラクセーション (relaxation) と表現 されることがある. リラクセーション法を えていくとき には, この 2つの用語の意味を けて える必要がある. 動詞としてのリラックス (relax) は, くつろぐ」ことを意 味する.一方の,リラクセーション (relaxation)は名詞であ り, くつろぎ」や「癒し」を意味する. それ以上に重要な ことは, 動詞の relax の起源はラテン語の relaxareである といわれ, それは「再び (re) 緩める (laxare)」ことである. その結果として「緩んだ状態に戻す」あるいは「緩んだ状 態を取り戻す」ことを意味している. そこで, リラクセー ションのための方法としてこの言葉が用いられるときに は, 緊張を解き, 神経を落ち着かせる」という積極的な意 図を含んでいる. 身体の中の状態でいえば, 感神経の過 剰な興奮が抑えられ, 副 感神経の活動が活性化された状 態を意味することになる. なぜ, 緊張を解く必要があるの か, そこには, 過剰なストレスをため込みやすいといわれ る, 多くの現代人の暮らす生活の問題が浮かび上がる. ス トレスを受けると, 身体の中には, 本人が気づかなくても (意図しなくても) 自動的に何らかの歪みの状態が引き起 こされることになる. その状態に気づかずに, 長く放置し ていると, 自律性調節機構によってコントロールされてい る臓器が疲弊してくる. 疲弊した状態の長期化により, 可 逆性を失ってしまうほどの持続的なストレス負荷によっ て, 慢性疾患が引き起こされることは, よく知られたこと である. では, リラクセーション法によって, ストレスを受 けないで過ごすことができるようになるのか, というとそ れは無理なことである. ストレスに対処するということは, 生きていることそのものでもあり, それをなくすことがで きるわけがない. しかし, リラクセーション法によってス トレスの受け止め方を変えるか, その状態が長く続かない ように上手く対応できるようになれば, 元のようにゆった りとした状態, つまり, 生理的に調った状態, あるいは, ホ メオスタシス機構がスムーズに働く状態を取り戻すことが できるといえる. そのような意図で取り組まれているのが, リラクセーション法である. 実際にリラクセーションとし ての瞑想法を提唱した H. Bensonは, 深いリラクセーショ ンの状態における, 酸素消費量や筋肉組織中の乳酸値につ いて検討している. 中でも, 入眠時の最初の 3 間で平 10∼20%も酸素消費量が低下すると報告している. これ は, 睡眠中の酸素消費量が 4∼ 5時間かけて 8%ほど低下 していくのと比較しても, 大きな差であったといえる. こ うした研究により, 康な身体や生活を維持していく上で のリラクセーションの重要性が知られるようになってき た. ところで, 医中誌によりこの 20年間のリラクセーショ ン研究の推移を見ると, リラクセーション法の研究が増え てきているとことが伺えるものの, 実際には, アロマセラ ピー・タッチ/マッサージ・音楽療法などさまざまなリラッ クスを促す手法が含まれており, これらの論文数の増加が 著しい (図 1). 本稿では, 意図的に自律性調節系に働きか けて, リラクセーション反応を引き起こすようなプログラ ムを用いる技法」としてリラクセーション法 (呼吸法・筋弛 緩法・自律訓練法・誘導イメージ法・瞑想法)を取り上げる 看護介入としてのリラクセーション法 図1 我が国におけるリラクセーション法文献の推移 (医中誌) 1985年から 2013年間までの約 30年間における「リラクセーション」の Key word で検索された論文数 の推移

(3)

当時の日本のリラクセーションを取り巻く現状について 医中誌には検索できなかったものの, 実際には, 心理学 の領域では, 佐々木雄二氏による自律訓練法の活用, また 古くからの丹田呼吸などの呼吸法の取り組みなどがなされ ていた. 白隠禅師の「夜 閑話」 なども広く知られた書物 であることや, それらが, いわゆるリラクセーション法に 含まれるものであることについては, 研究を進めていく中 で, 後から知ることになった. また研究の手がかりとして, 唯一手に入った書籍が, F.J. McGuigan 著,三谷恵一訳「リラックスの科学」 であり,H. Benson の「Relaxation Response」 であった.McGuigan の 書いた書籍は, E. Jacobsonの研究開発した筋弛緩法 (Pro-gressive Muscle Relaxation Method, 略して PMR という) を, その弟子として彼が一般書として要約したものである と紹介されている.この書籍の中には,Jacobsonが,当時の アメリカの産業界で働く人々の実情を危惧し, リラクセー ション法を 康つくりにいかに活用すべきか, について端 的に書いている一文がある. 1960年代のアメリカの産業界 を担って忙しく働くビジネスマンたちを憂えて, 人々は 夜横になっても (ぐっすりと休むこともできず) 心臓を酷 し続けている」と警告を発している.つまり彼は,ホメオ ス タ シ ス 機 構 の 生 理 的 シ ス テ ム の 発 見 者 で あ る C.B. Canon の助手をしていたという経歴があり, 日夜を通して 緊張しつづける人々の生活が, ホメオスタシス機構を乱し, 康破たんを引き起こす危険なものである事について, このような状態が長くつづけば, 皆半病人のようになっ てしまい, アメリカ社会は立ちいかなくなる」と警鐘を鳴 らしたのである. このことに関連してこの技法が, いかに時代の要請を 担っているかを示すエピソードがある. 1960年代といえ ば, わが国も高度成長期のまっただ中にあった. 当時アメ リカに留学していた渡辺氏は, 折しも留学先の大学で Jacobson に出会うことになり, 日本の社会もいずれアメリ 会や講演会を開いたが, 当時の人々の関心を呼ぶことがな かったとのこと. 当時の社会状況からすると, とてもリ ラックスなどしていられないというのが実情のようであっ たと渡辺氏が述懐している. 彼の翻訳した Jacobsonの著 書「You Must Relax」の日本語版「ビジネスマンのための リラックス法」 や,自身が編集した「リラクセーション,」 といった書籍も人々の関心を呼ぶことがなかったとのこと であった. 幸いにも, この渡辺氏の書かれた雑誌論文が, 筆 者をリラクセーション法の研究に導いてくれることになっ たのである. 今多くの人々が, リラクセーションに関心を 寄せるようになってきた. 人々の生活パターンが変わり, さまざまな生活技術・医療技術の開発とともに, ストレス 量も飛躍的に増大したことが, リラクセーション法への関 心の高まりの背景にあると推測できる. ところで, 1980年代のアメリカの看護界では, すでに看 護介入法としてリラクセーション法が活用されるように なっていた. その当時, リラクセーション法の指導をどの ように行えばよいのか, 国内では まとまったマニュアルが なかったために, 当時アメリカで広く活用されていた D.A. Bernstein ら に よ り 編 集 さ れ た リ ラ ク セーション 指 導 マ ニュアル「Progressive Relaxation Training」 を入手して, 練習するとともに, どのように指導すればよいのかゼロか らの取り組みであった. この書籍は, 編集されてから長い 時間が経っているが, 筋弛緩法の指導のテキストとして広 く活用されているものである. リラクセーション反応は, 本当に起こるのか (基礎研究への取り組み) そもそも, リラクセーション反応が実際に得られるもの か, 検証してみる必要がある. そこで 常者を対象に基礎 研究に着手した.測定指標は,脈拍・皮膚表面温と内省報告 データであったが, 収縮期血圧および脈拍が有意に減少し, 内省報告では, リラックス感の深まり, 身体感覚としての 脱力感と緊張緩和が得られた. この結果を当時の看護学

(4)

会に報告したところ, 本当にこんな反応が得られるの か?」との質問を受けることになった. 同じプロトコール で実験を行うなら, 同じ結果が得られる可能性があると予 測する」としかいえないと答えたことを思い出す. つまり, こんな単純な方法で自律神経の活動が変化するものなの か?という疑いを含んだ質問であった. さらに, 生理的な指標を用いてリラクセーション反応を 検証するために実験研究に取り組んだ. 実験の参加者は 23名の 常成人であった. クロスオーバーデザインによ り, 対照群 (安静時) と実験群 (筋弛緩法実施時) に参加し てもらった. 筋弛緩法による作用機序モデル (図 2) に則っ て, 脳波と心拍変動解析 (HRV) による心臓自律神経活動 の 析を行った. それ以外にも主観的なリラックス感を測 る身体感覚尺度, 内省報告による意見を聴取した. 実験群 は, 先の研究で自主制作した 25 間の練習用のテープを 用いて, 筋弛緩法のナレーションを聞きながら, 自ら体験 をしてもらった. 脳波には α波の増幅も見られたが, その 時間経過を見ると, まず始めは β波の鎮静化に伴って, α 波や θ波の増幅が見られた. 心臓自律神経活動は, 周波数 解析では, 感神経活動の鎮静化と副 感神経活動の活性 化の傾向が見られたが, 統計的な有意差は得られなかった. 筋弛緩法を初心者に体験してもらう場合には, 弛緩した感 覚を得やすくするために, まず始めに骨格筋を意図的に緊 張させる能動的方法がとられる. その結果, 練習経過中に いったん 感神経活動の活性化が起こり, その後に鎮静化 していく. 副 感神経活動はこれとは逆の反応を示すこと になり, 体験後に副 感神経活動の活性化がみられたもの の, 有意差には至らなかったものと思われた. しかし, 時系 列解析では, 実験群において有意に RR 間隔の 長と心拍 数の低下がみられ, リラックスした状態を現していた (図 3, 図 4). 横隔膜を った腹式呼吸と意図的に十 に筋肉の 緊張を取り除くことで, リラックス反応が得られる可能性 図2 筋弛緩法により誘発されるリラクセーション反応の生理的作用機序モデル (小板橋) 長息呼気と意図的な骨格筋御弛緩をトリガー刺激として骨格筋―神経系に生じるリラクセーション反応 の生理的作用機序モデル 図3 RR 間隔の経時的変化 HRVによる時系列解析による RR 間隔の経時的変化に ついて,開始前を基準値として,終了時,終了 10 後の経 時的な変化を示した. 図4 CVrrの経時的変化 HRVによる時系列解析による CVrrの経時的変化につ いて,開始前を基準値として,終了時,終了 10 後の経時 的な変化を示した. 看護介入としてのリラクセーション法

(5)

生理的データに見られる自律神経活動や脳波の鎮静化 と, リラックス尺度や内省報告にみられるリラックス感の 体験に加えて, この技法は比較的簡単なもので, 入院中の 患者にも無理なく体験できる可能性があると えられた. そこで, リラクセーション法を看護介入に用いることの有 効性を臨床研究により明らかにしていくこととして, 臨床 の場でのデータ収集へと研究を進めることになった. 臨床での活用を目指して (臨床研究へのトランスレーション) 国内の臨床研究の最初の報告は, 荒川による PMR を ったがん患者の吐き気・嘔吐症状緩和の効果についての 研究である. 抗がん剤による不快症状に対して, 身体をリ ラックスさせることが吐き気の症状を軽減することについ て介入群・対照群それぞれ 30名の入院患者を対象に追跡し たものである. 荒川がこの研究のために国内でデータ収集 中に, 制吐剤としてカイトリルが われ始めたために, 吐 き気や嘔吐の症状を訴える患者が減り, 介入の評価に一部 影響が出たという逸話が聞かれたが, それでも吐き気症状 に対しては介入群に有意に症状軽減が見られた. 気持ちを 鎮めることが, 不快な腹部症状を落ち着かせる効果がある と 察された. 筆者の最初の臨床研究は, 不眠症状のあるがん患者によ る事例検討であった. 不眠を訴える入院患者への筋弛緩法 の指導により, 睡眠の質が高まるか, リラクセーション法 の体験をしてもらい, 睡眠の評価 (OSA 睡眠調査票) を 行った. その結果は, 入眠潜時の短縮」, 夜間覚醒時の再 入眠が得やすくなる」, 熟睡感が得やすい」であった.寝付 きやすく, 夜中に目覚めてしまったときに再度寝付きやす いということは, 眠りに入れない不安感や, 夜間のイライ ラした気持ちを調えるには, 非常に役立つといえる. 睡眠 の質を低下させる要因を全て排除することは難しいが, 眠 りに入る時と, 夜中の覚醒によるイライラを抑えられると いうことは, これだけでも, かなり睡眠の質が上がるとい 睡眠への援助としても試みられており, 多田らは, 不眠 症状のある患者に自然の眠りをもたらすために自律訓練法 の指導の効果について報告している. 今別府らは, 地域で 暮らす不眠症状を呈する高齢者に筋弛緩法を指導して睡眠 の質の改善が見られたと報告している. そのほかの領域として, 武田らは, 筋弛緩法の指導に よって, 膝関節置換術後のリハビリ時の疼痛の緩和が促さ れ, リハビリに取り組みやすくなることについて報告して いる. 片田は, 慢性疾患を持ち生活管理に取り組んでいる 型糖尿病患者へのストレスマネジメントとしての筋弛緩 法の有効性について報告した. 鈴木は, 心筋梗塞後のリハ ビリへの導入について事例を報告している. 大平らは, 月 経前症候群を有する女性患者に呼吸法を指導してその効果 を報告している. 森谷らは, 多発性側索 化症患者への疲 労の軽減効果について検討した. 看護師の疲労回復に有 効であるとの報告もある. 臨床での適用範囲は, これから の研究の蓄積により, さらに広まっていくことが期待でき る. リラクセーション法は,アメリカの看護介入 類 (NOC) においても「心理的・精神的安楽・安寧の促進」「慢性疼痛」 「不安」など複数の臨床症状に適用することが推奨されて いる. 我が国においても, 多くの臨床研究によって, その 有効性の検証がなされ, 臨床での活用が広まることが望ま れる. 国内での活用を期待して, 編集したのが, 荒川らによ る「看護におけるリラクセーション技法」の書籍であった. 基礎教育への取り組み リラクセーション法を基礎教育に取り入れることの意義 については, 非常に大きなものがある. 患者の日常生活支 援における心理精神的な支援の必要性は言うまでもなく, 康な人々の心身の機能を高める上からも欠かせないもの であるといえる. この技法は実際に身体の自律的な調節系 に働きかけて, 無用な緊張を取り除くことで, 本来の生体 機能を高めることが期待できる.

(6)

これまでにも, 基礎看護教育においてリラクセーション 法を指導する試みは広がってきていたが, 大学における 技術教育のあり方に関する検討会報告書」(平成 14年 3 月) において,基礎教育で習得されるべき共通看護技術と して, リラクセーション法・マッサージがリストされたこ とは大きな推進になった. それと時期を同じくして筆者ら は,DVD 教材として「看護で活用するリラクセーション法 の実際」を編集した. ストレスを受けやすい現代社会の状 況や, リラクセーション法の基礎にある生理学的な作用機 序の解説と共に, 基本的な技法の説明と実技の紹介である. 筆者らが関わってきた教育課程においても, 康生活援 助論」や「 康生活援助技術実習」さらには, ホリスティッ クケア論」のなかに,生理的・精神的安寧を促すケアとして 取り入れてきた. いくつかの大学では, コンプリメンタ リーセラピー」あるいは, 代替的ケア論」などの科目名で, リラクセーション法の知識を教授する取り組みがなされて いる. また最近は, 文部科学省のホームページでも, リ ラ ク セーション法は, ラックス反応を誘導し, ストレス反応を 低減させる, 心身の回復機能を向上させる方法であるとし て筋弛緩法を紹介している. ストレスマネジメントとして その有効性が示されていると推奨している. リラクセーション法を専門的に指導する場を設ける これまでの取り組みから, リラクセーション法は臨床で 安全に効果的に指導することが可能な技法であるというこ とが確認された. そこで, 群馬大学医学部付属病院看護部 と保 学科の教員の協働により 合診療部内に, 看護専門 外来の一つとして, リラクセーション外来が開設されるこ とになったのは平成 15年 5月のことであった. サービス 内容の紹介や受付, 初診者の診察と適応性の評価などは, 外来スタッフや医師の協力を得ることで, 受診者にとって も診療情報とのつながりも良く, 担当者も安心して運営で きる体制が整っている (図 5). これまでの実際の運営には, 臨床経験のある大学院生の協力を得てきたことも大変貴重 なことである. 原則として週 1回の開設である. 外来での 指導の目票は, 具体的な技法を習得し自 の 康管理に活 用できることである (図 6). リラクセーション法に関わる 基本的な知識と, そこに引き起こされる身体内部の反応と 精神心理的反応が, 康生成の基盤になっていることを体 験的に習得していくことに主眼を置いている. およそ 3ヶ 月を 1クールとして, 複数のリラクセーション法 (表 1) を 紹介し体験してもらう. 繰り返して体験を積むことで, 身 体の中にできあがっている緊張傾向を生みやすい習慣的な 反応を,段階的・漸進的に改善していくことができる. 初診時以外は集団指導の形態を取っているが, そのこと が 1対 1で向き合うことの緊張を和らげていくという良い 図5 リラクセーション外来の運営システム 図6 リラクセーション外来の指導の目標 看護介入としてのリラクセーション法

(7)

は, 自 の心身の状態や生活上のイベントに合わせて, 適 宜活用していけるようになる. この時期には, 身近な対人 関係に何らかの良い変化が現れると, 受診者が自ら報告し ている. さらに第 3段階は, リラックスして過ごすことが 習慣化してくる時期である. およそ 3ヶ月, 受診回数として 12回以上取り組んだ患者が 19 名いる. その内省報告によ ると, 大きな視点で自 の人生を振り返り, 自然の中に護 られているという感覚を得ることができるという. 自 自 身を癒すことができるようになる (自然の大きな力への気 づきと癒し). このように積極的に日々の中で取り組みを課 していった方からは 無用な緊張を避けてリラックスして 過ごすという身体の習慣ができてくると共に, 物事の え 方や受け止め方・気 や気持ちの持ち方とともに行動の変 化が見られるようになることがわかってきた. こうした経 過は, 中長期的なリラクセーションの効果として, 大変興 味深いものであり, 今後の外来データの 析に期待したい. 外来での指導のなかから制作されることになったのが, 自己練習を促すためのプログラムの入った CD である. 自宅で練習するときの手段がないと勧められないという患 者の声がきっかけになった. また, 近藤は, リラクセーショ ン法の習得過程において, 技法の習得を促進する要因と困 リラクセーション法の指導者養成とこれからの課題 ここまで取り組んできて, 最後の課題は, リラクセー ション法の指導者の育成である. 平成 25年 5月より, 第 1 期生のリラクセーション看護講座を開始した. 国内の 4 大学を拠点として e-learning システムとテレビ会議システ ムを併用した 1年間の講座であるが, 全国から 60名の受 講生が取り組んだ. 18単元のコンテンツの制作と講座用 のテキストを編集した. 引き続いて 26年度は第 2期生の 講座を開講するとともに, 1期生がさらに自己研鑽し続け るためのアドバンスコースを運営している. この企画は, 今後さらに, 教材と運営システムを見直し して, 全国のどの地点からでも希望者が主体的に学べる場 を提供していけるように, さらにシステム構築を目指して 検討している. 指導者が育成されることと, これから活用 が期待されている領域として, 産業看護における 康教育, 会社の 康管理室や 診時の指導, さまざまなケアワー カーのためのストレスマネジメント, 教育の場での指導, 在宅・地域の場での活用などである. 改めて, リラクセー ション法は, いつでも, どこでも, 誰にでも適用できるとい われるように, より広い 野で われることが望まれてい る. またそのためにも, 身近な所で, その効果や技法を紹介

(8)

し指導することのできる人材が増える必要がある. まずは, 康生成のための生活指導の役割を負っている看護師から 発信していけることを期待している. まとめ(この技法を知っていて損はない) たまたま出会った一つの論文に筋弛緩法が紹介されてい たことをきっかけに, Jacobsonのリラクセーション法に触 れることになり, 我が国の看護に, 筋弛緩法その他のリラ クセーション法を取り入れることができるようになった. この 20年間に, 技法の紹介から, 基礎・臨床研究による効 果の検証, 臨床における指導の場としてリラクセーション 外来の運営, 指導・練習用の教材の作成, そして, リラク セーション法の指導者養成講座のカリキュラムの整備と講 座の運営へと発展してきた. なかでも主に取り組んできた筋弛緩法は, 生理的作用機 序が説明されており, 身体感覚としてのリラックス反応が キャッチしやすいこともあり, 一般の人々にとっても, 取 り入れやすい方法といえる, ほんのわずかな緊張でも, 無 意識のうちにその緊張が持続し続けるなら, それは大きな エネルギーのロスであり, 生体への負荷となることはいう までもないことである. しかも, 自律性調節機構の働きを 変調させることになり, 生命維持そのものを担っている臓 器を知らず知らずに疲弊させていく結果になることを忘れ てはならない. 思 活動は身体反応を伴う, 中でも否定的 な思 活動はさらに緊張を増大させるという Jacobsonの 懸念を思い出す必要がある. その反応は見えないところに 起こっている. 誰が緊張して過ごすように指令しているの だろうかと自問してみると, なんと自 自身の頭の中で, その指令が発しられていると気づくのである. 心身の 康 管理は自 自身でということになろう. 文献 1. NHK 放送文化研究所(編).日本人の生活時間.東京 :NHK 出版, 2010;16-18. 2. 渡辺俊男. リラクセーションの効果. 体育の科学 (特集 :積 極的休養のすすめ). 1947;24(8):501-504. 3. 荒川唱子,小板橋喜久代.リラクセーション法に関する研究 の動向-1980∼1996年-諸学会を中心に. 臨床看護研究の進 歩. 東京 :医学書院 1997;9:26-33.

4. Benson H.: the Relaxation Response. New York AVON BOOKS 1975. 中尾睦宏. 熊野宏昭/久保木富房訳 : リラク セーション反応. 東京:星和書店, 2001. 5. 佐々木雄二. 自律訓練法の実際. 東京 : 元社, 2006. 6. 白隠慧鶴(著). 芳澤勝弘(訳注). 夜 閑話 白隠禅師法語全 集 第 4冊. 京都 :禅文化研究所, 2000. 7. マクギーガン F.J.(著). 三谷恵一他(訳). リラックスの科学. 東京 :講談社ブルーバックス, 1991. 8. Jacobson E.(著).渡辺俊男(訳).ビジネスマンのリラックス 康法. 東京 :有紀書房, 1963. 9. 渡邊俊男. リラクセーション. 東京 :不昧堂, 1970.

10. Bernstein DA,Borkovec TD. Progressive Relaxation Train-ing. Illinois Rasserchi Press, 1973.

11. 小板橋喜久代,大野夏代.リラクセーション法の指導による バイタルサインの変化. 日本看護研究学会雑誌 1997; 20(4):98. 12. 小板橋喜久代, 柳奈津子, 菱沼典子. 漸進的筋弛緩法によっ て惹起される生理的・感覚的反応.第 18回日本看護科学学 会講演集 1998:68-69. 13. 柳奈津子, 小板橋喜久代, 小池弘人. 康女性における呼吸 法によるリラクセーション反応の評価. 北関東医学 2002; 53(1):29-35.

14. Arakawa S. Relaxasion to reduce nausea, vomiting, and anxiety induced by chemotherapy in Japanese patients. Cancer Nurs 1997;20(4):342-349. 15. 小板橋喜久代,大野夏代.リラクセーションによる睡眠への 援助. 埼玉県立衛生短期大学紀要 1995;20:154-163. 16. 近藤由香. がん患者に対する漸進的筋弛緩法の継続介入の 効果に関する効果.日本がん看護学会誌 2008;22(1):86-97. 17. 荒川唱子. がん化学療法患者の Well-being に及ぼすリラク セーション技法の長期的影響.平成 11∼12年度科学研究助 成金 (基盤研究 (C)) 報告書, 2002. 18. 荒川唱子.誘導イメージ法の試み.看護学雑誌 2006;64(7): 603-605. 19. 箕輪千佳,小板橋喜久代.自律訓練法が周術期の不安と疼痛 に及ぼす影響. 日本看護技術学会誌 2011;10(2):30-39. 20. 多田育美, 境田真奈美, 石森由樹ら. 不眠の患者に自然の入 眠を促す自律訓練法の有効性. 第 30回成人看護Ⅱ 1999; 16-50. 21. 今別府志帆,山田重行.在宅療養者での漸進的筋弛緩法の習 得過程におけるリ ラック ス 反 応. 日本看護技術学会誌 2009;8 (3):57-64. 22. 武田宣子, 柳本優子, 富田真佐子ら. 人工膝関節全置換術後 痛, 持続的他動運動後痛および術後早期関節可動域のリハ ビリテーション訓練に対する漸進的筋弛緩法の効果. 日本 整形外科看護研究会誌 2008;3:56-63.

23. Katada Y, Koitabashi K, Tomono S, et al. Impact of a concomitant relaxation technique intervention on medical and health behaviors in patients treated for type 2 diabetes mellitus. The Kitakanto Med J 2014;64(2) :135-148. 24. 鈴木恵理. 急性心筋梗塞後に心臓リハビリテーションを 行っている患者. 小板橋喜久代, 荒川唱子(編). リラクセー ション入門 (Part 6). 日本看護協会出版会 東京 : 2013; 167-171. 25. 大平肇子, 町裏美智子, 斎藤 誠ら. 月経前症候群の症状を 有する女性に対する呼吸法のリラクセーション効果. 母性 衛生 2013;3:497-504. 26. 森谷里香,池田七衣.漸進的筋弛緩法による多発性側索 化 症病者の疲労への効果と課題 4名への 2週間の介入を試み た事例研究. 摂南大学看護学研究雑誌 2014;2(1):23-31. 27. 深谷若菜, 林 浩子, 井晶子. 看護師の夜勤前の自律訓練 法導入による疲労回復の効果. 第 37回看護 合 2006: 348-350.

28. Gloria MB, Howard KB, McCouskey et al.(著) 中木高夫, 黒田裕子(訳), 看護介入 類 (NIC) 第 5版. 東京 : 南江堂, 2009.

29. 荒川唱子, 小板橋喜久代(編). 看護に生かすリラクセーショ 看護介入としてのリラクセーション法

(9)

nique training to allevitate emotional stress in pactients with chronic pain. A report of tow cases. Open J Nurs Sci 9

(10)

How to Incorporate Relaxation M ethods into Clinical Nursing

Research,Education,and Implementation of Relaxation M ethods as a Nursing

Intervention

Kikuyo Koitabashi

1 Department of Nursing, Kyoto Tachibana University Graduate School of Nursing, 34 Yamada-cho Oyake, Yamashina-ku, Kyoto 607-8175, Japan

Abstract

This study examined activities that had been conducted until relaxation methods came to be implemented clinically as a nursing intervention in Japan. For about 20 years, the relaxation response was tested in basic research, while the effects of safe and effective relaxation methods were tested and instruction methods were investigated in clinical research. Furthermore,the study explained the sequence of events in the establishment and operation of the relaxation outpatient clinic of Gunma University Hospital,the first relaxation outpatient clinic in Japan. Recently,research on relaxation methods has progressed,and these methods have been increasingly used in clinical practice. Furthermore, our aim is to develop high-quality instructors so that these methods will be used by many people in the future. Relaxation methods as self-care can be used to create health through the discontinuation of pointless self-attack, which allows improvement of natural biological functions and achieves recovery of the balance of mind and body.

Key words: self-care,

relaxation method,

use as a nursing intervention, development of instructors

参照

関連したドキュメント

6 枚方市訪問看護ステーション連絡会 ①概要

 介護問題研究は、介護者の負担軽減を目的とし、負担 に影響する要因やストレスを追究するが、普遍的結論を

 少子高齢化,地球温暖化,医療技術の進歩,AI

We have presented in this article (i) existence and uniqueness of the viscous-inviscid coupled problem with interfacial data, when suitable con- ditions are imposed on the

2.認定看護管理者教育課程サードレベル修了者以外の受験者について、看護系大学院の修士課程

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

の 立病院との連携が必要で、 立病院のケース ー ーに訪問看護の を らせ、利用者の をしてもらえるよう 報活動をする。 の ・看護 ・ケア

では,訪問看護認定看護師が在宅ケアの推進・質の高い看護の実践に対して,どのような活動