Title
[報文]組織培養苗を用いたパパイヤの栽培管理とその可
能性について
Author(s)
濱井, 義則; 上原, 周夫; 松田, 義昭; 福村, 直樹; 大仲, 裕治
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 9(1): 1-4
Issue Date
1993-03-20
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/14067
Vo1 9 No1 1993 組織培蕃苗を用いたパパイヤの栽培管理とその可能性について
組織培養苗 を用 いたパパ イヤの栽培管理 とその可能性 につ いて
昭 義 田 松 夫 治 周 裕 原 伸 上 大 則 樹 義 直 井 村 演 福 (北 中城村農業開発株式会社')CultlVatlOnTechniquesofPapayaUslng Plantletsfl・Om MeristenlCultu】・e YoshlnOriHAMAL Chlkao UEHARA,YoshlakiMATUDA.
NaokiFUKUMURA,andYujlOHNAKA KitanakagusukuAgriculturalDevelopmentCo.Ltd.
1868Atsula,Kilanakagusuku-Son,OklnaWa,901-23
緒 言 パパ イヤはメキシコ,西 イン ド諸島及 びブ ラ ジルにまたが るアメ リカ原産で,沖縄県へ は明 治末期 に導入 され,1988年の栽培面積 は154ha となっている.現在,パパ イヤは野菜及 び加工 用 を主体 に栽培 されているが,最近の消費動 向 の変化, ウリミバエの根絶 によ り果実生産 と し て見直 しが され,急速 に栽培熱が高まっている. しか し,パパ イヤの種苗生産 は今 まで 自家採取 及 び導入種子の実生で行 っているため,性 の変 化,果実の形質の変化があ り,形質熟度の揃 っ た果実 を安定生産す ることが全 く不可能 とされ, 組織培養 による大量増殖技術 の開発及 び品種 育 成が,沖縄県 における農業部門の研究開発 の課 題の一つ になっていた1). 本報告 は組織培養苗が親の形質 を受 け継 ぐか どうかを明 らかにす ると共 に,組織培養苗 を用 いたパパ イヤの栽培管理 とその可能性 につ いて 言及 した ものである. 品 種 パパ イヤの新種 は在来種, ソロ種,南洋種等 いろいろな品種が存在 している.本研究で は組 織培養苗が親の形質 をその まま受 け継 ぐか, そ の栽培 をどのようにす るか を調べ ることを第一 '沖縄県中頭郡北中城村字熱 田1868 の 目的 としているため,パパ イヤの品種は台農 2号 をは じめ 2- 3の種類 を用いた. 組織培養 これ までパパ イヤの繁殖 は種子繁殖 に頼 って きたため,幼百時 における雄性株,雌性株両性 株の判別が困難で,又実のば らつ きもあ り, 莱 実の規格統一 も不可能であった. 一方,パパ イヤの組織培養 は研究室 レベ ルで の方法論 に終始 し大量増殖でのライン化, さ ら に組織培蕃苗がはた して親の形質 を受 け継 ぐか については全 く明 らかにされていない2) 著者等のパパ イヤの組織培養 はR.E.Litzと 写真 1.組織培未申のパパ イヤ (増殖過程 ) R.A.Conover等 の方法 を修正 して行 ってい る3) (写真1).著者等 の方法 で はパパ イヤの 増殖率 は月3-4倍で,現在月産3.000-4,000 本の培養苗が ライ ン化 され生産 されている.
演 井 義 則 ・他 培 養 苗 の 特 性 パパ イヤの組織培養苗 の特性 は,雌性株 か ら 組織培養す る とその昔 はすべ て雌性株,両性株 か らで は両性株,雄性株 か らでは雄性株 で親 の 形質 を受 け継 ぎ,幼苗時か ら雌性苗 は雌性 苗 と して苗の配布が行 える.果実の着果位置 はた と えば台農2号 の場合,種子繁殖で平均32節 目で 花芽が認め られ るのに対 して,培養苗 は25節 目 で種子繁殖 よ りも低 い位置で果実の着果が認 め られる.果実の形態 については写真2で示 す ご と く二つの株 は母株が全 く同 じで組織培養 を行 っ た ものであるが,果実 の着果位置 は同 じ位 で あ るのは もちろんの こと果実 の形態 も類似 して い る. 写真
2.
同母株 か ら作 られた組織培養首の 着果状況 (雌悼株 ) 培 養 苗 に よ るパ パ イヤ の 栽 培 一般的にパパ イヤは冬場 を除 けば年 中植 え付 け可能であるが,沖縄県の気候条件 を考 え る と 台風通過後 の10-11月 に植 え付 け を済 ませ て, 翌年の台風通過前 に収穫 を開始す る秋植 え栽培 と, 3- 4月 に植 え付 け して同年の11月以 降 か ら収穫 開始す る春植 え栽培がある.培養苗 に よ るパパ イヤ栽培 はほ とん どが野菜用 で はな く青 果用 と しての栽培 を 目的 と してい るため, ハ ウ ス栽培 を勧 めたい.ハ ウスは大型ハ ウス又 はパ イプハ ウスで もよい.夏場 は1mmネ ッ トをか け 冬場 は ビニール をかける.培養苗の定植 は畦 幅 3m,畦高30cm,株 間2- 25mと し, 施 肥 は1
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当 り堆肥 を3-5t
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, さらに植 え穴 (直径 30-40cm,
深 さ20-30cm)を掘 り堆肥3k9を土 南方資 源利 用技術研 究会誌 と混和 して定植す る.畦 は冬場 はシルバ ーマ ル チで,夏場 は敷 き革で覆い追肥 は以下 の通 り行う.
表1.パパ イヤ月別施肥量 春 植 秋 植 月 肥料 名 施肥量 月 肥料 名 施肥量 5月 B・B370号 60911月 B・B370号 609 6月 B・B370号 909 12月 B・B370号 909 7月 B・8370号 1509 3月 B・B370号 1509 8月 B・B370号 1809 6月 B・B370号 1509 10月 B・B370号 1209 8月 B・B370号 1509 次 に定植後頂部 に花芽が見 えた ら地際部 に湛 水 を行 い,地際部土壌 を軟化 させ,地際部 を押 さえなが ら幹 ごと完全 に倒伏 し,起 き上が らな い ようにひ もで誘引す る,一 ケ月後項部が起 き 上が って くる と地際部 か ら着 果 が可 能 とな る. 写真3 写真3.倒伏誘 引後 、頂部 が起 き上 が り 着果開始 が認 め られた 潅水 は定植後根が活着す るまで毎 日, さ らに 活着後4日に 1回の割合で行 う.尚,パパ イヤ は水が滞留 した場合根腐 れ をお こしやすいため, 排水 には くれ ぐれ も気 をつ けること.Vo1 9 Nol 1993 組織培養百を用いたパパイヤの栽培管理とその可能性について パ パ イヤ の 収 穫 組織培養苗 を用 いたパパ イヤの収穫 は,野 菜 用 として1- 3月 開花 は120-160日, 5月開 花 は100日程度で行 い,果実用 1- 3月開花 は 150-180日で果皮 が 7分着色 , 又 5- 6月開 花 は150日で果皮が 2- 3分着色 で収穫 す る. 写真4, は台農2号 の雌株 (組織培養苗) の典 型的な着果状況 を示 した ものであ る.台農2号 は タイ種 とソロ種 の交配 で育成 され た品種 で, 雌果 は楕 円形,両性異 は長形であ る.果皮 の色 は濃緑色で,果 肉は紅色,又近年栽培者 に最 も 歓迎 され台湾で は主要 な経済作物 となっている. 組織培養 による台農2号の雌株 は,培養苗 の特 性 で述べ た ごと く極 めて低 い位置ですず な りに 着果す ることが認 め られ る.着果数 は1回 目の 花 芽 に対 して平 均40-50個 ,重 さは 1個 当 り 800g前後で,年間を通 したならば平均70kg以 上 の収穫が行 えた.又,本果実 はハ ウス栽培 を 行 い雄株 を導入 していないため,全 ての果 実 に 種 の混入が認 め られず,通称種無 しパパ イヤで あ った. 写真4.台農2号雌性株 の組織培菜苗の 着果状態(25節 目か ら着果開始 ) 一方,果物用 としての糖度 は,冬場ハ ウス栽 培 を行 って も日照及 び温度 の関係 か ら11度前 後 と若干低 くなるようで,夏場 は13度前後 と果物 用 としては もうしぶんのない糖度であ った. パ パ イヤ の病 害 虫 パパ イヤの病害虫 に はパパ イヤ モザ イ ク病 , パパ イヤ タンソ病,パパ イヤ ウ ドンコ病,苗 立 枯病,疫病,ハ ダニ等 であ る.パパ イヤモザ イ ク病が羅病 した株 は,パパ イヤの採取量 も少 な い うえに品質が悪 く,最悪 の ときは園 として の 経済的価値 を失 い,最近 ではパパ イヤ栽培 上 の 主要 な制限因子 になってい a_. このため,組織 培養苗 を利用す る場合露地栽培で は現在全 くパ パ イヤモザ イク病 を防 ぐこ とが で きない ため, 著者等 はハ ウス栽培 を勧 めている.ハ ウス は大 型鉄骨ハ ウス又 はパ イプハ ウスで,夏場 は1mm ネ ッ トで覆 い冬場 は ビニ ールで覆 い をす る と, パパ イヤモザ イクウイルスのキ ャリアであ るア ブラムシの侵入が押 さえ られる.一方, ウ ドン コ病,ハ ダニはハ ウス栽培 で周年,疫病 は11-2月主 として幹果実 に, タンソ病 は果実肥大期 か ら収穫時期 にかけて多発 し,その防除は適期 に行 うよう努 めてい る. 考 察 パパ イヤの繁殖 は種子繁殖 に頼 って きたため, 幼苗時 における雄性株,雌悼株,両生株 の判 別 が極 めて困難で,性 の揃 った組織培養苗の 出現 が待 たれて い た.1991年, 著者等 に よるパパ イヤの大量増殖技術 の確立 は,それ までの問題 を一気 に解決へ と導 くものであ った4).す なわ ち,今 回組織培養苗 の特性 で述べ たごと く, 級 織培養苗 は雌性株 か らは雌性株が 出現 し,幼昔 時か ら雌性苗 は雌性笛 として笛の配布が可 能 に なった. この ことは,組織培養苗が親の形 質 を 受 け継 ぐ事 を示す とともに,従来課題 とされて いた果実 の規格統一 も可能であることを示 唆 し ている. 一方,組織培養苗 は種子繁殖苗 よ り低 い位 置 で着果す ることが明 らか とな った.研 究 当初 , 著者等 は組織培養苗 も種子繁殖苗 も着果位 置 は ほぼ同 じ位置で はないか と考 えていた. これ は おそ ら く,組織培養 での繁殖 で何代 か継代 を重 ね るため, その成長分 だけ果実の着果位置 が低
横 井 義 則・他 くなった もの と考 え られる. しか し,いず れ に しろ,着果位置が低 くなることは,パパ イヤの 生産にとって好 ましいことで収穫の労働 も軽減 される. 種子繁殖 による苗でハ ウス培養 を行 うと, と きには雌性株で種無 しのパパ イヤの実が見 られ る. しか し,種子繁殖による苗では雄性株, 両 性株が混在 しているため,全ての肝 性株で種無 しの果実がで きるわけで はない. この こ とは, パパ イヤの雌性株が無性生殖 も行 うことを示す もので,仮 に組織培養苗の雌性株 をハ ウス培 養 したならば,夏場で1mmネ ットを していて も全 く効率 よ く全ての果実が種無 しになる (写真5). す なわち,ハ ワイ産のパパ イヤが種があるの に 対 して,沖縄県産のパパ イヤは種無 しと,販 売 における差別化 を含め,戦略的な生産体系 も可 能である. このように組織培養笛の出現 は, パ パ イヤ産業 に大変革 をもた らしその期待 も大 き
い.
写真5.組織培兼苗 によるハ ウス栽培の状況 (収穫後期 ) 尚,本報告 を終 えるにあた り,本論文が少 し で も沖縄 のパパ イヤ顛培 に寄与で きれば幸 いで ある. 南方資源利用技術研究会誌 文 献 1)沖縄 開発庁沖縄総合事務局,総務部調査 企 画課 (1989) バ イオテ クノロジー を活用 した亜熱帯農林水産業進行調査報告書. 2)片岡郁雄, 井上宏 (1987)組織培 養 に よ る熱帯,亜熱帯果樹の栄養繁殖 に関す る研 究,香川大学農学部学術報告,38( 2):7-10.3)R.E LltZand R A.Conobver(1978)
In vitro propagasion of papaya,Hort. Science,13(3):241-242.
4)演井義則 (1991)組織培 養 に よる農産種 苗の生産,記念 シンポジウム 「沖縄のバ イ オ資源の利活用 を探 る」抄録集 29-36.