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目 次 1. 無 線 LAN の 歴 史 無 線 LAN 物 理 層 の 特 性... 6 主 な 無 線 LAN 関 連 技 術... 9 理 論 上 のデータレートの 計 算 無 線 LAN 計 測 の 計 測 器 構 成 送 信 計 測... 25

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無線 LAN 計測入門

802.11a から 802.11ac へ

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無線 LAN 計測入門

802.11a から 802.11ac へ

目次

1.無線 LAN の歴史 ... 3

2.無線 LAN 物理層の特性 ... 6

主な無線 LAN 関連技術 ... 9

理論上のデータレートの計算 ... 20

無線 LAN 計測の計測器構成 ... 23

3.送信計測 ... 25

最大送信電力 ... 25

変調品質 ... 29

スペクトル計測 ... 34

4.受信機計測 ... 41

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無線 LAN 計測入門

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1. 無線

LAN の歴史

基本の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)設計は、アクセスポイントとクライアントという考え に基づいています。 アクセスポイントまたはルータは、セルラーネットワークにおける基地局と同じ役割を 果たすもので、 有線の基幹回線と無線のクライアントトラフィックとの橋渡しとなります。 クライアントデ バイスには、デスクトップ PC、ノート PC、スマートフォン、ゲーム機、プリンタなどがあります。

1997 年には、IEEE 802.11 Working Group が IEEE 802.11 を世界初の無線 LAN 規格として承認しました。 この規格では、1 Mb/秒と 2 Mb/秒のデータレートをサポートしていました。 1999 年には、当初の 802.11 規格に 2 つの重大な改正が承認されました。

• IEEE 802.11a-1999 は、802.11a として知られるもので、OFDM 技術を利用して 5 GHz 帯域で 最大 54 Mb/秒のデータレートを実現できます。

• IEEE 802.11b-1999 は、802.11b として知られるもので、直接シーケンススペクトラム拡散 (DSSS、direct sequence spread spectrum)技術の使用を拡大して、2.4 GHz の ISM バンドで 最大 11 Mb/秒を実現できます。

802.11a は、2003 年にリリースされた 802.11g の基となったもので、全く同じ直交周波数分割多重(OFDM、 orthogonal frequency division multiplexing)物理層構造を採用していますが、2.4 GHz 帯となっています。 802.11g が求められるようになったのは、商用のチャンネル数が限られていた 5 GHz 帯での 802.11a の普及が 進まなかったためです。

業界のトップ企業によるコンソーシアムである Wi-Fi Alliance(WFA)は、多彩なベンダが提供する IEEE 802.11 デバイスの相互運用性、品質、操作性を高めることを目的として、1999 年に設立されたものです。 IEEE 802.11 デバイスのメーカーは、同団体から Wi-Fi 認定を求めることができます。それにより、図 1.1 に 示すような Wi-Fi ロゴを無線 LAN 製品に貼付することが可能となります。 図 1.1. Wi-Fi ロゴ

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1990 年代後半以来、IEEE 802.11 ファミリの規格は継続的に進化し、データレートの高速化をもたらしまし た。 IEEE 802.11n は 2009 年に正式にリリースされたものですが、暫定仕様にもとづいた製品は 2006 年か ら販売されていました。 この規格では、既存の 802.11a、b、g の各規格に比べ、データレートが大幅に向上 しています。 IEEE 802.11n は、より広いチャンネル帯域幅に対応し(20 MHz から 40 MHz に向上)、無線 LAN 規格として初めて、最大 4x4 MIMO(multiple input, multiple output)を採用し、複数のアンテナでのデ ータストリームを定めました。 その結果 802.11n では、理論上のデータスループットが 20 MHz チャンネル で 54 Mb/秒から 300 Mb/秒に、40 MHz チャンネルでは 600 Mb/秒に向上し向上しました。 2012 年には、802.11n よりデータレートが大幅に改善した最終的な 802.11ac 暫定改正案がリリースされま した。 802.11ac では、最大 160 MHz のチャンネル帯域幅、256-QAM などの高次変調方式、最大 8x8 の MIMO 構成、を使用することで、理論上の最大データスループットは 6.93 Gb/秒となっています。 表 1.1 は、802.11 規格の進化の概要を説明したものです。 年 規格 スループット1 目的 1997 802.11 2 Mb/秒 最初のリリース。 物理層(PHY)に基づき 2.4 GHz の ISM 帯域 でデータレートは 1 Mb/秒および 2 Mb/秒。

1999 802.11a 54 Mb/秒 5 GHz 帯域で OFDM ベースの PHY を追加。

1999 802.11b 11 Mb/秒 最初の規格からの ISM 帯域における DSSS PHY を最大 11 Mb/秒に拡 張

2003 802.11g 54 Mb/秒 802.11a で導入された OFDM ベースの PHY(最大 54 Mb/秒) を 2.4 GHz の ISM 帯域に実装。 2007 802.11-2007 複数の改正規格(802.11a,b,g 等)を 802.11 に統合 2009 802.11n 600 Mb/秒 2.4 GHzと 5 GHzの量帯域で MIMO オプションを追加。 最大デ ータレートは 54 Mb/秒(必須)から 600 Mb/秒(任意)の範囲。 2012 802.11-2012 複数の改正規格(802.11k,r,y 等)を 802.11 に統合 2014 802.11ac 6.93 Gb/秒 5 GHz 帯域での HT(802.11n)仕様を拡張し、より広いチャンネル 帯域幅におけるスループットの向上、高密度変調、追加の MIMO ス トリームを実現。複数の局と任意の仕様を合わせて使用すること で、6.77 Gb/秒という理論上のスループットを実現可能。 TDB 802.11ad 7 Gb/秒 60 GHz 帯域で極めて高い理論上のスループット(7 Gb/秒)を実現す る最新規格。 表 1.1 無線 LAN 規格リリースの歴史

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802.11 命名規則

802.11a、b、g、ac といった各 IEEE 802.11 規格は、使用している特定の技術を識別するものでしたが、 802.11 仕様の 2012 版では各 802.11 規格について特定の命名基準を設けています。 表 1.2 は、それぞれの 技術の代替名を示しています。 規格 代替名 実現技術 802.11b DSSS または HR/DSSS DSSS、CCK

802.11a OFDM OFDM

802.11g OFDM OFDM 802.11n HT OFDM、MIMO 802.11ac VHT OFDM、MIMO、MU-MIMO 表 1.2. 802.11 規格の代替名 表 1.2 に示すように、802.11a および 802.11g 修正は、集合的に OFDM 修正の一部とみなされています。 1 記載されているスループットは、規格では必須でない任意仕様を含む最大可能値です。

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2. 無線

LAN 物理層の特性

帯域とチャンネル

無線 LAN は、2.4 GHz と 5 GHz 付近の ISM(industrial, scientific, medical)バンドで稼働するよう設計され たものです。 802.11b、802.11g、802.11n で使用される 2.4 GHz 帯は、表 2.1 のように、2.412 GHz~2.484 GHzの 14 チャンネルから構成されます。 全ての地域で全てのチャンネルが使用されるわけではなく、どの チャンネルを使用するかは各国の規制によって決まります。 チャンネル 中心周波数 1 2.412 GHz 2 2.417 GHz 3 2.422 GHz 4 2.427 GHz 5 2.432 GHz 6 2.437 GHz 7 2.442 GHz 8 2.447 GHz 9 2.452 GHz 10 2.457 GHz 11 2.462 GHz 12 2.467 GHz 13 2.472 GHz 14 2.484 GHz 表 2.1. 802.11 チャンネルの周波数割り当て 一方 802.11a、802.11n、802.11ac の各規格は、全て 5.15 GHz~5.875 GHzの 5 GHz 帯を使用しています。 5 GHzの無線 LAN で利用できる無線帯域は、ISM バンドと U-NII(Unlicensed National Information

Infrastructure)帯の混合です。 表 2.2 は、5 GHzの無線 LAN 帯域を示しています。

U-NII 帯域

U-NII Low (U-NII-1) 5.15 – 5.25 GHz U-NII Mid (U-NII-2) 5.25 – 5.35 GHz U-NII Worldwide (U-NII-2e) 5.47 – 5.725 GHz U-NII Upper (U-NII-3) 5.725 – 5.825 GHz

ISM 5.725 – 5.875 GHz 表 2.2. 無線 LAN の 5 GHz帯 2.4 GHz 帯と同様、どの帯域が利用できるかについては各国の規制によって決まります。 ISM バンドと U-NII 帯には無許可スペクトラムが含まれるため、この帯域で動作するデバイスは他のデバイスからの干渉信号 を許容する必要があります。

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帯域幅構成

最初の 802.11 仕様で利用可能なチャンネル帯域幅は 20 MHz でしたが、表 2.3 に示すとおり、以降のレビジ ョンで 40 MHz、80 MHz、160 MHz に拡張されています。 PHY 規格 動作帯域 (GHz) チャンネル 帯域幅 (MHz) 最大 MIMO 最高次 変調方式 理論上の最大 スループット (Mb/秒) DSSS 802.11 b 2.4 20 N/A DQPSK 11

OFDM 802.11 a/g 5 / 2.4 20 N/A 64 QAM 54 HT 802.11 n 5 / 2.4 20/40 4x4 64 QAM 600 VHT 802.11 ac 5 20/40/80/160 8x8 256 QAM 6933 表 2.3. 802.11 規格の帯域幅構成 表 2.3 に示すように、DSSS 技術は 802.11b 規格の一環であるため、2.4 GHz 帯に限定されています。 さら に、VHT 仕様は 5 GHz 帯のみに対応しています。

802.11n と 802.11ac の帯域幅構成

802.11n では、20 MHz と 40 MHz の帯域幅が利用できます。 802.11ac では、20 MHz、40 MHz、80 MHz、80+80 MHz、および 160 MHz の帯域幅が利用可能です。 802.11ac では、図 2.1 に示すように、広範 なチャンネル帯域幅割り当てオプションに対応しています。 802.11ac は、5 GHz 帯のみで利用でき、2.4 GHz 帯には対応していません。

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図 2.1. 802.11ac と 802.11n の帯域幅割り当て(20 MHz、40 MHz のみ) 802.11ac では、連続および不連続の 160 MHz 帯域幅が利用できます。 不連続の 160 MHz 伝送は、一般 に 80+80 モードと呼ばれます。 連続 160 MHz 伝送の信号は、2 つの 80 MHz 伝送が隣接しており、160 MHz の連続スペクトルを占有しています。それを図 2.2 に示します。 図 2.2. 802.11ac の 160 MHz 帯域幅伝送のスペクトルシグネチャ 図 2.2 からわかるように、160 MHz 信号は 2 つの 80 MHz 搬送波が合わさった構造をしています。 そ のため、それぞれの搬送波は別々に復調することができます。 802.11ac では、連続 160 MHz 帯域幅モードに加え、80+80 の不連続 160 MHz モードもサポートしています。 不連続 40 MHz 20 MHz 80 MHz 160 MHz 5170~5330 MHz 5490~5730 MHz 5735~5835 MHz 電力 周波数

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この帯域幅割り当てを使用する際、デバイスは、合わせて 160 MHz の伝送帯域幅になるよう任意の 2 つの 80 MHz チャンネルを使用できます。 不連続 160 MHz モードでは、図 2.3 に示すようにチャンネルを 80 MHz 以上離すことが可能です。 80+80 構成の場合、無線 LAN デバイスは通常 2 つの RF 受信機を使用し ます。 図 2.3. 802.11ac の 80+80 MHz 伝送のスペクトルシグネチャ 160 MHz モード伝送は 2 つの隣接する 80 MHz 搬送波を合わせた構造となっているため、2 つの送受信機を 使用して 80+80 オプションをサポートするシステムは、160 MHz モードもデフォルトでサポートしています。

主な無線 LAN 関連技術

802.11 仕様は、スペクトルの適度な利用で高データレートを確実に実現できる様々な主要技術を使用します。 例えば DSSS の場合、2.4 GHzスペクトルでは干渉に対する高い耐性がありますが、それは他の無線技術も 使用します。 また、802.11 規格の 802.11a-1999 レビジョンは、商用無線規格として初めて OFDM を採用しまし た。 また 802.11n は、最大 4x4 MIMO を可能にした初の商用規格の 1 つです。 以降のセクションでは、 主な無線 LAN 技術についてさらに詳しく説明し、実装について具体的に紹介します。 電力 周波数

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DSSS (direct sequence spread spectrum)

最初の 802.11 規格(1997)の開発時には、2.4 GHzのISMスペクトルを使用する無線規格が増えること への大きな懸念がありました。 結果として、IEEE 802.11 委員会は、干渉から守るため DSSS 技術を採用し ました。 DSSS 伝送では、変調信号が疑似ランダム拡散符号によって乗算され、受信機が信号を復調するに は、信号の追跡において同じ拡散コードを適用する必要があります。 拡散コードを使用することで、望まし い信号の信号電力が強化され、正しい拡散コードを使用していない信号の信号電力が減衰されます。 そのた め、受信機は干渉を無視できるようになり、狭帯域および広帯域の干渉に対し耐性を持つようになります。 図 2.4. 周波数領域で DSSS の画像が表示できます 1 Mb/秒および 2 Mb/秒データレートの拡散コードとして、11 ビットのバーカーシーケンス(Barker sequence)を使用しました。 5.5 Mb/秒および 11 Mb/秒のデータレートでは、8 ビット拡散コードを使用す る CCK(相補型符号変調)を採用しています。 現在 802.11b 規格は、DSSS HR/DSSS とも呼ばれています。 HR とは高レート(high rate)のことで、802.11b では 5.5 Mb/秒と 11 Mb/秒に相当します。

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OFDM (orthogonal frequency division multiplexing)

一部の例外を除いて、ほとんどの無線 LAN では OFDM 伝送を利用します。 OFDM は当初 802.11a 仕様 の一環として採用され、その後 802.11g 仕様でも採用されました。 最新の 802.11 規格では、802.11a と 802.11g の改正をまとめて OFDM 仕様と呼んでいます。 802.11a/g 以降、802.11n を含む 802.11 規格の全主 要レビジョンと 802.11ac は、OFDM 技術に基づいています。 OFDM の基本設計では、広帯域のシングルキャリアではなく、大量の狭帯域直交サブキャリアを使用して、 データ伝送を個別に並列処理します。 OFDM 固有の機能として、複数の直交サブキャリアを変調するメカ ニズムは、図 2.5 に示すように逆離散フーリエ変換(IDFT)によって実現しています。 図 2.5. 基本的な OFDM 伝送のブロック図 図 2.5 は、各サブキャリアが個別に変調されていることを示しています。 OFDM 伝送で各サブキャリア に対し固有の変調方式を使用することは理論上は可能ですが(LTE などのモバイル通信規格に実装)、無線 LAN 伝送では全てのサブキャリアに同じ変調方式を採用する必要があります。 さらに図 2.5 では、逆 DFT の 後にサイクリックプレフィックスが挿入されています。 サイクリックプレフィックス(CP, cyclic prefix)は 時間領域でガードインターバル(guard interval)の役割を果たします。そのため連続する OFDM シンボル間に おけるシンボル間干渉(ISI、intersymbol interference)の影響が最小限に抑えられ、サブキャリア間の直交 性が維持されます。 OFDM 伝送の逆 DFT は、シンボルを部分的に重複するサブキャリア上に変調します。 ただし、図 2.6 に示すとおり、全てのサブキャリアがデータ伝送に使われるわけではありません。 多くのデータサブキ ャリアに加え、パイロットサブキャリアがチャンネル全体に配置されています。 パイロットサブキャリアは、 同期とチャンネル推定に使用します。 図 2.6 では、チャンネル内でサブキャリアが抑制されている領域があることがわかります。 通常それらの 領域はヌルサブキャリアと呼ばれます。 ヌルサブキャリアは、チャンネル間干渉から保護するため、チャン ネルのエッジに配置されています。 最も顕著なのが、チャンネルの中央でのヌルサブキャリアの使用です。 これにより、その領域での OFDM 変調の質を低下させている中心周波数関連の問題、つまり LO リークがミ デシリ アラ イザ ビット シンボル マッピング 逆 DFT シリア ライ ザ サイクリック プレフィックス 挿入 IQ

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キサから除去されます。

図 2.6. 周波数領域における OFDM サブキャリア

OFDM システムで複数の狭帯域キャリアを使用すると、1 つの広帯域キャリアを使用する場合に比べいくつ かのメリットがあります。 中でも最も顕著なのが ISI の低減で、チャンネル等化(channel equalization)が 劇的に簡素化されます。 シングルキャリア変調方式のチャンネル帯域幅が増えると、シンボル周期はそれに伴って短縮します。 モバ イル通信環境では、低シンボル周期で ISI が大きくなる可能性があります。それは、マルチパス反射が直接経 路からの信号に対し遅延して受信機に到着する可能性があるためです。 OFDM では、比較的長いシンボル周 期で大量の狭帯域サブキャリアを使用することで、広帯域チャンネルの ISI を軽減することができます。 図 2.7 に示すように、比較的長いシンボル周期での伝送は、短いものに比べシンボル間干渉の影響を受けにくく なっています。 ヌルサブキャリア (ガードバンド) ヌルサブキャリア(LO リーク) パイロット サブキャリア サブキャリアデータ 周波数

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図 2.7. 長いシンボル周期での伝送は ISI の影響を受けにくい 無線 LAN 伝送では、OFDM サブキャリアはシンボルレートが比較的低く(312.5 kHz)、シンボル周期が比 較的長くなっています。 長いシンボル周期とサイクリックプレフィックスの実装という組み合わせにより、 広帯域シングルキャリア伝送と比較して OFDM 伝送における ISI が軽減されます。

802.11a/g、802.11n、802.11ac など、Wi-Fi に使用した 802.11 の最も一般的な実装では、OFDM 伝送は全て の帯域幅構成について一定のシンボルレート(つまり一定のサブキャリア間隔)を使用します。 表 2.4 は、 FFT サイズを大きくすることでより多くのサブキャリアを使用することにより、広帯域オプションが実装さ れることを示しています。 帯域幅 FFT サイズ データ サブキャリア パイロット サブキャリア 20 MHz 64 52 4 40 MHz 128 108 6 80 MHz (VHT のみ) 256 234 8 160 MHz (VHT のみ) 512 468 16 表 2.4. HT および VHT PHY の帯域幅構成と FFT サイズ 電力 シンボル間干渉 短いシンボル周期 電力 ISI の減少 長いシンボル周期 時間 時間

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MIMO

受信機と送信機で複数のアンテナを使用する MIMO 技術は、無線 LAN 規格で採用されている重要な技術です。

MIMO を使用すると、無線チャンネル経由での通信の信頼性とスループットを向上させることができます。 MIMO は当初 802.11n の一環として無線 LAN に採用され、次に 802.11ac に拡大されました。 802.11n では SISO(single input, single output)から 4x4 MIMO までのアンテナ構成をサポートしており、802.11ac では それが 8x8 MIMO にまで拡大されています。 4x4 や 8x8 などの高多重 MIMO 実装は、関連コストの複雑さと物理サイズの制約の両方の理由で、通常アク セスポイントとして予約されています。 携帯電話やコンピュータ、タブレット端末などのエンドデバイスは、 当初よりアンテナを 1 つしか実装していません。 ただし、統合テクニックの進歩のおかげで、多くのエンド デバイスは 2x2 や 3x3 といったシンプルな MIMO 構成を使用するようになりました。 PHY 改正 MIMO 構成 備考 DSSS 802.11b SISO OFDM 802.11 a/g SISO

HT 802.11n SISO~4x4 MIMO シングルユーザ MIMO VHT 802.11ac SISO~8x8 MIMO シングルユーザ MIMO

マルチユーザ MIMO 表 2.5. 802.11 規格の帯域幅構成

表 2.5 に示すように、802.11ac ではシングルユーザとマルチユーザ(MU)の MIMO をサポートしてい ます。 MU-MIMO では、クライアントリストごとに様々な数の空間ストリームを使用して、アクセスポイン トで複数のクライアントに同時にブロードキャストできます。 Wi-Fi のアクセスポイントとクライアントは、MIMO とマルチアンテナ技術を多様な方法で使用します。 無線 LAN における MIMO の最も一般的な使い方の 1 つとして、複数の空間ストリームの使用によるデータレ ートの向上があります。 このテクニックは空間多重化と呼ばれるもので、デバイスは様々なアンテナ経由で 固有のデータストリームを送受信することができます。 MIMO 技術の使い方として次に一般的なのが、空間ダイバーシティによる伝送の多様性や冗長性の向上です。 Wi-Fi システムは、送信機、受信機、またはその両方で複数のアンテナを実装することで、より高い空間ダイ バーシティを実現できます。 空間ダイバーシティによって空間ストリームが向上することはありませんが、 受信機の有効な S/N 比(SNR)を上げることで、より難度の高い信号伝搬環境でデータレートを高めること ができます。 実用においては、多くの Wi-Fi システムは空間多重化と空間多様性を組み合わせることで、高 データレートと堅牢性の向上を両立しています。

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空間多重化

MIMO によって高データレートが実現するメカニズムは、空間多重化の原理によるものです。 空間多重 化とは、複数のデータストリームを、複数のアンテナを使って同じチャンネルに同時に送受信することです。 基本概念は、図 2.8 に示すとおり、受信機は無線伝送路の特性から各送信ストリームを再構築できるというも のです。 図 2.8. MIMO システムでは空間多重化によってデータレートを向上 図 2.8 では、送信機も受信機も複数のアンテナを使用しています。 また、任意の時点で、各送信アンテナ は異なるシンボルを生成します。 各アンテナからの伝送は、図 2.9 のように互いに干渉し合っているように 見えます。 図 2.9. MIMO チャンネル[2]のコンスタレーション図 空間 多重化 空間 非多重化 デシリア ライザ 空間 非多重化 送信(x1) 送信(x2) 受信(y1) 受信(y2) 復元(x1) 復元(x2)

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図 2.9 ではまた、いずれの伝送も受信機にて高度な信号処理(空間デマルチプレクサ)を行うことで同時に復 元できることもわかります。 そのため、送信された各ストリームは、コンスタレーションプロット上の最適 なシンボルにマッピングできます。 各送信信号が再構築可能であるためには、複数の受信アンテナを使用す ることで、チャンネルを正確に推定する必要があります。 MIMO システムで空間多重化を行うと、複数のデータストリームを並列で送受信できるようになるため、根 本的にデータレートが向上します。 一般に、MIMO システムの理論上の最高データレートを特定するには、 SISO システムの最高データレートに空間ストリーム数を乗算します。 例えば、SISO システムで 100 Mb/秒 のデータレートを実現できる場合、8 個の空間ストリームを持つ 8x8 MIMO システムは最大で 800 Mb/秒の データレートを実現することが可能です。 MIMO システムを数学的に理解するためには、各アンテナで受信した信号が各送信アンテナを組み合わせた ものであることをまず考慮します。 さらに、図 2.10 に示すとおり、受信信号もチャンネル特性の影響を受け ます。 図 2.10. 受信信号は送信信号とチャンネル特性を合わせたものです

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図 2.10 に基づき、チャンネルモデルは、式 2.1 および 2.2 に示す式で数学的に表すことができます。 𝑦1ℎ11𝑥1 + ℎ21𝑥2 + 𝑛1 𝑦2=ℎ12𝑥1 + 𝑥22𝑥2 + 𝑛2 式 2.1 および 2.2 MIMO チャンネルの式 xiは送信アンテナiから送信された信号 hijはアンテナjを受信するための送信アンテナiからのチャンネル yiは受信アンテナiで受信した信号 niは受信アンテナiにおける付加ノイズ 式 X および Y は、式 2.3 および 2.4 に示すように、さらに簡素化して行列形式にすることができます。 �yy1 2� = �h 11 h12 h21 h22� � x1 x2� + � n1 n2� y = Hx+ n 式 2.3 および 2.4 MIMO チャンネルの行列表示 上記の一連の式が示すように、チャンネル行列[H]が既知であれば、受信機は送信ストリームとチャンネル特 性の両方の関数である信号を復元することができます。 そのため、MIMO システムが動作するには、各チャ ンネルディスクリプタの位相/ゲイン特性を正確に推定する必要があります。 実用においては、まず既知のプリアンブルシーケンスもしくはパイロットサブキャリアを合わせたものから チャンネル行列を推定します。 この行列が既知になれば、以降の伝送ではデータサブキャリアに適用するこ とができます。

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空間ダイバーシティ

MIMO 技術を利用するのは、データレートの向上だけが目的ではありません。 802.11 規格では、MIMO を使用して、送信機、受信機、またはその両方で空間ダイバーシティを実装しています。

受信ダイバーシティのシンプルな実装方法として、1x2 の SIMO(single input, multiple output)構成で最大 比合成(MCR、maximum combining ratio)を使用する方法があります。 この方法は、図 2.11 に示すように、 受信機は各受信アンテナから集録した信号を単に結合するのみです。

図 2.11. 1x2 SIMO 構成の受信多様性

各受信アンテナ~の集録信号を結合することで、受信機は受信信号の有効 SNR を高めることができます。 受信ダイバーシティの実装により、信号強度の低い環境で受信機の性能を高めることができます。

無線 LAN システムによく実装されている空間ダイバーシティの 2 つ目のテクニックは、時空間ブロック 符号化(STBC、space-time block coding)です。 STBC 伝送では、時間により異なるシンボルを伝送します が、各シンボルは複数回送信されるよう各アンテナを構成します。 STBC テクニックで最もシンプルなのは、 1990 年代後半に Siavash Alamouti 氏によって開発された Alamouti 符号です。 図 2.12 に示すように、2x1 MIMO 構成では送信機が各シンボルを 2 回生成することが可能です。 図 2.12. Alamouti STBC 図 2.12 では、各シンボルは各送信アンテナによって 1 回送信されています。 最初のタイムスロットで、 アンテナ Tx1および Tx2はそれぞれシンボル a1および a2を送信します。 ただし 2 番目のタイムスロットでは、 アンテナ Tx1はシンボル a2の負の複素共役を送信し、Tx2はシンボル a1の複数共役を送信します。 このシン プルな開ループ符号化方式なら、受信アンテナが 1 つしかなくても、チャンネルフェーディングへの抵抗力 に優れた堅牢な伝送が可能です。 空間 時間

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マルチユーザ(MU)MIMO

MU-MIMO は、空間多重化での使用に加え、システムの使用可能なリソースを最適化することができま す。 空間多重化を使用した場合の性能の向上は顕著ですが、アンテナとフィルタという追加のハードウェア が必要になります。 このハードウェアは、携帯電話やタブレット端末、プリンタ、その他の Wi-Fi 接続型エ ンドデバイスなど、コストが重視される製品には、通常搭載されていません。 ただし、基地局やアクセスポ イントはそのようなハードウェアを搭載していることが多く、完全な MIMO 機能を実現できます。 MU-MIMO なら、基地局で N 個のアンテナを動的に使用して、エンドデバイスのサブセットと個別に通信するこ とが可能です。 図 2.13 は、アクセスポイントに 8 個のアンテナを持つ MU-MIMO 構成を示しています。 アンテナのうち の 2 個は、メディアサーバの帯域幅のニーズに対応するよう設計されています。メディアサーバもスループッ ト向上のため 2 個のアンテナを搭載しています。 アクセスポイントのアンテナは、それぞれ 1 つのアンテナ のみ搭載したシンプルなデバイス専用とすることができます。 アクセスポイントからは複数のエンドデバ イスが 1 つのアンテナを共有できます。 図 2.13. MU-MIMO 構成 可能な場合は通信を MU-MIMO 伝送に分けることをお勧めします。 例えば、各ユーザのデータストリー ムを個別にし、電力レベルを個別に管理することができます。 その結果、アクセスポイントは必要なデバイ スには電力伝送を高め、同時に損失の少ないチャンネルを使用するデバイスでは送信電力を最小限にするこ とが可能となります。 これによりアクセスポイントの消費電力が低減し、放射される総エネルギー量が削減 されますので、全ユーザの通信チャンネルが改善されます。

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理論上のデータレートの計算

無線 LAN 技術が 802.11 規格から進化したように、以降の改正では高次変調方式や高帯域幅、MIMO 技術な どを組み合わせてより高いデータレートを実現してきました。 表 2.6 は、主な 802.11 規格の最大データレ ートを示しています。 規格 最大データレート 802.11 2 Mb/秒 802.11b 33 Mb/秒 802.11a 54 Mb/秒 802.11g 54 Mb/秒 802.11n 600 Mb/秒 802.11ac 6.933 Gb/秒 表 2.6. 無線 LAN の最大データレート

802.11a/g は、20 MHz の帯域幅で SISO リンクをベースに 54 Mb/秒を実現しますが、802.11n と 802.11ac は、 MIMO、高次変調方式、広いチャンネル幅(より多くの OFDM サブキャリアを使用)といった上級機能を実 装することで、データスループットを大幅に高めることができます。 最大データレートは、式 2.5 で特定で きます。 最大データレート = (データキャリア数×空間ストリーム数×ビット数/シンボル× コードレート) / シンボルの持続時間 式 2.5: デジタル通信リンクの最大スループット 命名法について考慮すべきなのは、空間ストリーム数、変調タイプ、コードレートのそれぞれの組み合わせ は、802.11 規格の様々なレビジョン内で異なる表記となっている点です。 例えば、802.11a/b/g の場合、表 2.7 のように、変調レートと符号化方式のある特定の組み合わせをデータレートによって区別するのが普通で した。 規格 データレート(MB/秒) 802.11b 1,2,5.5,11 802.11a/g 6,9,12,18,24,36,48,54 表 2.7. 無線 LAN 旧レビジョンのデータレート 理論上のデータレートが同じになる空間ストリーム、変調タイプ、符号化レートの組み合わせは複数あるの で、802.11n や 802.11ac といった比較的新しい規格では、MCS(Modulation and Coding Scheme)という用 語を用います。

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802.11n の MCS インデックスは、MCS0 から MCS76 までの範囲にわたり、大きい MCS インデックス値は、 主に 802.11n でサポートする付均等変調(unequal modulation)によるものです。 不均等変調の例として、 MSC33 ではストリーム 1 が 16-QAM、ストリーム 2 が QPSK 変調を使用します。 空間ストリーム数も、 802.11n の MCS インデックスと関連付けられています。 802.11ac では、空間ストリーム数は MCS インデックスには考慮されません。 そのため、802.11ac の MCS インデックスは MCS0 から MCS9 のみです。 空間ストリーム数を示すには別の用語が使用されます。 不均等変調は 802.11ac ではサポートされていません。

802.11a/g のデータレート計算

802.11a と 802.11g は信号構造がほぼ同じ(帯域は異なる)で、データキャリア数、シンボルレート、符号レ ートも同じです。 これらの規格の理論上のデータレートを計算するには、表 2.8 のパラメータを使用しま す。 属性 値 備考 データサブキャリア 48 FFT サイズ 64 を使用 空間ストリーム 1 全ての SISO リンクに適用 ビット数/シンボル 6 log2 64 = 6 符号レート ¾ 最高次変調方式での符号レート シンボル持続時間 4 µs 800 ns の保護間隔を含む 表 2.8. 802.11a/g データレートに影響するパラメータ 表 2.8 のデータから、式 2.6 を用いて 802.11a/g システムの最大データレートを求めることができます。 802.11a/g の最大データレート = (48×1×6 ×3 4 )/4 µs = 54 Mbps 式 2.6. 802.11a/g のデータレート計算

802.11n のデータレート計算

802.11a/g と異なり、802.11n では 40 MHz 帯域幅の高スループット(HT)オプションにより、より多くの サブキャリアを追加できます。 20 MHz 帯域幅におけるデータサブキャリアの数も、802.11a/g の 48 に対 し 52 に増えています。 802.11n は、4x4 MIMO を実装することで、空間ストリーム数が 1(SISO)から 4 に拡張されています。 802.11n のデータスループットは、表 2.9 の設定を使用して計算します。 属性 値 備考 データサブキャリ 108 FFT サイズ 128 を使用 空間ストリーム 4 4x4 MIMO と仮定 ビット数/シンボル 6 log2 256 = 6 符号レート 5/6 最高次変調方式での符号レート シンボル持続時間 3.6 µs 400 ns の保護間隔を含む 表 2.9. 802.11n のデータレートに影響するパラメータ

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表 2.9 の属性から、式 2.7 を使用して理論上の最大データレートを計算できます。 最大データレート = �108 × 4 × 6 ×56� /3.6μs = 600Mbps 式 2.7. 802.11n の最大データレートの計算 式 2.7 に示すとおり、802.11n は 802.11a/g に比べスループットがおよそ 1 桁高速になっています。 表 2.10 は、802.11n でサポートされる MCS の範囲を示しています。 MCS ストリーム数 最大データレート(40 MHz) 備考 0-7 1、均等 150 Mb/秒(MCS 7) BPSK~64-QAM 8-15 2、均等 300 Mb/秒(MCS 15) BPSK~64-QAM 16-23 3、均等 450 Mb/秒(MCS 23) BPSK~64-QAM 24-31 4、均等 600 Mb/秒(MCS 31) BPSK~64-QAM 32 1、均等 6.7 Mb/秒 BPSK および SISO 33-38 2、不均等 225 Mb/秒(MCS 38) 39-52 3、不均等 360 Mb/秒(MCS 52) 53-76 4、不均等 495 Mb/秒(MCS 76) 表 2.10. 無線 LAN 802.11n データレート

802.11ac のデータレート計算

802.11a/g および 802.11n と異なり、802.11ac では 160 MHz 帯域幅の超高速スループット(VHT、very high throughput)オプションにより、より多くのサブキャリアを追加できます。 最大データスループットには、 追加の空間ストリーム、256-QAM 変調方式、高速符号レートも関係します。 802.11ac の最大データスルー プットを計算するには、表 2.11 に示すとおり、規格の主要属性を使用します。 属性 値 備考 データサブキャ 468 FFT サイズ 512 を使用 空間ストリーム 8 8x8 MIMO と仮定 ビット数/シンボ 8 log2 256 = 8 符号レート 5/6 最高次変調方式での符号レート シンボル持続時 3.6 µs 400 ns の保護間隔を含む 表 2.11. 802.11ac のデータレートに影響するパラメータ 表 2.11 の設定から、式 2.8 を使用して理論上の最大データレートを計算できます。 最大データレート= �468 × 8 × 8 ×56� /3.6μs = 6.933 Ggps 式 2.8. 802.11ac の最大データレート計算 6.933 Gb/秒は 802.11ac の理論上の最大データレートですが、サポートされる帯域幅と空間ストリーム数では 広範なデータレートが実現可能です。 表 2.12 は、802.11ac のそのような構成をいくつか示しています。

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チャンネル BW 空間ストリーム 変調方式 コード レート データ サブキャリア 最大 データレート 20 MHz 1 256 QAM 3/4 52 86.7 Mb/秒 40 MHz 2 256 QAM 5/6 108 400 Mb/秒 80 MHz 4 256 QAM 5/6 234 1.733 Gb/秒 160 MHz 8 256 QAM 5/6 468 6.933 Gb/秒 表 2.12. 無線 LAN 802.11ac データレート 表 2.12 の最大データレートによって決まるのは、理論上の最大データレートのみです。 現実には、パ ケットのオーバーヘッドやメディア共有などの要因により、実際のデバイスのレートは理論上の最大データ レートを大幅に下回ることがあります。

無線 LAN 物理層計測

物理層計測を理解することは、デバイスの製造プロセスと設計プロセスの両方にとって極めて重要です。 無 線 LAN デバイスの開発プロセス全般にわたって、様々な物理層計測を行うことでデバイスの性能を理解し評 価します。 このセクションでは、2 種類の無線 LAN 計測について説明します。1 つは、デバイスからの 信号出力を特定する送信計測、もう 1 つはデバイスが受信信号を復調する能力を評価する受信計測です。 802.11 デバイスの PHY 層テストは、802.11 仕様で説明されています。 802.11 の各レビジョンの計測の 多くは似ていますが、それぞれの計測は仕様書の対応するセクションで個別に定義されています。 表 2.13 は、802.11 仕様書で、各技術について無線 LAN デバイスの送信機(Tx)/受信機(Rx)仕様を定義している セクションを示しています。 改正 PHY Tx 仕様 Rx 仕様 802.11b DSSS セクション 16.4.7, 17.4.7 セクション 16.4.8, 802.11a OFDM セクション 18.3.9 セクション 18.3.10 802.11g OFDM セクション 18.3.9 セクション 18.3.10 802.11n HT セクション 20.3.20 セクション 20.3.21 802.11ac VHT セクション 22.3.18 セクション 22.3.19 表 2.13. 802.11 仕様書のセクション 表 2.13 に示した 802.11ac 送信機/受信機計測のセクションは、802.11 の 2013 D5 レビジョンに基づいていま す。

無線 LAN 計測の計測器構成

完全統合型の無線 LAN デバイスのテストと計測には、一般にベクトル信号発生器(VSG、vector signal generator)とベクトル信号アナライザ(VSA、vector signal analyzer)を併せて使用する必要があります。 場合によっては、両製品を無線テストセットと呼ばれる 1 つの計測器に統合することもあります。 ナショナ ルインスツルメンツでは、ユーザプログラマブルな FPGA を搭載し、VSG と VSA を統合したベクトル 信号トランシーバ(VST、vector signal tranceiver)を提供しています。

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組み立て済みの無線 LAN デバイスをテストする場合、デバイスの送信機能と受信機能は 1 つのポートに統合 されています。 そのためテストセットアップでは、図 2.14 に示すように、無線 LAN デバイスを VSG と VSA の両方に接続するために、RF スイッチまたは結合器/スプリッタが必要です。 図 2.14. 無線 LAN デバイスの一般的なセットアップ 無線 LAN パワーアンプ(PA)をテストする場合は、テスト構成は図 2.14 に示した例よりはるかにシンプル になります。 この場合は、図 2.15 のように、VSG は無線 LAN 信号を供給し、VSA は PA の出力に接続され ています。 図 2.15. 無線 LAN PA の一般的なセットアップ

一般に送信計測は、統合型無線 LAN デバイスや、PA や低ノイズアンプ(LNA)などの離散コンポーネント に適用されます。 ただし、受信計測は、全受信機を含む統合された無線 LAN デバイスをテストする際にの み必要となります。 無線 LAN テスト用に信号アナライザを選んだ場合、無線 LAN 送信機計測でスペクトルリークと変調品質の測定基 準も含まれる点にご注意ください。 したがって、信号アナライザが信号を復調するためには、復調に対応するベク トル解析機能が必要です。 無線 LAN デバイス VSG VSA VSG VSA 無線 LAN PA

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3. 送信計測

無線 LAN 送信機計測には、電力、変調品質、スペクトル品質という 3 つのカテゴリがあります。 様々な 802.11 技術の計測はほとんどが似ていますが、全ての計測が全ての規格に適用できるわけではありません。 表 3.1 は、それぞれの計測が適用可能な 802.11 規格と、802.11 の中でその計測が定義されているセクション を示しています。 本ドキュメントでは、802.11 規格(802.11b、802.11a/g、802.11n、802.11ac)の別名 (DSSS、OFDM、HT、VHT)も同時に使用しています。 計測 カテゴリ 計測 DSSS (802.11b) OFDM (802.11a/g) HT (802.11n) VHT (802.11ac) 電力 送信電力 各国法令により定義

電源投入時/切断時のランプ(DSSS) 16.4.7.8 N/A N/A N/A

変調品質

変調精度 16.4.7.10 18.3.9.7.4 20.3.20.7.3 22.3.18.4.3 チップクロック周波数公差(DSSS) 16.4.7.7 N/A N/A N/A シンボルクロック周波数公差 (OFDM) N/A 18.3.9.6 20.3.20.6 22.3.18.3 中心周波数公差 16.4.7.6, 18.3.9.5 20.3.20.4 22.3.18.3 スペクトル スペクトルマスク 16.4.7.5, 17.4.7.4 18.3.9.3 20.3.20.1 22.3.18.1 スペクトル平坦性 N/A 18.3.9.7.3 20.3.20.2 22.3.18.2

搬送波抑圧(DSSS) 16.4.7.9 N/A N/A N/A

中心周波数リーク(OFDM) N/A 18.3.9.7.2 20.3.20.7.2 22.3.18.4.2 表 3.1. 送信機計測向けの 802.11 仕様 表 3.1 に示した 802.11ac 送信機/受信機計測のセクションは、802.11 の 2013 D5 レビジョンに基づいていま す。

最大送信電力

最大送信電力の値は、表 3.2 に示す送信仕様には含まれていません。それは、無線 LAN デバイスの最大送信 電力はデバイスが認定される国の政府規制機関によって定義されるためです。 最大出力電力は、最大の等価 等方放射電力(EIRP、equivalent isotropically radiated power)として指定され、送信機の出力電力とアンテ ナのゲインによって決まります。 一般に、最大送信出力電力は、ほとんどの国で 60 mW~1 W(EIRP)です。 そのような制限値は通常帯域によって指定され、屋内用と屋外用のデバイスでも異なることがあります。 表 3.2 は、一部の国における最大制限値を示しています。

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国 帯域 最大送信電力 mW (無線 Tx+アンテナゲイン=EIRP) 屋内用/屋外用 米国 a 200 屋内用 b/g 1,000 両用 ブラジル a 200 屋内用 b/g 1,000 両用 南アフリカ a N/A N/A b/g 1,000 両用 フランス a 200 屋内用 b/g 100 両用 中国 a 600 両用 b/g 600 両用 表 3.2. 国別の最大送信電力 802.11 では無線 LAN デバイスの最大電力要件を具体的に指定していませんが、電力計測は他の送信計測の指 標として重要な特性となります。 例えば、変調精度(EVM、error vector magnitude)といった変調品質計 測は、送信機の線形性の影響を強く受けることが多く、線形性は出力電力に依存しています。

平均電力

平均電力は、おそらく最もよく使用される電力計測です。 平均電力とは、バーストの時間内における 802.11 パケットの時間平均電力レベルです。 最新のテスト機器は、様々な方法で平均電力レベルを指定する ことができます。 中でも一般的なのが時間ゲート(time-gated)平均電力で、バーストにおける平均電力を 計測するものです。 またバースト電力と待機時間も含めた電力を計測することもできます。 この計測で は、バーストのデューティサイクルが平均電力に大きく影響します。 無線 LAN 伝送の平均電力は通常ゲート電力計測なので、この計測には一般に VSA が必要です。 平均電力は、 送信電力とも呼ばれ、他の全ての計測の主要な指標となるものです。 受信機テストの際は、平均電力が DUT の入力電力レベルを表します。 また、MIMO 計測では、各物理チャンネルの平均電力を計測します。

ピーク電力

802.11 信号、特に高次 OFDM タイプは、ピーク対平均電力比(PAPR、peak-to-average-power ratios)が極 めて大きくなることがあります。 信号の PAPR を計測するには、送信信号のピーク電力を平均電力とともに 計測します。

OFDM 信号は、信号自体の構造により比較的 PAPR が高い特性を持っています。 OFDM 伝送では、大量 のサブキャリアが並行して送信されますので、それぞれの時点でサブキャリアが互いに加算または減算されま す。 その結果、OFDM 伝送の電力統計はほぼガウス分布となりますので、PAPR は通常 10 dB~12 dB の範囲 になります。

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伝送された無線 LAN 信号の実際の PAPR は、デバイスの動作範囲内で比較的一定になるはずですが、必ずし もそうとは限りません。 より高出力の電力レベルの送信機の場合、出力 PA が非線形領域で動作している場 合、クリッピングにより PAPR は減少し始めます。 その結果、PAPR は変調品質の低い送信機のトラブルシ ューティングの重要な基準となります。 変調の品質(変調精度:EVM)の低さが出力 PA の非線形性による ものなら、通常変調品質は PAPR と関連します。 また信号の PAPR は、信号アナライザの計測設定にも大きな影響を及ぼします。 802.11 計測を行う際は、 VSA の基準レベルを適切に設定して、送信パケットの振幅範囲内にする必要があります。 通常パケット電力 レベルは平均電力として指定されます。 この場合、基準レベルは平均電力にパケットの予測 PAPR を加え たものより大きい値に設定する必要があります。 PAPR の統計をより正しくグラフ表示するには、CCDF 計測 のセクションを参照してください。 また MIMO 計測では、各物理チャンネルについて平均電力を計測します。 電力対時間

電力対時間トレース(power versus time trace)とは、時間に対する伝送信号の瞬時電力を表すものです。 電力対時間による信号のグラフ表示は、送信機の性能基準よりむしろトラブルシューティングの目的に利用で きます。 計測された電力をバーストの特定の時間部分に相関させることで、時間に依存する電力の問題を特 定することができます。 図 3.1. 電力対時間トレース 例えば、電力対時間計測を拡大してみると、バーストの立ち上がり時間と立ち下がり時間を検出し、有効 なバーストが捉えられたかどうかを特定することができます。

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クロスパワー(MIMO)

クロスパワー計測は、MIMO 構成に特有のものです。 クロスパワーとは、1 つのストリームからの電 力がどの程度他のチャンネルに流れ込んでいるかの測定基準です。 4x4 MIMO 構成でのマッピング行列 M を使用したシンプルなダイレクトチャンネルマッピングの例を見てみます。 M = � 1 0 0 1 0 00 0 0 0 0 0 1 00 1 � 式 3.1. 4x4 MIMO 構成のダイレクトマッピング行列 現実には、M の対角の外側のヌル要素(交差項)は、微小な値になります。 交差項が増えると、異なる チャンネルからの干渉による特定のチャンネルの電力は、意図した動作の干渉を始め、チャンネルベースの 測定基準が低下することがあります。 理想的な交差項(CPid)と計測された交差項(CPms)を式 3.2 で比 較します。 CPid= � NA −∞ −∞ NA −∞ −∞−∞ −∞ −∞ −∞ −∞ −∞ −∞ NANA −∞ � , and CPms= ⎣ ⎢ ⎢ ⎡CPNA CP2,1 1,2 NA CP3,1 CP4,1 CP3,2 CP4,2 CP1,3 CP2,3 CP1,4 CP2,4 NA CP4,3 CP3,4 NA ⎦ ⎥ ⎥ ⎤ 式 3.2. 4x4 MIMO 構成での Cpid と CPms の比較 いずれの場合も、対角要素 CPi,i は未定義で、交差要素は dB で計測します。 理想的なケースでは、交差 要素は全て– ∞ dB に等しくなります。これは、いずれのストリームからの電力も意図しないチャンネル には漏れ出してことを示します。 実際に計測したケースでは、CPii,j(dB)はストリーム i からチャンネル j に漏れ出す相対電力を表します。 クロスパワーが低下するケースでは、DUT のチャンネル絶縁を行ってこの 問題を解決します。

パワーの立ち上がり/立ち下がり(Power-On and Powe-Down Ramp)

802.11 仕様で定義されている具体的なダイナミックパワー特性の 1 つに、パワーの立ち上がり/立ち下がりが あります。 無線 LAN デバイスは時分割二重(TDD、time division duplexed)方式で動作する M ため、送受 信を高速化するには高速のランプアップ/ランプダウンが必要となります。 電源投入時/切断時要件は、DSSS または 802.11b にのみ適用されます。

802.11 の仕様によると、バーストが最大電力の 10%から 90%に上がる時間として定義された送信パワーの立 ち上がり(power-on ramp)は、2µ 秒を超えてはなりません。 送信のパワーの立ち下がり(power-down ramp)は、信号が最大電力の 90%から 10%に低下する時間として定義され、2 µ 秒を超えることはありませ ん。 パワーの立ち上がり/立ち下がりを計測する際は、信号アナライザの集録長にはパケット全体を含める必 要があります。

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変調品質

無線 LAN 伝送の変調品質により、大きなフレームやビット誤差を発生させずに復調できる可能性が高まりま す。 変調品質には、変調精度(EVM)、チップ/シンボルクロック周波数許容度(symbol clock

frequency tolerance)、中心周波数許容度(center frequency tolerance)という 3 つのカテゴリがあります。

エラー・ベクトル振幅(EVM、Error Vector Magnitude)

変調精度(EVM)とは、802.11 送信機の変調品質を測る主要な指標です。 EVM は変調伝送の広範な障害 を捉えるので、送信機の性能の測定指標としても極めて有用です。 EVM のレポートの際は、RF 信号アナライ ザがまず変調シンボルの位相/振幅誤差を計測します。 この計測では、エラーベクトルはシンボルの位相と振 幅の理想値と計測値における位相/振幅誤差に基づいています。 EVM を計算するには、エラーベクトルを理想 的なシンボルの振幅ベクトルで除算します。 そうして求められた比率が EVM です。 図 3.2 は、計測された ベクトル、理想的なベクトル、そしてエラーベクトルの関係を示しています。 図 3.2. エラーベクトルとその成分 EVM はエラーベクトルと振幅ベクトルの比率として表されますが、結果はパーセント(%)または dB で表記 します。 式 3.3 を使用すると、EVM の計算をパーセントから dB に変換できます。 計測されたシンボル位置 エラーベクトル 理想のシンボル位置 振幅誤差 振幅 ベクトル 位相 誤差

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EMVdB = 20 log(EVM%) 式 3.3. EVM をパーセントから dB に変換 1 つのキャリア変調を使用した無線規格では、通常 EVM リミットをパーセントで指定しますが、OFDM シス テムは一般に EVM リミットを dB で指定します。 EVM は基本的に 1 シンボルのみの変調品質の測定指標な ので、この指標は通常大量のシンボルにおけるピーク値または二乗平均平方根(RMS)のいずれかで表記し ます。 DSSS 伝送では、最高次変調方式は DQPSK(差動四位相偏移変調)です。 図 3.3 のコンスタレーション図に示すように、全てのシンボルは原点から同じ振幅で、互いに同じ位相オフ セットにあります。 そのため、802.11 では DSSS 伝送のピーク EVM リミットを指定しています。 図 3.3. DQPSK コンスタレーション DSSS サブセクションは、EVM 値としてシンボルのピーク誤差を指定しますが、OFDM、HT、および VHT 伝 送は RMS 値に基づく EVM 要件を指定します。 図 3.4 に示すように、64‐QAM のような高次変調方式の振 幅ベクトルは、シンボルの位置によって大きく異なります。

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図 3.4. 64‐QAM コンスタレーション

図 3.4 で、ピーク EVM 計測は、振幅が小さく原点に近いシンボルが大半を占めています。 そのため、ピーク EVM は RMS EVM ほど有用ではありません。

したがって 802.11a/g/n/ac のような OFDM ベースの伝送は、EVM 要件を RMS 値で指定します。

さらに 802.11 仕様では、送信機が伝送に使用する各変調方式の様々な RMS EVM リミット(制限値)を指定 しています。 各 801.11 規格で、変調方式やコードレートの様々な組み合わせにおいて EVM 要件は似通って いますが、表 3.3 に示すように、全ての変調方式とコードレートの組み合わせがいずれか 1 つの規格でサポ ートされているわけではありません。 変調方式 符号レート EVM リミット (802.11a/g) EVM リミット (802.11n) EVM リミット (802.11ac) BPSK ½ -5 dB - 5 dB - 5 dB BPSK ¾ -8 dB N/A N/A QPSK ½ -10 dB -10 dB -10 dB QPSK ¾ -13 dB - 13 dB - 13 dB 16-QAM ½ -16 dB -16 dB -16 dB 16-QAM ¾ -19 dB -19 dB -19 dB 64-QAM 2/3 -22 dB -22 dB -22 dB 64-QAM ¾ -25 dB -25 dB -25 dB 64-QAM 5/6 N/A -27 dB -27 dB

256-QAM ¾ N/A N/A -30 dB

256-QAM 5/6 N/A N/A -32 dB

表 3.3. OFDM、HT、VHT の EVM リミット

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表 3.3 を見ると、伝送の変調品質と変調方式の複雑さに明らかな関連性があります。 例えば、256‐QAM な どの高次変調方式では、BPSK のような低次方式に比べより高い変調品質が求められます。 図 3.5 で、 256‐QAM コードレート伝送のコンスタレーションプロット上に、仕様の制限値が重ねて表示されています。 図 3.5. 802-11ac のコンスタレーションプロット 伝送の変調品質は、送信機の精度に関連し、伝送の変調方式とは通常無関係です。 例えば、16‐QAM で-36 dB の EVM を提供する送信機は、256‐QAM を使用して信号を送信する際の EVM 性能と同じです。 256‐QAM(802.11ac デバイス)伝送を生成するのに必要な送信機は、64-QAM(802.11a/g/n)を生成する ための送信機に比べ、変調方式の要件が高くなります。

コンスタレーション誤差

主 EVM 計測もシンボルコンスタレーションから導き出されますが、それらは原因となる全ての誤差の一般的 集合です。 また、コンスタレーションには誤差の原因を示す情報も含まれます。 コンスタレーションか ら得られるその他の測定指標として、コモンパイロットエラー(common pilot error)、IQ ゲイン不均衡(IQ gain imbalance)、直交位相スキュー(quadrature skew)、タイミングスキュー(timing skew)などがあります。

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タイミングスキュー(OFDM)

タイミングスキュー(timing skew)とは、複合ベースバンド信号の位相内(I)成分と直交位相(Q)成分のサ ンプリングインスタンスの差を言います。

直交位相スキュー(Quadrature Skew)

直交位相スキューとは、位相内(I)信号と直交位相(Q)信号の間における 90°からの角度偏差のこと です。

I/Q ゲイン不均衡(I/Q gain imbalance)

I/Q ゲイン不均衡とは、直交位相(Q)信号の平均振幅に対する、同相(I)信号の平均振幅の比率を dB で表し たものです。

チップ周波数公差(Chip Frequency Tolerance、DSSS)と

シンボルクロック周波数公差(Symbol Clock Frequency Tolerance、OFDM)

この計測は、I 信号と Q 信号を生成している各 D/A コンバータ(DAC)のサンプルクロック間の差を示すもの です。

中心周波数許容範囲(Center Frequency Tolerance)

伝送の変調品質に関連する最後の特性として、中心周波数許容範囲があります。 理想では、送信機が 2.412 GHz の信号を出力するよう設計されている場合、その信号の正確な中心周波数は 2.412 GHz になりま す。 ただし、送信機のクロック回路に障害があると、望ましい位置よりわずかに周波数がずれた伝送となる可能性 があります。 無線 LAN システムの送信機と受信機のいずれかで周波数の精度が低い場合、受信機が無線伝送 を復調できなくなることがあります。

802.11 仕様では、具体的な周波数精度を PPM(perts per million)で示す必要があり、この結果は VSA を使 って計測されます。 例えば、キャリア周波数オフセットが 4 KHz で中心周波数が 2412 MHz の場合、これは 1.658 ppm((4 KHz/2,412 MHz)*1*10e6)に相当します。 表 3.4 は、それぞれの 802.11 PHY について、 10~25 ppm の範囲の周波数精度要件を示しています。 PHY +/- ppm DSSS 25 OFDM 20 HT 2.4 GHz 帯域 25 HT 5 GHz 帯域 20 VHT 20 表 3.4. キャリア周波数オフセットの範囲

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スペクトル計測

無線 LAN 送信機の性能を評価する最後の計測は、スペクトル計測です。 対応する受信機が送信信号を正 しく復調できることを確認するための変調精度計測とは異なり、周波数領域計測は信号が他の信号に干渉し ないことを保証するのが目的です。 多くの周波数領域計測では、信号の位相成分は必要としません。 そ のため VSA が使用できない場合は、そのような計測にはスペクトルアナライザを使用できます。

スペクトルマスク

スペクトルマスク計測では、送信されたパケットのパワースペクトル密度に重ね合わされた一連の制限値を 特定します。 スペクトルマスクとは隣接チャンネルにおける干渉を測る指標なので、制限値は送信チャンネ ルの中心から離れるにつれてより厳しくなります。 送信された統合電力を特定する UMTS や LTE のようなセ ルラー通信と異なり、無線 LAN のスペクトルマスクは、電力ピークが制限値を超える周波数ビンの評価のみ を目的としています。 スペクトルマスクは、マスクを信号のスペクトルと比較する合否テストです。 DSSS では、スペクトルマスク計測は 100 kHz の分解能帯域幅(RBW)と 30 kHz のビデオ帯域幅(VBW) を使用します。 OFDM 技術では、スペクトルマスク計測の RBW と VBW はいずれも 100 kHz が必要です。

DSSS スペクトルマスク

DSSS 伝送におけるスペクトルマスクプロファイルは、キャリアから 11 MHz~22 MHz のオフセットと、22 MHz を超えるオフセットの帯域幅における最大放射電力(maximum emitted power)を定義します。 図 3.6 では、DSSS マスクは基準点 0 dBr を、特定の基準点に対し 0 dB と定義しています。 基準点は、伝送の最大 スペクトル密度(maximum spectral density)と定義されます。

図 3.6. DSSS スペクトルマスク制限値 図 3.6 に示すように、DSSS 伝送はキャリアから 11 MHz~22 MHz のオフセットで-30 dBr を超えることは できません。 さらに、伝送のパワースペクトル密度は、キャリア周波数から 22 MHz を超えるオフセットで -50 dBr を超えることもありません。 電力 送信 スペクトル マスク フィルタなし (Sin X)/X 周波数

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OFDM、HT、VHT スペクトルマスク 802.11a/g/n/ac では、スペクトルマスクのプロファイルは似ていますが、 802.11ac の広い帯域幅または 80+80 帯域幅構成により適しています。 OFDM、HT、VHT のスペクトルマスク の一般的な解説として、ここでは OFDM のスペクトルマスクについて検証します。 図 3.7 に示すように、 OFDM 伝送の主要なマスク制限値は、-20 dBr、-28 dBr、-40 dBr です。 図 3.7. 802.11a の OFDM スペクトルマスク 20 MHz 帯域幅信号の主要オフセットは、9MHz、11 MHz、20 MHz、および 30 MHz です。 表 3.5 は、 様々な帯域幅の信号の主要オフセットを示しています。 信号帯域幅 オフセット A オフセット B オフセット C オフセット D 20 MHz ± 9 MHz ± 11 MHz ± 20 MHz ± 30 MHz 40 MHz ± 19 MHz ± 21 MHz ± 40 MHz ± 60 MHz 80 MHz ± 39 MHz ± 41 MHz ± 80 MHz ± 120 MHz 160 MHz ± 79 MHz ± 81 MHz ± 160 MHz ± 240 MHz 表 3.5. 802.11 マスクの周波数オフセット 802.11 の各規格を区別する要素として、キャリアから最も遠いオフセットの外側での最大エミッションがあ ります。 HT 2.4 GHz を除く全ての伝送で、最も遠いオフセットの制限値は-40 dBr となります。 HT 2.4 GHz では、最も離れたオフセットの外側での伝送における最大エミッションは-45 dBr です。 送信 スペクトル マスク 電力 通常の スペクトル 周波数(MHz)

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図 3.8. 5 GHz 帯域での HT の 20 および 40 MHz エミッションマスク 周波数(MHz) 周波数(MHz) 電力 電力

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802.11ac の 80+80 モードでは、図 3.9 に示すように、伝送されたスペクトルマスクは 2 つの 80 MHz マスク の線形和によって計算します。 図 3.9 VHT の 80+80 MHzチャンネルスペクトルマスク制限値 図 3.9 で、80+80 構成のスペクトルマスクの外側エッジは、80 MHz の帯域幅オプションの外側エッジと一 致します。 ただし、重複する部分は 2 つの制限値の合計なので、要件がより厳しくなります。 例えば、-39 MHz と 39 MHz の周波数オフセットでは、制限値は-28 dBr + -28 dBr = -25 dBr で-25 dBr となります。

搬送波抑圧(DSSS)

理想的な直交変調器の内部発振器(LO、local oscillator)は RF 出力で漏れは生じませんが、現実にはそうは いきません。 直交変調器の DC オフセットにより、デバイスの出力でスプリアスがちょうど LO の周波数で発 生します。 このスプリアスは、中心周波数リークまたは LO リークです。 802.11b の DSSS 伝送の場合、 LO リークは搬送波抑圧計測で観測できます。 チャンネルの中心周波数で計測した RF 搬送波抑圧は、ピーク SIN(x)/x パワースペクトルより少なくとも 15 dB 低くなります。 DSSS はシングルキャリア変調方式なの で、キャリアリークは送信機が反復的シンボルパターンを生成している時のみ計測できます。 電力 電力 周波数(MHz) 周波数(MHz) 周波数(MHz) 電力

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例えば、スクランブラを無効にして反復的な 01 データシーケンスを生成するよう送信機を設定することで、 送信機は同じシンボルを繰り返し生成するようになります。 周波数領域では、スペクトルは伝送の中心周波 数からオフセットしたシングルトーンのように表示されます。 そのため、LO リークは中心周波数の放射電力 を計測することで特定できます。 中心周波数の放射電力は、100 kHz の分解能帯域幅を使用して、スペクト ルアナライザまたは VSA で計測することができます。

中心周波数リーク(Carrier Frequency Leakage: OFDM、HT、VHT)

802.11a/g/n/ac の伝送では OFDM 技術が利用され、重なった変調サブキャリアの生成原理に基づいています。 OFDM 技術は、LO リークの難題を回避するため、中央のサブキャリアをヌルに保っています。 そのため、図 3.10 に示すように、中心サブキャリアの放射電力を計測することで、送信機がデータ生成中でも LO リークを 計測することができます。 図 3.10. 周波数領域における LO リークの計測 厳密に定義すると、キャリア周波数リークとは全サブキャリアの平均電力の総エネルギーに対する DC サブキャリアのエネルギーの割合を dB で表したものです。20 MHz の 802.11a/g/n 伝送では、最大 LO リークは送信電力に対し-15 dB、同様にその他のサブキャリアの平均エネルギーに対し+2 dB を超えて はなりません。

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40 MHz の 802.11n 伝送では、リークは送信電力全体に対し-20 dB、同様にその他のサブキャリアの平均エネ ルギーに対し 0 dB を超えてはなりません。 VHT の LO リーク要件は特有です。 80+80 MHz 伝送を除く全て の VHT 帯域幅構成では、最大 LO リークは各サブキャリアの平均電力を下回る必要があります。 無線 LAN デバイスは 80+80 MHz 伝送を 2 通りの方法で実装でき、LO リーク要件はそれぞれの方法で異なり ます。 信号が 1 つの変調器から伝送される場合は、LO は伝送の中心に表示されます。 その状況では、RBW 312.5 kHz を使用して伝送の中心で計測した電力は、サブキャリアあたりの平均電力を超えることはできませ ん。 80+80 MHz 伝送は、2 つの送信機で実装することもできます。 この場合、LO リークは各送信機の中心周 波数に現れ、チャンネルの中心には存在しません。 ここで送信帯域幅の中心で計測された電力は、全送信電 力に対し最大で-20 dBm と-32 dB を超えてはなりません。 LO リークが周波数 80 MHz の両伝送から外れて いる場合、RF LO はスペクトルマスク計測と同様になります。

スペクトル平坦性(Spectral Flatness)

スペクトル平坦性は、802.11a/g/n/ac の OFDM ベースの伝送のみに適用されるもので、 サブキャリアの 様々な電力レベルを表します。 各サブキャリアのコンスタレーションの平均エネルギーは、全サブキャリア の平均エネルギーから上下のマージンを超えてはいけません。 ワーストケースの上マージン(upper margin)と 下マージン(lower margin)がスペクトル平坦性のマージンになります。

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図 2.6. 周波数領域における OFDM サブキャリア
表 2.5 に示すように、802.11ac ではシングルユーザとマルチユーザ(MU)の MIMO をサポートしてい ます。  MU-MIMO では、クライアントリストごとに様々な数の空間ストリームを使用して、アクセスポイン トで複数のクライアントに同時にブロードキャストできます。  Wi-Fi のアクセスポイントとクライアントは、MIMO とマルチアンテナ技術を多様な方法で使用します。  無線 LAN における MIMO の最も一般的な使い方の 1 つとして、複数の空間ストリームの使用によるデータレ ートの
図 2.11. 1x2 SIMO 構成の受信多様性
図 3.4. 64‐QAM コンスタレーション
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参照

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