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ゲンジボタルの飼育繁殖と里親事業

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Academic year: 2021

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ゲンジボタルの飼育繁殖と里親事業

野本康太・奥山清市・枡井理恵・村川視紀子

伊丹市昆虫館

Breeding of the firefly (Luciola cruciata)

in Itami city museum of insects and

firefly foster parent project

Kota NOMOTO, Seiichi OKUYAMA, Rie MASUI, Mikiko MURAKAWA

Itami City Museum of Insects

問い合わせ先 〒 664-0015 伊丹市昆陽池 3-1 伊丹市昆虫館        e-mail: [email protected] (2015 年 2 月 28 日受理) 1. はじめに   伊丹市昆虫館(以下当館)は 2007 年より伊丹の自然 を守り育てる会川部会(以下川部会)、伊丹市みどり公 園課、伊丹市民と協力しゲンジボタルの幼虫を育て、当 館北側より昆陽池へ流入する水路(以下ホタル水路)へ 放虫するホタルの飼育繁殖と里親事業に関わってきた。 ゲンジボタル(Luciola cruciata)は甲虫目ホタル科に属 する昆虫で、人里近くの小河川や水田地帯などに生息し、 成虫が夜間発光し優雅に飛翔することから夏の風物詩と して親しまれ、古くから鑑賞の対象となっている(図 1 )。伊丹の自然(伊丹の自然編集委員会 1992)によると、 ゲンジボタルは 1955 年頃まで市内各地で普通に見られ、 武庫川周辺ではホタル狩りが出来るほどいたとある。ま た 1975 年 5 月には伊丹市内(以下市内)の天神川周辺 でヘイケボタルが大発生し、この時はゲンジボタルもか なり見られたという記録があるが、人口増加や宅地造成、 河川改修などにより伊丹のホタルは減少し次第に見られ なくなっていった。1984 〜 1985 年にかけて市内の河 川にホタルを呼び戻すため、ゲンジボタルとヘイケボタ ルの人工飼育及び野外実験水路への幼虫放流の記録があ り、数年間の成虫発生の実績をあげている。当時この取 り組みにおいて岡(1986)は伊丹市内にはゲンジボタル、 ヘイケボタル、ヒメボタルが見られるがいずれの種も個 体数が減少傾向にあること、特にゲンジボタルは定着し ていない可能性が高いとし、保護の必要性や市内河川の 水質改善、生息環境改善について述べている。現在市内 ではヘイケボタル(天神川)、ヒメボタル(猪名川河川敷) については毎年の発生を確認している。そしてゲンジボ タルについては、市内を流れる天神川上流部、猪名川箕 面川合流部などで散発的にわずかな成虫の発生がみられ る。しかし、これらは市外の上流部の発生地より幼虫あ るいは成虫が流下し、一時的に発生しているものが大半 と思われる。また両河川はエサとなるカワニナがほとん ど生息していないこと、雨天時には水が流れるが通常は 天井川であることなどから、市内において安定的に発生 するゲンジボタル個体群はいないと考えられる。  これまで伊丹の自然を守り育てる会は、昆陽池公園を 中心に伊丹の自然環境の保全や再生に取り組んできた。 その活動の一つとして川部会を中心にゲンジボタルの再 生を目的とした飼育繁殖と里親事業が行われてきた。今 回は当館が関わってきた本事業の開始から現在までの経 過について報告し、今後について考えたい。 2. 方法 2-1 成虫の入手について ゲンジボタルは西日本と東日本とで、発光パターンが異 なるほか活動習性も相違する。例えば西日本型のゲンジ 図 1 ゲンジボタル成虫

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結果、ホタル水路北側を流れる天神川及び天王寺川が合 流し流れ込む武庫川水系上流域の発生地(兵庫県三田市 藍本)より採集した成虫を採卵し、ふ化した幼虫を導入 することとした。これは全国ホタル研究会のホタル類等、 生物集団の新規・追加移植及び環境改変に関する指針(全 国ホタル研究会 2007)において新規移植を行う場合の 推奨順位 3 に相当する対象地域と同じ水系(流域)内よ り採取した集団となる。この指針でより推奨されている 繁殖交流が可能な範囲より採集したもの(推奨順位 1)、 対象地域のごく近隣より採集したもの(推奨順位 2)に ついては、市内および近隣市外において成虫を採集でき るほど安定的に発生する個体群がいないことから採用し なかった。 2-2 ホタル水路の整備について  新たに幼虫を導入するホタル水路(図 2)は、昆陽池 公園北端の昆虫館建物脇から始まり、約 120m ほど林の 中を流れ昆陽池へ流入する。水路幅は 2 〜 3m、水深は 深いところで 60cm、流速は 0.1 〜 0.2m/ 秒前後、底質 は砂利及び砂である。水源は伊丹市上下水道局より供給 アカメヤナギなどの落葉樹とアラカシ、クスノキ、タブ ノキなどの常緑樹からなり群落高は 15m、下層はネザサ、 水路際にはセリ、ドクダミ、ハンゲショウ、キショウブ などの草本植物が生育している。水路周辺の環境管理と して底質の砂利の間隙にたまったシルトを高圧洗浄で除 去したり、繁りすぎた植物を剪定、伐採するなどの整備 が公園管理者、伊丹の自然を守り育てる会森部会などに よって随時行われている。  幼虫の上陸が予想される水路脇緩傾斜面ではリターが 堆積したところ、スゲ類が生育するところ、土壌が露出 しているところなどが入り混じっている。なおこの水路 は先に述べたホタル飼育実験水路として 1985 年前後に 一度整備された経緯がある。 2-3 飼育について  前述の野外発生地から採集した成虫より採卵し、ふ 化した幼虫を飼育した。幼虫を放流した翌年からは、 ホタル水路にて羽化した成虫由来の幼虫も飼育してい る。採卵は飼育ケース(30cm×20cm×20cm)の底に 約 3cm 角のブロック状にしたスポンジを湿らせて敷き 詰め、数ペアずつ行った(図 3)。産卵が確認されたスポ ンジは、霧ふきを毎日行い湿度を保った。ふ化幼虫は、 23cm×13cm×13cm の飼育ケースに 500 〜 2,500 匹程 入れて飼育した。水深は約 5cm、エアーポンプ(GEX e-AIR1000SB)にて酸素を供給した(図 4 )。エサは市 内武庫川水系に生息するカワニナを使用し、幼虫の大き さに合わせ金槌で貝殻を割り、適度な大きさに切るなど 図 2 ホタル水路 図 3 採卵ケース

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して与えた。エサやりの頻度は幼虫の数、育ち具合など によるが、6 〜 11 月では概ね 1 回 / 日で、水替えにつ いても同じ頻度で行った。12 月以降飼育する幼虫のエサ やりと水替えの頻度は 1 〜 2 回 / 週とした。7 〜 11 月 にかけては比較的小さな幼虫を、2 月頃には里親に育て てもらい、大きく成長した幼虫を放流した。卵、幼虫の 管理温度は岡(1986)を参考に、室温 25℃以下とした。 6 〜 10 月頃までは室温上昇を抑えるためエアコンを使 用し、それ以外の時期はエアコンを使用せず室温(7 〜 20℃程)で管理した。 2-4 幼虫の上陸、成虫発生の調査について  例年 4 月上旬頃、幼虫の上陸を確認するための調査を 行った。成虫の発生が見られる 5 月下旬から 6 月中下旬 には発光個体数の調査を行い発生消長を調べた。調査は 2 〜 3 名ほどで午後 7 時〜午後 8 時(日没後 30 分から 2 時間の間はホタルの活動が活発とされている)のホタ ル水路脇を歩きながら行い、当日の気温、湿度、確認数 や場所などを記録した。発光個体数の調査間隔は年によ りまちまちだが、概ね初見日からピークが確認できるま では 1 〜 2 日ごと、以降発光が見られなくなるまでは 2 〜 4 日ごとであった。 2-5 里親事業について  里親事業は川部会で採卵し、ふ化した幼虫をある程 度(体長約 5mm 〜 15mm、2 齢から 4 齢位と推定)の 大きさまで育て、毎年 11 月下旬頃、飼育セットと共に 里親希望者に預け、翌年 2 月まで育ててもらい、大きく なった幼虫をホタル水路へ放流してもらう事業である。 里親の募集は伊丹市広報で行った。まず里親説明会にて ゲンジボタルの一生、幼虫の育て方などについて解説し、 幼虫飼育セット及び幼虫を配布した。飼育セットは飼育 ケース、砂利、植木鉢の欠片、エアポンプセット、ゲン ジボタル幼虫約 10 匹、カワニナ適量である(図 5)。飼 育中にカワニナがなくなった場合はあらかじめ指定した カワニナ生息場所にて採集してもらうか、当館に取りに 来てもらうこととした。飼育についてのリファレンス対 応など行いながら翌年 2 月まで育ててもらった幼虫を水 路へ放流した。その後は、6 月上中旬頃に成虫の観察会 を行った。 3. 結果と考察 3-1 採卵とふ化  採卵ケースにおいて、ブロック状の湿らせたスポンジ に産み付けられた卵(図 6)は 2 〜 3 週間ほどで黄色か ら黒色に変化し、その後 3 日ほどで体長 2 〜 3mm の幼 虫がふ化した。ふ化が近づいたスポンジは水に浮かべ、 水中へ産まれ落ちた幼虫をスポイトで吸って数を確認 し、別のケースに移した。複数のペアを同一ケースで飼 育するため産卵日がそろっていないこと、またふ化幼虫 がスポンジの空隙に潜り込んでしまうことなどから、ふ 化が始まってから 3 〜 4 週間ほどかけて幼虫の回収を 行った。  里親事業初年度(2008 年度)から現在(2014 年度) まで、毎年野外発生地(兵庫県三田市藍本)の成虫より 採卵した卵及びふ化幼虫は伊丹市立伊丹高等学校生物部 より提供してもらっている。また同時にホタル水路で発 図 4 幼虫飼育ケース 図 5 里親飼育セット 図 6 スポンジに産み付けられた卵

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生した成虫からの採卵も継続的に行っている。近年の飼 育幼虫は、野外採集由来よりホタル水路由来の割合が増 えつつある。例えば 2014 年はホタル水路にて採集した 成虫(31 ♀ 22 ♂)から 16,430 匹のふ化幼虫を得ており、 野外採集由来のふ化幼虫は 10,000 匹だった。各年にお けるホタル水路からの採集成虫個体数とふ化幼虫の数は 表 1 の通りである。 3-2 幼虫の飼育  ふ化幼虫は飼育ケースに 500 〜 2,500 匹ずつまとめ て飼育した。幼虫の生育サイズに適したカワニナを生き たまま与えて自然に捕食させることは大量飼育では難し いため、大きなカワニナをつぶし中身を適当なサイズに カットして給餌した(図 7)。矢島(2012)によると 1 匹のゲンジボタル幼虫はふ化してから上陸するまでに約 25 匹のカワニナを食するとされる。また岡(1986)は 飼育下での観察による推定から親貝換算で 10 匹程度と している。7 月に幼虫 500 匹でスタートした飼育ケース で使用したカワニナの数を計算すると、11 月末まで毎 日 3 匹、以降は週に 1 回 4 匹のカワニナ(親貝相当)を 与え 3 月まで飼育したため、合計で 500 匹ほどのカワ ニナを使用したことになる。例年これと同様の飼育ケー スが 10 〜 15 ケース程あるので、幼虫放流までの飼育 には、毎年少なくとも 5,000 匹以上のカワニナを使っ ていると思われる。川部会で飼育する幼虫は主に 11 月 の里親説明会後、2 月の里親放流会終了後などにまとめ て放流した。放流直前、11 月時点における幼虫の体長 は、約 5mm 〜 15mm と大きなばらつきが生じていた。 放流会の行われる 2 〜 3 月に至っても体長(約 5mm 〜 25mm)は揃わず明らかに成長が遅れている個体が多数 見られた。これについては幼虫のエサ資源が少ない場合 には成長が遅れて羽化に至るまでに 2 〜 3 年間かかるこ とがある(大場 2006)や、体長に変化を持たせて秋の 台風など自然災害や天敵からの生存率をあげ、そして世 代を絶やさぬため、本来年 1 化の種が 2 年、3 年と寿命 を延ばす結果となった(矢島 2012)などの見解がある。 川部会の飼育下でも、ふ化翌年の 2 月時点において明ら かに体長が小さなものを、一部放流せず継続して飼育し た結果、2 年あるいは 3 年の寿命を持つ個体を確認した。 飼育幼虫の数の変化の一例をあげると、7 月に 1,000 匹 でスタートした飼育ケースが 11 月末に 600 匹に減少し ていた。また 7 月に 2,500 匹でスタートした飼育ケース では翌年 3 月の実数が 450 匹であった。おおまかではあ るがふ化幼虫の個体数は、飼育開始から放流するまでに 25 〜 50%に減少していると思われる。 3-3 幼虫の上陸から成虫の発生まで  幼虫の上陸(図 8)を確認した日は、早くて 4 月 1 日 遅くて 4 月 18 日、野外気温 13 〜 17℃、相対湿度 58 〜 100%であった。上陸が始まる条件として前日あるい は当日に雨が降ること、当日夜間の気温が平均値と比較 して暖かいことなどが考えられた。上陸した幼虫は土の 中で蛹室を作り約 40 日前蛹で過ごし、蛹化(図 9)し てから約 10 日で羽化するとされる(矢島 2000)。成 虫の発生は例年幼虫が上陸してから約 1 ヶ月半後の 5 月 下旬に始まり、初見日から 7 〜 10 日位で発光個体数は ピークとなり、初見日から約 1 ヶ月で成虫は見られなく なることがわかってきた(表 2)。継続的な調査により ホタル水路における成虫の発生期間や発生のピークが概 ね推測でき、近年では成虫観察会の日程の予測も容易に なってきている。経年の成虫発光期間と発光個体数を図 図 7 カワニナに群がる幼虫

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図 8 ホタル水路脇で上陸した幼虫 図 9 飼育下にて上陸後蛹化した個体 0 20 40 60 80 100 120 140 160 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 図 10 ホタル水路における成虫発光の確認日と個体数 表 2 幼虫の上陸初見日及び成虫発光個体数調査の記録 確認日 個体数 年 上陸初見日 気温(℃) 相対湿度 (%) 成虫発光 初見日 気温(℃) 相対湿度 (%) 成虫発光個 体数最大日 気温(℃) 相対湿度 (%) 成虫発光 終了日 気温(℃) 相対湿度 (%) 2008 4 月 10 日 13.4 - 5 月 25 日 21.2 93.5 6 月 7 日 23.0 67.1 6 月 28 日 23.9 100 2009 4 月 14 日 16.0 91.6 5 月 26 日 21.5 59 6 月 6 日 21.4 60.6 6 月 27 日 25.6 68.9 2010 4 月 1 日 13.4 78.2 5 月 22 日 19.2 80 6 月 7 日 22.1 68,2 6 月 29 日 26.5 77.8 2011 4 月 8 日 14.6 94.8 5 月 30 日 17.3 71.3 6 月 7 日 22.9 56.2 6 月 25 日 27.8 72.2 2012 4 月 11 日 14.8 100 5 月 28 日 23.1 61 6 月 4 日 22.5 63.6 6 月 22 日 24.1 64.2 2013 4 月 6 日 17.0 100 5 月 25 日 - - 6 月 3 日 24.9 46.2 6 月 25 日 25.2 68.6 2014 4 月 18 日 16.4 58.8 5 月 26 日 18.4 98.5 6 月 3 日 22.7 70.2 7 月 1 日 25.8 61.7 平均値 4 月 10 日 15.1 87.2 5 月 26 日 20.1 77.2 6 月 5 日 22.8 60.7 6 月 27 日 25.6 73.3

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図 12 産卵中の成虫 ついては大場(1994)により西日本型ゲンジボタルはし ばしば集団となって産卵する。東日本型ゲンジボタルの 多くは個々に産卵場所を選び 1 個体で産卵するとあり、 ホタル水路においても数匹が集まる西日本型の産卵行動 を確認している。 3-4 里親事業の実績について  里親事業の初年度(2008 年度)は一般公募を行わず、 伊丹市立鴻池小学校こどもエコクラブへ呼びかけ里親 20 組を募集した。2009 年度は鴻池小学校、伊丹市立有岡 小学校で里親を募集し 29 組が参加した。3 年目の 2010 年度から一般公募 25 組、鴻池小学校 15 組、有岡小学 校 14 組、4 年目(2011 年度)以降は一般公募のみとし 2015 年 3 月現在述べおよそ 250 組、460 人の里親参加 となっている。また幼虫放流会や成虫観察会には伊丹の 自然を守り育てる会関係者、里親関係者、伊丹市立鴻池 図 11 水路で交尾する成虫 2007 10,000 8,505 -(0;10,000) 2008 8,000 995 10 (2,016;5,984) 2009 20,705 6,484 37 (3,332;17,373) 2010 45,029 18,738 88 (25,313;19,716) 2011 17,232 4,988 75 (10,823;6,409) 2012 36,000 11,143 137 (17,500;18,500) 2013 31,019 16,625 94 (31,019;0) 2014 26,430 17,000 103 (16,430;10,000) 図 13 里親説明会 図 14 幼虫放流会

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小や伊丹市立有岡小学校エコクラブも参加し、それらを あわせるとおよそ 2,300 人以上が事業に参加したことに なる(図 13、図 14、図 15)。里親による放流幼虫数は 100 〜 200 匹前後で、里親 1 組につき預けた約 10 匹の 幼虫の生存率は 30 〜 50%程度であった。  里親参加者対象に行ったアンケート(伊丹市みどり公 園課まとめ)からは 9 割以上の方が里親に参加して良かっ たとし、成虫観察では「ホタルを初めて見ました。百聞 は一見にしかず。見て理解、納得でき印象深いと思いま す。子どもとカワニナ取りなど楽しめた。30 〜 40 年 ぶりにホタルをみた。幻想的な姿に感動した」などの感 想が、幼虫飼育の感想では「意外とラク、どんどん脱皮 して大きくなるのでビックリした。楽しく観察できたが 幼虫が死んでいくのが見えて困った。貝の中に入ってい るホタルの幼虫を見るといやされた。子どもと一緒に育 てることができて良かった。大きな幼虫が死んだときは ショックでしたが、カワニナを食べているところを見た 時は感動でした。」など概ね好評であった。飼育をして いて困ったことに関しては「幼虫が隠れて見えない、動 きがないので面白みに欠ける。幼虫が生きているかわか りにくい、エアポンプの音がうるさい、エアレーション の飛沫でケース周辺が水浸し、水を換えるタイミングが わかりにくかった」などの感想が見られ楽しみながら飼 育する工夫が求められているようでもあった。 4. おわりに  約 7 年間、延べ約 2,300 人の方々が関わったゲンジボ タルの飼育観察と里親事業によってホタル水路では毎年 多くの成虫が見られるようになり、水路内での自然繁殖 も確認できるまでになった。ゲンジボタルと共に繁殖及 び放流を行っているヘイケボタル(市内天王寺川及び天 神川産)は、ホタル水路及び昆陽池公園多目的広場付近 の水路でも継続して成虫が発生している。幼虫の放流数 に対する羽化率が 1%前後ということについては、その 要因がエサ資源の多寡や天敵などの生物的環境によるも のなのか、水質や水路周辺の物理的環境によるものなの か検討していくと共に、ホタル水路で発生させる成虫の 適正な数についても考えていく必要がある。今後も伊丹 の自然環境の保全と再生に関わる普及啓発、そして自然 環境学習の機会として事業を継続しつつ、将来は野外採 集に頼らずとも、飼育繁殖及び里親事業が行えること、 最終的には幼虫を放流せずとも安定してホタルの成虫が 発生するような環境を整えていくことが望ましいと考え ている。また市内ではいくつかの自治会や地区社協、商 工会議所などの地域団体が各地域での河川清掃や水辺と 親しむイベント、水辺再生やホタル再生を模索しており、 こうしたグループからのリファレンスや協力を求められ る機会も増してきた。これからはホタル水路だけでなく、 市内河川の水質やホタルの生息に必要とされる環境等に ついても情報収集を進めたい。そしてこの事業を継続し ていく中で、ホタルだけでなく、生きものとそれを取り まく自然環境の大切さに気づき関心を持つ人が増えるこ とで、現在残された自然環境が保全され失われた自然を とりもどすような動きにつながっていけば、再び伊丹市 内でホタルが舞う時が来るかも知れない。 5. 謝辞  ホタルの飼育繁殖、里親事業、本報告作成にあたり様々 なアドバイスを頂き、また成虫の採集、水路環境の整備、 放流会や観察会などにおいて尽力された伊丹の自然を守 り育てる会副会長岡勇以知氏(伊丹市立伊丹高等学校教 諭)、伊丹市立伊丹高等学校生物部のみなさま、伊丹市 立有岡小学校主幹教諭國村和伯氏、高津一男氏をはじめ 伊丹市役所みどり公園課のみなさま、伊丹市昆虫館臨時 職員河上仁之氏、そして里親事業に参加してくださった 多くの方々に感謝申し上げる。 引用・参考文献 伊丹市(1986)昆陽池公園内人口河川におけるホタル飼 育実験結果報告書(第一報). 伊丹市 . 伊丹市(1987)昆陽池公園内人口河川におけるホタル飼 育実験結果報告書(第二報). 伊丹市 . 伊丹市の自然編集委員会(1992)伊丹の自然 第 1 巻  「伊丹市の自然環境」. 伊丹市立博物館 , 伊丹市 大場信義(1991)生態系を保ったホタルの水槽飼育 . イ ンセクタリウム 28(6):12-15. 大場信義(1994)ホタルとその生息環境の地域固有性 . 昆 虫と自然 29(5):6-13. 大場信義(2006)ゲンジボタルの遺伝的多様性と放虫問 題 . 昆虫と自然 41(13):27-32. 岡勇以知(1986)伊丹のホタル〜現状と人工増殖の試み 〜 . 伊丹の自然 3:1-16. 鈴木浩文(2009)ゲンジボタルにみる遺伝的多様性・固 図 15 発光成虫の光跡

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矢島稔(2012)ゲンジボタルの生態系復元に関する研究— 皇居に蛍を定着させた経緯 -(1). 昆虫と自然 47(13): 22-25. 矢島稔(2012)ゲンジボタルの生態系復元に関する研究— 皇居に蛍を定着させた経緯 -(2). 昆虫と自然 47(14): 29-31. 矢島稔(2000)わたしの昆虫記② ホタルが教えてくれ たこと . 偕成社 , 東京 .

図 8 ホタル水路脇で上陸した幼虫 図 9 飼育下にて上陸後蛹化した個体 0 20 40 60 80 100 120 140 160  2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014  図 10 ホタル水路における成虫発光の確認日と個体数 表 2 幼虫の上陸初見日及び成虫発光個体数調査の記録確認日個体数 年 上陸初見日 気温(℃) 相対湿度 (%) 成虫発光初見日 気温(℃) 相対湿度(%) 成虫発光個体数最大日 気温(℃) 相対湿度(%) 成虫発光終了日 気温(℃) 相対湿度(%)
図 12 産卵中の成虫 ついては大場(1994)により西日本型ゲンジボタルはしばしば集団となって産卵する。東日本型ゲンジボタルの 多くは個々に産卵場所を選び 1 個体で産卵するとあり、ホタル水路においても数匹が集まる西日本型の産卵行動を確認している。3-4 里親事業の実績について 里親事業の初年度(2008 年度)は一般公募を行わず、伊丹市立鴻池小学校こどもエコクラブへ呼びかけ里親 20組を募集した。2009 年度は鴻池小学校、伊丹市立有岡小学校で里親を募集し 29 組が参加した。3 年目の 2010年度か

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