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大正大学大学院研究論集35号 017長尾隆寛「「十七条御法語」について-第十一条法語に関する伝承と変遷-」

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Academic year: 2021

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学内学術研究発表会発表要旨

「十七条御法語」について

―第十一条法語に関する伝承と変遷―

本発表は、法然上人(以下、祖師の敬称を省略)の御法語がどのような伝承や変遷 を経て伝えられてきたかということを『西方指南抄』に所収されている「十七条御法 語」に注目し、 その中でも第十一条について、 諸師の著作まで範囲を広げて見ていき、 御 法 語 の 意 義 や そ の 背 景 を 明 ら か に す る も の で あ る。 「 十 七 条 御 法 語 」 と は、 法 然 の 御法語が集められ構成されている法語集の一つである『西方指南抄』に所収されてい るものである。この『西方指南抄』については、書誌学的な問題があり、紙面の関係 上 こ こ で は 省 略 す る が、 『 西 方 指 南 抄 』 や そ の 中 の「 十 七 条 御 法 語 」 に つ い て、 ど の ような背景で説かれたものであるか、明確になっていないのが現状である。 「十七条御法語」の第十一条(以下、 「十七条⑪」とする)には、次のように説かれ ている。 又 云、 往 生 ノ 業 成 ハ、 念 ヲ モ テ 本 ト ス。 名 号 ヲ 称 ス ル ハ、 念 ヲ 成 セ ム カ タ メ 也。 モシ声ヲハナルルトキ、念スナワチ懈怠スルカユヘニ、常恒ニ称唱スレハスナハ チ念相続ス。心念ノ業、生ヲヒクカユヘ 也 (1 ( 。 ここでは、往生という目的が果たされるには「念」が重要であるとされている。阿 弥陀仏の名号を称えることは「念」を成ずるためであり、称名をしなければ「念」は 懈怠し、常に称名することによって「念」は相続されるということが説かれている。 ここでは、称名と念との関係について説かれているため「念声是一論」を中心にこ の問題について考える。法然の「念声是一論」は、第一義としては『選択集』第三章 に説かれるものであるが、この他に第二義として異なる解釈がある。 法然が『選択集』を著した後に明恵は『摧邪輪荘厳記』において、 「此義甚不可也。 念者是心所、 声者是色。心声既異何為 二一体乎」とし、 「念」は「心所」であり、 「声」 は「色法」であり、この異なる二者を一体としている点において『選択集』に説かれ る「念声是一論」を批判する。この「念」と「声」との関わりについて、法然門下の 解釈を中心に考察する。 浄土宗第二祖聖光は『西宗要』において、 「行者必心勧也行心勧可 レ知南無阿弥陀仏 申 時 心 勧 様 是 往 生 為 也 思 心 ナ ヲ ス 也 心 行 励 事 可 レ 行 心 励 事 有 一 向 云 ワ ロ キ 也 心 心 勧 心行勧行行勧行心勧也」 とし、 「声」 と 「念」 との関係について 「声」 → 「念」 → 「声」 といった過程が示されている。 次に三祖良忠の『伝通記』では、 蓮華谷(明遍)の言葉として、 「蓮華谷云念在 レ 言 彰 レ 行 者 信 レ 欣 心 深 故 出 レ 而 唱 二 救 一 レ   我 也 」 と あ り、 「 念 」 →「 声 」 と い う 過 程 が 示 さ れ て い る。 ま た、 勝 願 院( 良 遍 ) の 解 釈 と し て、 「 勝 願 院 云 凡 夫 行 中 称 名 最 勝 所 二 然 一 凡 夫 雖 レ 余 妙 行 一 心 散 漫 而 不 二 続 一 行 難 レ 唯 称 名 行 常 不 レ 不 レ 故 成 二 定 業 一 心 忘 レ 時 口 称 二 名 一 声 入 二 耳 一 我 心 念 一 念 若 起 此 念 亦 勧 レ 令 レ 名 一 故 念 勧 レ 声 起 レ 常 不 レ 有 二 益 一 法 蔵 比 丘 立 二 名願 一」とあり、 「声」→「念」 ・「念」→「声」は別個のものではなく、 「声」→「念」 →「声」という過程が示されているのである。 ま た、 良 忠 は、 「 念 」 を 心 意 と し、 そ の 心 意 と は 具 体 的 に ど の よ う な こ と を 指 す か ということについて、称名によって発せられる「念」を三心ととらえ、 「声」→「念」 とは、 称名によって三心が形成されることと考えていたことが分か る (2 ( 。また、 良忠は、 「念」を阿弥陀仏を思う心、忘れない心として捉え、 「声」がその「念」を形成し、さ らにその「念」が「声」を形成し続けるとしてい る (3 ( 。 「十七条⑪」 では、 「声」 → 「念」 → 「声」 の過程の中、 「声」 → 「念」 という部分を示し、 そ の 後「 声 」 へ と つ な が る こ と は 説 か れ て い な い が、 「 相 続 」 と い う こ と が 説 か れ て い る こ と か ら も、 そ の 後 ま た「 声 」 に つ な が り、 「 声 」 →「 念 」 →「 声 」 → …… と つ ながっていくことが想定されていることが考えられる。このようにこの 「念声是一論」 は、第一義と比べるとやはり特殊なものであるといえる。そこで最後にこの詞がどの ような背景で説かれ、伝承されていったかについて考察する。 「十七条⑪」 の伝承について考察する際に特に注目すべき点は、 良忠が 「念声是一論」 の第二義に関しては、自身の詞ではなく、明遍・良遍の詞をもって解釈しているとい うことである。よって本発表では、このいわゆる南都浄土教者の代表とされる両師の 伝歴や浄土宗との関連を考察し、以下の結論を出した。 「 十 七 条 ⑪ 」 に 説 か れ る よ う な「 念 声 是 一 論 」 は や は り 明 恵 や『 興 福 寺 奏 状 』 を 出 した貞慶などを中心とした南都仏教からの批判を発端とし、それを意識して良忠など

(2)

145 が解釈していることは明らかである。また、明遍に関しては、法然との散心念仏に関 する問答が残されてい る (4 ( 。これらの問答は、 第二義 「念声是一論」 における 「念」 と「声」 の問題を意識した上でのことであることが考えられ、明遍がこの問題に敏感になって いたことは自然であると考えられる。 また、良遍にも明遍と同様の散心念仏に関する良忠との問答が残されてい る (5 ( 。また 良遍は、至心を至誠心と捉え、念仏を修す時には至心でなくてはならないとする。さ らには、念仏を相続する内に専注の心がおこるともしてい る (6 ( 。 このような明遍・良遍の思想を見るとき、明恵だけでなく、南都における「念声是 一論」の中心問題、特に法然に対する批判が第二義を中心としたものであったことが 明らかとなる。 これらの背景や、良忠がこの問題に関して明遍・良遍二師の詞をもって解釈してお り、良忠が明遍と良遍を抱き合わせで引用する理由がどちらも南都を代表した学匠で あ り、 旧 仏 教 に 対 す る 説 得 力 を 持 つ た め で あ る と い う こ と を 考 え る と、 「 十 七 条 ⑪ 」 に説かれる内容が南都における問題であり、南都浄土教者に関係の深いものであると いうことが分かる。この他に、 第一条法語との関連や他の条との関係を考察した結果、 「 十 七 条 御 法 語 」 全 体 が 南 都 浄 土 教 者、 特 に そ れ を 代 表 す る 明 遍 や 良 遍 や そ の 周 辺 と 大変深い関わりをもつものである可能性があるということを明かすことができた。 ただし、 南都浄土教との関わりという視点でみたものは以上の数条のみであるため、 今後はこの視点をもとに、さらに他の条との関連も考察していきたい。 (1)『昭和新修法然上人全集』四六九 (2)『 浄 土 宗 全 書 』( 以 下『 浄 全 』) 二 ・ 六 一 二 下、 『 浄 全 』 七 ・ 二 四 三 下、 『 浄 全 』 七・ 三六七下、 『浄全』七 ・ 二四三上、 『浄全』一〇 ・ 三五上、 『浄全』一〇 ・ 二二八上、 『浄 全』一五 ・ 二七五下他、多数の著作において示されている。 (3)先ほどの『伝通記』における良遍の詞の引用や、 『浄全』一〇 ・ 七一四下などに示 されている。 (4)『昭和新修法然上人全集』 六九二―六九三。他に 『法然聖人絵』 ・『法然上人伝絵詞』 ・ 『拾遺古徳伝絵』 ・『法然上人伝記』 ・『四十八巻伝』の各伝記や、 『一言芳談』 、『伝 通記』 、『決答授手印疑問抄』などに法然と明遍との散心問答に関する記事が説か れている。 (5)『浄土宗聖典』五 ・ 一三六など (6)坂 上 雅 翁 氏「 南 都 浄 土 教 に お け る 至 心 に つ い て 」、 同 氏「 良 遍『 導 意 抄 』 に つ い て――念仏と別時意説をめぐって――」など参照。 (大学院仏教学研究科博士後期課程仏教学専攻)

参照

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