平成 21 年 12 月 2 日 独立行政法人国民生活センター
名刺広告掲載の電話勧誘トラブル
-しつこい勧誘、承諾していないのに請求されることも- 本年 8 月、「突然自宅に電話があり、母校を応援するという新聞広告欄に自分の名前を 載せないかと勧められた。断り切れずに承諾し、掲載料を振込んだ。後日、同じ事業者よ り、別の新聞に自分の名前を掲載したとして一方的に掲載料を請求された」という名刺広 告に関する相談が消費生活センター(以下、受付センター)に寄せられた。 受付センターでは、相談者にクーリング・オフ通知を出すように助言し、事業者に問合 せたところ、事業者は「広告は約束どおり掲載している。クーリング・オフには一切応じ ない」等と言って電話を切り、受付センターのあっせんに応じなかった。 その後、受付センターより協力要請を受け、国民生活センターからクーリング・オフに 対応しない理由等を事業者に問合せたが、事業者は対応しなかった。また、この事業者の 所在地はいわゆるレンタル・オフィスであり、同所での法人登記はなかった。 同種の相談は、現在も各地の消費生活センター等に寄せられており、被害の回復は実質 的に難しいことから、国民生活センターでは消費者被害の未然防止・拡大防止の観点から 消費者へ注意を呼びかけることにした。 1.事業者の概要 会社名 :(株)経済社(代表者不明 以下「本件事業者」) 所在地 :東京都中野区中央2-30-9-2F ただし、同所での法人登記はなかった。 なお、本件事業者については、北海道庁が平成 21 年 6 月 9 日に北海道消費生活条例に 基づき「報告要求に応じなかった電話勧誘販売業者の名称等の公表」1を行った。 2.相談件数等 (1)相談件数 本件事業者については、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム) に 2007 年度以降、123 件の相談が寄せられている。2009 年度は、10 月末時点で 38 件と、 前年同時期(4 件)と比べて大幅に増加している(図1)。 1 北海道庁のHP参照 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/4A646582-E5EF-48AF-AF1A-69B93A86E7C9/0/press210609k2 .pdf 報道発表資料図1 年度別相談件数 4 38 47 38 0 10 20 30 40 50 60 2007 2008 2009 年度 件数 (2009 年 10 月末日までの入力分) (2)当事者の属性等2 ①性別、年齢別 当事者のほとんどが女性で、平均年齢は約 71 歳であった。 (図2、図3)。 図2 契約当事者の男女比 男性 7% 女性 93% 図3 契約当事者の年齢 60歳代 19% 80歳代 28% 50歳代 13% 40歳代 3% 70歳代 37% ②職業、居住地域 「無職」や「家事従事者」が多い(図4)。居住地域は全国に広がっているが、東海、 近畿、北陸、山陽の各地方で目立つ(図4 図5)。 図4 契約当事者の職業 給与生活者 12% 自営・自由業 5% 家事従事者 40% 無職 43% 図5 契約当事者の居住地域 北陸 18% 東海 26% 近畿 20% 山陽 17% 甲信越 7% 南関東 7% 北海道・ 北東北 3% その他 2% 2 不明・無回答は除く
3.相談事例 本件事業者に関する苦情事例は以下の通りである。 【事例1】 突然自宅に電話があり、母校を応援するという新聞(A紙)広告欄に、自分の名前 を載せないかと勧誘された。契約するつもりはなかったが早口でまくし立てられたた め、断り切れなくなってしまい、不本意だったが掲載料(35,000 円)を振込んだ。後 日、同じ事業者より別の新聞(B紙)への掲載の電話勧誘があり、断ったにもかかわ らず、自分の名前を掲載したとするB紙を送りつけてきて、35,000 円を請求された。 今回の請求に応じるつもりはない。支払ったお金も返して欲しい。 (2009 年 8 月受付 50 歳代 女性 給与生活者 和歌山県) 【事例2】 1週間ほど前に電話があり、母校の応援メッセージを掲載するよう勧誘された。「掲 載したくない」と言ったが、「イニシャルで出す」と言われた。「大きな新聞社か」と聞 いたが掲載紙の名前も言わない。「消費生活センターに相談する」と言うと、「絶対話す な」と強く言われた。翌日確認書が届いたので、契約撤回の葉書を事業者宛に出したと ころ、昨日掲載された新聞と 35,000 円の請求が突然届き、さらに電話で支払えと脅す ような口調で言われた。 (2009 年 7 月受付 70 歳代 女性 家事従事者 大阪府) 【事例3】 2日前に「新聞に広告を出したので、35,000 円支払ってくれ」と電話が来た。「母校 の活動を応援します」という記事だと言う。頼んだ覚えはないので支払わないと言った ら、「支払わないと裁判にする」と脅された。 (2009 年 7 月受付 70 歳代 女性 無職 長野県) 4.相談処理の概要 (1)掲載紙の確認 【事例1】に関して、事業者が相談者に提示した、氏名が掲載されたというA紙(食品 関係の業界紙)とB紙をみると、「がんばれ甲子園!母校を応援します!」(A紙)、「がん ばれ母校!夏の季節到来!」(B紙)というタイトルで、相談者の氏名が掲載されていた。 相談者の氏名の他にも、次のような複数の氏名等が掲載されていたが、具体的な学校名は 記載されていなかった。 【名刺広告掲載の一例】 ※掲載されている氏名は全て異なっている。 (2)発行者への聴き取り ①A紙の話 本件事業者に関する苦情内容をA紙に伝えて聴き取りを行なったところ、A紙は、 60,000 円で事業者に広告スペースを販売し、そこに名刺広告が掲載されただけである という認識であった。 母校を応援します! ●● ●子 母校を応援します! ●● ●男 母校を応援します! ●● ●子 母校を応援します! ●● ●子 母校を応援します! ●● ●男 母校を応援します! ●● ●子 母校を応援します! ●● ●子 ●●宗●●派 ●●寺 母校を応援します! ●● ●子
②B紙について 相談者の氏名は 8 月 17 日付のB紙に掲載されたことになっていたが、相談者に送ら れてきた紙面(相談者の氏名が掲載されている箇所のみのコピー)をみると、6 月1 日締切りのキャンペーンを告知する大手食品会社の広告も掲載されており、本件事業 者が相談者に掲載料を請求する根拠に疑問が生じた。そこで、当該大手食品会社へB 紙への広告掲載について確認したところ、「B紙に広告を掲載した事実はない」という 回答であった。B紙の発行者については、現在までのところ不明で、B紙が実在する という確証は得られていない。 (3)契約書面等の確認 相談事例の中には、特定商取引に関する法律(以下、特商法)の電話勧誘販売に当た る可能性があるものも見受けられた。特商法では、電話勧誘で事業者が契約の申し込み を受けたとき、あるいは契約を締結したときには、役務提供契約の内容を明らかにした 書面を消費者に交付する義務がある。また、特商法では、契約書には消費者に対する注 意事項として、書面をよく読むべきことやクーリング・オフについて赤枠の中に赤字で 記載することとされている。 事例1について、国民生活センターは本件事業者から相談者に渡された書面を確認し たところ、代表者の氏名がないこと、事業者の所在地が記載されていないこと、クーリ ング・オフに関する記載が不十分であること等、特商法で規定された要件を満たしてい ないことが分った。 また、本件事業者は相談者に、A紙への掲載日は8月6日と記した書面を渡していた が、8月6日付のA紙に相談者の氏名は掲載されておらず、実際には8月20日付の紙 面に掲載されていたことが分った。 5.相談事例からみた問題点 本件事業者については、以下のような問題点が見られる。 (1)勧誘時や掲載費用の請求時に高齢の女性に怖い思いをさせている。 「脅された」、「一度掲載を承諾したら次々請求された」「契約を断ると脅すような口調 で請求された」等の相談が寄せられている。また「大声を出された」等、威圧的な態度 で勧誘・請求されたケースもある。 (2)承諾していないのに、名刺広告を掲載したとして掲載料を請求している。 消費者が断ったにもかかわらず、また契約した覚えがない場合にも、掲載料を請求さ れている。 (3)新聞掲載の事実に疑わしい点がある A紙に掲載したのは事実であるが、存在するかどうか疑わしいB紙に氏名を掲載した として掲載料を請求している。 (4)特商法で定められた書面が渡されていない。 クーリング・オフに関する記載が不十分で、代表者の氏名が記載されていない等、不 備な点が見られる事例もある。 (5)国民生活センターや消費生活センターからのあっせんに応じない 受付センターでは、相談者にクーリング・オフ通知を出すように助言するとともに、
本件事業者に問合せたところ、「広告は約束どおり掲載している。クーリング・オフに は一切応じない。弁護士に確認している。裁判するならしろ。電話はかけてくるな。今 後は文書で言って来い」と言って一方的に電話を切られた。 そこで、受付センターより協力要請を受けて、国民生活センターから、本件事業者に クーリング・オフに対応しない理由や、相談者に渡した書面について事情を聴くために 電話をかけたが、同様の対応で、一方的に電話は切られた。その後も国民生活センター から、何度か電話をかけたが、話し中であったり、留守番電話に切り替った。 6.消費者へのアドバイス 本件事業者は消費者からのクーリング・オフに対して返金に応じず、消費生活センタ ーや国民生活センターのあっせんにも応じないこと等から、被害の救済は難しいのが現 状である。そこで、被害の未然防止・拡大防止の観点から消費者に対して以下のアドバ イスを行うこととする。 (1)㈱経済社による名刺広告掲載の勧誘に気をつけること 本件事業者から名刺広告掲載の勧誘を受けた時には、きっぱりと断ることが大切で ある。執拗な電話が続くときには、電話会社に相談して迷惑電話を防ぐ手立てを講ず ることも必要である。さらに断ったにもかかわらず一方的に掲載紙を送りつけて、掲 載料を請求された場合は、お金を支払わずに無視すること。 (2)高齢者には周囲が気を配ること 高齢者の場合、被害が表面化した時には、既にお金を支払っていることが多い。周 囲の人たちが高齢者の日常生活で何か変わったことはないかという視点から、日々見 守ることが大切である。 (3)消費生活センター等の相談窓口に相談すること 勧誘を受けて困っていたり、お金を支払ってしまった場合は、諦めずに近くの消 費生活センター等の相談窓口に申し出ること。 7.情報提供先 消費者庁消費者情報課 警察庁生活安全局生活経済対策管理官 <title>名刺広告掲載の電話勧誘トラブル - しつこい勧誘、承諾していないのに請求されることも - </title>