<更新日 : 2005/11/11 > 石油 ・ 天然ガス調査グループ : 石田 聖
アブダビ : 利権延長と条件改定を目指す国際石油企業
―契約更改時期を迎えて、 増産計画はどうなるのか?―
1. アブダビ陸上油田の操業会社 ADCO は、 Bab 油田ほかの利権が 2014 年に失効するこ とから、 権益延長と条件改定交渉が続けられている。 2. アブダビ政府は、 2010 年前後を目指して生産能力を 300 万 b/d とする拡大計画を持っ ているが、 外資へのインセンティブ拡大しなければ、 達成困難なこともあり、 難しい選 択を迫られている。 3. ExxonMobil の ZADCO (上部ザクム開発会社) の 28%権益取得交渉は大詰めを迎え ている。 同社の参入は、 アブダビ政府が上部ザクム油田の生産能力拡大のため巨額 投資と高度技術を見込んで選定したもの。 1. はじめに 表 1 に UAE のここ数年間の石油生産状況等を示す。 高油価を背景に国営 ADNOC は早急 に増産体制を築こうとしている。 すなわち、 現在の生産量 230 万 b/d から、 2010 年前後には 300 万 b/d への生産能力拡大を目指している。陸上油田 Asab、 Bab、 Bu Hasa、 Sahil および Sahah の現在の 120 万 b/d の生産量を 160 万 b/d に拡大し、 海上鉱区では最大の生産量を誇る上部ザクム油田について、 2010 年を目処 に生産能力を倍増することが考えられている。 MEES (2003/8/10) によれば、 アブダビ政府は現行の生産能力である 263 万 b/d1 を 2010 年までに 358 万 b/d にするとしているが、 開発に巨額投資を伴うこと、 契約更改を前に ADNOC と外資の間で、 更改条件と投資計画の兼ね合いから能力拡大計画がナーバスな問題となる可能 性もあり、 先行きの見通しは不透明である。 (単位:百万バレル/日) 年 2000 2001 2002 2003 2004 原油生産量 219 212 196 226 233 うちアブダビ分 199 194 177 210 217 コンデンセート 22 32 33 33 33 石油製品 30 52 56 56 56 石油輸出 233 228 218 248 253 うちアブダビ分 205 194 177 208 217 出所:AOG 2005/9/1 表 1 UAE の石油生産量推移 Global Disclaimer (免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、 機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的とした ものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等 の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお 願い申し上げます。
表 2 にアブダビ各油田の 2004 年度生産実績、 2004 年時点での生産能力、 能力拡大計 画値をそれぞれ示す。 また、 図 1 にはアブダビの油 ・ ガス田分布を示す。
(1) 陸上油田
陸上油田は、 海上に比べる施設建設が比較的容易であることから、 短期増産の対象となっ ている。 ADNOC (アブダビ国営石油) 探鉱・開発部長である Abdullah Suwaidi は、短期的な、 20 万 b/d の増産は陸上で行うとしている。 さらに長期的には、 陸上生産量目標を 180 万 b/d とするとしている。 陸上の Bab、 Bu Hasa、 Al Dabb'iya、 Jarn Yaphour、 Rumaitha、 Shanayel 油田は 2006 年前半を目処に、その 20 万 b/d の生産能力拡大が達成される予定で、これによっ て ADCO の現在 120 万 b/d である能力の短期拡張計画の目標である 140 万 b/d は達成され ることになる。
この 6 油田に、 Asab、 Sahil および Sahah の 3 油田を加えた生産能力は、 現在 120 万 b/d であるが、 これを 2010 ~ 2011 年までの長期目標値である 180 万 b/d に拡大するためには 40 億ドル以上の資金投入が必要であるとされる。
地元の NPCC(National Petroleum Construction Co.)は 13 億ディルハム(3 億 5400 万ドル) で、 Bab 油田のガス再開発プロジェクトを受注している。 このプロジェクトは、 OGD (Onshore Gas Development) -Ⅲと言われ、 Bab 油田の Habshan 地区に新しいガス処理プラントを建設 するものである。 この増強計画により Habshan プラントの処理能力は現行の 33 億 cf/d から 46 億 cf/d となる。 NPCC の契約内容は、 ガスギャザリング網、 再圧入設備、 400km の追加油田 内ガスパイプライン、 5 つのガスギャザリング基地を建設するというものである。 Asab 油田の再開発計画も進んでおり、 14 億 6,000 万ドルをかけた AGD -Ⅱプロジェクト 油田名 操業会社 2004 年生産量 (千 b/d) 現在の生産能力 (千 b/d) 計画達成時の能力 (千 b/d) 完成計画年 備考 Asab ADCO 230 275 3151) 2008 Bab ADCO 262 288 4502) 2006 Bu Hasa ADCO 484 535 730 2006 Al Dabb'iya ADCO 6 8 1102) 2006 ブラウンフィールドの開発 Huaila ADCO 0 0 30 2010 グリーンフィールドの開発
Jarn Yaphour ADCO 0 0 102) 2006 グリーンフィールドの開発
Rumaitha ADCO 1 3 192) 2006
Sahil ADCO 46 72 841) 2008
Shah ADCO 41 59 671) 2008
Shanayel ADCO NA NA 102) 2006
ADCO 小計 1,070 1,240 1,715
Umm Lulu ADMA-OPCO NA NA NA NA
Umm Shaif ADMA-OPCO 218 280 305 2008
Lower Zakum ADMA-OPCO 226 320 (320) ― 現行生産能力を維持すると仮定
ADMA 小計 444 600 625
Arzanah ZADCO 0 0 NA
Umm Al-Dalkh ZADCO 13 14 20 2006?
Satah ZADCO 24 27 (27) ― 現行生産能力を維持すると仮定
Upper Zakum ZADCO 500 510 7503) 2010 拡大能力は 120 万 b/d との一部報道もある。
ZADCO 小計 537 591 797
Umm Al Anbar ADOC 8 12 (12) ― 現行生産能力を維持すると仮定
Mubarras A ADOC 15 23 (23) ― 同上
Neewat Al Ghalan ADOC GA 5 5 (5) ― 同上
Abu Al Bukhoosh BUKHOOSH 23 29 (29) ― 同上
Bunduq BUNDUQ 10 13 (13) ― 同上 その他小計 61 82 (82) 合計 2,112 2,513 3,219 2010 年ごろの生産能力を推定 各種資料より推定した。 1):3 油田の能力増強合計分を現在の能力で案分。 2):5 油田の能力増強合計分をその他情報および現在の能力等を勘案して案分。 3):拡大能力を現在の 2 倍以上の 120 万 b/d とする報道もあるが、油層状況等の困難性、投資額が膨大なものとなることから実現は困難であると想定される。 表 2 今後の油田別増産計画
によって、 50 億 cf/d の処理能力をもつことになる。 同プロジェクトは Bectel が受注している。 以上の陸上 9 油田に加え、 2007 年初までに、 今まで生産のなかった小規模な Huaila 油 田から 1 万 b/d を産出する。 さらに、 段階的に拡張し、 3 万 b/d まで持っていくことを計画 している。 FEED は、 すでに VECO Engineering Abu Dhabi に発注されている。 EPC 契約は Matrix Engineering が総額 1,900 万ドルで獲得しており、 内容は 27km の 12 インチパイプライ ンの新設と既存設備の更新などである。 そのほか、 Framo と 700 万ドル、 NPCC と 500 万ドル のそれぞれ契約がなされている。 (3) 海上油田 海上油田に目を転じれば、 ADMA-OPCO は、 2012 年までに約 40 億ドルを投資して、 62 万 5,000b/d 程度の生産維持 ・ 拡大を計画している。 現在、 下部ザクム (Lower Zakum) 油 田の生産能力は 32 万 b/d であり、 ウムシャイフ油田は 28 万 b/d である。 現在の生産量は、 能力を 5 万 b/d 下回る 55 万 b/d である。 ウムシャイフ油田では、 生産維持のための 6 億 cf/d のガス圧入プロジェクトに、 過去 3 年 間で 12 億ドルを支出している。 さらに、 20 億ドルの新プロジェクトへ参入を目指す 2 つのコン ソーシアムの審査中であるが、 Tecnip (仏) と NPCC の企業連合が獲得する見込みである。 このプロジェクトが完成すると原油生産量 30 万 5,000b/d、10 億 cf/d の随伴ガスが生産される。 Tecnip はすでに、 ADMA-OPCO プロジェクトの FEED を終了しており、 このプロジェクトは 3 基のプラットフォームと海底パイプラインの新設を行うものである。
ADMA-OPCO の 5 ヵ年計画によれば、 新しくウムルル (Um Loulou、 Um Lulu) 油田、 ナ スル (Nasser、 Nasr) 油田の開発とウムシャイフの別油層を開発することになっている。 アブダビ市 アブダビ市 0 50 100km ダルマ島 ウムアダルク油田 ムバラス油田 バブ油田 ジルク島 サウジアラビア カタール イラン サルマン(サッサン)油田 ダス島 ドバイ ガーシャ ヘアダルマ シルバニャス島 ジャルナイン ブジュファイル アルザーナ油田 アブアルブクーシュ油田 サター油田 ジーム ワー デルタ マンドゥス ハー サーブ ウムアルアンバー油田 ヘイル油田 ブハサ油田 フワイラガス田 ダフラ油田 ルワイス油田 ビダアルケムザイ油田 サハー油田 アサブ油田 サヒール油田 ハリバ油田 ルマイサ油田 アブダビ ベルバゼム ウムアサルサル ウムアドロー ウムシャイフ油田 アレフ ラシッドユデン エプシロン S.W.エプシロン ウムルル油田 アルダビヤ油田 ヤサール油田 エルブンドク油田 アルザーナ島 ナスル油田 ムバラス島 ザクム油田 凡 例 油田 コンデンセート田 ADMA権益鉱区 図 1 アブダビの油田分布
資を決定している。 これらのコストはそれぞれ 1 億 5,000 万ドルと 2 億~ 2 億 5,000 万ドルが 見込まれている。
UAD 開発に当たっては、 同油田の第 2 次開発の計画策定に 5 社が実施している。 それら は、 Foster、 Wheeler、 Tecnip、 VECO、 Worley Parsons、 Fluor である。 このプロジェクトは、 現在の生産量 24,000b/d を段階的に 27,000b/d 程度に、 ガス圧入量を 1,000 万 cf/d まで増 加させ、 さらに生産井を増掘することによって維持 ・ 達成しようとするものである。 3. 契約延長交渉 現在アブダビで操業する主要 3 社の権益構成を図 2 に示す。 60 年代に相次いで開発されたアブダビの油田は、 2010 年以降順次その 40 ~ 50 年間に わたる長期契約が更改の時期を迎える。 アブダビ陸上油田についての ADCO の権益は、 2014 年 1 月 14 日に終了する。 陸上油 田の生産量は現在全生産量の半分の約 120 万 b/d を占める。
ADCO の権益保持者は、ADNOC (アブダビ国営石油):60%、BP 9.5%、Shell 9.5%、Total 9.5 %、 Exxon Mobil 9.5%、 Partex 2% である。 ADCO を構成する IOC (国際石油企業) は、 権 益期限の 2014 年を延長することはこの増産計画等を達成するための投資インセンティブと達 成保障になるとしている。 ADCO の権益延長交渉は 2003 年に開始されたが、 現在も条件の 設定作業を行っている。 政府筋の一部は、 現在の条件では政府の考える生産拡大は困難で あると考えている。 IOC は、 現在既生産率 20% である同社鉱区の生産能力拡大は、 その契約条件によるとし ている。 現在の契約では 70 年代の決定により ADCO のマージンは 1 ドル/バレルに固定さ れており、 低油価時代には適切なものであったが、 現在の高油価のもとでは、 非現実的なも のとなっている。 また、 この定額制は、 会社側の投資に対してインセンティブのないものとなっ ている。ADCO の権利拡大交渉は 2005 年末から 2006 年初には一応の決着をみると言われる。
一方、 ADMA-OPCO と ZADCO を構成する IOC も、 ADCO の権益延長 ・ 契約更改交渉 の行方が重要関心事となっている。
ADMA の権益は 2018 年に失効する。 そのため、 IOC は生産能力拡大計画を限定的なも のとし、 政府との交渉を簡略化しようとしており、 政府の思惑とは異なっている。
最後になるが、 ZADCO への ExxonMobil の参入交渉が近々最終合意に達する見込みであ る。 2005 年 4 月に 2 年越しのメジャー 3 社によるアブダビ ZADCO 権益の取得合戦に一応の 決着がつき、 Shell、 BP をおさえて ExxonMobil が ZADCO 権益の 28% を ADNOC より取得す ることとなった。 ExxonMobil の参入は、 上部ザクム (Upper Zakum) 油田の開発で戦略的な パートナーとしてアブダビ政府 (SPC : 最高石油会議) によって選定されたものである。 同油 田については、現在の生産能力の約 50 万 b/d から 75 万 b/d への拡張が具体化するためには、 水攻法圧入水の恒常的なブレークスルーを止める必要がある。 このプロジェクトには、 高度な 技術と数十億ドルの投資が必要であるとされる。 一部情報には、 2010 年前後までに、 120 万 b/d に能力拡大をすると伝えられているが、 油層条件等の制約から非現実的な数値と思われ る。
60.00 60.00 88.00 60.00 9.50 14.67 9.50 28.00 12.00 12.00 12.00 9.50 9.50 13.33 0% 20% 40% 60% 80% 100% ADCO ADMA-OPCO ZADCO 同権益分割後 ADNOC BP ExxonMobil JODCO Partex RoyalDutch/Shell Total 2.00 図 2 アブダビ各社の権益構成 連している。 なお、 ZADCO における JODCO の 40 年間にわたる現在の権益は、 2018 年に 失効する。 4. まとめ アブダビの生産能力拡大計画が進展している。 ADNOC をはじめとした、 政府筋の発表は まちまちであり、 具体的な分析は困難である。 しかし、 本稿では、 各種の資料から油田ごとの 生産拡大計画につき、 具体性のあると思われる数値をもとに検討を試みた。 生産量の拡大は巨額の投資を必要としており、 2010 年以降に更改時期を迎える現在の契 約の更改条件如何に係わっている。 アブダビは、 日本への最大の原油供給国であり、 生産能力増強がわが国のエネルギーセ キュリティーに与える影響も大きい。 今後とも注視していく必要があると思われる。 (以 上) 【参考文献】 (順不同)
Arab Oil and Gas : 2005/8/16, 2005/9/1、 International Oil Daily : 2005/11/4 MEES : 2003/8/10
Adnoc Review - Stream to be opened : http://www.oilandgasnewsonline.com/bkArticlesF.asp?IssueID=298&Section=155 2&Article=12326
Abu Dhabi kick starts expansion race : http://www.zawya.com/story.cfm/sidZAWYA20050326060246 Some of the ongoing projects in the Persian Gulf Countries : http://www.oilrecruit.com/articles/ ADNOC In Expansion Mode : http://www.pipelinedubai.com/focus/adnoc1004.htm
Adco developing sixth oil field at Al Dabb'iya : http://www.adipec.com/index.cfm?fuseaction=News. Newsmain&newsId=248
UAE to double oil output by 2006 :