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実施報告書

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Academic year: 2021

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公益財団法人大林財団

奨励研究助成実施報告書

助成実施年度 2017 年度(平成 29 年度) 研究課題(タイトル) これからの人口 1,000 万人都市ヤンゴンにおける持続可能なマルチ センター型都心業務地区の配置に関する研究-東京の各都心業務地 区の比較考察による分析- 研究者名※ 大澤 四季

所属組織※ University of Florida, College of Design, Construction & Planning, Department of Urban and Regional Planning, Online Master of Urban and Regional Planning Course

研究種別 奨励研究 研究分野 その他 助成金額 50 万円 概要 ミャンマー最大商業都市ヤンゴンを対象に、現地フィールド調査と 企業アンケート調査を実施し国内トップ企業の本社所在地の分析を 行い、ヤンゴンにおける中心業務地区形成やそのエリア特性の分析 を試みた。ヤンゴンでは産業クラスターの傾向が見られるものの、 そのエリアが将来の中心業務地区となるとはいえないことが、企業 アンケート分析結果により示された。また調査結果から、今後ヤン ゴンにおける中心業務地区形成に重大な影響を及ぼし得る要因が明 らかになった。 発表論文等 ※研究者名、所属組織は申請当時の名称となります。 ( )は、報告書提出時所属先。

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1.研究の目的 産業クラスターの形成が知的産業発展の要、ひいては都市経済における地域間競争や大都市の グローバル・シティー化に寄与しているという議論がなされるようになってから久しい。中心業 務地区と呼ばれるエリアは都市における Agglomeration Economy の中心であり、都市経済のみな らず都市計画の観点からも中心業務地区に関する研究は活発である。 本研究では 2011 年に民政移管を果たし経済開放にかじを切ったミャンマーについて、その最 大商業都市ヤンゴンにおける国内企業所在地の調査分析を通して、長年の情報統制やデータの不 整備により全容の見えづらかったヤンゴンの中心業務地区の分析を行う。 産業クラスターおよび都心業務地区の形成は、地域経済のみならずヤンゴンの都市計画、ひい ては都市間競争の時代におけるヤンゴンの都市力に影響を与えうる重要な要素となることから、 都市研究の分野における研究の必要性も大きい。 国連開発計画委員会により後発開発途上国と認定されているミャンマーでは未だに知的産業 の集積や Agglomeration Economy が機能しているとは言い難いが、経済の黎明期における現在の 状況を研究成果として蓄積することにより、ミャンマー、ひいては後発国が情報社会成熟期にお いて今後どのように都市形成を進めていくのか、その先行研究として用いられることを目指すも のである。 2.研究の経過 1-1

Internal Revenue Department の発行する所得税申告額ランキングを用いてヤンゴンに本社を置 く国内企業のうち納税額 6 億チャット以上の企業計 152 社を国内トップ企業と定義し、研究対象 とした。 1-2 ArcGIS を用いて企業本社所在地をマッピングし、クラスター分析を行った。ミャンマーの住所 システムは通り名および家屋番号の記載があるのみであり住所情報のみでは正確な位置の特定を することができないため、現地調査を実施して目視により 152 社中 137 社の場所を特定し、Google Map を用いて各地点の緯度経度情報を記録しマップデータ化した。 図:ミャンマー国内企業本社社屋

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1-3 並行して、企業に現在の本社所在地選定理由に関 するアンケート調査を実施しその結果の分析を行 った。ミャンマーでは軍事政権時代の情報統制の 歴史やマーケット規模からか企業調査等への回答 文化や情報開示文化がなく、また回答報酬を要求 する企業も存在する。このため企業調査の実績の あるローカルの調査会社を利用し、現地言語にて 調査を実施した。調査票は東京における類似研究 の結果をベースに作成し、不動産仲介業者、現地 企業就労者等から成るフォーカスグループを実施 してミャンマー固有の特性を反映させた項目を追 加し、調査票を完成させた後、実際の調査用にミ ャンマー語に翻訳した。調査の結果、101 社から 回答が得られた。 図:使用した企業調査票 3.研究の成果 3-1 国内トップ企業の産業構成は、納税額ランキング上の 10 分類ベースで Trading が 47%、Services が 16%、Manufacturing が 14%の順で多く、製造業の未発達等によるエネルギーや建設資材、自動 車から食料生活雑貨等、輸入卸業の地域経済に占める割合の高さを反映している。本社所在地の エリア構成としては、2006 年に首都がヤンゴンからネピドーに移転するまで省庁が多く所在し、 移転後も引き続きヤンゴン管区の行政機関の多くが位置するダウンタウンエリアの 1 つ、

Lanmadaw Township が 14%と最も多く、次いで市街地と空港の中間に位置する Mayangone Township (13%), Hlaing Township (11%)と続いた。

3-2

ArcGIS の Average Nearest Neighbor 分析を用いたクラスター分析では、z 値-10.114220 (<-2.58, p 値 0.000000)により国内トップ企業本社所在地にクラスター傾向があることが確認で きた。さらに Anselin Local Moran`s I statistic を用いた Optimized Outlier Analysis によ り、当該クラスターをヤンゴンの地図上にマッピングしたところ、137 社中 70 社が High-High Cluster および High-Low Cluster が観察されたエリアに位置し集積していることが観察された。 エリアとしては、ダウンタウンの Lanmadaw Township (31%)と Kyauktada Township (10%)、次い

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で Sanchaung Township (10%)の 3 つのタウンシップで全体の過半を占めた。 3-3 本社所在地選定理由の調査では、回答企業 の 99%が自己所有物件であり、立地選定の決 定権は 98%が創業者、オーナーないし株主と いう結果が得られた。また 82%は会社設立以 来本社を移転していないとの回答が得られ た。本社社屋の築年数は築 20 年超が 60%、 うち 30 年超と答えた企業は 12%だった。 本社所在地を現在の場所に選定した理由 (複数回答可)としては、「従業員の通勤に 便利な場所だから」が最多で 60%を占めた。 他に「行政機関へ近い(39%)」、「主要道路 へ近い(29% )」、「オーナーがその場所を気 に入った(27%)」も多くの回答を得た。 一方で、ミャンマーに特有といわれるパゴダ の眺望や占い師の助言といったスピリチュ アルな理由、またコスト削減等の財務会計に 関する理由はほとんどの企業が選択しなか った。 3-4 2011 年に民主化移行による経済改革を開 始して以降、外資の流入増加や国内のビジネ ス環境整備に向けた動きが活発化している ものの、これまで都市経済機能の空間的中心 軸としての中心業務地区形成の傾向につい て具体的に焦点をあてた研究は存在しなか った。 今研究の結果、ヤンゴンにおける中心業務 地区形成の動きはまだ黎明期といえるが、そ うした状況の中でも行政機関が集積するダ ウンタウンエリアの Lanmadaw Township や旧 来商業地として栄え地場の Wholesale 企業 が本社を構える Sanchaung Township におい て既に産業クラスターが存在することがわ かった。 一方で、ヤンゴンの本社オフィスの特徴と して、99%が自己所有であること、また 82%

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が会社設立以来本社移転を経験していない ことから、現在の産業クラスターは 2011 年以降の民主化や経済改革による不動産開発の活発 化や交通渋滞の深刻化、それに伴うエリア特性の変化を反映しているとはいえず、よって現在の 産業クラスターが今後中心業務地区として発展していくとは必ずしもいえない。 また、調査を通して明らかとなった企業の本社所在地選定理由の傾向から、本社社屋のうち 60% 以上の建物が築 20 年以上であり建物の老朽化が始まっていること、今後の製造業や保険・金融 等の知的サービス産業の成長により現在の Trading 業が半数を占める産業構成が大きく変化する であろうこと、不透明かつ十分に整備されているとはいえない現行の会計や税務制度が徐々に改 善されるにつれて自己所有一辺倒の本社オフィスの所有形態も多様化していくであろうこと、等 もミャンマー国内企業の本社所在地選定に影響を与える重要な要因として作用し、その結果ヤン ゴンにおける新たな産業クラスターや中心業務地区形成に影響を及ぼすことが予想される。 ヤンゴンに特有の傾向としては、企業本社所在地の選定理由で圧倒的に多かった回答が、従業 員の通勤の便のよさ(60%)であった。これは、ヤンゴンの大半の企業ではフェリーと呼ばれる、 ワンボックスカーを用いた乗り合い車で従業員を自宅近くの通りから会社まで輸送するシステ ムが主流であることにも関係していると思われる。この慣習は今後も継続すると想定され、今後 の企業の本社移転においてもこの点への重要度は引き続き高いと思われる。 4.今後の課題 当研究を通じて、ヤンゴンでは自己所有の本社オフィスがほとんどであることが明らかになっ たが、自己所有が多勢の場合、賃貸と異なりマーケットや経済状況の変化が本社移転に影響を受 ける度合いが減少する。このため、東京の都心業務地区分析に用いられるような手法をそのまま 適用することには限界がある。仮に賃貸が主流であったとしても、ミャンマーでは賃料相場等の 不動産マーケットデータが不足しており、十分な研究がしづらい。 加えて、データの不足という観点においては、クラスター分析で頻繁に用いられるエリア別従 業員数のようなデータが存在せず、従業員密度をベースにしたクラスター分析等が行えない。当 研究ではこうした制約により企業数単位でのクラスター分析を実施したが、これにより企業間の 規模の差を無視せざるを得なかった。 上記をはじめ、東京等と異なり未だ経済発展の黎明期にあるミャンマーで研究を実施すること の制約は多々あるものの、今回幾度にもわたる研究手法の見直しを経て企業の本社所在地に焦点 を当てた分析を行い、一定数の調査データの取得ならびにその分析を行えたことには意義がある と考える。今後、当研究の成果をもとに、近い将来生じるであろうヤンゴンにおける中心業務地 区形成の動きに関する研究、ひいては東京の都心業務地区との比較研究を継続的に進めていきた い。 参考文献: 大島洋一,安原淳,後藤春彦(2002)「企業本社の移転要因の分析から見た東京の主要なオフィ スセンターの特性と課題」『日本建築学会計画系論文集』第 560 号、pp245-252. 佐藤清一郎(2017)「納税ランキングに見るミャンマーの企業活動」大和総研 東南アジア経済

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森記念財団(2018)Global Power City Index 2018 Summary

Florida, R. (2003) Cities and the creative class. City & community 2:1.

Huynh, D. (2014) The effects of clustering on office rents: empirical evidence from the rental office market in Ho Chi Minh City. Theoretical and empirical researches in urban management. Volume 9 Issue 1

Internal Revenue Department of Myanmar (2017). 2017-2018 所得税高額納税者ランキング(ミ ャンマー国内企業)

Sassen, S. (2001) The Global City: New York, London, Tokyo. Princeton University Press. Slaper, T., Harmon, K. and Rubin, B. (2018). Industry clusters and regional economic

performance: a study across U.S. metropolitan statistical areas. Economic Development Quarterly Vol. 32 (I) pp44-59

参照

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