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Vol. 141, No. 2 YAKUGAKU ZASSHI 141, (2021) 207 病院内における薬剤 医療機器間の相互作用に関する情報管理の課題 中村浩規 Symposium Review Current Issue of Information Management

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東北公済病院薬剤科(〒9800803 仙台市青葉区国分町 2311)

e-mail: hironori@tohokukosai.com

本総説は,日本薬学会第 140 年会シンポジウム S28 で 発表した内容を中心に記述したものである.

2021 The Pharmaceutical Society of Japan ―Symposium Review―

病院内における薬剤・医療機器間の相互作用に関する情報管理の課題

中 村 浩 規

Current Issue of Information Management about Pharmaceutical

and Medical Device Interaction in Hospital

Hironori Nakamura

Department of Pharmacy, Tohokukosai Hospital; 2311 Kokubun-cho, Aoba-ku, Sendai 9800803, Japan.

(Received August 27, 2020)

Contact between plastic medical devices and medicine causes damage to the medical device and liquid medicine leakage because of physicochemical reactions. These phenomena are listed as contraindications and precautions on in-dividual package inserts of medical devices and drugs; medical device package inserts draw attention to such as interac-tions. We carried out a questionnaire survey of medical-, drug-, and device-safety managers in hospitals that examined the management system for medical device package inserts, responsibility for dealing with the occurrence of drug and medical device interactions, and at desirable system to avoid such occurrence. Drug package inserts are managed by pharmacists. The medical device package inserts are managed mainly by the device safety managers, as well as by other personnel, including the clinical engineer, doctor, nurse, and clinical radiographer. The survey conˆrmed that interac-tions occurred at many phenomena; the procedure involved detailing such occurrences by various medical staŠ to a medical-safety manager in an incident report. Our study revealed that there were many problems with the package in-serts management system for medical devices. Cooperation between safety managers within hospitals is necessary to avoid such incidents.

Key words―interaction; drug; medical device; medical safety

1. はじめに 医療が急速に進歩する中で,多種多様な医療機器 が開発,販売され,新しい治療方法や手技の増加に 相まって操作も煩雑となっている.シリンジや輸液 セットに代表される注射薬の調製や投与に使用する 医療機器は薬物療法を実施する上で不可欠である が,これらの材質のほとんどは,プラスチックであ る.薬剤と医療機器を併用するとき,薬剤成分と医 療機器の材質との接触により物理化学的な変化によ る医療機器の劣化,破損,1)閉塞,2)可塑剤溶出,3) 薬剤の吸着4,5)等の事象が知られており,薬剤の添 付文書には使用上の注意等,医療機器では相互作用 等に記載され,注意喚起がされている. 一方,病院内のインシデントレポートでは,医薬 品添付文書に指定されたフィルター等の未装着や不 適切な装着以外にも薬剤との接触によるプラスチッ ク製医療機器のヒビ割れ(クラッキング)や破損等 も報告されている.その報告者は発生要因が薬剤の 影響とは認識できずにチューブ・ドレイン関連のイ ンシデントとして報告することも少なくない.ま た,使用者自らが不適切使用と認識できない場合, 直接,製造販売業者に対して不具合事例として問い 合せることも多く,製造販売業者から要因解析の報 告を受けて初めて認識する場合が見受けられる.す なわち,これらのインシデントの発生は,薬剤に含 まれる薬効成分や添加剤が医療機器の材質に与える 影響や,医療機器の構造上の問題だけでなく,使用 者の理解不足や製造販売業者の周知不足等が大きな 要因であると推察される. このことは薬剤が医師の指示の下,適切に調剤や 混合調製されても投与段階で医療機器の選択ミスや 不適切な使用により薬剤の適正使用が阻害され,重 大な有害事象を招く可能性を示唆している.

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Table 1. Combinations and Phenomena for Interactions Alerted as Contraindications and Precautions on the Package Inserts of Medical Devices and Drugs

Drugs Medical devices Phenomenon Package insert

Drugs Devices Properties containing alcohol,

insolubility additive, surfactant, and lipid microsphere

Plastic device made of PC,

PMMA, ABS Liquid elution, degradation of device(crack, racing) ◯ ◯

Insolubility properties Infusion sets made of PVC Elution of plasticizer (DEHP) from device ◯ ◯ Etoposide infusion Catheter made of polyurethane Elution of plasticizer from device, and crack ◯ ◯ Surface anesthetic spray

contain-ing ethanol Tracheal tube made of PVC Pinhole by ethanol ◯ ◯

Ointment containing vaseline Tracheal tube made of PVC Shrunk and hard of tube by elution of plasticizer (DEHP)

Insulin, G-CSF, midazolam,

nitroglycerin injection, etc. Infusion sets and bag made ofPVC Adsorption of ingredient to set and bag ◯

Rifampicin Contact lens Coloring of contact lens by rifampicin ◯

PC: polycarbonate, PMMA: polymethyl methacrylate, ABS: acrylonitrile butadiene styrene, PVC: polyvinyl chloride, DEHP: Di(2-ethylhexyl)phthalate, G-CSF: granulocyte-colony stimulating factor. These data were cited from J. Jpn. Soc. Hosp. Pharm., 51(9), 10451063 (2015).

医療機器の適正使用情報は添付文書や取扱説明書 に使用薬剤への注意事項や使用条件等に記載されて いるものもあり,使用者が事前に把握して使用時の ルールの確立や製品自体の採用の見直し等が行われ ていれば,患者への重大な影響を未然に回避できる 可能性がある. そこで,相互作用を未然に回避することを目的 に,薬剤と医療機器の相互作用の発生状況と情報共 有方法の現状を調査し,相互作用に伴う不適正使用 を防止するための情報提供のあり方を検討した. 2. 薬剤・医療機器との相互作用 薬剤と医療機器の相互作用の組み合わせについて は,両者の添付文書に記載されており,医薬品医療 機 器 総 合 機 構 ( Pharmaceuticals and Medical Devices Agency; PMDA)や医療機能評価機構の医

療安全情報等でも注意喚起されている.Table 16) に,その組み合わせと事象を示すが,いずれか一方 の記載しかない場合がある.ワセリン基剤の軟膏に よるポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride; PVC)製 気管切開チューブについては後述する事例が報告さ れるまで,医療機器添付文書には記載がなかった. また,相互作用情報が双方の添付文書に記載されて いるものの,医療機器添付文書に記載されている薬 剤の添付文書に注意喚起されていないものがあっ た.すなわち,相互作用事例の発生を防止するため には,双方の添付文書を見比べながら,組み合わせ を可能な限り広く情報収集して,注意喚起する必要 がある.このことは,双方の製造販売会社が情報を 共有して添付文書に記載することが必要であること を示している. 3. 添付文書における相互作用の記載状況 医療機器の部品には様々なプラスチックが使用さ れている.ポリカーボネート(polycarbonate; PC) は接続プラグや三方活栓等のプラスチック製品だけ でなく人工透析機器のような精密機器の部品にも使 用されている.PC は,脂肪乳剤やアルコール等の 有機溶剤との持続的な接触により劣化することが知 られており,医療機器の添付文書には薬剤が通過す る部品以外の PC 部品にも注意が必要と記載されて いる.したがって,使用者は相互作用が発生する恐 れのある箇所を認識しておかなければならない. そこで,相互作用で注意喚起されている製品につ いて探索するため,PC 製品と PVC 製品を例に医 薬品,医療機器双方の添付文書の相互作用記載状況 について調査した.調査は PMDA 医療機器添付文 書検索ホームページから検索,抽出した. 3-1. PC 製医療機器 医薬品添付文書におい て PC で検索すると Table 2 に示すように 61 製品 が抽出され,そのすべてが適用上の注意に PC 製医 療機器に影響を与える因子として脂肪乳剤や溶解補 助剤等が記載されている.しかし,注射用イホス ファミドについては PC に影響を及ぼすような添加

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Table 2. Drugs Alerted on the Package Inserts of Polycarbonate Medical Devices for the Occurrence of Interactions

Drugs Number Properties or additives

Propofol Intravenous Injection 8 Lipid microsphere

Aminophylline Injection 14 Ethylenediamine

Alprostadil lipid microsphere injection 21 Lipid microsphere

Lipid microsphere injection 2 Lipid microsphere

Enteral nutrition 2 Lipid microsphere

Etoposide injection 6 Surfactant (polysorbate 80)

Monoethanolamine oleate injection 1 Benzyl alcohol

Ciclosporin infusion 1 Dissolution adjuvant (polyoxyethylene castor oil)

Miconazole infusion 1 Dissolution adjuvant (polyoxyethylene castor oil 60)

Busulfan injection 1 Surfactant (polyethylene glycol, dimethyl acetamide)

Miriplatin arterial injection 2 Ethyl ester of iodinated poppy-seed oil fatty acid

Flurbiprofen axetil injection 1 Lipid microsphere

Ifosfamide injection 1 Nothing

These data were cited from J. Jpn. Soc. Hosp. Pharm., 51(9), 10451063 (2015).

Table 3. Number of Medical Devices, Including Those Made of Polycarbonate, Alerted on the Package Insert for the Occurrence of Interactions with Drugs

Drugs and adjuvants Fulltext

Precautions concerning use Precautions for handling

Warnings Contraindications Precautions precautionsImportant Interaction Combined use Contraindication Attention Lipid microsphere 453 310 39 119 8 281 0 45 15 30 Alcohol 628 573 129 144 32 331 1 46 14 32 Surfactant 319 310 10 9 3 269 0 30 0 30 Dissolution adjuvant 322 307 10 10 3 251 0 35 3 32

These data were cited from J. Jpn. Soc. Hosp. Pharm., 51(9), 10451063 (2015).

剤を使用されていないことから主薬の影響と推察さ れるが,インタビューフォームにも化学的考察に関 する記載はなかった. 一方,PMDA の医療機器添付文書検索におい て,“ポリカーボネート”と“脂肪乳剤または添加 剤”とを掛け合わせて抽出された医療機器数を Ta-ble 3に示す.全文検索すると 1105 製品が抽出され た.また,医療機器添付文書で PC と脂肪乳剤を キーワードとして掛け合わせた場合には 453 製品が 抽出された.添付文書中の記載箇所については,使 用上の注意では警告から重要な基本的注意まで,取 扱上の注意では相互作用から併用注意まで,製品に より記載箇所が異なっていることが分かった.この うち,警告欄に脂肪乳剤の使用に関する記載がある PC製品 39 品目について精査したところ,人工心 肺装置や遠心ポンプ,それに接続する血液回路用 チューブ接続用コネクタ等,生命維持に直結する医 療機器が抽出された.これらの医療機器では,装置 の構造部分だけでなく医療機器への接続用部品の三 方活栓等に PC が使用されていた. 3-2. アルカリ性薬剤 Table 2 に示すように アミノフィリン(pH 10 程度)のような強アルカリ 性の薬剤にも医療機器との相互作用について注意喚 起されている.薬価収載医薬品情報データベース7) から pH 8 以上の強アルカリ性注射剤を抽出すると, 108 品目の製剤が該当し,pH 10 以上は 23 製剤で

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あった.そのうちエポプロステノールとフェニトイ ン注の 2 製剤は pH 12 以上であった.すなわち添 付文書ではアミノフィリン製剤にしか注意喚起され ていないが,これらの強アルカリ性注射剤について は注意が必要であることを示唆している. 一方,医療機器側でも添付文書にアルカリ性薬剤 との相互作用について注意喚起されている製品があ る.これらの医療機器は,いずれも三方活栓と雌型 コネクタに PC 製を使用している製品であった. 3-3. 軟質塩化ビニル製医療機器 軟質 PVC 製品から可塑剤を溶出させる薬剤を添付文書から検 索し,成分等から分類・整理した.界面活性剤やダ イズ油を含む 18 種類の薬剤については,軟質 PVC 製品から可塑剤溶出に関する注意喚起の記載があっ た. 4. 医療機関における相互作用発生時の対応 病院内における医療機器の情報管理体制,代表的 なプラスチック製輸液セットと薬剤との相互作用の 認識度及び経験事例等の現状を調査した.調査で は,宮城県内病院から 143 名に加えて,全国調査と して国公私立大学病院,国立病院機構病院,国家公 務員共済組合連合会病院の医療安全管理者及び医薬 品と医療機器の各安全管理責任者に加えて医療の質 安全学会会員にもご協力を頂き,212 名から回答が あった. 4-1. 相互作用事例 以下に回答者から報告さ れた具体的な事例を示す. 事例 1;トリプルルーメンにより CV 挿入中の患 者でライン交換の際,投与中の薬剤を一時的に停止 させるために患者側の点滴ラインを金属鉗子で挟む 際に,イソプロパノール含有酒精綿を挟み込んだ. 新しいラインに交換後,鉗子をはずして点滴を開始 したところ,挟み込んだ部分が破損して血液が漏出 していた.点滴ラインの添付文書の使用上の注意に は「アルコールと接触させない」との記載があるが, 実施した看護師は,このことを知らなかった. 事例 2;入院患者で緊急 CT 造影が必要となり当 直帯のため救急部 CT 室で撮影することとなった. 病棟では患者の血管が細くて血管確保が困難だった ため通常よりも細い注射針で穿刺されていた.さら に延長チューブを経由していたことから,注入速度 を調節し,逆血,疼痛の有無を確認しながら慎重に 注入することとなった.造影剤注入開始したところ 延長チューブが破裂した.延長チューブの破裂は, 薬剤の粘性による内圧上昇に耐えらなかったのが要 因と考えられた.使用したチューブの添付文書には 「インジジェクターを使用した造影剤の高圧注入は 使用不可」の注意文が記載されており,事前に周知 されていれば防止できた可能性がある.一方,造影 剤の添付文書にも注意文の記載があれば,防止でき た可能性があったと考えられる. 事例 3;訪問看護師から人工呼吸管理を行ってい る在宅患者の気管切開チューブ(以下,気切チュー ブ)が抜けたが,チューブが変質している気がする と安全対策室に報告があった.製造販売業者に報告 して,原因究明を依頼したところ抜けた気管チュー ブには硬化と先端部分の縮小が認められ,先端部分 では可塑剤が流出していることが要因との報告が あった.気切部周囲には肉芽治療を目的にステロイ ド軟膏を使用しており,軟膏の付着による影響と考 えられた.この現象は薬剤,医療機器双方の添付文 書に記載がないため,同成分の軟膏でワセリン基剤 の有無で検証したところ,ワセリンを含まない軟膏 では,このような現象は認められなかったことか ら,ワセリン中に可塑剤が溶出したことが考えられ た.8)このことは脂溶性に富む外用剤を軟質 PVC 製品との接触が想定される部位に塗布するときに注 意が必要であることを示している.その後,気切チ ューブの該当製品の添付文書が改定された. 4-2. 相互作用発生状況 相互作用の発生事例 としては,212 名のうち 75 名から回答があり,全 回答者の 35%が経験者であった.回答者が経験し た組み合わせと,その件数を Table 4 に示す. 要因となった薬剤は脂肪乳剤が 42 件と最も多 く,そのうちプロポホールが 15 件であった.医療 機器では,三方活栓に関する報告が 52 件あった. 三方活栓や接続プラグのひび割れや,それによる液 漏れは薬剤の接触が原因となる代表的な組み合わせ として知られているが,脂肪乳剤では約 30%,ア ルコールでは 20%の回答者が添付文書に記載され ている相互作用として認識していなかった.近年, 迫田らは,消毒用アルコールが PC に大きな影響を 及ばさない可能性があることを報告した.9)PC 破損は,アルコール清拭ではなく,投与中の薬液や その他の使用状況による影響に由来する可能性があ ることも指摘されていることから,引き続き注意が

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Table 4. Cases of Interactions between Drugs and Medical Devices Reported in the Questionnaire

Drugs Properties Medical devices Phenomenon

Alcohol (30) Disinfection alcohol (30) Three-way stopcock (20),

Connecting plug, connector (10), CV tube (2), Centrifugal pumps (1), Epidural continuous infuser ˆlter (1)

Liquid elution, Degradation of device, Crack

Lipid microsphere(42) Propofol intravenous injection (15)

Three-way stopcock (13),

Connecting plug (2), Injection tube (1)

Liquid elution

Intralipos(6), Intrafat(1), Flurbiprofen axetil injection (1), Unidentiˆed (19)

Three-way stopcock (7),

Connecting plug (3), Injection tube (2), Infusion pump(1), Hemodialyzer (1)

Leakage, Crack

Anticancer drug (5) Paclitaxel (1),

Etoposide injection (1), Busulfan injection (1), Unidentiˆed (2)

Injection tube with ˆlter (4), CV port (1), Connecting plug (4), Three-way stopcock (1) Leakage (2) Immunosuppressive drug (3) Ciclosporin infusion (2), Tacrolimus injection (1) Three-way stopcock (2),

Connecting plug (1), Injection tube (1)

Alkaline (4) Epoprostenol injection (3),

Phenobarbital injection (1)

Injection tube (1), Connecting plug (1) Leakage

Vaseline (1) Azunol Ointment(1) Tracheal tube (1) Secession of tube

Others (3) Epidural anesthesia drug (1),

Catecholamine (1), Nitroglycerine (1), Albumin, NovoSeven(2)

Three-way stopcock (1),

Connecting plug (1), Injection tube (1), IV connecter (1)

Povidone-Iodine (3) Povidone-Iodine (5) Three-way stopcock (1),

Connecting plug (1), Injection tube (1)

Unidentiˆed 必要である. また,強アルカリ性薬剤相互作用については 4 件 報告された.溶解液が強アルカリ性(pH 12)のエ ポプロステノールが 3 件,フェノバルビタール注射 剤が 1 件であった.フェノバルビタール製剤では添 加物有無の 2 種類があり,無添加の方が pH 10 と アルカリ性が強く,より注意が必要である.7)なお, PC 製品では,脂溶性薬剤や強アルカリ性薬剤が製 品成形時に残存する歪み部分に影響を与えることが 要因となっていることが迫田らの研究により判明し ている.9) PVC製品とアルコールや界面活性剤を含む薬剤 や脂肪乳剤については,PVC に含まれる可塑剤の 溶出が知られており,回答者の約 90%が知ってい た.しかし,前述の事例 3 のように新たな組み合わ せが報告されたことから,輸液セット以外の PVC 製品についても脂溶性薬剤との接触には注意が必要 である. 4-3. 病 院 内 に お け る 相 互 作 用 発 生 時 の 対 応 相互作用事例が発生した場合は,要因が理解でき なければ医療機器側の不具合と見なされがちであ る.また,薬剤投与が適切に投与されなかったとし てインシデントレポートとして報告されると予想さ れるため実態を調査した. 事例発生時の望ましい報告先は,医療安全管理者 や上司,部署内への報告が約 70%であり,ついで 薬剤,医療機器ともに製造販売業者であり,薬剤部 や医療機器管理責任者への報告は約 50%であっ た.しかし,実際の事例経験者では,70%が医療安 全管理者に報告し,製造販売業者や院内の薬剤部や 医療機器安全管理責任者への報告は 50%以下で あった.一方,院内周知方法としては,医療安全対 策会議において報告されているとともに文書や院内 の電子掲示板が利用されている.このことは,発生 時の第一報がインシデントレポートとして医療安全 管理者に報告され,医療安全対策会議を通じて院内

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周知されていると考えられる. しかし,代表的な組み合わせである PC 製閉鎖式 接続プラグや三方活栓と脂溶性の高い薬剤との相互 作用の認識率が約 60%であったことから,経験豊 富な医療安全管理者でも残りの 40%が相互作用の 認識や経験がない.すなわち,医療安全管理者が製 造販売業者への照会や薬剤部,医療機器安全管理責 任者への報告により原因を究明することを怠れば, 見過ごされて再発防止策を講じない可能性があるこ とを示唆している.これらの結果から適正使用を確 保するためには,病院内における相互作用に関する 情報管理と周知体制の確立が重要であると考えられ る. 5. 医療機器の情報管理 相互作用を未然に防止するには,医薬品,医療機 器双方の安全管理責任者から継続的に使用者に情報 提供と注意喚起することが重要と考える. 一般に薬剤の添付文書や適正使用情報は医薬品安 全管理責任者の下で薬剤師が管理しており,適宜, 情報提供できる体制が確立されている.一方,医療 機器添付文書については,医療機器安全管理責任者 が管理するとされている.そこで,適正使用情報の 基本情報である添付文書について院内の管理実態を 調査した. 5-1. 医療機器の認識度 使用者が医療機器と 認識していなければ,医療機器の不具合,ましてや 相互作用事例を見逃す可能性がある.そこで,様々 な医療機器(17 種類)の認識度について調査した ところ,中心静脈カテーテル,薬剤溶出ステント, 人工血管等の認識度は約 90%で,ブタ心臓弁,コ ラーゲン使用人工皮膚は約 70%であったが,カ ラーコンタクトレンズ(47%),家庭用マッサージ 機(27%)等の一般医療機器の認識度が低かった. 一方,調剤用散薬分包機や電子カルテを医療機器と して誤認していた.このことから医療機器の範囲の 周知が必要である. 5-2. 医療機器に関する情報管理状況 医療機 器の適正使用情報の基本情報は添付文書であるが, 使用者が医療機器として認識しなければ,不具合発 生時でも添付文書情報を確認する可能性は低いと思 われる. 添付文書の入手先を探ると,主な入手先は製品包 装内(77%),PMDA 検索ホームページ(61%), 製造販売業者等(54%)からで,医療機器安全管理 者からの入手は 13.7%であった.その管理者は, 70%が臨床工学技士と最も多く,ついで医療機器安 全管理責任者が 40%であった.そのほかにも看護 師,放射線技師,在庫管理委託業者等であり,管理 者不明も 13%あった.管理している職種も幅広く 一元的に管理されているとは思えなかった. このことは医療機器が人工心肺装置のような精巧 な医療機器から内視鏡,人工血管,眼内レンズ,シ リンジに至るまで形状,性質,用途は多種多様で, さらに専門性が高く,使用者も多職種であるためと 考えられる.また,医療機器には,薬剤の院内採用 薬の情報を瞬時に検索するような情報管理ツールの 導入も進んでいない.さらに,医療機器管理責任者 の多くは臨床工学技士,臨床放射線技師が就いてい るが,サポートする部署内の人員が少なく,添付文 書を一元的に管理することは容易なことではないた め,情報を整理して周知することも困難であり単独 で情報管理するには限界があると考える. 5-3. 望ましい医療機器添付文書管理体制 こ のように,相互作用に起因する不具合発生を回避す るには,まず医療機器の情報管理体制の確立が急務 と考えられた.医療機器の添付文書や安全性情報に 関する望ましい管理体制については,医療機器安全 管理責任者が担当すべきであるとの回答が 80%を 占めた.また,情報管理体制としては,機能・構造 別に責任者を設けて全体を医療機器安全管理責任者 が統括することが望ましいとの回答が 50%であっ た.すなわち,医療機器安全管理責任者の配下に機 能,構造別の責任者を設けて情報管理する組織の構 築が望ましいと考えていることが明らかとなった. 6. おわりに 医療機関を対象とした調査から医療機器添付文書 管理体制,情報共有システム,各責任者間の連携体 制が確立されていない等,現状の問題点が浮き彫り になった. 相互作用が発生する要因の 1 つとして,使用者の 認識不足が挙げられるが,組み合わせが多種多様な ため,相互作用に起因する不具合発生を回避するた めには,医薬品及び医療機器双方の適正使用を徹底 するとともに医療安全管理者を中心とした情報共有 体制を構築することが急務である.特に医療機器の 情報管理体制については,喫緊の課題と考える.

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そこで今回の結果から,医療機関内における事例 発生から情報収集,周知までの情報管理体制のあり 方,及び院内採用されている医療機器の情報管理体 制のあり方について以下のように提案する. 病院内における相互作用に関する情報管理体制の あり方 ◯  発生時は速やかにインシデントレポートとし て医療安全管理者に報告する. ◯  発生事例の管理者は医療安全管理者とする. ◯  医療安全,医薬品,医療機器の各管理者が事 例情報を共有し,必要に応じて要因を解析して 対策を立案する. ◯  院内への周知は,医療安全対策会議での報告 だけでなく,文書や電子掲示板等を用いて発生 事例や対策について広く周知する. ◯  現場のスタッフが現場で継続的に注意する対 策を講じ,定期的に院内研修会を開催する. ◯  管理者は発生事例に応じて製造販売業者だけ でなく PMDA や医療機能評価機構に報告する. 医療機器の情報管理体制のあり方 ◯  医療機器安全管理責任者を長とし,各職種か ら選任された管理委員会を組織する. ◯  医療機器添付文書等の適正使用情報は機能, 構造別に責任者を設けて管理する. また,自院の相互作用発生事例を他の医療機関に 広く周知し,注意喚起するには医薬品,医療機器, それぞれの製造販売業者及び行政や PMDA 等へ積 極的に報告することも重要である.しかし,医療機 関から薬剤の副作用情報と医療機器の不具合情報 は,別々のルートで PMDA,行政に報告されてい る.また,相互作用発生事例がインシデントレポー トとして報告されれば医療機能評価機構に報告され ることが想定されることから,行政側で発生情報を 効率的に集約することが必要と考える. 今回の結果から相互作用に起因する不具合発生事 例への対応については,薬剤と医療機器双方の情報 共有が不可欠で,医療機関から行政まで,一体と なった情報共有体制の構築が不可欠と考えられた. 謝辞 本論文の作成にあたり,研究分担課題代 表者の藤盛啓成先生(東北大学病院),研究協力者 の鮎澤純子先生(九州大学),佐藤景二先生(市立 静岡病院),嶋森好子先生(岩手医科大学),杉浦伸 一先生(同志社女子大学),眞野成康先生(東北大 学病院)に深謝申し上げます. 利益相反 開示すべき利益相反はない. REFERENCES

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