黒球温度の観測は、気象庁の協力のもと、気象庁の観測露場の一部を借用し、観測機材を設置し観 測を実施した。 加えて、WBGT 実測値の提供内容の充実を図り、都心部と郊外の WBGT を比較するため、練馬 (住宅地)、八王子(市役所)に観測装置を新設した。 「アメダス八王子」には、黒球温度計を新しく設置し、気温のデータはアメダス八王子(気象庁) の観測値、湿度と気圧については、八王子市役所の観測データを用いて「暑さ指数」を求めた。「ア メダス練馬」には、黒球温度と湿度計を新しく設置し観測を行い、気温のデータはアメダス練馬(気 象庁)の観測値、気圧については最も近い東京(気象庁)の観測値を用いて、「暑さ指数」を求めた。 八王子市役所の観測機器はアメダスの観測機器とほとんど差がなく、「暑さ指数」は他の地点と同 じ精度で観測された。練馬の湿度は自然通風型のシェルターの中で観測しているため、弱風時には 湿球温度に若干の誤差が観測された。また、東京(気象庁)の気圧データを用いることにより生ず る誤差はほとんどない(詳細は3章に記述) 観測を実施した都市および観測地点の位置等を表2-1 に示す。なお、WBGT 観測方法(通風条件・ 黒球温度計の半径)の違いによる WBGT・気温・湿度の違いを比較するため、通常型と簡易型の WBGT 計による並行観測を東京・広島・福岡において実施した。観測に用いた機材の仕様等は表 2-2 に示すとおりである。 気象観測機器の取り付け方法は、気象庁観測指針(資料 B に関連する部分を抜粋、あるいは、 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/Tebiki.pdf を参照)に従い、標準型黒球 温度の径・取り付け方法については、Yaglou(1957,資料 B-2)および気象庁観測指針に準拠し、以 下のとおりとした。 ・ 地表面状態は芝生面 ・ 気温・湿度の観測は気象庁の観測基準に準拠し、日射・輻射を遮った芝生面上、強制通風状 態(通風口の高さは 1.5m)で計測 ・ 黒球温度の観測は Yaglou の用いた 6 インチ黒球温度計により芝生面上の高さ 1.5m で計測(黒 球は日射・反射・輻射が十分に入射するよう、周囲の構造物やシェルターなどから離し、ア ームの先に設置する場合はアームの方向を南とする) なお、WBGT を計測する際には観測条件により観測値に差が生じることから、 (A) 表面状態(芝・コンクリート・砂など) (B) 黒球温度計の直径、設置の高さ (C) 乾球温度・湿球温度の観測方法(自然通風か強制通風か、直達日射をどのように遮蔽して いるか、センサーおよびシェルターの種類) について明示することが重要である。 また、各観測地点の所在地などを地点整理票として図 2-1 に示した。
広島 広島地方気象台 34°23.7’ 132°27.9’ 4m 気温・湿度・2 inch 黒球温度 福岡 福岡管区気象台 33°34.8’ 130°22.6’ 3m 6 inch 黒球温度 気温・湿度・2 inch 黒球温度 八王子 アメダス八王子 35°39.8’ 139°19.2’ 123m 6 inch 黒球温度 練馬 アメダス練馬 35°44.0’ 139°40.2’ 38m 6 inch 黒球温度・湿度
○観測装置の使用環境条件等 黒球温度計(標準型) WBGT 計(簡易型) 湿度計 記録計 温度 1ch 温度 2ch・湿度 1ch 湿度 1ch 気温・黒球温 度センサ 白金測温抵抗体(4 線式) 気象庁検定付 サーミスタ - 湿度センサ - 抵抗変化型 静電容量式 通風筒 - 自然通風筒 自然通風筒 黒球温度計 6インチ型 2インチ型 - 電源 AC 商用電源または太陽電 池パネル AC 商用電源または太陽電池 パネル 太陽電池パネル ○観測装置の使用環境条件等 a. -20℃~+50℃の温度条件下において正常に動作すること。 b. 記録計は屋外設置を考慮した防塵・防滴筐体収納し固定すること。 c. ポールはワイヤ等で固定し、最大風速 60m/s の風速にも耐える取り付け方法を講じるこ と。 d. AC100V 商用電源、および 30W 太陽電池パネル電源で動作可能なものとし(通信・通風ファ ン含む)、1 日以上の計測が可能な電源バックアップを有すること(本体メモリー、時計は 1 年 以上のバックアップ)。
備考 気温・湿度は二重管シェルター内、 強制通風 ○地理情報 所在地 東京管区気象台 東京都千代田区大手町 1-3-4 位置 北緯: 35°41.2’ 東経:139°45.9’ 標高 7m ○地理的状況 下記のとおり(地図はアルプス社提供 Yahoo!地図情報より) 図 2-1(a) 観測地点整理票(東京)
―8― 観測頻度 全日、夏期のみ 備考 気温・湿度は二重管シェルター内、 強制通風 ○地理情報 所在地 新潟地方気象台 新潟市幸西 4-4-1 位置 北緯: 37°54.6’ 東経:139°03.1 標高 2m ○地理的状況 下記のとおり(地図はアルプス社提供 Yahoo!地図情報より) 図 2-1(b) 観測地点整理票(新潟)
―9― 備考 気温・湿度は二重管シェルター内、 強制通風 ○地理情報 所在地 名古屋地方気象台 名古屋市千種区日和町 2-18 位置 北緯: 35°10.0’ 東経:136°58.1’ 標高 51m ○地理的状況 下記のとおり(地図はアルプス社提供 Yahoo!地図情報より) 図 2-1(c) 観測地点整理票(名古屋)
―10― 観測頻度 全日、夏期のみ 備考 気温・湿度は二重管シェルター内、 強制通風 ○地理情報 所在地 大阪管区気象台 大阪市中央区大手前 4-1-76 位置 北緯: 34°40.7’ 東経:135°31.3’ 標高 23m ○地理的状況 下記のとおり(地図はアルプス社提供 Yahoo!地図情報より) 図 2-1(d) 観測地点整理票(大阪)
―11― 備考 気温・湿度は二重管シェルター内、 強制通風 ○地理情報 所在地 広島地方気象台 広島市中区上八丁掘 6-30 位置 北緯: 34°23.7’ 東経:132°27.9’ 標高 4m ○地理的状況 下記のとおり(地図はアルプス社提供 Yahoo!地図情報より 図 2-1(e) 観測地点整理票(広島)
観測頻度 全日、夏期のみ 備考 気温・湿度は二重管シェルター内、 強制通風 ○地理情報 所在地 福岡管区気象台 福岡市中央区大濠 1-2-36 位置 北緯: 33°34.8’ 東経:130°22.6’ 標高 3m ○地理的状況 下記のとおり(地図はアルプス社提供 Yahoo!地図情報より 図 2-1(f) 観測地点整理票(福岡)
備考 気温・湿度は二重管シェルター内、 強制通風(気温はアメダス八王子、湿度は八王子市役所観測データを使用) ○地理情報 所在地 アメダス八王子(八王子市役所) 東京都八王子市元本郷町 3-24-1 位置 北緯: 35°39.8’ 東経:139°19.2’ 標高 123m ○地理的状況 下記のとおり(地図は Yahoo!地図情報より) 図 2-1(g) 観測地点整理票(八王子)
アメダス八王子
センサーの高さ 1.5m(芝面上) 観測頻度 全日、夏期のみ 備考 気温は二重管シェルター内、強制通風 ○地理情報 所在地 アメダス練馬(武蔵高校) 東京都練馬区豊玉上 1-26 位置 北緯: 35°44.0’ 東経:139°40.2’ 標高 38m ○地理的状況 下記のとおり(地図は Yahoo!地図情報より) 図 2-1(h) 観測地点整理票(練馬)
アメダス練馬
名古屋 5/21、10/23 大阪 5/21、7/23、10/23 広島 5/22、6/10、7/6、7/16、10/26 福岡 5/22、5/25、7/16、10/26 八王子 5/27(現地調査)、6/18、10/22 練馬 5/27(現地調査)、6/18、11/17 表 2-4 観測機材ほかの障害記録 地点 障害内容 広島 障害の期間 平成 21 年 6 月 8 日~6 月 9 日 障害の内容 通信ユニットの不良 原因 電波状況の悪化 対策 6 月 9 日にセンサーをリセット、FOMA用の通信機材を手配し 7 月 6 日に交換 八王子 障害の期間 平成 21 年 6 月 20 日~8 月 8 日(この期間、間欠的に発生) 障害の内容 八王子市役所の観測サーバーに設置している携帯電話の通信 が不安定で間欠的に停止した 原因 携帯電話の通信障害とサーバーへの転送ソフトの負荷 対策 携帯電話の接続ユニットを交換し、転送ソフトを改修 東京 障害の期間 平成 21 年 8 月 15 日 20 時~8 月 16 日 15 時 障害の内容 データ収集サーバーのディスク障害により、気象庁観測データ他 が受信不能となり、WBGT 観測データが送信できなかった 原因 サーバーのディスク不良 対策 ディスクの交換 東京 障害の期間 平成 21 年 8 月 31 日(12~16 時) 障害の内容 データ収集サーバーのディスク障害に伴い異常値が発生した 原因 サーバーのサブディスク交換時のデータ受信不良 対策 データを再受信し予報・実況を更新
く計測される。 東京 午後2 時 30 分頃から日没まで 大阪 午前8 時頃と午後 5 時頃 広島 日の出から午前9 時 20 分頃まで (2)WBGT 実測値の提供内容充実のための観測 人々の生活する場(例えば、住宅地、オフィス街、舗装道路、公園・芝地、グラウンド)における WBGT は気象庁露場における WBGT と異なると考えられ、場所による差異とその要因を明らかにす るため、表2-6 に示す地点で WBGT の比較観測を行った。 観測は、改造型の簡易型WBGT により行い、その仕様は、表 2-7 に示した。なお、東京駅丸の内 口については、周辺の環境整備工事のため、機器の撤去を要請され9 月 17 日に撤収した。 表 2-6 WBGT の比較観測点(平成 21 年度) 地点 設置場所 緯度 経度 標 高 観測期間 鍛冶橋駐 車場 アスファルト 鍛冶橋駐車場 35°40.4’ 139°46.2’ 5m 平成 21 年 7 月 2 日 ~10 月 31 日 東京駅丸 の内口 オフィス街 東京駅丸の内口交差点 35°40.6’ 139°46.1’ 5m 平成 21 年 7 月 29 日~9 月 17 日 観測は、簡易 WBGT 計による。観測要素は、気温・湿度・2 inch 黒球温度 表 2-7 各観測地点に設置する装置 WBGT 計(簡易型) 記録計 温度 2ch・湿度 1ch 気温・黒球温度センサ サーミスタ 湿度センサ 抵抗変化型 通風筒 自然通風筒 黒球温度計 2インチ型 電源等 DC バッテリー(鍛冶橋は 10 月より太陽電池パネルにより電源供給) データは、カード型データロガーガーで記録
備考 気温・湿度はシェルター内、 自然通風 ○地理情報 所在地 丸ノ内鍛冶橋駐車場 東京都千代田区丸の内3丁目8番2号 位置 北緯: 35°40’24.6” 東経:139°46’10.6” 標高 5m ○地理的状況 下記のとおり(地図は Yahoo!地図情報より) 図 2-1(i) 観測地点整理票(鍛冶橋駐車場)
丸ノ内鍛冶橋駐車
場
―18― 観測頻度 全日、夏期のみ 備考 気温・湿度はシェルター内、 自然通風 ○地理情報 所在地 JP タワー北西交差点 東京都千代田区丸の内2 丁目 位置 北緯: 37°40’37.2” 東経:139°46’4.8” 標高 5m ○地理的状況 下記のとおり(地図は Yahoo!地図情報より) 図 2-1(j) 観測地点整理票(東京駅丸の内口)
JP タワー北西交差
点
―19―
図 2-2 比較観測点の位置
A:鍛冶橋駐車場、B:JP ビル前交差点、C:気象庁 (画像は Yahoo 地図より)