Japanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies Japanese Assooiation of Behavioral and Cognitive Therapies
行動療 法研 究
,
36(2),
95−
106,
2010〈
原著〉
う
つ病
患
者
の
う
つ症 状
と
社 会 適応 状 態
に
関連 す
る
要 因
の
検
討
一
自動
思
考
と
スト
レ ス対 処方略
お よ
び社 会 的
スキ
ルを関連 要 因 と し
て一
田
上
明
日
香
1・
2・
3伊藤
大輔
1・
2大野真 由子
3白
井
麻
理
3嶋
田
洋徳
4鈴
木
伸
一
4 要 約 本研 究の 目的は、
うつ 病の治療に おいて、
うつ 症状 と と もに評 価が必 要 とさ れ ている社 会 的機 能に着 目 し、
うつ 症 状と社 会的機能に関 連 す る 心 理 的 要 因を明 ら か にすることである。 単極 性の うつ 病と診 断 さ れた 66名を 対象に、
自 動思考尺度 (ATQ −R
)、
対 処 方 略 尺 度 (TAC )、
ソー
シャ ル ス キル尺 度 (KISS)、
うつ症 状 尺 度 (BDI−II
)、
社会 適応状 態尺度 (SASS )を実 施した。
その結 果、
うつ症 状に対しては
、
”
自己に対 す る 非 難 が 関連し てい たが、
社 会適 応 状 態には“
肯定 的思考”
と 宥 定的 解 釈 と気 そ ら し”“
社 会 的ス キル”
が関連 してお り、
うつ 症 状と社 会 適応状 態で は関連する要因 が 異 な るこ と が 示 唆さ れ た。
これ らの こ とか ら、
うつ 病 患 者へ の支 援におい ては、
うつ症 状 だけでな く社 会 適 応 状態に 関 連 する要 因を検 討 する 必要i
生が議 論さ れ最 後に本 研 究の限 界につ い て述べ ら れ た。 キー
ワー
ド:社会的機 能 社 会 適 応 状 態 職 場 復 帰 心 理 的 要 因 うつ病 患 者問
題と目 的近
年、
精 神 疾 患 に よる休 職 者が増 加 して お り、 社 会 的 問 題に なっ てい る。社
会 経 済 生 産 性 本 部(
2007
)
が 実 施 した全 国の上場
企業
を対象
と し た メン タ ルヘ ル スへ の取 り組み に関 する調 査 結 果によると、1
カ月
以 上の 休 職 者 が748
% の 企業
に 存 在 し、
そ の 割 合 も、
2002
年
の58
.
5
%、2004
年の66
.
8
%と一
貫
し て増 加 してい る。 また、
これらの メ ンタルヘ ルス 上の問 題 を 理由
とす
る休 職 者の疾 患の多 くはうつ 病である こ とを85
%の 企業
が 回答
し てい る。 こ の よう
な うつ 病 休 職 者は、
職 場復帰
をし て再
適 応 を果 たす
こと も可能であるが、
その一
方
で、約半数
が 再 発や離 職を してい る という
指 摘 も ある(
齋 藤,
1998
)
。 また国の指針
とし て も、厚
生労
働 1 早稲田大 学 大 学 院 人間 科 学 研 究 科 2 日本学術 振興会 特 別 研 究 員 3 ノ」、
石川メ ンタ ル ク リニ ック 4 早 稲 田大 学人問科学 学 術 院 (2009(平 成21
)年12
月17
日受理) 省 (2004)
が“
心の 健 康問題によ り休 業 し た労 働 者の 職 場 復 帰 支 援の手
引き
”
を発表
し た後、
2009
年
に改 訂 版 が 示 さ れるな ど (厚 生 労 働 省,
2009)、依然
として休
職者
の復
職の 問 題 は 深 刻 である とい える。 改 訂 版の具体
的指針
の中
に は、
例 え ば、
休 業の 開 始 か ら通 常 業 務へ の復
帰 まで の流れを 明確
に し、策定
さ れた プロ グラ ムを労
働 者や管 理 監 督 者に周 知 する こ と、休
職 者の不安
へ の十
分な情報提供
や相 談 対 応を行
うこ と、 事業
場外資
源や地 域にある公 的 制 度 な ど の情報
提 供の必 要 [生などの内 容が含ま れ、
う
つ病休職者
に対
する具 体 的 な 支 援 策 を確立す るこ とが、
復 職をする個人 や受
け入 れ る企 業に とっ て も、
重 要 な心 理 社 会 的 問 題として位
置づ けら れてい る。本 邦の
う
つ病
の治療
につ い ては、一
般に休 養 と抗 う
つ薬
な どに よる薬 物 療法
が行
わ れ、
比較
的 短 期 間で症状
が改善す
る事
例 もみ られる。 ア メ リ カ 精 神 医 学 会 (American
Psychiatric
Association
;以 下APA
)
に よ る 大う
つ病治療
の ガイ ドラインで は、対
人関係療法
と認 知 行 動一
一
Japanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies
NII-Electronic Library Service Japanese Assooiation of Behavioral and Cognitive Therapies
行 動 療 法 研 究 第36巻 第2号
療 法
が推 奨
さ れ て お り(
APA
,
2000
)
、 本 邦に おい て もう
つ病休
職者
を対象
に し た治 療プロ グ ラム の 効 果 評 価 が 始 まっ て い る(
北 川 ら,
2009
;松 永 ・
岡本,2006
;田島
、2006
)
。 こ れ らの介 入 を概 観 すると、 う
つ 症 状の改善
を目的
とし て行
わ れ た もの が多
く、 認 知 的 側 面、 行 動 的 側 面 それぞれに焦 点 を 当てた具 体 的 な取
組み が な さ れてい る。 た と え ば、
認 知 的 側 面で は、
「自分
は何
もやり遂 げ
る こ と がで き ない 」 と い っ た よう
なう
つ 状 態に特 徴 的 な 固 定 的で柔 軟 性の ない考
え 方(
自動
思考)
を治療
ター
ゲ ッ ト として、 その 変 容 を 狙い としてい る もの が多
い 。一
方、
行 動 的 側 面 として は、 自
分の気持
ち の上手
な伝
え 方 や 仕事
の上 手 な 断 り方とい っ た、 アサー
ショ ンな どの ソー
シ ャ ル ス キル の獲 得 を狙い と し てい る ものや、
問題解 決 療 法の 問 題解決
プロ セスを使 用 して、 画一
的で 回 避 的 な ス トレ ス へ の対 処 方 法の改 善 を狙い とす
るもの な ど が あ り、
実 際の介入 内容
に は幅
が み ら れ る。 そ して、
こ のよう な 認 知 行 動 療 法の介 入 研究
で用い ら れてい る指 標 としては、
うつ 症 状 を 測 定 す る ベ ッ クう
つ病
評価
尺 度 (Beck
D −
eression
Inventory−
Second
Edition
;以下BDI
−
II
)、
ハ ミ ル トン うつ 病 評 価尺 度(
Hamilton
Depression
Rating
Scale
;以下HAM
−D
) が ある
。
さ らに、
認 知 的 側 面を測 定す
る尺度
と し て は 自 動 思 考 尺 度(
Automatic
Thoughts
Ques
−
tio
aire ;以 下ATQ
)
が多
くの研 究で使 用 され
、
行動
的側面は、多
数の研 究で共 通 し て使
用 さ れ た尺 度はみ ら れ ない もの の、
ソー
シ ャル ス キルに関 連す
る 尺度
が多 く使
用 さ れてい るこ と が示
さ れ てい る(
Oei
&Dingle
,
2008
)
。 こ のよ うに各 認 知 的、行 動的
側面
がう
つ 症 状に影 響 し、実
際にこれ らの側 面に介 入 するこ とで、う
つ 症 状を改 善 させ るこ とが 実 証 的に明
ら かにさ れて きた。し か し な が ら
、 う
つ 病 休 職 者の職場復帰
に関 して は、 う
つ 症 状の改 善のみならず、社会
的 機 能の回 復 が 重要
であ
ると考
えら れ もの の、 うつ 病 休 職者
の職場復帰
に必 要 な 社 会 的機能
にこれ らの認 知 的、 行 動 的 側 面 がどの ように影 響 し て い る のかは明 らかにされ てい ない 。 社 会 的機
能 とは、
環境
と個 人の相互作
用の 中で仕事
や社 会 的 な活動、
パー
トナー
や家族
との 関係
とい っ た役割
を果たす 能力
と定義
さ れ、
うつ 症 状 を 測 定 する尺 度では 評 価で き ない こ とが指 摘 さ れ てい る(
Bosc
,
2000
)
。Hirschfeld
et al.
(2002
)に よ ると、社会
的機能
は、う
つ 症 状 より も遅 れて回 復 がみ ら れることか ら、 う
つ 症 状が改 善
し てい て も社 会 的機
能の障害
が残存
して い る こと が指 摘 されてお り、
うつ 症 状 と社 会 的 機 能の 回復
の時期
は異な る と考
えら れ る。 こ の ように、 うつ 症 状 と社 会 的機
能には関 連はあ
るもの の独立 し た 側 面 を有
し、 う
つ病休
職 者が職 場 復 帰で きる 状 態 をア セス メ ン トする際には、
従 来 用い ら れ て きた うつ 症 状の 評 価に加 えて、
社 会的機
能 も 測 定 する必要
があると考
えら れ る。
社
会
的 機 能を向上 させ ることを狙い とした 職 場 復 帰 援 助 プロ グラム に おい ては、
こ れまで「
生活
リ ズム の改善」
「作 業 能 力の改 善 」 「参 加者
同士の心 理的な支えあい 」とい っ た援
助が行 われてい る。う
つ病休
職者
の職場復帰
の困 難 さ につ い て は、 自宅 静 養 中と復 職 後の生 活の隔た りが指 摘され ており (
秋山 ら,
2007a
)、 具 体 的 に は、毎
日の通勤
と勤
務に よ る体 力 的 負 担と業 務ス トレス や 他の社 員とのか か わ り とい っ た 心 理 的 な 負 荷の大 き さ な どが挙 げ
ら れ る。
こ の よ う な負 荷 を軽減す
る取 組み が、
近 年 医 療 機 関や 地 域支
援で 積 極 的に な さ れて い る(
五 十嵐,
2007
;仲 本,2008)
。 た だし、
これ らの活
動は、 実践
的 な取組
みの蓄積
に よっ て経 験 的に行 わ れ ることが多
く、 社 会 的機能
の 回復
や職 場 復 帰の た めに必要
であ
ると実
証 され た もの に対 して介 入 されて い るものは少 ない 。 また、
職場復
帰に 対 して、従来
のう
つ 症 状の改 善 を 目指 し た 治 療 の中 で ター
ゲ ッ ト とされて きた 認 知 的、行動的
側 面 が 社 会 的 機 能に どの よう
に影響す
る か は明 らかにさ れてい ない 。そ こ で
本
研究
では、
従 来の うつ 病 治療
の介
入 ター
ゲ ッ ト とし て扱
わ れ てきた認 知 的 側 面 と、
一 96 一
N工工一
Eleotronio LibraryJapanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies Japanese Assoolatlon of Behavloral and Cognltlve Theraples
田上
・
伊 藤・
大 野 ほ か :うつ 病患 者のうつ 症 状 と社 会 適 応 状 態に関 連 する要 因 ス トレ ス対処方略、
および対 人 関 係における社 会 的ス キル を どの程度有
し てい るかとい う主観 的 評価
が、 う
つ 症 状 およ び社 会 的 機 能の測定指
標
の1
つ であ
る社会
適 応 状 態に、
どの よう
に関 連 し てい るか を示 すこ とを 目的とする。 この よ うに関 連 する要 因 を明
ら か にす
るこ と に よ り、う
つ 病 休 職 者の職 場復帰
な どの社 会 的 機 能の回復
が必要
と なる支 援 を行 う際の示 唆を得る こ と が 可 能にな る と考
えら れ る。 方法
1
.
分 析 対 象精神科
・
心 療 内 科 を標 榜 する都内
ク リニ ッ ク に外 来 通 院 してい る患者、
お よび 同ク リニ ック に併 設さ れ てい るう
つ 病 休 職者
の職場復
帰 支 援 を 目 的とする大規模
デイケ ア に通 院 してい る患 者 を対 象に調 査 を行っ た。 本 研究
の対象
者の適 格 基準
は、 (
1
)1
名の精神科
医のICD −
10
に基 づ く診断
に より、単極
性のう
つ 病と診 断 を受
け 通院中の 患 者、(
2
)20
歳以 上の成人、 (
3
)う
つ病
で休職 (
離 職)
する前に職業
に従事
し てい た か、
現 在 就 業 してい る者
であっ た。 さ らに、
除 外 基 準は、(
1
)希
死 念 慮 が 強い 、(
2
)器質
因、
認知
機 能障害
を認
め る、 (
3
)
重 度の身
体 合併
症 がある と考 え られるも
のであ
っ た。上記の
基準
に合 致 し、 かつ本研究
の 参 加に同 意 した80
名
の 中か ら、
無 記 入や 回 答に不 備の あっ た ものを 分 析 対 象か ら除外
し た。 最 終 的に 計66
名 (
男 性
31
名、
女 性35
名、平
均 年 齢3752
±8
.
8
歳〉
の 回答
を分
析 対 象と した。2
.
調 査材
料1
)
自動
思考
Kendall
et al.(
1989
)
に よ っ て作 成 され たAutomatic
Thought
Questionnaire
−
Revised
の日
本
語 版であ
る自動
思 考 尺 度 (児玉 ら、
1994
)
を用い た。ATQ
−R
は、「
将来
に対 す
る否 定 的 評 価 」 「自 己に対す
る非 難 」「
肯定
的 思考
」の3
因
子、
全38
項 目で構成
さ れ てい る質 問 紙であ
る。児
玉 ら(
1994
)で は、 回答
の し やす
さ を 考 慮 して、4
件法
で検討
さ れてい るが、本研究
で はKendall
et al.
(1989
)の原 版に基づ き、
ここ 数 週 間で どのよう
な自動 思 考 が どの程 度 浮 かん だ か を5
件
法で回答
を求
め た。
2
)
ス ト レス対 処 方 略神 村 ら
(
1995
)に よっ て作成
さ れ た 三次元
に基づ く
対処 方略
尺 度(
Tri−AXial
COping
SCale−
24
;以 下TAC
と略 記)
を 用 い た。TAC
は、 「カ タル シ ス」 「放 棄・
あ きら め」「
情 報収
集 」「
気
晴 らし」 「回 避 的 思 考 」 「肯定
的解釈」「
計
画 立案 」「
責任転嫁」
の各
3
項 目、 全24
項 目から 構 成 され、
各 対 処 方 略を どの程度行
っ てい るか につ い て5
件 法で測 定 す る 質 問 紙で ある。 な お、
TAC
は8
因 子を3
つ に分類
し て測 定 する こ と が可能
で あるため、
本 研 究で は、「
問題解
決 サポー
ト希求」「
問題 回避 」 「肯 定 的 解 釈と気 そ ら し」の分 類 を用い た。3
) 社会
的ス キル菊 池
(
1988)
に よっ て作 成 された社 会 的スキル 尺
度 (
Kikuchi
’
sScale
ofSocial
Skills
−
18
;以下
KISS
と略 記)
を 使 用 した。KISS
は、
全18
項 目 か ら構 成 さ れ、対
人 関係
に おけ
る基 本 的 な 社会
的スキ ルを どの程 度 有 してい る と 主観 的に とらえ
てい る か を5 件 法
で測 定 す る 尺 度であ る。4
)
う
つ 症 状Beck
et al.(
1996
)
に よっ て作 成さ れ たBDI
−
II
の 日本 語 版 (小嶋
ら,
2003
)
を 使 用 した。BDI −II
は全21
項
目か ら構成
さ れ、最
近2
週 間 につ い てう
つ 症 状の程 度 を4
件 法で測 定 する質
問紙
である。 な お 全 体 得 点が低
い ほ ど、 う
つ 症 状に対す
る主観
的 な 重 症 度 が 低い ことが示
さ れ る。5
)
社 会 適 応 状 態
Bosc
et a1.(
1997
)
に よっ て作 成さ れ たSocial
Adaptation
Self
−
evaluationScale
の 日 本 語 版(
後藤
ら,
2005
;以 下SASS
と略記)
を 使 用 し た。SASS
は家 族や他 人 など との人 間 関係
の項 目が 含 ま れる 「対 人 関係」
、
仕 事や興 味、 社会
活動
の項
目 が含
まれ る「
興味
や好
奇 心 」、 自身
や周 囲に対す
る認
識の項
目含 ま れる「自
己認
一 97 一
Japanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies
NII-Electronic Library Service Japanese Assooiation of Behavioral and Cognitive Therapies
行 動 療 法 研 究 第36巻 第2号 識 」の
3
因 子 全20
項目 か ら構 成
さ れ、 最 近の 社 会 適 応 状 態に関して どの程
度 良 好である と主観
的に と ら えて い るか を4
件 法で測定す
る 尺度 である。 なお全体得点
が高
い ほ ど、 社 会 適 応 状 態に対 する主観
的な評価
が 高い こ と が示 さ れ る。3
,
手 続 き本 調 査は
、早稲
田大
学の倫 理 委 員 会に よ る承 認を得たう え 実 施 された。 具体的
に は患 者に対 し調 査の 目 的を示 し、 口頭 お よ び 書 面に て イン フォー
ム ドL
コ ン セ ン トを得 た。 結 果Table
l
Descriptive
Statistics
for
theScores
(n
=66
)M
SD
1
. 対 象者
の属 性対
象
者の属性
につ い て整
理 した と こ ろ、(
D
年 齢は、
20
代が16 名、30
代が23
名、
40
代
が21
名
、50
代 が5
名、
60
代 が1
名
であ
っ た。(
2)
就 業 状態
は、離 職
者15
名、
通 常 勤 務14
名、
軽減勤
務5
名、
休 職 者32
名で あ り、49
% が休 職 者で あっ た。 対象
者の全体
像を示 すた め、各
測定変数
の 記 述 統 計 量 をTable
1
に示 す。な お、
BDI −II
の平 均 点は、
19
.
12
±ユ1.
68
点で あっ た。 ま た、
BDI
−II
の カ ッ ト オフ ポ イン ト に よ るう
つ 症 状の重 症 度は、
極 軽 症が23
名
、 軽 症 が15
名、
中等
症が13
名
、 重 症 が15
名で あっ た。一
方、
SASS
で測 定 され る社 会 適応 状態
につ い て は、 後 藤 ら(
2005
)
の研究
で は、
健常
者の 平 均が36
.
5
±5
.
7
点、 う
つ 病 患 者の 平 均 が32
.
2
±8
.
5
点
であ
っ た が、
本 研 究の うつ 病 患 者の平 均は30
.
46
±695
点であり、先
行 研 究と 比較 して社 会 適 応 状態
は悪い ことが 示 さ れ た。2 .
うつ 症 状 と社会
適 応 状 態の関 連う
つ 症 状と社 会 適 応 状 態が独
立 してい るのか を確 認 し、
これ らに影 響す
る と考え られ る 自動
思 考、
ス ト レス 対 処方
略、
および対
人 関係
に お ける社 会 的ス キルの主観
的 評 価 が そ れ ぞ れ どの ように関 連してい るの か を検 討 する た め、各
尺 度につ い て ピア ソ ン の積率相
関係数
を算 出 した(
Table
2)
。 その 結果、
BDI
−II
得 点とSASS
得
年 齢
ATQ −R
将 来に 対 す る否 定 的 評 価 自己に対す る非 難 肯 定 的思 考TAC
合 計問 題解決 サ ポ
ー
ト希 求 問 題 回 避 肯 定的 解 釈 と気 そ ら しKISSBD
工一
IISASS
合 計 対 人関係 興 味 や好 奇心 自 己 認 識3.
72
8
.
75
36.
09
16.
59
34.
99
13,
28
21.
44
6,
09
63,
48
1L28
27.
15
688
12.
21
3
.
92
24
ユ1
6.
20
52.
26
11
ユ3
19.
12
11.
68
30
.
46
6,
95
1338
3.
39
11.
123.
55
596
1,
73
No te
,
ATQ −R
・Autornatic
thoughtQuestionare
−
Revised,
TAC =Tre−
axialCoping
Scale
−
24
,
KISS
=Kikuchi’
sScale
ofSocial
Skills
,
BDI −II=Beck
Depression
Inventory一
工1,
SASS
=
・
Social
Adaptation
Self−
evaluation
Scale.
点
に中 程 度の 負の相 関 がみ ら れ た(
r=一.
53,
p
〈.
Ol
)
。 ま たBDI
−
II
得 点
とSASS
下 位因
子得
点 と もそ れ ぞ れ、
おおよそ 中 程 度の有 意な相
関 が み られた(
対 人 関係
rニー.
46
、 興 味 や 好 奇 心 r=−
39
、
自 己 認一
it
r=一
.
44
:すべ てp
く.
01
)
。3
, 自
動 思 考、
ス トレ ス対 処 方略、
ソー
シャ ルスキル とうつ症
状
の関連
自 動 思
考
とス ト レス対 処 方 略、
お よ び対
人 関係
に おける社 会 的ス キルの主観
的 評 価とうつ 症 状の関 連 を検
討 する た め に、ATQ
−
R
の各
下位 因 子得点、
TAC
の各
下 位 因 子 得 点、
KISS
得点
の各
変 数におい て、
関 連 を検討す
る該 当 変 数 以 外の もの を 統 制 して、各変
数とBDI
−
II
得点
に つ い て偏
相 関 係 数 を 算 出し た(
Table
3
)
。 その 結 果、
ATQ
−
R
下位
因 子である 「自 己に対す
る 非難」得 点
とBDI −II 得点
に有
意 な 中 程 度の正 の相 関 が 示 され た(
Pr
=.
36
,
p
<.
01
)
、一
98一
N工工一
Eleotronio LibraryJapanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies Japanese Assooiation of Behavioral and Cognitive Therapies
田 上
・
伊 藤・
大野 ほ か :うつ 病患 者のうつ 症 状と社 会 適 応 状 態に 関連 する 要 因Table
2
Correlations
Between
Indices
for
theATQ −R,
TAC ,
KISS,
BDI −II
SASS
将 来に対 す 自己に る 否定的 対 する 評 価 非 難 肯 定的 思 考TAC
サポー
ト 合 計 希求 問 題 解 決 肯 定 的 問 題回避 解 釈と 気 そ ら し ATQ−
R 将 来 に対 する否 定 的評 価 自己に対 する非 難.
91* * 肯 定 的 思 考一.
46
**TAC
合 計 一24
* 問 題 解 決 サ ポー
ト希 求一.
07
問題回避.
15
肯 定 的解 釈と気 そらし一.
44
* * KISS− 、
50* * BD 工一
II.
80* *SASS
合 計一.
56* * 対人 関係一.
50* * 興味や好 奇心一.
42
* * 自己認 識一、
42* * 一 43 **一.
22
− .
03
.
13
− .
45
* *一.
56s* 82* *一,
56* *一、
47* *一,
40* *一.
51
* *.
40
**.
46
**一.
16
,
32
* *35
* *一.
48* *,
55* *.
54* *.
53
* *.
08.
77
* *.
23
.
82
* *.
32
* *一.
24*.
46* *.
39* *.
42
* *.
20一,
23.
43**
38
* * 一 〇9
.
41* * 40* *、
41
* *.
05.
03
− .
41
* *.
ll− .
27*一,
34* *一
ユ9
− .
04.
44
**一.
41
* *.
54* *、
48* *.
44
* *,
34
* *KISS
BDI−IISASS
対人関係 合 計 興 味や 自己認 識 好 奇心ATQ −
R 将 来に対 する否定的 評価 自己 に対 す る非難 肯 定 的 思 考 TAC 合 計 問 題解 決サ ポー
ト希 求 問題 回避 肯 定 的解 釈と気そ ら しKISSBD
工一
II
− .
44
**SASS
合 計,
65
** 対 入 関係,
61
** 興 味や好 奇心.
51
** 自 己認識.
35
**一.
53
**一.
46**一.
39* *一.
44* * 90**.
86* *.
48* *.
65* *.
33* *.
12ムrote
、
ATQ −R =
AutQmatic thoughtQuestionare
−Revised,
TAC
=Tre−
axialCoping
Scale
−
24
,
KISS
=Kikuchi’
sScale
ofSocial
Skms ,
BDI −II=Beck
Depression
Inventory−
II,
SASS
=Social
Adaptation
Self
−
evaluationScale,
*p
〈.
05,
* *p
<.
Ol.
4
. 自
動 思考、
ス トレス対
処方略、
ソー
シャ ル スキル と社 会 適 応 状 態の関 連自動
思考
と、
ス ト レス 対処
方 略、
およ び対 人 関係に おける社会
的スキル の主観
的 評 価 と社 会 適 応 状 態の 関 連 を 検 討 するた めに、ATQ −R
の各
下位
因 子得
点、
TAC
の 各 下 位 因 子 得 点、
KISS
得 点の各
変 数に おい て、 関 連 を検討す
る 該 当 変 数 以 外の ものを統 制して 、各変数
と社会
適
応状態
の関連
につ い て偏相
関係数
を算
出 した (Table
3
>
。 その結 果、ATQ
−
R
の下位
因子 であ る 「肯 定 的 思 考 」 得 点 とTAC
の下 位 因子であ る 「肯 定 的 解 釈 と気 そ ら し」 得 点、 さら にKISS
得点
とSASS
得点
に有 意 な 中 程 度の正の 相 関 が 示 さ れ た (Pr
=.
26
〜.
34
,
p
<.
Ol
〜.
05
)
。一
一
Japanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies
NII-Electronic Library Service Japanese Assooiation of Behavioral and Cognitive Therapies
行 動 療 法 研 究 第36巻 第2号
Table
3
Partial
Correlations
between
ATQ −
R,TAC ,
KISS
andBDI −IL
SASS
BDI −II
SASS
(
ATQ −R
> 将 来に対 する否定的評 価 自己に対 する非 難 肯 定 的思考 (TAC ) 問 題 解 決 サ ポー
ト希求 問 題 回 避 肯 定的 解 釈 と気 そ ら しKISS
、
20
− .
08
.
36
* *一.
03
一
ユ8
.
30
*一.
01
、
06
.
00
− .
09
−
D4
26
*.
06
,
34
* *Note.
ATQ −
R
=
Automatic
thoughtQuestionare
−
Revised,
TAC =
Tre−
axialCoping
Scale−24,
KISS
= Kikuchi’
sScale
ofSocial
Skills
,
BDI −II=Beck
Depression
Inventory−II,
SASS =Social
Adaptation
Self−
evaluation
Scale,
* *p
〈.
01,
*p
<.
05
また、Hirschfeld
et al.(
2002
)
に よ るとう
つ 症 状が回復
し た後
に社
会 的 機 能の改 善 が み られる こ とが 指 摘 されてい るこ とか ら、
そ れ ぞ れの偏
相関係数
を算
出す
る際に、BD
工一
II
得 点 を 統 制 し、各
変 数とSASS
得 点の関 連 を検 討した。 そ の結果、BDI −II 得点
の統制
の有 無
に よる各変
数とSASS
得 点の関 連には 差 異 がみら れ ない こ と が示 さ れ た(
それ ぞれ 偏 相 関 分 析 に よ るSASS
得 点 との 関 連 :「肯 定 的 思 考 」Pr
=29
,
p
<.
05
;「
肯定
的解 釈
と気
そ ら し」
Pr
=.
26
,
p
<.
05
;「KISS
得 点 」Pr
=.
34
,
p
<.
Ol
)
。さ らに
、
SASS
の下位 因 子につ い て は、
因 子 間相
関に ば らつ きが あ り (r=.
12
〜.
65
)、 特 に 「自
己 認 識 」に関 して は、
先 行 研 究で も測定次
元 が 他の2
因 子 と異 なるという
指 摘がある(
後
藤
ら,
2005
)。 そこ で、ATQ −R
の各
下 位 因 子 得 点、TAC
の各
下位 因子得 点、
KISS
得点
の各
変数
に おい て、
関連
を検討
する該当変数
以 外の もの を 統 制 して、SASS
各
下位因
子(
「
対
人関係
」「
興 味や好奇
心」「自
己認
識」
)得 点
との 関 連につ い て偏 相 関 係 数 を算 出 した (Table
4
)。 その結 果、ATQ
−
R
の下位因 子 である「
肯 定
的 思 考 」 得 点 お よ びKISS
得 点 とSASS
下位 因子 である「
対人関 係 」 得 点に、 有 意 な正の相 関 が み ら れ た(
各
Pr
=.
32.
p
<.
05
)
。 さ らに、
同じくATQ
−
R
下 位 因 子である「
肯定 的
思考」得 点
とSASS
下 位 因 子であ る 「興 味や好 奇 心 」 得 点に有
意な正の相
関が み ら れ た(
Pr
=.
3L
P
<.
05
) 。一
方、
SASS
下位
因 子である 「自 己 認 識 」 得 点Table
4
Partial
Correlations
between ATQ−R,
TAC ,
KISS
andSubscale
ofSASS
SASS
対 人関係 興 味や好 奇 心 自己認識 (ATQ
−R
) 将 来 に 対 す る 否定的評 価 自己に対 する非 難 肯定 的 思 考 (TAC
) 問 題 解 決 サポー
ト希 求 問 題回避 肯定的解 釈と気そらしKISS
一.
13
.
09
.
32
*,
00rl8
.
23
†.
32
*一.
08
.
05
.
31
*.
07D1
ユ6
.
25
† ユ1
− .
31
*一
ユ9
尸
02250010
Note.
ATQ −R =Automatic
thought
Questionare
−Revised,
TAC =Tre ・
axialCoping
Scale
−
24
,
KISS =Kikuchi’
sScale
ofSocial
Skills
,
SASS =Social
Adaptation
Self
−
evaluationScale
.
†
p
くユ0L
*1
)<,
05,
一
IOO一
Japanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies Japanese Assooiation of Behavioral and Cognitive Therapies
田 上
・
伊 藤・
大野 ほ か ;うつ 病 患 者の うつ症 状と社会 適応 状態に関連する要 因Table
5
Partial
Correlations
between
ATQ −R ,
TAC ,
KISS
andSASS
in
Each
Employment
Format
離職 (n
ニ15
) 休職 (n;
32
) 通常+軽 減 勤 務(
n=19
) (ATQ −R
) 将 来に対 す る否 定 的 評価 自己 に対す る非難 肯 定的 思考(
TAC
) 問 題 解 決サ ポー
ト希 求 問 題 回避 肯 定 的 解釈と気そ ら しKISS
,
10
− .
44
− .
14
一.
51
一32
.
50
.
29
一,
24
− .
07
.
43
* 一34
†、
07
.
26
,
05
.
08
一 〇4
,
27
一
ユ9
− .
28
.
38
.
50
†八「ote
.
ATQ −R =
Automatic
thoughtQuestiQnare
・
Revised,
TAC =Tre−
axialCoping
Scale−24,
KISS
=
Kikuchi
’
sScale
ofSocial
Skills
,
SASS
=Social
Adaptation
Self−
evaluationScale
.
†
p
<.
10,
*p
〈.
05,
につ い て は、
ATQ
−
R
下 位 因 子 「自
己に対 す
る非
難 」 得 点 と 有意
な負
の相 関
が 示 さ れ(
Pr
;一.
3L
P
〈.
05
)、
他の2
つ の社 会
適 応 状 態 の 下 位 因子の 関 連 とは異 なる関 連 が 示 さ れた。5
.
就 業 状 況の差 異に よ る各変数
と社
会 適 応 状態と の関
連
秋 山ら
(
2007a
)
が 自 宅 療 養 中と復 職 後の 生活
の隔 た り を指 摘 してい る よう
に、就業
状況
に より、社会
適 応 状 態 を 主 観 的に どの よう
にとら えるか が 異 なる可能性
がある。 した がっ て、
対象者
を離
職(
n ニ15
)、
休 職 (nニ
32
>
、軽 減勤務
含
む復職
や通 常 勤 務(
n;19
)の3
群に分 け、
各 変 数 と社 会 適 応状 態
の 関 連 を検
討 し た。 まず、
就 業形 態
に よっ て、BDI −II 得 点
とSASS
得 点に差 異が み ら れ るか各
群の特 徴 を確 認 する た め に、就業
形 態の群 を独立変数
、BDI
−
II
得
点とSASS
得点
を そ れ ぞ れ従
属 変 数とする1 要
因の分 散 分 析 を行っ た。 そ の結 果、BDI
−II
得点
お よびSASS
得 点ともに、 群 間に有
意な得
点差
は み ら れな かっ た。 し か し、 離職者
のBDI
−
II
得 点が最も高 く、
SASS
得 点 が 最 も低い という結果
か ら、 う
つ 症 状 およ び社会適
応 状 態とも に離 職者
の状 態
が最
も悪い 傾向
である ことが示
唆
さ れ た(
BDI
−
II
:離 職〉軽減勤務含
む復
職や 通常
勤 務〉休 職、SASS
;離 職く軽減勤 務含
む 復 職 や 通 常勤務
く休職)
。さ らに
、ATQ −R
の各
下位
因 子得
点、
TAC
の下位
因子得
点、
K
工SS
得 点の各 変 数におい て、
関 連 を検 討 する該 当変数
以外
の もの を統制
し て、
各 変 数とSASS
得点
の 関 連につ い て偏 相 関 係数
を算
出した(
Table
5
)
。 その結 果、 休 職 中 の患者
は、ATQ −R
の下 位 因 子である 「肯 定 的 思考
」 得 点とSASS
得 点に有意
な 正の相
関が み ら れ(
Pr
=.
43
,
p
<.
05
)、
TAC
の下 位 因 子で あ る 「問 題 解 決サ ポー
ト希求」
得 点 とSASS
得 点 に は有 意 差 はみ られ な かっ たもの の、 関 連す
る 傾向
があ
るこ とが示 さ れ た(
Pr
=一.
34,
p
く.
10)
ま た、
通 常 勤 務 や軽減勤務
の就労
状 況にある人 は、有
意 差 はみ ら れ な かっ た もの の 、KISS
得
点とSASS
得 点に関連す
る傾向
があるこ とが 示 さ れた(
Pr
=.
50,
p
<.
10
)。
一
方
で、
離 職の患 者 につ いて は有
意に相 関 する要 因はみら れ な かっ た。 考察
本 研
究
の 目的は、
従 来の うつ 病治療
の介
入 ター
ゲッ トと して扱われてき
た認知
的 側 面 と、
ス トレ ス対 処方略、
お よび 対 人 関係にお ける社
一
101一
Japanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies
NII-Electronic Library Service Japanese Assoolatlon of Behavloral and Cognltlve Theraples
行 動 療 法 研 究 第36巻 第2号 会 的ス キ ル をどの程 度 有 して い る か とい う主 観 的 評 価が、 うつ 症 状 および社 会 適 応 状 態の
2
側 面 と どの よ うに関 連 して い るか を示 すこ とで あっ た。まず、
う
つ 症 状と社 会 適 応 状 態の関
連 を検討
した結 果、
中程 度の負
の相
関が み ら れ た。 す な わ ち、う
つ 症 状と社 会 適 応 状 態 は 関 連す
る傾向
が ある もの の、
必ず
しも
一
致 してい る わけで は ない こ とが示唆
さ れ た。 先 行 研 究におい て もう
つ 病 患 者のうつ 症 状 と社 会 適 応 状 態は測定
次 元 が 異 なる こ と が指摘
さ れ て い る ように (後 藤 ら,
2005
)
、 本 研 究の結 果 か ら も、
うつ 症 状 と 社 会 適 応 状 態 そ れ ぞれ の側面
と関連す
る可能性
が ある、認知的側面
やス トレ ス対 処 方 略、
お よ び対
人 関 係にお ける社 会 的スキル の主観
的評価
が 異 な り、
個別 に検
討 する 必要が改めて示 唆 さ れ た。
さ らに、
各
変 数とうつ 症 状 と社 会 適 応 状態
と の 関 連を検討
し た結
果、 う
つ 症 状に対 して は、 「自 己に対す
る非
難」
とい う 認 知 的 な 側 面の関 連がみ られ、 社 会 適 応 状 態に は「
肯定
的 思 考 」 という
認知
的 要 因に加 えて、 対 人 関 係にお ける 社会
的スキル の主観 的 評 価 とい っ た 行 動 的 側面
と関 連 する可 能 性 が ある心理的 要 因 との関連
が み られた。 こ れ らの こ と か ら、
社 会 的 機 能の 回復の た め に は、 う
つ 症 状の治療
として すで に有 効 性 が多
く示さ れてい る薬物
療 法や認知療法
の み な らず
(
Beck ,
2005
;Keller
et aユ.
,
2000
)
、本
研究
の社会
的ス キ ル で測定
してい る対 人 関 係に必 要 な 基 本 的 な社 会 的ス キル の獲 得や本 来で きてい たス キ ル の遂行
援 助といっ た 側 面 か らの アプロー
チ を行 う
こと が有効
であ
る可能
性が示 唆 さ れ た。 こ のよう
に、認知
的 側 面に加 えて行 動 的 側 面 と関 連 する可 能 性 が 考 え られる、対
人 関係
に おける 社 会 的ス キル の主観
的 な 評 価 を考慮
し たア プ ロー
チの必 要 性 が 示 唆 されたことは、う
つ 病休
職 者の職 場 復帰
支援
で多
く行われてい るう
つ 症 状の 改 善 を目的 とす
る薬物
療 法だけ
で は限界が あり、
そ れ ら に加 えて社 会 適 応 状 態 を改善
さ せ る ア プ ロー
チ の 必 要 性 の 指 摘 や(
伊 藤
ら,
2006
)、
デ イ ケアな どで の 生活 リ ズム の 改 善や集
中力、対
人 交 流を促 進 する実践
的な試
みの妥
当 性 を 支 持 する結果
であると考
えら れ る。認
知
的 側 面につ い て は、 うつ 症 状には 否定
的 な 側 面であ
る「自
己に対
する非 難 」、 社 会 適 応状 態
に は、肯
定 的 な 側 面で ある 「肯定
的 な 思考
」 とい っ た よう
に関連
する要 因が異 なる こ と が示さ れ た。
ま た、Hirschfeld
et al.(
2002)
が、
うつ 症 状 と社 会 的 機 能の改 善の時 期が異 なり、
うつ 症 状が改 善 し た後
に、社会
的機能
の改 善 が み ら れ る と指摘
してい る こ とか ら、 う
つ 症 状の 改 善 を主 眼に置 く時 期 と社会
適 応状態 も
視 野に 入れ た治療
をする時 期 とい っ た よう
に、
治療
目 的に合 致 した必 要 な 時 期に必 要 とさ れ る認知
的 介 入 を 行う
こ とが有効
である可 能 性が考 え られ る。義
田・
中 村 (2007)
は、 否 定 的 な 自動
思考
は抑 う
つ を直 接 促 進 し、
加 えて抑 う
つ を低減
さ せ る肯定
的な自動
思考
を抑
制 する が、 肯 定 的 思考
は否定的
な 思考
の抑
制 効 果 が ない こ とを示
し て い る。 こ の指 摘 を考 慮 すれば、本
研究
で社会
適 応 状態
との 関連
が示 された 「肯 定 的 な 思 考 」 は、
否定
的 な思 考 が 減 少し た影響
を受
けてい る 可 能 性 が あ り、
否定
的思考
が減少
し た結 果、
肯定的
思考
が増加
し、 社 会 適 応 状 態 が 改 善 を示 し た可能
性 も考 え られる。 した がっ て、 う
つ病
患 者の社会
適 応 を促進す
る た め に は、
治 療の初 期 段 階 か ら肯 定 的 思考
に働
きかける という
よ り は、
まずは否 定 的 な 認知
か ら働 き
かけをする と いう
よう
に、 必 要 な 時 期に必 要 な手 川頁で の意 図 的な介
入が重 要で ある可 能 性が考
えら れ る。また
、
ス トレ ス対 処方略
に おい て は、
「肯 定 的 解 釈 と気
そ ら し」
も社会 適応 状 態と関 連が み ら れ た。 こ の ス トレ ス対処方略
は、
悪い こと ば か りでは ない と楽観的
に考
える とい っ た よう な 「肯
定 的 解 釈 」、嫌
なこ と を頭
に浮
かべ ない よう
にするとい っ たよう
な「
回 避 的 思考
」、行動 的
な要 因と関 連 する もの としてス ポー
ツや旅行
な どを楽 しむ とい っ た「
気晴
ら し」とい っ た 内 容 か ら構 成 さ れて い る。
つ まり、
これはATQ
−
R
一 102一
N工工一
Eleotronlo LlbraryJapanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies Japanese Assoolatlon of Behavloral and Cognltlve Theraples
田上
・
伊 藤・
大野 ほ か,
うつ 病 患 者の うつ症 状と社 会 適応 状態に関連 す る 要 因 の下位 因
子である 「肯 定 的 思 考 」という
認知的
要 因と類 似 する項 目を一
部含
む 内 容である とい える。 したが っ て、積
極 的に問題解
決 をするよ り もい っ た ん保 留 を して現 状を肯 定 的に と らえ る とい うス トレ ス対処
がう
つ病
患 者の社 会 適 応 状態
に は有効
である可 能性
を示す
もの で ある と 考 え ら れる。次に
、
SASS
の 下位 因 子で ある 「対 人 関係」
「興 味や好奇
心」「自
己 認 識 」と認 知 的 側 面とス ト レス対 処 方 略、
およ び対 人 関 係に おける社 会 的ス キ ルの主観
的 評 価の関 連 を 検 討 した とこ ろ、「
対
人 関係」
や 「興
味 や 好 奇 心 」に はSASS
の合 計 得 点 と同様
に、「肯定
的 思 考 」と 社 会 的ス キ ル に関 連が み られたが、「自己認
識」
にはこれ らの どの変数
も有
意 な関
連 が 示 さ れて い な かっ た。 こ れ は、後
藤 ら(
2005
)
の先行
研 究に おい て も 「自 己 認 識 」が、「
対
人関係 」
お よ び「
興味
や好
奇 心 」との下 位 因 子 間に ほ ぼ相
関 が な く、 他の因 子の測定
次元 の違い として指摘
さ れてい る こ と と同様
の結
果である と考 えら れ る。
本 研 究では、
うつ 症 状に影響
を及ぼ し て い る認 知 的 な 要 因であ
る「
自 己に対 す る 非 難 」 が社 会
適 応 状 態の下位
因 子であ
る「
自 己 認 識 」 と関 連があ
る ことが示
さ れて い る(
Pr
=一.
31
,
p
〈.
05
,
Table
4
)
。 「自 己に対 す る非難」
は本 研 究の結
果に おい て も、
主 観 的 なう
つ 症 状 と関
連 の強い 因 子である ことか ら「
自 己 認 識 」は、 従 来、う
つ 症 状 と関 連の強い 社会適
応 状 態の1
側 面であ
る 可能 性 が 考 え られる。さ らに、 就 業 状 況 別に
、 自動
思 考とス トレス 対 処方略、
お よ び対 人 関係
に おけ
る社 会 的ス キ ル の主観
的 評価
と社会
適 応 状 態 との 関 連を検討
した ところ、
休 職 者は、認知
的 な要
因で あ る 「肯 定 的 思考」
と 関 連 が あ り、 ま たス ト レス 対 処 方 略の1
つ であ
る「
問
題 解 決 サポー
ト希 求」
に関連す
る傾 向 がみ られた。 さ ら に 通常 勤 務や 軽 減 勤務
とい っ た就 労 状 態にある人は、
社 会 的 ス キ ルが 社 会 適 応 状態
と関連す
る傾 向 が ある こ とが 示 さ れた。これ は、 秋 山 ら
(
2007a
)
が自
宅療
養 中と復
職後
の 生活
には 隔た りがある と指
摘
し てい るよ うに、 就 業 状態
に より置
か れ てい る社 会 的 状 況の差
異が示さ れて い る と考
えら れ る。 つ ま り、
休 職や離職
という
状 態での社 会 適 応 状 態の評 価 は、 職 場 外の生活につ い ての評価
で ある と考
えら れ る が、
通 常 勤 務や軽減勤務
で 就 労 状 態にある場合
は、
職 場 内の適 応 状 態 も含 め た社会
適 応 状 態 を 評 価 して い る。 こ れ らの こ とか ら、
社会適
応 状 態 と関 連 する要 因 が 異 なっ てい る可 能 性 が 考 え られ、
休 職者
や離職者
の 職 場 復 帰 を 目的と し て支援
をす
る際に は、 現 在の社
会 適 応 状態
の 回復
や改善
を確
認 するこ と に加 えて、
就 業 再 開後の職 場で の社会
適 応の促
進に つ な がる支援
が必要
で ある可能性
があ
る。
した がっ て、
個々人 が、復職
や再就
職 を念 頭に置い たう
えで、
どの よう
な 側 面に困 難 さ を感
じ た り 不安 (
悪 循 環に陥 りや すい自分
の考
え方
の ク セ、 画一
的 なス トレス 対 処 方 略、
対 人面
での社 会 的スキル など)を感
じ たり
し てい るの か をて い ねい に アセ ス メ ン ト し たう
えで、
個 人に合わ せ た介
入 を提 供してい く必 要がある と考
えら れ る。 こ の 点につ い て は、厚
生 労 働 省 (2009)
に改
訂さ れた、
“
心の健康
問題 に より
休 業 した労 働 者の職場復帰支
援の手 引 き”
におい て、休職
者
の不
安へ の情 報 提 供 や 相談対応
を十分
に行
う
こと が改訂
点 とし て示 さ れてい る ことか らも、
十 分 な 支 援が行
わ れ てい ない のが 現 状であ り、今後取
り組 む 必 要のある重 要な視 点
である と考 えら れ る。
最 後に、 本 研
究
の限界
と して3
点 挙 げる こ と がで きる。 ま ず、う
つ 状 態 と社 会 適 応 状 態と関連 す
る変数
の少 な さ が 挙 げら れ る。本研
究で は、
自動 思 考とス トレ ス対処、
対 人 関 係にお け る基本
的な社
会 的ス キル の主観
的 な評 価とい う3
指 標につ い て検討
した。 しか し なが ら、 現在
実 践 されてい る うつ 病の改 善
に寄与
する こ とが 示さ れてい る行 動 的アプロー
チ と し て、
軽 度のうつ 病の と
き
は運 動や(
National
lnstitute
for
Clinical
Excellence
,
2009
)、
日常
の活 動を取 り戻 す行動 活
性 化 が 挙 げ ら れてい る(
Dimidjian
et al