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(1)

がん患者さん・ご家族と

医療者のコミュニケーション

Q&A

監修:岡山大学大学院医歯薬学総合研究科

   精神神経病態学教室 教授 内富 庸介

先生

3ページ

8ページ

22ページ

27ページ

30ページ

32ページ

 患者さんが望むコミュニケーション SHARE

 治療の段階別コミュニケーション(共通、がんの診断、再発/進行・抗がん治療の中止、終末期)

 難しいケースのコミュニケーション(うつ、せん妄、怒り、希死念慮など)

 ご家族への対応

 医療チーム間のコミュニケーション

 コミュニケーションの学習法

第 3 版

contents

(2)

Q&Aの質問の作成について アストラゼネカ開催のセミナーにご参加いただいた医療者(約2,800名)のアンケートから抽出し、質問を設定しています。  がん患者さんとそのご家族の声が反映されたがん対策基本法の理念の下、患者さんの意向を尊重した医療を提供する ことが望まれている。社会におけるライフスタイルの多様化が進み、患者さんのがんへの向きあい方も変化し続けている。 このような環境の変化に呼応し、患者さんが望む医療を提供していくためには、患者さんの声に真摯に耳を傾け、患者−医療者 の関係、特にコミュニケーションのあり方が、がん医療において問われている。  患者さんの状況に応じた治療やケアを続ける上では、患者さんの声に耳を傾け、治療やケアの目標、方向性を共有して おくことが大切である。  人の心の機能は、知識の「知」、感情の「情」、そして意識・意思の「意」という3つの言葉でよく表される。それに対し、がん においてさまざまな局面で重要なコミュニケーションの1つであるインフォームドコンセントは「説明と同意」と訳されて おり、並べてみると「情」の部分、すなわち気持ちへの配慮の部分がすっぽり抜けているのがわかる。がんは、その後の人生を 根底から揺るがし、将来への見通しを大幅に変更させうる病気であるため、患者さんはさまざまな局面で気持ちが揺れ動く。 この時医療者に求められることは、患者さんの話、これまでの道程を充分に傾聴し、共感を通して患者さんの気持ちに寄り 添うことである。医療者は、知識の曲解や誤解があればもう一度後戻りして、患者さんの置かれた状況を踏まえて理解の 道筋を是正し、最終的に患者さんから同意を得るという、患者さんの意向を十分踏まえ、気持ちへ配慮したプロセスを一緒に 歩むことが望まれる。  実際に、医療者は患者さんとの様々な難しいコミュニケーションの場面に直面している。ここでは、患者・家族−医療者間 のコミュニケーションにおいて直面する課題について、そのあり方をQ&Aとして紹介していく。  本企画が、医療者の直面する課題解決の道しるべとなり、患者−医療者間のより良いコミュニケーションにつながってい くことができれば幸いである。 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 精神神経病態学教室 教授 

内富 庸介

[執筆・協力]国立がんセンター東病院 臨床開発センター 精神腫瘍学開発部 小川 朝生 先生* 藤森 麻衣子 先生 山田 祐 先生 白井 由紀 先生 高橋 幸子 先生* 国立がんセンター東病院 緩和医療科 木下 寛也 先生* 国立がんセンター中央病院 精神腫瘍科 清水 研 先生** 大阪医科大学 神経精神医学教室 二宮 ひとみ 先生** 国立病院機構 金沢医療センター 精神科・緩和ケアチーム 小室 龍太郎 先生*** 国立がん研究センター東病院 臨床開発センター 精神腫瘍学開発部 近藤 享子 先生*** ※所属は執筆当時 * 第1版 2008年 ** 第2版 2009年 *** 第3版 2011年

(3)

Q1-1 SHAREとは?

 SHAREとは、がん医療において、医師が患者さんに悪い知らせを伝える際の効果的なコミュニケーションを実践するため の態度や行動から構成されています。患者さんの意向に関する調査の結果から得られた4つのカテゴリー(Supportive environment支持的な場の設定、How to deliver the bad news悪い知らせの伝え方、Additional information 付加的な情報、Reassurance and Emotional support安心感と情緒的サポート)を踏まえて作成されたものです。

P4∼7 参照 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 11-22, 2007

Q1-2 告知でSHAREを用いる場合、どれくらいの時間が必要でしょうか?

 時間の目安はありません。患者さんにとって十分な時間が必要です。十分な時間とは人それぞれ、また面談ごとに異なり ます。コミュニケーション・スキルを用いると、ある程度時間(15分から20分程度)はかかります。しかしコミュニケーション・ スキル・トレーニングの有効性を検討した研究では、コミュニケーション・スキルを使用しても面接時間は長くならないこと が報告されています。

Jenkins V. & Fallowfi eld L.: J Clin Oncol. 20(3): 765-9, 2002

(4)

S:場の設定  H:悪い知らせの伝え方  A:付加的情報  RE:情緒的サポート プライバシーが保たれる場所(直接会っ て伝える)、十分な時間を確保する(電話 が鳴らないようにする) 大部屋のベッドサイドやカーテンで仕切られているだけの 外来はできるだけ避け、面談室を使う 忙しい外来時間を避ける あらかじめ電話を他の人に預ける 面談の始めに患者に断る。電話が鳴った場合、患者に 断ってから、電話に出る 検査結果が出揃って、最終的な判断 が出るのが次回の面談であることを患 者に伝える 「7日後に検査結果が出揃い、当院の呼吸器グループで ミーティングした結果をお話しすることができますので、次の 面談は7日後の○月○日はいかがでしょうか」など 次回の面談は重要なので、家族など他 の人が同席できることを伝える 「次回は検査結果をお伝えする重要な面談ですので、ご家 族の方などどなたかご一緒にいらっしゃっていただくこともで きます」 「おひとりでも結構ですが、心細いようであればご家族に同 席していただいてもかまいませんよ」など

準備:重要な面談であることを伝える

S S H 礼儀正しく患者に接する 初対面のときには自己紹介する面談室に患者が入ってきたら挨拶をする 患者に質問を促し、その質問に十分答 える 患者の目や顔を見て接する 「ご質問はありますか?」 患者の質問にいらいらした様子で対応 しない 患者の言葉を途中で遮ること 貧乏ゆすり ペンを廻す マウスをいじる、など

基本:面談中常に気をつけること

S S S H

(5)

S:場の設定  H:悪い知らせの伝え方  A:付加的情報  RE:情緒的サポート 大事な話の前には患者は緊張している ので、患者の気持ちを和らげる言葉を かける 身近なことや時節の挨拶、患者の個人的な関心事などに ついて一言触れる 表情(微笑む)などのノンバーバル・コミュニケーション 「最近寒いですが風邪は引いていませんか?」 「暑い日が続いていますが、夜は眠れていますか?」 「ずいぶん長くお待たせしましたね」など 病状、これまでの経過、面接の目的に ついて振り返り、患者の病気に対する 認識を確認する 「前の病院の先生からはどのような説明を受けましたか?」 「病気についてどのようにお考えですか?」 「前回お会いしたときの説明をどのようにご理解していらっ しゃいますか?」 「初診のときの話について、その後どのように感じました か?」 「前回お話したことについて、おうちに帰ってからどんな風 に感じましたか?」 「今一番のご心配は何ですか?」 「家に戻られてから奥様にはどのようにお話しましたか?」 「治療効果について、ご自分ではどのように感じています か?」など 家族に対しても患者と同じように配慮 する 視線を向ける 家族が突然発言したときには、後で十分答える準備がある ことを伝えるなど 患者に、家族に対しても配慮していることを認識してもらう ことが重要である 他の医療者(例えば、他の医師や看護 師)を同席させる場合は、患者の了承を 得る 「看護師の○○を同席させてもよろしいでしょうか? 面談 後にわからないことなどありましたら、何でも結構ですので、 私か○○にお話ください」など

STEP1:面談を開始する

(患者が面談室に入ってから悪い知らせを伝えるまで)

H S RE RE

(6)

S:場の設定  H:悪い知らせの伝え方  A:付加的情報  RE:情緒的サポート 悪い知らせを伝える前に、患者が心の準 備をできるような言葉をかける 悪い知らせをわかりやすく明確に伝える 「大切なお話です」 「お時間は十分ありますか」 「予想されていた結果かもしれませんが」 「少し残念なお話をしなければならないのですが」 「気になっている結果をお話します」 「一番ご心配されていたことをこれからお話します」 家族の同席を勧める 「今日はご家族にご一緒に来ていた だきましたが」など 「率直に申し上げますと」など 患者が感情を表に出しても受け止める 沈黙の時間をとる、患者の言葉を待つ 気持ちを聞く オープン・クエスチョン「今、どのようなお気持ちですか?」 今の話の進み具合でよいか尋ねる 「話ははやくないですか?」「はやいと感じたら、いつでもおっしゃってください」など 病状(例えば、進行度、症状、症状の原 因、転移の場所など)について伝える 質問や相談があるかどうか尋ねる 紙に書いて説明する 専門用語を用いた際には患者が理解し ているか尋ねる 「何かご質問はありますか?」など 悪い知らせによって生じた気持ちをいた わる言葉をかける 患者に理解度を確認しながら伝える 「つらいでしょうね」 「混乱されたでしょうか」 「驚かれたことでしょう」、「大丈夫ですか?」など 実際の写真や検査データを用いる 「ご理解いただけましたか?」 後から質問ができることや看護師にも質問できることを伝 える 「わからないことがありましたら、後からでも結構です からご質問ください。看護師に聞いていただいてもかまい ません」

STEP2:悪い知らせを伝える

H H H H H H H H RE RE RE

(7)

S:場の設定  H:悪い知らせの伝え方  A:付加的情報  RE:情緒的サポート 患者の今後の標準的な治療方針、選択 肢、治療の危険性や有効性を説明した うえで、推奨する治療法を伝える 患者が他のがん専門医にも相談できる こと(セカンド・オピニオン)について説明 をする 誰が治療選択に関わることを望むか尋 ねる がんの治る見込みを伝える 「治癒は非常に難しい状況で、今の生活を如何に保つかが今後の目標です」 患者本人がひとりで決める 医師にまかせる 家族、医師と一緒に決める、など 患者が希望をもてるように、「できない こと」だけでなく「できること」を伝える 「がんをやっつける治療よりも、痛みをとる治療に重点をお きましょう」など 抗がん治療以外にも可能な医療行為があることを伝える 患者が希望をもてる情報も伝える 患者が利用できるサービスやサポート (例えば、医療相談、高額医療負担、訪 問看護、ソーシャル・ワーカー、カウンセ ラー)に関する情報を提供する 「痛みが取れます」 「治療効果が期待できます」 「新薬が来年承認される予定です」など 患者のこれからの日常生活や仕事に ついても話し合う 「例えば、日常生活やお仕事のことなど、病気以外のことも 含めて気がかりはありますか?」

STEP3:治療を含め今後のことについて話し合う

A A A A A A RE RE 要点をまとめて伝える(サマリーを行う) 今後も責任をもって診療にあたること、 見捨てないことを伝える 患者の気持ちを支える言葉をかける 説明に用いた紙を患者に渡す 「私たち診療チームはあなたが良くなるように努力し続け ます」 「今後も責任をもって診療にあたります」 「最善を尽くします」など 「大丈夫ですよ」 「一緒にやっていきましょうね」など

STEP4:面談をまとめる

H H RE RE

(8)

(共通、がんの診断、再発

/

進行・抗がん治療の中止、終末期)

共通

Q2-1 限られた診療時間の中で行える、患者さんとのコミュニケーションはありますか?

 コミュニケーション・スキル・トレーニングの有効性を検討した研究で、コミュニケーション・スキルを使用しても面接時間 は長くならずにスキルが増すことが示唆されており、時間が限られていても可能な範囲で行おうとする姿勢は大切です。 ただし、臨床のすべての患者さん、すべての面談において、SHARE*の4つの構成要素を全部取り入れようと考えるのは 非現実的です。難治がんの告知など、悪い知らせを伝えるような重要な面接では、沈黙を適切にはさむなど、SHAREの 4つの要素を可能な範囲で取り入れることを心がけましょう。その他の通常診察の際には、礼儀正しく挨拶するなどの基本 的なスキルなどを取り入れるとよいでしょう。 *:①患者さんが望むコミュニケーション SHARE 参照 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 44-45, 2007

Q2-2 患者さんとのコミュニケーションのきっかけをつくる、会話のコツはありますか?

 患者さんと医療者との会話には基本構造があり、それを理解することで会話を効果的かつ満足できるように進めること ができます。基本構造は、(1)聞くための準備、(2)質問すること、(3)効果的に傾聴すること、(4)聞いていることを示す こと、(5)応答すること、の5つの要素から成ります。  具体的には、(1)は面談を始める前に自己紹介することや時候の挨拶をすること、(2)は「はい」「いいえ」でしか答えられ ない閉じられた質問ではなく、「ご気分はいかがですか?」などの自由に答えられる開かれた質問をすること、(3)は適切に 相槌をうつこと、(4)は患者さんの言葉を反復したり言い換えたりすること、(5)は感情に配慮し「つらいのですね」という 言葉をかけるような共感的な応答をすることなどが挙げられます。

Buckman R: How to break bad news; a guide for health care professionals. Westwood Creative Artists,1992. 恒藤暁, 他訳:真実を伝える−コミュニケー

ション技術と精神的援助の指針. 診断と治療社. 40‐62, 2000

Q2-3 患者さんの心の変化が、どのような段階にあるのかわかる方法はありますか?

 患者さんの心の変化を知るために、特別な方法はありません。その一因として、患者さんの心の変化は、場面ごとに異なり さまざまな形で混ざりあって表れることが挙げられます。患者さんの死へのプロセスとして、Kübler-Ross博士が提唱し た5つのプロセス、(1)否認、(2)怒り、(3)取り引き、(4)抑うつ、(5)受容がよく引用されますが、実際にはこのプロセスを 順を追って経験する訳ではないことも広く知られています。患者さんの変化する心情について知るためには、会話中の 言葉だけでなく、患者さんの眼差しや表情、また態度を注意深く観察することが必要です。

●Buckman R: How to break bad news; a guide for health care professionals. Westwood Creative Artists,1992. 恒藤暁, 他訳:真実を伝える−コミュニケー

ション技術と精神的援助の指針. 診断と治療社. 30‐32, 2000

Q2-4 患者さんの意向を知るために、どのようなスキルを用いて、どのように実践する必要がありますか?

 悪い知らせを伝えられる際の患者さんの意向を知るためには、SHAREを用いた面接が有用です。すべての患者さんが 望むコミュニケーションが存在する一方で、患者さんごとに意向が異なるコミュニケーションも存在するため、個々のニーズ に沿ったコミュニケーションの実践が望まれます。  わが国での研究で、意向が分かれるコミュニケーションとしては、「余命についても伝える」「淡々と伝える」「悪い知らせ を少しずつ段階的に伝える」「その知らせの内容が不確実な段階であっても、悪い知らせを伝える」「断定的な口調で伝える」 などがあると報告されています。  具体的な方法としては、例えば余命に関していきなり話題にするのではなく、「これからの計画がおありでしたら教えて ください」「気がかりなことは?」などと尋ねることで患者さんの意向を知ることができます。さらに詳しく学びたい場合 は、コミュニケーション技術研修会などに参加し教科書などを読んで知識を得た後、ロール・プレイを通して実践的に学ぶ のもよい方法です*。 *:Q1-2、Q6-1∼5 参照

(9)

Q2-5 患者さんの本当の気持ちを聞くための方法はありますか?

 日常的な人間関係においても、はじめから打ち解けて話すことは難しい方が多いのではないでしょうか。まして、医療の 場において、悪い知らせを伝えられる場面では、患者さん自らが感情を表出することは容易なことではないと考えられます。 「本当の気持ち」というと難しいですが、患者さんの気持ちを知る上で、こちらが患者さんの気持ちに関心を持っていること、 聞く準備があることを伝えるスキルは役立つと思われます。  具体的には、オープン・クエスチョンを用いる、患者さんに話してもらうよう促す、患者さんの個人的な関心事を話題にする、 患者さんの感情表出があった際、十分に沈黙をとったり患者さんの気持ちを自分の言葉で言い換えて伝えたりして共感的 に接する、「おつらいでしょう」などと悪い知らせにより生じた気持ちをいたわる、「つらいお気持ちを少し話してみていた だけませんか?」と気持ちを探索するなどの対応が役立つものと考えられます。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 16‐17, 2007

Q2-6 悪い知らせを伝えた後の患者さんへのフォローやコミュニケーションは

どのようにしたらよいのでしょうか?

 悪い知らせを伝えられた直後には、患者さんは大きな心理的衝撃を受けており、「否認」という防衛機制により医師の説明 を覚えていないことも少なくありません。まずは気持ちに十分配慮しましょう。SHARE*のRE(安心感と情緒的サポート の提供)のスキルを用いることが有用です。また、その後の初期治療、リハビリ、場合によっては再発、進行などの各局面で、 うつ状態や不安、不眠、食欲低下などを生じることも考えられるため、医師や家族、その他の医療者などからの継続的な 心理的サポートは不可欠です。じっくりと患者さんの話(特に気がかり、心配について)を聞き、心身の変化を継続的に見守り、 適宜対応することが大切ですが、2週間を超えて持続する場合や日常生活への支障が大きい場合は適宜精神科医への紹介 も検討が必要です。 *:①患者さんが望むコミュニケーション SHARE 参照 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 19, 36‐43, 2007

Q2-7 治療中の患者さんとは、どのようなコミュニケーションを継続していく必要がありますか?

 がんの治療は、がん種や進行度によりさまざまであり、患者さんの苦痛や不安の内容も多岐にわたるため、患者さんの 身体的・心理的・社会的状態、受けている治療の種類、起こりやすい副作用などをよく把握した上で接することが必要です。 がんの治療に対して、つらい、生命を縮めかねない危険なものというネガティブなイメージを抱く患者さんも少なくなく、 初期治療導入時や治療変更時などは特に不安が高まりやすいと考えられ、注意を要します。治療法、副作用の可能性および その対策をあらかじめ伝えることで予期不安やそれに伴う身体愁訴の軽減を図りつつ、実際生じた不安や苦痛に対して は、患者さんの感情表出を共感的に受け止めることが有用です。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 38‐39, 2007

Q2-8 余命や予後に関する応対に困る質問を受けた場合、その質問に答えるべきでしょうか?

また答える場合は、どのように対応したらよいのでしょうか?

 まず、患者さんが余命や予後を知りたい理由を確かめる必要があります。多くの場合、具体的な期間を知りたいわけでは なく、背景に不安や気がかりが存在します。それを上手に言語化できないために、結果的に余命や予後の質問になると考え られます。そのような場合は、質問の背景にある不安や気がかりについて話し合うと解決することもあります。また身辺 整理ややりたいことができるなど、患者さんにとってベネフィットが多いと判断でき、またそれを患者さんが望んでいることが 確認できたら、それを達成するために必要な体力、サポート体制、期間など総合的に考慮し、どの程度達成可能かを話し 合います。その場合には、SHARE*のスキルに基づき4つの要素を用い、患者さんの気持ちに十分に配慮しながら伝える ことが重要です。 *:①患者さんが望むコミュニケーション SHARE 参照

Buckman R: How to break bad news; a guide for health care professionals. Westwood Creative Artists,1992. 恒藤暁, 他訳:真実を伝える−コミュニケー

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Q2-9 具体的にどのようにして、共感すればよいのでしょうか?その方法やスキルはありますか?

 共感するスキルは、患者−医療者間の基本的なコミュニケーションに分類され、具体的には以下の3つのスキルが挙げら れます。(1)患者さんの気持ちを繰り返す:患者さんの気持ちを自分の言葉に置き換えて繰り返すことにより、患者さんの 気持ちを理解していると示すことが可能となります。また患者さんの気持ちを確認することにもなります。(2)沈黙を積極的 に使う:数秒の沈黙の時間をとることにより、患者さんが気持ちを整理する時間を与えることになります。(3)患者さんの 気持ちを探索し理解する:患者さんが黙っていたり平然として見えるからといって動揺していないとは限りません。患者さん の気持ちを見た目だけで判断せず、患者さんの心理的な状態が不明瞭な場合は、「どのようなお気持ちですか? 教えて いただけますか?」と直接聞く方法もあります。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 44-45, 2007

Q2-10 患者さんと接する際に、日本人においては患者さんへ触れることは有効でしょうか?

 国立がんセンター東病院に通院中の患者さんを対象に行った「悪い知らせを伝える面談時の医師のコミュニケーション に対する患者さんの意向」の研究では、医師が患者さんの手や肩に触れることを望む人は6.7%、どちらでもよい人は 34.6%、望まない人は58.8%という結果であり、日本人では望まない人が多いことが示されています。なお、米国において も同様に、患者さんの意向調査の結果、医師が患者さんの「手や肩に触れる」ことへの意向が46項目中最も低いことが 示されています。

Fujimori M, Parker PA, Akechi T, Sakano Y, Baile WF, Uchitomi Y.: Japanese cancer patients' communication style preferences when receiving

bad news. Psychooncology. 2007; 16(7): 617-25.

Parker PA, Baile WF, de Moor C, Lenzi R, Kudelka AP, Cohen L.: Breaking bad news about cancer: patients' preferences for communication. J

Clin Oncol. 2001; 19(7): 2049-56.

Q2-11 どのように言葉をかけたらいいか見当たらず傾聴だけに終わることもあります。

コミュニケーションをつないでいくために、傾聴のポイントや傾聴の中で考えておくべきことはありますか?

 医療者の立場になると、傾聴しているだけではコミュニケーションを図っているように思えず、患者さんへ温かい言葉を ついついかけたくなるものですが、このような場面では、かける言葉がなくても、しっかり沈黙を挟んで傾聴することで 十分に患者さんに安心感を持っていただけることにつながります。患者さんの話を最後まで遮らずに静かに耳を傾けること は「あなたの話をすべて聴く用意がありますよ、聞いていますよ」というサインになり得ます。患者さんの目や顔をよく 見て、うなずきながら聞くことがポイントです。

Buckman R: How to break bad news; a guide for health care professionals. Westwood Creative Artists,1992. 恒藤暁, 他訳:真実を伝える−コミュニケー

ション技術と精神的援助の指針. 診断と治療社. 47‐49, 2000

Q2-12 傾聴や共感を行うことは、患者さんに対してどのような影響をもたらすのでしょうか?

 傾聴や共感を行うことによって、患者さんは自分の感情を無条件に受け入れられていると感じて癒され、信頼関係が 芽生え、安心して打ち明けられるようになる第一歩になります。医療者との関係を通して安心感を得ることによって、コミュ ニケーションが一層豊かになり、患者さんの精神的苦痛の軽減や医療への満足感の向上などにつながると考えられます。

Buckman R: How to break bad news; a guide for health care professionals. Westwood Creative Artists,1992. 恒藤暁, 他訳:真実を伝える−コミュニケー

ション技術と精神的援助の指針. 診断と治療社. 37‐64, 2000

Q2-13 自分の意志を示さずに医療者にすべてを任せるような患者さんとは、

どのようなコミュニケーションをとることが望まれますか?

 戦前生まれの高齢者ではよくある意向です。医師がすべて決めるものだという時代の反映で、尊重されるべきものかも しれません。また、実際にご自身の意向をはっきりと出さない、出したがらない患者さんもおられます。その場合、まず大事 にしなければならないことは、「どうして意志を示さないのか、示したくないのか」、背景にある理由を確認することです。 信頼している医療者に任せることに満足している場合もあれば、医療者や家族に遠慮して意志を示すことをためらって いる場合もあります。その理由を確認し、対処を進めていきます。その上で、いつでも希望があれば、意向を示してほしい ことを伝えます。

(11)

Q2-14 日常の業務の中で、患者さんにどこまで寄り添ってフォローを続け、

話をしていけばよいのでしょうか?

 日常業務の可能な範囲で寄り添っていただければよいと思います。ある程度時間を決めて、それ以外の時間には考えすぎ ないことも、医療者自身の健康の維持や燃え尽きの予防として大切です。時間的に困難な場合には、チームの医療者(看護師 や心理士)を紹介することも有用です。また、精神的に脆弱な患者さんだと思われた場合には精神保健の専門家に相談して みることも一つです。

Q2-15 個人的に相談を希望される患者さんから、メールアドレスや連絡先を求められた際はどのように

対応したらよいのでしょうか?

 個人的な連絡先は教えられないことを伝え、病院の連絡先を提示します。そして、勤務中には対応可能なこと、それ以外 には他の医療者が対応することを伝えます。それでも、個人的な連絡先を求める患者さんがいた場合には、一人で抱え込ま ずに、上司やリスクマネージャーなど病院関係者や第三者に相談しましょう。

Q2-16 時間がとれない中で患者さんとのコミュニケーションが長引く場合、話の終わりや区切りをつける

タイミングに悩むことがあります。どのように対応したらよいのでしょうか?

 忙しい日常業務の中で、患者さんの話をじっくりと聞く時間をとれないことがあります。そんな時は、途中でまとめたり 無理に話を切り上げようとせず、「申し訳ありません、他のお部屋をまわってから伺いますので一旦失礼いたします」と断り を入れ、「明日また聞かせてくださいね」「○時くらいにまた伺ってもよいですか?」など、次につながる声掛けをすること、 また口約束ではなく、それを実行することが大切です。  ただし、患者さんの様子や置かれている状況を考慮し、機を逸さず患者さんの話を聞き、必要なサポートを提供すること が重要となる時もあります。必要時は代行可能業務を他のメンバーが行うなど、「チーム単位で患者さんをケアする」という 認識を日頃からチームで共有することも大事でしょう。

Q2-17 がん医療における患者さんとの対応において、医療者自身が疲弊しないための方法や

工夫は何かありますか?

 頑張りすぎないことです。もちろん目の前の患者さんに対して、一生懸命対応することは大切です。ある程度時間を決め て、それ以外の時間には考えすぎないことも、医療者自身の健康の維持や燃え尽きの予防として大切です。チーム医療を 実践し、他の医療者(看護師や心理士)の助けを借りることも有用です。時に同僚と愚痴を語り合い、ストレスを発散しま しょう。また、コミュニケーション・スキルを学習し、患者さんとの対応策を知っておくことも有効です。コミュニケーション・ スキルのトレーニングを十分受けたと回答した医師に比べ、不十分だったと回答した医師の燃え尽きが高いことが報告 されています。

●Ramirez AJ, Graham J, Richards MA, Cull A, Gregory WM, Leaning MS, Snashall DC, Timothy AR.: Burnout and psychiatric disorder among

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がんの診断

Q2-18 患者さんが告知を希望しない場合、どのように対応したらよいのでしょうか?

 悪い知らせを伝える際は、患者さんの意向を伺いつつ行うことが重要です。特に、告知に関しての考え方については、 できれば事前に確認しておきたいところです。患者さんが告知を希望しないという意志をはっきりと表明している場合、 その意志は尊重しなければなりません。  しかし、一方で、患者さんが自身の病状や治療について十分な情報を得る権利を持っているという認識を患者さんと共有 することも大切です。伝えること/伝えないことのメリット/デメリットを話し合った上で、再度、告知の希望を話し合います。 告知を希望しない理由を尋ねたり、現時点で聞きたくなくても今後希望があればいつでも説明できることを伝えたりする といった配慮も、今後の良好な治療関係につながると言えるでしょう。

Faulkner A, Maguire P: Talking to Cancer Patients and Their Relatives. Oxford University Press, 1994. 兵頭一之介, 江口研二訳:がん患者・家族と

の会話技術. 南江堂. 69, 2001

Q2-19 告知しないことが望ましい患者さんやケースはありますか?

 告知を「しないことが望ましい」ということは基本的にはありません。ただし、「告知」にはさまざまな情報が含まれており、 すべてを一度に伝えることが必ずしも望ましいとは言えません。患者さんが何をどの程度知りたいかという意向への配慮、 またどのように伝えるかについての配慮も必要です。  また、患者さんの認知機能、理解力、精神状態などに問題があるケースでは、いつどのように伝えるかということに関して 特に注意を要します。判断に迷うケースについては精神科へのコンサルテーションや、各診療科や病棟、緩和ケアチームの カンファレンスなどで意見を交換し、検討するのも一つの方法でしょう。

Q2-20 未告知の患者さんとは、どのように接すればよいのでしょうか?

 「未告知」の状況としては、(1)診断確定前もしくは確定直後の受診前、(2)告知を患者さん本人が拒否、あるいはその他 の理由で診断確定後も未告知が考えられます。  (1)の場合、患者さんがどの程度深刻な事態を予測しているかを知り、告知への心の準備をサポートすることが大切です。  (2)では患者さんの複雑な気持ち、家族など周囲の複雑な思惑の関与、医療者側の真実を伝えていない後ろめたさから 患者さんとの接触を避けることなどが危惧されます。  担当医の立場で関わる場合には基本的に告知の方向で対応し*、それ以外の立場で関わる場合は、気がかりについて 尋ね患者さんの気持ちを理解し、共感を示し、気持ちを和らげるようなコミュニケーションを続けるとよいでしょう。また、 患者さんが担当医に対し告知を拒否する一方、他の医師やコメディカルから真実を聞き出そうとすることもあるため、あら かじめチーム内で見解や対応を統一しておくことも大切です。 *:Q2-18、19 参照

Buckman R: How to break bad news; a guide for health care professionals. Westwood Creative Artists,1992. 恒藤暁, 他訳:真実を伝える−コミュニケー

ション技術と精神的援助の指針. 診断と治療社. 205‐207, 2000 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 11‐24, 2007

Q2-21 告知の場面で、患者さんがどこまで知りたいのか、その意向はどのように確認したらよいのでしょうか?

 悪い知らせを伝える際、「患者さんがどの程度知りたいか」を尋ねることで、病気が深刻であることを示唆したり不快感を 引き起こしたりするのではと懸念する医療者も少なくありません。しかし、患者さんと医師が情報を共有しない方が患者 さんの苦痛が大きいとする研究や、知ることを望む患者さんの比率は75∼97%という報告もあります。これらからも、意向 を尋ねられることを希望する患者さんも多く、また、告知を望まない患者さんが否認する機会を奪われたり患者さんの苦痛 が増したりすることも考えにくいようです。  基本的には詳しく伝えることを前提とし、具体的には、話の途中で「ここまではご理解いただけましたか」「質問はないで すか」「話の進み具合が速すぎませんか」「次に進んでよいですか」「今日はここまでにしますか」などと質問しながら進める ことで、患者さんの知りたい情報量を知ることもできます。

Buckman R: How to break bad news; a guide for health care professionals. Westwood Creative Artists,1992. 恒藤暁, 他訳:真実を伝える−コミュニケー

ション技術と精神的援助の指針. 診断と治療社. 73‐78, 2000

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Q2-22 告知したにも関わらず、告知自体を忘れた患者さんへの再告知では、

どのような点に留意し進める必要がありますか?

 告知自体を患者さんが忘れるという現象については、大きく分けて(1)健忘のために告知を覚えていない場合、(2)医療 者は告知と考えても、患者さんが告知と捉えていない場合、(3)強度の否認のために“覚えていない”という言葉で表現す る場合、の3つを考える必要があります。  (1)は健忘の原因として認知症やせん妄などの精神疾患を合併していないか鑑別し、本人の見当識に問題がないか確認 する必要があります。  (2)は「病気についてどのようにお考えになりましたか」などと患者さんの病状認識を再確認すると同時に、自身の言葉や 態度も振り返り、曖昧な伝え方をしていなかったか、患者さんの理解度を確認せずに一方的に話をしていなかったかなど、 認識が乖離した理由を明らかにし、次に話す際はその点に留意しながら伝えるとよいでしょう。  (3)は悪い知らせを受け入れることへの拒絶であり、強い防衛機制が働いていると考えられます。一方、否認は圧倒的な 脅威に対する防御反応であるという理解も大事です。したがって、否認への応答の仕方としては、否認の防衛機制をチーム で理解し、また患者さんが悪い知らせに正面から対処するための準備が整うまで否認を尊重しましょう。これらを踏まえて 再度告知を行うとよいでしょう。

Buckman R: How to break bad news; a guide for health care professionals. Westwood Creative Artists,1992. 恒藤暁, 他訳:真実を伝える−コミュニケー

ション技術と精神的援助の指針. 診断と治療社. 117‐124, 2000

Q2-23 若年者への告知やコミュニケーションでは、注意すべきポイントはありますか?

 患者さんを対象としたコミュニケーションに対する意向調査の結果から、若い人ほど医学的な情報を多く、明確に説明して ほしい、質問を促してほしいという傾向が示唆されています。しかしながら、その影響は大きくないため、若い患者さんに 限らず個々の患者さんの意向は、その都度確認することが何よりも重要です。

Fujimori M, Parker PA, Akechi T, Sakano Y, Baile WF, Uchitomi Y.: Japanese cancer patients' communication style preferences when receiving

bad news. Psychooncology. 2007; 16(7): 617-25.

Q2-24 がんの確定診断に伴う検査中に、患者さんが不安を訴えられる場合や

そのような段階からのコミュニケーションはどのように対応したらよいのでしょうか?

 がんの精査中、患者さんは「大丈夫、きっとがんじゃない」という思いと「がんだったらどうしよう・・・」という思いの間で 揺れ動きます。また、慣れない場所で見慣れない機械や初めての医療者に囲まれての検査そのものが、患者さんにとって 大変ストレスのかかるものです。まずは検査予約や検査実施を滞りなく進め、検査に関わる患者さんのストレスを最小限に するように努めます。負荷のかかる検査も多いため、検査終了後にはねぎらいの言葉をかけます。不安を訴えられる場合 は、その気持ちを理解していることを伝え、不安の原因が情報不足や誤解である場合は正確な情報を提供します。わが国 のがん患者さんを対象にした調査では、結果の伝え方について、「検査結果がすべて出揃ってから話してほしい」方と 「結果が出たものから少しでも早く教えてほしい」方とに意向が分かれました。事前に患者さんの意向を確認し、意向に 沿った情報提供をすることも患者さんの不安を軽減する一助となるでしょう。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 37, 2007

Fujimori M., Akechi T.: Morita T et al.: Preferences of cancer patients regarding the disclosure of bad news. Psycho-Oncology 16(6) 573-581,

(14)

再発/進行・抗がん治療の中止

Q2-25 再発/抗がん剤の中止などの悪い知らせを伝えるのが難しいコミュニケーションは

どのようにしたらよいのでしょうか?

 再発や抗がん剤治療の中止などの悪い知らせを伝える際には、SHARE*の4つの要素に配慮したコミュニケーションが 有効です。十分に時間をとって話ができる環境を整えます。外来の場合には、外来の最後に予約を入れる、PHSを看護師に 預けるなどの工夫をします。  はじめに患者さんの病状認識を確認し、これから伝えることとのギャップを認識した上で話をします。話をする際にも、 患者さんの病状認識や理解度を確認しながら、患者さんのペースに合わせて話を進めます。怒りや否認などの感情表出が ある場合も、避けずに患者さんの話に耳を傾け、患者さんの言葉の背景にある心情や気がかりを探索します。「驚かれまし たよね・・・」「信じられないというお気持ちでしょうか・・・」と共感的な態度で接します。今後のことを話し合う際には患者 さんが希望を持てるように「できないこと」だけでなく「できること」を伝えます。特に、抗がん剤治療の中止を伝える際には、 患者さんが「見捨てられる」と思うことのないよう、今後も責任を持って診療にあたること、見捨てないことを伝えます。 *:①患者さんが望むコミュニケーション SHARE 参照 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 34-43, 47-57, 2007

Q2-26 再発での入院時や入院中、どのような点に注意してコミュニケーションをとる必要がありますか?

 入院時や入院中は外来に比べ十分な時間を確保しやすいこと、また入院中であれば面談室などプライバシーが保たれる 環境で面接することが可能であることから、SHARE*のSにあたる場の設定が整えやすく、患者さんが入院している設定 の方が医療者にとってコミュニケーションがとりやすくなります。ただし、面接を行う時間帯に関しては注意が必要です。 通常、入院での面接は日常診療の後、夕方から夜にかけて行われることが多く、悪い知らせを伝えられた患者さんは面接後 に不安が増大し、不眠が生じることも考えられます。再発を伝えるような重要な面接は、可能な限り日中のスタッフが多い 時間帯に設定することをお勧めします。 *:①患者さんが望むコミュニケーション SHARE 参照 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 11-22, 2007

Q2-27 再発の告知を受け入れられず、

「自分は治療をすれば治る」と信じている患者さんに対して、

「死」という言葉を使った方がよいのか、患者さんの受け止め方のままにとどめておいた方がよいのか、

どのように対応するのが望ましいのでしょうか?

 「悪い知らせを信じたくない」という拒否反応である否認は、危機に対して心理的に距離を置いて、自分を守ろうとする 合目的な対処方法です。がんの臨床経過に沿って段階的に心理過程を踏んで進んでいくというよりは否認、絶望感、怒りや 取引などの防衛機制が同時に混在し患者さんは心のバランスを保って希望を維持していきます。日本人にとって望ましい 最期を迎えるにあたり、「死」を意識することについては個人差が大きいといわれています。  したがって「死」という言葉を使って死の受容を目標とするのではなく、患者さんの言葉、気持ちに耳を傾けることが重要 です。患者さんが悪い知らせに向きあう準備が整うまで、現実を否定する言動を認めますが、決して真実を否定するような 誤った情報を提供してはなりません。医療者はどういう状況下でも希望を支えつつ、最善の治療を継続していくこと、同時 に、苦痛はコントロールできることを繰り返し積極的に伝えましょう。 ●小川朝生・内富庸介編:精神腫瘍学クイックリファレンス. 創造出版. 49-51, 2009

Miyashita M, Sanjo M, Morita T, et al: Good death in cancer care: a nationwide quantitative study. Ann Oncol 18 : 1090-1097, 2007.内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 119-120, 2007

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Q2-28 過去に抗がん剤による強い副作用を経験したことのある再発患者さんに、薬剤の投与や服用を

拒否された時にはどのように対応したらよいのでしょうか?

 つらい副作用を経験され、化学療法にネガティブなイメージを持ったり、これから始まる治療に対して不安も高まって いるだろうと考えられます。抗がん剤による副作用がもたらす生活の質の低下は患者さんにとって切実な問題です。精神 状態を評価し、治療への参加を促し、生活に関する提案を行っていく上で、抗がん剤の副作用について熟知しましょう。 患者さんの苦痛に焦点を当ててお話を伺い、感情表出を共感的に受け止めることが有用です。これまでの経過を振り返り、 「つらい治療を頑張ってこられましたね」と肯定するのもよいでしょう。十分に患者さんのつらさを支えた上で、患者さんの 病状認識を確認し、新たに始まる治療への期待や不安を尋ねてみましょう。そして、副作用の可能性やその対策を伝え、 予期不安や苦痛の軽減を図りましょう。 ●小川朝生・内富庸介編:精神腫瘍学クイックリファレンス. 創造出版. 45, 51-52, 149, 265-266, 2009

Q2-29 再発患者さんにおいて、抗がん治療に対して過度の期待をされている場合、

どのように対応したらよいのでしょうか?

 患者さんにとって治癒を目的とした初期治療は間違いではなかったが不成功に終わった再発の時期は、とてもつらい 時期です。この再発の時期は将来にわたる重要な決定が待ち受けている時期でもあるので、安易なコミュニケーションで やり過ごしてすぐに治療を決めるのではなく、しっかりと受け止め十分に時間をかける必要があります。不安を回避するため にあわてて治療を決定することは、後悔の種にもなります。まず、患者さんの抗がん治療に対する過度の期待の背景(不安 の回避など)について探索してみましょう。治療決定を性急に行う必要がないことを伝えましょう。がんの治癒が望めません ので患者さん・ご家族の本来の人生目標、生活信条をきちんと聴き出し、患者さんの意向に沿ったがん医療の提供が行われ るよう努めましょう。 ●小川朝生・内富庸介編:緩和ケアチームのための精神腫瘍学入門. 医薬ジャーナル社. 38-39, 2009

Q2-30 再発し、予後が限られている患者さんに結婚、妊娠の希望を相談された時、

どのように対応したらよいのでしょうか?

 患者さんがご自身の病状に合わない希望をお話しされることは、進行・終末期によく観察される問題です。まず、患者さん の希望の内容がどのようなものかを十分に傾聴した後に、現在の病状について医師からどのような説明を受けているのか、 ご自身の病状についてどのように理解しているのかを確認してみてはいかがでしょうか。ご本人が病状の受け入れがまだ できていないようであれば、主治医を含めた医療チームに情報を還元し、チームとしての対応が必要となってきます。希望を あからさまに否定するのではなく、患者さんが希望をお話ししてくれたことへの感謝の気持ちをまず伝え、患者さんの認識を 確認しながら、希望の背景にどのような気がかりや思いがあるのか、十分に間をとって尋ねてみましょう。大切なコミュニケー ションとなってくるものと考えられます。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2007藤森麻衣子・内富庸介編:続がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2009内富庸介・大西秀樹、小川朝生編:サイコオンコロジーを学びたいあなたへ. 文光堂. 2011内富庸介・小川朝生編:精神腫瘍学. 医学書院. 2011

Q2-31 患者さんから、がんが進行し、

「自分はこれからどういう症状が出てつらくなっていくのか、

あるいは死んでいくのか知りたい」と言われた時、どのように対応したらよいのでしょうか?

 患者さんの質問には、がんの進行による症状や死への不安があるものと考えられます。その不安の根底にある気持ちは、 患者さんによって様々です。その症状に耐えられるかどうかを心配している患者さんもいれば、死を迎える療養場所につい て考えているのかもしれませんし、ご家族へ迷惑をかけたくないというお気持ちが強いのかもしれません。どのような気が かりがあるのかによって、どの程度の説明をするかを医療チームとして検討するのがよいのではないでしょうか。病状の ロードマップを知ってコントロール感が増し、落ち着かれる方もいます。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2007藤森麻衣子・内富庸介編:続がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2009

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Q2-32 患者さんが再発を受け入れるまでに時間が必要ですが、それを待つこともできず治療に入ることが

ほとんどのため、副作用に対応しながら心のケアをどうすればよいのでしょうか?

 再発の時期は治療の目標が治癒から延命に変わるため最も深刻な時期です。きちんとコミュニケーションが取れていない 場合が多く、ここからボタンの掛け違いが起こりやすいのです。安易なコミュニケーションをとったり、不安を回避するために あわてて治療を決定するのではなく、十分に時間をかける必要があります。治療決定を性急に行う必要がないことを伝え ましょう。死と向きあい、時間が限られていることに直面する一方で多くの現実的問題に対応しなければなりません。  治療内容にもよりますが、患者さんはこれまでできていたことが難しくなり、周囲の人々の助けを借りなければならない ことが増えてきます。これは患者さんにとっては大変な苦痛です。十分に時間をかけて患者さんと接しながら、機能を維持 し、その低下を予防するプログラムを通して患者さんの生活の質を最大限に維持することを目指し、患者さんの希望を 支える関わりを粘り強く持つことが重要です。 ●小川朝生・内富庸介編:精神腫瘍学ポケットガイド これだけは知っておきたいがん医療における心のケア. 創造出版. 6-7, 2010

Q2-33 患者さんやご家族の治療への希望がとても強かったり、医療者側との考えが一致しない、理解して

もらえないような時にどのように対応したらよいのでしょうか。また、このような時、医療者のストレスも

大きく医療者自身のケアも必要になると考えますが、どのようにしたらよいのでしょうか?

 患者さんやご家族の治療継続への希望が過度に強い場合、現状の認識や将来の見通しを受け入れたくないという気持ちが あるのかもしれません。これまでの経過を再度ゆっくり振り返りながら、患者さん・ご家族の努力をねぎらってはいかがで しょうか。現状の認識や将来の見通しを受け入れられるように、繰り返し説明してみるとよいでしょう。また、ご指摘のように、 患者さんやご家族と、医療チームで方針の不一致がある場合は、医療者のストレスも大きいものとなります。医療チームとして、 患者さんの症状・希望・家族の受け入れなどについての情報を共有しながら、医療チーム内のメンバーそれぞれの気持ちについ ても共有できるように心がけることが重要だと考えられています。第三者を入れたカンファレンスを開くのもよいでしょう。 ●内富庸介・大西秀樹・小川朝生編:サイコオンコロジーを学びたいあなたへ. 文光堂. 2011 ●内富庸介・小川朝生編:精神腫瘍学. 医学書院. 2011

Q2-34 再発を告知された患者さんがいろいろな代替療法などを提示してくる場合、

どのように対応したらよいのでしょうか?

 再発を告知された患者さんの心理的反応は、がんの知識が豊富に整理されている分、事態は極めて深刻で、現実を否認 しきれず破局的な打撃を受けます。患者さんが代替療法を提示してくる心理的・社会的な背景を探索しましょう。主に不安 を抱えていると考えられます。医療者も治癒を目標とした治療が不成功に終わったことを患者さんとともに受け入れること から始めましょう。患者さんやご家族の本来の人生目標、生活信条をきちんと聞き出し、それらを踏まえた上で患者さんの 意向に沿ったがん医療が提供されるよう努めましょう。  その中で代替医療のがんに対する治療効果は科学的に証明されたものではないことをお伝えし、「患者さんにとって 合っていると思えるか、心地よいものか、施行時間の長さ、通院距離の遠さ、予約の取りやすさ、費用の問題、場所やスタッフ の心地よさ、補完代替医療の専門家は標準的ながんの治療をサポートしてくれるかどうか」といったことを患者さんとともに 検討してはいかがでしょうか。 ●小川朝生・内富庸介編:精神腫瘍学クイックリファレンス. 創造出版. 54-55, 2009 国立がん研究センターがん対策情報センター:患者必携 がんになったら手にとるガイド. 学研. 162-163, 2011

Q2-35 外来で再発を告知された患者さんの周りに他の患者さんがいる時にどのような声掛けや、対応を

したらよいのでしょうか? また、患者さんと話す際の目線はどのようにしたらよいのでしょうか?

 再発告知後の患者さんは、初発時よりもがんの知識が豊富に整理されている分、事態は極めて深刻で、現実を否認しき れず、破局的な心理的打撃を受けています。気持ちに十分配慮することが大切です。目線は90∼120度の位置で患者さん と同じ高さにしましょう。患者さんがゆっくり気持ちを整理できるように、できるだけプライバシーの保たれた静かな落ち 着いた場所へ移動してはいかがでしょうか。「誰もがそういう風に感じますよ。あなただけではありませんよ」と気持ちの 動揺を患者さんの多くが経験することを伝えると、患者さんには大きな安心となります。「否認」(「何かの間違いではない か!」)という防衛機制が働き、医師の説明が十分理解されていないことも少なくありません。十分な情緒的サポートを行う と同時に病状認識や理解度の確認を行い、情報の補足や追加が必要な場合は医療スタッフから情報提供したり、医師の

(17)

Q2-36 外来において、時間をとって話を聞くことが業務上困難な時、話すタイミングを逃してしまうなど

1人の患者さんにゆっくり関われないこともあります。このような時の工夫は何かありますか?

 「重要な情報の開示なので、ここはきちんとお話を伺っておかないといけない」と思う場面は、本来なら他の業務を中断 しても伺いたいところですが、多忙な業務の中で十分な時間が取れないことがあるでしょう。重要な面談の前には患者さん にとっても医療者にとっても心の準備が必要です。このような場合、「大変申し訳ないのですが、改めて時間をとってあなた の大事なお話を伺いたいのですが、ご都合のよい日時を教えてください」と率直に話してみてはいかがでしょうか。  改めての面談の際には、プライバシーが保たれる場所や十分な時間を確保し、開始時間を守るなど基本的なコミュニ ケーションを念頭に置きましょう。患者さんの信頼感につながるとともにコミュニケーションの促進につながります。2回 面談することになったことを労り、中断した前回の面談の振り返りを通して病状認識の確認を行った上で患者さんの大事 なお話を伺いましょう。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル −悪い知らせをどう伝えるか−. 医学書院. 44-46, 2007

Q2-37 患者さんは再発を疑いながらも誰かに否定してほしいという思いを強く持っています。

その時に否定してあげられなかったり、声かけの内容についても前向きな言葉が出てこなかったりと、

つらく思いますが、このような時に患者さんにどのように接したらよいのでしょうか?

 患者さんの思いを傾聴する中で、患者さんの思いの背景や契機を尋ねるなどしてみましょう。そして、心配、悲しみ、 不安、落胆などの感情を特定したり、治療効果が感じられないなどの感情の誘因を特定してみましょう。そして、「同じように おっしゃる方は多くいらっしゃいます」「他の患者さんからも同じような悩みを聞きました」など、患者さんに起こっている 気持ちは妥当な感情であることを伝えましょう。感情面をサポートする中で患者さんが涙を流すことがあるかもしれません。 医療者との信頼関係ができているからこそ患者さんは泣くことができると考えられます。患者さんとのコミュニケーション の中で、医療者がつらいと思う状況から逃げ出さず、沈黙の時間をとり、何も言わずに、患者さんのそばにいるだけでも 共感を示すことは可能です。言語的だけでなく非言語的コミュニケーションも試みてみましょう。 ●小川朝生・内富庸介編:精神腫瘍学クイックリファレンス. 創造出版. 331-333, 2009

Q2-38 関わりの期間が短い方の場合、信頼関係の確立ができていないとなかなか深いところまで話を

することが難しいです。短い時間で有効的にコミュニケーションをとる工夫はありますか?

 まず、カルテや看護記録などから患者さんの情報を十分に得ましょう。面接を行う場合は十分な時間をとったり、しっかり お話を伺うためにプライバシーを守れる静かな環境を用意するといった、場の設定が重要です。面接のはじめには病歴の 振り返りを行い、患者さんについて知っていること、今の時点で理解していることを伝えましょう。その上で、患者さんが 今一番困っていること、心配していることは何かを尋ねましょう。特に患者さんの関心事については症状の有無だけで なく、生じている障害の程度、低下した日常生活活動動作などを尋ねてみましょう。そうすることで、患者さんとの信頼関係 の構築につながり、患者さんからの重要な情報の開示につながりやすくなると考えられます。 ●小川朝生・内富庸介編:精神腫瘍学クイックリファレンス. 創造出版. 36-37, 2009

Q2-39 看護師は、医師から再発を伝えられているはずの患者さんがどの程度まで理解されているのか

わからないことがあります。外来の中で患者さんとどのように時間をつくり、

コミュニケーションをとればよいのでしょうか?

 否認、困惑、希望の混在した状況なのでしょうか。まずは、患者さん・ご家族の病状認識のギャップ、患者さん・ご家族固有の 意向を明らかにしましょう。医師および患者さん方の意向を確認して、可能であれば悪い知らせを伝えられる場面に同席し、 継続してサポートを行っていきたいことを明確に伝えましょう。面接の場に立ち会う場合は、面接に支障をきたさない、 看護師は医師と患者さん方の中間で、患者さん方に対し顔が見える場所に位置するとよいでしょう。必要時うなずいたり アイコンタクトを行い緊迫した場を和らげましょう。  患者さん方との信頼関係ができていて、患者さん方の意向が医師に伝わっていない場合は、必要な時には、患者さんの 意向を医師に代弁してみましょう。悪い知らせが伝えられた後は意識して情緒的サポートや病状認識の確認を行いましょう。 情報の補足や追加が必要な時は医療スタッフから情報提供したり、再度医師から説明する場を調整しましょう。

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Q2-40 医師が、抗がん治療中止を告げる際にどのような配慮が必要でしょうか?

 難治がんを伝える時、再発を伝える時と同様な配慮が必要となってきます。  抗がん治療中止を告げる際には、これまでの経過についてまずは十分時間をかけて振り返りましょう(例:あの時の治療 はつらかったですが、よく頑張られましたよね、本当にご家族も大変でしたよね)。患者さん、ご家族の努力を労い、思いを 受け止めること、患者さんが希望を持てる情報を伝えること、患者さんのこれからの生活や利用できるサービスやサポートに 関する情報を提供すること、今後も責任を持って診療にあたること、患者さんの気持ちを支える言葉をかけること、などに ついて配慮があることが望ましいとされています。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2007

Q2-41 治療ができることで生きる希望を持っている場合、新たな目標を持ってもらうこと、それを見いだす

こと、希望をなくしてしまわないようにするためにどのようにしたらよいのでしょうか?

 治療ができることで生きる希望を持っている患者さんが、抗がん治療中止という方針の大転換を迎える際、この状況を すぐに受け入れられないかもしれませんし、新たに目標を掲げることも困難を伴うことでしょう。患者さんの気持ちに寄り添 い、患者さんが必要としていることを探してみてはいかがでしょうか。例えば、患者さんが希望を持てるように、「できないこ と」だけでなく「できること」を伝えることや、今後も医療チームとして、責任を持ってサポートを継続することを保証する。 また場合によっては積極的な目標の提示よりも、ただ気持ちを受け止め見守ることを必要とされているかもしれません。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2007 ●藤森麻衣子・内富庸介編:続がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2009

Q2-42 患者さんやご家族は、

「抗がん治療中止=死」と思われるため、残された時間をどう過ごしたいか

などについてのコミュニケーションが取りづらいことがあります。

今後の希望について、どのように引き出したらよいのでしょうか?

 「抗がん治療中止=死」というイメージをお持ちの場合は少なくありません。事実、抗がん治療に専心してきたわけです から、大変つらい時期を患者さん、ご家族そして医療者と十二分に時間をとって受け止めなければなりません。初回治療から 全経過の振り返りを行って、これまでの努力を労い、患者さん、ご家族の気持ちの表出に努めます。そうして初めて、残され た時間をどう過ごしたいか、などの希望についての話題が出てくることもあります。急にその話題を持ち出すと患者さん やご家族も戸惑われる方がいらっしゃいますので、場合によっては、抗がん剤中止となるずっと前から、少しずつ話題に出せ るとよいのかもしれません。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2007藤森麻衣子・内富庸介編:続がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2009

Q2-43 「抗がん治療中止=死」

「医師に見放された」と患者さんから言われた時、また、その後、患者さんの

不安が強くなり抗不安薬等の処方となった場合、どのように対応したらよいのでしょうか?

 患者さんが「抗がん治療中止=死」「医師に見放された」とおっしゃった時は、まずはその気持ちに寄り添い、患者さんと 一緒に受け止めてみましょう。患者さんの気持ちが落ち着いて整理がつくと、希望を持てるように、「できないこと」だけ でなく「できること」を伝えることや、今後も一緒に責任を持ってサポートを継続することを保証する。また場合によっては 積極的な目標の提示よりも、ただ気持ちを受け止め見守ることが必要なのかもしれません。  患者さんの不安が強くなり、抗不安薬等の処方となった場合、必要があれば精神科などの専門家に相談してみましょう。 ●内富庸介・藤森麻衣子編:がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2007藤森麻衣子・内富庸介編:続がん医療におけるコミュニケーション・スキル. 医学書院. 2009

参照

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