7.Parenting
Efficacyに
関 す る
要 因 の 分 析
神 戸 市 看 護 大 学 澤 田敏 子 Iは じめ に 女性 に と って 、 妊 娠 期 は 、母 親 とな る こ と を 現 実 的 に 認 識 す る 出発 点 で あ る。 この 時 期 は 、 心 身 共 に 親 と して の 準 備 を整 え て い く こ とが 出 産 後 の 育 児 に 好 影 響 を もた らす こ とは 周 知 の こ とで あ る。親 と して の 準備 性 を高 め る過 程 に は 、 個 人 の特 性 、 例 え ば、 生 育 歴 、妊 娠 の 時 期 、 保 育 経 験 の 有 無 、 乳 児 へ の感 情 、保 育感 情 な どが 絡 み 合 い 、 これ らの 要 因 が影 響 し合 っ て 、 妊 娠 期 の子 育 て感 は形 成 され る と思 われ る。 しか し、 現 代 は 、 親 にな りきれ な い母 親 や 妊 娠 ・育 児 情 報 の 過 多 に よ り、正 しい情 報 の選 択 が で きず 、 育 児 不 安 を抱 え て い る母 親 も少 な くな い 。 こ の よ うな 中 で 、妊 娠 期 の女 性 が 、 出 産 後 に育 児 を 円 滑 に ス ター トす る た め に は 、 妊 娠 期 か ら、母 親 自身 が 育 児 に関 す る認 識 を 明 らか に す る必 要 が あ る と考 え る。 本 研 究 は 、 出産 前 に妊 婦 が 、 子 育 て につ い て の 自己 効 力 感 を どの よ うに 自 己認 知 して い る の か 、 ま た 、 そ の 関連 要 因 を 明 らか に す る こ とを 目的 と した。 【用 語 の操 作 的 定 義 】Parenting-Efficacyと は 「母 親 が 親 と して 、 そ の役 割 に つ い て 、 わ が子 の 育 児 を行 えそ うだ と予 期 す る こ と」 を言 う。 な お 、 本 研 究 で は、 出産 体 験 も この 内 容 に 含 む こ と と した 。 II研 究 方 法 研 究 対 象:研 究 の 趣 旨 に 同 意 ・協 力 が 得 られ 正 期 産 正 常 分 娩 が予 想 され る妊 婦 と した。 調 査 方 法:質 問紙 調 査 ① デ モ グ ラ フ ィ ック要 因(年 令 ・妊 娠 週 数 ・出産 予 定 日 ・妊 娠 ・出産 回 数 ・家 族 構 成 ・夫 の 単 身 赴 任 の 有 無 ・最 終 学 歴 ・職 業 の有 無)② 妊娠 ・出産 に 関 す る こ と(妊 娠 の 計 画性 ・妊 娠 出 産 の 心 配 ・過 去 の 妊娠.出 産 の 異 常 の 有 無 ・受 診 施 設 ・里 帰 り分 娩 の 有 無 ・ 保 育 経 験 の 有 無 ・保 育 感 情 、 乳 児 へ の 感 情)③ 一 般 性 自 己 効 力 感 尺 度(GSES:坂 野 ら1989) ④Prenatal.Parenting-Efficacy尺 度(以 下 Pre.PSES:(Froman&Owen 1989)の 先 行 研 究 を 参 考 に 作 成),内 容 の 妥 当 性 は 、 妊 娠 後 半 期 に あ る 妊 婦 に 聞 き 取 り 調 査 を 行 い 、 同 時 に 、 教 育 研 究 に 従 事 し て い た 母 性 看 護 の 専 門 家3名 と 発 達 心 理 学 の 研 究 者1名 の 意 見 を 照 合 し 検 討 した 。 な お 、 各 質 問 項 目 は 、5段 階 の リ ッ カ ー ト尺 度 法 で 回 答 を 求 め 、 基 本 統 計 ・ANOVA.重 回 帰 分 析 を 行 っ た 。 III結 果 及 び 考 察 質 問 紙 の 配 布 部 数 は490部 で 、 有 効 回 収 率 は 79%で あ っ た 。 対 象 者 の 年 齢 は 、 平 均296才 (SD3.96)で 、 調 査 時 の 妊 娠 週 数 は 、 平 均34週 (SD4.34)、 初 産 婦214名(55.3%)・ 経 産 婦173 名(45.7%)で あ っ た 。2度 の 予 備 的 調 査 を も と に 、 作 成 さ れ たPre-PSESの 全 体 の 信 頼 係 数 は 、 r=.91で 高 い 信 頼 性 が 示 され た 。 そ の 内 容 は40 項 目 か ら な り 、 因 子 分 析(主 因 子 法 ・バ リマ ッ ク ス 回 転 法)を 用 い て 検 討 した 結 果 、 最 終 的 に 32項 目6カ テ ゴ リに 分 類 さ れ た 。 1)出 産 前 のParenting Efficacyを形 成 す る 背 景 要 因 出 産 前 のParenting Efficacyは 、 保 育 経 験 が あ る も の 、 保 育 感 情 が 肯 定 的 な も の 、 妊 娠 の 計 画 性 が あ る も の 、 乳 児 へ の 感 情 が 肯 定 的 な も の が 高 か っ た(p<0.05)。 保 育 経 験 が あ る も の に 関 して は 、Banduraの い う、 以 前 の 遂 行 経 験 や 代 理 的 経 験(モ デ リ ン グ)が あ る こ と に よ り 、Parenting Effiacyが 高 ま っ て い る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 Ledenman(1981)は 、 初 産 婦 は 経 産 婦 に 比 べ て 有 意 に 少 な い 自信 を 持 つ こ と を 述 べ 、Macer(1986) は 、 よ り 年 長 、 あ る い は よ り教 育 の あ る 母 親 が 自 己 に 関 して よ り高 い 予 想 を 持 っ こ と を 報 告 し て い る。 さ ら に 、Froman&Owen(1989)は 母 親の 年 齢 お よ び 出 産 経 験 が 乳 児 ケ ア に 関 す る 自信 に 関 係 す る こ と を 発 見 し て い る 。 本 研 究 の 結 果 で は 、 年 齢 差 や 教 育 歴 に よ る 差 は み られ な か っ た が 、 育 児 経 験 の あ る母 親 や 経 産 婦 に お い て は 有 意 に 高 いParenting Efficacyを示 し て い た 。 ま た 、 そ の 他 の 要 因 と し て 、 普 段 の 行 動 に つ い て の 自 己 認 知 が 影 響 され る と 思 わ れ る が 、 検 討 結 果 で は 、 普 段 の 行 動 の 自 己 効 力 感 とParenting Efficacyと の 相 関 は 弱 い 相 関(r=.30)が 見 ら れ 、 普 段 の 行 動 で の 自 己 効 力 感 とParenting Efficacyにつ い て 、 初 産 婦 ・経 産 婦 と も に 影 響 す る 要 因 で あ る こ とが 示 さ れ た(初 産 婦p=0.00,経 産 婦P<0.001)。 2)出 産 前 のParenting Efficacyを 形 成 す る 要 因 ① カ テ ゴ リ別 の 比 較 結 果 2度 に わ た る 予 備 的 調 査 の 結 果 に 基 づ き 作 成 さ れ たParenting Efficacy尺 度 の 各 カ テ ゴ リ は 、 出 産 体 験 の 予 期 ・出 産 後 の 生 活 予 期 ・育 児 ス ト レ ス 感 ・乳 児 へ の 愛 着 行 動 の 予 期 ・育 児 技 術 行 動 の 予 期 ・育 児 全 般 の 自 信 か ら形 成 され た 。 各 カ テ ゴ リ別 に 初 産 ・経 産 婦 別 に 比 較 検 討 し た 結 果 、 出 産 体 験 の 予 期 に つ い て は 、 い ず れ の 質 問 項 目 も 経 産 婦 が 有 意 に 高 い 結 果 を し め し て い た 。 こ れ は 、 出 産 経 験 の あ る 妊 婦 と 出 産 未 経 験 の 妊 婦 で は 差 が 生 じ る の は 当 然 の 結 果 で あ る と い え る 。 しか し 、 個 人 要 因 別 に み る と一 概 に は 言 え な い 結 果 も示 さ れ た。 出 産 後 の 生 活 予 期 に つ い て は 、 初 産 婦 は 、 出 産 後 の 生 活 に つ い て 、 肯 定 的 に と ら え て い る 傾 向 に あ っ た 。 こ の 結 果 は 、 経 産 婦 は 現 実 的 に 出 産 後 の 生 活 の 楽 し さや 苦 し さ 両 面 を 経 験 し て お り、 初 産 婦 は 、 産 後 の 生 活 予 期 の 中 に は 、 希 望 や 期 待 感 、 空 想 な ど が 込 め ら れ て い る の で は な い か と 思 わ れ る 。 一 方 、 育 児 の 不 安 に つ い て は 、 初 産 婦 が 経 産 婦 よ り強 く認 識 され る結 果(p<0.05)が 示 さ れ た 。 愛 着 行 動 の 予 期 に つ い て は 、 経 産 婦 が 初 産 婦 よ り も 高 い 自 己 遂 行 可 能 感 を 持 つ 傾 向 に あ る が 、 有 意 な 差 は 見 ら れ な か っ た 。 育 児 技 術 行 動 の 予 期 に つ い て は 、 育 児 環 境 を 整 え る こ と や 具 体 的 な 技 術 を 要 す る 育 児 行 動 に つ い て は 、 経 産 婦 が 初 産 婦 よ り も 高 い 自 己 遂 行 可 能 感 を 持 ち 、 有 意 差(p<0.05)が 見 られ た 。 ② 育 児 態 度 とParenting Efficacyに つ い て 育 児 態 度 を 几 帳 面 ・ 自然 に ・理 想 ・上 手 に 、 の4側 面 か ら 出 産 前 のParenting Efficacyを 検 討 した 。 そ の 結 果 、 初 産 婦 で は 、 全 て の 側 面 が 影 響 し(p<0.05)、 経 産 婦 で は 、 理 想 ・上 手 に 、 が 有 意(p<0.05)な 差 を 示 し 、 几 帳 面 が 有 意 傾 向 (p=0.06) を 示 して い た 。 ③ 受 診 施 設 別 の 比 較 助 産 院 で 受 診 ・出 産 し た 経 産 婦 は 、 病 院 で 受 診 ・出 産 し た 経 産 婦 に 比 べ て 有 意 に 高 い 結 果 が 見 られ て い る(p<0.05)。 ま た 、一 部 の 要 因 に は 、 出 産 体 験 の 満 足 感 や 現 在 の 育 児 に つ い て の 自 信 も 影 響 す る こ と が 示 さ れ た 。 こ れ ら は 、 経 産 婦 の 育 児 に 対 す る認 識 と し て 、 単 に 経 験 が あ る だ け で 育 児 の 認 識 が 高 ま る の で は な い と い う こ と を 示 し て い る も の と 考 え る 。 次 に 、 初 産 婦 の 場 合 は 、 助 産 院 に 受 診 す る も の が 病 院 に 受 診 す る も の に 比 べ て 有 意 傾 向 でParenting £Efficacyが高 い 結 果 が 示 され た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 妊 産 婦 に ど の よ う な 看 護 体 制 や 関 わ りが 必 要 な の か を 示 唆 す る も の で あ る と 考 え る 。 3)Pre-PSESの 有 効 性 と今 後 の 課 題 Pre-PSESは 、 対 象 者 お よ び 対 象 者 を 支 援 す る 臨 床 実 践 家 が 、 育 児 に 対 す る 自 己 効 力 感 を 把 握 す る 際 に 有 用 で あ る と 考 え る 。 出 産 前 に 育 児 に つ い て の 自 己 認 識 を 明 ら か に す る こ と は 、 今 後 の 育 児 の 取 り組 み を ア セ ス メ ン トす る 上 で 役 立 っ 指 標 で あ る と 思 わ れ る 。 ま た 、 育 児 支 援 を 行 う 一 資 料 と し て 活 用 で き る か も し れ な い 。 し か し 、 こ の 尺 度 の み でParenting Efficacyを測 定 す る に は 限 界 が あ り、 今 後 、Parenting Efficacy尺度 の 妥 当 性 に つ い て 再 吟 味 し 、 よ り 洗 練 され た 尺 度 の 作 成 が 望 ま れ る。 IV結 論 出 産 前 のParenting Efficacyに つ い て 自 己 記 入 式 質 問 紙 法 を 用 い て 、 そ の 内 容 を 検 討 した 。 そ の 結 果 、 出 産 前 のParenting Efficacyを 高 め る 背 景 要 因 と し て 、 ① 以 前 の 遂 行 経 験 や 代 理 的 経 験 が 関 与 し て い た 。 ② 経 産 婦 は 初 産 婦 よ り も 出 産 前 のParenting Efficacyを 高 く示 して い た 。 ③ 経 産 婦 に お い て も 、 以 前 の 遂 行 経 験 に 不 満 足 感 や 否 定 的 感 情 を 伴 う場 合 はParenting Efficacyは 低 い 結 果 を 示 して い た 。 引 用 ・参 考 文 献
Bandura,A ( 1977) .Self Efficacy:Toward a unifying theory of behavioral change , Psychological Review, Vol 84,No2,191-215.
Froman & Owen (1989) .Infant Care Self Efficacy, Scholarly Inquiry Nursing Practice.: An International Journal, Vol.3,No3,199-211
Lederman,R.P. (1996) .Psychosocial adaptation in pregnancy:Splinger Publishing Company.
Mercer,R.T (1986) .First-time motherhood Experiences from teens to forties.New York
8.国
際 結 婚 カップ ル が 妊 娠 ・出 産
を 通 して 行 な った 意 思 決 定 の 実 現 ―一
組の
日本 国籍 女性 と外 国 籍男 性カップル の 出産 に関 わ って― 聖 路加 国際 病 院 岡 崎恵 美子 I.は じめ に 国 際 結 婚 カ ップ ル が 日本 国 内 で お 産 を 迎 え る 際 、 女 性 が 日本 国 籍 の 場 合 は 、 女 性 自身 の 生 活 が 外 国 籍 パ ー トナ ー の 国 の 文 化 に 大 き く影 響 され て い る こ と は 見 落 と され や す い。 お 産 に 際 し、 互 い の 文 化 は ど う影 響 し、 カ ップ ル は ど う意 思 決 定 を して い るの か 。 ま た 意 思 決 定 され た 事 柄 は ど の よ うに 実 現 され て い くの か。 今 回 、 一 組 の 国 際結 婚 カ ップ ル の妊 娠 ・出 産 に 関 わ り、 こ の 課 題 に 取 り組 ん だ 。 な ぜ な ら文 献 検 討 に よ っ て も、 在 日外 国 人 女 性 の 母 子 保 健 に 関 す る文 献 は比 較 的 多 くみ られ た が 、 女 性 が 日本 国 籍 で 男 性 が 外 国 籍 カ ップ ル の 女 性 の 視 点 か ら書 か れ た 文 献 、 研 究 は少 な か っ た た め で あ る。 本 研 究 の 目的 は 以 下 の とお りで あ る。 1)国 際 結 婚 カ ップ ル は 、 互 い の 文 化 を ど う取 り入 れ て 妊 娠 か ら 出産 に か け て の 生 活 を 送 り、 意 思 決 定 を して い る か を 明 ら か に す る。 2)カ ップ ル が 意 思 決 定 した 事 柄 を 実 現 させ る 際 に 、 助 産 婦 は どの よ うに 関 わ っ た か を 明 らか に す る。 II.方 法 本 研 究 は 事 例 研 究 で あ る 。 事 例 の 対 象 者 は 国 際 結 婚 を した 日本 国 籍 女 性Aさ ん とパ キ ス タ ン 国 籍 男 性Bさ ん の カ ッ プル で あ る 。 デ ー タ はAさ ん の 妊 娠 ・出 産 経 過 の フ ィー ル ドノー トと、Aさ ん とBさ ん へ の イ ン タ ビ ュー を 逐 語 記 述 した も の で 、 使 用 に 関 して は 本 人 た ち の 承 諾 を 得 て い る。 III.結 果 1.対 象 の 紹 介 Aさ ん は 専 業 主 婦 で パ キ ス タ ン 国 籍 の 夫Bさ ん 、児Cく ん との3人 家 族 で あ る。 2.分 析 結 果 1)結 婚 ・妊 娠 ・出 産 を 通 して お こ っ た 生 活 の 変 化 (1)結 婚 し、 夫Bさ ん と 生 活 を と も に す る Aさ ん はBさ ん との 結 婚 に 際 しイ ス ラ ム 教 徒(以 下 ム ス リム)と な った 。 結 婚 後 は イ ス ラ ム教 の 教 え を 守 りつ つ 、 日本 の 環 境 に も合 わ せ て 毎 日 の 生 活 を 送 っ て い た。 夫Bさ ん は 自 国 の 文 化 に 誇 りを 持 ち つ つ 、 日本 の 習 慣 、 日本 人 の 考 え 方 に も 柔 軟 に 対 応 して い た 。 (2)妊 娠 し、 自 分 た ち の お か れ た 条 件 に か な う お 産 の 場 を つ く る Aさ ん の 妊 娠 後 、 夫 婦 は お 産 の 場 所 を 助 産 院 と した 。 宗 教 上 、 お 産 に 関 わ る医 療 者 は 女 性 で な けれ ば な ら な か っ た た め で あ る。 出 産 場 所 に 選 ん だ 助 産 院 のE助 産 婦 はBさ ん の 母 国 の 文 化 に 造 詣 が 深 いよ き 理 解 者 で 、E助 産 婦 との 出 会 い は2 人 に 安 心 を もた ら した 。 ま た妊 娠 中 、A さん 夫 婦 は 互 い の文 化 の 規 定 に こ だ わ る こ と な く、 食 事 ・運 動 ・保 温 に 関 して お 産 の た め に よい こ と を して い た 。 (3)出 産 し、 文 化 を 尊 重 した こ と 、 文 化 の 中 の 常識 を 超 え た こ と 出 産 当 日は 夫Bさ ん が 立 ち 会 っ て の お 産 だ っ た の だ が 、 後 日Bさ ん に 話 を 聞 い て ム ス リ ム 男性 に と っ て 妻 の お 産 に 立 ち 会 うこ とは 抵 抗 が大 き い もの だ とい う こ とが 明 らか に な っ た 。Bさ ん は 最 終 的 に は妻Aさ ん の こ と を第 一 に 思 っ て 、 自分 の 中 に あ っ た 常 識 の 殻 を破 っ て お 産 に 立 ち会 っ て い た こ とが 分 か っ た 。 Aさ ん の 産 褥 入 院 中 、豚 肉 を使 用 した 料 理 は 出 され な か っ た 。 豚 肉 の 禁 忌 は 宗 教 上 の 理 由 に よ る も の で あ る。Aさ ん 夫 婦 はE助 産 婦 の 配 慮 に感 謝 して い た。 2)夫婦 が 妊 娠 ・出産 を通 して 行 な っ た 意 思 決 定 Aさ ん 夫 婦 は 互 い の 文 化 を尊 重 し 、 双 方 の 文 化 を取 り入 れ て 生 活 を作 り上 げ て い た 。Aさ ん の 妊 娠 中 と 出 産 の 際 も 、 生 活 の 延 長 線 上 の こ とに 対 して は 文 化 を そ の ま ま 取 り入 れ た 。 だ が 、 自分 た ち と子 ど も に と っ て 大 切 に し な け れ ば な ら な い こ と が 出 て き た 時 は 文 化 の 中 の 常 識 や 固 定観 念 に と らわ れ ず 、 そ の 時 に 大切 な こ とを 優 先 した 。 この 意 思 決 定 は 、 そ の 事 象 が 文 化 の 中 で 必 ず 守 られ ね ば な ら な い こ とか 、 そ れ と も守 っ た ほ うが 好 ま しい が 例 外 も認 め られ る こ とか とい う判 断 基 準 に 基 づ い て 行 わ れ て い た 。 そ してAさ ん 夫 婦 が お 産 に 関 して意 思 決 定 した 事 柄 はE助 産 婦 に 理 解 され 、 ケ ア に 取 り入 れ られ て 、 実 現 され た 。 IV.考 察 Aさ ん 夫 婦 に 特 徴 的 な こ と は 、 夫 婦 間 で 一 方 の 文 化 を 優 先 させ る こ とな く、 両 方 の 文 化 を 取 り入 れ て 二 人 の 生 活 を作 り 上 げ て い る こ とで あ る。Aさ ん 夫 婦 が 一 緒 に 生 活 して い け る 前 提 に は 、 互 い の 文 化 で 大 切 に して い る こ とは 守 りあ う とい う決 断 が あ る。 お 産 に 際 してAさ ん 夫 婦 は 、 生 活 の 延 長 に あ る こ と に は 文 化 を そ の ま ま 尊 重 し、 生 活 に 組 み 込 ん で い る が 、 自分 た ち や 子 ど もに とっ て 大 切 な も の は 何 で あ る か と い う視 点 に 立 っ た と き に は 、 文 化 を 捉 え 直 して そ の 時 に最 善 の こ と を選 択 して い た。 ま た 、Aさ ん 夫 婦 が 希 望 した お 産 の 実 現 に はE助 産 婦 と の 出 会 い に 因 る と こ ろ が 大 きい 。E助 産 婦 は ク ライ ア ン トの 個 別 性 を 重 視 して お り、Aさ ん の 持 つ 文 化 背 景 も個 性 の 一 つ と して 捉 え 、Aさ ん た ち の 文 化 を理 解 し、 助 産 ケ ア の 実 践 の 中 で反 映 させ て い た 。 以 上 か ら助 産 ケ ア へ の 応 用 と して 以 下 の こ とが 言 え る。 1)助 産 婦 は 、 国 際 結 婚 カ ップ ル が 互 い の文 化 を ど う取 り入 れ 、 何 を 大 切 に して い る か を知 る こ とで 彼 らを 理 解 す る こ と が で き る。 2)カ ッ プル は 、 生 活 の 延 長 線 上 の こ と に は 文 化 を取 り入 れ られ る が 、 自分 た ち や 子 ど も に とっ て 大 切 な 決 断 が 生 じた 時 、 文 化 との 間 で 葛 藤 と な る こ と も あ る 。 そ の 際 、 助 産 婦 は 、彼 らに と っ て 大 事 な の は 何 か を 見 極 め る 第 三 者 の 一 人 と成 り得 る。 3)助 産 婦 は 相 手 の 文 化 を た だ 知 識 と し て 理 解 す る だ け で は な く 、 実 践 の 中 に 反 映 させ る こ とで 、 カ ッ プル が 希 望 す るお 産 を共 に 作 り出 す こ とが で き る。
9.震
災 を体 験 した女性 が初 めて 出産 を迎 え る とき の
心身 の健 康 状 態 に関す る研 究
兵庫県立看護大学
○篠崎
和子、山本 あい子
増井
耐子、鈴木
静
I.は じめ に:阪 神 大 震 災 後 の被 災 地 に お け る母 子 の 心 身 の 健 康 状 態 お よび 母子 を と りま く 環 境 に 関 す る研 究 の 結 果 、震 災後1年 で は 、 ほ とん どの 母子 が 心 身 症 状 、 生 活 や 行 動 の 変 化 、 人 間 関係 の ぎ ご ちな さ を体 験 して い た。 震 災 後 3年 の段 階 で は 、 震 災 時 に妊 婦 だ っ た 女性 が 再 度妊 婦 とな った 場 合 、前 回 の妊 娠 や 震 災 体 験 が 五感 を 通 した 身 体 感 覚 と して残 り、 再 び震 災 体 験 を 呼 び 起 こす こ と、 役 割 の獲 得 や 胎 児 と上 の 子 ど も との 関 係 性 に 変 化 が 生 じる こ と等 が 明 ら か とな っ た。 以 上 を踏 ま えて 本 研 究 は 、震 災 を 体験 した の ち、 初 めて の 出産 を控 え た 妊 婦 の 心 身 の健 康 状 態 を明 らか にす る こ とを 目的 と して 行 った 。 II.方 法:デ ー タ収 集 に は 半統 制 型 質 問 紙 を 用 い た 面接 調 査 を 実 施 した 。 面 接 内容 は 、震 災 時 か ら現 在 に 至 るま で の 心 身 の健 康 状 態 、 母 親 役 割 の獲 得 状況 や 関 係 性 を含 んで い る。 研 究 対 象 者 は 阪 神 淡 路 大 震 災 を 体験 し、 本 調 査 期 間 中 に妊 婦 で あ る初 産 婦 と した。 調 査 に 先 立 ち 、激 震地 で あ っ たK市 内 の 私 立病 院 に 対 し て調 査研 究 の趣 旨 を説 明 し協 力 を得 た。 さ らに 、 そ の 施 設 で妊 婦 健 康 診 査 を受 けて い る初 産 婦 に 対 して 、研 究者 が 調 査 内 容 の 説 明 と調 査 協 力 を 依 頼 し、参 加 の 同 意 が得 られ た 人 を 対象 と した。 イ ン タ ビ ュー 内容 は 了解 を得 た 上 で テ ー プ に録 音 した 。 得 られ たデ ー タは 、 震 災後 か ら現 在 に 至 る まで の 心 身 の健 康 状 態 、母 親役 割 の 準備 性 、 胎 児 や 他 者 との 関 係 性 を 項 目 と して 内容 分 析 を 行 った。 III.結 果 1.対 象 者 の 特 徴 対 象 者 は激 震 地 あ るい は そ の 周 辺 地 域 で 震 災 を 体 験 し、 調 査 期 間 中 に第 一 子 を妊 娠 して い る24名 の 女性 達 で あ っ た。面 接 時 の 平 均 週 数 は28週3日 、 平 均 年 齢 は28.2 才 、現 在 の家 族 構 成 は夫 と本 人 の み が20名 、一 人 暮 ら しが1名 、 そ の 他 の 家 族 と同 居 して い る 者 が3名 で あ っ た。24名 中 震 災 時 に 父 母 あ るい は 夫 と同居 して い た のは20名 で あ った。 震 災 に よる被 害 が あ っ た者 は20名 で 、 そ の うち 自宅 が 全 壊3名 、 半壊 が4名 、 一 部 損 壊 が6名 で あ っ た 。 2.心 身 の健 康 状 態 1)震 災後 か ら現 在 まで の健 康 状 態 震 災 後 の健 康 状 態 に つ い て17名 が 述 べ て い る。 交 通 機 関 の 断 絶 で通 勤 に 時 間 が か か り 「慢 性 的 な疲 労感 」 に加 え て 、 ほ こ り っぽ い こ とか ら 「風 邪 や 発 熱 」 とい っ た 生 活 や 環 境 の変 化 に よる健 康 問題 が 生 じて い た。これ らの 症 状 は 「な か な か 治 らな い 」 「長 引い た 」 とい うよ うに長 期 化 し、 快復 しに くい 状 況 に あ っ た。 か つ て な い 揺 れ を 経 験 し、 そ の 後 も余 震 が継 続 した た め 「あ の揺 れ が ま た来 る か も しれ な い 」 とい う不 安 感 が あ り、 「寝 付 け な い 」 「目が 覚 め る」 とい った 入 眠 、 熟 眠 障 害 、 「一 人 で い る とき に揺 れ た よ うに 感 じる 」 と揺 れ に 対 す る過 敏 さが み られ た。 ま た 「誰 か と一 緒 で な い と行 動 で きない 」 とい う行 動 面 の 変化 も表 れ て い た。 これ らの健 康 問題 は 、ライ フ ライ ンが復 旧 し、 日常 生 活 が元 通 りとな り、 「普通 の生 活 に戻 った と感 じる」 こ とで 消 失 して い た 。 しか し1名 で は あ るが 、人 の 死や 喪 失 に 対 す る恐 怖 感 か ら睡 眠 不 足感 が2∼3年 継 続 して い た 。 この ケ ー ス は 「み ん な も多 分 そ うだ か ら乗 り切 ろ う」 と考 え、 体験 した こ とを 家 族 や 友 人 や 専 門職 と話 す な どの対 処 を全 く して い な か った 。 2)現 在 の震 災 の と らえ方 震 災 を受 け た記 憶 は 薄 ら ぎ風 化 して い る と感 じて い る者 が み られ た(12名)。 そ れ は 「地 域 の復 興 」、 「時 の経 過 」、 結 婚 な どに よ り 「周 囲 に い る人 や 生活 状 況 の 変化 」な どか ら感 じて い た。 そ の一 方 で 、 震 災 に 関 して 次 の よ うに述 べ て いる者 もい た(20名)。 「見 慣れ た地 域 の 変 化や 惨 状 」、 「震 災 が 起 こ した 非 日常 性 」 な ど恐 怖 感 や違 和感 を述 べ て い る。 ま た 「自分 や 家 族 の命 の 危 険 」、 「大切 に して い る物 や 人 の 喪 失 感 」 な ど、 自己 の安 全性 が揺 るが され た 経 験 も語 られ た。 震 災 が起 き た こ とで 「転職 」 「結 婚 」 「親 と の 同居 」 とい っ た生 活 の 転機 が 生 じ、 震 災 な し に は現 在 の生 活 が考 え られ な い と述 べ た 者 もい た。 3)変 化 した こ とや 脅 か し 震 災や そ の後 の 体験 は 、価 値 観 や 意 識 や 行 動 面 な どに変 化 を起 こ して いた(14名)。 例 えば 、 「生 きてい るだ け で い い」 「家 族 が 健 康 で い る こ とが 大切 」 な ど命 や 健 康 に関す る価 値 観 、 「ライ フ ライ ンの 大 切 さ を痛 感 した」 な どの 意 識 の 変 化 、「大 事 な 物 がす ぐに とれ る よ うに置 い て あ る」 な ど緊 急 時 に 対 す る備 え 、 あ る い は 「形 が あ る もの は 無 くな るか ら、 物 を買 わ な くな っ た 」 な どライ フス タイ ル の 変 化 が述 べ られ て い る。 選 択 的 に 人 との 関 係 性 を持 っ て い る こ と も見 られ て い る(3名)。 「他 の 人 に は 自分 の 大 変 さ を わか っ て も らえ な い 」 と述 べ た 者 は 、 自分 の 震 災 体 験 につ い て 「言 って もわ か らな い の で話 さな い 」 と体 験 の異 な る 人 に 、 自分 の 体 験 を理 解 して も らお うと しな くな った り、 「つ き合 う友 達 が変 化 した 」 「つ きあ わ な くな る」 と述 べ て い た。 い ま だ に 脅 か しを感 じて い る者 もみ られ 、 震 災 が 「ま た 起 こ るか も しれ な い」、 車 の振 動 や 小 さ な地 震 で も 「大 き くな るの で は」、 「火 事 を 気 に して い る と夫 か ら言 わ れ る」 と無 意 識 に 災 害 に対 して 恐 れ や 心 配 を抱 い て い た(11名)。 さ らに こ の 内 の6名 は 、 妊 娠 中 に地 震 が起 こる こ とを想 定 して不 安 を感 じて いた 。 「妊 娠 して い る 今 地 震 が来 た ら ど うな るの か 」、 「大 き なお な か を抱 え て逃 げ られ る の か 」 と胎 児 も含 めて 自分 自身 の安 全 性 を心配 した り、 「母 親 と して児 を守 れ るの だ ろ うか 」 と児 の 出 生 後 に 地震 が 来 るか も と考 え 、母 親 と して の 自分 の 能 力 を 疑 っ て い た 。 ま た 「お な か を か ば っ た 姿勢 で 寝 て い る 」 と実 際 に胎 児 の安 全 を守 る行 動 を とっ て い る者 もい た。 IV.考 察:震 災 直 後 は何 らか の 心 身 の健 康 問 題 が み られ るが 、 これ らは生 活 が 安 定 す る こ と で 消 失 して い る。 生 活 を で き る だ け 早 く元 の 状 態 に 戻 す こ とが 健 康 問 題 の改 善 に つ な が る と考 え られ る。 年 月 が 経 過 す る と 、震 災 の 体験 は 忘 れ 去 られ る部 分 と、 行 動 や 価 値 観 や 関係 性 の 中 に 内在 化 して残 る部 分 とが み られ て い る。 妊 婦 の 場 合 、 過 去 の 震 災 体 験 に よ り、 そ の再 来 を 心 配 した り胎 児 と 自己 の 安 全 性 へ の危 惧 を抱 い て い る。 ま た 特 定 状 況 を想 定 して 、子 を守 る とい う母 親 役割 の 遂 行 に 対 す る不 確 か さ もみ られ て い る。 これ らの こ とか ら、 災 害 を体 験 した妊 婦 の体 験 に 目を 向 け 、 身 体 の 症 状 や 感 じてい る こ とを注 意深 く聞 い て い くこ とが 必 要 で あ ろ う。 V.結 論:震 災 を 体験 した 初 産 婦 に は、 震 災 の再 来 を心 配 し、 自分 と胎 児 の 生 命 の 危 険 を感 じて い る者 がみ られ た。 ま た 母 親 役 割 遂 行 に対 す る不確 か さもみ られ て い る。 〈参 考 文献 〉 高 谷裕 紀 子 他: 阪 神 ・淡 路 大 震 災 の 被 災地 に お け る母 子 の 心 身 の 健 康 及 び 、母 子 を 取 り巻 く環 境 に 関 す る研 究, 日本 看 護 科 学 会 誌, 18(2), 40-50, 1998.