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エビの生物学

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Academic year: 2021

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日本甲殻類学会 Symposium Report

Carcinological Society of Japan

シンポジウム報告

Cancer 26: 119–122 (2017)

エビの生物学

Symposium of “Biology of the EBI (prawn, shrimp and lobster) dedicated to Dr. Ken-Ichi

Hayashi, Emeritus Professor of National Fisheries University”

川井唯史

1

・竹中 毅

2

・中田和義

3

Tadashi Kawai, Tsuyoshi Takenaka, and Kazuyoshi Nakata

企画趣旨 エビ類は大型になる種が多く重要な水産生物とし て直接食用とされ,その多様性が高いゆえに観賞用 として利用されることも多く,また飼育教材として も長い歴史を持ち,もちろん研究の対象としても大 切な分類群であり,甲殻類の中では,最も社会性の 高いものの一つである.林 健一水産大学校名誉教 授は,このエビ類の分類と生態を長く研究されて 数々の研究業績を残され甲殻類学の発展と普及に貢 献 さ れ て き た(代 表 的 な 著 書 と し て 林,1992, 2007).また本学会の活動に対しても評議員を長く 務められ,副会長にも就任された.これらの甲殻類 学ならびに本学会への貢献を称えるため名誉会員に 推挙された.このことを記念して本シンポジウムを 行うこととした.シンポジウムの講演は,林名誉教 授の基調講演を始めとし,林先生からご指導を受け た会員を中心とし,甲殻類学会の更なるアジアとの 交流のため,アジアでエビ類の研究を行っている海 外招聘講演も加えて企画した. プログラム 日本甲殻類学会54回大会 シンポジウム「エビの生物学」 日時:2016年10月23日(日)13:00–16:20 会場:鹿児島大学下荒田キャンパス 開会挨拶:朝倉 彰(日本甲殻類学会会長:京都大 学) 林名誉会員の紹介:荒木 晶(水産大学校) 基調講演: 1)十九世紀末から二十世紀はじめに行われた日本 人のエビ類研究

Studies on the shrimp by Japanese carcinologists in the late 19th and early 20th century

林 健一(水産大学校名誉教授)

Ken-Ichi Hayashi (Emeritus Professor, National Fisher-ies University, Japan)

国外招聘講演:

2)Research on the elucidation of basic reproductive mechanisms in commercially-significant shrimp species, and applications to aquaculture technology development Marcy N. Wilder (The Japan International Research Cen-ter for Agricultural Sciences, Japan)

3)Zoogeography of shrimps and lobsters (Decapoda: Dendrobranchiata, Pleocyemata: Stenopodidea, Caridea, 1 稚内水産試験場

〒097–0001 北海道稚内市末広4–5–15 Wakkanai Fisheries Research Institute

4–5–15 Suehiro, Wakkanai, Hokkaido 097–0001, Japan E-mail: kawai-tadashi@hro.or.jp

2 生物研究社

〒108–0074 東京都港区高輪3–25–27–501 Seibutsukenkyusha Co., Ltd.

3–25–27–501 Takanawa, Minato, Tokyo 108–0074, Japan 3 岡山大学大学院環境生命科学研究科

〒700–8530 岡山県岡山市北区津島中3–1–1

Graduate School of Environmental and Life Science, Okayama University, 3–1–1 Tsushima-naka, Okayama, Okayama 700–8530, Japan

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Cancer 26 (2017) 川井唯史 ・ 竹中 毅 ・ 中田和義 Astacidea, Achelata) in Korea.

Jung Nyun Kim (National Institute of Fisheries Science, Korea)

4)Atyid Shrimps of Continental Southeast Asia Yixiong Cai (National Biodiversity Centre, Republic of Singapore)

国内の研究:

5)日本のテッポウエビ類相はどこまで把握できたか Fauna of alpeid shrimp in Japan

野村恵一(串本海中公園センター)

Keiichi Nomura (Kushimoto Marine Park Center, Japan) 6)幼生研究から見る学術用語―専門と一般の間で A complaint on the terminology for crustacean larval study—conflicts between general and special—

小西光一(中央水産研究所海洋・生態系研究セン ター)

Kooichi Konishi (National Research Institute of Fisheries Science, Fisheries Research Agency, Japan)

7)「記載分類学」で創設したコエビ類のタクサのそ の後―テナガエビ科・サラサエビ科を例として― Sequel topics on the specific and generic taxa of caridean shrimps established on the basis of “descriptive taxono-my”

奥野淳兒(千葉県立中央博物館・海の博物館) Junji Okuno (Coastal Branch of Natural History Museum and Institute, Chiba, Japan)

まとめと閉会の挨拶:朝倉 彰(日本甲殻類学会会 長:京都大学) 概要紹介 林先生の基調講演に先立ち,林研究室を卒業し, 現在も水産大学校で甲殻類の研究を継続している荒 木博士から,林先生の業績の概要等,名誉会員に推 挙された経緯の紹介があった.林先生による基調講 演の内容は,日本の十脚甲殻類を近代研究として初 めて紹介したDe Haanの『Fauna Japonica』以降のエ ビ類の和名,そして1841~1925年の日本における 甲殻類学と自然史の黎明期を紹介したものであっ た.長い研究の経験と膨大な知識に基づく内容であ り,今後のエビ類研究のいっそうの発展を祈念した ものであった. これに続いて国外招聘講演者による発表が行われ た.国際農林水産業研究センターのWilder博士は, エビ類のより効率的で安定した陸上養殖に向けたメ ス親の生殖巣発達制御のためのホルモン利用の研究 を 発 表 し, そ の 対 象 は 淡 水 産 の オ ニ テ ナ ガ エ ビ Macrobrachium rosenbergiiと 海 産 の バ ナ メ イ エ ビ Litopenaeus vannameiであった.韓国から来日され た金博士は,林先生のご指導を直接受けて日本でエ ビジャコ類の分類学で学位を取得している.その後 は,韓国で水産研究に従事しながら種多様性の研究 を継続しており,本シンポジウムでは,韓国のエビ 類相として根鰓亜目と抱卵亜目の海域別の種多様性 を紹介した.Cai博士は東南アジアの淡水産エビ類 の種多様性を広く研究し,現在所属しているシンガ ポールの国立公園にある国立種多様性研究センター での研究を軸に,ヌマエビ科の種多様性を地域別に 示した.東南アジアの淡水域は未調査の地域が多い が,これらの地域での種多様性の一部が明らかに なったことになる. 次ぎに国内の研究発表が行われた.野村氏は水産 大学校を卒業した後に,林先生も以前勤務された, 串本海中公園センターで働きながらテッポウエビ類 の種多様性研究に30年間継続して取り組み,その 研究成果を発表した.テッポウエビ類はサンゴ礁域 に棲むものが多く,そこでは標本の採集が難しいた め,時間をかけた息の長い研究である.小西博士は 水産研究機関に長年勤務する傍ら幼生の記載研究を 継続され,さらに言葉に対しての造詣が深い.生き 物の和名を,学術用語と一般用語の中間に位置する ものと解釈し,それぞれの社会的な位置付け,意 義,特長を整理した.そのうえで,和名に関しての 今後の学会としてのあり方を提言する内容であっ た.最後の奥野博士は林先生と同じエビ類の記載分 類学を専門としており,テナガエビ科とサラサエビ 科を例にとって,エビ類の形態分類の特長を述べ, その将来を展望する内容であり,シンポジウムを締 めくくるにふさわしい発表であった. サプライズとして林先生のご講演の前には,シン ガ ポ ー ル か ら 来 日 さ れ たPeter Ng教 授(National University of Singapore)から林先生へ手渡されたも のがあった(図1).これは台湾のTin-Yam Chan教 授(Institute of Marine Biology, National Taiwan Ocean

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Cancer 26 (2017) エビの生物学 University)からの記念贈呈品として手作りされた エビ(ミノエビ/林氏異腕蝦:Heterocarpus hayas-hii)の模型であった(図2).Chan教授は林先生と の親交が深く,今回のシンポジウムに参加を希望し ていたが,日程などの関係で断念せざるを得なかっ たため,Ng教授に記念品を託したものであった. シンポジウムの後には,朝倉会長からまとめと閉 会の挨拶として,シンポジウムとは「大会の華」で あり,同時に学会の振興にとって重要なものと考え ており今後の活発なシンポジウム企画・提案が求め られた.そして最後には全シンポジウム講演者によ る記念撮影を行った(図3).その後は場所を移動 し,シンポジウム関係者による懇親会を行い,発表 者間の親睦を深め,さらなる情報や意見の交換を 行った.またその懇親会には,林先生と共に長く甲 殻類学会に貢献された熊本大学名誉教授の馬場敬次 先生が熊本から,琉球大学名誉教授の諸喜田茂充先 生が沖縄から,また鹿児島在住の林研究室の同窓生 が駆けつけ,旧交を温めた. 総括と今後のシンポジウムへの提言 シンポジウムの総括の前に著者等が理解している 甲殻類学会の特長を述べておきたい.本学会には大 学での研究や研究機関での業務として甲殻類を研究 対象としている会員に加えて,趣味としてライフ ワーク的に甲殻類を愛好している会員も少なくは無 いことがあると考えている.さらには以前から必要 性は叫ばれていながら少数派となっている形態分類 の専門家が多いことも本学会の個性の一つと思われ る.本シンポジウムでは,特に国内からの発表は, これらの特長を十分に生かした,専門家から愛好家 にまで幅広く興味をもってもらえる有意義なもので あったと考えている. 図1.  林先生(向かって右)にTin-Yam Chan教授 からの手紙を手渡すNg教授(向かって左).2. 記念品のミノエビの模型.3.  シンポジウム発表者による集合写真.向かって左から朝倉会長,野村氏,奥野氏,金氏,Cai氏, Wilder氏,林先生,小西氏,荒木氏.

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Cancer 26 (2017) 川井唯史 ・ 竹中 毅 ・ 中田和義 さて,著者等は過去に,甲殻類学会で開催された シンポジウムの内容をまとめて書籍として刊行してい る(川井・中田,2011).本シンポジウムの結果も, 甲殻類学会編として,生物研究社から『(仮題)エビ の和名』として刊行される予定である.有意義なシ ンポジウムの講演内容を後年に残し,甲殻類学のさ らなる普及と発展のためにも,今後も多様なシンポ ジウムを開催し,その結果を社会に還元できる書籍 刊行と組み合わせるというスタイルを目標として,こ れまでの学会の伝統を尊重しつつ新しいシンポジウ ムのあり方を模索し脱皮していくことを提言したい. 謝 辞 今回のシンポジウム開催の機会を与えてくださっ た朝倉 彰会長,鈴木廣志大会実行委員長,および 実行委員の皆様に深く感謝申し上げます.林 健一 名誉会員を始めとした講演者の皆様,ならびに参加 者の皆様にも厚く御礼申し上げます. 文 献 林 健一,1992.日本産エビ類の分類と生態I,根鰓 亜目(クルマエビ上科・サクラエビ上科).生物 研究社,東京,300 pp. 林 健一,2007.日本産エビ類の分類と生態II,コエ ビ下目(1)(ヒオドシエビ上科・イトアシエビ上 科・ヌマエビ上科・サンゴエビ上科・オキエビ上 科・イガグリエビ上科).生物研究社,東京,306 pp. 川井唯史・中田和義編,2011.エビ・カニ・ザリガニ ―淡水甲殻類の保全と生物学.生物研究社,東 京,470 pp.

参照

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