Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design50
年
後
の我
が
国
に お
け
る
高 齢者
の自
立
のた め に
人
・
暮
ら し
:人
〜
ヒ トを 変 え る デ ザ イ
ン〜久 本 誠
一
/
独 立 行 政 法 人 製 品 評 価 技 術 基 盤 機 構 キー
ワー
ド:筋
力、
世代
差、
加
齢
変化
、
高齢
者、
自立平
成
19
年 版
「高齢 社
会 白書
」 による と、
我 が 国の65
歳 以 上 の高齢 者
人口は2006
年
10
月1
日 現 在、
過 去 最 高 の2,
660
万 人 に達 した。
他 方、
総 人 ロ は1
億2
,
777
万 人と、
戦後初
め て マ イ ナ ス に転
じ た前 年
と同数
であっ た。 そ の結 果
、
高齢
者 が総
人口 に占め る割 合 (高 齢 化 率 ) は20,
8
[% ]で、
初 めて20
匚%] を超 え た 前 年 よ り も 増 加 して いる。 長寿化
と人
ロ減 少
で底
辺 が 広いはず
の人ロ ピ ラ ミッドが倒立 し て少
数の労 働 力で多 数の高齢者
を支
え る構 図
が完
成 し、
安 心・
安 全 な 生 活 を 約 束 して高 齢 者の自 立 を促 すこと が 喫 緊の課 題 となっ た。
高 齢 者の身 体 的 自 立 を 促 す
方 策
は2
つ の概 念
に整
理できる。 ひ とつは 「現在
の高 齢者
の自
立 を 支 援 する 」概 念、
他 方 は 「将来
の高 齢者 (
つ ま り現 在の若 者 ) が、
将 来 自立 し た 高 齢 者 に な る よ う準 備 してお く」 考 え 方である(
図1
)
。
前者
はユ ニ バー
サ ル・
デザイ ンや
バ リ ア フ1丿一 ・
デザ イン等
に代
表 さ れ る 「モ ノを 変え る」 概 念、
後 者 は、
将 来 に 備 えて現 在の若 者 に 十 分 な 身体 能 力 を 獲 得 させ る 「ヒ トを 変 え る 」概 念
であ る。 現在
の若
者が40
〜
50
年 後に自立 し た 生活を 送 れ る か否は、
将 来
の 日本 の国家経済
に大
き な影 響
を及
ぼ す。
本 稿
では後 者の概 念 を 背 景 に、
50
年 後の高 齢 者の自 立 を 図 る た め に 何 が 必 要か、
日 本 人 の身体 特性
デー
タ を 基に考察
する。 図1 ここでは、
デー
タ と してNITE
人 間 特 性 デー
タベー
ス を参 照 す る。
これ は 独立 行政 法 人 製
品 評価 技 術 基
盤機 構 (
National
Institute
ofTechnology
andEvaluation
:NITE
) が2001
年 から2002
年 に20〜
80
歳
代の健 常
日本 人約
1
,
000
名
で取得
したデー
タで、
製
品 や環
境 を設
計 するた めの基 礎デー
タ と してホー
ムペ
ー
ジ 等 (http
:〃www.
tech
.
nite,
go
.
jp
/human
/)
で 公 開されている
。
当 該デー
タベー
ス は 四肢の筋 力や 関節可動 域、
運動 能 力、
生活 履
歴 等で構
成 さ れるが、
こ の う ち 関 節 発 揮 トルクのデー
タ を 世 代差
の観点
で分析
し た ところ、
上肢
下肢
の5
つの関節 発揮
トル ク群 (
手関節屈 曲
、
手関 節伸
展、
肘 関 節 屈 曲、
肩 関 節 伸 展、
股 関 節 屈 曲)
に おい て、
20
歳
代 女性
は50
歳 代
あ るい は60
歳代
(1
) よ り も 統 計 的 に 有 意 に 低い値 を 示 すこ と が判 明し た。
図2
に 肘 関 節の屈 曲 トルクの世代 差
を例
示 する。 また、
統計
的に 有 意で はな かっ た が 男 性 も 同様の傾 向 を 示 すこ とか ら、
男 女 共 通の問 題であ る可 能 性 も 窺 え る。
しか も、
海 外のデー
タで は 同様
の 傾向
は認 められず
、
我
が 国 固有
の傾 向
であ
る可能性
が高
い。確
か に、
我 が国 で は こ こ数 年、
高 校 生 や 大 学 生 が 鉄 道 車 両の 「床 」 や 駅のホー
ム (椅 子では ない !)、
コ ンビニ前
の 路 上、
学 校の教 室の床に 座 り 込 んでい る光 景を見か け る が、
彼
ら に とっ て椅
子に座る姿 勢
を保 持
する こと す ら 負 担 に なっ て い る のか も 知 れ ない。
3530 5 05
D 2
2
↑
−
曽
ヒ Z一
山 ⊃ 巨 O←
匚 O ヌ Ψ“
罫 口 Ω一
山 図2 50 0 102030405050708090 Age囲 これら か ら直ち に結 論 すること はでき ないが、
若 年 層の筋力低
下 が筋
の不使
用 に 起因
して い るとす れ ば、
その背 景 に は過 度 に 進 ん だ 自 動 化 や 省 力 化があ ると思 わ れる。
エ レ ベ
ー
タ
、
エスカレー
タ から電 気洗 濯機
や電気 掃 除機
に至 るあらゆる 「文 明i に よ り 自 動 化 や 省 力 化 が 進 ん だ 結 果、
目々 の生 活 は便 利で快 適 な も の に なっ て き た。
し か し、
過度
の自
動 化や省
力化は、
就 労 や家 事、
日常 生 活に お け る筋の使用 を妨 げ てい る。
例 え ば、
現 在では使 わ れ ることのない洗 濯 板 は 極 めて 有 効な筋力 ト レー
ニ ングであっ た。 我 が国の よ う に高 齢
化し た社
会では、
ユ ニバー
サ ル・
デザ インや バ リア フリー・
デ ザ イン は もち ろ ん、
自 動 化 や 省 力 化の促 進は必 須であ る。
し か し一
方 で人 々に、
特
に若 者 に、
筋の使 用の機 会 を 「選 択 肢 」 として提 供 す る 配慮
が必
要と考
え ら れ る。
これ は、
いわば
「Design
for
Fitness
」 と呼
べ る概念
で、
例
えば ビル のエ レベー
タの台 数
を減
ら し、
替 わ りに段 差 を 変 えて運 動 強 度の レベルを 違 え た 何 種 類 か の階 段を設 置し た り、
通常の歩 道の脇に障害物
を配し た歩
道 を設
けて運 動 する こと を選 択 肢 と して提 供 す る 考 え 方であ る。
人は便 利で快 適な生 活を追い求め、
科 学 技 術の 進歩が これを実現
し てき た。
しか し、
便 利
で快 適 な 生 活 が 必 ず し も ヒ トの身 体に良い結 果を与え る と は限ら な い。
身
体に 適切な負
担を 与 え、
ヒトの身体特
性 を よ り良い方 向 に 導 く 「ヒ トを 変 える 」 デ ザ インが、
今 求 められて いるの ではないか。
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デ ザ イ ン 学 研 究 特集号special issue ofjapanese society forthe science ofdeslgn vQI