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Kleptomania Symptom Assessment Scale(K-SAS)日本語版の信頼性と妥当性検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-63

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-Kleptomania Symptom Assessment Scale(K-SAS)日本語版の信頼性と妥当性検討

○浅見 祐香1)、野村 和孝2,3)、田中 佑樹4,5)、嶋田 洋徳2)、大石 裕代3)、大石 雅之3) 1 )早稲田大学人間科学部、 2 )早稲田大学人間科学学術院、 3 )医療法人社団祐和会大石クリニック、 4 )早稲田大学大 学院人間科学研究科、 5 )日本学術振興会特別研究員 【問題と目的】 窃盗罪は,同種再犯率が高く,わが国の再犯防止の 重要な課題のひとつとして位置づけられている(橋 本,2015)。この再犯率の高さの背景要因として,窃 盗罪を行う者の中には精神疾患としての窃盗症を有す る 者 が 一 定 数 い る こ と が 指 摘 さ れ て い る( 竹 村, 2013)。窃盗症は,DSM-5において,物を盗もうとする 衝動に抵抗できなくなる点に特徴があるとされており (APA, 2013),物品ではなく「窃盗行動への従事その もの」が目的と考えられている。窃盗症者に対して は,刑罰だけでは万引き問題を消失,減少させる効果 が低いことが指摘されている(鈴木・武田,2010)。 しかしながら,わが国においては,犯罪行為である ために,刑罰による処遇が優先されている現状にある (竹村,2016)。また,窃盗症者は窃盗以外の反社会的 行為がないといった指摘もされており(竹村,2016), 一般的な反社会的傾向とは独立であると考えられてい る。そのため,窃盗罪を行う者の中から窃盗症者を弁 別することは,窃盗防止対策の充実化に寄与すると考 えることができる。しかしながら,わが国に窃盗症に 関するアセスメントツールが適切に整備されていない ことが課題となっている。 窃盗症のアセスメントツールは,重症度の測定を目 的とした K -SAS(Grant & Kim,2002)が開発されてお り,Christianini et al(2015)によってポルトガル 語版が作成されるなど,その利用は広がりつつある。 一方で,これまでの先行研究においては窃盗症者のみ を対象とした検証にとどまっており,万引き犯との弁 別力に関する検討はなされていない。この点について 日本の実情を踏まえると,日本語版の作成にあたって は,窃盗症と万引き犯の弁別的妥当性に関する検討, そして,窃盗症状が一般的な反社会的傾向とは独立で あることを検討する必要があると考えられる。 そこで,本研究では,窃盗症の重症度測定尺度であ る K -SASの日本語版を作成し,窃盗症者を万引き犯と 弁別する尺度としての妥当性も検討することを目的と した。 【方 法】 参加者 精神科外来における医師の診察において窃盗症の診 断を受けた患者22名(男性 7 名,女性15名;平均年齢 46.36±14.37歳),更生保護施設に入所している窃盗 経験者26名(男性16名,女性10名;平均年齢44.42± 13.75歳),首都圏の私立大学・大学院に通う一般成人 47名(男性17名,女性30名;平均年齢22.32±3.89歳) の計95名を分析対象とした。 調査材料 デモグラフィック 年齢,性別,窃盗歴,治療歴, 重複障害の有無,同居の有無,教育年数,職業の有無 への回答を求めた。 K -SAS  K -SAS日本語版の作成は,原著者の許諾を 得た上で,著者が翻訳を行い,調整を加えた。さらに, 逆翻訳は専門企業に委託し実施した。日本語版と原版 との等価性を考慮し,用語などの評価を行って改良を 加えた。

反社会傾向 JCTI(Kishi et al., 2015)を使用し た。 他の精神疾患等との関係 ( a )強迫症: Y -BOCS (Nakajima et al., 1995),( b )境界性パーソナリ ティ障害:DTS日本語版(大江,2010)を使用した。 心 理 社 会 機 能  日 本 語 版GHQ28( 中 川・ 大 坊, 1985),SDISS(吉田ら,2004)を使用した。 ネガティブ感情 日本語版PANAS(川人ら,2011)を 使用した。 手続き 本研究参加へのインフォームド・コンセントが得ら れた者から回答を求めた。さらに,窃盗症患者におい ては,治療中である調査実施時に加えて,最も頻繁に 窃盗を行っていた時を想起してもらい,その当時につ いて K -SAS日本語版の回答を求めた。 分析  K -SAS日本語版について,項目分析を行い, 因子分析を行った。信頼性の検討は,Cronbachの α 係数による内的整合性を検討した。構成概念妥当性に お い て, K -SAS日 本 語 版 とJCTI, Y -BOCS,DTS, GHQ28,SDISS,PANASとの関連性を検討した。また, 窃盗症患者に関しては, K -SAS日本語版の調査時点と 最頻時との間に有意な差があるかについてt 検定を用 いて検討した。さらに,窃盗症患者,窃盗経験者,一 般成人それぞれの K -SAS日本語版の群間差について分 散分析を用いて検討した。 倫理的配慮 本研究の実施にあたっては,「早稲田大学人を対象 とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得た (承認番号:2017-007)。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-63 423 -【結 果】 1 .項目分析 K -SAS日本語版の合計得点が平均値+0.5標準偏差よ り高い得点の者を高群,平均値-0.5標準偏差より低い 得点の者を低群として,各項目についてGP分析を行っ た結果,全ての項目得点において高群が低群よりも有 意に高かった(p <.05)。 2 . K -SAS日本語版の因子構造の検討 K -SAS日本語版に対して,主成分分析法を行った。 項目 8 と項目 9 ,項目11の因子負荷量がやや低いもの の,それ以外の項目は.50から.90と十分な因子負荷を 示した。 3 . K -SAS日本語版の信頼性の検討 K -SAS日本語版の内的整合性を検討したところ, Cronbachの α 係数は0.84であった。 4 . K -SAS日本語版の妥当性の検討 分散分析を用いて,窃盗症患者,窃盗経験者,一般 成人それぞれの K -SAS日本語版の群間差を検討したと ころ,窃盗症患者は窃盗経験者,一般成人よりも有意 に高いことが示された(F (2,92)=7.74, p <.05; Table1)。さらに, K -SAS日本語版とJCTIはほとんど 相関が見られなかった(Table2)。 また, K -SAS日本語版と Y -BOCSとは弱い正の相関, DTSとは弱い正の相関,GHQ28とは中程度の正の相関, SDISSとは中程度の正の相関が認められた。一方で, K -SAS日本語版とPANAS(ネガティブ)は弱い正の相関 が認められた。t 検定を用いて, K -SAS日本語版につ いて窃盗症患者の調査時点と最頻時の差を検討したと ころ,最頻時が有意に高いことが示された(t (21) =9.03, p <.01)。 【考 察】 K -SAS日本語版は,窃盗症患者が窃盗経験者よりも 有意に得点が高かったことから,窃盗症者は万引き犯 とは異なる状態像として弁別することが可能であるこ とが示された。また, K -SAS日本語版と反社会的傾向 との間にほとんど相関がなかったことから,窃盗症状 は一般的な反社会的傾向とは独立であることが示され た。以上のことから,窃盗罪を行う者の中から窃盗症 者を弁別する上で,有用な尺度となり得ることが明ら かとなった。 さらに,窃盗症患者において,窃盗症との類似性が 指摘されている強迫症,境界性パーソナリティ障害と は異なる病態であることがあらためて確認された。窃 盗症患者においては,心理社会機能と中程度の正の相 関が認められたことから,窃盗症を生活上の機能不全 をもたらす反復的な窃盗行動がある状態と考える原版 K -SASを支持する結果となった。さらに窃盗症患者に おいて,最も窃盗の頻度が多かった時期と比較して, 治療中の調査時点においては, K -SAS日本語版の得点 が有意に低下していることから,原版 K -SASと同様に 治療による変動性が確認された。

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