• 検索結果がありません。

H1_4.ai

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "H1_4.ai"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

病態栄養 TOPICS

CKD患者の治療と栄養管理

…FROM-J 研究を中心に

臨床現場訪問 

「教育」

が治療の

中心となる

糖尿病の特殊性

TREND 

第32回

ESPEN

(欧州臨床栄養代謝学会)

レポート

連載

Better Quality of Life Through Better Nutrition 

医療従事者の臨床栄養に関する知識レベル調査:

『この程度の知識レベルで適切な栄養療法が実施できる?』

BE

Q

News

編集・発行●株式会社 ジェフコーポレーション 〒105-0012 東京都港区芝大門1-3-11 YSKビル7F        http://www.jeff.jp (03)3578-0303 提   供●株式会社 クリニコ 〒153-0063 東京都目黒区目黒4-4-22        http://www.clinico.co.jp (03)3793-4101

[ベックニュース]

食を通じてQOLの向上に

 貢献する栄養通信

10

2010

Be

tter

q

uality of life

through better nutrition

(2)

Topics

病態栄養TOPICS  

KUNIHIRO YAMAGATA

山縣 邦弘

先生

筑波大学 大学院人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻 腎臓病態医学分野 教授 厚生労働省「腎疾患重症化予防のための戦略研究」(FROM-J) 研究代表者▶

CKD

患者の治療と栄養管理

…FROM-J 研究を中心に

CKDの大規模臨床介入研究が進行中

臓疾患の最近の話題の一つに、CKD(Chronic Kidney Disease/慢性腎臓病)対策への取り組みがあります。 CKDは、悪化すると重大な心血管疾患を引き起こした り、人工透析が必要になる場合も多く、CKD 悪化の予防は、社会 的にも急務の課題となっています。その対策の一環として今取り 組んでいるのが、「腎疾患重症化予防のための戦略研究 FROM-J

(Frontier of Renal Outcome Modification in Japan)」です。

 戦略研究とは、厚生労働省の公的研究として国の予算により実 施されるもので、すでに糖尿病、悪性腫瘍、うつ病といった我が国 にとって優先されるべき疾患を対象に、我が国独自のエビデンス を生み出し、医療政策に反映させるための、大型の臨床介入研究 として実施されてきました。FROM-Jは、この戦略研究予算の中で、 増加し続ける末期慢性腎不全による透析患者、および CKDを原 因とする心血管疾患の増加に対し、CKD の重症化を予防するため の効果的な対策法を見出し、今後の CKD 対策に活用するための 戦略研究課題の一つとして開始されたものです。

なぜ FROM-J研究が必要なのか

 我が国ではCKD 対策の一環として、2007年9月に日本腎臓学 会が中心となり、「CKD 診療ガイド」が策定・出版され、CKD の一 般的な管理目標が文書として示されました。FROM-J研究の副次 評価項目の目的は、その「CKD 診療ガイド」の診療目標に従い診 療する意義を、しっかりとしたアウトカムで示すことです。すなわ ち、「CKD 診療ガイド」の目標はエビデンスに基づくものであり、エ ビデンスと実践結果のギャップをいかに生じさせないか、エビデ ンス通りの診療が実施されれば、本当に予後改善がなされるのか、 等の検証を行うべく開始された介入研究なのです。  このエビデンス実践ギャップ解消の実現のために、本研究では、 かかりつけ医と腎臓専門医の協力、すなわち医療連携を促進し、自 覚症状のないCKD患者が途中で受診中断することなく、また着実 に診療目標を達成可能な医療システムを構築して、CKD患者の重症 化予防の為の診療システムの有用性を検討し、さらに「CKD診療ガ イド」の遵守率、目標の達成度の向上が、5年後の人工透析導入患 者数を、現時点で予測される導入患者数の15%まで減少させること が可能であると示すことを目指して積極的に取り組んでいます。  一方、これまでに診療目標に採用された臨床的エビデンスとい えば海外からの発信が主であり、日本からもこうしたエビデンス を発信する必要性が唱えられていました。そうした点も考慮し、本 研究は世界でも類を見ない腎臓専門医でなくかかりつけ医が管 理している腎機能障害軽度の CKD患者を対象に、腎機能悪化予 防の効果をみる研究となっています。この研究の成果は、今後の CKDの診療方針を定めるための貴重な情報となり、日本のみなら ず、世界の腎臓病治療に役立つことが期待されます。

本研究の概要

 本研究の概要と対象患者は表のようになっています。日本全国 15 都県で腎臓病の診療をリードする大学病院を拠点施設として、 拠点施設近隣の49 地区医師会が研究実施地域となり、491名の かかりつけ医、2,494 名の参加者(患者)の登録連絡があり、2,417 名が最終的に登録され(A 群1,211名、B 群1,206 名)、2008 年10 月20日よりそれぞれの介入を開始しました。

介入方法

 FROM-Jでは、「CKD 診療ガイド」に準拠して診療に当たる介入 A 群と、介入 A 群の内容に加えて、受診促進支援、目標達成度の外 部評価を定期的に行い、管理栄養士による生活・食事指導を受け る介入 B 群の2 つを設定し、その効果を比較検討することとして います。介入 B 群に対しては、受診状況を調査し参加者に受診を 促進するための支援、かかりつけ医と腎臓専門医の情報共有と診 療役割分担の推進、参加者への定期的な生活・食事指導、データ 説明を含む指導体系の構築を行っていきます(図)。

表  【研究期間】2008 年 4 月∼ 2012 年 3月 【対象患者】 ●対象地域のかかりつけ医に通院中の 40 歳以上75 歳未満 ●CKDステージ1、2、4、5 ●CKDステージ 3 では、蛋白尿を有し、かつ糖尿病または高血圧を有する患者   ※主として高血圧、糖尿病で「かかりつけ医」に受診中の尿蛋白(+)   以上の 40 歳から 74 歳の患者が対象 【介入方法】 ●介入 A 群  「CKD 診療ガイド」に則った診療を継続。  登録患者全員に「CKD 管理ノート」と血圧計を配布 ●介入 B 群  「CKD 診療ガイド」に則った診療を継続。登録患者全員に  「CKD 管理ノート」と血圧計を配布。  さらに介入 B 群には、上記に加えて、(1)受診促進支援、(2)栄養生活指導、  (3)診療支援 IT システムによる診療支援 が行なわれる。 【評価項目】 ●主要評価項目  1. 受診継続率  2. かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の連携達成  3.CKD のステージ進行率 ●副次評価項目  1.CKD 診療目標の実施率  2. 血圧の管理目標達成率  3. 尿蛋白 50%減少達成率  4. 血清クレアチニン値の 2 倍化到達数、eGFR50%低下到達数  5. 新規透析導入患者数の年次推移  6. 心血管系イベントの発生率

(3)

Topics

 また、「CKD 診療ガイド」には、CKDステージごとに生活習慣、食 事内容、血圧、血糖、脂質などの診療目標や、腎臓専門医への紹介 のタイミングが記載されているので、本研究では両群においてそ の遵守率と達成率を評価することとしています。  本研究のデザインは、クラスターランダム化という方式で行われ ており、対象患者の割付は地区医師会毎に決められ、かかりつけ 医や患者が選ぶことはできません。  この方法により、患者の受診継続ならびに、腎臓専門医との連 携に差が出るのか否か、さらにはその結果、腎機能の予後にどのよ うな影響が出るのかを4 年間かけて調査します。この結果より、ど のような診療体制が腎機能の悪化を防ぐかを検討し、理想的な 診療体制を構築する一助としたい考えです。

重要なかかりつけ医の役割

 実は、この研究で重視しているのが、かかりつけ医および非腎 臓専門医と腎臓専門医との連携についてで、登録していただいた のはすべて、かかりつけ医、あるいは非腎臓専門医です。CKDが、 現在、糖尿病や高血圧から腎障害に陥る比率、動脈硬化を伴う患 者の比率が増え、まさしく生活習慣病を原因として発症するケー スが増えてきています。その診療は、腎障害が明確になった段階 ではもちろん腎臓専門医が当りますが、それ以前の早期の段階で は、糖尿病や高血圧の診療として、一般のかかりつけ医が行って いるのが実状です。従ってそのような腎症発症の極早期の段階で しっかり治療することが重症化予防につながるのです。CKD の早 期の治療やその主体となる生活習慣の改善において、かかりつけ 医の役割が重要である所以です。  なお、一定以上の腎機能の悪化があった場合には、A 群、B 群と も同様に「CKD 診療ガイド」に則って、腎臓専門医と連携を図り、 腎臓専門医と協力して加療・指導を行うことになっています。

FROM-J研究の大きな特徴=「生活・食事指導」介入

 FROM-Jにおける介入の大きな特徴として、介入 B 群においてか かりつけ医のもとへ管理栄養士が出向いて個別指導を行う「生活・ 食事指導」があります。FROM-Jの参加者の大部分は、腎障害の存 在はあっても腎機能は正常、あるいは軽度の腎機能低下症例です。 こうした対象において腎機能低下の進展を早期に防止するために は、診療の継続と適切な治療実施のための指導方法を確立するこ とが必要です。介入 B 群では、食事指導のみに限らず、生活習慣改 善も取り入れた「生活・食事指導」を1回30 分で3ヶ月ごとに継続 して行うこととしました。この指導を実際に担うのは、各地域の栄 養ケアステーションから派遣された管理栄養士です。原則として、 指導は、かかりつけ医の医療機関内で行われます。これは参加者 であるCKD患者が無理なく継続できる便宜を図るとともに、かか りつけ医と管理栄養士との信頼関係を構築することによって、情 報の共有および交換をより深めるためです。この指導内容を FROM-Jに参加する全国の介入 B 群に均質に提供するためには、 指導方法の標準化が不可欠です。従って、「生活・食事指導」では、 指導項目の優先順位を決定するチェックリストを作成し、優先順 位の高い項目から順に指導計画を立てていく、系統的指導を実施 し、CKDの進展防止を目指すことをより明確にしました。チェックリ ストは随時見直しを図り、指導項目に偏りが出ないよう全体のバ ランスを考慮しながら、患者と指導する側の負担を軽減しつつ、 長期継続できる最良の指導方法を模索していくことになりました。

日本栄養士会および個々の管理栄養士の

協力が不可欠

 この「生活・食事指導」の介入にあたっては、研究開始前のプロ トコルを検討し始めた段階で、日本栄養士会会長の中村丁次先 生に相談したところ、即座に栄養士会の全面的な協力をご快諾い ただきました。やはり本研究においては、多くの栄養士の方々の協 力が不可欠です。しかし、最も重要なことは、標準的な指導が実践 できるかどうかです。個々の栄養士のスキルに基づく指導では、研 究の再現性に疑問が生じかねないので、実践にあたっての標準的 な栄養指導マニュアルの作成が大きな課題でした。  研究プロトコル作成後、栄養支援ワーキンググループを結成し、栄 養指導マニュアルを作成し、研究に参加していただく栄養士を対象 に、指導法の講習会も行いました。その後もできるだけ各地域で地域 連携ミーティングあるいは栄養士ミーティング等を行っていただいて おり、現在も栄養指導マニュアルの問題点の確認を進めている状況 です。栄養指導マニュアルに関しては、研究が終了したところで詳細 を開示し、さらに多くの方々のご意見をいただくつもりでおります。  今回の栄養士の介入について、従来の「栄養指導」ではなく、「生 活・食事指導」という言葉を使っているのは、生活習慣改善の指導 を重視しているためです。最近増加しているCKDの特徴を考慮し、 生活習慣病対策という点を考慮してこの研究が行われているので、 生活習慣改善のための指導が重要で、そのための「生活・食事指 導」をお願いしているつもりですし、その点をご理解いただける栄養 士の方々にご協力をお願いしています。すなわち、今回、栄養士に求 められているのは、生活習慣病対策としての行動変容実現を促す 指導スキルなのです。そのような技術を自分たちで磨いていくこと も求められているので、非常に難しい役割であると思います。しか し、管理栄養士の方々にその重要性を理解し、実践していただける ようになれば、また栄養士業務の世界も変わってくると思います。

今後の課題

 現在、FROM-J研究のデータは半年毎に集積を行っていますが、 今後どういう形でまとめ上げ、さらに本研究をどう継続していくか が課題です。前述のようにFROM-J研究は腎臓専門医が診療する 前の、かかりつけ医が主として診療にあたる時期の軽症のCKD患 者を対象とした研究です。従って、短期間では透析導入や心臓血管 病発症といった明確な答えは出ない可能性が高いため、なるべく、 5年・10 年という単位でのフォローアップおよび経過観察が必要 です。しかし、現実には予算は限られており、今後の継続的な取り 組みについては現在検討しているところです。 図  【介入A 群】 データ収集 【介入B 群】 介入開始 2008 年 10月 介入および研究終了 2012年 3月 栄養指導 生活指導 データ説明 6ケ月 3ケ月 1ケ月 1ケ月 1ケ月 栄養指導 生活指導 データ説明 栄養指導 生活指導 データ説明 3ケ月 受診促進支援センター(毎月電話やメールで受診のご案内をする) FROM−Jホームページ(http://fromj.jp/)より引用改変

(4)

Interview

臨床現場訪問  

患者にとって把握が難しい糖尿病

在、内科以外の医師の方に糖尿病患者を診ていただく ケースが増えていますが、医師が糖尿病に十分精通し ていない場合も多く、時間的な余裕も無いため十分 な対応が出来ないことも多い状況です。当院では20人ほどの看 護師、栄養士等のコメディカルスタッフが糖尿病療養指導士の資 格を取得し、療養指導に当たっています。この資格は日本糖尿病 療養指導士認定機構が、糖尿病とその療養指導全般に関する正 しい知識を有し、医師の指示の下で患者に熟練した療養指導を行 うことのできる医療従事者に対し与えているものです。  糖尿病の治療は他の病気とはやや異なり、多くの場合、投薬は あくまでも補助的役割で、食事と運動が治療の6∼9 割を占めま す。食事や運動は明らかに患者さんへの教育が必要な領域で、こ の「教育」が治療の中心となります。  糖尿病に教育が重要な理由は、普通の病気にみられる自覚症 状が、糖尿病の初期にはほとんど無いことです。その時点では痛 くもかゆくもないけれど、内部では確実に病気が進展しており、喉 の渇き、しびれ、目の異常等の症状が現れたときには、病気はすで にadvanced stageに入っていることが多く、これが糖尿病の非常 に恐ろしいところです。  糖尿病治療の草分けであるアメリカのElliott P. Joslinは「糖尿 病の治療において最も重要なのは教育である」と言っています。糖 尿病では患者さん自身が治療に取り組まないと、周囲がいくら一 生懸命ケアしても改善は望めませんが、本人のやる気のスイッチが 入ると、目に見えて治療効果が上がります。教育の役割はそのス イッチを入れることなのです。患者さん自身が治療の必要性を理 解し、取り組むようになれば、医師は薬を処方するだけでもうまく 行きます。ところがそうならないと、悪い状態のまま放置され、つ いに合併症が発症し、取り返しのつかない状態にもなります。

症状が現れない初期の対応が決定的な差となる

 糖尿病には2 種類あり、1型はやや特殊な小児に多くみられる糖 尿病で、インスリン依存状態になると体内のインスリンがほとんど 枯渇するため生命に関わり、インスリン投与に全面的に依存します。 一方、糖尿病の9割以上を占める2 型では必ずしもインスリンを使 う必要はなく、放置しても当初は血糖値が上がっているだけで自覚 症状はほとんどありません。2 型糖尿病はある一定の年齢で発症し、 40 代以降の患者数が増加していくことから、老化との深い関係が 考えられます。60 歳代では2 割程度の人に糖尿病が発症しており、 70 歳代では約4割が糖尿病もしくはその予備軍です。糖尿病歴が ある家系の人も多くの場合一定の年齢で発症します。  患者さんの多くは糖尿病と指摘されても、当初はほとんど無症 候性に経過するため、つい放置してしまいます。しかし経過中にき ちんと治療が行われないと、数年のうちに神経障害が起き、10 年 ほどで眼底に出血があらわれ、15年ほどで一部の人で腎臓の糸球 体機能が障害され、血液中の蛋白質が漏れ出し、蛋白尿として排泄 されるようになります。さらに進行すると、多くの合併症が一挙に 現れ、ようやく糖尿病の存在を常に意識せざるを得なくなりますが、 多くの場合、糖尿病の病態は不可逆性で、すでに改善不可能な状 態となっています。  ところが、すべての糖尿病患者がその経過を辿るかというと、実 は早い時期に分かれ道があるのです。その分岐点を認識して、病 状を悪化させないように注意すれば、その後は健康的に過ごすこ とができます。糖尿病の重症化は、患者さんご自身やご家族にとっ てはもちろん、医療経済的にも大きな問題となるのです。  問題はその悪化した病状を、病状の見られない時点で患者さん に想像させることの難しさです。私はよく、ビルから落ちていく状 態に喩えて話をします。落下中は恐怖心を別とすれば、苦痛はあり ません。しかし地面と衝突すればとんでもない激痛が待っていま す。さらに悪いことには、初期の糖尿病においては現在落下してい るという自覚そのものが無いのです。

注目される第6の合併症=歯周病

 いわゆる糖尿病の症状として現れるのは、合併症によるものです。 糖尿病の3大合併症としては糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿 病腎症が知られています。さらに第4は動脈硬化、第5は足病変と 続きますが、1990 年代になって血糖コントロールと歯周病の関係 が注目され、歯周病が第6の合併症と考えられるようになりました。  高齢者で歯が弱っていく最大の原因は歯槽膿漏、つまり歯周病で、 高齢者の約2割が罹患していますが、糖尿病があるとさらに高率と なります。歯が悪いとよく噛めないため栄養状態が悪化し、免疫能 や脳の機能等の低下を招きます。歯周病の正体は慢性の感染症で あり、糖尿病で高血糖が続くと、免疫機能を担う細胞、特に好中球 等の白血球系の機能が低下して、感染症に罹患しやすくなります。ま た、細小血管障害である糖尿病の進行とともに歯の周囲の毛細血管 に十分な栄養が供給されなくなり、歯周病がさらに悪化します。  一方で、歯周病の治療によって血糖コントロールが改善するとの 報告もあります。歯周病菌の周囲では、抗原抗体反応を始め様々 な免疫反応が起こっています。糖尿病があると生体の防御能が低 下し、菌が血液中に流入しやすくなり、かなりの頻度で菌血症を来 たします。菌血症は心臓の弁膜症を惹起するなど、大きな脅威と なります。また、TNF-αやIL-6 等の炎症性サイトカインがインスリ ン抵抗性を惹起するため、糖尿病がさらに悪化します。したがって、 その原因である感染症=歯周病の治療が糖尿病の改善をもたら すのです。

TAKESHI KUROSE

黒瀬 健

先生

関西電力病院 糖尿病・栄養・内分泌内科 部長▶

「教育」

が治療の中心となる

糖尿病の特殊性

(5)

Interview

歯科と共同する歯周病治療

 歯が悪いと十分食べられず、噛まなくて良い食事で済ませる傾 向があり、それがさらに歯の状態を悪化させる悪循環となるため、 歯周病治療にはまず、よく噛んで食べることが重要です。当院では 歯科との共同で歯周病の治療に当たっています。  歯科の先生方は、何故高齢者に重症の歯周病が多いのか、との疑 問から糖尿病との関係に気づくようになったそうです。当院の院長 (編注:清野 裕先生)が理事長を務める日本糖尿病協会では「歯科 医師登録医制度」を設けていますが、全国の歯科の先生にご参加い ただき、非常に高い加入率となっています。また、当院では歯科医師 登録医との連携をスムーズにするために連携手帳を作成し、患者さ んが病院、かかりつけ医、歯科、あるいは眼科を受診する際に提示し てもらっています。我々医師はそれを見て患者さんの状態を把握し ますが、この手帳の最も重要な役割は、患者さんご自身もデータを 見て、病気への理解を深めていただくことだと思っています。

経管栄養の糖尿病患者に配慮した食事とは

 高齢の糖尿病患者さんの場合、経管栄養を実施している例はかな りあります。栄養投与においては、糖尿病であっても基本的に必要な 栄養素は代替できないため、決定した必要エネルギー量にしたがっ て糖分の量を調整します。投与後の血糖値の急激な上昇を抑えるた め、インスリンの使用、投与速度の変更等、対応の工夫が必要です。  胃瘻による管理の場合、栄養投与後は一気に血糖値が上昇しま す。これはある程度やむを得ないのですが、栄養剤を半固形化して 胃に滞留しやすくする等の工夫が重要です。glycemic indexは炭水 化物摂取後の血糖値上昇抑制についての現在最もホットな話題で す。同じ炭水化物量でも血糖値の上昇速度や程度に差があり、例え ばスパゲティでは上昇しにくく、うどんは上昇しやすいと言われま すが、残念ながらデータの再現性が乏しく、臨床の感覚としては信 頼性は低いと捉えています。glycemic indexをある程度考慮するこ とは良いと思いますが、あくまで一つの目安としています。

糖尿病で見直される炭水化物食

 その一方で低炭水化物食か高炭水化物食か、あるいは高脂肪食 と高炭水化物食のどちらが有効かという論争はまだ続いています。 我々が実施した研究でも、低炭水化物食では血糖値はそれほど上 昇しませんでした。ご飯を食べずにおかずだけ食べると血糖コント ロールは改善し、HbA1cも低下します。しかし、低炭水化物食とする と高蛋白もしくは高脂肪が避けられません。その点について現在、 高脂肪・高蛋白食は高脂肪単独の食事よりも動脈硬化のリスクが 高まる、というデータが米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載さ

れており1)(図1)The New England Journal of Medicineに関連情

報が掲載されました2)(図2)また、高蛋白・高脂肪食によって糖尿 病が発症しやすいとの報告もありますが、高炭水化物食ではそれが 抑えられるのです。多量の炭水化物摂取は肥満につながりますが、 摂り過ぎに注意すればその心配は少ないと考えます。摂取直後の血 糖値は上昇し治療法の工夫が必要ですが、少なくとも高脂肪・高蛋 白食で問題となるインスリン抵抗性や動脈硬化にはなりにくく、高 炭水化物食のほうがはるかに安全ではないか、と考えています。  高炭水化物食の典型は日本の昭和30 年代の食事ですが、現在 の食事の傾向は高脂肪・高蛋白が主流となっており、危険な状態で す。それに親しんできた患者さんの食習慣を変えるのは困難なため、 ある程度の高脂肪は許容しつつ、高蛋白を避けることが重要です。  高炭水化物食は血糖コントロールにおいては相容れない部分 がありますが、脂肪や蛋白が過剰にならないように、エネルギー制 限をした段階で炭水化物の比率を上げておくことが重要です。エ ネルギー制限を守れば、高中性脂肪血症を起こしやすい等の体質 のある人を除いて大きな問題には至らないと思います。  糖尿病においてはいたずらに炭水化物量を抑えるのではなく、適 正な炭水化物量を見極めながら、蛋白質、脂肪とのバランスを調整 することが重要で、この点でも患者さんへの教育が必要となります。

1)Shi Yin Foo, Eric R. Heller, Joanna Wykrzykowska, Christopher J. Sullivan, Jennifer J. Manning-Tobin, Kathryn J. Moore, Robert E. Gerszten, and Anthony Rosenzweig : Vascular effects of a low-carbohydrate high-protein diet, 15418-15423 PNAS September 8, 2009 vol.106 no.36

2)Steven R. Smith : A look at the Low-Carbohydrate diet, 2286-2288  N Engl J Med December 3, 2009 vol. 361 no.23

図1 Vascular effects of a low-carbohydrate high-protein diet

図2 A Look at the Low-Carbohydrate Diet (図は上からSC、WD、LCHP)  WDとLCHPでは従来のLDL-Cや酸化ストレスマーカーに差はなかった。LCHP ではNEFA(遊離脂肪酸)の増加(高レベルのNEFAは最近、心血管病のリスクと いわれる)、血管内皮前駆細胞(血管再生能のマーカー)の減少が見られた。 ApoE 欠損マウス(動脈硬化モデルマウス)にSC、WD、LCHP(下記参照) の三種類の食餌を与え、動脈硬化の度合いを 6 週間、12 週間で比較した。 赤く描出されているのが大動脈の障害部分。

SC:standard chow diet WD:so-called 'Western' diet LCHP:low-carbohydrate        high-protein diet % 炭水化物 蛋白質 脂質 SC 65 20 15 WD 43 15 42 LCHP 12 43 45 6wks 12wks SC WD LCHP

◉低炭水化物高蛋白質食の血管壁への影響

◉大動脈中の粥腫形成の比較

(6)

Trend

TREND

(最近の話題や用語を紹介)

  

32回 欧 州臨床栄養 代謝学会(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism/ESPEN)が、

さる2010 年 9月5日∼8日の4日間、フランスのニー

スで開催された。参加された東京大学医学部附属病院 手術部

准教授 深柄和彦先生に学会の模様を伺った。

南仏ニースでの開催

 第32回ESPENが9月5日∼8日、南仏のニースで開催されました。

会 長 はInstitute for Biomedical Research, Clinical Nutrition Unit, Rouen University Hospitalの Prof. Pierre Déchelotte先生です。

ニースは、地中海に面した人口約100万人の大都市です。9月は海 の景色が美しく映え、気候も清涼で、そのころ残暑が厳しかった 日本よりも数段過ごしやすかったことが印象に残っています。  本学会は、JSPEN(日本静脈経腸栄養学会)やASPEN(米国静 脈経腸栄養学会)と並ぶ世界的に見ても大きな学会で、今回の参 加者は、3,300 名に及んだと聞いています。医師や研究者の参加 が多く、JSPEN、ASPENと比較すると、より学術的な問題を論じ 合う場となっているのが特徴と思われます。また、学会参加費は 職種によって異なりますが、日本円に換算して5 万円∼8万円と 日本の学会に比べてかなり高いのも特徴かもしれません(笑)。 今回は、ESPENの頭文字を、Excellence in Science, Practice and

Education in Nutritionと表し学会のモットーとしていました。

依然としてn-3系脂肪酸の注目度は高い

 ESPENのオープニングセレモニーでは、Nice University Hospital,

Prof. Hébutemeが「Nutrition for cancer patients : where are we now, where should we go ?」のテーマで 特 別 講 演(Special Nice

Lecture)を行いました。癌患者は栄養不良のリスクが高いため、そ のスクリーニングは大変重要と強調していました。また、周術期の 免疫増強経腸栄養剤の有効性について触れ、それらを積極的に 利用し、経静脈栄養にはあまり依存すべきでない、と述べられてお りました。最近の流れとして、脂肪については魚油(n-3系脂肪酸) が依然として注目されているという印象です。n-3系脂肪酸は癌患 者の栄養管理の上で今後も鍵を握っていく、と予想されておりま した。

ERASプロトコール

 また、今回盛んに話題になっていたのは、周術期の栄養管理 (Nutrition Support in Perioperative Period)および ERAS(Enhanced

Recovery after Surgery)のプロトコールです。

 ERASとは、手術の安全性の向上、術後合併症の低減、回復力 の強化、在院日数の短縮や手術患者の早期回復、QOL の向上、医 療費削減等を目的として考案された、ESPENにおいて提唱されて いる周術期の新しい包括的管理プロトコールです。その基本概念 は、手術侵襲を最小限にし、疼痛管理の下、消化管機能と運動機 能の回復を促進させ、早期に通常の状態に戻すことであり、特に、 欧米では周術期に絶飲食をしない管理方法として、下部消化管手 術での効果が認められています。  欧米では、ERASがかなり浸透しているようですが、日本でどこ まで適応できるのかは疑問です。例えば ERASでは大腸手術後は 概ね3日で退院するスケジュールで、手術翌日には食事を食べさ せます。日本では大腸手術後の食事の再開はかなり早くなってい ますが、それでも3、4日目という施設が多いと思います。  私が参加したLLL(ESPENの医師教育プログラム)のセッション の最後に試験があり、これに合格しないと修了証がもらえないので すが、その中で「結腸の右半切除術後の翌日の水分管理は、輸液は 行わず経口摂取のみで良い」という設問があり、イエスかノーかで 答えるのですが、正解は「イエス」です。日本で1日目に輸液を行わ

KAZUHIKO FUKATSU

深柄 和彦

先生

東京大学 医学部附属病院 手術部 准教授▶

第32回

ESPEN

(欧州臨床栄養代謝学会)

レポート

(7)

Trend

ない施設はないでしょう。また、炭水化物飲料の補給についても、 手術当日朝まで飲水可能と繰り返し強調されていました。

ホルモンと栄養の関係

 次に、神経系のホルモンと栄養の関係が注目されていました。日 本でも肥満は問題にはなっていますが、欧米ではまさに命を脅か すような肥満もあるので、肥満治療はかなり注目されています。そ うした背景もあり、食欲の調整という面から、ペプチドYY(PYY) とグレリンというホルモンが注目されていました。PYYは腸で産生 される脂肪性ホルモンで、食欲を抑制する効果があります。それ に対してグレリンは胃から産生されるペプチドホルモンで、逆に食 欲を増進させる作用があるというのです。こうしたホルモンを利用 していかに肥満に対応するかが一つのトピックになっていました。

ビタミンに関するトピックス

 ビタミンDに関するセッションも目立ちました。ビタミンDとい えば、これまでは骨代謝の面で論議されることが多かったのです が、今回は、ビタミンD の投与によって、TNF-α等の炎症性サイト カインの産生が抑制されるといった免疫系、炎症反応系の働きが あることが注目されていました。ビタミンDは、骨以外にも実はい ろいろな生体反応に関係していることが明らかになりつつあるよ うです。ビタミンDを投与することで除脂肪体重(LBM:lean body mass)が増加するという発表もありました。  また、帝京大学医学部外科 福島亮治先生らは、ビタミンCに関 する発表をされました。血中ビタミンC 濃度が術後低下することを 実際の臨床データで示し、周術期はビタミンCの投与量を上げた 方が良いという趣旨でした。

短腸症候群関連のトピックス

 短腸症候群の栄養管理という面でもトピックがありました。グル カゴン様ペプチド-2(GLP-2)、さらにGLP-2アナログ類似化合 物の「Teduglutide」という新薬が注目されており、臨床試験が開始 されています。GLP-2は人体に存在するホルモンで、小腸粘膜の増 殖の調節、小腸粘膜の構造と機能の維持等の働きを有しています。 このホルモンの投与によって小腸の残存機能が強化され、栄養吸 収能の改善作用があることは以前から知られていたのですが、 「Teduglutide」を使用し、有効だったという報告がありました。  腸管については腸管神経系が注目されていて、腸内に網の目状 に張り巡らされた神経系が腸の機能と深く密接に関係していると いう発表もありました。我々のグループからも、迷走神経を切離す ると腸管のリンパ球が一時的に減少するという報告に口演の機会 を与えられましたが、腸管神経系が注目されていたことも採択され た理由の一つかもしれません。

サルコペニア

 また、高齢者のサルコペニア(加齢性筋肉減弱症:sarcopenia) に関する発表も注目を集めていました。サルコペニアとは、高齢者 で筋肉量が減少してくると、栄養補給を行っても筋肉量、筋力が回 復しない病態で、バランスのとれたアミノ酸補給と筋肉のターン オーバーの間に関係があるのでは、と以前から言われていました。 改善には運動の重要性も指摘されていますが、癌患者の場合など は運動と栄養を組み合わせてもこうした病態の改善は困難だとい うことです。

アミノ酸のトピックス

    アミノ酸についてはアルギニン、グルタミンと並び、グリシンやシ トルリンも注目されていました。グリシンは、ゼラチンから単離さ れたコラーゲンに多く含まれるアミノ酸で、投与により抗炎症効果 が期待されるという発表がありました。また、シトルリンは、スイカ の果汁から発見されたアミノ酸で、血流を高める作用を有している ことが知られていますが、これを投与するとアルギニンに変換され、 アルギニンを直接投与するよりも血中のアルギニンレベルが上昇 するという説もあり、今後注目すべきアミノ酸の一つだと思います。

栄養士の国際進出に期待

 今回のESPENには、日本から145 名もの参加があり、これは国 別の参加者数では第 8位だそうです。また採択された演題も540 題中40 題で、国別では第3位ということで日本の躍進ぶりが窺え ます。また、日本の栄養士の方々の参加も増えているようです(表)。  いろいろな世界を知ることは、栄養士の方々にとっても大事だと 思います。実際 ASPENなどでは基礎的な研究を専門に行う栄養 士が多くおられます。日本では学術研究領域で活躍する栄養士は まだ少ないと思いますが、ESPEN等の国際学会の参加は、今後栄 養士がいろいろな方面で活躍していくときの一つの動機づけにな るのではないかと思います。こういった学会に参加して、海外の栄 養士が学術的なプレゼンテーションや、臨床的な発表を堂々と 行っているのを目の当たりにすると、自分たちもできる、という自信 がつくだろうし、さらに自分を磨いていく一つのきっかけにもなる と思います。  また、ESPEN、あるいはASPENといった海外の学会に積極的に参 加することによって、日頃から行っているNST 活動、栄養指導などの レベルをさらに上げていくきっかけにもなるのではないかと思います。  さらに、日本におけるNST 活動は、もちろん患者さんのためでは ありますが、活動中のいろいろな試みやアウトカムは常に発信して いかなければいけないと思います。その一つの手段が学会発表で あり、将来的には海外に発信ができれば、栄養管理法はより根づ いていくと思います。  なお、次回第33回 ESPENは2011年9月3日∼6日、スウェーデ ンのヨーテボリ (Göteborg)で開催される予定です。 静脈経腸栄養ニューズ PEN 2010 年10月号より 参加人数 演題 応募総数  :681 演題 内 採択演題:540 演題 国別内訳(採択演題) 職種別内訳  Doctors : 2,199  Dietitians : 486  Nurses : 84

 Others : 531(Students etc.)

総数:3,300名   Country Count 1 United Kingdom 61 2 France 56 3 Japan 40 3 Netherlands 40 4 Brazil 39 5 Spain 30 6 Germany 28 7 Italy 22 8 Switzerland 20 9 Czech Republic 18 10 Denmark 15 10 Sweden 15 国別内訳(全81カ国)   Country Count 1 GERMANY 245 2 FRANCE 228 3 UNITED KINGDOM 212 4 SPAIN 204 5 BELGIUM 195 6 THE NETHERLANDS 191 7 ITALY 146 8 JAPAN 145 9 SWITZERLAND 141 10 SWEDEN 130

(8)

Column

連載 Better Quality of Life Through Better Nutrition  

YOSHIFUMI INOUE

井上 善文

先生

川崎病院 外科総括部長▶

医療従事者の臨床栄養に関する知識レベル調査:

『この程度の知識レベルで

適切な栄養療法が実施できる?』

「栄養療法はすべての医療の基礎」

ですが…

切な栄養療法を実施するためには、知っておくべき、 理解しておくべき知識があります。栄養療法はすべて の医療の基礎となるものなので、ある意味、医療人とし ての常識と言うべき知識です。栄養障害に陥っていれば、それだ けで「病気」ですし、さまざまな治療も行うことができないはずで すから。しかし、本邦の医療従事者は、適切な栄養療法を実施で きる知識レベルに達しているのでしょうか。  この問題に対する答えを得るためには、本邦の医療従事者の知 識レベルを調査しなければなりません。私が調査しました。個人 的な調査ですが、講演会、研究会やセミナーに出席した方々、約 4,000人に対して試験を行いました。その結果、この知識レベルで 適正な栄養療法が実施できるのだろうか、という重大な疑問に突 き当たってしまいました。

医療従事者の栄養知識、

その驚くべき現状

 臨床の現場で使用されている12の略語の意味(IVH、TPN、 BMI、TSF、EN、ED、LRD、PEG、SGA、PPN、NST、RTH)を問う問題で

は、まあまあ理解できている用語は IVHとPEGとNST だけでした。 しかしPEG は『胃瘻』として理解しているだけで、正式名称を理解 している栄養士、看護師、薬剤師は10%以下でした。三大栄養素が 1g 燃焼した時に発生する熱量を知っているか? との設問に対し ては、栄養士は正解率が90%以上でしたが、看護師は約 25%、薬 剤師は約60%、医師は約45%という惨憺たる成績でした(図)。投 与する栄養剤や輸液のカロリー計算ができないことを意味してい ます。高カロリー輸液の成分に関する設問では、たんぱく質が含 まれていると誤解している方が非常に多く、成分を理解しないま ま高カロリー輸液を実施している、という恐ろしい状況があるこ とがわかりました。また、例えば『エンシュアのたんぱく質成分はア ミノ酸?』『エレメンミックに含まれる微量元素は?』などの正解 率は極めて低く、製品名は知っていても内容についての知識は少 なく、適切な栄養療法が実施できる知識レベルではない、と考え られました。特に、三大栄養素の燃焼時熱量を知っている医師は 半分もおらず、しかも、この試験を受けた医師は栄養療法のセミ ナーを受講した医師、すなわち、栄養療法に興味がある医師であ る、と考えると、栄養療法に興味のない医師の知識レベルは…空 恐ろしいのではないでしょうか。

栄養療法の本当の威力を実感するために

 何が言いたいのか? 要するに、臨床栄養についての教育が不足 している、知識レベルが必要レベルに達していない、そのために 適切な栄養療法を受けていない患者さんが多いことを意味して いる、ということを言いたいのです。逆に、合併症を起こして状態 を悪化させている場合すらあるはずです。栄養療法は効果が出る までにある程度の時間が必要ですので、悪化する場合でも徐々に、 となるので身にしみて感じることがないのかもしれません。でも、 適正な栄養状態が維持できていないと様々な問題が起こる確率 が高くなります。間接的な影響なのかもしれませんが。とにかく、 栄養状態がよければ合併症の発生率が低く、患者さんは早く元気 になり、ということを医療従事者はなんとなく感じています。でも、 栄養療法の効果を、積極的には受け入れていないように思います。 その理由は明確で、適切な栄養療法が実施できていないからそ の威力を実感したことがないのです。ということは、適切な栄養管 理を実施するためには、十分な知識も必要で、そのレベルに達し ていない方々は栄養療法の威力を実感することができない、とい う悪循環に陥っているのではないでしょうか。

きちんとした栄養教育を

 栄養療法に関する教科書を読んだことがある方、きちんと臨床 栄養教育を受けた方はどのくらいいるのでしょうか。栄養士さんは 栄養の専門家だから、栄養士さんにまかせておけばいい? そうで しょうか。静脈経腸栄養法について、ほとんどの栄養士さんが深く 理解していると言えるのでしょうか? 否です。看護師さんや薬剤師 さんは、栄養についてどこまで勉強しているのでしょうか。医師は?  残念ながら、きちんとした臨床栄養に関する教育が行われてい る医学部はほとんどありません。この試験は栄養療法に関する医 師教育セミナー受講者に、セミナー開始前に行いました。セミナー 受講後には、この試験の正解率は8 割以上になります。なぜ? 理 由は明確です。これまで勉強したことがないということです。医学 教育の中で、臨床の現場で必要な栄養療法に関する教育はほとん ど行われず、本当は理解していない先輩達のやり方を見よう見ま ねという雰囲気で、おざなりな栄養療法しか実施されていないの が日本の現状なのです。本当の意味で、きちんとした臨床栄養に 関する知識を持っていないと有効かつ安全な栄養療法は実施で きません、と言い切ってもいいと思うのですが…。

「三大栄養素が 1g 燃焼したとき の発生熱量」 の理解度 MR、栄養士に対して、 他の 3 職種の得点は 有意に低かった。

参照

関連したドキュメント

以上のような背景の中で、本研究は計画に基づく戦

我が国では,これまで数多くの全国交通需要予測が行わ れてきた.1つの例としては,(財)運輸政策研究機構が,運

戦略的パートナーシップは、 Cardano のブロックチェーンテクノロジーを DISH のテレコムサービスに 導入することを目的としています。これにより、

肝臓に発生する炎症性偽腫瘍の全てが IgG4 関連疾患 なのだろうか.肝臓には IgG4 関連疾患以外の炎症性偽 腫瘍も発生する.われわれは,肝の炎症性偽腫瘍は

(注妬)精神分裂病の特有の経過型で、病勢憎悪、病勢推進と訳されている。つまり多くの場合、分裂病の経過は病が完全に治癒せずして、病状が悪化するため、この用語が用いられている。(参考『新版精神医

いメタボリックシンドロームや 2 型糖尿病への 有用性も期待される.ペマフィブラートは他の

2011 年度予算案について、難病の研究予算 100 億円を維持したの

世界規模でのがん研究支援を行っている。当会は UICC 国内委員会を通じて、その研究支