教員養成教育の改革に関する一実践
一大学院生による副読本作成からー
伊 藤 裕 康
宮 西 亮 輔
I はじめに \ 総合的な学習の時間の創設や特色ある学校づくりの必要性から、教員の教材開発力が求められ た6社会科教育学教育でも教材開発力の育成が求められる。社会科で教材開発力が験されるのが地 域学習である。地域学習は社会科では重要な地位を占めている。だが、地域学習は野外調査経験不 足から指導に困難を来すと言われる。それ故、地域学習中心の小学校中学年で子どIもの社会科嫌悪 傾向が高まると言われる(篠原:1993)。大学の社会科教員養成教育でも鯵外調査実習は不十分であ る。では、十分な野外調査実習経験を積めば地域学習指導に支障を来さない教員養成が可能かど言 えぱ、そうでもない。なぜなら、「教材研究とは、『何を』・『どのような素材によって』・『いかに』教 えるかを研究することであり」、「教材開発と言う以上、厳密には三要素全てのものに一・貫した論理 と説得力をもったデータを必要とする」(竹下:1993)からである。後述する地域学習のアポリフも 考え合わせれば、地城教材開発力のある教員養成は野外調査実習の充実だけでは不十分である。十野 外調査実習に加え新たな手だてが必要であり、副読本の作成活動に着目した。社会科教員を目指す 大学院生の副読本作成活動での学びを考察し、地域教材開発力のある教員養成め在り方を考えてみ る。 1 H 社会科教員養成教育における副読本作成活動の意義 1 地域学習のアポリア 伊藤(2006)以外に指摘した者を寡聞にして知らないが、地域学習には特有のアポリアがある。 転任で小学校中学年を担任した教員はしばしば地域のことが分からず指導に困難を来す。まして、 新任が小学校中学年を担任して地域学習をしたとすれば、どう指導するかと悩んでしまう。地域学 習特有の困難性は、敦科を問わずほとんどの授業に見られる、私教える人あなた教えられる人とい う授業構造と入力型授業観に由来する。子どもと教員との情報量格差を広げるのが教材研究であ る。子老もと教員との情報量の格差を埋めるのが授業である。教員は授業で知らないふりをし、発 問と指示をしつつ到達目標まで子どもを引き上げる。必然的に私教える人あなた教えられる人とい う授業構造が生まれる。子恚もに学ぶは方便となり、真に教員が子どもに学ぶ姿勢は生まれ難い。 伊藤裕康 宮西亮輔 香川大学敦育学部 香川大学大学院教育学研究科 −1−地域学習は入力型授業観での授業が時に成立。しない。9年・近く地域に住む3年生なら、未熟で素朴 な認識であろうが、転任や新任の教員よ、り地域を知っでいる情報量逆格差状況が起きる。しかも、 授業は絶え間なく進み、子どもと教員との情報量格差を広げる教材研究が追いつかない。情報量格 差活用の入力型授業では為す術がなぐなる。 JI 。 1997年、度日本教育技術学会の茨城大学附属小学校での伊藤の飛び込み授業が、正しく子どもが教 員より情報量が多い情報量逆格差状況でのものであった。この問題を伊藤の飛び込み授業から考え てみる。伊藤は授業を引き受ける際、社会科の王。道といえる地城学習でしたかった。だが、伊藤は 茨城県のことを全然知らない。腹をくくり、子どもの方が教員より知っている情報量逆格差活用 授業を構想した。子・どもに教えてもちう姿勢に徹するのである。まず、「イートン先生は1日かけ て茨城県を見てまわろうと思います。しかし、愛知県出身の先生は茨城県のことは全然知りませ ん。どこに行ったらよいか、皆さん教えて下さい。」と子どもに問うた。これだけなら、あそこが いいここがいいと、子どものお気に入りめ場所の紹介になる。社会科授業とは言えない。そこで、 「イートン先生は社会科の先生だから、ここぞ茨城県という所が知りたいね。カードにどんどん書 いて下さい。」」と条件をつけた。これは、イートン先生は社会科の先生だから、社会科として価値 あるここぞ茨城県という所を教えて欲しいとのメッセー・ジである。しかも、茨城を見てまわる日程 に1日と限定した。これが1週間いや3∼4日ともなれば、子・ども達が紹介した場所の多くが採用 される。1日の限定でどこかに絞らなければいけなくなる。て僕の言ったここの方が茨城県みたい だよ」「いや、ここの方が茨城県の良さが分かるよ」と、白分が紹介した所をアピールし、自ずと 討論が起きた・。 ‥ ・・ 上 地域の不案内な教員は、情報量逆格差活用の子どもに学ぶ授業に徹し、徐々に教材研究して情報 量格差をつめ、最後は従来型の入力型授業もできるようにしたい。それには、情報量逆格差活用授 業、つまり出力型授業観に基づく授業体験が必要である。だが、ほとんどの学生は入力型授業体験 しかない。院生による副読本作成め授業は、出力型授業観に基づく授業で展開することにした。 2 教員の地域教材開発力形成の方途としての社会科副読本作成活動 指導の困難性を抱え、る中学年、社会科地域学習では、教科書以上に副読本が使われる(桧井: 1983)。社会科副読本の効果的な活用方法や副読本そのものの在り方等を研究する敦科教育学的研 究は、地域学習の困難性解決の基礎的な知見が得られる(伊藤:2004、伊藤:2006)。地域学習の困 難性解決を図るものに、社会科副読本の敦科教育学的研究の他に、敦員の社会科副読本執筆活動を 挙げたい。 伊藤(2003)は、地方レペルの優れた社会科敦師である杉浦健支の力量形成を探ったことがある1)。 杉浦実践の画期となったのが国道一号線問題の教材化である。同教材化は、杉浦の社会科副読本執 筆から生まれたものである。杉浦は、副読本『岡崎 中学校編』改訂7・8版作成に編集委員として 関わった。松井貞雄指導、岡崎市現職教育委員会編(1980)『岡崎 中学校編』改訂8版の杉浦執筆 「m 国道1号線問題と岡崎市民」(Pp。168 −182)の項目は次のようである。 1 2 3 4 5 6 Ⅲ 国道1号線問題と岡崎市民(とびら,写真1点,1p.) 国道1号線問題(図表3点,2p.) 国道1号線問題の実態(図表3点,囲み記事2点,2p.) 住民の対応(写真1点,図表2点,1p.) 住民運動の高まり(図表3点,囲み記事1点,4p.) 行政の対応(図表3点,囲み記事1点,3p.) 国道1号線と私たち(図表2点,囲み記事・1点,2p.)
-2- とびらでは、1/2頁分の写真「岡崎の市街地を通過する大型トラック群」により、国道1号線問題 の重犬さを視覚的にうったえている。キャプションは、1日の交通量や騒音の度数、日本で3大交 通騒音激じん地であること等紹介し、問題の重大性をより理解させる工夫がされている。キャプ ションの最後で、「私たちは国道1号線問題を調べることによって、政治を見る目を養い、将来、 どのように政治に参加していったらよいか」と、本単元の課題を提示している。「1 国道1号線 問題」では、「国道1号線問題の歩みを調べ、ぞの原因を考えてみよう」と課題提示し、具体的な数 値や事・例で、国道1号線問題の歩みとその原因を述べている。「2 国道1号線問題の実態」では、 岡崎市の公害実態調査や住民への聞き取り調査等から被害の実体を捉えさせている。丁3 住民の 対応」では、住民の国道1号線問題の対処の工、夫を述べている。「窓を、いつも、しっかり閉める ようにしている」という聞き取り調査の結果や、移転・転廃業の状況を示す市の公害実態調査が示 されている。特に注目すべきは、「設置された運転者自粛用の字幕」というタイトルの写真である。 キャプションは、「1972年2月に、住民の要求に対して、市とトラック業界が設けた、『静かに走 行』の宇幕。住宅や商店は騒音を防ぐため、戸や窓をかたく閉じている。」とある。1枚の写真で、 騒音を起こす加害者側からと被害者側からの対応を、視覚的に提えさせている。「4 住民運動の 高まり」では、「問題の解決には、個々の住民の要・望や願いを一つにまとめ、大きな力として関係 行政機関に訴えていくことが必要である」(p.174)と、住民運動の展開の様子(歴史と問題点)を蝶 べている。この項の最後で住民運動の声を載せ、住民運動の難しさと問題点を探らせている。「5 行政の対応」では、4の住民の要望を受けた行政の対応を図表や囲み記事を活用しつつ述べてい る。「6 国道1号線と私たち」では、市の対策「緩衝緑地帯計圓」の立場の違いによる合意形成の 難しさを述べている。最後に、国道1号線問題を「地域住民の利害問題としてとらえれる(ママ)の でなく、岡崎市の町づくりを未来に向けてどのように進めていくかといった広い視点」や「関係市 町村は連携を密にして、問題に対処していくごとが重要である」と広域行政問題の視点の必要性を 述べている。以上、杉浦の執筆部分は、生徒の意識の流れにそう無理のない要点を押さえた記述と なっている。 杉浦は教職11年目の1979(昭和54)年に国道1号線問題を教材化した。実践直前に副読本の成稿 をあげている。実践は未刊行の副読本に掲載する資料を駆使している。本実践の発表学習では「自 分ならどうするか、また、どうすべきかなど、自分の生き方を考えていく場面を構成していきたい と考え」、「“国1問題を解決するのは”という作文を書かせてから、緩衝緑地帯計画案についてどう 思うか、話し合いをさせて」(杉浦:1988、p.227)いる。杉浦が「緩衝緑地帯計圃」の立場の違いに よる合意形成の難しさを述べた副読本の記述の影響が認められる。「生。徒は、驚きや共感、反発な どの感情、それに自分の主張を入れて発言」(杉浦:1988、p.231卜する、従来の杉浦実践に無い状 況が生まれた。市の指導員だった渋谷環は、杉浦の副読本執筆経験を次のように述べている。 杉浦君の本領は岡崎市中学校社会科副読本『岡崎』に発揮されていると私には思われる。昭和52年、3月発行 の7訂版では杉浦君に公民分野の「市民生活と政治」に関する内容を書いてもらった。市役所などで入手した 資料を適時に配した手堅い構成で、要点を明解に説明すること敦科書以上の出来映えだと思った。 次いで昭和55年、3月の8訂版では再び同じ分野を担当してくれた。この度は当時大きな問題となっていた 岡崎市街地における国道1号線交通公害問題を取り上げ、実態の紹介、住民の対応、市民の視座などの項を 立てて論述している。その内容の確かさや記述の豊かさにみられる知性の送りもさることながら、(中略)杉 浦君の社会科教師としての力量の深まりが、そのまま岡崎の社会科教育の前進に大きく寄与しているのを嬉 しく拝見したのである(岡崎社会科サークル:1987、pp.144 −145)。 杉浦は1972年渡当初から副読本執筆用の地域調査を行った。杉浦初の本格的な地域調査が国道1 号線問題である。杉浦は副読本執筆の成果から国道1号線問題を教材化し、独自の単元開発をし −3−
た。副読本執筆の機会が、杉浦を単元展開を意識した地域調査に誘った。副読本執筆用の地域調査 経験が、杉浦の単況意識を醸成した。渋谷の「社会科教師としての力量の高まり」は、単元構成力 の高まりである。単、元構想力の高まりは、単元展開が可能な素材を収集し教材化する、単元を一か ら作る地域調査経験に支えられている。杉浦は、国道1号線問題の実践前に、氏の主体的な学習を “生徒の主体性尊瀧”の視点から反省し、次の4点を改善した。①。1時間ごとの学習課題設定なの で、単元全体に連続性がなく、追及も浅かった。そこで、個性的な問題意識のきっかけを作る「オ リエンテーション学習」を導入した。②。個々の学習課題を授業展開がしやすいよう共通課題にし たので、素朴な疑問やずれた課題をもつ生徒の考え、を活かせなかった。そこで、学習課題の共通化 を取り止、めた。③。発言の活発さを求め、発言やその考え/を生み出す方法や時間等を与えなかった ので、ちょっとした反対意見や優秀生徒の発言で考え、が左右され、話し合いが深まらなかった。そ こで、自分の学習課題を自力で論理的・分析的に追及し、自分の考えを立葺する「独自学習」を取 り入れた。④。発表の場だけの発表学習を、友人の発言を聞き学習を見直し補強する場とした。4 つの改善点による実践の結果、生徒の学習意欲は喚起し発言が増え。たが、敦科書資料の肉付けや 参考書・資料集の抜き書きが多かった。「また、自分の学習課題を追求する技能は向上恚ても、そ の問題を追及することで、自分ならどうするとか、その時代に生きた人々やその地域の人々は、ど う生きていくべきかといった、人々の生きざまを考えていくことが希薄であった。つまり、学習が 表面的、概念的で、自分たちの現在の生活と結びつけて考えていくことができなかった。」(杉浦: 1988、p.205)。そこで、杉浦は「敦材そのものが自分たちの生活とかけ離れており、学習の素材が 具体化していなかった」と考え、「敦材を身近な地域に求め、生徒の生活意義と学習問題意識の一 体化を図りながら、生徒のものの見方・考え方を深めていきたい」と、国道1号線問題を教材化し た。 杉浦実践における国道1号線問題の「意昧」を考えてみたい。杉浦没後、岡崎社会科サークルが 氏の実践論文を『生活敦材を生かす社会科授業』黎明書房、1988年として編集した。同実践は杉浦 実践初期の主体的な学習実践時代2)の論文中、唯一同書に採録されており、主体的な学習実践時代 の代表的なものである。さらに、同実践が単元レペルで展開されたように、氏は本実践に至り単元 意識を明確化させている。そのことで、杉浦の実践論文「作業化による主体的な社会科学習の達成」 で時間不足等の障壁にぶち当たり、断念した身近な社会事栗の調査を軸にした学習課題設定が可能 となった。さらに、実践論文「主、体的な社会科学習を求めて」で、課題設定に関わって「個人の問題 意識から学級共通の問題意識(学習課題)として、まとめ、ねりあげる段階がうまくいかず、どう しても教師の発問が学習の中心をしめる傾向があらわれている」(同論文P。13)との悩みも、共通問 題化しないことで解決している。実践上の課題解決を本実践でしただけではない。氏は、子・どもの 主体性を育むことを問い続け、主体的な学習に関する論文を書き続けた。「この実践を終えて、私 がつくづく感じたことは、“学習が具体的な活動を通して行われている時だけ、生、徒の主体性を育 成する”ということである」(杉浦:1988、p.237)と述べている。これは地域教材の意味の認識であ り、授業観自体に関わることでもある。さらに、緩衝緑地帯計團案の話し合いでは、氏は「私は、 社会科学習のねらいの中に、能力育成もさることながら、こうした未来に向けてどんな主、張をも ち、どんな行動をしていくのか、判断させていくことは重要なことだと考えている」(杉浦:1988、 p.231)と述べている。これは教材観に関わることである。また、「地域を学習の素材に取り扱うこ とは、たしかに生徒の意欲化を図っていると思われるが、こればかりで、年間を通すことはむずか しい。年間指導計圃を再度検討してみることがたいせつである。」(杉浦:1988、p.237)と述べてい る。氏の従来の実践論文では年間指導計圓にふれたものはない。国道1号線問題の実践は、氏の主、 体的な学習の集大成を図り、氏の授業観・社会科教科観・カリキュラムヘの意識を醸成するものと −4−
なった。 以上、杉浦のカリキュラムづくりに関する力量形成の重要要因に、副読本執筆のための地域調査 経験と地域教材開発を挙げたい。社会科副読本執筆経験は、教員の地域教材開発力形成に寄与す る。社会科副読本執筆経験は、教員の力量不足に起因する地域学習の困難性除去に、資することで ある。 3 従来の学生による副読本作成活動に関わる実践・研究 社会科副読本執筆経験が教員の地域教材開発力形成に寄与するなら、社会科教員養成教育におい て学生による社会科副読本づくりが考え、られて良い。だが、従来の学生による社会科副読本づくり に関わる実践・研究は極めて少ない。学生による社会科副読本づくりの唱矢は里井(1999)である。 里井(1999)は、琉球大学社会科教育研究室が実施した1989年発行の竹盲町小学校3・4年用社会科 副読本『結びあう島じま』の改訂授業を報告した。西表島舟浦中学校教員であった里井は他3名の 敦員と、1987年から編集作業を開始し、『結びあう島じま』の編集方針を次のように立てた。 1 他の沖縄県下市町村の小学校社会科副読本=教朴内容重視型とは異なる授業を想定した=教 材・発問重視型の準教科書にする。 2 小学校3・4年、生社会科地域学習で扱う題材を横軸とし、竹富町の各地域を縦軸として構成す る。 3 竹富町には複式学級が多いので、どの単元からでも授業ができるようにする。 編集方針1について、里井(1999、p.15)は次のように述べている。 ひとことでいうならば子どもの具体的な思考を保障できる教材集をつくることである。従来の那覇市に代 表される沖縄県下市町村の小学校社会科副読本は、敦科書の内容を地域に置き換えたもので、教科内容とし て一般化した具体性に乏しいものであった。タイトルも「わたしたちの云々」とどこの市町村も同じである。 子どもが具体的に地域を思考したくなるような「副読本」はできないだろうかで議論となった。そこで教材と 発問から構成する授業を想定した「副読本」をつくることになった。 編集方針2は、「子老もが竹富町の各地域の具体像にこだわり(疑問、問題発見、課題、ほこり) をもってほしいということである。」(里諜:1999、p.16)。「竹富町の子どもたちの生活圈は自分た ちの島と八重山諸島の中心地石垣市である。同じ竹富町なのに他の島については知らない。」(里井: 1999、P.16)。そこで、「小学校三・四年生社会科地域学習で扱う題材を、竹富町に即して吟昧し、 典型的なテーマを竹富町各地域にわりふり単元構成した」(里井:1999、pp.16 −17)。編集方針3は 「子・ども(複式・少人数等)と地域(米作・漁業)の状況によって、敦師の自主的判断によってどの単 元からでも始められるようにしたことである。」(里井:1999、pj7)。 里井等は、社会科教育らしいアイデンティテイのある科目として設置した学部2年生、対象の「社 会科教育調査」で、1996年度に大学院1年生も参加させ『結びあう島じま』の改訂作業をさせた。副 読本改訂という課題は、『結びあう島じま』の編集方針の3つの意味を学生達が意識しうると考え たからである。しかも、1989年発行以降、『結びあう島じま』の改訂はなく、改訂は社会的意味す なわちやりがいが付与されることにもなった。学部2年封象の「社l会科教育調査」への大学院1年 生の参加は、大学院生と学部生相互の知的刺激効果を期待したためである。改訂作業は、1996年5 月から6月にかけ事前調査、8月後半に院生、・学生、の竹富町調査が行われた。調査指導に里井他1 名の大学敦員があたり、琉球大学付属中学校の教員も協力した。後期の授業は調査に基づく改訂作 業が中心となり、3月に改訂版『結びあう島じま』を出版した。里諜(1999)は、改訂作業の意昧に、 1.資料・統計の1996年段階レペルヘの一新、2.新たな意昧ある教材の付加、3.発問の創造と 修正。、4.存在意昧のない単元の廃止と意味ある新たな単元の創造、を挙げている。里非等は、改 −5−
訂版の制作主体が学部2年、生なので1は事前に期待もし、それだけでも竹富町の教育に幾分かの貢 獣をし、社会的参加の責任を学生達に自覚させられると考えていた。だが、2∼4と星井等の期待 を良い意味で裏切る新たな意昧が副読本改訂活動に付加された。里湛はその理おを述べていない が、筆者等は、学生達が改訂作業の社会的意味つまりやりがいを感じ、それどころかミッションと してまで副読本改訂活動を提え、学生達なりに社会参加できたことが大きいと考えている。 学生による社会科副読本づくりは、里井実践3)の他は筆者等による副読本づくりだけであろう。 筆者の一人伊藤は、平成の大合併で敦育現場に新たな副読本づくりが求められ、特に社会科敦員の 副読本づくりの力量が問われたと感じた。そこで、伊藤は大学院生、と持続可能な開発のための教育 (ESD)も射程に置き、ローカルかつグローバルな問題である水問題を基軸に、社会科の他に総合的 な学習の時間でも活用可能な副読本づくりを行った。 2006年度は、香川大学大学院教育学研究科教 科敦育専攻社会科敦育専修1年生と第1次香川県 探検・発見・ほっとけん隊を組織し、2007年、3 月に『水のパイオニアー香川・日本・世界−』を発刊した。 2007年渡は、香川大学大学院教育学研 究科敦科教育専攻社会科敦育専普1年生と第2次香川県 探検・発見・HOT県隊を組織し、2008年、 3月に『水のパイオニアn−ふるさと香川から未来へのねがいをこめてー』を発刊した。里井等の 副読本づくりは改訂作業である。伊藤等の副読本づくりは、院生がゼロから敦育内容を構成し、著 作権許諾や印刷会社との交渉等副読本作成業務一切を担い、院生の副読本作成の力量形成を図って いる(光田・小山・伊藤:2008)。 m 社会科教員養成教育における副読本作成活動の実際 1 第1次香川県 探検・発見・ほっとけん隊(2006年度)の『水のパイオニアー香川・日本・世界一』 作成活動の様子4) 1)第1次香川県 探検・発見・ほっとけん隊誕生の経緯 香川大学教育学部では地域素材を教材化するといった地域学習と正対した授業はない。学生は現 場に出るまでその手立てや扱いを学習する機会はない。伊藤は学生の地域教材開発力育成の必要性 を痛感し、せめて院生だけでも地域敦材開発力育成の場を設定したいと考えていた。院生も地域教 材開発力を形成したいと考えていた。副読本作成プロジェクトは両者の思いが合致したものであ る。本プロジェクトの目的は、副読本作りを通し社会科教員を目指す大学院生自らが地域教材開発 力を養うことと、教育現場が活用可能な副読本を作成して地域貢獣することである。本プロジェク トは、香川大学大学院敦育学研究科教科敦育専攻社会科教育専・修1年生9名と伊藤とで「香川県、・ 探検・発見・ほっとけん隊」を組織し、平成18年度からスタートした香川大学学生支援プロジェク ト事業に採択されたことに始まる。 2)『水のパイオニアー香川・日本・世界−』作成活勤の概要 ① 当初の副読本作成の動きと問題点 院生による副読本作成は、出力型授業観に基づく授業展開を考えたので、適切な場面設定が伊藤 に問われた。そこで、教育現場で活用可能な副読本を作成し地域貢献するという目標設定と、「学 生提案プロジェクト」への応募という仕掛けを仕組んだ。「学生提案プロジェクト」への応募は、副 読本作成経費の獲得とともに、学生提案故最終責任は院生、にあること、大学当局から採択された意 昧あるプロジェクトであり、経費をいただく限り投げ出せないことを意識づけ、院生が切実となっ て副読本作成に取り組、むことを期待したものである。また、副読本の内容構成は、ローカルな香川 の問題でありグローバルな問題でもある水問題を基軸にすることを、土俵の明示として伊藤から院 -6−
生に提案した。ここまでが場面設定である。院生達は、副読本作成には何が必要で、どんな準備を し、どんな過程で進めれぱよいかも分からず、手探りの状態で2006年・8月に作成活動を開始した。 副読本の対象校種の問題、溜学生。の参加問題、院生の香川の水問題に対する知識不足問題、が当 初の問題点であった。取り組みたい校種は小学校3名、中学校4名、残り2名は留学生である。院 生自らが地域教材開発力の形成を図る目的での副読本作成故、各自が取り組みたい教材を研究し進 めることにした。留学生。2人は同じ活動内容での参加は困難である。そこで、伊藤が、今後留学生 の故国である中国は水問題が重要となるから、中国の水問題を執筆したらと提案し、合意を得た6 副読本に盛り込む内容は、教科書や県内の副読本に取り上げられる内容と重複しないよう心がけ、 水問題めローカル性とグローバル性を踏まえ、香川から日本、日本から世界へと視野を広げられる 構成にした。作成メンバー9名中香川県出身者は2名のみである。香川県出身者も副読本を作成す る上での知識の希薄さを痛感していた。そこで、香川県環境森林部環境・水政策諜発行の小学生用 副読本『香川県の人びとのくらしと水』や、各市町教育委員会発行の副読本の収集・分析から作業 を始めた。 ② 香川県下及び他県の副読本の分析と教科書及ぴ学習指導要領の分析 づ 香川県下で発行されている副読本の分析のため県下17市町に依頼文書を送付し、4市町から副読 本をいただいた。香川県の副読本の分析では、どのような内容が載っており、それらの内容が各教 科書のどの部分と対応するか検討した。また、他県の水事情も知って香川県め水事・情と比較しよう と考え、滋賀県教育委員会・滋賀県生活環境部編(2004)『あおいびわこ』、滋賀県教育委員会・滋 賀県生。活環境部編(2005)『琵琶湖と自然』と、黒田伊彦編著(2000)『よみがえれに大和川』つげ書 房新社、も検討した。さらに、平成10年度学習指導要領(生活科、小学校社会科、中学校社会科) を分析した後、生活科と小・中社会科教科書と副読本とを比較・検討した。 ③I・副読本構成の決定 犬 ’j コンセプトを「安全な水」とし、小学校は「利水・治水・親水」の観点で、中学校はそれを発展さ せる構成とした。小学校は25行×36宇、中学校・中国編は30行×36字、各編字の大きさは12ポイン トとした。頁数は全体で約80頁、小・中学校は各32頁、中国編は10頁、冒頭にカラーを8頁(小学 校3頁、中学校2頁、中国編2頁、表紙1頁)設定した。内容構成は以下の通りである○ ■・ 小学校編 十 第1章 水を安心してつかえるように 1.ため池 2.香川用水 3.いまの水不足 4.水不足にそなえる 第2章。水田のひみつ 1.田に水をためるひみつとは? 2.水田と環境のかかわり ・ 香川県の産業と水 1。香川の特産物 2.うどんと環境問題 中学校編 第1章 香川県の水資源の利用とその確保 一高松市を中心に− 1.平六渇水を克服した農家の知恵 2.高松の製紙業を支えた水 第2章 香川県の河川における治水事業 1.香東川、大束川の付け替え 2.土器川、財田川の霞堤 第3章 水の都の秘密 7 1.水の都・大阪 2.現代の生活と川 第4章 世界の川と人々のくらし 1.ナイル川一乾燥地域を流れる川 2.アマソン川一熱帯地域を流れる川 中国編 中国の水と生活 1.中国の二大河川一黄河と長江− 2.中国の様子中国の内モンゴル自治区 3.人々の努力で島を元どおりに 発展学習偏 第1牽 汚染された水を元どおりに (土庄町豊島) 1.産業廃棄物はどこへ? 2.きれいな水をつくるために (遮水壁、高度排水処理施設) 3.きれいな水を作りだすための7つの過程 第2章 琵琶湖と人々のかかわり 1.琵琶湖のキャンプ場と水質の関係 2.琵琶湖とともに歩む人々 3.琵琶湖が抱える問題 4.水とともに暮らす
④ 副読本作成の実務を体験する一大学当局との交渉、印刷会社との交渉− 印刷会社との交渉も院生が担当した。第1回目の打ち合わせだけは伊藤がセッティングし、9月 に行った。その場で、ダイレクト印刷、総頁数、紙の材質、予算、冊行時期、原稿提出時期を決め た。原稿提出時期は2月中旬、編集を済ませ提出すると決めた。本文は予算の関係上モノクロ印刷 とし、カラーが良い資料は巻頭カラーページで対処すると決めた。刊行時期は3月とし、最初の打 ち合わせを終えた。以後の印刷会社との逓絡や交渉は、すべて院生が行った。脱稿後の印刷会社の 見積もりでは、大幅な予算変更が生じた。原稿は編集を済ませて提出予定であったが、図や写真の 修整・挿入が複雑になり、執筆に精一杯で編集を院生だけではできなかった。編集を印刷会社に任 せたため、それだけで5∼6万円の予算オーバーになる。編集で細かな要求もしたので、印刷会社 の見積書は48万円と予算の2倍以上となった。あまりに高額なため交渉に交渉を重ね32万円ほどに してもらった。だが、これでも若干予算オーバーなので、大学当局と交渉しどうにか支出してもら えることとなった。このように、印刷会社との交渉だけでなく、院生が物品購入等の予算執行関係 や、プロジェクトの進捗状況の報告等で大学当局と交渉することもしばしばあった。 ⑤ 副読本原稿の執筆と執筆過程での著作権許諾作業 作成過程で最も際立、った変化は、文章の構成や文体の変化である。中学校編の初稿は、専門用語 を多く含み表現が難しかった。中学校編で難しい長現がある一方、小学校編の文章は砕け過ぎた表 現もあった。院生、に子どもの実態が把握できておらず、およそ小・中学生の学習にたえるものでは なかった。初稿を仕上、げ、附属小学校・中学校の先生、方に原稿検討していただいた。第一の指摘 は、前述した表現問題の他に、図や写真等の資料の少なさであった。文章で理解させるより図やグ ラフ等の資料で理解させるべきであるとの指摘である。第ニ、の指摘は文章が多すぎることである。 文章が多いと見向きもされない。文章を読むのを嫌がる子どもの実態を教えてもらった。第三の指 摘は、平成10年、度学習指導要領による学習する漢宇数の減少のため、ほとんどの漢宇にルビが欠か せないことである。その後、教育委員会の指導主奉にも原稿検討していただいた。資料の少なさは 同様に指摘された。その他に資科の多い副読本の方がより実用性があることを助言された。院生が 文章で書くような内容を調ぺることは、教育現場の先生方もできる。だが、その内容を図やグラフ にしたりすることは時間の問題もあり、なかなかできない。敦育内容の把握まではできるが、それ を敦材化することは難しいのである。そこで、文章の平易化と掲載資料の増加に取り組んだ。文章 の平易化では、院生で互、いに原稿を添削し合い表現を検討した。普段使っている表現を子どもに分 かりやすく言い換える作業は、非常に手間暇かかる作業であった。辞書を繰って表現を変えていっ た。 ∧文章を修正七つつ、必要な資料検討も平行して行った。資料掲載で問題なのが著作権である。作 成した副読本は書店販売や有料配布したりはしない。だが、新聞記事、や地形図の掲載は著作権の問 題を避けられない。「本」の形にして成果を出すみことと、副読本作成の過程を学ぶためにも、著 作権問題を自分たちで処理する必要があった。著作権の専門的知識がない院生なので、伊藤が教材 会社の方を招き講習会を開いた。作成した副読本の資料のタイプは、(1)グラフ、(2)写真、(3)図 表、(4)新聞記事、(5)地図・地形図、(6)絵圃であり、それぞれタイプ毎に著作権への配慮が異なっ ている。 3)院生にとっての副読本作成活動の成果 院生が副読本作成活動に携わって得られたことは、①子ども研究の必要性の認識、②教材開発の 仕方、③著作権許諾に関する知見、④「場面設定による授業」の体験、である。 院生が持ち寄った初めの原稿は、利用する子どもたちを強く意識したものではなかった。内容を 考え文章を書くのに精一杯という状況が明らかな原稿であった。だが、附属小学校・中学校の先生。 -8−
方、教育委員会の先生方に指導を受けるうちに、各人の原稿は、誰が使うのか、どのようなことを 敦えたいのかを意識したものに変化していった。院生は、①の子ども研究の必要性を認識したと言 えよう。 ②の敦材開発の仕方では、院生は、敦育内容を教材化する方法と敦材から教育内容を見つけて教 材化する方法を学んでいる。この他、いかに対象に合わせて教材化するかということも学んでい る。例えば、小学校編ではどの学年でも扱えるように漢字の多くにルビを施している。舞徽での学 習も考慮し、数値には単位を付けるだけでなく、「プールの水が○○はい分」と、具体的にイメー ジできるように工夫も試みられている。さらに、院生は、作成するものにより著作権の対処方法が 違うことを、活動を通して学んでいる。③の著作権許諾に関する様々な知見が得られたと言えよ う。 似上、副読本作成活動では、何をどう教材化するのかを、各院生が学ぶことができた。他に、印 刷会社との交渉や著作権への対応等をすることで、副読本作成の全体の流れも学ぶことができてい る。このようなことを学べたのは、「副読本を作る」という場面設定がされたからである。伊藤が 行ったのは場面設定のみで、ほとんどの作業を院生が行った。伊藤は後方支援に徹したため、貌生 が全てを自分たちでやらざるを得ない状況ができあがっていた。副読本と同時に作成した活動報告 書で、院生の光田は副読本作成が始まった頃を「レールが敷かれていなければ、車鼎さえも付いて」 おらず、電車の「設計図さえもなかった」状況で、「『電車はどうしたら走るのか』という研究から始 めたような活動である」と振り返った5)。鉄道を敷く構想があるだけで他には何もない状況であっ た。このような場面設定だったからこそ、院生が多くのことを学ぶ機会が得られた。この活勤はた だの放任主義のように見えようが、そうではない。主。体的に活動させることで、限られた時間で、 できるだけ多くのことを学ばせようとしたのである。この活動で「副読本を作ること」白体を学ん だだけでなく、④の出力型授業観での「場面設定による授業」という敦育方法も学ぶことができた。 2 第2次香川県 探検・発見・HOT県隊(2007年度)の『水のパイオニアn−ふるさと香川から 未来へのねがいをこめてー』作成活勣の様子 1)第2次香川県探検・発見・HOT県隊誕生の経緯 香川大学大学院敦育学研究科敦科教育専攻社会科教育専修1年生を主体とした第2次香川県探 検・発見・HOT県隊は平・成19年、5月に発足した。副読本作成の目的は次の3点である。 1つ目は、 子どもたちのふるさとを大切に思う心の育成に寄与することである。平威の大合併後、行政域が広 域化し地域の一体性が薄い地域もあり、郷土愛の育成がかつてなく求められている。郷土、愛育成の 有力な手だてに副読本の活用が挙げられる。将来香川県を担う子ども達に香川の良さに気付かせ、 ふるさとを犬切に思う心を育てたいと考えた。2つ目は、子ども達に水問題を真剣に考えさせるこ とである。 1995年、5月、世・界銀行副総裁スマイル・セラゲルティンは、「20世紀は石油をめぐる戦 争の時代だった。だが、21世紀は水をめぐる戦争の時代になるだろう」と述べた。これからの時代 を生き抜くには“水問題"は無視できないと考え、2006年度に引き続き“水"をテーマとした副読本を 作成した。3つ目は大学院生自らの教材開発力を高めることである。どれほど良い素材があっても それを敦材化できなければ、子どもに力はつかない。将来現場に出た時、目の前の子どもたちに力 をつけられるよう、大学院在学中に教材開発力を高めようと考えた。以上の目的達成には、作成し た副読本を学校現場で活用してもらうことが大切である。 2006年度は発足初年度でもあり、右も 左も分からない状態での副読本作成であった。 2007年度は昨年度発行の『水のパイオニア』があり、 先輩院生、からの様々な助言もあったので大体の作業の見通しは立。っていた。 −9−
2)副読本と関わる大学院での授業の概要 副読本作成と関わる授業は、前期の社会科教育特論Iと後期の社会科敦育特別演習Iである。社 会科敦育特論Iは、途中から実習前の学部3年対象の社会科授業研究I(『水のパイオニアー香川・ 日本・世界−』を活用した飛び込み授業づくり)に参加した。『水のパイオニアー香川・日本・世界−』 を活用した院生と学部生の協働での飛び込み授業づくりは、以下のシラバスの囲み部分である。
社会科教育特論I&社会科教育特別演習I
社会科教育特論Iの授業目的 社会科教育及び地歴科教育における水問題や環境問題に関わる代表的な実践を検討し、社会 科教育及び地歴科教育の見取り図づくりができることをめざす。さらに、見取り図づくりでの 成果を踏まえた学部生の飛び込み授業の支援から、教授的力量の形成も図る。 社会科教育特別演習Iの授業目的 づ 前期「社会科教育特論I」で、附属坂出中学校において副読本の中学校用教材の有効性を授業 検証した。その成果を受け、「水」を基軸にした副読本を作成する目的的活動を行う。副読本作 成に際し、事前に附属小学校で小学校用教材の有効性を検証する院生、による飛び込み授業も行 う予定である。ところで、将来的には院生は地域教育のリーダーとなり副読本編集に関わる可 能性もある。そこで、副読本作成に関わる印刷会社との打ち合わせや著作権の許諾作業等の実 務も可能な限り体験する。その際は、大学院2年亜からの助言等の支援も期待されるので、学 びの共同体づくりもめざしたい。副読本作成で、地域素材の教材化を図る力量を図ると共に、 社会科教師としての実務の一端を経験させることをねらう。 テキスト ① 香川大学大学院教育学研究科教科教育専攻社会科教育専修(2006)『水のパイオニアー香川・ 日本・世界−』 ② 香川大学大学院教育学研究科教科教育専攻社会科教育専修(2006)『「水のパイオニアー香 川・日本・世界−」を書き終えて』 ③ 伊藤裕康他(1999)『教師教育カリキュラムの改革に関する研究』 社会科教育特論Iの授業概要と計画 1 オリエンテーション(4.13) 2 副読本読破、『教師教育カリキュラムの改革に関する研究』読破、担当授業記録の分析(4.20) 3 初志の会の授業記録検討(5.11) 4 歴教協の授業記録検討(5.18) 5 附属坂出小学校研究会参加、参加記録作成(5.24・25) 6 社研センターの授業記録検討(6.1) 7 附属高松中学校研究会参加、参加記録作成(6.8) 8 学部生飛び込み授業づくりに参圓6.11 9 提案する社会科の授業記録検討(6.15) 14・ 15 飛び込み授業7.13 1 0 16 学部生飛び込み授業検討7.23会科授業研究I
授業の概要 社会科実践記録の読解、附属学校の公開授業の授業分析、グループによる実験授業め開発 (プラン作成から実施まで)を通して、社会科における授業構成力及び実践力をつけることをめ ざしている。今年度は、香川大学大学院教育学研究科教科教育専攻社会科教育専修(2006)『水 のパイオニアー香川・日本・世界−』を教材として飛び込み授業作りを進めていく。その際、 大学院生も飛び込み授業作りに参画し、学びの共同体づくりもめざす。 授業の目的・達成目標 社会科における授業構成力及び実践力の形成を目標としている。従って、達成目標を次のよ うに設定する。 1 社会科の教科目標を踏まえて、授業づくりをする構えがもてる。 2 特定の単元を取り上げ、具体的な単元計画と指導案を作成することができる。 3 附属学校で白分達が考えた授業プランでの授業を行い、それが授業としで成立することが できる。 テキスト ー 香川大学大学院教育学研究科教科教育専攻社会科教育専修(2006)『水のパイオニアー香川・日 本・世界−』 授業計画 ① オリエンテーション、社会科の授業づくり(1) 一授業観と授業づくり、発問ど授業づくり(4.16) ◇ ② 社会科授業の分析(1)(4.23) へ ` ③ 社会科の授業づくり(2)一教育内容と教材(5.7) ④社会科授業の分析(2)(5.14) ⑤ 副読本分析・検討(5.21) ⑥ 副読本分析・検討、社会科指導案作成について(1)(5.28) ▽ ⑦ 社会科指導案作成について(2)、(自己)評価について(6.4) 予備(7.30) 13・ 14 飛び込み授業7.13 15 飛び込み授業 討7.23 3)2006年の課題を踏まえての2007年度のアプローチ 次の2006年渡の6つの課題を踏まえて、2007年、の副読本作成活動を実施した。 ①③⑤ ① 児童・生徒の実態把握の必要性 十分な副読本・敦科書分析 早めの著作権の許諾 +分な子どもの実態把握 ② 副読本をどう授業に活用するのか ④、早期現地調査の必要性 ⑥ 副読本づくりのスケジュール調整 作成した副読本を学校現場で活用してもらうことが肝心である。それには、子どもの興昧・関心 等の実態把握は欠かせない。 2006年度は附属小・中学校の先生方や敦育委員会の先生方に原稿検討 −11−していただいたが、初年度であり取り掛かりが遅かったの で、副読本の内容を授業にかけるまでには至らなかった。 宮西が『水のパイオニア』を活用して授業をする中で、子 どもの実態把握が弱かったと感じた。文章中の表現方法や 補足説明、キャラクターの使い方等、どれだけ副読本に興 昧を引き付けられるかが鍵となると感じた。そのためにも 十分な生徒の実態把握が求められる。 ② 授業展開を予想した副読本の作成 学校環場で『水のパイオニア』は活用可能かの検証授業 ̄4Eij を、学部3年、生と院生が附属坂出中学校、丸亀市立飯山中 学校で実施した。宮西らが授業構想する際、どの単元で実 丸亀市立飯山中学校での 宮西の授業 践するか苦慮した。『水のパイオニア』は小学校編と中学校編に分かれる。授業構想する中で、中 学校編は内容が高度で扱い難いと考えた。そこで、小学校編第2章「水田のひみつ」で授業を構想 した。実際、宮西は、「水田のひみつ」の授業を行い、その語句に必要な資料提示の順番が逆だっ たり、図の説明が無い等不十分な点があると感じた。授業中、生徒から「何故中学校なのに小学校 編をやるの?」と声があった。2時間構成の授業で、特に副読本を中心に活用した2時間目の授業 は生徒とともに、宮西も興昧のわく内容の授業は出来なかった。 以上の点については、伊藤は見解が異なる。高度な箇所が散見される中学校編ではあるが、内容 自体興味深く、授業の仕方で子どもも十分関心を持てる。だが、あえて伊藤は助言しなかった。地 域学習の易行化が必要と常々考え、る伊藤は、新任でも実践可能な敦材開発が大切と思うからであ 息。院生白らが地域教材開発力を育成するのが本プロジェクトの目的であり、極力見守るスタンス をとったからでもある。本プロジェクトの継続を考え。先輩院生から後輩院生への副読本作成に 関わる様々な知の継承を期待もしたので、助言するより、まず任せて汗をかかせたいとも考えた。 「なぜ、田に水を引くのか」を考え。させる小学校編第2章「水田のひみつ」も、魅力的な教材である。 モンスーン気候の日本では、水をはることで雑草の駆除をし、病虫害や連作障害を防ぐ、施肥にも なる等、ある意昧米作りは持続可能な農業なのである。このことは、普段水がはられた田を見てい る子どもでも、いや大人でさえ、気付いていない。中学生でも十分魅力的な教材である。実際、『水 のパイオニア』作成に携わった院生の高田は、小学校5年、生ではあるが、大学院修丁後の2008年・5 月、授業参観で「水田のひみつ」を授業にかけ、子老もだけでなく保護者にも好評であったと言う。 次に、『水のパイオニアH∼ふるさと香川から未来への願いをこめて∼』の目次を掲載する。 第1章 残したいもの,伝えたいこと 1.香川県の水事情 2.香川県の祭り ①さぬき豊浜ちょうさ祭り ②滝宮念仏踊 ③ひょうげ祭り 3.祭りから考えること 第2章 virtual Water一仮想水とは?− !.命の水と仮想水 2.うどんと小麦 3.わたしたちの食事と仮想水 ☆コラム うどんの水質汚染 第3章 食の現状と新たな取り組み 1.食料自給率とは・・・ ①すしは本当に「日本」の食べ物 ②さまざまな食べ物の食料自給率 2.新しい考え方『フード・マイレージ』 ①フードマイレージ,その前に… ②What's『フード・マイレージ』 ③さぬきうどんのフード・マイレージは どのくらい? ④日本のフード・マイレージを詳しく知 ろう ⑤フード・マイレージのこれから 3.日本の未来 一食料自給率とフード・マイレージー 第4章 世界の水事情 1.ヴェネチアの危機 2.死海の死…かい?! (イスラエル・ヨルダン) 3.消え行くアラル海(水資源の問題) 4.ラムサール条約(水辺の環境保護) 12−
先の課題を踏まえ、今年度は小学校編・中学校編・発展学習編と明確に分けずに構成し、自由に 活用可能にした。このこととも関わり、2006年度冒頭に置いたカラーページ8頁の有効活用も考 え、次のように変更した。一応小学校の子どもを対象にした「第1章 残したいもの、伝えたいこ と」と小学校及びそれ以降の子どもを対象にした「第2章 viltua1 Water一仮想水とは?−」との間 に、仕切りの意味と第2章以降を誘う中扉の意昧を込め、4頁の水風景のカラーページを設定し た。残り4頁のカラーは第1章の本文の中に設定し、より見やすく見栄えの良いものになるよう心 がけた。この他、文宇は極力を減らし、写真による資料提示や語句説明を多くした。これらの変更 は、「もう少し見やすくして欲しい」等の生徒の意見や反応、先生方からいただいた補足説明の重 要性や効果的なイラストの活用等の助言を十二分に生、かす必要があると強く感じたからである。 ③ +分な副読本・教科書分析を踏まえた上での副読本に盛り込む内容の洗い出し 『水のパイオニア』を活用した授業の際、敦科書分析が 不十分だと感じた。授業は教科書にそって行われる。教科 書の学習をより深めるための1つに副読本がある。授業で 活用してもらうには十分な教科書分析は不可欠である。筆 者等は1人ひとりが小・中学校の教科書を分析し、水に関 わる岸元や語句を拍出してKJ法でまとめていった。する と、同じような内容の塊ができてきた。その中から幾つか のキーワードを抜き出し、今回の副読本で扱いたいものを 挙げて絞゜てo°た。話し合う中で「祭り」と「仮想水」と 写真2 KJ法による内容の洗い出し いうテーマが浮かび上がってきた。 ④ 早期の現地謂査活動 2006年度は初年度でもあり副読本の取りかりが遅く、写真撮影や資料収集等が充分に出来なかっ た。自分たちで資料作成し、撮影したものでないと、許諾を得なければいけない。去非は原稿と同 時並行で資料収集したため時間がなく、欲しい資料や写真が得られなかったこともあった。先輩院 生の助言を生かし、同じ轍は踏まないよう早めに動いた。5月の満水時と6月末の渇水時の四国の 水がめ早明浦ダム、建築物としても価値ある豊稔池、香川用水記念公園、徳島の池田ダム、吉野川 等香川の水事情と関連深い場所を中心に赴き、写真を撮り資料収集をした。後に気づいたことだ が、実際に現地に行くことが重要である。その場所の雰囲気、土地の様子、地元の人たちの話を聞 くことができ、実際に行かないと手に入らない資料が手に入るなどのメリットが数多くあったから である。自分たちの目で見たもの、聞いたものはリアルに伝えることが出来る。作成する意欲や中 身にも大きな違いが出るだろう。自ら資料や情報を収集することは、副読本の内容を左右すると言 え、る。何より著作権の問題がクリアーされることが大きい。これは次で詳しく述べたい。 写真3 渇水時の早明浦ダム 写真4 満水時の早明浦ダム (2007年6月撮影) (2007年5月撮影) −13− 写真5 豊稔池堰堤 (2007年5月撮影)
⑤ 著作権の許諾 著作権の取り扱いが1番の課題と先輩院生から引継があった。最近著作権の問題が声高に叫ぱれ る。著作権の取り扱いは細心の注意が必要である。著作権にも様々な種類があり、写真やイラス ト、グラフ等を使用する際は、関係諸機関等の許諾が必要である。院生は著作権の知識はほとんど なかった。2月に愛媛大学で文化庁主催の著作権講習会が開催されることを伊藤に聞き、メンバー 全員で参加した。その際、2007年度の原稿と『水のパイオニア』を持参し、疑問点を直接質問した。 学校でのキャラクターや写真の使用は非営利目的なので著作権の適用外であると、著作権法第35条 にあるから、営利目的ではない副読本はほとんどの場合大丈夫であろうとの見解であった。だが、 後々指摘されても困るので1つ1つ許諾をとって行った。使用する理由や目的、自分たちの活動理 由を明確に話すと、快く許可して下さった。著作権問題はほぽクリアーできたと考えられる。 ⑥ 副読本づくりのスケジュール謨整 大学経費を使用するため、副読本は2006年・度も2007年・度も3月末完成が条件である。 2006年度は 作成の取りかかりが遅く、香川大学教員養成GP・とも重なり、非常に忙しい中での作業であった。 それ故、院生全員のスケジュール調整が困難であり、確認作業や頁構成、著作権の確認等うまく分 担できずに負担が偏ったりもした。 2007年・度は先輩院生の助言を生かすべく5月から動き出し、細 かいスケジj.−ル調整を伊藤とともに行った。次に示すのは、今年度のスケジュールの概要であ るレ ∇ 平成19年・5月 6月 7月 8∼9月 10月 11月 12月 平成20年ぐL月 2月 資料収集開始 副読本を活用した授業設計 授業実践(附属坂出中学校等) 授業実践をリフレクションしての補足(資料・写真等の収集) 平・成18年、度のまとめを学会発表(第50回全国社会科教育学会・第19回社会系教科 教育学会合同大会) 教材研究、現地調査、資料収集等 中間のまとめ(第1次原稿作成) 伊藤による原稿の指導 香川県教育委員会義務教育課主任指導主事。香川大学教育学部附属高松小学校 教論、同坂出小学校教諭、同坂出中学校教論の指導を受ける。原稿作成、印刷 会社との交渉、著作権講習会(於愛媛大学) 3月 原稿の校正。、副読本印刷・完成。平成18年度まとめを発表(「副読本作成経験の 『意昧』」香川大学教育学部実践研究総合研究第16号に発表) 4月以降 関係諸機関・学校への配布 4)2007年度の副読本作成活動で出てきた課題 2006年度の課題を踏まえた活勤であったので、大きな問題点は出ないだろうと院生達は考えてい たようである。だが、やはりと言うべきか副読本を作成する 中で、次から述ぺる課題が見えてきた。 ① 様々な知識を必要とする教材開発作業 今回も2006年度同様、香川県敦育委員会義務教育課の主任 指導主、事の先生、方や香川大学附属高松小学校・中学校の先生 方、同坂出小学校・中学校の先生方に原稿を校閲指導してい ただいた。指導の中で、1つの題材やテーマを扱うにしても 多様な展開方法があることを改めて気付かされた。また多様 な展開方法を具体的に指導していただいたことで、副読本が より良いものになったと考える。そのような多様な展開方法 −14− 写真6 附属学校教員による 副読本原稿の校閲指導
に気づくには、引き出しを増やす、つまり教授活動に関わる知識を増やさなくてはいけない。副読 本は水に関連した内容で、地城に根ざした内容にしなけれぱならないため、多くの調査を必要とし た。文献やインターネット、現地調査等香川や水に関することについて調査した。間違いがあって はいけないため、インターネット等の内容は特に確認作業を重視した。副読本作成の中で、・教材研 究の重要性を感じた。常日頃からアンテナを張り巡らせ、教材になりそうな情報をキャッチしてい くことの大切さと、学習すべきことの多さを実感した。 ‥ \ ‥ ② 時間がかかる著作権許諾作業 2006年、度の院生の助言や著作権講習会での学びから、著作権許諾はほとんどクリアー出来た。 問 題は許諾期町にある。今回は著作権の許諾問題を後回しにしてしまった。それ故、最後に・一気に著 作権の作業をしてしまうという形になった。もし資料が使えなかった時のことを考えれば、もっと 早くに著作権の許諾をクリアーしておくことが重要だと感じた。副読本作成は営利目的ではないこ と、教育の一環であることを明確に説明すれば問題はない。だが、インターネット上の写真や資料 は許可が得にくかったり、時間がかかるものもあった。著作権の許諾が必要なものは早めに対応す ることが必要である。これは去年度の課題でもあったが、出来なかった。 2008年・度の課題とした Xハ。、 ・ ③ 不可欠なパソコンスキル 「この本を買おうかな、読もうかな」と思うときに何を重視するだろうか。内容も勿論だが、レ イアウトや見映えもかなり重要・な点ではないだろうか。『水のパイオニアn∼ふるさと香川から未 来への願いをこめてー』作成の際にはレイアウトや見映えも強く意識した。その理由として、生徒 の声や反応にあった。生徒はキャラクターやグラフに強い反応を示す。それは授業を行ったときに 顕著に表れた。『水のパイオニア』は作成時間も無かったせいか、見映えの点から充実していると は言い難いと感じる。下の図は『水のパイオニア』と「水のパイオニアH」のレイアウトを比較した 一例である。 ハ ゙ … … …::;:: l : i ili・ll ' i l ' i ・ : ' : 'l l i ‘ 鍔・. i i丿内 i 滴;ai辺 ' りl; : が?: 1 ! : i 眠j;;=り ヘ ゙ … …ll ' ず い : ぷ ん と = ‐ = j ● = が l ● ' = = ‥ ' =… … …: = = I = l ・ …… ご 六 言 ト ゙ モ ぷ= i這4a な=i:;J = : ; 4ii i ,2:ク' テ ゙ レ= U i : = lji 1・⑤レ ゛゜ :ワ=ツ ゙:……… │ ] = ゜フ ゙フ ゙……1 = ゛ i : 1 : J : r . ・` '・'・ .゛… … …yy, ; Zこ匹● ぞ・,. ・ .? や・ z● 昌昌 i z . ・4.- 一 一 −.?., − − ● 〃・ . 1 . 1 ヅ:ヽ'j ‥ 釦 : = 窒 時 a 翻 沁iめ : 天 雄,李 冊 . ほ 梅 の 底 ・ f t;た;. : 吹桐期 が 鮮 ね る : i とョ.:気溢 が 1… … … ……= .11 カ l り ・ ・ ま し l t . , そ‘: ・ う t る と ・… ……● : 編 = も E , が ・ g た:のシey蹟 が 生 l 駒 山 の 酉 のふ ! . ・ . ‥ ‘ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ‥ ● ‥ . ・ . ' . . ・ ● ・……! ● ● ‥ ! ・ ● . ● ● 4 i ・ ・ ● ● S . 6 ● ・・・ ● ・ . ・ . ・ I ・ . ■ ■ ㎜ ■ ㎜ ㎜ ■ ■ ■ ・・ ・ …… … …嘱 1 1 1 , ・ ・ 汝 ・ i 押 t . 寄 菅 たクぬで喰に£ の & 癩 を(1;綸 ・ 梱 進 j`と = = 1 i = ・ ヽ , い 奮 t:, 1 : 齢拘ゾ 一 ヅ 集 が7・ iしt い,必 順 芦 内 搦 もJ :こ , の 總 丈 畠 進 1 1 こ よ ・ ウ ' ・ c強戈 れ ま し た .‥ ‥ ‥‥l ・ 6 4 } ヽ ・ 嘔 l g V y……゛. ・ . ' ・ : . " . ' ・ .・ ‥ . . ・,: ・:. ・い … ………, ・ . ・ ……… I , 1 4 ● 1……:………l‥‥‥‥ ‥ ‥ ‥‥‥‥ ‥ ‥‥ノー , :… ………ぐ,∠……… …l…………:兄, :… … ・ s − y ¶ こ - 1 白 水 の ま ぐ る ぬ 軸 λfs o s:年 )……… … ヅヅ ニ y………= l… … …= : 1 ポ ¥ 7 ≒ 加 鳶 慶 裁 讐 f 早 威 ・ 1 5 ・・1 ● 胤 痍 を a l c 仰 威 3 …… ‥ .‥‥ ‥‥‥‥ ‥ ‥‥- ・ 4 ? 一ヅ.べ ・ . ・ ‥……… … ……… …… …' :……… …… … 写真7 2006年度副読本(左)と2007年度副読本(右)のレイアウト例 −15−
副読本作成は主にパソコンで行う。ワードやエクセル、ペイント等様々な種類のソフトを活用す ることとなる。その時にどれくらいパソコンスキルがあるかを予め知っておく必要がある。スキル の差で見映えが大きく変わるからである。フォントや字体、大きさ、ページ設定の統一を初めに決 めておくことも重要である。院生のパソコンスキルのアップが課題である。 ④ 協同の難しさ 副読本作成は1人ひとりの作業であるとともに、院生全員で作り上げていくものである。 2007年・ 度も香川大学教員養成GPがあり、切羽詰った中での作業であった。特に完成間近の終盤は、内容 の検討や著作権許諾の問題、文章校正薄全員で確認しなければいけないことが多く、時間がどうし ても足りなくなってしまった。焦りから、時には衝突し合うこともあった。そういう時こそ、自分 のことだけではなく他人のことも考え、発言や行動することが、プロジェクトを遂行するチームとし て重要なことである。これは学校現場でも一緒のことであろう。最初に話し合いをきちんと行い、 意思の疎通をしっかりしておけば良かったと反省している。 Ⅳ おわりに一大学院生の副読本作成経験の「意味」− 2006年・度の活動における大学院生め副読本作成経験の意味については、詳細な報告(光田・小山・ 伊藤:2008)がある。そこで、2006年、度の活動も踏まえ、2007年・度の活動を中心に述べて、終わり としたい。 ・、 1 大学院生から見た副読本作成経験の「意味」 1)教材開発力の高まり 副読本作成にあたり、文章表現1つとっても、子どもにとって分かりやすい表現であるか、日本 語として間違っていないか等議論をした。また図・表等を入れる位置についても、入れる位置や順 序、効果的であるかどうか等を話し合った。子恚もの立。場に立って考えたり、吠き出しの活用法、 補足説明の入れ方など話し合いながら執筆を進めた。このことで多様な方法の中からよりよい文章 や図表等を院生、なりに、取り入れることが出来たと思っている。そして、教材を作っていくことの 大変さや難しさを身をもって体感できた。 2)著作権の取り扱い 副読本の作成をする以前は、著作権の許諾に時間がかからないという認識であった。しかし副読 本を作成していくうちに2∼3週間程度でとれると思っていたものでも、権利者が分からず時間の かかったものや、著作権がとれずあきらめたものもあった。著作権の許諾が困難で、大変時間が掛 かるものであることがよくわかった。著作権講習会に参加したりすることで、発表者たちが苦労し た分だけ著作権の理解が深まった。こういった講習会に参加することは非常に意昧があった。そし て院生、全員で参加したことが意思統一に繋がったのではないだろうか。著作権に対する取り扱いは これから重要視されることは間違いない。教員となったときに必ず求められる知識である。著作権 への理解が深まったことは、院生らが教育現場に出たときに必ず役立つだろう。 3)社会性の高まり 印刷会社や市役所等との交渉を通して院生、の社会性が高まった。電話の対応、資料提供のお願 い、お礼状の書き方など普段はしないようなことであるが、社会に出てからは必要なことであり、 院生の今後にとって非常にプラスになったと感じている。 16
2 教員から見た副読本作成経験と教員養成の在り方 1)教員から見た大学院生の副読本作成経験 宮西が省察した大学院生、から見た副読本作成経験の「意昧」には、教材開発力の高まりはあるが、 地域調査や子どもの実態把握に関わる言及はない。だが、2006年度の副読本作成活動の課題を踏ま えての2007年、度の活動報告には、「十分な子どもの実態」と「早期の現地調査活動」が掲げられ、そ れらの重要牲が強調されている。子・どもの実態把握については、「教材開発力の高まり」でも、「子・ どもにとって分かりやすい」とか、「子老もの立、場に立って」との記述がある。 2007年度の院生達に とって、子どもの視点から物事を考える必要性や、子どもの実態把握を十分にすること等は自明な ことであり、2006年度のように項目立てしてまで述べることではなくなったのであろう。地域調査 の言及がないのは、次のように考えられる。元来、地元香川の子ども達を対象とし、水問題という ローカルかつグローバルな問題を基軸にしての副読本づくりである。地域調査の重要性は当然のこ ととして認識されたのであろう。従って、地域調査をする力や子どもを把握する力も視野に入れて の、教材開発力の高まりと考えてよいであろう。 副読本作成プロジェクトは、社会科敦員として求められる地域素材の教材化を図る力量を、院生 自ら啓培しようとするものである。 2007年渡も、学生提案プロジェクトでもあるし、修丁後は院生 の多くが地域教育のリーダーとなり副読本の編集にも携わる可能性があることも考え、印刷会社と の打ち合わせ等実務作業も可能な限り院生に任せた。副読本作成で最も神経を使う著作権許諾事務 も、2006年度同様、実際の転載や引用の許諾も執筆担当の院生がほぼ行った。伊藤は、院生に愛媛 大学での著作権講習会の開催を伝え、参加の世話や院生だけでは許諾が難しそうな場合の助力をし た他は、極力黒子にまわった。毎年のことだが、限られた予算故、作図を始め写真や資料の準備 等、本当に多くのことを自前でする。脱稿間際は院生研究室で深夜遅くまで作成作業に追われる。 泊まり込むことさえある。副読本発刊までには様々なことがある。それらのアクシデントを克服し て発刊までこぎつけるのは、相当のエネルギーがいる。 2006年度は、さらに協同して原稿を書き 上げる関係で、メンバー間の衝突が多々あった6)。こ。れは、必ずしも悪いことと伊藤は考えていな い。 40人ほどの子どもをまとめあげる学級経営や同僚と協働しての学年経営に通じると考えるから である。なにより、教員が子どもに協同の学びを求めるのなら、教員を目指す院生が、協同の学び を体験し、その難しさと手応えを感じておくことは肝要である。 2)副読本作成経験と教員養成の在り方 十分な野外調査実習経験を積んでも、地域学習指導に支障を来さない敦員を養成することは難し いというのが、2年間継続した大学院生による副読本作成プロジェクトを終えての、伊藤の所感で ある。なぜなら、いくら野外調査実習を積み重ねても、敦材開発で必要な「何を」・「どのような素 材によって」・「いかに」敦えるかという三要素全てのものに一貫した論理と説得力をもったデータ は、出てこないからである。せいぜい、野外調査実習経験は、「何を」教えるか程度しか役立、たな い。野外調査実習を積み重ねても、副読本作成活動のように子どもの視点を獲得することは不可能 である。この視点を欠けば、子どもが興昧関心をもつ「素材」の選定は難しい。ましてや、その素 材で「いかに」教えるかと教材化することは、より難しい。そもそも、地域学習めアポリアもあっ た。教材化のための地域調査活動時間さえ、ないことがある。地域教材開発力のある教員養成は野外 調査実習の充実だけでは不十分である。その不十分さを補うものとして、出力型授業観に基づく副 読本作成を挙げておきたい。 さてヽ平成20年度斤詐習指導要領答申で「探究」なる用語が示された。答申に携わった安彦(2008、 P.3)は、改訂の理念や方針のバックグランドに「キャッチアップが終わった日本社会」があり、「既 存の知識を吸収し活用する『習得・記憶』型の能力だけでなく、誰も手をつけていない新しいこと −17−