ネズミ小腸のα−ガラクトシダーゼ
Ⅱ 食飼,抗生物質,副腎皮質ホルモンなどが酵素活性に及ぼす影響
笠 井
忠 前報(1)でネズミ小腸のα−ガテクl、シダー・ゼ(E。Cい3.2.1…22,α−D−galactosidegalactohydrolase,以後これをα−Gal− aseと記す.)活性の発育にともなう変化が,同β−ガテクl・シダーゼ(E,C.3r2”1.23,β−D−galactoside galadto− hydrolase,以後これをβ−Gal・・aSeと記す.)と同傾向を示すこと,すなわち哺乳期では酵素活性が高く,離乳期に近 ずくに従って急速に減少し,成熟期には微款であるが一億の倍とをるこ.とを報告した。βTGalNaSe の場合この活性の 減少と同時にスタラーゼ(sucr・OSeglucohydrolase),マルター・ゼ(E“C」3211‖20,α−D−glucosideglucohydrolase)な ど摂取食餌に関係あるグリコシダーゼ活性の増加がみられ,離乳による食飼の変化と糖質消化酵素の括性変化は−・致 する(2).この離乳にともなうこの酵素活性の変化は摂取糖質に多少影響される(8 ̄S)ようであるがこれは直接的なも のでなく,このような消化酵素(5 ̄7)だけでをく,更にガラクトースなどの糖代謝酵素嶋9)などが変化し,これらが副 腎皮質ホルモンに支配されるようである. このような消化酵素に対してβ−Gal−aSeと同様の活性変化を示し,消化酵素としての役割はほとんどないと思われ るα−Gal・aSeが上記のようなことに対してどう影響されるか,また大豆少糖類のような α−ガラクトシドの腸内微生 物による消化(10)ヤ且cOJgをど腸内微生物によるα−Gal−aSeの生産も考えられる(11)ことから以下の実験を行なった. 実 験 方 法 1い 実験動物 前報と同様ウイスター系自ネズミの正常飼育による月食5∼7か月,体重約200gの母ネズミから 出産した幼ネズミについて行をった..食餌試験以外は常に母ネズミと同居の状態で,また試験と対照群は同腹の幼ネ ズミをこ群に分けて行なった… 幼ネズミの雌雄の別は考慮しなかった. 2.α−Gal,aSe活性の測定 前報同様小腸を摘出し3部位に区別したホモジネート上酒につきメリビストー・スを基質 として,酢酸緩衝液pH4.6,600C,30分間インキェ.ベー卜し遊離するグルコー・スを酵素法により定慶したL.酵素活性 は反応時間10分当りの遊離グルコース1m′Jmoleを1単位とした. Tablel。Compositionofexperimentaldiets (%)Ra餓nosegroup Control group
21..3 42.7 20.0 5.0 5‖0 2.0 41.0 Ra庁inose Suc工OSe galactose glucose Casein Ebios Soybean oil Codliver・Oil Saltsmix.(JoNES−FosTER) 2 1 7 0 月 0 0 0 4 7 2 0 5 ■ヽ︶ ウー 4 1 4 2 3L食飼試験 生後14日目と16日目の幼ネズミをTablelいに示したラフイノースを含む飼料を,対照としてラフ ィノースの代りにショ糖とガラクトー・スを含む飼料を水でカユ状にねり,また別に水を自由に与えた.
4.抗生物質の投与 三共 KりK..のクロロマイセチンパルミテ1−ト液(カイ軋クロラムフユニコー・ルとして31‖25
mg/mのを約003m〝匹,4∼6時間おきに継続して経口投与した. 5.コ1−・チゾン投与 シュロソン(Scheroson,ScheTingA。G.,Berlin)を酢酸コ巾・・・・チゾンとして約1.5mgを背部 に筋注した.6.副腎切除 KoIDOVSKYら(6)の方法に準じ生後16日目の幼ネズミをエーテル麻酔後背部より切開摘出除却し
た.対照ネズミは同様に切開のみ行をった. 結 果 1.食飼試験 生後14El目および16日目から試験飼料を与え.それぞれ髄乳期2日前(生後19日目)および離乳期に相当する生後21 E[目に測定した結果をTable2.に示した..数値は酵素単位/1mgタンパク質を平均(士標準誤差)で示したがいず れもわずかであるがラフイノー・スを含む飼料の場合が増加した Table2.E鮎ctofdietcontainlngra航nose (Uイmg・P)Proximalthird Centralthird Distalthird Contr01
(7)
(7)
(6) 19(14)・day−01d rats(3) Ra蝕10Se(6)
(1) 1) 1.91 (土0.90) 1.02 (土0い45) 0.34 (士0..20) Contr01 21(16)一day−01d ratS(4) 4.26 (土1.29) 5.05 (士1.89) 1.77 (土0…21) Ra氏noseExpeIimentalanimalsweredividedinto twogroupsonthefourteenthor sixteenth
postnataldayfiomlitter−mateSlThegroupswerefbdwiththedietsdescIibedinTable
l,andwaterwasgivenadlibitum。TheresultingvaluesaIeindicatedasmeans(士Stand− aIdeIⅠOr). 2.抗生物質の投与 生後14日目から4日間と生後7日目から5日間投与した18日目と12日目の活性はTable3・に示す結果とをった.投 与により増加の傾向にあるが有意差はをい. Table3小 Efrtctof’antibiotics (U./mgP・)ProximalthiId Centralthird Distalthird
contr01 () () () 12(7)一day−01d IatS(4) Antibioti”
(2)
() () Contro1 3い‘71 ,5‖03 15.41 18(14)−day−01dIatS Antibiotics O.23 5,70 16.07
Theoraladministration of=Pediatic chloromycetin palmitate”(Sankyo Col,Ltd・, Tokyo)wasperformedcontinuallyto70r14dayoldratsatdoselevelofO‖03mlper animalatintervalsof4−6hours
3.コ・−チゾン投与
結果はTable4.に示したように生後10日巨=こ投与し2日後の12日目の測定で遼位部は有意的に増加し,生後15日 目に投与17日目の測定では逆に減少した.
Table4”Efrtctofcortisone (Uい/mgP、)
PIOXimalthird Centralthird DistalthiId ContI01
(3)
() () 12(10トday−01d IatS(4) CoItisone (。) () (。) Contl・ol ・ (.1)(5)
() 17(15トday−01d はtS(3) Cortisone(7)
(8)
() Cortisoneacetate(SchcringAG.,Berlin)wasadministIatCdtothcdorsalportionof lOor15dayoldratsbyintramuscularlP】CCtionatlcvelofl一5mgpeIanimal 4.副腎切除 副腎切除の切開手術はある程度熟練を要し,未熟のためかそのほとんどが1∼2日目で死亡した.かろうじて生後16 日目に切除し19日日の測定結果が得られた.簡体差が相当あるので不精確と思われるが速位部で増加した(Table5・) Table5.Efftctofadrenalectomy (Uイmg‡,.)Proximalthird Centralthird DistalthiId
ContIO1 2い87 2.50 8…28
19(16)−day−01d IatS
Adrenalectomy 2・18 4‖19 18・50
Thiswasperfbrmed bythedo‡Salrouteunderetheranaesthesiaon16thdayafteI birth.Contr・01animalwas sham−Operated tolitter・−mateS”They were kept together withthemother animal 考 察 離乳期前頃ではラクトース投与のβ・・Gal−aSe活性の影響はある程度離乳期が遅れたようにやや高くなる,成熟期で はその効果はみられない(B・4).この実験のα−Gal−aSeの場合もわずかながら増加がみられ,離乳期の生後21日日で明 らかな差がある‖ このことはβ−Gal−aSeの場合とよく似ている.REDDYら(5)はβ−Gal−aSeのようを消化酵素の離乳 にともをう減少がガラクトースなどの影響をうけるのはこの摂取糖質が直接の原因でなく間接的なもの,例へば栄養 状態が変るためタンパク合成などが影響をうけ,あるいは変らをくとも酵素がその基質により安定性が増すため酵素 の消失が遅くなり結果的には離乳期の遅延となるのであろうとしている.この実験結果もこの観点からすれば,生後
14∼16日目の幼ネズミではTablel.のようを実験飼料が充分消化吸収されるとは思われをい,このためか体重増加
が全くみられず対照ネズミで0∼2g,ラフイノー・スを含む飼料では3∼6gの体藍滅であった… これでは明らかにラフ ィノース含有飼料の場合が栄養状態が患い.この状態では正常な場合との相異は充分考えられる.. 一般に無菌動物の場合通常動物よりもタンパク合成が清澄であり,ネズミの場合でも消化酵素の増加がみられるこ と(5)からこの実験の場合も抗生物質の投与で平均値としては増加したい しかし有意差はなく無菌の場合と同様の効 果があったかどうかは疑問であるが,α−Gal−aSeそのものが微生物に帰因するものでをいと考えられる.離乳期前後の消化酵素やこれと関連する代謝酵素の変化が副腎皮質ホルモンに影響されるがα−Gal−aSeでも同様の 結果が得られた.副腎皮質ホル・モンの一一種であるコ・−・チゾン投与で活性の増昇期には増加,減少期には更に減少と離 乳期を短縮させる方向に,また副腎切除は逆に遅延の方向に働くことになる・このα−Gal−aSe活性の変化もβ−Gal−aSe など同様発育にともをう副腎皮質ホルモンなどに支配されるものと考える.殺近.JuMAWANら(12)もネズミ小腸の α・Gaトase惰性の変化で測定前4日間連続してコーサゾンを与えた佳後13日目で正常の約3分の1に減少したと報告 している. 要 約 ネズミ小腸のα−ガラクl・シダーゼ括性がβ一ガラクトシダーゼの場合と同様哺乳期に高いことから,この時期の食 飼,抗生物質,コーチゾンの投与,副腎切除などによるこの酵素個性の変化を調べた… 1.離乳期前にラフイノ・−スを含む飼料を与えたが,これに相当するショ糖,ガテクトースを含む飼料を与えた場 合よりもわずかの活性増加がみられた… しかしit三倍な変化を変動させるような結果は得られをかった. 2.抗生物質の投与でもほとんど影響されず平均値でわずかに増加したが有意差ほなかった. 3.コ1−チゾン投与は活性の増加期に増加,減少期に減少と離乳期短縮の方向に働いた. 4t副腎切除はコー・チゾン投与の逆の現象がみられた巾 以上のことからネズミ小腸のα−ガラクトシダ・−・ぜ活性の生後の変化はホルモンなど発育による生理現象と考える. この研究の大要は日本農芸化学会総会(1970年4月2日於福岡)にて報告した(18) この研究を行なうにあたりご相貌 ご援助いただきました当時の徳島大学医学部教授黒田第一・郎博士(現在徳島文 理大学学長)をらびに本学教授川村信一・郎博士に厚く感謝致します. 文 (1)笠井 忠:香川大農学報,25,233−238(1974). (2)RtJBINO,Aい,ZIMBALATTI,F.,AuRtCCHIO,S.: 戯ocゐよmり戯呼ゐγ√S..Acfα,92,305−311(1964) (3)DoELL,RGい,KR耶CHMER,N∴ よみ去■d.,62,353 −362(1962) (4)ALVAREZ,A,SAS,J.:入bture,190,826T827 (1961). (5)REDDY,B‖S.,PLEASANTS,,.R,WosTMANN, B.S.:エ肋れ95,413−419(1968) (6)KoLDOVSXY,0リCHYTIL,F‥ 戯ocムβ∽.J,94, 266−270(1965) (7)DoELL,RいGい,KRETCHMER,N:5最e花Ce,143, 42−44(1964) 献 (8)KuBO,H。,HAYASHI,Y′,KANESHIRO,S爪, ToKUGAWA,S,SAKURAIK,KuRODA,K: 了もゑαSゐよ∽αJE砂几ゐd,15,52−64(1968) (9)黒田昇一・郎:栄養と食糧,24,1−7(1971). (10)菅田 昭,馬居昭子,成田陽子,川村信一郎: 栄養と食橙,22,262−265(1969). (11)川村信一・郎,笠井 忠,田主澄三:日本農芸化 学会総会講演要旨,p..213−214(1968) (12)JuMAWAN,J。,KoLDOVSKY,0.,PALMrERI,M.: 月よog。♪ゐ0乃αfe,20,380−384(1972). (13)笠井 忠,川村信一・郎:日本農芸化学会総会講 演要旨,p.189(1970)
α−GALACTOSIDASEIN T壬IE SMALLINTESTINE OF THE RAT
II.E鮎cts ofDiet,Antibiotics,Or AdrenalCorticalHormone on theEnzymeActivity
TadasiKASAI
Slarmmargr
E鮎cts ofdiet,antibiotics)COrtisone or adrenalectomy onα−galactosidase actlVltyin small
intestineofinfant‡atSWereinvestlgated
1・Theenzymeactivitybyfらedingara伍nosecontainingdiet丘om140r16dayoldto19
0r21dayoldratsincreasedalittelincomparisontotheftedingagalactoseplussucrose diet
in stead ofthe ra侃noseone